説明

表面処理された粒子状吸水性樹脂の製造方法

【課題】 吸水性樹脂に望まれる特性を極めて高いレベルとすることができ、しかも、従来からの安全性等の問題を解消できるとともに、室温付近の反応温度でも十分に処理可能な表面処理方法を採用した、表面処理された粒子状吸水性樹脂の優れた製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明にかかる表面処理された粒子状吸水性樹脂の製造方法は、ラジカル重合性化合物を含む処理液をベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂に添加した後に、当該粒子状吸水性樹脂を流動させながら活性エネルギー線を照射して表面処理することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状吸水性樹脂の製造方法に関する。詳しくは、特定の表面処理方法によって表面処理された粒子状吸水性樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生理綿、紙おむつ、或いはその他の体液を吸収する衛生材料の一構成材料として、吸水性樹脂が用いられている。このような吸水性樹脂としては、例えば、デンプン−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、デンプン−アクリル酸グラフト重合体の中和物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、アクリロニトリル共重合体もしくはアクリルアミド共重合体の加水分解物、これらの架橋体やポリアクリル酸部分中和物架橋体等が知られている。
吸水性樹脂に望まれる特性として、高吸収倍率、優れた吸収速度、高いゲル強度、基材から水を吸いあげるための優れた吸引力等が挙げられる。しかしながら、これら特性の間の関係は必ずしも正の相関を示さず、特に、吸収倍率と吸収速度、ゲル強度、吸引力等とは相反する関係にある。例えば、吸収倍率が向上すると、液体に接した場合にいわゆる「ママコ」を形成してしまい、吸水性樹脂粒子全体に水が拡散せず、吸収速度等を極端に低下させてしまう。
【0003】
このような現象を緩和し、吸収倍率が高く、かつ吸収速度等も比較的良好な吸水性樹脂を得るための方法として、例えば、吸水性樹脂粒子の表面を界面活性剤や非揮発性炭化水素によりコーティングする方法が知られている。しかし、この方法では、初期に吸収する水の分散性は改良されるものの、粒子個々の吸収速度や吸引力の向上という面では十分な効果が得られない。
吸水性樹脂表面をある特定の架橋剤を用いて処理し、その表面部分の架橋密度を高める方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
これらの方法において用いる架橋剤としては、多価アルコール類、多価グリシジルエーテル類、ハロエポキシ化合物類、多価アルデヒド類、多価アミン類、多価金属塩類等が挙げられる。しかしながら、従来よく用いられる架橋剤の中には、安全性、皮膚刺激性において問題がある架橋剤が多く(例えば、多価グリシジルエーテル類など)、表面処理した吸水性樹脂がおむつ等の衛生材料に使用されることを考えると、吸水性樹脂表面にこのような架橋剤が残存している場合に安全性等の面で大きな問題となる。一方、従来よく用いられる架橋剤の中には、安全性等の面で問題が比較的少ない架橋剤(例えば、多価アルコール類など)も存在するが、このような架橋剤を用いた場合、架橋剤の反応性が低いために、反応温度を高温(場合によっては長時間)とすることが必要となり、高温とする場合に昇温や降温という操作も必要となるため、多くのエネルギーが必要となるという問題があった。
【0004】
吸水性樹脂に望まれる特性をできるだけ高いレベルで維持したまま上記安全性、皮膚刺激性の問題を解消できる表面処理方法として、ベースポリマーの製造に使用したモノマーおよび架橋剤と同様のモノマーおよび架橋剤を含む処理液をベースポリマーの表面処理に用いる方法が報告されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、表面処理のための反応温度が依然として高いため、多くのエネルギーが必要となる点で問題が残っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭57−44627号公報
【特許文献2】特許第2530668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、吸水性樹脂に望まれる特性、例えば、吸収倍率、吸収速度、ゲル強度、吸引力を極めて高いレベルとすることができ、しかも、従来からの安全性、皮膚刺激性の問題を解消できるとともに、室温付近の反応温度でも十分に処理可能な表面処理方法を採用した、表面処理された粒子状吸水性樹脂の優れた製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、表面処理のための処理液としてラジカル重合性化合物を含む処理液を用い、それをベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂に添加した後に、紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射して表面処理することを考えた。
ところが、活性エネルギー線を粒子状吸水性樹脂に照射して表面処理を行ったところ、条件によって、吸水性樹脂表面全体にわたっての均一で架橋密度の高い表面処理が発現できないという問題が生じた。
そこで本発明者は、さらに鋭意検討した結果、活性エネルギー線を粒子状吸水性樹脂に照射して表面処理する際に、照射する粒子状吸水性樹脂を流動させた状態にしておけば、吸水性樹脂表面全体にわたっての均一で架橋密度の高い表面処理が発現できることを見出した。
【0008】
本発明はこのようにして完成された。
すなわち、本発明にかかる表面処理された粒子状吸水性樹脂の製造方法は、ラジカル重合性化合物を含む処理液をベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂に添加した後に、当該粒子状吸水性樹脂を流動させながら活性エネルギー線を照射して表面処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吸水性樹脂の表面処理を行うにあたって、従来からの安全性、皮膚刺激性の問題を解消できるとともに、室温付近の反応温度でも十分に表面処理可能であり、しかも、得られる表面処理された粒子状吸水性樹脂は、吸収倍率、吸収速度、ゲル強度、吸引力など吸水性樹脂に望まれる特性が極めて高いレベルにある。また、得られる表面処理された粒子状吸水性樹脂は、吸水しても造粒状態を保つ凝集物(FSA:fluid stable aggregate)、例えば、特表平5−506263号公報記載の吸水しても造粒状態を保つ凝集物となり、ゲルブロッキングが起こりにくい。さらに、本発明によれば、吸水性樹脂の製造時に発生する微粉の造粒効果が大きい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明にかかる表面処理された粒子状吸水性樹脂の製造方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
〔ベースポリマー〕
本発明においては、表面処理を行う粒子状吸水性樹脂をベースポリマーと称する。
ベースポリマーは、重合体に架橋構造を導入した水膨潤性架橋重合体であり、その水膨潤性とは、必須に無荷重下で自重の3倍以上、好ましくは5〜200倍、より好ましくは20〜100倍という多量の生理食塩水を吸収できる能力をいう。
【0011】
本発明において使用できるベースポリマーとしては、ラジカル重合可能な水溶性エチレン性不飽和単量体を必須に含む単量体成分を用いて、従来公知の方法などを用いて、重合により得られるものであれば、特に限定されない。
ベースポリマーを製造するために用いる水溶性エチレン性不飽和単量体としては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、等のアニオン性単量体やその塩;(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、等のノニオン性親水基含有単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、等のアミノ基含有不飽和単量体やそれらの4級化物;等を挙げることができ、これらの中から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。好ましくは、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、これらの塩、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの4級化物、(メタ)アクリルアミドであり、特に好ましくは、アクリル酸および/またはその塩である。
【0012】
水溶性エチレン性不飽和単量体としてアクリル酸の塩を用いる場合、物性面から好ましくは、アルカリ金属塩,アンモニウム塩,アミン塩から選ばれるアクリル酸の1価塩、さらに好ましくはアクリル酸アルカリ金属塩、より好ましくは、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩から選ばれるアクリル酸塩である。
ベースポリマーを製造する際には、本発明の効果を損なわない範囲で、水溶性エチレン性不飽和単量体以外の単量体成分、例えば、炭素数8〜30の芳香族エチレン性不飽和単量体、炭素数2〜20の脂肪族エチレン性不飽和単量体、炭素数5〜15の脂環式エチレン性不飽和単量体、アルキル基の炭素数4〜50の(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどの疎水性単量体を使用してもよいが、全単量体成分中の水溶性エチレン性不飽和単量体の濃度は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
【0013】
ベースポリマーを製造する際に用いる単量体成分は、水溶液として用いることが好ましい。水溶液中の単量体の濃度は、広い範囲にわたって選択が可能であるが、好ましくは25質量%以上、より好ましくは35質量%以上である。
ベースポリマーは、内部架橋されたものが好ましい。ベースポリマーは、架橋剤を使用せずに得られる自己架橋型のものより、一分子内に2個以上の重合性不飽和基及び/又は2個以上の反応性官能基を有する架橋剤をベースポリマーのゲル強度が所望の基準に達する範囲で必要最少量用いて得られるものが望ましい。
これらの架橋剤としては、特に限定されず、例えば、N,N´−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、(メタ)アクリル酸多価金属塩、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルアミン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等を挙げることができる。これらの架橋剤は2種以上を併用してもよい。
【0014】
これらの架橋剤の使用量は、ベースポリマーを製造する際に用いる単量体成分に対して、好ましくは0.0001〜1モル%、より好ましくは0.001〜0.5モル%、さらに好ましくは0.005〜0.1モル%である。
ベースポリマーを得るには、水溶性ラジカル重合開始剤を用いて前記水溶性エチレン性不飽和単量体を必須に含む単量体成分を重合すればよい。
使用できる水溶性ラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、等の過硫酸塩;過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキシド、等のハイドロパーオキサイド;2,2´−アゾビス−2−アミジノプロパン二塩酸塩等のアゾ化合物;等が挙げられ、さらに、これら水溶性ラジカル重合開始剤に、亜硫酸塩やL−アスコルビン酸第2鉄塩等の還元剤を組み合わせてレドックス系開始剤として用いてもよい。
【0015】
重合方法としては、特に限定されず、周知の方法、例えば、水溶液重合、逆相懸濁重合、沈殿重合、塊状重合等を採用することができる。これらの方法の中でも、重合反応の制御の容易さや、得られる吸水性樹脂の性能面から、本発明においては、単量体を水溶液にして重合させる方法、すなわち、水溶液重合または逆相懸濁重合が好ましい。
重合によって得られた含水ゲル状重合体は、好ましくは乾燥の後に粉砕され、ベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂とする。
前記乾燥は、例えば、熱風乾燥機などの乾燥機を用い、好ましくは100〜220℃、より好ましくは120〜200℃で乾燥させる。
【0016】
前記粉砕に用いることができる粉砕機は、例えば、粉体工学便覧(粉体工学会編、初版)の表1.10で分類されている粉砕機種名のうちでも、剪断粗砕機、衝撃破砕機、高速回転式粉砕機に分類されて、切断、剪断、衝撃、摩擦といった粉砕機構の1つ以上の機構を有するものが好ましく使用でき、それら機種に該当する粉砕機の中でも切断、剪断機構が主機構である粉砕機が特に好ましく使用できる。例えば、ロールミル(ロール回転形)粉砕機が好ましく挙げられる。
得られたベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂は、そのまま表面処理に用いてもよいが、好ましくは、粒径850μm以下の粒子が全体の70質量%以上となるように分級したものであり、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは98質量%以上、最も好ましくは実質的に100質量%である。
【0017】
また、本発明の製造方法によれば、吸水性樹脂の製造時に発生する微粉の造粒効果が大きいので、ベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂に微粉が含まれていても大きな問題とはならないが、好ましくは、粒径100μmを超える粒子が全体の70質量%以上となるように分級したものであり、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは98質量%以上、最も好ましくは実質的に100質量%である。
〔表面処理〕
本発明の製造方法においては、ラジカル重合性化合物を含む処理液をベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂に添加した後に、当該粒子状吸水性樹脂を流動させながら活性エネルギー線を照射して表面処理する。
【0018】
活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、赤外線、放射線などが挙げられるが、好ましくは、紫外線、電子線である。
活性エネルギー線として紫外線を用いる場合は、処理液に重合開始剤が含まれることが好ましい。処理液に含まれる重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アゾ化合物等の光分解型重合開始剤が挙げられる。また、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;アゾニトリル化合物、アゾアミジン化合物、環状アゾアミジン化合物、アゾアミド化合物、アルキルアゾ化合物、2,2´−アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩などのアゾ化合物;等の熱分解型重合開始剤を併用してもよい。さらに、これら重合開始剤に、亜硫酸塩、L−アスコルビン酸(塩)等の還元剤を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本発明の製造方法で用いる処理液は、活性エネルギー線を照射することによって吸水性樹脂粒子表面の近傍にベースポリマーより高い架橋密度の吸水性樹脂層を形成させるために、ラジカル重合性化合物を含む。
本発明において用いることができるラジカル重合性化合物としては、例えば、ベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂の製造に使用できる架橋剤など、一分子内に2個以上の重合性不飽和基及び/又は2個以上の反応性官能基を有する化合物や、ベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂の製造に使用できる水溶性エチレン性不飽和単量体が挙げられる。
【0020】
本発明の製造方法で用いる処理液は、好ましくは、一分子内に2個以上の重合性不飽和基及び/又は2個以上の反応性官能基を有する化合物を含む。一分子内に2個以上の重合性不飽和基及び/又は2個以上の反応性官能基を有する化合物としては、例えば、前述のベースポリマーの製造に使用する架橋剤として例示したものが挙げられる。
本発明の製造方法で用いる処理液は、好ましくは、ベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂の製造に使用する水溶性エチレン性不飽和単量体として例示したものから選ばれる少なくとも1種、および/または、ベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂の製造に使用する架橋剤として例示したものから選ばれる少なくとも1種を含む。このような処理液を用いることにより、従来からの安全性、皮膚刺激性の問題が解消される。
【0021】
本発明の製造方法で用いる処理液は、より好ましくは、ベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂の製造に使用した水溶性エチレン性不飽和単量体から選ばれる少なくとも1種、および/または、ベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂の製造に使用した架橋剤から選ばれる少なくとも1種を含む。このように、ベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂の製造に使用した水溶性エチレン性不飽和単量体と同じ単量体、および/または、ベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂の製造に使用した架橋剤と同じ架橋剤を表面処理に用いることにより、ベースポリマーと同じ成分組成を有する表面処理層が形成されるため、安全性の高い表面処理ができるという利点がある。
【0022】
処理液に含まれるラジカル重合性化合物の使用量は、ベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂の固形分に対し、1〜9質量%の割合で用いることが好ましく、より好ましくは1〜6質量%、さらに好ましくは2〜5質量%である。処理液に含まれるラジカル重合性化合物の使用量が上記範囲から外れると、本発明の効果が十分に発揮できないおそれがある。
本発明の製造方法で用いる処理液は、水を含有した状態で用いることが好ましい。前記処理液中の水の濃度は、広い範囲にわたって選択が可能であるが、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上である。
【0023】
本発明の製造方法で用いる処理液として、ベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂の製造に使用した水溶性エチレン性不飽和単量体から選ばれる少なくとも1種、および、ベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂の製造に使用した架橋剤から選ばれる少なくとも1種を含む処理液を用いる場合、ベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂の製造に使用した架橋剤から選ばれる少なくとも1種の合計使用量は、ベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂の製造に使用した水溶性エチレン性不飽和単量体から選ばれる少なくとも1種の合計使用量に対して、好ましくは0.05〜20モル%、より好ましくは0.1〜10モル%、さらに好ましくは0.5〜5モル%である。すなわち、ベースポリマーを製造する際の、単量体成分に対しての架橋剤の使用量よりも多く用いる。
【0024】
処理液には、表面処理の程度を適度にコントロールするために、HLBが7以上の非イオン性界面活性剤もしくはアニオン系界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤、もしくは水溶性高分子を含有させてもよい。
このような界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアシルエステル、ショ糖脂肪酸エステル、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルポリオキシエチレンサルフェート塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、等が例示でき、水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンイミン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、等を挙げることができる。これらの界面活性剤や水溶性高分子を使用する場合、処理液全量に対して、好ましくは0.01〜30質量%、より好ましくは0.1〜10質量%で使用するのがよい。
【0025】
本発明の製造方法で用いる処理液には、本発明の効果を損なわない範囲で、親水性有機溶媒など、その他の成分を含んでいてもよい。親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジオキサン、アルコキシ(ポリ)エチレングリコール、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ε−カプロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキサイド等のスルホキサイド類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、グリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類;などが挙げられ、これらの1種のみ用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明の製造方法においては、以上のようにして得られる処理液をベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂に添加し、混合する。
混合方法は特に限定されないが、通常の混合機、例えばV型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、回転円板型混合機、気流型混合機、バッチ式ニーダー、連続式ニーダー、パドル型混合機等を用いて、ベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂に処理液を混合する方法が挙げられる。
添加の際の温度は特に限定されないが、好ましくは0〜120℃、より好ましくは0〜60℃、さらに好ましくは10〜40℃である。
【0027】
本発明の製造方法においては、処理液をベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂に添加した後に、活性エネルギー線を照射して表面処理するが、照射の際に粒子状吸水性樹脂を流動させておくことが重要である。このように流動させながら活性エネルギー線を照射して表面処理することにより、吸水性樹脂表面全体にわたっての均一で架橋密度の高い表面処理が発現できる。穏やかに攪拌する場合など、流動が十分でない状態で活性エネルギー線を照射した場合、あるいは流動させないで活性エネルギー線を照射した場合には、吸水性樹脂表面全体にわたっての均一で架橋密度の高い表面処理が発現できない。
活性エネルギー線を照射する際に粒子状吸水性樹脂を流動させておく方法としては、例えば、振動型混合機、振動フィダー、リボン型混合機、円錐型リボン型混合機、スクリュー型混合押出機、気流型混合機、バッチ式ニーダー、連続式ニーダー、パドル型混合機、高速流動式混合機、浮上流動式混合機等を用いる方法が挙げられる。
【0028】
活性エネルギー線を照射する条件としては、通常一般の照射条件を適用できるが、例えば、紫外線を用いる場合、好ましくは、照射強度が3〜1000mW/cm、照射量が100〜10000mJ/cmであり、電子線を用いる場合は、好ましくは、加速電圧が50〜800kV、吸収線量が0.1〜100Mradである。
活性エネルギー線を照射して表面処理する際の処理温度は、従来の表面処理温度よりも低く設定でき、好ましくは60℃未満、より好ましくは0〜55℃、さらに好ましくは5〜50℃、特に好ましくは10〜40℃である。また、乾燥などのために、必要に応じて、粒子状吸水性樹脂を、活性エネルギー線照射後に50〜250℃の温度で加熱処理してもよい。
【0029】
本発明の製造方法においては、吸水性樹脂の製造時に発生する微粉の造粒効果が大きい。すなわち、ベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂に微粉が含まれていても、本発明の製造方法を適用することによって微粉が造粒され、得られる表面処理された粒子状吸水性樹脂中の微粉量を極めて低減させることができる。
〔表面処理された粒子状吸水性樹脂〕
本発明の製造方法によって得られる表面処理された粒子状吸水性樹脂は、吸水性樹脂表面全体にわたっての均一で架橋密度の高い表面処理が発現できており、吸水性樹脂に望まれる特性、例えば、吸収倍率、吸収速度、ゲル強度、吸引力を極めて高いレベルとすることができる。
【0030】
本発明の製造方法によって得られる表面処理された粒子状吸水性樹脂は、その自由膨潤倍率(GV)が、好ましくは20g/g以上、より好ましくは22g/g以上、さらに好ましくは24g/g以上、特に好ましくは26g/g以上である。
本発明の製造方法によって得られる表面処理された粒子状吸水性樹脂は、その加圧下吸収倍率(AAP)が、4.9kPaにおいて、好ましくは10g/g以上、より好ましくは12g/g以上、さらに好ましくは14g/g以上、さらに好ましくは15g/g以上、さらに好ましくは17g/g以上、特に好ましくは20g/g以上である。
本発明の製造方法によって得られる表面処理された粒子状吸水性樹脂は、吸水性樹脂の製造時に発生する微粉の造粒効果が大きいため、その粒度分布は表面処理前に比べて高粒度側へシフトする。シフトする割合は、処理液の種類や量、さらに処理液を水溶液とした場合は水の比率、活性エネルギー線の照射条件、照射時の流動のさせかたなどにより変化する。
【0031】
本発明の製造方法によって得られる表面処理された粒子状吸水性樹脂は、吸水しても造粒状態を保つ凝集物(FSA:fluid stable aggregate)となり、ゲルブロッキングが起こりにくい。
【実施例】
【0032】
以下に、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下では、便宜上、「質量部」を単に「部」と、「リットル」を単に「L」と記すことがある。また、「質量%」を「wt%」と記すことがある。
実施例および比較例における、測定方法および評価方法を以下に示す。
<自由膨潤倍率(GV)>
吸水性樹脂0.2gを不織布製の袋(60mm×60mm)に均一に入れ、大過剰(通常は500mL)の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)中に室温(25±2℃)で浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機を用いて250Gで3分間水切りを行った後、袋の質量W1(g)を測定した。また、同様の操作を吸水性樹脂を用いないで行い、その時の袋の質量W2(g)を測定した。そして、W1、W2から、次式によって自由膨潤倍率(GV)(g/g)を算出した。
【0033】
GV(g/g)=[W1(g)−W2(g)−吸水性樹脂の質量(g)]/吸水性樹脂の質量(g)
<加圧下吸収倍率(AAP)>
内径60mmのプラスチックの支持円筒の底に、ステンレス製400メッシュの金網(目の大きさ38μm)を融着させ、室温(25±2℃)、湿度50RH%の条件下で、金網上に粒子状吸水性樹脂0.9gを均一に散布し、その上に、粒子状吸水性樹脂に対して、4.9kPaの荷重を均一に加えることができるよう調整された、外径が60mmよりわずかに小さく支持円筒の内壁面との間に隙間が生じず、かつ上下の動きが妨げられないピストンと荷重とをこの順に載置して、この測定装置一式の質量Wa(g)を測定した。
【0034】
直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mmのガラスフィルター(株式会社相互理化学硝子製作所社製、細孔直径:100〜120μm)を置き、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)(20〜25℃)をガラスフィルターの上面と同じレベルになるように加えた。その上に、直径90mmの濾紙1枚(ADVANTEC東洋株式会社製、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を載せ、表面が全て濡れるようにし、かつ過剰の液を除いた。
測定装置一式を前記湿った濾紙上に載せ、液を荷重下で所定時間吸収させた。この吸収時間は、測定開始から算出して、1時間後とした。具体的には、1時間後、測定装置一式を持ち上げ、その質量Wb(g)を測定した。この質量測定はできるだけすばやく、かつ振動を与えないように行わなくてはならない。そして、Wa、Wbから、次式によって加圧下吸収倍率(AAP)(g/g)を算出した。
【0035】
AAP(g/g)=[Wb(g)−Wa(g)]/粒子状吸水性樹脂の質量(g)
<表面処理品の吸水時の安定性>
表面処理品の中で比較的大きい粒子(凝集体)を光学顕微鏡(ニコン、MICROFLEX UFX−II)下に置き、拡大倍率を20倍に設定した。次に、水を添加して、膨潤過程で凝集体がその構成粒子に分かれるかを観察した。さらに、必要に応じて、針を用いて、凝集体をその構成粒子に分ける試みを行い、分かれやすさを調べた。
<粒度分布>
表面処理前および表面処理後の吸水性樹脂10gを直径75mm、目開き850μm、600μm、300μmのテストふるい(IIDA製作所製)で篩い分けし、それぞれの質量を測定し、各粒度の質量%を求めた。篩い分けは、IIDA製作所製のSIEVE SHAKER ES−65型を用いて5分間振とうすることにより行った。
【0036】
〔製造例1〕
2本のシグマ型ブレードを備えたニーダーに、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸、および水からなるアクリル酸塩系単量体水溶液(単量体濃度:38wt%、中和率:75モル%)を調製し、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(付加モル数:n=8)を前記単量体に対して0.05モル%となるように溶解させた。
次に、この水溶液に窒素ガスを吹き込むことで、水溶液中の酸素濃度を低減させるとともに、反応容器内全体を窒素置換した。続いて、2本のシグマ型ブレードを回転させながら、重合開始剤として、0.05モル%(対単量体)の過硫酸ナトリウムおよび0.0006モル%(対単量体)のL−アスコルビン酸を添加し、ニーダー内で攪拌重合を行い、40分後に、平均粒子径2mmの含水ゲル状重合体を得た。
【0037】
得られた含水ゲル状重合体を170℃に設定した熱風乾燥機中で45分間乾燥させた後、乾燥物をロールミル粉砕機で粉砕し、目開き850μmのふるいで分級して、粒径が850μmよりも大きい粒子を除去することにより、ベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂(A)を得た。
得られたベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂(A)の各種評価結果を表1に示した。
また、得られたベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂(A)の粒度分布を表2に示した。
【0038】
〔実施例1〕
製造例1で得られたベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂(A)100gに、ポリエチレングリコールジアクリレート(付加モル数:n=8)0.20g、アクリル酸ナトリウム2.6g、アクリル酸0.8g、水5.4g、過硫酸ナトリウム0.005g、イルガキュア184(チバ・スペシャルティケミカルズ製)0.036gを予め混合した処理液を添加して混合した。
次いで、混合物10gを、Minishaker(IKA Works,Inc.製、MS1S1)にセットし、600回/分で振動攪拌しながら、紫外線照射装置(Toshiba製、TOSCUR401)を用いて、照射強度4mW/cmで20分間、室温でUVを照射し、表面処理された粒子状吸水性樹脂(1)を得た。
【0039】
得られた表面処理された粒子状吸水性樹脂(1)の各種評価結果を表1に示した。
〔実施例2〕
ポリエチレングリコールジアクリレート(付加モル数:n=8)1.0g、アクリル酸ナトリウム2.6g、アクリル酸0.8g、水4.6g、過硫酸ナトリウム0.007g、0.044gのイルガキュア184を予め混合した処理液を使用する以外は実施例1と同様にして、表面処理された粒子状吸水性樹脂(2)を得た。
得られた表面処理された粒子状吸水性樹脂(2)の各種評価結果を表1に示した。
〔実施例3〕
ポリエチレングリコールジアクリレート(付加モル数:n=8)0.20g、アクリル酸ナトリウム2.6g、アクリル酸0.8g、水5.4g、過硫酸ナトリウム0.005g、イルガキュア2959(チバ・スペシャルティケミカルズ製)0.036gを予め混合した処理液を使用する以外は実施例1と同様にして、表面処理された粒子状吸水性樹脂(3)を得た。
【0040】
得られた表面処理された粒子状吸水性樹脂(3)の各種評価結果を表1に示した。
また、得られた表面処理された粒子状吸水性樹脂(3)の粒度分布を表2に示した。
〔実施例4〕
トリメチロールプロパントリアクリレート0.20g、アクリル酸ナトリウム2.6g、アクリル酸0.8g、水5.4g、過硫酸ナトリウム0.005g、0.036gのイルガキュア184を予め混合した処理液を使用する以外は実施例1と同様にして、表面処理された粒子状吸水性樹脂(4)を得た。
得られた表面処理された粒子状吸水性樹脂(4)の各種評価結果を表1に示した。
【0041】
〔実施例5〕
トリメチロールプロパントリアクリレート1.0g、アクリル酸ナトリウム2.6g、アクリル酸0.8g、水4.6g、過硫酸ナトリウム0.007g、0.044gのイルガキュア184を予め混合した処理液を使用する以外は実施例1と同様にして、表面処理された粒子状吸水性樹脂(5)を得た。
得られた表面処理された粒子状吸水性樹脂(5)の各種評価結果を表1に示した。
〔実施例6〕
トリメチロールプロパントリアクリレート1.2g、アクリル酸3.9g、水3.9g、過硫酸ナトリウム0.008g、0.051gのイルガキュア184を予め混合した処理液を使用する以外は実施例1と同様にして、表面処理された粒子状吸水性樹脂(6)を得た。
【0042】
得られた表面処理された粒子状吸水性樹脂(6)の各種評価結果を表1に示した。
〔実施例7〕
製造例1で得られたベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂(A)500gを2本のシグマ型ブレードを備えた容量2Lのバッチ式ニーダに入れ、ブレード回転数73rpmで吸水性樹脂を攪拌しながら、ポリエチレングリコールジアクリレート(付加モル数:n=9)1.0g、アクリル酸ナトリウム10.0g、アクリル酸4.0g、水30g、過硫酸ナトリウム0.0225g、0.15gのイルガキュア2959を予め混合した処理液を滴下混合した。
【0043】
続いて、このバッチ式ニーダ上に紫外線照射装置(ウシオ電機株式会社製、ランプハウスUVH−1500M、電源部VB−1501BY、発光長125mmメタルハライドランプ)を置き、ブレード回転数73rpmで吸水性樹脂を攪拌しながら、照射強度65mW/cmで10分間、室温でUVを照射し、表面処理された粒子状吸水性樹脂(7)を得た。
得られた表面処理された粒子状吸水性樹脂(7)の各種評価結果を表1に示した。
〔実施例8〕
ポリエチレングリコールジアクリレート(付加モル数:n=9)1.0g、アクリル酸ナトリウム10.0g、アクリル酸4.0g、水45g、過硫酸ナトリウム0.0225g、0.15gのイルガキュア2959を予め混合した処理液を使用する以外は実施例7と同様にして、表面処理された粒子状吸水性樹脂(8)を得た。
【0044】
得られた表面処理された粒子状吸水性樹脂(8)の各種評価結果を表1に示した。
〔実施例9〕
製造例1で得られたベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂(A)1000gをレーディゲミキサー(株式会社マツボー製、タイプM20)に入れ、ミキサー回転数140rpm、チョッパー回転数500rpmで吸水性樹脂を攪拌しながら、ポリエチレングリコールジアクリレート(付加モル数:n=9)2.0g、アクリル酸ナトリウム20.0g、アクリル酸8.0g、水90g、過硫酸ナトリウム0.045g、0.3gのイルガキュア2959を予め混合した処理液をスプレーで供給して吸水性樹脂と混合した。
【0045】
続いて、このレーディゲミキサー上に実施例7で使用した紫外線照射装置を置き、ミキサー回転数180rpm、チョッパー回転数500rpmで吸水性樹脂を攪拌しながら、照射強度42mW/cmで5分間、室温でUVを照射し、表面処理された粒子状吸水性樹脂(9)を得た。
得られた表面処理された粒子状吸水性樹脂(9)の各種評価結果を表1に示した。
また、得られた表面処理された粒子状吸水性樹脂(9)の粒度分布を表2に示した。
〔実施例10〕
ポリエチレングリコールジアクリレート(付加モル数:n=4)2.0g、アクリル酸ナトリウム20.0g、アクリル酸8.0g、水90g、過硫酸ナトリウム0.045g、0.30gのイルガキュア2959を予め混合した処理液を使用する以外は実施例9と同様にして、表面処理された粒子状吸水性樹脂(10)を得た。
【0046】
得られた表面処理された粒子状吸水性樹脂(10)の各種評価結果を表1に示した。
〔実施例11〕
2−ヒドロキシ−1−アクリロキシ−3−メタクリロキシプロパン(新中村化学工業株式会社製、701A)0.8g、アクリル酸ナトリウム20.0g、アクリル酸8.0g、水90g、過硫酸ナトリウム0.045g、0.30gのイルガキュア2959を予め混合した処理液を使用する以外は実施例9と同様にして、表面処理された粒子状吸水性樹脂(11)を得た。
得られた表面処理された粒子状吸水性樹脂(11)の各種評価結果を表1に示した。
【0047】
〔比較例1〕
製造例1で得られたベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂(A)100gに、1,4−ブタンジオール0.32g、プロピレングリコール0.5g、水2.73gを予め混合した処理液を添加して混合した。
次いで、混合物10gを、212℃で20分間加熱処理することにより、表面処理された粒子状吸水性樹脂(c1)を得た。
得られた表面処理された粒子状吸水性樹脂(c1)の各種評価結果を表1に示した。
〔比較例2〕
実施例1と同様にして得られた、処理液を添加混合した粒子状吸水性樹脂10gをバット上に広げ、スパチュラで時々混合しながら、実施例1と同じ条件でUVを照射したところ、粒径数ミリメートル以上の造粒物を含む不均一な凝集体となった。この凝集体を目開き1000μmのテストふるい(IIDA製作所製)に全量通して、表面処理された粒子状吸水性樹脂(c2)を得た。
【0048】
得られた表面処理された粒子状吸水性樹脂(c2)の各種評価結果を表1に示した。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、吸水性樹脂の表面処理を行うにあたって、従来からの安全性、皮膚刺激性の問題を解消できるとともに、室温付近の反応温度でも十分に表面処理可能であり、しかも、得られる表面処理された粒子状吸水性樹脂は、吸収倍率、吸収速度、ゲル強度、吸引力など吸水性樹脂に望まれる特性が極めて高いレベルにある。また、得られる表面処理された粒子状吸水性樹脂は、吸水しても造粒状態を保つ凝集物(FSA:fluid stable aggregate)となり、ゲルブロッキングが起こりにくい。さらに、本発明によれば、吸水性樹脂の製造時に発生する微粉の造粒効果が大きい。したがって、本発明によって得られる表面処理された粒子状吸水性樹脂は、生理綿、紙おむつ、或いはその他の体液を吸収する衛生材料や農業用の吸水性樹脂としても最適なものとなり得る。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合性化合物を含む処理液をベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂に添加した後に、当該粒子状吸水性樹脂を流動させながら活性エネルギー線を照射して表面処理することを特徴とする、表面処理された粒子状吸水性樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記処理液が重合開始剤を含む、請求項1に記載の表面処理された粒子状吸水性樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記処理液が、一分子内に2個以上の重合性不飽和基及び/又は2個以上の反応性官能基を有する化合物を含む、請求項1または2に記載の表面処理された粒子状吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
ベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂の固形分に対し、ラジカル重合性化合物を1〜9質量%の割合で用いる、請求項1から3までのいずれかに記載の表面処理された粒子状吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記処理液が、ベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂の製造に使用した水溶性エチレン性不飽和単量体から選ばれる少なくとも1種、および/または、ベースポリマーとしての粒子状吸水性樹脂の製造に使用した架橋剤から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1から4までのいずれかに記載の表面処理された粒子状吸水性樹脂の製造方法。
【請求項6】
表面処理された粒子状吸水性樹脂の4.9kPaでの加圧下吸収倍率が10g/g以上である、請求項1から5までのいずれかに記載の表面処理された粒子状吸水性樹脂の製造方法。



【公開番号】特開2009−161768(P2009−161768A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87432(P2009−87432)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【分割の表示】特願2004−247160(P2004−247160)の分割
【原出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】