説明

表面保護フィルム

【課題】ITOフィルム上からのマスクインクの除去に好適に用いることができる表面保護フィルムであって、マスクインクの除去における剥離操作の際にITOフィルムに折れが発生することを防止でき、しかも、ITOフィルム上からマスクインクを十分に除去できる、表面保護フィルムを提供する。
【解決手段】本発明の表面保護フィルムは、プラスチックフィルムと該プラスチックフィルムの片面に設けられた感圧性粘着剤層を有する表面保護フィルムであって、該感圧性粘着剤層が(メタ)アクリル系樹脂を含み、該感圧性粘着剤層は、SP値が8.5〜9.2の可塑剤を該(メタ)アクリル系樹脂に対して0.5重量%以上含み、ITOフィルムに対する前記感圧性粘着剤層の表面の粘着力が、引張速度0.3m/minにおいて0.40N/20mm以下であり、引張速度10m/minにおいて1.60N/20mm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルの電極として用いられるITOフィルムには、導通回路形成のために、銀ペースト等の導電性ペーストが印刷されている。このような導電性ペーストをITOフィルム上に印刷する際には、マスクインクが予めコーティングしてあり、そのマスクインクは印刷後に除去される。
【0003】
ITOフィルム上からのマスクインクの除去は、従来、粘着テープや粘着シートを貼り合わせて剥離することによって行っている(特許文献1)。
【0004】
しかし、近年におけるITOフィルムの薄膜化に伴い、従来の粘着テープや粘着シートを用いたマスクインクの除去においては、剥離操作の際にITOフィルムに折れが発生してしまい、ITOフィルムを損傷してしまうという問題がある。
【0005】
また、従来の粘着テープや粘着シートにおいて、上記問題を解決することを目的として良好な剥離性を発現させようとした場合には、ITOフィルム上からマスクインクを十分に除去できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−265191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、ITOフィルム上からのマスクインクの除去に好適に用いることができる表面保護フィルムであって、マスクインクの除去における剥離操作の際にITOフィルムに折れが発生することを防止でき、しかも、ITOフィルム上からマスクインクを十分に除去できる、表面保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の表面保護フィルムは、
プラスチックフィルムと該プラスチックフィルムの片面に設けられた感圧性粘着剤層を有する表面保護フィルムであって、
該感圧性粘着剤層が(メタ)アクリル系樹脂を含み、
該感圧性粘着剤層は、SP値が8.5〜9.2の可塑剤を該(メタ)アクリル系樹脂に対して0.5重量%以上含み、
ITOフィルムに対する前記感圧性粘着剤層の表面の粘着力が、引張速度0.3m/minにおいて0.40N/20mm以下であり、引張速度10m/minにおいて1.60N/20mm以下である。
【0009】
好ましい実施形態においては、本発明の表面保護フィルムは、
表面粗さRaが0.6μm〜0.7μmであるポリ塩化ビニルフィルムに対する上記感圧性粘着剤層の表面の粘着力が、引張速度0.3m/minにおいて0.35N/20mm以上であり、引張速度10m/minにおいて2.00N/20mm以上である。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記感圧性粘着剤層の厚みが3.0μm〜15.0μmである。
【0011】
好ましい実施形態においては、上記可塑剤を上記(メタ)アクリル系樹脂に対して30重量%〜90重量%含む。
【0012】
好ましい実施形態においては、上記可塑剤のSP値が8.7〜9.1である。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記プラスチックフィルムの厚みが40μm〜150μmである。
【0014】
好ましい実施形態においては、上記プラスチックフィルムの弾性率が100MPa〜1000MPaである。
【0015】
好ましい実施形態においては、上記プラスチックフィルムが軟質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンから選ばれる少なくとも1種を含む。
【0016】
好ましい実施形態においては、本発明の表面保護フィルムは、上記プラスチックフィルムの上記感圧性粘着剤層とは逆の側の表面に剥離処理層を有する。
【0017】
好ましい実施形態においては、本発明の表面保護フィルムは、上記感圧性粘着剤層の上記プラスチックフィルムとは逆の側の表面に剥離ライナーを有する。
【0018】
好ましい実施形態においては、本発明の表面保護フィルムは、ITOフィルム上のマスクインク除去に用いる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ITOフィルム上からのマスクインクの除去に好適に用いることができる表面保護フィルムであって、マスクインクの除去における剥離操作の際にITOフィルムに折れが発生することを防止でき、しかも、ITOフィルム上からマスクインクを十分に除去できる、表面保護フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
≪表面保護フィルム≫
本発明の表面保護フィルムは、プラスチックフィルムと該プラスチックフィルムの片面に設けられた感圧性粘着剤層を有する。
【0021】
本発明の表面保護フィルムにおいて、感圧性粘着剤層は(メタ)アクリル系樹脂を含む。
【0022】
本発明の表面保護フィルムは、プラスチックフィルムと該プラスチックフィルムの片面に設けられた感圧性粘着剤層の他に、本発明の目的を損なわない範囲で、任意の他の層を有し得る。このような層として、好ましくは、プラスチックフィルムの感圧性粘着剤層とは逆の側の表面に設けられる剥離処理層、感圧性粘着剤層のプラスチックフィルムとは逆の側の表面に設けられる剥離ライナーが挙げられる。
【0023】
本発明の表面保護フィルムにおいて、感圧性粘着剤層は、SP値(溶解度パラメータ)が8.5〜9.2の可塑剤を、該感圧性粘着剤層中の(メタ)アクリル系樹脂に対して0.5重量%以上含み、好ましくは1重量%〜100重量%含み、より好ましくは10重量%〜90重量%含み、さらに好ましくは20重量%〜90重量%含み、特に好ましくは30重量%〜90重量%含む。上記感圧性粘着剤層中の上記可塑剤の含有割合が上記範囲内に収まることによって、マスクインクの除去に適する適度な軽剥離性を発現することができ、マスクインクの除去における剥離操作の際にITOフィルムに折れが発生することを防止でき、しかも、ITOフィルム上からマスクインクを十分に除去できる。
【0024】
本発明の表面保護フィルムは、ITOフィルムに対する上記感圧性粘着剤層の表面の粘着力が、引張速度0.3m/minにおいて0.40N/20mm以下であり、引張速度10m/minにおいて1.60N/20mm以下である。ここで、上記ITOフィルムは、好ましくは、その表面粗さRaが0.02μm〜0.05μmである。
【0025】
本発明の表面保護フィルムは、ITOフィルムに対する上記感圧性粘着剤層の表面の粘着力が、引張速度0.3m/minにおいて、好ましくは0.01N/20mm〜0.40N/20mmであり、より好ましくは0.05N/20mm〜0.35N/20mmであり、さらに好ましくは0.10N/20mm〜0.32N/20mmであり、特に好ましくは0.15N/20mm〜0.30N/20mmである。ここで、上記ITOフィルムは、好ましくは、その表面粗さRaが0.02μm〜0.05μmである。
【0026】
本発明の表面保護フィルムは、ITOフィルムに対する上記感圧性粘着剤層の表面の粘着力が、引張速度10m/minにおいて、好ましくは0.01N/20mm〜1.60N/20mmであり、より好ましくは0.1N/20mm〜1.55N/20mmであり、さらに好ましくは0.3N/20mm〜1.52N/20mmであり、特に好ましくは0.5N/20mm〜1.50N/20mmである。ここで、上記ITOフィルムは、好ましくは、その表面粗さRaが0.02μm〜0.05μmである。
【0027】
ITOフィルムに対する上記感圧性粘着剤層の表面の粘着力が上記条件下において上記範囲に収まれば、マスクインクの除去に適する適度な軽剥離性を発現することができ、マスクインクの除去における剥離操作の際にITOフィルムに折れが発生することを防止でき、しかも、ITOフィルム上からマスクインクを十分に除去できる。
【0028】
本発明の表面保護フィルムは、表面粗さRaが0.6μm〜0.7μmであるポリ塩化ビニルフィルムに対する上記感圧性粘着剤層の表面の粘着力が、引張速度0.3m/minにおいて、好ましくは0.35N/20mm以上であり、より好ましくは0.35N/20mm〜5.0N/20mmであり、さらに好ましくは0.40N/20mm〜4.0N/20mmであり、特に好ましくは0.50N/20mm〜3.0N/20mmである。
【0029】
本発明の表面保護フィルムは、表面粗さRaが0.6μm〜0.7μmであるポリ塩化ビニルフィルムに対する上記感圧性粘着剤層の表面の粘着力が、引張速度10m/minにおいて、好ましくは2.00N/20mm以上であり、より好ましくは2.00N/20mm〜10.0N/20mmであり、さらに好ましくは2.10N/20mm〜8.0N/20mmであり、特に好ましくは2.30N/20mm〜5.0N/20mmである。
【0030】
本発明の表面保護フィルムは、より好ましくは、表面粗さRaが0.6μm〜0.7μmであるポリ塩化ビニルフィルムに対する上記感圧性粘着剤層の表面の粘着力が、引張速度0.3m/minにおいて0.35N/20mm以上であり、引張速度10m/minにおいて2.00N/20mm以上である。
【0031】
ITOフィルム上のマスクインクの組成はポリ塩化ビニルであり、その表面粗さRaが0.6μm〜0.7μmであることから、表面粗さRaが0.6μm〜0.7μmであるポリ塩化ビニルフィルムに対する上記感圧性粘着剤層の表面の粘着力が上記条件下において上記範囲に収まれば、マスクインクのITOフィルムに対する接着力を十分に上回るため、ITOフィルム上からマスクインクを容易に剥離することが出来る。
【0032】
<プラスチックフィルム>
プラスチックフィルムとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なプラスチックフィルムを採用し得る。
【0033】
プラスチックフィルムの厚みは、好ましくは40μm〜150μmであり、より好ましくは45μm〜120μmであり、さらに好ましくは50μm〜100μmであり、特に好ましくは50μm〜90μmである。プラスチックフィルムの厚みが40μm未満の場合、本発明の表面保護フィルムの貼り合わせ作業が難しくなるおそれがある。プラスチックフィルムの厚みが150μmより大きい場合、ITOフィルム上のマスクインクの端部への追従性が悪くなるおそれがある。
【0034】
プラスチックフィルムの弾性率は、好ましくは100MPa〜1000MPaである。プラスチックフィルムの弾性率がこの範囲内となるように材料選定を行えば、本発明の効果を十分に発現し得る。プラスチックフィルムの弾性率が100MPa未満の場合、該プラスチックフィルムが柔軟すぎるために貼り合わせ性が悪くなるおそれがある。プラスチックフィルムの弾性率が1000MPaより大きい場合、ITOフィルム上のマスクインクの端部への追従性が悪くなるおそれがある。
【0035】
プラスチックフィルムの材料としては、任意の適切な材料を採用し得る。このような材料としては、例えば、軟質ポリ塩化ビニル(軟質PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)が好ましく挙げられる。これらの材料は、弾性率が100MPa〜1000MPaの範囲内にあるため、貼り合わせ性が良好であり、ITOフィルム上のマスクインクの端部への追従性が良好であるからである。すなわち、プラスチックフィルムとしては、好ましくは、軟質ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムが挙げられる。
【0036】
プラスチックフィルムの材料としては、特に好ましくは、軟質ポリ塩化ビニルが挙げられる。プラスチックフィルムの材料として軟質ポリ塩化ビニルを用いると、感圧性粘着剤に可塑剤を添加しても感圧性粘着剤表面や感圧性粘着剤表面/プラスチックフィルムの界面への可塑剤ブリード量が少ないからである。これに対し、プラスチックフィルムの材料としてポリエチレンやポリプロピレンを用いると、感圧性粘着剤に可塑剤を添加した場合に、感圧性粘着剤表面や感圧性粘着剤表面/プラスチックフィルムの界面への可塑剤ブリードが生じる場合があり、投錨破壊(糊残り)や汚染の問題が発生するおそれがある。すなわち、プラスチックフィルムとしては、特に好ましくは、軟質ポリ塩化ビニルフィルムが挙げられる。
【0037】
プラスチックフィルム中には、可塑剤が含まれていても良い。プラスチックフィルム中の可塑剤の含有割合は、該プラスチックフィルム中の上記材料(軟質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂材料)に対して、好ましくは0.5重量%〜500重量%であり、より好ましくは1.0重量%〜40重量%であり、さらに好ましくは2.0重量%〜30重量%である。プラスチックフィルム中の可塑剤の含有割合を上記範囲内に収めることによって、本発明の効果をより一層効果的に発現することが可能となる。プラスチックフィルム中の可塑剤の含有割合が多すぎると、プラスチックフィルムが柔軟になりすぎてしまい、貼り合わせ性が低下するおそれがある。プラスチックフィルム中の可塑剤の含有割合が少なすぎると、プラスチックフィルムが硬くなりすぎてしまい、ITOフィルム上のマスクインクの端部への追従性が低下するおそれがある。
【0038】
上記可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル系、トリメリット酸エステル系(大日本インキ(株)製、W−700、トリメリット酸トリオクチル等)、アジピン酸エステル系((株)ジェイプラス製、D620、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等)、リン酸エステル系(リン酸トリクレシル等)、アジピン酸系エステル、クエン酸エステル(アセチルクエン酸トリブチル等)、セバシン酸エステル、アセライン酸エステル、マレイン酸エステル、安息香酸エステル、ポリエーテル系ポリエステル、エポキシ系ポリエステル(エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等)、ポリエステル(カルボン酸とグリコールからなる低分子ポリエステル等)などが挙げられる。本発明においては、エステル系可塑剤を用いることが好ましい。可塑剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0039】
<感圧性粘着剤層>
感圧性粘着剤層としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な感圧性粘着剤層を採用し得る。
【0040】
感圧性粘着剤層の厚みは、好ましくは3.0μm〜20.0μmであり、より好ましくは3.5μm〜18.0μmであり、さらに好ましくは4.0μm〜15.0μmであり、特に好ましくは4.5μm〜13.5μmである。感圧性粘着剤層の厚みが3.0μm未満の場合、ITOフィルム上からマスクインクを十分に除去できないおそれがある。感圧性粘着剤層の厚みが20.0μmより大きい場合、粘着力が大きくなりすぎて、マスクインクの除去における剥離操作の際にITOフィルムに折れが発生しやすくなるおそれがある。
【0041】
感圧性粘着剤層は(メタ)アクリル系樹脂を含む。感圧性粘着剤層が(メタ)アクリル系樹脂を含むことにより、本発明の効果を発現できるだけの適度な粘着性とITOフィルム上からのマスクインクの十分な除去性とを、効率よく両立し得る。
【0042】
ここで、本明細書中において、「(メタ)アクリル」とはアクリルおよび/またはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
【0043】
感圧性粘着剤層中の(メタ)アクリル系樹脂の含有割合は、目的に応じて適宜設定し得るが、好ましくは、50重量%以上であり、より好ましくは50重量%〜98重量%であり、さらに好ましくは50重量%〜95重量%であり、特に好ましくは50重量%〜90重量%であり、最も好ましくは50重量%〜85重量%である。
【0044】
上記(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系モノマーを主モノマーとして含むモノマー成分から構成される樹脂である。上記(メタ)アクリル系樹脂を構成するモノマー成分中の(メタ)アクリル系モノマーの含有割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%〜100重量%、さらに好ましくは90重量〜100重量%、特に好ましくは95重量%〜100重量%である。上記モノマー成分中のモノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0045】
(メタ)アクリル系モノマーとしては、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
【0046】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の、炭素数が1〜20のアルキル基の(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルの中でも、好ましくは、炭素数が1〜12のアルキル基の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、より好ましくは炭素数が1〜8のアルキル基の(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。(メタ)アクリル酸エステルは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0047】
上記(メタ)アクリル系樹脂を構成するモノマー成分は、本発明の効果を十分に発現させるために、好ましくは、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーから選ばれる少なくとも1種を含む。
【0048】
上記(メタ)アクリル系樹脂を構成するモノマー成分が水酸基含有モノマーを含む場合、上記(メタ)アクリル系樹脂を構成するモノマー成分中の水酸基含有モノマーの含有割合は、好ましくは、0.5重量%〜10重量%である。上記(メタ)アクリル系樹脂を構成するモノマー成分がカルボキシル基含有モノマーを含む場合、上記(メタ)アクリル系樹脂を構成するモノマー成分中のカルボキシル基含有モノマーの含有割合は、好ましくは、0.5重量%〜10重量%である。このように、上記(メタ)アクリル系樹脂を構成するモノマー成分が、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーから選ばれる少なくとも1種を含むことにより、架橋剤を用いた場合に、該架橋剤との架橋反応を効率的に生じさせることが可能となり、本発明の効果を十分に発現させることができる。さらに、上記(メタ)アクリル系樹脂を構成するモノマー成分中の水酸基含有モノマーの含有割合や、上記(メタ)アクリル系樹脂を構成するモノマー成分中のカルボキシル基含有モノマーの含有割合を、上記の範囲内に収まるように調整することによって、マスクインクの除去における剥離操作の際にITOフィルムに折れが発生することを効果的に防止できる。上記(メタ)アクリル系樹脂を構成するモノマー成分中の水酸基含有モノマーの含有割合や、上記(メタ)アクリル系樹脂を構成するモノマー成分中のカルボキシル基含有モノマーの含有割合が、上記の範囲よりも多すぎる場合には、ITOへの粘着力が大きくなりすぎてしまい、マスクインクの除去における剥離操作の際にITOフィルムに折れが発生しやすくなるおそれがある。
【0049】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−ト、アリルアルコールなどが挙げられる。水酸基含有モノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0050】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。カルボキシル基含有モノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0051】
感圧性粘着剤層は、好ましくは、架橋剤を含む。感圧性粘着剤層が架橋剤を含む場合、感圧性粘着剤層中の架橋剤の含有割合は、目的に応じて適宜設定し得るが、好ましくは、(メタ)アクリル系樹脂に対して、0.1重量%〜50重量%であり、より好ましくは0.5重量%〜40重量%であり、さらに好ましくは1.0重量%〜30重量%であり、特に好ましくは5.0重量%〜20重量%である。感圧性粘着剤層中の架橋剤の含有割合を上記範囲内に収めることによって、適度な架橋反応を生じさせることができ、マスクインクの除去における剥離操作の際にITOフィルムに折れが発生することを効果的に防止できる。
【0052】
架橋剤としては、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。
【0053】
感圧性粘着剤層は、SP値が8.5〜9.2の可塑剤を含む。感圧性粘着剤層中の上記可塑剤の含有割合は、前述したように、該感圧性粘着剤層中の(メタ)アクリル系樹脂に対して0.5重量%以上であり、好ましくは1重量%〜100重量%であり、より好ましくは10重量%〜90重量%であり、さらに好ましくは20重量%〜90重量%であり、特に好ましくは30重量%〜90重量%である。感圧性粘着剤層中の上記可塑剤の含有割合を上記範囲内に収めることによって、本発明の効果をより一層効果的に発現することが可能となる。感圧性粘着剤層中の上記可塑剤の含有割合が多すぎると、感圧性粘着剤層が柔軟になりすぎてしまい、糊残りや被着体汚染が発生しやすくなるおそれがある。
【0054】
上記可塑剤のSP値は、8.5〜9.2である。上記可塑剤のSP値がこのような範囲内にあれば、マスクインクの除去に適する適度な軽剥離性を発現することができ、マスクインクの除去における剥離操作の際にITOフィルムに折れが発生することを防止でき、しかも、ITOフィルム上からマスクインクを十分に除去できる。上記可塑剤のSP値は、好ましくは8.6〜9.1であり、より好ましくは8.7〜9.1である。
【0055】
上記可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル系、トリメリット酸エステル系(大日本インキ(株)製、W−700、トリメリット酸トリオクチル等)、アジピン酸エステル系((株)ジェイプラス製、D620、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等)、リン酸エステル系(リン酸トリクレシル等)、アジピン酸系エステル、クエン酸エステル(アセチルクエン酸トリブチル等)、セバシン酸エステル、アセライン酸エステル、マレイン酸エステル、安息香酸エステル、ポリエーテル系ポリエステル、エポキシ系ポリエステル(エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等)、ポリエステル(カルボン酸とグリコールからなる低分子ポリエステル等)などが挙げられる。本発明においては、エステル系可塑剤を用いることが好ましい。可塑剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0056】
感圧性粘着剤層は、架橋反応等を促進させるために、任意の適切な触媒を含んでいても良い。感圧性粘着剤層が触媒を含む場合、感圧性粘着剤層中の触媒の含有割合は、目的に応じて適宜設定し得るが、該感圧性粘着剤層中の(メタ)アクリル系樹脂に対して、好ましくは0.01重量%〜10重量%であり、より好ましくは0.05重量%〜5重量%である。感圧性粘着剤層中の触媒の含有割合を上記範囲内に収めることによって、本発明の効果をより一層効果的に発現することが可能となる。
【0057】
このような触媒としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、オクチル酸スズ、オクチル酸鉛、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート等の有機金属化合物;ブチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、イソホロンジアミン、イミダゾール、水酸化リチウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート等の塩基性化合物;p−トルエンスルホン酸、トリクロル酢酸、燐酸、モノアルキル燐酸、ジアルキル燐酸、β−ヒドロキシエチルアクリレートの燐酸エステル、モノアルキル亜燐酸、ジアルキル亜燐酸等の酸性化合物;などが挙げられる。触媒は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0058】
感圧性粘着剤層には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加剤が含まれていても良い。このような添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、充填剤、老化防止剤、粘着付与剤、顔料、染料、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0059】
<剥離処理層>
本発明の表面保護フィルムは、上記プラスチックフィルムの上記感圧性粘着剤層とは逆の側の表面に剥離処理層を有していても良い。
【0060】
剥離処理層は、上記プラスチックフィルムの上記感圧性粘着剤層とは逆の側の表面に、剥離処理剤により背面処理を施して、形成することが好ましい。
【0061】
剥離処理剤としては、任意の適切な剥離処理剤を採用し得る。このような剥離処理剤としては、例えば、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤、低分子量ポリエチレン系剥離剤、低分子量ポリプロピレン系剥離剤、ゴム系ポリマー、リン酸エステル系界面活性剤などが挙げられる。
【0062】
<剥離ライナー>
本発明の表面保護フィルムは、上記感圧性粘着剤層の上記プラスチックフィルムとは逆の側の表面に剥離ライナーを有していても良い。
【0063】
剥離ライナーとしては、任意の適切なセパレータを採用し得る。このような剥離ライナーとしては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等の剥離層を有する基材;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等のフッ素系ポリマーからなる低接着性基材;オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等の無極性ポリマーからなる低接着性基材;などが挙げられる。
【0064】
≪表面保護フィルムの製造方法≫
本発明の表面保護フィルムは、任意の適切な方法によって製造し得る。
【0065】
本発明の表面保護フィルムは、好ましくは、プラスチックフィルム上に、感圧性粘着剤層の材料となる粘着剤組成物を塗布し、任意の適切な温度を任意の適切な時間かけることで乾燥させて、プラスチックフィルム上に感圧性粘着剤層を形成させることによって製造し得る。この際、必要に応じて、任意の適切な方法によって、プラスチックフィルムの感圧性粘着剤層とは逆の側の表面に剥離処理層を形成しても良いし、感圧性粘着剤層のプラスチックフィルムとは逆の側の表面に剥離ライナーを形成しても良い。
【0066】
上記粘着剤組成物は、好ましくは、上記≪表面保護フィルム≫の項における<感圧性粘着剤層>の項で説明した(メタ)アクリル系樹脂、可塑剤、触媒を含み、必要に応じて、より好ましくは架橋剤を含む。また、さらに必要に応じて、任意の適切な添加剤を含む。
【0067】
上記塗布の方法としては、例えば、バーコーター、グラビアコーター、スピンコーター、ロールコーター、ナイフコーター、アプリケーター等を用いる方法が挙げられる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。部は重量部を意味する。
【0069】
〔インク除去率評価〕
幅65mm、長さ230mmに切断したサンプルを、以下の条件にてマスクインク付きITOフィルムに貼付し、その後、23℃、50%RHで5時間放置した後、サンプルを剥離し、ITOフィルム上のインクを除去した。インク除去後のサンプルの糊面写真とITOフィルムを撮影し、A4用紙に印刷した後、それぞれのインク貼付部位を切り取り、総重量とテープ糊面に貼付したインク部位の重量を測定し、インク除去率を算出した。
貼付雰囲気:23℃、50%RH
被着体:マスクインク付きITOフィルム
貼り合せ条件:線圧17.5N/cm、速度3.0m/min
【0070】
〔フィルム折れ性評価〕
幅65mm、長さ230mmに切断したサンプルを、以下の条件にてマスクインク付きITOフィルムに貼付し、その後、23℃、50%RHで5時間放置した後、サンプルを素早く剥離し、剥離時のフィルムの折れの程度を確認した。
貼付雰囲気:23℃、50%RH
被着体:マスクインク付きITOフィルム
貼り合せ条件:線圧17.5N/cm 速度3.0m/min
評価は下記の基準によって○または×で示した。
○:保護フィルム剥離時にフィルムが折れ曲がらない。
×:保護フィルム剥離時にフィルムが折れ曲がり、ITOフィルムに折れ跡が付く。
【0071】
〔対ITOフィルム粘着力評価〕
幅20mm、長さ100mmに切断したサンプルについて、以下の条件にて粘着力を測定した。
測定装置:インストロン型引張試験機(島津製作所製、「AUTOGRAPH AG−IS」)
測定雰囲気:23℃、50%RH
被着体:表面粗さRa=0.02〜0.05μmのITOフィルム(ITO面)
貼り合せ条件:線圧17.5N/cm、速度3.0m/min
測定条件:180°ピール、0.3m/minおよび10m/min
【0072】
〔対PVCフィルム粘着力評価〕
幅20mm、長さ100mmに切断したサンプルについて、以下の条件にて粘着力を測定した。
測定装置:インストロン型引張試験機(島津製作所製、「AUTOGRAPH AG−IS」)
測定雰囲気:23℃、50%RH
被着体:表面粗さRa=0.67μmのポリ塩化ビニル(PVC)フィルム
貼り合せ条件:線圧17.5N/cm、速度3.0m/min
測定条件:180°ピール、0.3m/minおよび10m/min
【0073】
〔SP値(溶解度パラメータ)〕
SP値(溶解度パラメータ)は、Smallの式(1)によって算出した。
δp[(J/cm1/2]=ΣF/V・・・・・(1)
ただし、式(1)中、δpは溶解度パラメータ、Fは分子間相互作用に関係した定数(表1に示すSmallの定数、置換基の種類に依存している)であり、Vはモル分子容である。
【0074】
【表1】

【0075】
〔実施例1〕
重合度P=1050のPVC樹脂100重量部に対してDOP可塑剤(フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、ジェイプラス製)27重量部を含んだ軟質PVCフィルムを準備した。この軟質PVCフィルムの厚みは70μmであり、弾性率は550MPaであった。
ブチルアクリレート(BA)/アクリロニトリル(AN)/アクリル酸(AA)=85/15/2.5(重量比)から構成されるアクリル共重合ポリマー(Mw=800000)100重量部、メラミン系架橋剤(ブタノール変性メラミンホルムアルデヒド樹脂、「スーパーベッカミンJ−820−60N」、日本ポリウレタン製)10重量部、パラトルエンスルホン酸(1級、キシダ化学製)0.7重量部、DOTP可塑剤(「アデカサイザーD−810」、株式会社ADEKA製、SP値=8.9)60重量部からなる粘着剤のトルエン溶液を調製した。
この粘着剤溶液を、軟質PVCフィルムからなる基材層の片面に塗布した後、130℃×90秒で乾燥し、厚み10μmの感圧性粘着剤層を軟質PVCフィルムの表面に形成した。
各種評価結果を表2に示した。
【0076】
〔実施例2〕
重合度P=1050のPVC樹脂100重量部に対してDOP可塑剤(フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、ジェイプラス製)27重量部を含んだ軟質PVCフィルムを準備した。この軟質PVCフィルムの厚みは70μmであり、弾性率は550MPaであった。
ブチルアクリレート(BA)/アクリロニトリル(AN)/アクリル酸(AA)=85/15/2.5(重量比)から構成されるアクリル共重合ポリマー(Mw=800000)100重量部、メラミン系架橋剤(ブタノール変性メラミンホルムアルデヒド樹脂、「スーパーベッカミンJ−820−60N」、日本ポリウレタン製)10重量部、パラトルエンスルホン酸(1級、キシダ化学製)0.7重量部、アジピン酸系低分子ポリエステル可塑剤(「アデカサイザーPN−7160」、株式会社ADEKA製、SP値=9.0)60重量部からなる粘着剤のトルエン溶液を調製した。
この粘着剤溶液を、軟質PVCフィルムからなる基材層の片面に塗布した後、130℃×90秒で乾燥し、厚み10μmの感圧性粘着剤層を軟質PVCフィルムの表面に形成した。
各種評価結果を表2に示した。
【0077】
〔実施例3〕
重合度P=1050のPVC樹脂100重量部に対してDOP可塑剤(フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、ジェイプラス製)27重量部を含んだ軟質PVCフィルムを準備した。この軟質PVCフィルムの厚みは70μmであり、弾性率は550MPaであった。
ブチルアクリレート(BA)/アクリロニトリル(AN)/アクリル酸(AA)=85/15/2.5(重量比)から構成されるアクリル共重合ポリマー(Mw=800000)100重量部、メラミン系架橋剤(ブタノール変性メラミンホルムアルデヒド樹脂、「スーパーベッカミンJ−820−60N」、日本ポリウレタン製)10重量部、パラトルエンスルホン酸(1級、キシダ化学製)0.7重量部、アジピン酸系低分子ポリエステル可塑剤(「D−620N」、ジェイプラス製、SP値=9.0)60重量部からなる粘着剤のトルエン溶液を調製した。
この粘着剤溶液を、軟質PVCフィルムからなる基材層の片面に塗布した後、130℃×90秒で乾燥し、厚み10μmの感圧性粘着剤層を軟質PVCフィルムの表面に形成した。
各種評価結果を表2に示した。
【0078】
〔実施例4〕
重合度P=1050のPVC樹脂100重量部に対してDOP可塑剤(フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、ジェイプラス製)27重量部を含んだ軟質PVCフィルムを準備した。この軟質PVCフィルムの厚みは70μmであり、弾性率は550MPaであった。
ブチルアクリレート(BA)/アクリロニトリル(AN)/アクリル酸(AA)=85/15/2.5(重量比)から構成されるアクリル共重合ポリマー(Mw=800000)100重量部、メラミン系架橋剤(ブタノール変性メラミンホルムアルデヒド樹脂、「スーパーベッカミンJ−820−60N」、日本ポリウレタン製)10重量部、パラトルエンスルホン酸(1級、キシダ化学製)0.7重量部、DINCH(「ヘキサモールDINCH」、BASF製、SP値=8.8)60重量部からなる粘着剤のトルエン溶液を調製した。
この粘着剤溶液を、軟質PVCフィルムからなる基材層の片面に塗布した後、130℃×90秒で乾燥し、厚み10μmの感圧性粘着剤層を軟質PVCフィルムの表面に形成した。
各種評価結果を表2に示した。
【0079】
〔比較例1〕
重合度P=1050のPVC樹脂100重量部に対してDOP可塑剤(フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、ジェイプラス製)27重量部を含んだ軟質PVCフィルムを準備した。この軟質PVCフィルムの厚みは70μmであり、弾性率は550MPaであった。
ブチルアクリレート(BA)/アクリロニトリル(AN)/アクリル酸(AA)=85/15/2.5(重量比)から構成されるアクリル共重合ポリマー(Mw=800000)100重量部、メラミン系架橋剤(ブタノール変性メラミンホルムアルデヒド樹脂、「スーパーベッカミンJ−820−60N」、日本ポリウレタン製)10重量部、パラトルエンスルホン酸(1級、キシダ化学製)0.7重量部、DOP可塑剤(フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、ジェイプラス製、SP値=9.5)60重量部からなる粘着剤のトルエン溶液を調製した。
この粘着剤溶液を、軟質PVCフィルムからなる基材層の片面に塗布した後、130℃×90秒で乾燥し、厚み10μmの感圧性粘着剤層を軟質PVCフィルムの表面に形成した。
各種評価結果を表3に示した。
【0080】
〔比較例2〕
重合度P=1050のPVC樹脂100重量部に対してDOP可塑剤(フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、ジェイプラス製)27重量部を含んだ軟質PVCフィルムを準備した。この軟質PVCフィルムの厚みは70μmであり、弾性率は550MPaであった。
ブチルアクリレート(BA)/アクリロニトリル(AN)/アクリル酸(AA)=85/15/2.5(重量比)から構成されるアクリル共重合ポリマー(Mw=800000)100重量部、メラミン系架橋剤(ブタノール変性メラミンホルムアルデヒド樹脂、「スーパーベッカミンJ−820−60N」、日本ポリウレタン製)10重量部、パラトルエンスルホン酸(1級、キシダ化学製)0.7重量部、DINP(フタル酸ジイソノニル、ジェイプラス製、SP値=9.4)60重量部からなる粘着剤のトルエン溶液を調製した。
この粘着剤溶液を、軟質PVCフィルムからなる基材層の片面に塗布した後、130℃×90秒で乾燥し、厚み10μmの感圧性粘着剤層を軟質PVCフィルムの表面に形成した。
各種評価結果を表3に示した。
【0081】
【表2】

【0082】
【表3】

【0083】
表1、表2を見ると、本発明の表面保護フィルムは、ITOフィルム上からのマスクインクの除去に好適に用いることができる表面保護フィルムであり、マスクインクの除去における剥離操作の際にITOフィルムに折れが発生することを防止でき、しかも、ITOフィルム上からマスクインクを十分に除去できることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の表面保護フィルムは、ITOフィルム上からのマスクインクの除去に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムと該プラスチックフィルムの片面に設けられた感圧性粘着剤層を有する表面保護フィルムであって、
該感圧性粘着剤層が(メタ)アクリル系樹脂を含み、
該感圧性粘着剤層は、SP値が8.5〜9.2の可塑剤を該(メタ)アクリル系樹脂に対して0.5重量%以上含み、
ITOフィルムに対する前記感圧性粘着剤層の表面の粘着力が、引張速度0.3m/minにおいて0.40N/20mm以下であり、引張速度10m/minにおいて1.60N/20mm以下である、表面保護フィルム。
【請求項2】
表面粗さRaが0.6μm〜0.7μmであるポリ塩化ビニルフィルムに対する前記感圧性粘着剤層の表面の粘着力が、引張速度0.3m/minにおいて0.35N/20mm以上であり、引張速度10m/minにおいて2.00N/20mm以上である、
請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
前記感圧性粘着剤層の厚みが3.0μm〜20.0μmである、請求項1または2に記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
前記可塑剤を前記(メタ)アクリル系樹脂に対して30重量%〜90重量%含む、請求項1から3までのいずれかに記載の表面保護フィルム。
【請求項5】
前記可塑剤のSP値が8.7〜9.1である、請求項1から4までのいずれかに記載の表面保護フィルム。
【請求項6】
前記プラスチックフィルムの厚みが40μm〜150μmである、請求項1から5までのいずれかに記載の表面保護フィルム。
【請求項7】
前記プラスチックフィルムの弾性率が100MPa〜1000MPaである、請求項1から6までのいずれかに記載の表面保護フィルム。
【請求項8】
前記プラスチックフィルムが軟質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1から7までのいずれかに記載の表面保護フィルム。
【請求項9】
前記プラスチックフィルムの前記感圧性粘着剤層とは逆の側の表面に剥離処理層を有する、請求項1から8までのいずれかに記載の表面保護フィルム。
【請求項10】
前記感圧性粘着剤層の前記プラスチックフィルムとは逆の側の表面に剥離ライナーを有する、請求項1から9までのいずれかに記載の表面保護フィルム。
【請求項11】
ITOフィルム上のマスクインク除去に用いる、請求項1から10までのいずれかに記載の表面保護フィルム。

【公開番号】特開2013−72068(P2013−72068A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214296(P2011−214296)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】