説明

表面処理水酸化マグネシウム、それを配合した耐白化性難燃性樹脂組成物、及びそれより得られる押出成形品

【課題】樹脂又はゴムに配合してなる難燃性樹脂組成物の難燃剤として、外観の白化及び質量増加からなる耐白化性を総合的に、なかでも耐外観白化性が強められた難燃性樹脂組成物を得ることのできる表面処理水酸化マグネシウム、それを配合した耐白化性難燃性樹脂組成物、及びそれより得られる押出成形品を提供する。
【解決手段】脂肪族アミンで表面処理され、その表面処理量が0.5〜5.0質量%であることを特徴とする表面処理水酸化マグネシウム、或いは樹脂又はゴムに、前記の表面処理水酸化マグネシウムを配合したことを特徴とする耐白化性難燃性樹脂組成物、及びそれより得られる押出成形品等を提供した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理水酸化マグネシウム、それを配合した耐白化性難燃性樹脂組成物、及びそれより得られる押出成形品に関し、更に詳しくは、脂肪族アミンで表面処理された水酸化マグネシウム、それを用いた耐外観白化性及び耐炭酸ガス白化性からなる耐白化性のなかで、特に優れた耐外観白化性を持つ耐白化性難燃性樹脂組成物、及びそれより得られる、例えば、電線・ケーブルの被覆層として好適な押出成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂やゴムの難燃剤としては、ハロゲン含有化合物や、これとリン含有化合物等を組み合わせて使用するものが用いられてきたが、環境負荷や廃棄物処理の問題が提起され、安全な水酸化マグネシウムの使用が多く提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
しかしながら、水酸化マグネシウムは、比較的多量に配合しなければ難燃性が得られず、しかも、オレフィン系樹脂等の樹脂やゴムと水酸化マグシウムの相溶性も悪く、得られる難燃性樹脂組成物中での水酸化マグネシウムの分散性や、耐水性にも問題があり、水と空気中の炭酸ガスと反応すると、水酸化マグネシウムが塩基性炭酸マグネシウムに白く変質する問題があった。
この白く変質する現象は、外観の目視で認められると共に、炭酸マグネシウム等の生成による樹脂組成物の質量増加として評価することができる。しかし、質量増加が認められなければ、白化もほとんど認められないが、外観の白化の程度と質量増加とは一次的な関係はなく、外観に激しい白化が認められても、質量増加は少ない場合も、大きい場合もある。そして、この白化がおこり、これが押出成形品として電線・ケーブルの被覆層等として使用されると、特に外観白化は、拭取ることができず、商品価値の著しい低下を招くという問題があった。
【0004】
このため特許文献1には、水酸化マグネシウムの表面を、脂肪酸、脂肪酸金属塩、チタネートカップリング剤またはシランカップリング剤のいずれかで表面処理し、かつ特定の粒子径を持つ水酸化マグネシウムを配合する難燃性電気絶縁組成物が提案され、相溶性の改善の効果が記載されている。
また、特許文献2、3には、水酸化マグネシウムとして水酸化マグネシウムを主成分とする天然鉱物を使用して、これを、脂肪酸、脂肪酸金属塩、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤より選ばれた少なくとも1種を主成分とする表面処理剤を0.5〜5重量%程度添加して表面処理を施したものを、プラスチック又はゴムに添加して、難燃性と共に、耐酸性や吸湿性を抑えた組成物が記載されている。
【0005】
しかしながら、外観の白化、及び炭酸ガス・水との反応による質量増加は、いずれの上記の技術をもってしても生じ、特に、外観白化が生じると、商品価値がなくなることから、これらに対する抵抗性(耐白化性)を更に強く持つ難燃性樹脂組成物の開発が求められていた。
【0006】
【特許文献1】特開昭60−100302号公報
【特許文献2】特開平5−17692号公報
【特許文献3】特開平7−161230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の問題点に鑑み、樹脂又はゴムに配合してなる難燃性樹脂組成物の難燃剤として、外観の白化(以下、外観白化とも称する。)及び質量増加(以下、炭酸ガス白化とも称する。)からなる耐白化性を総合的に、なかでも耐外観白化性が強められた難燃性樹脂組成物を得ることのできる表面処理水酸化マグネシウム、それを配合した耐白化性難燃性樹脂組成物、及びそれより得られる押出成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、難燃性樹脂組成物の耐白化性、特に耐外観白化性を強めるために、水酸化マグネシウムの表面処理に適した各種の化合物を検討した結果、表面処理剤として脂肪族アミンを選び、その表面処理量を特定量とした表面処理水酸化マグネシウムを、樹脂又はゴムを含む樹脂組成物に配合したところ、その表面処理水酸化マグネシウムは、樹脂又はゴムと、優れた相溶性と優れた分散性をもち、得られた難燃性樹脂組成物は、耐白化性が総合的に、なかでも耐外観白化性が強められているのに加えて、機械特性も優れ、また、押出成形性も確保されており、本発明の目的を達成できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、脂肪族アミンで表面処理され、その表面処理量が0.5〜5.0質量%であることを特徴とする表面処理水酸化マグネシウムが提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、脂肪族アミンがステアリルアミン又はオレイルアミンであることを特徴とする表面処理水酸化マグネシウムが提供される。
【0010】
本発明の第3の発明によれば、樹脂又はゴムに、第1又は2の発明に係る表面処理水酸化マグネシウムを配合したことを特徴とする耐白化性難燃性樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、樹脂又はゴム100質量部に対して、第1又は2の発明に係る表面処理水酸化マグネシウムを50〜250質量部配合したことを特徴とする耐白化性難燃性樹脂組成物が提供される。
【0011】
本発明の第5の発明によれば、第4の発明において、樹脂又はゴムがエチレン系樹脂であることを特徴とする耐白化性難燃性樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、エチレン系樹脂は、直鎖状エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−アクリル酸エチル共重合体からなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする耐白化性難燃性樹脂組成物が提供される。
【0012】
一方、本発明の第7の発明によれば、第3〜6のいずれかの発明に係る耐白化性難燃性樹脂組成物を押出成形して得られることを特徴とする押出成形品が提供される。
【発明の効果】
【0013】
上記のように、本発明は、脂肪族アミンで表面処理したことを特徴とする表面処理水酸化マグネシウム、それを用いた耐白化性難燃性樹脂組成物、及びそれより得られる押出成形品であるので、脂肪族アミンの表面処理により、得られる表面処理水酸化マグネシウムは、無極性あるいは弱い極性しか持たない樹脂又はゴムと、脂肪族アミンを介して優れた相溶性をもち、よって、優れた分散性をもち、得られる難燃性樹脂組成物は、良好な機械特性、及び押出成形性を有すると共に、優れた耐白化性が総合的に、なかでも耐外観白化性が、従来のものより有意に強めることができる。
なお、脂肪族アミンで表面処理された水酸化マグネシウムの耐外観白化性が特に強められる作用機構は、明確には解明されていないが、脂肪族アミンにより、より完全に水酸化マグネシウムの表面が覆われることにより、もたらされることにもよると、本発明者らは考察している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の表面処理水酸化マグネシウム、それを配合した耐白化性難燃性樹脂組成物、及びそれより得られる押出成形品について、各項目毎に詳細に説明する。
【0015】
1.脂肪族アミン
本発明において使用される脂肪族アミンとしては、炭素数が15以上の飽和脂肪族アミン、及び不飽和脂肪族アミン等が挙げられる。
飽和脂肪族アミンとしては、例えば、パルミチルアミン、ステアリルアミン、ベヘニルアミン等が挙げられ、不飽和脂肪族アミンとしては、例えば、オレイルアミン、エルカニルアミン、リシルイルアミン、リノレイルアミン、リノレルアミン等が挙げられる。
本発明においては、飽和脂肪族アミンとしてステアリルアミン、及び不飽和脂肪族アミンとしてオレイルアミンが好適に使用できる。
【0016】
脂肪族アミンの、水酸化マグネシウムに対する表面処理量は、0.5〜5.0質量%、好ましくは0.8〜4.0質量%、更に好ましくは1.0〜3.8質量%である。
表面処理量が0.5質量%未満であると、水酸化マグネシウムの表面全体を覆うことが困難となることが有り得て、機械特性、耐水性、耐炭酸ガス白化性のいずれも低下し、一方、これが5.0質量%を超えると、水酸化マグネシウムの難燃剤として効果が低下し、また、樹脂組成物から脂肪族アミンが滲み出てくるいわゆるブルーミングがおこり得る。
なお、本発明においては2種以上の脂肪族アミンで表面処理を行ってもよい。
【0017】
2.水酸化マグネシウム
本発明において使用される水酸化マグネシウムとしては、海水等から製造された合成水酸化マグネシウム及び天然産ブルーサイト鉱石を粉砕して製造された水酸化マグネシウムを主成分とする天然鉱石(以下、天然産水酸化マグネシウムとも言う。)のいずれも好適に用いることができ、その平均粒径は、分散性、難燃性の効果から40μm以下が好ましく、特に0.2〜6μmのものが好ましい。
【0018】
3.表面処理水酸化マグネシウムの調製
本発明の表面処理水酸化マグネシウムは、公知の表面処理法で表面処理すればよく、特に限定されない。
例えば、海水から製造する合成水酸化マグネシウムの場合、水溶液中で水酸化マグネシウムの結晶析出が行われるので、この水溶液中に所望量の脂肪族アミンを、必要ならばアルコール等の溶媒に希釈して配合し、析出後乾燥させて、脂肪族アミンで表面処理された表面処理水酸化マグネシウムを製造することができる。
また、合成水酸化マグネシウム及び天然産水酸化マグネシウムとも、例えば脂肪族アミンの有機溶媒液を加え混合するスラリー法を採用して製造することができる。
【0019】
更に、上述のいわゆる湿式法に加えて、以下に説明する乾式法で表面処理することもできる。
すでに、使用目的に応じた粒径を持つ合成水酸化マグネシウム又は天然産水酸化マグネシウムに、所望量の脂肪族アミンを加え、これが溶融する温度以上、例えば140〜190℃程度に加熱しながら攪拌混合することにより製造することができる。この場合は、コンティニュアスミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、スーパーミキサー、ボールミル等公知の混合機を用いればよい。
また、天然産水酸化マグネシウムの場合は、粉砕して使用するので、粗粉砕の天然産水酸化マグネシウムと所望量の脂肪族アミンをボールミル等に入れ、必要ならば外部から脂肪族アミンが溶解する温度に加熱しながら、粉砕と同時に表面処理を行ってもよい。
【0020】
4.樹脂又はゴム
本発明で使用される樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、メタクリル系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
これらの中では、無極性あるいは弱い極性しか持たないオレフィン系樹脂を好適に使用することができる。
オレフィン系樹脂としては、エチレン系樹脂及びプロピレン系樹脂が挙げられ、本発明では、押出成形品としての電線・ケーブルの絶縁被覆層として実績のあるエチレン系樹脂が、特に好適な樹脂として使用できる。
【0021】
エチレン系樹脂としては、高圧法ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン(炭素数2〜12)共重合体、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体、エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体が挙げられ、具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体等を挙げることができる。
【0022】
本発明では、それ自体水酸化マグネシウムとの相溶性がある、メルトマスフローレート0.05〜50g/10分及びコモノマー含有量が5〜40質量%のエチレン−アクリル酸エチル共重合体又はエチレン−酢酸ビニル共重合体、並びにメルトマスフローレート0.05〜50g/10分及び密度0.86〜0.92g/cmの直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体を好適に使用することができる。
【0023】
プロピレン系樹脂としては、具体的にはプロピレンホモポリマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1三元共重合体等を例示できる。
【0024】
ゴムとしては、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、アクリルゴム、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレンーブタジエンースチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−スチレンブロック共重合体等を例示できる。
なお、樹脂又はゴムは、1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
5.耐白化性難燃樹脂性組成物
本発明の耐白化性難燃性樹脂組成物は、それぞれ所定量の樹脂又はゴム、本発明の表面処理水酸化マグネシウム及び必要に応じて適当量のその他の配合物(安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、核剤、滑剤、加工性改良剤、充填剤、分散剤、銅害防止剤、中和剤、発泡剤、気泡防止剤、着色剤、カーボンブラック、その他の難燃剤)を配合して、一般的な方法、例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、コンティニュアスミキサー、ロールミルあるいは押出機を用いて均一に溶融混合することによって製造することができる。
製造した本発明の耐白化性難燃性樹脂組成物は、次いで粒径2〜7mm程度のペレットに造粒し、これを成形に用いることが望ましい。
【0026】
なお、本発明の耐白化性難燃性樹脂組成物において、表面処理水酸化マグネシウムの配合量は、樹脂又はゴム100質量部に対して、50〜250質量部、好ましくは60〜200質量部、更に好ましくは75〜180質量部が望ましい。
配合量が50質量部未満では、難燃性が低下し、かつ、難燃性樹脂組成物の引張破壊応力の低下それ自体が小さい。一方、250質量部を超えると、機械特性、押出加工性が落ちる。
【0027】
6.押出成形品
本発明の押出成形品は、上記の耐白化性難燃性樹脂組成物を、公知の方法で押出成形機を用い、これに投入し加熱溶融させた後、金型から押出成形して製造することができる。
本発明の好適な利用と考えられる、押出成形品が電線・ケーブルの被覆層である場合は、公知の方法で電線・ケーブルの芯線上に絶縁層やシース層として同様に押出成形して被覆することにより製造することができる。
【実施例】
【0028】
次に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本明細書中で用いられた試料の調製及びその評価は、個別に記載された方法を除き、それぞれ以下によるものである。
【0029】
[試料の調製]
各々所定量の樹脂又はゴム、表面処理水酸化マグネシウム、及び必要に応じて適当量のその他の配合物をバンバリーミキサーに投入し、200℃で10分間溶融混練して樹脂組成物を得て、これから平均粒径約4mmのペレットを得て、これを160℃予熱5分間、150kgf加圧3分間、最後に圧力を保ったまま23℃になるまで冷却する圧縮成形により1mm厚のシートを得て、試料として使用した。
【0030】
[評価]
I.耐白化性
得られた試料(シート)を、3cm×5cmの矩形にダンベルで打ち抜き、短辺側一辺中央部に直径約5mmの穴をあけ、吊り下げられるようにした試験片を調製した。
得られた試験片を用いて、以下に説明する炭酸ガス暴露試験を行い、耐白化性を評価した。
【0031】
炭酸ガス暴露試験:
試験片を室温(25℃)で相対湿度90%、及び所定の炭酸ガス濃度の雰囲気中に、吊り下げ放置し、所定時間毎に試験片を取出し、評価した。
【0032】
I−1.耐外観白化性
耐外観白化性は、上記炭酸ガス暴露試験を行い、所定時間経過後の試験片の表面を目視で、以下の8段階で基準で評価した。
基準0:全く表面白化が認められない。
基準1:かすかに表面白化が認められる。
基準2:やや少し表面白化が認められる。
基準3:少し表面白化が認められる。
基準4:やや多く表面白化が認められる。
基準5:多く表面白化が認められる。
基準6:かなり多く表面白化が認められる。
基準7:全面に著しく表面白化が認められる。
【0033】
I−2.耐炭酸ガス白化性
試験開始前に試験片の質量を測定し、上記炭酸ガス暴露試験を行い、所定時間経過後の試験片を取出し、1.3kPa以下の減圧下で、80℃で12時間乾燥し、冷却後、質量を測定し、当初の質量で割り、その百分率で表した。この数値が大きくなるほど、耐炭酸ガス白化性が劣ることになる。
なお、上述したように耐外観白化性と耐炭酸ガス白化性は、必ずしも一致するものではない。
【0034】
II.機械特性
II−1.引張破壊応力
試料をJIS K6251の4.1に規定する3号ダンベルで打ち抜いた試験片につき、JIS C3005に準拠して引張破壊応力試験を行った。3試験片を測定し平均値で評価した。
【0035】
II−2.引張破壊歪
引張破壊応力試験と同様の試験片を用いて、JIS C3005に準拠して引張破壊歪試験を行った。3試験片を測定し平均値で評価した。
【0036】
[実施例1及び比較例1、2]
天然産水酸化マグネシウム(マグシーズ−W、神島化学製)に、ステアリルアミン(アミンABT、日本油脂製)を、表面処理量として2.8質量%となるように配合し、約180℃に加熱しながらスーパーミキサーを用いて10分間混合し、表面処理量2.8質量%のステアリルアミン表面処理水酸化マグネシウムを得た。
【0037】
別に、カーボンブラック(バルカン9A−32、キャボット社製)とエチレン−ブテン−1共重合体(メルトマスフローレート1g/10分、密度0.918g/cm、GMM−1810、日本ユニカー製)を用いて、200℃で10分溶融混練して、平均粒径4mmに造粒し、カーボンブラック36質量%を含むカーボンブラックマスターバッチを調製した。
上記エチレン−ブテン−1共重合体、及び上記で調製したカーボンブラックマスターバッチを、樹脂(エチレン−ブテン−1共重合体)100質量部あたりカーボンブラックが4.6質量部配合されるように、混合した。
上記混合樹脂100質量部あたり、上記で調製したステアリルアミン表面処理水酸化マグネシウム100質量部、及び酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを1質量部となるように配合し、実施例1の樹脂組成物を得て、これから試料を調製した。
【0038】
実施例1のステアリルアミン表面処理水酸化マグネシウムを、天然産水酸化マグネシウム(マグシーズ−W、神島化学製)、又は表面処理水酸化マグネシウム(天然産水酸化マグネシウム、ステアリン酸2.8質量%処理、マグシーズW−H4、神島化学製)に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例1、2の樹脂組成物を得て、試料を調製した。
各々の樹脂組成物の組成を表1に示した。
得られた試料につき、耐白化性と機械特性を評価し、結果を表1に示した。
【0039】
機械特性については、実施例1及び比較例2のいずれの樹脂組成物も同等で好適であったが、比較例1の樹脂組成物は劣っていた。
耐白化性試験においては、炭酸ガス暴露試験において暴露炭酸ガス濃度100%の7日後、及び14日後のいずれの場合においても、目視で評価した耐外観白化性において、実施例1ものは、比較例1、2より明らかに優れていた。また、質量増加率で評価した耐炭酸ガス白化性についても、比較例1を1として、それに対する倍率も表1に示したが、実施例1のものは、比較例2と同程度であったが、比較例1とは、明らかに優れていた。
実施例1、比較例1、2についての炭酸ガス暴露試験は、暴露炭酸ガス濃度を40%、及び10%についても行い、初めて白化が目視で基準1と認められた白化開始時間を測定した。
【0040】
反応速度は、指数関数で計算されるので、炭酸ガス濃度が0.03%である大気中での白化開始時間を見積もるために、炭酸ガス濃度軸と白化開始時間軸からなる両対数グラフ用紙に、得られた数値をプロットして、大気中の白化開始時間を見積もり、比較した。
図1に、実施例1と比較例1、2の両対数グラフを示したが、実施例1、及び比較例1、2の白化開始時間は、それぞれ1020時間、190時間及び210時間となり、実施例1は比較例1の5.4倍、比較例2は比較例1の1.1倍の白化開始時間が得られ、本発明の耐白化性難燃性樹脂組成物は、総合的に優れた耐白化性を持ち、なかでも耐外観白化性が非常に強められていることが認められた。
【0041】
[実施例2、3及び比較例3]
ステアリルアミン(アミンABT、日本油脂製)を、表面処理水酸化マグネシウムの表面処理量として、1.0質量%、3.8質量%、及び7.5質量%となるように配合し、ステアリルアミン表面処理水酸化マグネシウムとした以外は、実施例1と同様にして、実施例2、3及び比較例3の樹脂組成物を得て、試料を調製した。
各々の樹脂組成物の組成は、表1に示した。
得られた試料につき、耐白化性と機械特性を評価し、結果を表1に示した。
機械特性については、実施例2、3及び比較例3のいずれの樹脂組成物も同等で好適であった。
耐白化性試験においては、質量増加率で評価した耐炭酸ガス白化性については、比較例1に比べて暴露炭酸ガス濃度100%の7日後、及び14日後のいずれの場合においても、実施例2、3及び比較例3は、明らかに優れていたが、目視で評価した耐外観白化性においては、比較例3では、7日後であっても、拭い落とすことができる炭酸ガス白化(これは拭い落とすことができない。)とは異なる白い物質の滲み出しが観られ、ブルーミングと認められたので、不適とした。
実施例2、3の樹脂組成物は、したがって総合的に優れた耐白化性を持ち、なかでも耐外観白化性が強められていることが認められた。
【0042】
【表1】

【0043】
[実施例4]
ステアリルアミンをオレイルアミン(アミンOB、日本油脂製)とした以外は、実施例1と同様にして、実施例4の樹脂組成物を得て、試料を調製した。
得られた樹脂組成物の組成及びその評価結果を表2に示したが、機械特性については、実施例4の樹脂組成物は比較例2と同等で好適であった。
目視で評価した耐外観白化性において、実施例4のものは、比較例1より明らかに優れていた。また、質量増加率で評価した耐炭酸ガス白化性についても、実施例4のものは、比較例1及び2より優れていて、総合的に優れた耐白化性を持ち、なかでも耐外観白化性が強められていることが認められた。
【0044】
【表2】

【0045】
[比較例4、実施例5]
表面処理水酸化マグネシウムの配合量を150質量部とした以外は、比較例1及び実施例1と同様にして、それぞれ比較例4及び実施例5の樹脂組成物を得て、試料を調製した。
得られた樹脂組成物の組成及びその評価結果を表3に示したが、機械特性については、比較例4の樹脂組成物は、実施例5に比べて劣っていた。また、目視で評価した耐外観白化性において、実施例5のものは、比較例4より明らかに優れていた。また、実施例5のものは、質量増加率で評価した耐炭酸ガス白化性についても、より優れていて、明らかな相違が認められ、総合的に優れた耐白化性を持ち、なかでも耐外観白化性が強められていることが認められた。
【0046】
【表3】

【0047】
[比較例5、実施例6]
カーボンブラック(バルカン9A−32、キャボット社製)とエチレン−アクリル酸エチル共重合体(メルトマスフローレート0.5g/10分、アクリル酸エチル含有量23質量%、NUC−831、日本ユニカー製)を用いて、200℃で10分溶融混練して、造粒し、カーボンブラック36質量%を含むカーボンブラックマスターバッチを調製した。
得られたカーボンマスターバッチ、上記エチレン−アクリル酸エチル共重合体、比較例1で用いた表面処理をしていない水酸化マグネシウム又は実施例1で用いた表面処理水酸化マグネシウム、及び酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを用いて、それぞれ比較例5、実施例6の樹脂組成物を得て、試料を調製した。
各々の樹脂組成物の組成は、表4に示した。
得られた試料につき、耐白化性と機械特性を評価し、結果を表4に示した。
機械特性については、比較例5の樹脂組成物は、実施例6に比べて劣っていた。
耐白化性試験においては、炭酸ガス暴露試験において暴露炭酸ガス濃度100%の7日後、14日後のいずれの場合においても、目視で評価した耐外観白化性において、実施例6のものは、比較例5より優れていた。また、質量増加率で評価した耐炭酸ガス白化性についても、より優れていて、総合的に優れた耐白化性を持ち、なかでも耐外観白化性が強められていることが認められた。
【0048】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の表面処理水酸化マグネシウム及びそれを配合した耐白化性難燃性樹脂組成物は、本発明の表面処理水酸化マグネシウムが樹脂又はゴムとの相溶性に優れ、これを配合した難燃性樹脂組成物は、優れた耐白化性が総合的に、なかでも耐外観白化性が、従来のものより有意に強められていて、外観の白化が大きく改善されている。その上、押出成形性も確保されているので、難燃性カバー、パイプ、シート、フィルム、電線・ケーブルの被覆層等の押出成形品として有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の耐白化性難燃性樹脂組成物(実施例1及び比較例1、2)の大気中の白化開始時間を、炭酸ガス濃度軸と白化開始時間軸にプロットし、見積もった図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族アミンで表面処理され、その表面処理量が0.5〜5.0質量%であることを特徴とする表面処理水酸化マグネシウム。
【請求項2】
脂肪族アミンがステアリルアミン又はオレイルアミンであることを特徴とする請求項1に記載の表面処理水酸化マグネシウム。
【請求項3】
樹脂又はゴムに、請求項1又は2に記載の表面処理水酸化マグネシウムを配合したことを特徴とする耐白化性難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂又はゴム100質量部に対して、請求項1又は2に記載の表面処理水酸化マグネシウムを50〜250質量部配合したことを特徴とする耐白化性難燃性樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂又はゴムがエチレン系樹脂であることを特徴とする請求項4に記載の耐白化性難燃性樹脂組成物。
【請求項6】
エチレン系樹脂は、直鎖状エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−アクリル酸エチル共重合体からなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項5に記載の耐白化性難燃性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれかに記載の耐白化性難燃性樹脂組成物を押出成形して得られることを特徴とする押出成形品。

【図1】
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【公開番号】特開2006−111678(P2006−111678A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−298491(P2004−298491)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(000230331)日本ユニカー株式会社 (20)
【Fターム(参考)】