表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法
【課題】二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませて、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させ、反応性を向上させること。
【解決手段】コロイダルシリカ1の表面には水酸基が無数に付いており、表面修飾剤としてのTEIS(トリエトキシプロピルイソシアネートシラン)2を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度・臨界圧力において1時間反応させると、n−ヘキサンが超臨界状態となり、凝集しているコロイダルシリカ1の間に自由に入り込んで、TEIS2のエトキシ基の3つ全部がコロイダルシリカ1の表面の水酸基と縮合反応し、コロイダルシリカ1の表面に結合する。このようにコロイダルシリカ1の表面の無数の水酸基とTEIS2が反応することによって、コロイダルシリカ1の表面がTEIS2で覆われて、表面修飾粒子3が形成される。
【解決手段】コロイダルシリカ1の表面には水酸基が無数に付いており、表面修飾剤としてのTEIS(トリエトキシプロピルイソシアネートシラン)2を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度・臨界圧力において1時間反応させると、n−ヘキサンが超臨界状態となり、凝集しているコロイダルシリカ1の間に自由に入り込んで、TEIS2のエトキシ基の3つ全部がコロイダルシリカ1の表面の水酸基と縮合反応し、コロイダルシリカ1の表面に結合する。このようにコロイダルシリカ1の表面の無数の水酸基とTEIS2が反応することによって、コロイダルシリカ1の表面がTEIS2で覆われて、表面修飾粒子3が形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、約10nmから約300nmまでの範囲の外径を有する微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に反応性を向上させることができる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノテクノロジー研究の一環として、数百ナノメートル以下の粒子径を有する微粒子についての応用研究が盛んに行われている。かかる微粒子は、一次粒子としては製造が可能であるが、微細な粒子であるが故に凝集し易く、放置しておくとミクロンサイズの二次粒子に凝集してしまう。このため、一次粒子として分散し易くするために、一次粒子の表面を修飾することが望まれていた。また、かかる微粒子を応用した技術を実用化するためには、微粒子の表面に強固な結合を介して有機修飾することが要請されている。
【0003】
そこで、特許文献1においては、ナノサイズの微粒子の表面を炭化水素を始めとする有機化合物で修飾することによってかかる要請に応えるべく、高温高圧水、特に超臨界状態にある水を反応場として微粒子の表面に炭化水素等を強結合させる技術について開示している。また、特許文献2においては、インクジェット用記録材料においてインク受容層のシリカ微粒子の一次平均粒径が10nm〜50nmであり、かつ親水性バインダーとして少なくともゼラチンを含有するインクジェット用記録材料の発明について開示している。
【特許文献1】特開2005−194148号公報
【特許文献2】特開2002−264482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術においては、超臨界状態にある水を反応場として微粒子の表面に炭化水素等を強結合させるため、極めて高温高圧を必要とし、微粒子の表面修飾方法として実用的ではないという問題点があった。また、上記特許文献2に記載の技術においては、凝集して二次粒子となっている気相法シリカを100nm〜500nm程度の二次粒子になるまで超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で粉砕・分散させるものであり、一次粒子として分散し易くするものではない。
【0005】
そこで、本発明は、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、反応性を向上させることができる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明にかかる表面修飾粒子は、約10nmから約300nmの範囲内の粒子径を有する微細無機粒子を表面修飾した表面修飾粒子であって、前記微細無機粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えて混合物を作製し、前記混合物に高温高圧を加えて前記有機溶媒の超臨界状態として、前記微細無機粒子の表面に前記表面修飾剤を反応付加させてなるものである。
【0007】
請求項2の発明にかかる表面修飾粒子は、請求項1の構成において、オートクレーブを用いて前記混合物に高温高圧を加えて前記有機溶媒の超臨界状態とするものである。
【0008】
請求項3の発明にかかる表面修飾粒子は、請求項1または請求項2の構成において、前記有機溶媒はn−ヘキサンであるものである。
【0009】
請求項4の発明にかかる表面修飾粒子は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、前記表面修飾剤はイソシアネート系化合物であるものである。
ここで、「イソシアネート系化合物」とは、イソシアネート基(−N=C=O)を1つ以上有する化合物を意味する。
【0010】
請求項5の発明にかかる表面修飾粒子は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つの構成において、前記表面修飾剤はアルキル基を有する化合物であるものである。
ここで、「アルキル基」とは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、を始めとする脂肪族炭化水素基を意味する。
【0011】
請求項6の発明にかかる表面修飾粒子は、請求項1乃至請求項5のいずれか1つの構成において、前記表面修飾剤はアリール基を有する化合物であるものである。
ここで、「アリール基」とは、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、ジュリル基、アニシル基、ナフチル基、を始めとする芳香族炭化水素基を意味する。
【0012】
請求項7の発明にかかる表面修飾粒子は、請求項1乃至請求項6のいずれか1つの構成において、前記表面修飾剤はUV官能基を有する化合物であるものである。
ここで、「UV官能基」とは、ビニル基、スチリル基、アクリル基、を始めとする紫外線(UV)に反応する官能基を意味する。
【0013】
請求項8の発明にかかる表面修飾粒子は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つの構成において、前記微細無機粒子は20nm〜130nmの外径を有するシリカ殻からなる中空粒子であるものである。
【0014】
請求項9の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、約10nmから約300nmの範囲内の粒子径を有する微細無機粒子の表面修飾方法であって、前記微細無機粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えて混合物を作製する工程と、前記混合物に高温高圧を加えることによって前記有機溶媒の超臨界状態として前記微細無機粒子の表面に前記表面修飾剤を反応付加させる工程とを具備するものである。
【0015】
請求項10の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、請求項9の構成において、前記混合物に高温高圧を加える工程はオートクレーブを用いて行うものである。
【0016】
請求項11の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、請求項9または請求項10の構成において、前記有機溶媒はn−ヘキサンであるものである。
【0017】
請求項12の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、請求項9乃至請求項11のいずれか1つの構成において、前記表面修飾剤はイソシアネート系化合物であるものである。
【0018】
請求項13の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、請求項9乃至請求項12のいずれか1つの構成において、前記表面修飾剤はアルキル基を有する化合物であるものである。
【0019】
請求項14の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、請求項9乃至請求項13のいずれか1つの構成において、前記表面修飾剤はアリール基を有する化合物であるものである。
【0020】
請求項15の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、請求項9乃至請求項14のいずれか1つの構成において、前記表面修飾剤はUV官能基を有する化合物であるものである。
【0021】
請求項16の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、請求項9乃至請求項15のいずれか1つの構成において、前記微細無機粒子は20nm〜130nmの外径を有するシリカ殻からなる中空粒子であるものである。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明にかかる表面修飾粒子は、約10nmから約300nmの範囲内の粒子径を有する微細無機粒子を表面修飾した表面修飾粒子であって、微細無機粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えて混合物を作製し、混合物に高温高圧を加えて有機溶媒の超臨界状態として、微細無機粒子の表面に表面修飾剤を反応付加させてなる。
ここで、「有機溶媒」としては、メタノール、エタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素、キシレン等の芳香族炭化水素、等を用いることができる。また、「表面修飾剤」としては、イソシアネート系化合物、アミン系化合物、ビニル系化合物、エポキシ系化合物、メタクリロキシ系化合物、アクリル系化合物、イミド系化合物、アルキル基を有する化合物、アリール基を有する化合物、等を用いることができる。
約10nmから約300nmの範囲内の粒子径を有する微細無機粒子は、分散媒中で凝集して二次粒子を形成し易く、凝集を防いで一次粒子として分散させるためには、分散機で強力に攪拌して強引に分散させる必要があるが、それでも完全に分散させることは困難な場合が多い。
本発明にかかる表面修飾粒子は、約10nmから約300nmの範囲内の粒子径を有する微細無機粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えてなる混合物に高温高圧を加えて有機溶媒の超臨界状態とすることによって、有機溶媒が表面修飾剤とともに二次粒子の中に自由に入り込んで、一次粒子の表面全面に表面修飾剤が反応付加することで、凝集が解けて微細無機粒子の表面が表面修飾剤で覆われた表面修飾粒子が一次粒子として分散し易くなり、また有機樹脂等に分散させる場合には、表面修飾剤の活性基が有機樹脂等の活性基と反応結合して、強固な分散状態を形成する。
このようにして、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に反応性を向上させることができる表面修飾粒子となる。
【0023】
請求項2の発明にかかる表面修飾粒子は、オートクレーブを用いて混合物に高温高圧を加えて有機溶媒の超臨界状態とする。
有機溶媒を超臨界状態として有機溶媒を表面修飾剤とともに二次粒子の中に自由に入り込ませるためには、混合物に高温高圧を加える必要があるが、オートクレーブを用いることによって、安全かつ自由に高温高圧を加えることができ、一次粒子の表面全面に表面修飾剤を反応付加させることができる。
このようにして、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に反応性を向上させることができる表面修飾粒子となる。
【0024】
請求項3の発明にかかる表面修飾粒子は、有機溶媒がn−ヘキサンである。上述の如く、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素、キシレン等の芳香族炭化水素、等を用いることができるが、これらの中でもn−ヘキサンは臨界温度及び臨界圧力が最も低く、最も容易に超臨界状態とすることができる。
このようにして、最も容易に有機溶媒を超臨界状態として二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることができ、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に反応性を向上させることができる表面修飾粒子となる。
【0025】
請求項4の発明にかかる表面修飾粒子は、表面修飾剤がイソシアネート系化合物である。
ここで、前述の如く、「イソシアネート系化合物」とは、イソシアネート基(−N=C=O)を1つ以上もった有機化合物を意味するものであり、具体例としては、アルキル基にイソシアネート基が3個結合したトリイソシアネート化合物、トリエトキシプロピルイソシアネートシラン(TEIS)、等がある。
上述の如く、表面修飾剤としては、イソシアネート系化合物、アミン系化合物、ビニル系化合物、エポキシ系化合物、メタクリロキシ系化合物、アクリル系化合物、イミド系化合物、アルキル基を有する化合物、アリール基を有する化合物、等を用いることができるが、これらの中でもイソシアネート系化合物は入手が容易で反応性が良く、得られる表面修飾粒子の分散性及び反応性にも優れているという特徴を有する。
このようなイソシアネート系の表面修飾剤を、微細無機粒子の表面に存在する水酸基(−OH)を介して付加させ、微細無機粒子の全表面をイソシアネート系の表面修飾剤でコーティングすることによって、再凝集を防止することができて分散性が向上し、また有機樹脂中に混合する場合にも有機樹脂の活性基とイソシアネート基とが反応することによって、有機樹脂と微細無機粒子との強固な結合が得られる。
このようにして、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に反応性を向上させることができる表面修飾粒子となる。
【0026】
請求項5の発明にかかる表面修飾粒子は、表面修飾剤がアルキル基を有する化合物である。ここで、前述の如く、「アルキル基」とは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、を始めとする脂肪族炭化水素基を意味する。
このように、表面修飾剤としてアルキル基を有する化合物を用いることによって、アルキル基を有する化合物は入手が容易で反応性が良く、得られる表面修飾粒子の分散性及び反応性にも優れているという利点を有する。
このようなアルキル基を有する表面修飾剤を、微細無機粒子の表面に存在する水酸基(−OH)を介して付加させ、微細無機粒子の全表面をアルキル基を有する表面修飾剤でコーティングすることによって、再凝集を防止することができて分散性が向上し、また有機樹脂中に混合する場合にも有機樹脂とアルキル基とは相溶性が良いため、有機樹脂中に微細無機粒子が均一に分散する。
このようにして、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に分散性を向上させることができる表面修飾粒子となる。
【0027】
請求項6の発明にかかる表面修飾粒子は、表面修飾剤がアリール基を有する化合物である。ここで、前述の如く、「アリール基」とは、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、ジュリル基、アニシル基、ナフチル基、を始めとする芳香族炭化水素基を意味する。
このように、表面修飾剤としてアリール基を有する化合物を用いることによって、アリール基を有する化合物は入手が容易で反応性が良く、得られる表面修飾粒子の分散性及び反応性にも優れているという利点を有する。
このようなアリール基を有する表面修飾剤を、微細無機粒子の表面に存在する水酸基(−OH)を介して付加させ、微細無機粒子の全表面をアリール基を有する表面修飾剤でコーティングすることによって、再凝集を防止することができて分散性が向上し、また有機樹脂、特に芳香族系の有機樹脂中に混合する場合にも芳香族系の有機樹脂とアリール基とは相溶性が良いため、芳香族系の有機樹脂中に微細無機粒子が均一に分散する。また、トルエン、キシレン、等の芳香族炭化水素溶媒に分散させる場合にも、極めて良好な分散性を得ることができる。
このようにして、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に分散性を向上させることができる表面修飾粒子となる。
【0028】
請求項7の発明にかかる表面修飾粒子は、表面修飾剤がUV官能基を有する化合物である。ここで、前述の如く、「UV官能基」とは、ビニル基、スチリル基、アクリル基、を始めとする紫外線(UV)に反応する官能基を意味する。
このようなUV官能基を有する表面修飾剤を、微細無機粒子の表面に存在する水酸基(−OH)を介して付加させ、微細無機粒子の全表面をUV官能基を有する表面修飾剤でコーティングすることによって、再凝集を防止することができて分散性が向上し、また有機樹脂中に混合する場合にも有機樹脂とUV官能基とは相溶性が良いため、有機樹脂中に微細無機粒子が均一に分散する。
そして、微細無機粒子の全表面をUV官能基を有する表面修飾剤でコーティングすることによって、紫外線(UV)照射による三次元架橋反応を起こさせることができ、三次元架橋体を得ることができる。
このようにして、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に分散性を向上させることができ、三次元架橋体を得ることができる表面修飾粒子となる。
【0029】
請求項8の発明にかかる表面修飾粒子は、微細無機粒子が20nm〜130nmの外径を有するシリカ殻からなる中空粒子である。
近年、シリカ殻からなるナノ中空粒子についての研究開発が盛んに行われており、その製造方法もほぼ確立しているが、20nm〜130nmの外径を有するシリカ殻からなるナノ中空粒子も、中実微細粒子と同様に凝集し易く分散が困難であり、ナノ中空粒子としての特性を生かした応用がしづらいという問題点を有している。
そこで、中実微細粒子と同様に、シリカ殻からなるナノ中空粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えてなる混合物に高温高圧を加えて有機溶媒の超臨界状態とすることによって、有機溶媒が表面修飾剤とともに二次粒子の中に自由に入り込んで、一次粒子の表面全面に表面修飾剤が反応付加することで、凝集が解けて微細無機粒子の表面が表面修飾剤で覆われた表面修飾粒子が一次粒子として分散し易くなり、また有機樹脂等に分散させる場合には、表面修飾剤の活性基が有機樹脂等の活性基と反応結合して、強固な分散状態を形成する。
このようにして、シリカ殻からなるナノ中空粒子についても、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に反応性を向上させることができる表面修飾粒子となる。
【0030】
請求項9の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、約10nmから約300nmの範囲内の粒子径を有する微細無機粒子の表面修飾方法であって、微細無機粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えて混合物を作製する工程と、混合物に高温高圧を加えることによって有機溶媒の超臨界状態として微細無機粒子の表面に表面修飾剤を反応付加させる工程とを具備する。
本発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、約10nmから約300nmの範囲内の粒子径を有する微細無機粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えてなる混合物に高温高圧を加えて有機溶媒の超臨界状態とすることによって、有機溶媒が表面修飾剤とともに二次粒子の中に自由に入り込んで、一次粒子の表面全面に表面修飾剤が反応付加することで、凝集が解けて微細無機粒子の表面が表面修飾剤で覆われた表面修飾粒子が一次粒子として分散し易くなり、また有機樹脂等に分散させる場合には、表面修飾剤の活性基が有機樹脂等の活性基と反応結合して、強固な分散状態を形成する。
このようにして、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に反応性を向上させることができる微細無機粒子の表面修飾方法となる。
【0031】
請求項10の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、混合物に高温高圧を加える工程はオートクレーブを用いて行う。
有機溶媒を超臨界状態として有機溶媒を表面修飾剤とともに二次粒子の中に自由に入り込ませるためには、混合物に高温高圧を加える工程が必要であるが、この工程においてオートクレーブを用いることによって、安全かつ自由に高温高圧を加えることができ、一次粒子の表面全面に表面修飾剤を反応付加させることができる。
このようにして、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に反応性を向上させることができる微細無機粒子の表面修飾方法となる。
【0032】
請求項11の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、有機溶媒がn−ヘキサンである。上述の如く、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素、キシレン等の芳香族炭化水素、等を用いることができるが、これらの中でもn−ヘキサン(ノルマルヘキサン、直鎖脂肪族炭化水素)は臨界温度及び臨界圧力が最も低く、最も容易に超臨界状態とすることができる。
このようにして、最も容易に有機溶媒を超臨界状態として二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることができ、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に反応性を向上させることができる微細無機粒子の表面修飾方法となる。
【0033】
請求項12の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、表面修飾剤がイソシアネート系化合物である。
上述の如く、表面修飾剤としては、イソシアネート系化合物、アミン系化合物、ビニル系化合物、エポキシ系化合物、メタクリロキシ系化合物、アクリル系化合物、イミド系化合物、アルキル基を有する化合物、アリール基を有する化合物、等を用いることができるが、これらの中でもイソシアネート系化合物は入手が容易で反応性が良く、得られる表面修飾粒子の分散性及び反応性にも優れているという特徴を有する。
このようなイソシアネート系の表面修飾剤を、微細無機粒子の表面に存在する水酸基(−OH)を介して付加させ、微細無機粒子の全表面をイソシアネート系の表面修飾剤でコーティングすることによって、再凝集を防止することができて分散性が向上し、また有機樹脂中に混合する場合にも有機樹脂の活性基とイソシアネート基とが反応することによって、有機樹脂と微細無機粒子との強固な結合が得られる。
このようにして、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に反応性を向上させることができる微細無機粒子の表面修飾方法となる。
【0034】
請求項13の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、表面修飾剤がアルキル基を有する化合物である。
このように、表面修飾剤としてアルキル基を有する化合物を用いることによって、アルキル基を有する化合物は入手が容易で反応性が良く、得られる表面修飾粒子の分散性及び反応性にも優れているという利点を有する。
このようなアルキル基を有する表面修飾剤を、微細無機粒子の表面に存在する水酸基(−OH)を介して付加させ、微細無機粒子の全表面をアルキル基を有する表面修飾剤でコーティングすることによって、再凝集を防止することができて分散性が向上し、また有機樹脂中に混合する場合にも有機樹脂とアルキル基とは相溶性が良いため、有機樹脂中に微細無機粒子が均一に分散する。
このようにして、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に分散性を向上させることができる微細無機粒子の表面修飾方法となる。
【0035】
請求項14の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、表面修飾剤がアリール基を有する化合物である。
このように、表面修飾剤としてアリール基を有する化合物を用いることによって、アリール基を有する化合物は入手が容易で反応性が良く、得られる表面修飾粒子の分散性及び反応性にも優れているという利点を有する。
このようなアリール基を有する表面修飾剤を、微細無機粒子の表面に存在する水酸基(−OH)を介して付加させ、微細無機粒子の全表面をアリール基を有する表面修飾剤でコーティングすることによって、再凝集を防止することができて分散性が向上し、また有機樹脂、特に芳香族系の有機樹脂中に混合する場合にも芳香族系の有機樹脂とアリール基とは相溶性が良いため、芳香族系の有機樹脂中に微細無機粒子が均一に分散する。また、トルエン、キシレン、等の芳香族炭化水素溶媒に分散させる場合にも、極めて良好な分散性を得ることができる。
このようにして、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に分散性を向上させることができる微細無機粒子の表面修飾方法となる。
【0036】
請求項15の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、表面修飾剤がUV官能基を有する化合物である。
このようなUV官能基を有する表面修飾剤を、微細無機粒子の表面に存在する水酸基(−OH)を介して付加させ、微細無機粒子の全表面をUV官能基を有する表面修飾剤でコーティングすることによって、再凝集を防止することができて分散性が向上し、また有機樹脂中に混合する場合にも有機樹脂とUV官能基とは相溶性が良いため、有機樹脂中に微細無機粒子が均一に分散する。
そして、微細無機粒子の全表面をUV官能基を有する表面修飾剤でコーティングすることによって、紫外線(UV)照射による三次元架橋反応を起こさせることができ、三次元架橋体を得ることができる。
このようにして、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に分散性を向上させることができ、三次元架橋体を得ることができる微細無機粒子の表面修飾方法となる。
【0037】
請求項16の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、微細無機粒子が20nm〜130nmの外径を有するシリカ殻からなる中空粒子である。
近年、シリカ殻からなるナノ中空粒子についての研究開発が盛んに行われており、その製造方法もほぼ確立しているが、20nm〜130nmの外径を有するシリカ殻からなるナノ中空粒子も、中実微細粒子と同様に凝集し易く分散が困難であり、ナノ中空粒子としての特性を生かした応用がしづらいという問題点を有している。
そこで、中実微細粒子と同様に、シリカ殻からなるナノ中空粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えてなる混合物に高温高圧を加えて有機溶媒の超臨界状態とすることによって、有機溶媒が表面修飾剤とともに二次粒子の中に自由に入り込んで、一次粒子の表面全面に表面修飾剤が反応付加することで、凝集が解けて微細無機粒子の表面が表面修飾剤で覆われた表面修飾粒子が一次粒子として分散し易くなり、また有機樹脂等に分散させる場合には、表面修飾剤の活性基が有機樹脂等の活性基と反応結合して、強固な分散状態を形成する。
このようにして、シリカ殻からなるナノ中空粒子についても、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に反応性を向上させることができる微細無機粒子の表面修飾方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0039】
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図1乃至図3を参照して説明する。
【0040】
図1は本発明の実施の形態1にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。図2は本発明の実施の形態1にかかる表面修飾粒子の応用方法の実施例1を示す模式図である。図3は本発明の実施の形態1にかかる表面修飾粒子の応用方法の実施例2を示す模式図である。
【0041】
図1に示されるように、本実施の形態1にかかる表面修飾粒子3においては、微細無機粒子1として平均粒径40nmのコロイダルシリカを用いており、表面修飾剤2としてトリエトキシプロピルイソシアネートシラン(以下、「TEIS」とも言う。)を用いている。コロイダルシリカ1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図1においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0042】
これに対して、表面修飾剤としてのTEIS2を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているコロイダルシリカ1の間に自由に入り込んで、TEIS2のエトキシ基の3つ全部がコロイダルシリカ1の表面の水酸基と縮合反応し、コロイダルシリカ1の表面に結合する。
【0043】
このようにして、コロイダルシリカ1の表面の無数の水酸基とTEIS2が反応することによって、図1に示されるように、コロイダルシリカ1の表面がTEIS2で覆われて、本実施の形態1にかかる表面修飾粒子3が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたコロイダルシリカ1が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、イソシアネート基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子3となる。
【0044】
かかる表面修飾粒子3の応用の具体例の実施例1について、図2を参照して説明する。図2に示されるように、イソシアネート基を有する本実施の形態1にかかる表面修飾粒子3を有機樹脂5中に分散させると、有機樹脂5の活性基(ここでは水酸基)とイソシアネート基が反応して、ウレタン結合を有するコロイダルシリカ1と有機樹脂5との結合体6が形成されて、表面修飾粒子3が有機樹脂5中に均一にかつ強固に分散される。
【0045】
次に、表面修飾粒子3の応用の具体例の実施例2について、図3を参照して説明する。図3に示されるように、イソシアネート基を有する本実施の形態1にかかる表面修飾粒子3を無機微粒子8と反応させると、無機微粒子8の表面の水酸基とイソシアネート基が反応して、ウレタン結合を有するコロイダルシリカ1と無機微粒子8との結合体が形成されて、コロイダルシリカ1の表面が均一にかつ強固に無機微粒子8で覆われた複合体10が形成される。
【0046】
このようにして、本実施の形態1にかかる表面修飾粒子3は、約10nmから約300nmの範囲内の粒子径(平均粒径40nm)を有する微細無機粒子としてのコロイダルシリカ1に、有機溶媒としてのn−ヘキサン及び表面修飾剤としてのTEIS2を加えてなる混合物に高温高圧を加えてn−ヘキサンの超臨界状態とすることによって、n−ヘキサンがTEIS2とともに二次粒子の中に自由に入り込んで、一次粒子の表面全面にTEIS2が反応付加することで、凝集が解けてコロイダルシリカ1の表面がTEIS2で覆われた表面修飾粒子3が一次粒子として分散し易くなり、また有機樹脂5等に分散させる場合には、TEIS2の活性基であるイソシアネート基が有機樹脂5等の活性基と反応結合して、強固な分散状態を形成する。
【0047】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図4及び図5を参照して説明する。
【0048】
図4は本発明の実施の形態2にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法並びに表面修飾粒子の応用例を示す模式図である。図5は本発明の実施の形態2にかかる表面修飾粒子のIR(赤外分光吸収)スペクトルを未修飾粒子及びコーティング粒子と比較して示す図である。
【0049】
図4に示されるように、本実施の形態2にかかる表面修飾粒子12においては、微細無機粒子として粒径約50nm〜約100nmのシリカ殻からなる中空粒子11を用いており、表面修飾剤としては、実施の形態1と同様にトリエトキシプロピルイソシアネートシラン(TEIS)2を用いている。シリカ殻からなる中空粒子11の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図4においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0050】
これに対して、表面修飾剤としてのTEIS2を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているシリカ殻からなる中空粒子11の間に自由に入り込んで、TEIS2のエトキシ基の3つ全部がシリカ殻からなる中空粒子11の表面の水酸基と縮合反応し、シリカ殻からなる中空粒子11の表面に結合する。
【0051】
このようにして、シリカ殻からなる中空粒子11の表面の無数の水酸基とTEIS2が反応することによって、図4に示されるように、シリカ殻からなる中空粒子11の表面がTEIS2で覆われて、本実施の形態2にかかる表面修飾粒子12が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたシリカ殻からなる中空粒子11が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、イソシアネート基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子12となる。
【0052】
かかる表面修飾粒子12の応用の具体例について、さらに図4を参照して説明する。図4に示されるように、イソシアネート基を有する本実施の形態2にかかる表面修飾粒子12を、キシレン溶媒中でブロック(BL)の外れる温度(硬化温度)においてブロック型ポリイソシアネート13と反応させる。
【0053】
その結果、ブロック型ポリイソシアネート13のブロック(BL)が外れて、イソシアネート基と表面修飾粒子12のイソシアネート基とが反応して、ウレタン結合を有するシリカ殻からなる中空粒子11とポリイソシアネート14との結合体6が形成されて、表面修飾粒子12がポリイソシアネート14で均一にかつ強固にコーティングされたコーティング中空シリカ粒子15が形成される。
【0054】
図5は、本実施の形態2にかかる表面修飾粒子12のIR(赤外分光吸収)スペクトルを、未修飾粒子(シリカ殻からなる中空粒子)11及びコーティング中空シリカ粒子15と比較して示したものである。図5に示されるように、未修飾粒子11にはシリカ表面の無数の水酸基によるSi−OH結合による吸収が表れているのに対して、表面修飾粒子12においてはSi−OH結合による吸収は消滅して、TEIS2に存在する−CH2 −結合及びイソシアネート基(−N=C=O)による吸収が非常に顕著に表れている。
【0055】
さらに、コーティング中空シリカ粒子15においては、表面修飾粒子12とブロック型ポリイソシアネート13のイソシアネート基同士が結合するためイソシアネート基(−N=C=O)による吸収のピーク高さがやや低くなり、代わりにイソシアネート基が水と反応して生ずるカルバミン酸由来の−OH基、−NH−基、C=O基の吸収が大きくなっている。
【0056】
このようにして、本実施の形態2にかかる表面修飾粒子12においては、n−ヘキサンの超臨界状態において、シリカ殻からなる中空粒子11の表面の無数の水酸基とTEIS2を反応させることによって、シリカ殻からなる中空粒子11の表面がTEIS2で覆われる。これによって、二次粒子として凝集していたシリカ殻からなる中空粒子11が分散して一次粒子となり、凝集し難くなり、分散が容易となる。
【0057】
さらに、本実施の形態2にかかる表面修飾粒子12を、キシレン溶媒中でブロックの外れる温度(硬化温度)においてブロック型ポリイソシアネート13と反応させることによって、ブロック型ポリイソシアネート13のブロックが外れて、イソシアネート基と表面修飾粒子12のイソシアネート基とが反応して、ウレタン結合を有するシリカ殻からなる中空粒子11とポリイソシアネート14との結合体6が形成されて、表面修飾粒子12がポリイソシアネート14で均一にかつ強固にコーティングされたコーティング中空シリカ粒子15が形成される。
【0058】
実施の形態3
次に、本発明の実施の形態3にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図6を参照して説明する。図6は本発明の実施の形態3にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【0059】
図6に示されるように、本実施の形態3にかかる表面修飾粒子18においては、微細無機粒子として、実施の形態1と同様に平均粒径40nmのコロイダルシリカ1を用いており、表面修飾剤としてアミノ系化合物である3−アミノプロピルトリエトキシシラン(以下、「TEAS」とも言う。)17を用いている。コロイダルシリカ1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図6においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0060】
これに対して、表面修飾剤としてのTEAS17を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているコロイダルシリカ1の間に自由に入り込んで、TEAS17のエトキシ基の3つ全部がコロイダルシリカ1の表面の水酸基と縮合反応し、コロイダルシリカ1の表面に結合する。
【0061】
このようにして、コロイダルシリカ1の表面の無数の水酸基とTEAS17が反応することによって、図6に示されるように、コロイダルシリカ1の表面がTEAS17で覆われて、本実施の形態3にかかる表面修飾粒子18が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたコロイダルシリカ1が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、アミノ基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子18となる。
【0062】
実施の形態4
次に、本発明の実施の形態4にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図7を参照して説明する。図7は本発明の実施の形態4にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【0063】
図7に示されるように、本実施の形態4にかかる表面修飾粒子23においては、微細無機粒子として、実施の形態1,3と同様に平均粒径40nmのコロイダルシリカ1を用いており、表面修飾剤としてビニル系化合物であるビニルトリエトキシシラン22を用いている。コロイダルシリカ1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図7においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0064】
これに対して、表面修飾剤としてのビニルトリエトキシシラン22を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているコロイダルシリカ1の間に自由に入り込んで、ビニルトリエトキシシラン22のエトキシ基の3つ全部がコロイダルシリカ1の表面の水酸基と縮合反応し、コロイダルシリカ1の表面に結合する。
【0065】
このようにして、コロイダルシリカ1の表面の無数の水酸基とビニルトリエトキシシラン22が反応することによって、図7に示されるように、コロイダルシリカ1の表面がビニルトリエトキシシラン22で覆われて、本実施の形態4にかかる表面修飾粒子23が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたコロイダルシリカ1が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、ビニル基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子23となる。
【0066】
また、ビニル基は紫外線(UV)に反応するUV官能基であるため、本実施の形態4にかかる表面修飾粒子23を用いることによって、紫外線に反応して硬化する表面修飾粒子23として、種々の用途に応用することができる。
【0067】
実施の形態5
次に、本発明の実施の形態5にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図8を参照して説明する。図8は本発明の実施の形態5にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【0068】
図8に示されるように、本実施の形態5にかかる表面修飾粒子26においては、微細無機粒子として、実施の形態1,3,4と同様に平均粒径40nmのコロイダルシリカ1を用いており、表面修飾剤としてエポキシ系化合物である3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン25を用いている。コロイダルシリカ1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図8においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0069】
これに対して、表面修飾剤としての3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン25を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているコロイダルシリカ1の間に自由に入り込んで、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン25のエトキシ基の3つ全部がコロイダルシリカ1の表面の水酸基と縮合反応し、コロイダルシリカ1の表面に結合する。
【0070】
このようにして、コロイダルシリカ1の表面の無数の水酸基と3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン25が反応することによって、図8に示されるように、コロイダルシリカ1の表面が3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン25で覆われて、本実施の形態5にかかる表面修飾粒子26が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたコロイダルシリカ1が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、エポキシ基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子26となる。
【0071】
実施の形態6
次に、本発明の実施の形態6にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図9を参照して説明する。図9は本発明の実施の形態6にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【0072】
図9に示されるように、本実施の形態6にかかる表面修飾粒子28においては、微細無機粒子として、実施の形態2と同様に粒径約50nm〜約100nmのシリカ殻からなる中空粒子11を用いており、表面修飾剤としては、実施の形態5と同様にエポキシ系化合物である3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン25を用いている。シリカ殻からなる中空粒子11の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図9においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0073】
これに対して、表面修飾剤としての3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン25を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているシリカ殻からなる中空粒子11の間に自由に入り込んで、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン25のエトキシ基の3つ全部がシリカ殻からなる中空粒子11の表面の水酸基と縮合反応し、シリカ殻からなる中空粒子11の表面に結合する。
【0074】
このようにして、シリカ殻からなる中空粒子11の表面の無数の水酸基と3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン25が反応することによって、図9に示されるように、シリカ殻からなる中空粒子11の表面が3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン25で覆われて、本実施の形態6にかかる表面修飾粒子28が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたシリカ殻からなる中空粒子11が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、エポキシ基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子28となる。
【0075】
実施の形態7
次に、本発明の実施の形態7にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図10を参照して説明する。図10は本発明の実施の形態7にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【0076】
図10に示されるように、本実施の形態7にかかる表面修飾粒子31においては、微細無機粒子として、実施の形態1,3,4,5と同様に平均粒径40nmのコロイダルシリカ1を用いており、表面修飾剤としてメタクリロキシ系化合物である3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン30を用いている。コロイダルシリカ1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図10においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0077】
これに対して、表面修飾剤としての3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン30を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているコロイダルシリカ1の間に自由に入り込んで、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン30のエトキシ基の3つ全部がコロイダルシリカ1の表面の水酸基と縮合反応し、コロイダルシリカ1の表面に結合する。
【0078】
このようにして、コロイダルシリカ1の表面の無数の水酸基と3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン30が反応することによって、図10に示されるように、コロイダルシリカ1の表面が3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン30で覆われて、本実施の形態7にかかる表面修飾粒子31が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたコロイダルシリカ1が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、メタクリロキシ基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子31となる。
【0079】
実施の形態8
次に、本発明の実施の形態8にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図11を参照して説明する。図11は本発明の実施の形態8にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【0080】
図11に示されるように、本実施の形態8にかかる表面修飾粒子33においては、微細無機粒子として、実施の形態1,3,4,5,7と同様に平均粒径40nmのコロイダルシリカ1を用いており、表面修飾剤としてアルキル基を有する化合物であるブチルトリエトキシシラン32を用いている。コロイダルシリカ1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図11においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0081】
これに対して、表面修飾剤としてのブチルトリエトキシシラン32を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているコロイダルシリカ1の間に自由に入り込んで、ブチルトリエトキシシラン32のエトキシ基の3つ全部がコロイダルシリカ1の表面の水酸基と縮合反応し、コロイダルシリカ1の表面に結合する。
【0082】
このようにして、コロイダルシリカ1の表面の無数の水酸基とブチルトリエトキシシラン32が反応することによって、図11に示されるように、コロイダルシリカ1の表面がブチルトリエトキシシラン32で覆われて、本実施の形態8にかかる表面修飾粒子33が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたコロイダルシリカ1が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、アルキル基であるブチル基が有機樹脂と相溶性が良いため有機樹脂中に均一に分散することによって、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子33となる。
【0083】
実施の形態9
次に、本発明の実施の形態9にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図12を参照して説明する。図12は本発明の実施の形態9にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【0084】
図12に示されるように、本実施の形態9にかかる表面修飾粒子35においては、微細無機粒子として、実施の形態1,3,4,5,7,8と同様に平均粒径40nmのコロイダルシリカ1を用いており、表面修飾剤としてアクリル系化合物である3−アクリル酸プロピルトリエトキシシラン34を用いている。コロイダルシリカ1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図12においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0085】
これに対して、表面修飾剤としての3−アクリル酸プロピルトリエトキシシラン34を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているコロイダルシリカ1の間に自由に入り込んで、3−アクリル酸プロピルトリエトキシシラン34のエトキシ基の3つ全部がコロイダルシリカ1の表面の水酸基と縮合反応し、コロイダルシリカ1の表面に結合する。
【0086】
このようにして、コロイダルシリカ1の表面の無数の水酸基と3−アクリル酸プロピルトリエトキシシラン34が反応することによって、図12に示されるように、コロイダルシリカ1の表面が3−アクリル酸プロピルトリエトキシシラン34で覆われて、本実施の形態9にかかる表面修飾粒子35が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたコロイダルシリカ1が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、有機酸であるアクリル酸基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子35となる。
【0087】
実施の形態10
次に、本発明の実施の形態10にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図13を参照して説明する。図13は本発明の実施の形態10にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【0088】
図13に示されるように、本実施の形態10にかかる表面修飾粒子37においては、微細無機粒子として、実施の形態1,3,4,5,7,8,9と同様に平均粒径40nmのコロイダルシリカ1を用いており、表面修飾剤としてイミド系化合物である3−イミドプロピルトリエトキシシラン36を用いている。コロイダルシリカ1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図13においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0089】
これに対して、表面修飾剤としての3−イミドプロピルトリエトキシシラン36を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているコロイダルシリカ1の間に自由に入り込んで、3−イミドプロピルトリエトキシシラン36のエトキシ基の3つ全部がコロイダルシリカ1の表面の水酸基と縮合反応し、コロイダルシリカ1の表面に結合する。
【0090】
このようにして、コロイダルシリカ1の表面の無数の水酸基と3−イミドプロピルトリエトキシシラン36が反応することによって、図13に示されるように、コロイダルシリカ1の表面が3−イミドプロピルトリエトキシシラン36で覆われて、本実施の形態10にかかる表面修飾粒子37が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたコロイダルシリカ1が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、イミド基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子37となる。
【0091】
実施の形態11
次に、本発明の実施の形態11にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図14を参照して説明する。図14は本発明の実施の形態11にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【0092】
図14に示されるように、本実施の形態11にかかる表面修飾粒子39においては、微細無機粒子として、実施の形態1,3,4,5,7,8,9,10と同様に平均粒径40nmのコロイダルシリカ1を用いており、表面修飾剤としてアリール基としてのフェニル基を有する化合物である3−フェニルプロピルトリエトキシシラン38を用いている。コロイダルシリカ1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図14においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0093】
これに対して、表面修飾剤としての3−フェニルプロピルトリエトキシシラン38を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているコロイダルシリカ1の間に自由に入り込んで、3−フェニルプロピルトリエトキシシラン38のエトキシ基の3つ全部がコロイダルシリカ1の表面の水酸基と縮合反応し、コロイダルシリカ1の表面に結合する。
【0094】
このようにして、コロイダルシリカ1の表面の無数の水酸基と3−フェニルプロピルトリエトキシシラン38が反応することによって、図14に示されるように、コロイダルシリカ1の表面が3−フェニルプロピルトリエトキシシラン38で覆われて、本実施の形態11にかかる表面修飾粒子39が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたコロイダルシリカ1が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、フェニル基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子39となる。
【0095】
特に芳香族系の有機樹脂中に混合する場合には、芳香族系の有機樹脂とフェニル基とは相溶性が良いため、芳香族系の有機樹脂中に表面修飾粒子39が均一に分散する。また、フェニル基は、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒と極めて相溶性が良いため、トルエン、キシレン等の有機溶媒中への均一分散が行い易い表面修飾粒子39となる。
【0096】
実施の形態12
次に、本発明の実施の形態12にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図15を参照して説明する。図15は本発明の実施の形態12にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
図15に示されるように、本実施の形態12にかかる表面修飾粒子41においては、微細無機粒子として実施の形態2,6と同様に粒径約50nm〜約100nmのシリカ殻からなる中空粒子11を用いており、表面修飾剤としては、メチルトリエトキシシラン40を用いている。シリカ殻からなる中空粒子11の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図15においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0097】
これに対して、表面修飾剤としてのメチルトリエトキシシラン40を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているシリカ殻からなる中空粒子11の間に自由に入り込んで、メチルトリエトキシシラン40のエトキシ基の3つ全部がシリカ殻からなる中空粒子11の表面の水酸基と縮合反応し、シリカ殻からなる中空粒子11の表面に結合する。
【0098】
このようにして、シリカ殻からなる中空粒子11の表面の無数の水酸基とメチルトリエトキシシラン40が反応することによって、図15に示されるように、シリカ殻からなる中空粒子11の表面がメチルトリエトキシシラン40で覆われて、本実施の形態12にかかる表面修飾粒子41が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたシリカ殻からなる中空粒子11が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、メチル基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子41となる。
【0099】
実施の形態13
次に、本発明の実施の形態13にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図16を参照して説明する。図16は本発明の実施の形態13にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【0100】
図16に示されるように、本実施の形態13にかかる表面修飾粒子45においては、微細無機粒子として、実施の形態1,3,4,5,7,8,9,10,11と同様に平均粒径40nmのコロイダルシリカ1を用いており、表面修飾剤として3−パラ−スチリルプロピルトリメトキシシラン44を用いている。コロイダルシリカ1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図16においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0101】
これに対して、表面修飾剤としての3−パラ−スチリルプロピルトリメトキシシラン44を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているコロイダルシリカ1の間に自由に入り込んで、3−パラ−スチリルプロピルトリメトキシシラン44のメトキシ基の3つ全部がコロイダルシリカ1の表面の水酸基と縮合反応し、コロイダルシリカ1の表面に結合する。
【0102】
このようにして、コロイダルシリカ1の表面の無数の水酸基と3−パラ−スチリルプロピルトリメトキシシラン44が反応することによって、図16に示されるように、コロイダルシリカ1の表面が3−パラ−スチリルプロピルトリメトキシシラン44で覆われて、本実施の形態13にかかる表面修飾粒子45が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたコロイダルシリカ1が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、スチリル基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子45となる。
【0103】
特に芳香族系の有機樹脂中に混合する場合には、芳香族系の有機樹脂とスチリル基とは相溶性が良いため、芳香族系の有機樹脂中に表面修飾粒子45が均一に分散する。また、スチリル基は、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒と極めて相溶性が良いため、トルエン、キシレン等の有機溶媒中への均一分散が行い易い表面修飾粒子45となる。 また、スチリル基は紫外線(UV)に反応するUV官能基であるため、本実施の形態13にかかる表面修飾粒子45を用いることによって、紫外線に反応して硬化する表面修飾粒子45として、種々の用途に応用することができる。
【0104】
実施の形態14
次に、本発明の実施の形態14にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図17を参照して説明する。図17(a)は本発明の実施の形態14にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図、(b)は本発明の実施の形態14にかかる表面修飾粒子の紫外線照射反応による応用を示す模式図である。
【0105】
図17(a)に示されるように、本実施の形態14にかかる表面修飾粒子48においては、微細無機粒子として実施の形態2,6,12と同様に粒径約50nm〜約100nmのシリカ殻からなる中空粒子11を用いており、表面修飾剤としては、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン47を用いている。シリカ殻からなる中空粒子11の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図17においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0106】
これに対して、表面修飾剤としてのアクリロキシプロピルトリメトキシシラン47を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているシリカ殻からなる中空粒子11の間に自由に入り込んで、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン47のメトキシ基の3つ全部がシリカ殻からなる中空粒子11の表面の水酸基と縮合反応し、シリカ殻からなる中空粒子11の表面に結合する。
【0107】
このようにして、シリカ殻からなる中空粒子11の表面の無数の水酸基とアクリロキシプロピルトリメトキシシラン47が反応することによって、図17(a)に示されるように、シリカ殻からなる中空粒子11の表面がアクリロキシプロピルトリメトキシシラン47で覆われて、本実施の形態14にかかる表面修飾粒子48が形成される。
【0108】
これによって、二次粒子として凝集していたシリカ殻からなる中空粒子11が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、アクリロキシ基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子48となる。また、アクリロキシ基は紫外線(UV)に反応するUV官能基であるため、本実施の形態14にかかる表面修飾粒子48を用いることによって、紫外線に反応して硬化する表面修飾粒子48として、種々の用途に応用することができる。
【0109】
このように製造された表面修飾粒子48に対して、図17(b)に示されるように、多官能アクリレート化合物49とアセトフェノン系の光ラジカル重合開始剤とを加えて紫外線(UV)照射することによって、アクリロキシ基及び多官能アクリレート化合物49の二重結合がラジカル化して、ラジカル連鎖反応によって三次元架橋反応が起こり、三次元架橋体50が形成される。このようにして、UV官能基であるアクリロキシ基を有する表面修飾粒子48を用いることによって、紫外線(UV)照射により三次元架橋体50を形成することができる。
【0110】
実施の形態15
次に、本発明の実施の形態15にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図18を参照して説明する。図18(a)は本発明の実施の形態15にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図、(b)は本発明の実施の形態15にかかる表面修飾粒子の紫外線照射反応による応用を示す模式図である。
【0111】
図18(a)に示されるように、本実施の形態15にかかる表面修飾粒子52においては、微細無機粒子として実施の形態2,6,12,14と同様に粒径約50nm〜約100nmのシリカ殻からなる中空粒子11を用いており、表面修飾剤としては、メチルトリメトキシシラン51を用いている。シリカ殻からなる中空粒子11の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図18(a)においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち1つのみを示している。
【0112】
これに対して、表面修飾剤としてのメチルトリメトキシシラン51を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているシリカ殻からなる中空粒子11の間に自由に入り込んで、メチルトリメトキシシラン51の3つのメトキシ基のうち1つがシリカ殻からなる中空粒子11の表面の水酸基と縮合反応し、シリカ殻からなる中空粒子11の表面に結合する。他の2つのメトキシ基は、メチルトリメトキシシラン51同士で反応して、図18(a)に示されるような表面修飾粒子52が形成される。
【0113】
このようにして、シリカ殻からなる中空粒子11の表面の無数の水酸基とメチルトリメトキシシラン51が反応することによって、図18(a)に示されるように、シリカ殻からなる中空粒子11の表面がメチルトリメトキシシラン51で覆われて、本実施の形態15にかかる表面修飾粒子52が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたシリカ殻からなる中空粒子11が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、メチル基、メトキシ基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、更に有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子52となる。
【0114】
このように製造された表面修飾粒子52に対して、図18(b)に示されるように、多官能アルコキシシラン化合物53とスルホニウム塩系の光カチオン重合開始剤とを加えて紫外線(UV)照射することによって、光カチオン重合開始剤からプロトン酸が発生して、多官能アルコキシシラン化合物53のアルコキシシリル基が加水分解されてシラノール基が発生する。これによって三次元架橋反応が起こり、三次元架橋体54が形成される。このようにして、UV官能基であるメトキシ基を有する表面修飾粒子52を用いることによって、紫外線(UV)照射により三次元架橋体54を形成することができる。
【0115】
上記各実施の形態においては、微細無機粒子として、コロイダルシリカ1及びシリカ殻からなる中空粒子11を表面修飾した場合についてのみ説明したが、これらに限られるものではなく、約10nmから約300nmの範囲内の粒子径を有する微細無機粒子であれば、種々の微細無機粒子を表面修飾して表面修飾粒子とすることができる。
【0116】
また、上記各実施の形態においては、有機溶媒としてn−ヘキサンを用いた場合についてのみ説明したが、これに限られるものではなく、他の有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール、キシレン等の芳香族炭化水素、等を用いることができる。
【0117】
本発明を実施するに際しては、表面修飾粒子のその他の部分の構成、成分、形状、数量、材質、大きさ、製造方法等についても、また微細無機粒子の表面修飾方法のその他の工程についても、上記各実施の形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】図1は本発明の実施の形態1にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態1にかかる表面修飾粒子の応用方法の実施例1を示す模式図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態1にかかる表面修飾粒子の応用方法の実施例2を示す模式図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態2にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法並びに表面修飾粒子の応用例を示す模式図である。
【図5】図5は本発明の実施の形態2にかかる表面修飾粒子のIR(赤外分光吸収)スペクトルを未修飾粒子及びコーティング粒子と比較して示す図である。
【図6】図6は本発明の実施の形態3にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【図7】図7は本発明の実施の形態4にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【図8】図8は本発明の実施の形態5にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【図9】図9は本発明の実施の形態6にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【図10】図10は本発明の実施の形態7にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【図11】図11は本発明の実施の形態8にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【図12】図12は本発明の実施の形態9にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【図13】図13は本発明の実施の形態10にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【図14】図14は本発明の実施の形態11にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【図15】図15は本発明の実施の形態12にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【図16】図16は本発明の実施の形態13にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【図17】図17(a)は本発明の実施の形態14にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図、(b)は本発明の実施の形態14にかかる表面修飾粒子の紫外線照射反応による応用を示す模式図である。
【図18】図18(a)は本発明の実施の形態15にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図、(b)は本発明の実施の形態15にかかる表面修飾粒子の紫外線照射反応による応用を示す模式図である。
【符号の説明】
【0119】
1 微細無機粒子
2,17,22,25,30,32,34,36,38,40,44,47,51 表面修飾剤
3,12,18,23,26,28,31,33,35,37,39,41,45,48,52 表面修飾粒子
11 シリカ殻からなるナノ中空粒子
15 コーティング中空シリカ粒子
【技術分野】
【0001】
本発明は、約10nmから約300nmまでの範囲の外径を有する微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に反応性を向上させることができる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノテクノロジー研究の一環として、数百ナノメートル以下の粒子径を有する微粒子についての応用研究が盛んに行われている。かかる微粒子は、一次粒子としては製造が可能であるが、微細な粒子であるが故に凝集し易く、放置しておくとミクロンサイズの二次粒子に凝集してしまう。このため、一次粒子として分散し易くするために、一次粒子の表面を修飾することが望まれていた。また、かかる微粒子を応用した技術を実用化するためには、微粒子の表面に強固な結合を介して有機修飾することが要請されている。
【0003】
そこで、特許文献1においては、ナノサイズの微粒子の表面を炭化水素を始めとする有機化合物で修飾することによってかかる要請に応えるべく、高温高圧水、特に超臨界状態にある水を反応場として微粒子の表面に炭化水素等を強結合させる技術について開示している。また、特許文献2においては、インクジェット用記録材料においてインク受容層のシリカ微粒子の一次平均粒径が10nm〜50nmであり、かつ親水性バインダーとして少なくともゼラチンを含有するインクジェット用記録材料の発明について開示している。
【特許文献1】特開2005−194148号公報
【特許文献2】特開2002−264482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術においては、超臨界状態にある水を反応場として微粒子の表面に炭化水素等を強結合させるため、極めて高温高圧を必要とし、微粒子の表面修飾方法として実用的ではないという問題点があった。また、上記特許文献2に記載の技術においては、凝集して二次粒子となっている気相法シリカを100nm〜500nm程度の二次粒子になるまで超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で粉砕・分散させるものであり、一次粒子として分散し易くするものではない。
【0005】
そこで、本発明は、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、反応性を向上させることができる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明にかかる表面修飾粒子は、約10nmから約300nmの範囲内の粒子径を有する微細無機粒子を表面修飾した表面修飾粒子であって、前記微細無機粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えて混合物を作製し、前記混合物に高温高圧を加えて前記有機溶媒の超臨界状態として、前記微細無機粒子の表面に前記表面修飾剤を反応付加させてなるものである。
【0007】
請求項2の発明にかかる表面修飾粒子は、請求項1の構成において、オートクレーブを用いて前記混合物に高温高圧を加えて前記有機溶媒の超臨界状態とするものである。
【0008】
請求項3の発明にかかる表面修飾粒子は、請求項1または請求項2の構成において、前記有機溶媒はn−ヘキサンであるものである。
【0009】
請求項4の発明にかかる表面修飾粒子は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、前記表面修飾剤はイソシアネート系化合物であるものである。
ここで、「イソシアネート系化合物」とは、イソシアネート基(−N=C=O)を1つ以上有する化合物を意味する。
【0010】
請求項5の発明にかかる表面修飾粒子は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つの構成において、前記表面修飾剤はアルキル基を有する化合物であるものである。
ここで、「アルキル基」とは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、を始めとする脂肪族炭化水素基を意味する。
【0011】
請求項6の発明にかかる表面修飾粒子は、請求項1乃至請求項5のいずれか1つの構成において、前記表面修飾剤はアリール基を有する化合物であるものである。
ここで、「アリール基」とは、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、ジュリル基、アニシル基、ナフチル基、を始めとする芳香族炭化水素基を意味する。
【0012】
請求項7の発明にかかる表面修飾粒子は、請求項1乃至請求項6のいずれか1つの構成において、前記表面修飾剤はUV官能基を有する化合物であるものである。
ここで、「UV官能基」とは、ビニル基、スチリル基、アクリル基、を始めとする紫外線(UV)に反応する官能基を意味する。
【0013】
請求項8の発明にかかる表面修飾粒子は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つの構成において、前記微細無機粒子は20nm〜130nmの外径を有するシリカ殻からなる中空粒子であるものである。
【0014】
請求項9の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、約10nmから約300nmの範囲内の粒子径を有する微細無機粒子の表面修飾方法であって、前記微細無機粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えて混合物を作製する工程と、前記混合物に高温高圧を加えることによって前記有機溶媒の超臨界状態として前記微細無機粒子の表面に前記表面修飾剤を反応付加させる工程とを具備するものである。
【0015】
請求項10の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、請求項9の構成において、前記混合物に高温高圧を加える工程はオートクレーブを用いて行うものである。
【0016】
請求項11の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、請求項9または請求項10の構成において、前記有機溶媒はn−ヘキサンであるものである。
【0017】
請求項12の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、請求項9乃至請求項11のいずれか1つの構成において、前記表面修飾剤はイソシアネート系化合物であるものである。
【0018】
請求項13の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、請求項9乃至請求項12のいずれか1つの構成において、前記表面修飾剤はアルキル基を有する化合物であるものである。
【0019】
請求項14の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、請求項9乃至請求項13のいずれか1つの構成において、前記表面修飾剤はアリール基を有する化合物であるものである。
【0020】
請求項15の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、請求項9乃至請求項14のいずれか1つの構成において、前記表面修飾剤はUV官能基を有する化合物であるものである。
【0021】
請求項16の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、請求項9乃至請求項15のいずれか1つの構成において、前記微細無機粒子は20nm〜130nmの外径を有するシリカ殻からなる中空粒子であるものである。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明にかかる表面修飾粒子は、約10nmから約300nmの範囲内の粒子径を有する微細無機粒子を表面修飾した表面修飾粒子であって、微細無機粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えて混合物を作製し、混合物に高温高圧を加えて有機溶媒の超臨界状態として、微細無機粒子の表面に表面修飾剤を反応付加させてなる。
ここで、「有機溶媒」としては、メタノール、エタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素、キシレン等の芳香族炭化水素、等を用いることができる。また、「表面修飾剤」としては、イソシアネート系化合物、アミン系化合物、ビニル系化合物、エポキシ系化合物、メタクリロキシ系化合物、アクリル系化合物、イミド系化合物、アルキル基を有する化合物、アリール基を有する化合物、等を用いることができる。
約10nmから約300nmの範囲内の粒子径を有する微細無機粒子は、分散媒中で凝集して二次粒子を形成し易く、凝集を防いで一次粒子として分散させるためには、分散機で強力に攪拌して強引に分散させる必要があるが、それでも完全に分散させることは困難な場合が多い。
本発明にかかる表面修飾粒子は、約10nmから約300nmの範囲内の粒子径を有する微細無機粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えてなる混合物に高温高圧を加えて有機溶媒の超臨界状態とすることによって、有機溶媒が表面修飾剤とともに二次粒子の中に自由に入り込んで、一次粒子の表面全面に表面修飾剤が反応付加することで、凝集が解けて微細無機粒子の表面が表面修飾剤で覆われた表面修飾粒子が一次粒子として分散し易くなり、また有機樹脂等に分散させる場合には、表面修飾剤の活性基が有機樹脂等の活性基と反応結合して、強固な分散状態を形成する。
このようにして、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に反応性を向上させることができる表面修飾粒子となる。
【0023】
請求項2の発明にかかる表面修飾粒子は、オートクレーブを用いて混合物に高温高圧を加えて有機溶媒の超臨界状態とする。
有機溶媒を超臨界状態として有機溶媒を表面修飾剤とともに二次粒子の中に自由に入り込ませるためには、混合物に高温高圧を加える必要があるが、オートクレーブを用いることによって、安全かつ自由に高温高圧を加えることができ、一次粒子の表面全面に表面修飾剤を反応付加させることができる。
このようにして、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に反応性を向上させることができる表面修飾粒子となる。
【0024】
請求項3の発明にかかる表面修飾粒子は、有機溶媒がn−ヘキサンである。上述の如く、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素、キシレン等の芳香族炭化水素、等を用いることができるが、これらの中でもn−ヘキサンは臨界温度及び臨界圧力が最も低く、最も容易に超臨界状態とすることができる。
このようにして、最も容易に有機溶媒を超臨界状態として二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることができ、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に反応性を向上させることができる表面修飾粒子となる。
【0025】
請求項4の発明にかかる表面修飾粒子は、表面修飾剤がイソシアネート系化合物である。
ここで、前述の如く、「イソシアネート系化合物」とは、イソシアネート基(−N=C=O)を1つ以上もった有機化合物を意味するものであり、具体例としては、アルキル基にイソシアネート基が3個結合したトリイソシアネート化合物、トリエトキシプロピルイソシアネートシラン(TEIS)、等がある。
上述の如く、表面修飾剤としては、イソシアネート系化合物、アミン系化合物、ビニル系化合物、エポキシ系化合物、メタクリロキシ系化合物、アクリル系化合物、イミド系化合物、アルキル基を有する化合物、アリール基を有する化合物、等を用いることができるが、これらの中でもイソシアネート系化合物は入手が容易で反応性が良く、得られる表面修飾粒子の分散性及び反応性にも優れているという特徴を有する。
このようなイソシアネート系の表面修飾剤を、微細無機粒子の表面に存在する水酸基(−OH)を介して付加させ、微細無機粒子の全表面をイソシアネート系の表面修飾剤でコーティングすることによって、再凝集を防止することができて分散性が向上し、また有機樹脂中に混合する場合にも有機樹脂の活性基とイソシアネート基とが反応することによって、有機樹脂と微細無機粒子との強固な結合が得られる。
このようにして、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に反応性を向上させることができる表面修飾粒子となる。
【0026】
請求項5の発明にかかる表面修飾粒子は、表面修飾剤がアルキル基を有する化合物である。ここで、前述の如く、「アルキル基」とは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、を始めとする脂肪族炭化水素基を意味する。
このように、表面修飾剤としてアルキル基を有する化合物を用いることによって、アルキル基を有する化合物は入手が容易で反応性が良く、得られる表面修飾粒子の分散性及び反応性にも優れているという利点を有する。
このようなアルキル基を有する表面修飾剤を、微細無機粒子の表面に存在する水酸基(−OH)を介して付加させ、微細無機粒子の全表面をアルキル基を有する表面修飾剤でコーティングすることによって、再凝集を防止することができて分散性が向上し、また有機樹脂中に混合する場合にも有機樹脂とアルキル基とは相溶性が良いため、有機樹脂中に微細無機粒子が均一に分散する。
このようにして、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に分散性を向上させることができる表面修飾粒子となる。
【0027】
請求項6の発明にかかる表面修飾粒子は、表面修飾剤がアリール基を有する化合物である。ここで、前述の如く、「アリール基」とは、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、ジュリル基、アニシル基、ナフチル基、を始めとする芳香族炭化水素基を意味する。
このように、表面修飾剤としてアリール基を有する化合物を用いることによって、アリール基を有する化合物は入手が容易で反応性が良く、得られる表面修飾粒子の分散性及び反応性にも優れているという利点を有する。
このようなアリール基を有する表面修飾剤を、微細無機粒子の表面に存在する水酸基(−OH)を介して付加させ、微細無機粒子の全表面をアリール基を有する表面修飾剤でコーティングすることによって、再凝集を防止することができて分散性が向上し、また有機樹脂、特に芳香族系の有機樹脂中に混合する場合にも芳香族系の有機樹脂とアリール基とは相溶性が良いため、芳香族系の有機樹脂中に微細無機粒子が均一に分散する。また、トルエン、キシレン、等の芳香族炭化水素溶媒に分散させる場合にも、極めて良好な分散性を得ることができる。
このようにして、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に分散性を向上させることができる表面修飾粒子となる。
【0028】
請求項7の発明にかかる表面修飾粒子は、表面修飾剤がUV官能基を有する化合物である。ここで、前述の如く、「UV官能基」とは、ビニル基、スチリル基、アクリル基、を始めとする紫外線(UV)に反応する官能基を意味する。
このようなUV官能基を有する表面修飾剤を、微細無機粒子の表面に存在する水酸基(−OH)を介して付加させ、微細無機粒子の全表面をUV官能基を有する表面修飾剤でコーティングすることによって、再凝集を防止することができて分散性が向上し、また有機樹脂中に混合する場合にも有機樹脂とUV官能基とは相溶性が良いため、有機樹脂中に微細無機粒子が均一に分散する。
そして、微細無機粒子の全表面をUV官能基を有する表面修飾剤でコーティングすることによって、紫外線(UV)照射による三次元架橋反応を起こさせることができ、三次元架橋体を得ることができる。
このようにして、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に分散性を向上させることができ、三次元架橋体を得ることができる表面修飾粒子となる。
【0029】
請求項8の発明にかかる表面修飾粒子は、微細無機粒子が20nm〜130nmの外径を有するシリカ殻からなる中空粒子である。
近年、シリカ殻からなるナノ中空粒子についての研究開発が盛んに行われており、その製造方法もほぼ確立しているが、20nm〜130nmの外径を有するシリカ殻からなるナノ中空粒子も、中実微細粒子と同様に凝集し易く分散が困難であり、ナノ中空粒子としての特性を生かした応用がしづらいという問題点を有している。
そこで、中実微細粒子と同様に、シリカ殻からなるナノ中空粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えてなる混合物に高温高圧を加えて有機溶媒の超臨界状態とすることによって、有機溶媒が表面修飾剤とともに二次粒子の中に自由に入り込んで、一次粒子の表面全面に表面修飾剤が反応付加することで、凝集が解けて微細無機粒子の表面が表面修飾剤で覆われた表面修飾粒子が一次粒子として分散し易くなり、また有機樹脂等に分散させる場合には、表面修飾剤の活性基が有機樹脂等の活性基と反応結合して、強固な分散状態を形成する。
このようにして、シリカ殻からなるナノ中空粒子についても、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に反応性を向上させることができる表面修飾粒子となる。
【0030】
請求項9の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、約10nmから約300nmの範囲内の粒子径を有する微細無機粒子の表面修飾方法であって、微細無機粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えて混合物を作製する工程と、混合物に高温高圧を加えることによって有機溶媒の超臨界状態として微細無機粒子の表面に表面修飾剤を反応付加させる工程とを具備する。
本発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、約10nmから約300nmの範囲内の粒子径を有する微細無機粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えてなる混合物に高温高圧を加えて有機溶媒の超臨界状態とすることによって、有機溶媒が表面修飾剤とともに二次粒子の中に自由に入り込んで、一次粒子の表面全面に表面修飾剤が反応付加することで、凝集が解けて微細無機粒子の表面が表面修飾剤で覆われた表面修飾粒子が一次粒子として分散し易くなり、また有機樹脂等に分散させる場合には、表面修飾剤の活性基が有機樹脂等の活性基と反応結合して、強固な分散状態を形成する。
このようにして、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に反応性を向上させることができる微細無機粒子の表面修飾方法となる。
【0031】
請求項10の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、混合物に高温高圧を加える工程はオートクレーブを用いて行う。
有機溶媒を超臨界状態として有機溶媒を表面修飾剤とともに二次粒子の中に自由に入り込ませるためには、混合物に高温高圧を加える工程が必要であるが、この工程においてオートクレーブを用いることによって、安全かつ自由に高温高圧を加えることができ、一次粒子の表面全面に表面修飾剤を反応付加させることができる。
このようにして、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に反応性を向上させることができる微細無機粒子の表面修飾方法となる。
【0032】
請求項11の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、有機溶媒がn−ヘキサンである。上述の如く、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素、キシレン等の芳香族炭化水素、等を用いることができるが、これらの中でもn−ヘキサン(ノルマルヘキサン、直鎖脂肪族炭化水素)は臨界温度及び臨界圧力が最も低く、最も容易に超臨界状態とすることができる。
このようにして、最も容易に有機溶媒を超臨界状態として二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることができ、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に反応性を向上させることができる微細無機粒子の表面修飾方法となる。
【0033】
請求項12の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、表面修飾剤がイソシアネート系化合物である。
上述の如く、表面修飾剤としては、イソシアネート系化合物、アミン系化合物、ビニル系化合物、エポキシ系化合物、メタクリロキシ系化合物、アクリル系化合物、イミド系化合物、アルキル基を有する化合物、アリール基を有する化合物、等を用いることができるが、これらの中でもイソシアネート系化合物は入手が容易で反応性が良く、得られる表面修飾粒子の分散性及び反応性にも優れているという特徴を有する。
このようなイソシアネート系の表面修飾剤を、微細無機粒子の表面に存在する水酸基(−OH)を介して付加させ、微細無機粒子の全表面をイソシアネート系の表面修飾剤でコーティングすることによって、再凝集を防止することができて分散性が向上し、また有機樹脂中に混合する場合にも有機樹脂の活性基とイソシアネート基とが反応することによって、有機樹脂と微細無機粒子との強固な結合が得られる。
このようにして、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に反応性を向上させることができる微細無機粒子の表面修飾方法となる。
【0034】
請求項13の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、表面修飾剤がアルキル基を有する化合物である。
このように、表面修飾剤としてアルキル基を有する化合物を用いることによって、アルキル基を有する化合物は入手が容易で反応性が良く、得られる表面修飾粒子の分散性及び反応性にも優れているという利点を有する。
このようなアルキル基を有する表面修飾剤を、微細無機粒子の表面に存在する水酸基(−OH)を介して付加させ、微細無機粒子の全表面をアルキル基を有する表面修飾剤でコーティングすることによって、再凝集を防止することができて分散性が向上し、また有機樹脂中に混合する場合にも有機樹脂とアルキル基とは相溶性が良いため、有機樹脂中に微細無機粒子が均一に分散する。
このようにして、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に分散性を向上させることができる微細無機粒子の表面修飾方法となる。
【0035】
請求項14の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、表面修飾剤がアリール基を有する化合物である。
このように、表面修飾剤としてアリール基を有する化合物を用いることによって、アリール基を有する化合物は入手が容易で反応性が良く、得られる表面修飾粒子の分散性及び反応性にも優れているという利点を有する。
このようなアリール基を有する表面修飾剤を、微細無機粒子の表面に存在する水酸基(−OH)を介して付加させ、微細無機粒子の全表面をアリール基を有する表面修飾剤でコーティングすることによって、再凝集を防止することができて分散性が向上し、また有機樹脂、特に芳香族系の有機樹脂中に混合する場合にも芳香族系の有機樹脂とアリール基とは相溶性が良いため、芳香族系の有機樹脂中に微細無機粒子が均一に分散する。また、トルエン、キシレン、等の芳香族炭化水素溶媒に分散させる場合にも、極めて良好な分散性を得ることができる。
このようにして、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に分散性を向上させることができる微細無機粒子の表面修飾方法となる。
【0036】
請求項15の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、表面修飾剤がUV官能基を有する化合物である。
このようなUV官能基を有する表面修飾剤を、微細無機粒子の表面に存在する水酸基(−OH)を介して付加させ、微細無機粒子の全表面をUV官能基を有する表面修飾剤でコーティングすることによって、再凝集を防止することができて分散性が向上し、また有機樹脂中に混合する場合にも有機樹脂とUV官能基とは相溶性が良いため、有機樹脂中に微細無機粒子が均一に分散する。
そして、微細無機粒子の全表面をUV官能基を有する表面修飾剤でコーティングすることによって、紫外線(UV)照射による三次元架橋反応を起こさせることができ、三次元架橋体を得ることができる。
このようにして、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に分散性を向上させることができ、三次元架橋体を得ることができる微細無機粒子の表面修飾方法となる。
【0037】
請求項16の発明にかかる微細無機粒子の表面修飾方法は、微細無機粒子が20nm〜130nmの外径を有するシリカ殻からなる中空粒子である。
近年、シリカ殻からなるナノ中空粒子についての研究開発が盛んに行われており、その製造方法もほぼ確立しているが、20nm〜130nmの外径を有するシリカ殻からなるナノ中空粒子も、中実微細粒子と同様に凝集し易く分散が困難であり、ナノ中空粒子としての特性を生かした応用がしづらいという問題点を有している。
そこで、中実微細粒子と同様に、シリカ殻からなるナノ中空粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えてなる混合物に高温高圧を加えて有機溶媒の超臨界状態とすることによって、有機溶媒が表面修飾剤とともに二次粒子の中に自由に入り込んで、一次粒子の表面全面に表面修飾剤が反応付加することで、凝集が解けて微細無機粒子の表面が表面修飾剤で覆われた表面修飾粒子が一次粒子として分散し易くなり、また有機樹脂等に分散させる場合には、表面修飾剤の活性基が有機樹脂等の活性基と反応結合して、強固な分散状態を形成する。
このようにして、シリカ殻からなるナノ中空粒子についても、二次粒子に凝集した微細無機粒子の一次粒子の間に表面修飾剤を自由に入り込ませることによって、微細無機粒子の凝集を防いで分散性を向上させるとともに、有機樹脂等に分散させる場合に反応性を向上させることができる微細無機粒子の表面修飾方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0039】
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図1乃至図3を参照して説明する。
【0040】
図1は本発明の実施の形態1にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。図2は本発明の実施の形態1にかかる表面修飾粒子の応用方法の実施例1を示す模式図である。図3は本発明の実施の形態1にかかる表面修飾粒子の応用方法の実施例2を示す模式図である。
【0041】
図1に示されるように、本実施の形態1にかかる表面修飾粒子3においては、微細無機粒子1として平均粒径40nmのコロイダルシリカを用いており、表面修飾剤2としてトリエトキシプロピルイソシアネートシラン(以下、「TEIS」とも言う。)を用いている。コロイダルシリカ1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図1においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0042】
これに対して、表面修飾剤としてのTEIS2を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているコロイダルシリカ1の間に自由に入り込んで、TEIS2のエトキシ基の3つ全部がコロイダルシリカ1の表面の水酸基と縮合反応し、コロイダルシリカ1の表面に結合する。
【0043】
このようにして、コロイダルシリカ1の表面の無数の水酸基とTEIS2が反応することによって、図1に示されるように、コロイダルシリカ1の表面がTEIS2で覆われて、本実施の形態1にかかる表面修飾粒子3が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたコロイダルシリカ1が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、イソシアネート基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子3となる。
【0044】
かかる表面修飾粒子3の応用の具体例の実施例1について、図2を参照して説明する。図2に示されるように、イソシアネート基を有する本実施の形態1にかかる表面修飾粒子3を有機樹脂5中に分散させると、有機樹脂5の活性基(ここでは水酸基)とイソシアネート基が反応して、ウレタン結合を有するコロイダルシリカ1と有機樹脂5との結合体6が形成されて、表面修飾粒子3が有機樹脂5中に均一にかつ強固に分散される。
【0045】
次に、表面修飾粒子3の応用の具体例の実施例2について、図3を参照して説明する。図3に示されるように、イソシアネート基を有する本実施の形態1にかかる表面修飾粒子3を無機微粒子8と反応させると、無機微粒子8の表面の水酸基とイソシアネート基が反応して、ウレタン結合を有するコロイダルシリカ1と無機微粒子8との結合体が形成されて、コロイダルシリカ1の表面が均一にかつ強固に無機微粒子8で覆われた複合体10が形成される。
【0046】
このようにして、本実施の形態1にかかる表面修飾粒子3は、約10nmから約300nmの範囲内の粒子径(平均粒径40nm)を有する微細無機粒子としてのコロイダルシリカ1に、有機溶媒としてのn−ヘキサン及び表面修飾剤としてのTEIS2を加えてなる混合物に高温高圧を加えてn−ヘキサンの超臨界状態とすることによって、n−ヘキサンがTEIS2とともに二次粒子の中に自由に入り込んで、一次粒子の表面全面にTEIS2が反応付加することで、凝集が解けてコロイダルシリカ1の表面がTEIS2で覆われた表面修飾粒子3が一次粒子として分散し易くなり、また有機樹脂5等に分散させる場合には、TEIS2の活性基であるイソシアネート基が有機樹脂5等の活性基と反応結合して、強固な分散状態を形成する。
【0047】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図4及び図5を参照して説明する。
【0048】
図4は本発明の実施の形態2にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法並びに表面修飾粒子の応用例を示す模式図である。図5は本発明の実施の形態2にかかる表面修飾粒子のIR(赤外分光吸収)スペクトルを未修飾粒子及びコーティング粒子と比較して示す図である。
【0049】
図4に示されるように、本実施の形態2にかかる表面修飾粒子12においては、微細無機粒子として粒径約50nm〜約100nmのシリカ殻からなる中空粒子11を用いており、表面修飾剤としては、実施の形態1と同様にトリエトキシプロピルイソシアネートシラン(TEIS)2を用いている。シリカ殻からなる中空粒子11の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図4においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0050】
これに対して、表面修飾剤としてのTEIS2を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているシリカ殻からなる中空粒子11の間に自由に入り込んで、TEIS2のエトキシ基の3つ全部がシリカ殻からなる中空粒子11の表面の水酸基と縮合反応し、シリカ殻からなる中空粒子11の表面に結合する。
【0051】
このようにして、シリカ殻からなる中空粒子11の表面の無数の水酸基とTEIS2が反応することによって、図4に示されるように、シリカ殻からなる中空粒子11の表面がTEIS2で覆われて、本実施の形態2にかかる表面修飾粒子12が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたシリカ殻からなる中空粒子11が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、イソシアネート基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子12となる。
【0052】
かかる表面修飾粒子12の応用の具体例について、さらに図4を参照して説明する。図4に示されるように、イソシアネート基を有する本実施の形態2にかかる表面修飾粒子12を、キシレン溶媒中でブロック(BL)の外れる温度(硬化温度)においてブロック型ポリイソシアネート13と反応させる。
【0053】
その結果、ブロック型ポリイソシアネート13のブロック(BL)が外れて、イソシアネート基と表面修飾粒子12のイソシアネート基とが反応して、ウレタン結合を有するシリカ殻からなる中空粒子11とポリイソシアネート14との結合体6が形成されて、表面修飾粒子12がポリイソシアネート14で均一にかつ強固にコーティングされたコーティング中空シリカ粒子15が形成される。
【0054】
図5は、本実施の形態2にかかる表面修飾粒子12のIR(赤外分光吸収)スペクトルを、未修飾粒子(シリカ殻からなる中空粒子)11及びコーティング中空シリカ粒子15と比較して示したものである。図5に示されるように、未修飾粒子11にはシリカ表面の無数の水酸基によるSi−OH結合による吸収が表れているのに対して、表面修飾粒子12においてはSi−OH結合による吸収は消滅して、TEIS2に存在する−CH2 −結合及びイソシアネート基(−N=C=O)による吸収が非常に顕著に表れている。
【0055】
さらに、コーティング中空シリカ粒子15においては、表面修飾粒子12とブロック型ポリイソシアネート13のイソシアネート基同士が結合するためイソシアネート基(−N=C=O)による吸収のピーク高さがやや低くなり、代わりにイソシアネート基が水と反応して生ずるカルバミン酸由来の−OH基、−NH−基、C=O基の吸収が大きくなっている。
【0056】
このようにして、本実施の形態2にかかる表面修飾粒子12においては、n−ヘキサンの超臨界状態において、シリカ殻からなる中空粒子11の表面の無数の水酸基とTEIS2を反応させることによって、シリカ殻からなる中空粒子11の表面がTEIS2で覆われる。これによって、二次粒子として凝集していたシリカ殻からなる中空粒子11が分散して一次粒子となり、凝集し難くなり、分散が容易となる。
【0057】
さらに、本実施の形態2にかかる表面修飾粒子12を、キシレン溶媒中でブロックの外れる温度(硬化温度)においてブロック型ポリイソシアネート13と反応させることによって、ブロック型ポリイソシアネート13のブロックが外れて、イソシアネート基と表面修飾粒子12のイソシアネート基とが反応して、ウレタン結合を有するシリカ殻からなる中空粒子11とポリイソシアネート14との結合体6が形成されて、表面修飾粒子12がポリイソシアネート14で均一にかつ強固にコーティングされたコーティング中空シリカ粒子15が形成される。
【0058】
実施の形態3
次に、本発明の実施の形態3にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図6を参照して説明する。図6は本発明の実施の形態3にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【0059】
図6に示されるように、本実施の形態3にかかる表面修飾粒子18においては、微細無機粒子として、実施の形態1と同様に平均粒径40nmのコロイダルシリカ1を用いており、表面修飾剤としてアミノ系化合物である3−アミノプロピルトリエトキシシラン(以下、「TEAS」とも言う。)17を用いている。コロイダルシリカ1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図6においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0060】
これに対して、表面修飾剤としてのTEAS17を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているコロイダルシリカ1の間に自由に入り込んで、TEAS17のエトキシ基の3つ全部がコロイダルシリカ1の表面の水酸基と縮合反応し、コロイダルシリカ1の表面に結合する。
【0061】
このようにして、コロイダルシリカ1の表面の無数の水酸基とTEAS17が反応することによって、図6に示されるように、コロイダルシリカ1の表面がTEAS17で覆われて、本実施の形態3にかかる表面修飾粒子18が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたコロイダルシリカ1が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、アミノ基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子18となる。
【0062】
実施の形態4
次に、本発明の実施の形態4にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図7を参照して説明する。図7は本発明の実施の形態4にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【0063】
図7に示されるように、本実施の形態4にかかる表面修飾粒子23においては、微細無機粒子として、実施の形態1,3と同様に平均粒径40nmのコロイダルシリカ1を用いており、表面修飾剤としてビニル系化合物であるビニルトリエトキシシラン22を用いている。コロイダルシリカ1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図7においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0064】
これに対して、表面修飾剤としてのビニルトリエトキシシラン22を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているコロイダルシリカ1の間に自由に入り込んで、ビニルトリエトキシシラン22のエトキシ基の3つ全部がコロイダルシリカ1の表面の水酸基と縮合反応し、コロイダルシリカ1の表面に結合する。
【0065】
このようにして、コロイダルシリカ1の表面の無数の水酸基とビニルトリエトキシシラン22が反応することによって、図7に示されるように、コロイダルシリカ1の表面がビニルトリエトキシシラン22で覆われて、本実施の形態4にかかる表面修飾粒子23が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたコロイダルシリカ1が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、ビニル基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子23となる。
【0066】
また、ビニル基は紫外線(UV)に反応するUV官能基であるため、本実施の形態4にかかる表面修飾粒子23を用いることによって、紫外線に反応して硬化する表面修飾粒子23として、種々の用途に応用することができる。
【0067】
実施の形態5
次に、本発明の実施の形態5にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図8を参照して説明する。図8は本発明の実施の形態5にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【0068】
図8に示されるように、本実施の形態5にかかる表面修飾粒子26においては、微細無機粒子として、実施の形態1,3,4と同様に平均粒径40nmのコロイダルシリカ1を用いており、表面修飾剤としてエポキシ系化合物である3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン25を用いている。コロイダルシリカ1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図8においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0069】
これに対して、表面修飾剤としての3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン25を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているコロイダルシリカ1の間に自由に入り込んで、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン25のエトキシ基の3つ全部がコロイダルシリカ1の表面の水酸基と縮合反応し、コロイダルシリカ1の表面に結合する。
【0070】
このようにして、コロイダルシリカ1の表面の無数の水酸基と3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン25が反応することによって、図8に示されるように、コロイダルシリカ1の表面が3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン25で覆われて、本実施の形態5にかかる表面修飾粒子26が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたコロイダルシリカ1が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、エポキシ基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子26となる。
【0071】
実施の形態6
次に、本発明の実施の形態6にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図9を参照して説明する。図9は本発明の実施の形態6にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【0072】
図9に示されるように、本実施の形態6にかかる表面修飾粒子28においては、微細無機粒子として、実施の形態2と同様に粒径約50nm〜約100nmのシリカ殻からなる中空粒子11を用いており、表面修飾剤としては、実施の形態5と同様にエポキシ系化合物である3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン25を用いている。シリカ殻からなる中空粒子11の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図9においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0073】
これに対して、表面修飾剤としての3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン25を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているシリカ殻からなる中空粒子11の間に自由に入り込んで、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン25のエトキシ基の3つ全部がシリカ殻からなる中空粒子11の表面の水酸基と縮合反応し、シリカ殻からなる中空粒子11の表面に結合する。
【0074】
このようにして、シリカ殻からなる中空粒子11の表面の無数の水酸基と3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン25が反応することによって、図9に示されるように、シリカ殻からなる中空粒子11の表面が3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン25で覆われて、本実施の形態6にかかる表面修飾粒子28が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたシリカ殻からなる中空粒子11が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、エポキシ基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子28となる。
【0075】
実施の形態7
次に、本発明の実施の形態7にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図10を参照して説明する。図10は本発明の実施の形態7にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【0076】
図10に示されるように、本実施の形態7にかかる表面修飾粒子31においては、微細無機粒子として、実施の形態1,3,4,5と同様に平均粒径40nmのコロイダルシリカ1を用いており、表面修飾剤としてメタクリロキシ系化合物である3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン30を用いている。コロイダルシリカ1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図10においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0077】
これに対して、表面修飾剤としての3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン30を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているコロイダルシリカ1の間に自由に入り込んで、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン30のエトキシ基の3つ全部がコロイダルシリカ1の表面の水酸基と縮合反応し、コロイダルシリカ1の表面に結合する。
【0078】
このようにして、コロイダルシリカ1の表面の無数の水酸基と3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン30が反応することによって、図10に示されるように、コロイダルシリカ1の表面が3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン30で覆われて、本実施の形態7にかかる表面修飾粒子31が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたコロイダルシリカ1が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、メタクリロキシ基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子31となる。
【0079】
実施の形態8
次に、本発明の実施の形態8にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図11を参照して説明する。図11は本発明の実施の形態8にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【0080】
図11に示されるように、本実施の形態8にかかる表面修飾粒子33においては、微細無機粒子として、実施の形態1,3,4,5,7と同様に平均粒径40nmのコロイダルシリカ1を用いており、表面修飾剤としてアルキル基を有する化合物であるブチルトリエトキシシラン32を用いている。コロイダルシリカ1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図11においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0081】
これに対して、表面修飾剤としてのブチルトリエトキシシラン32を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているコロイダルシリカ1の間に自由に入り込んで、ブチルトリエトキシシラン32のエトキシ基の3つ全部がコロイダルシリカ1の表面の水酸基と縮合反応し、コロイダルシリカ1の表面に結合する。
【0082】
このようにして、コロイダルシリカ1の表面の無数の水酸基とブチルトリエトキシシラン32が反応することによって、図11に示されるように、コロイダルシリカ1の表面がブチルトリエトキシシラン32で覆われて、本実施の形態8にかかる表面修飾粒子33が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたコロイダルシリカ1が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、アルキル基であるブチル基が有機樹脂と相溶性が良いため有機樹脂中に均一に分散することによって、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子33となる。
【0083】
実施の形態9
次に、本発明の実施の形態9にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図12を参照して説明する。図12は本発明の実施の形態9にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【0084】
図12に示されるように、本実施の形態9にかかる表面修飾粒子35においては、微細無機粒子として、実施の形態1,3,4,5,7,8と同様に平均粒径40nmのコロイダルシリカ1を用いており、表面修飾剤としてアクリル系化合物である3−アクリル酸プロピルトリエトキシシラン34を用いている。コロイダルシリカ1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図12においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0085】
これに対して、表面修飾剤としての3−アクリル酸プロピルトリエトキシシラン34を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているコロイダルシリカ1の間に自由に入り込んで、3−アクリル酸プロピルトリエトキシシラン34のエトキシ基の3つ全部がコロイダルシリカ1の表面の水酸基と縮合反応し、コロイダルシリカ1の表面に結合する。
【0086】
このようにして、コロイダルシリカ1の表面の無数の水酸基と3−アクリル酸プロピルトリエトキシシラン34が反応することによって、図12に示されるように、コロイダルシリカ1の表面が3−アクリル酸プロピルトリエトキシシラン34で覆われて、本実施の形態9にかかる表面修飾粒子35が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたコロイダルシリカ1が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、有機酸であるアクリル酸基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子35となる。
【0087】
実施の形態10
次に、本発明の実施の形態10にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図13を参照して説明する。図13は本発明の実施の形態10にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【0088】
図13に示されるように、本実施の形態10にかかる表面修飾粒子37においては、微細無機粒子として、実施の形態1,3,4,5,7,8,9と同様に平均粒径40nmのコロイダルシリカ1を用いており、表面修飾剤としてイミド系化合物である3−イミドプロピルトリエトキシシラン36を用いている。コロイダルシリカ1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図13においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0089】
これに対して、表面修飾剤としての3−イミドプロピルトリエトキシシラン36を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているコロイダルシリカ1の間に自由に入り込んで、3−イミドプロピルトリエトキシシラン36のエトキシ基の3つ全部がコロイダルシリカ1の表面の水酸基と縮合反応し、コロイダルシリカ1の表面に結合する。
【0090】
このようにして、コロイダルシリカ1の表面の無数の水酸基と3−イミドプロピルトリエトキシシラン36が反応することによって、図13に示されるように、コロイダルシリカ1の表面が3−イミドプロピルトリエトキシシラン36で覆われて、本実施の形態10にかかる表面修飾粒子37が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたコロイダルシリカ1が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、イミド基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子37となる。
【0091】
実施の形態11
次に、本発明の実施の形態11にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図14を参照して説明する。図14は本発明の実施の形態11にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【0092】
図14に示されるように、本実施の形態11にかかる表面修飾粒子39においては、微細無機粒子として、実施の形態1,3,4,5,7,8,9,10と同様に平均粒径40nmのコロイダルシリカ1を用いており、表面修飾剤としてアリール基としてのフェニル基を有する化合物である3−フェニルプロピルトリエトキシシラン38を用いている。コロイダルシリカ1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図14においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0093】
これに対して、表面修飾剤としての3−フェニルプロピルトリエトキシシラン38を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているコロイダルシリカ1の間に自由に入り込んで、3−フェニルプロピルトリエトキシシラン38のエトキシ基の3つ全部がコロイダルシリカ1の表面の水酸基と縮合反応し、コロイダルシリカ1の表面に結合する。
【0094】
このようにして、コロイダルシリカ1の表面の無数の水酸基と3−フェニルプロピルトリエトキシシラン38が反応することによって、図14に示されるように、コロイダルシリカ1の表面が3−フェニルプロピルトリエトキシシラン38で覆われて、本実施の形態11にかかる表面修飾粒子39が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたコロイダルシリカ1が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、フェニル基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子39となる。
【0095】
特に芳香族系の有機樹脂中に混合する場合には、芳香族系の有機樹脂とフェニル基とは相溶性が良いため、芳香族系の有機樹脂中に表面修飾粒子39が均一に分散する。また、フェニル基は、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒と極めて相溶性が良いため、トルエン、キシレン等の有機溶媒中への均一分散が行い易い表面修飾粒子39となる。
【0096】
実施の形態12
次に、本発明の実施の形態12にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図15を参照して説明する。図15は本発明の実施の形態12にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
図15に示されるように、本実施の形態12にかかる表面修飾粒子41においては、微細無機粒子として実施の形態2,6と同様に粒径約50nm〜約100nmのシリカ殻からなる中空粒子11を用いており、表面修飾剤としては、メチルトリエトキシシラン40を用いている。シリカ殻からなる中空粒子11の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図15においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0097】
これに対して、表面修飾剤としてのメチルトリエトキシシラン40を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているシリカ殻からなる中空粒子11の間に自由に入り込んで、メチルトリエトキシシラン40のエトキシ基の3つ全部がシリカ殻からなる中空粒子11の表面の水酸基と縮合反応し、シリカ殻からなる中空粒子11の表面に結合する。
【0098】
このようにして、シリカ殻からなる中空粒子11の表面の無数の水酸基とメチルトリエトキシシラン40が反応することによって、図15に示されるように、シリカ殻からなる中空粒子11の表面がメチルトリエトキシシラン40で覆われて、本実施の形態12にかかる表面修飾粒子41が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたシリカ殻からなる中空粒子11が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、メチル基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子41となる。
【0099】
実施の形態13
次に、本発明の実施の形態13にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図16を参照して説明する。図16は本発明の実施の形態13にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【0100】
図16に示されるように、本実施の形態13にかかる表面修飾粒子45においては、微細無機粒子として、実施の形態1,3,4,5,7,8,9,10,11と同様に平均粒径40nmのコロイダルシリカ1を用いており、表面修飾剤として3−パラ−スチリルプロピルトリメトキシシラン44を用いている。コロイダルシリカ1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図16においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0101】
これに対して、表面修飾剤としての3−パラ−スチリルプロピルトリメトキシシラン44を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているコロイダルシリカ1の間に自由に入り込んで、3−パラ−スチリルプロピルトリメトキシシラン44のメトキシ基の3つ全部がコロイダルシリカ1の表面の水酸基と縮合反応し、コロイダルシリカ1の表面に結合する。
【0102】
このようにして、コロイダルシリカ1の表面の無数の水酸基と3−パラ−スチリルプロピルトリメトキシシラン44が反応することによって、図16に示されるように、コロイダルシリカ1の表面が3−パラ−スチリルプロピルトリメトキシシラン44で覆われて、本実施の形態13にかかる表面修飾粒子45が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたコロイダルシリカ1が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、スチリル基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子45となる。
【0103】
特に芳香族系の有機樹脂中に混合する場合には、芳香族系の有機樹脂とスチリル基とは相溶性が良いため、芳香族系の有機樹脂中に表面修飾粒子45が均一に分散する。また、スチリル基は、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒と極めて相溶性が良いため、トルエン、キシレン等の有機溶媒中への均一分散が行い易い表面修飾粒子45となる。 また、スチリル基は紫外線(UV)に反応するUV官能基であるため、本実施の形態13にかかる表面修飾粒子45を用いることによって、紫外線に反応して硬化する表面修飾粒子45として、種々の用途に応用することができる。
【0104】
実施の形態14
次に、本発明の実施の形態14にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図17を参照して説明する。図17(a)は本発明の実施の形態14にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図、(b)は本発明の実施の形態14にかかる表面修飾粒子の紫外線照射反応による応用を示す模式図である。
【0105】
図17(a)に示されるように、本実施の形態14にかかる表面修飾粒子48においては、微細無機粒子として実施の形態2,6,12と同様に粒径約50nm〜約100nmのシリカ殻からなる中空粒子11を用いており、表面修飾剤としては、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン47を用いている。シリカ殻からなる中空粒子11の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図17においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0106】
これに対して、表面修飾剤としてのアクリロキシプロピルトリメトキシシラン47を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているシリカ殻からなる中空粒子11の間に自由に入り込んで、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン47のメトキシ基の3つ全部がシリカ殻からなる中空粒子11の表面の水酸基と縮合反応し、シリカ殻からなる中空粒子11の表面に結合する。
【0107】
このようにして、シリカ殻からなる中空粒子11の表面の無数の水酸基とアクリロキシプロピルトリメトキシシラン47が反応することによって、図17(a)に示されるように、シリカ殻からなる中空粒子11の表面がアクリロキシプロピルトリメトキシシラン47で覆われて、本実施の形態14にかかる表面修飾粒子48が形成される。
【0108】
これによって、二次粒子として凝集していたシリカ殻からなる中空粒子11が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、アクリロキシ基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子48となる。また、アクリロキシ基は紫外線(UV)に反応するUV官能基であるため、本実施の形態14にかかる表面修飾粒子48を用いることによって、紫外線に反応して硬化する表面修飾粒子48として、種々の用途に応用することができる。
【0109】
このように製造された表面修飾粒子48に対して、図17(b)に示されるように、多官能アクリレート化合物49とアセトフェノン系の光ラジカル重合開始剤とを加えて紫外線(UV)照射することによって、アクリロキシ基及び多官能アクリレート化合物49の二重結合がラジカル化して、ラジカル連鎖反応によって三次元架橋反応が起こり、三次元架橋体50が形成される。このようにして、UV官能基であるアクリロキシ基を有する表面修飾粒子48を用いることによって、紫外線(UV)照射により三次元架橋体50を形成することができる。
【0110】
実施の形態15
次に、本発明の実施の形態15にかかる表面修飾粒子及び微細無機粒子の表面修飾方法について、図18を参照して説明する。図18(a)は本発明の実施の形態15にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図、(b)は本発明の実施の形態15にかかる表面修飾粒子の紫外線照射反応による応用を示す模式図である。
【0111】
図18(a)に示されるように、本実施の形態15にかかる表面修飾粒子52においては、微細無機粒子として実施の形態2,6,12,14と同様に粒径約50nm〜約100nmのシリカ殻からなる中空粒子11を用いており、表面修飾剤としては、メチルトリメトキシシラン51を用いている。シリカ殻からなる中空粒子11の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図18(a)においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち1つのみを示している。
【0112】
これに対して、表面修飾剤としてのメチルトリメトキシシラン51を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、二次粒子として凝集しているシリカ殻からなる中空粒子11の間に自由に入り込んで、メチルトリメトキシシラン51の3つのメトキシ基のうち1つがシリカ殻からなる中空粒子11の表面の水酸基と縮合反応し、シリカ殻からなる中空粒子11の表面に結合する。他の2つのメトキシ基は、メチルトリメトキシシラン51同士で反応して、図18(a)に示されるような表面修飾粒子52が形成される。
【0113】
このようにして、シリカ殻からなる中空粒子11の表面の無数の水酸基とメチルトリメトキシシラン51が反応することによって、図18(a)に示されるように、シリカ殻からなる中空粒子11の表面がメチルトリメトキシシラン51で覆われて、本実施の形態15にかかる表面修飾粒子52が形成される。これによって、二次粒子として凝集していたシリカ殻からなる中空粒子11が分散して一次粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、メチル基、メトキシ基が有機樹脂の活性基と反応して有機樹脂と強固な結合を作ることにより、更に有機樹脂中への均一分散が行い易い表面修飾粒子52となる。
【0114】
このように製造された表面修飾粒子52に対して、図18(b)に示されるように、多官能アルコキシシラン化合物53とスルホニウム塩系の光カチオン重合開始剤とを加えて紫外線(UV)照射することによって、光カチオン重合開始剤からプロトン酸が発生して、多官能アルコキシシラン化合物53のアルコキシシリル基が加水分解されてシラノール基が発生する。これによって三次元架橋反応が起こり、三次元架橋体54が形成される。このようにして、UV官能基であるメトキシ基を有する表面修飾粒子52を用いることによって、紫外線(UV)照射により三次元架橋体54を形成することができる。
【0115】
上記各実施の形態においては、微細無機粒子として、コロイダルシリカ1及びシリカ殻からなる中空粒子11を表面修飾した場合についてのみ説明したが、これらに限られるものではなく、約10nmから約300nmの範囲内の粒子径を有する微細無機粒子であれば、種々の微細無機粒子を表面修飾して表面修飾粒子とすることができる。
【0116】
また、上記各実施の形態においては、有機溶媒としてn−ヘキサンを用いた場合についてのみ説明したが、これに限られるものではなく、他の有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール、キシレン等の芳香族炭化水素、等を用いることができる。
【0117】
本発明を実施するに際しては、表面修飾粒子のその他の部分の構成、成分、形状、数量、材質、大きさ、製造方法等についても、また微細無機粒子の表面修飾方法のその他の工程についても、上記各実施の形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】図1は本発明の実施の形態1にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態1にかかる表面修飾粒子の応用方法の実施例1を示す模式図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態1にかかる表面修飾粒子の応用方法の実施例2を示す模式図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態2にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法並びに表面修飾粒子の応用例を示す模式図である。
【図5】図5は本発明の実施の形態2にかかる表面修飾粒子のIR(赤外分光吸収)スペクトルを未修飾粒子及びコーティング粒子と比較して示す図である。
【図6】図6は本発明の実施の形態3にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【図7】図7は本発明の実施の形態4にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【図8】図8は本発明の実施の形態5にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【図9】図9は本発明の実施の形態6にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【図10】図10は本発明の実施の形態7にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【図11】図11は本発明の実施の形態8にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【図12】図12は本発明の実施の形態9にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【図13】図13は本発明の実施の形態10にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【図14】図14は本発明の実施の形態11にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【図15】図15は本発明の実施の形態12にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【図16】図16は本発明の実施の形態13にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図である。
【図17】図17(a)は本発明の実施の形態14にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図、(b)は本発明の実施の形態14にかかる表面修飾粒子の紫外線照射反応による応用を示す模式図である。
【図18】図18(a)は本発明の実施の形態15にかかる表面修飾粒子の製造工程及び微細無機粒子の表面修飾方法を示す模式図、(b)は本発明の実施の形態15にかかる表面修飾粒子の紫外線照射反応による応用を示す模式図である。
【符号の説明】
【0119】
1 微細無機粒子
2,17,22,25,30,32,34,36,38,40,44,47,51 表面修飾剤
3,12,18,23,26,28,31,33,35,37,39,41,45,48,52 表面修飾粒子
11 シリカ殻からなるナノ中空粒子
15 コーティング中空シリカ粒子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約10nmから約300nmの範囲内の粒子径を有する微細無機粒子を表面修飾した表面修飾粒子であって、
前記微細無機粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えて混合物を作製し、前記混合物に高温高圧を加えて前記有機溶媒の超臨界状態として、前記微細無機粒子の表面に前記表面修飾剤を反応付加させてなることを特徴とする表面修飾粒子。
【請求項2】
オートクレーブを用いて前記混合物に高温高圧を加えて前記有機溶媒の超臨界状態とすることを特徴とする請求項1に記載の表面修飾粒子。
【請求項3】
前記有機溶媒はn−ヘキサンであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表面修飾粒子。
【請求項4】
前記表面修飾剤はイソシアネート系化合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の表面修飾粒子。
【請求項5】
前記表面修飾剤はアルキル基を有する化合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の表面修飾粒子。
【請求項6】
前記表面修飾剤はアリール基を有する化合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の表面修飾粒子。
【請求項7】
前記表面修飾剤はUV官能基を有する化合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の表面修飾粒子。
【請求項8】
前記微細無機粒子は20nm〜130nmの外径を有するシリカ殻からなる中空粒子であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の微細無機粒子の表面修飾方法。
【請求項9】
約10nmから約300nmの範囲内の粒子径を有する微細無機粒子の表面修飾方法であって、
前記微細無機粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えて混合物を作製する工程と、
前記混合物に高温高圧を加えることによって前記有機溶媒の超臨界状態として前記微細無機粒子の表面に前記表面修飾剤を反応付加させる工程と
を具備することを特徴とする微細無機粒子の表面修飾方法。
【請求項10】
前記混合物に高温高圧を加える工程はオートクレーブを用いて行うことを特徴とする請求項9に記載の微細無機粒子の表面修飾方法。
【請求項11】
前記有機溶媒はn−ヘキサンであることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の微細無機粒子の表面修飾方法。
【請求項12】
前記表面修飾剤はイソシアネート系化合物であることを特徴とする請求項9乃至請求項11のいずれか1つに記載の微細無機粒子の表面修飾方法。
【請求項13】
前記表面修飾剤はアルキル基を有する化合物であることを特徴とする請求項9乃至請求項12のいずれか1つに記載の微細無機粒子の表面修飾方法。
【請求項14】
前記表面修飾剤はアリール基を有する化合物であることを特徴とする請求項9乃至請求項13のいずれか1つに記載の微細無機粒子の表面修飾方法。
【請求項15】
前記表面修飾剤はUV官能基を有する化合物であることを特徴とする請求項9乃至請求項14のいずれか1つに記載の微細無機粒子の表面修飾方法。
【請求項16】
前記微細無機粒子は20nm〜130nmの外径を有するシリカ殻からなる中空粒子であることを特徴とする請求項9乃至請求項15のいずれか1つに記載の微細無機粒子の表面修飾方法。
【請求項1】
約10nmから約300nmの範囲内の粒子径を有する微細無機粒子を表面修飾した表面修飾粒子であって、
前記微細無機粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えて混合物を作製し、前記混合物に高温高圧を加えて前記有機溶媒の超臨界状態として、前記微細無機粒子の表面に前記表面修飾剤を反応付加させてなることを特徴とする表面修飾粒子。
【請求項2】
オートクレーブを用いて前記混合物に高温高圧を加えて前記有機溶媒の超臨界状態とすることを特徴とする請求項1に記載の表面修飾粒子。
【請求項3】
前記有機溶媒はn−ヘキサンであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表面修飾粒子。
【請求項4】
前記表面修飾剤はイソシアネート系化合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の表面修飾粒子。
【請求項5】
前記表面修飾剤はアルキル基を有する化合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の表面修飾粒子。
【請求項6】
前記表面修飾剤はアリール基を有する化合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の表面修飾粒子。
【請求項7】
前記表面修飾剤はUV官能基を有する化合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の表面修飾粒子。
【請求項8】
前記微細無機粒子は20nm〜130nmの外径を有するシリカ殻からなる中空粒子であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の微細無機粒子の表面修飾方法。
【請求項9】
約10nmから約300nmの範囲内の粒子径を有する微細無機粒子の表面修飾方法であって、
前記微細無機粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えて混合物を作製する工程と、
前記混合物に高温高圧を加えることによって前記有機溶媒の超臨界状態として前記微細無機粒子の表面に前記表面修飾剤を反応付加させる工程と
を具備することを特徴とする微細無機粒子の表面修飾方法。
【請求項10】
前記混合物に高温高圧を加える工程はオートクレーブを用いて行うことを特徴とする請求項9に記載の微細無機粒子の表面修飾方法。
【請求項11】
前記有機溶媒はn−ヘキサンであることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の微細無機粒子の表面修飾方法。
【請求項12】
前記表面修飾剤はイソシアネート系化合物であることを特徴とする請求項9乃至請求項11のいずれか1つに記載の微細無機粒子の表面修飾方法。
【請求項13】
前記表面修飾剤はアルキル基を有する化合物であることを特徴とする請求項9乃至請求項12のいずれか1つに記載の微細無機粒子の表面修飾方法。
【請求項14】
前記表面修飾剤はアリール基を有する化合物であることを特徴とする請求項9乃至請求項13のいずれか1つに記載の微細無機粒子の表面修飾方法。
【請求項15】
前記表面修飾剤はUV官能基を有する化合物であることを特徴とする請求項9乃至請求項14のいずれか1つに記載の微細無機粒子の表面修飾方法。
【請求項16】
前記微細無機粒子は20nm〜130nmの外径を有するシリカ殻からなる中空粒子であることを特徴とする請求項9乃至請求項15のいずれか1つに記載の微細無機粒子の表面修飾方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2007−99607(P2007−99607A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136225(P2006−136225)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【出願人】(504067365)グランデックス株式会社 (37)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【出願人】(504067365)グランデックス株式会社 (37)
【Fターム(参考)】
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