説明

表面加工作業工具ユニット

【課題】表面加工作業工具ユニットにおいて、表面加工作業工具を対象物に押し付けるストロークに関わらず対象物に与える力を一定とし、表面加工作業工具を容易に交換可能とすることである。
【解決手段】表面加工作業工具ユニット10は、ダンパ装置30を内蔵する案内軸20と、工具取付軸60とを含んで構成される。ここで、工具取付軸60は、軸方向に沿った先端部に表面加工作業工具70が配置されるもので、案内軸20に保持され、案内ピン50を操作することで案内軸20から容易に取り外して他のものと交換できる。ダンパ装置30は、軸方向に移動可能な出力軸を有し、出力軸の軸方向のストロークに応じて出力軸から出力される軸方向抗力が予め定めた有効ストロークの範囲内でストロークの大きさに関わらず予め定めた一定範囲内の大きさとなる特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面加工作業工具ユニットに係り、特に、回転軸に取り付けられることで表面加工作業工具を対象物に押付ながら回転させて対象物の表面加工作業を行う表面加工作業工具ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料あるいはプラスチック材料等を加工すると、加工部の周縁部にバリが生じる。このバリは、やすり、サンドペーパ、先端が平らなブラシ等で対象物の対象箇所を擦る手作業で除去することができる。また、機械力を利用するものとして、砥石円板、砥粒を適当な結合材で布または紙材に貼り付けたサンドペーパ砥石またはサンディングディスクと呼ばれるものを回転工具の先端に取り付けたバリ取り作業機を用い、砥石円板、サンディングディスクを回転させながら対称物の対象箇所を擦ることでバリを除去することが行われる。また、ロボットにエンドミル、超硬ロータリ工具、バリ取り工具を取り付けて、加工プログラムを用い、加工軌跡に沿ってこれらを移動させることも行われる。
【0003】
例えば、特許文献1には、自動バリ取り装置の工具ユニットとして、ブラシ状体の軸を筒状回転体内に摺動自在に挿設し、そのブラシ体の頂部に緩衝部材または緩衝材を介在させてフローティング機構を構成し、筒状回転体をブラシ状体と共に回転自在とし、フローティング機構によって押圧力を制御して、バリを除去する構成が開示されている。ここでは、緩衝部材としてバネ部材、緩衝材として油あるいは空気等の流体が述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−233350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によれば、フローティング機構によって、バリ取りの際にブラシ状体等のバリ取り工具を対象物に押し付けても、適当に退避しながらバリ取りを行うことができるので、対象物を破損することが防止される。
【0006】
ところで、特許文献1においてフローティング機構の緩衝部材としてバネ部材を用いるときは、バリ取り工具を対象物に押し付けるストロークによって対象物に与える力が変化するので、バリ取りが安定して行えないことが生じ得る。つまり、ストロークが小さいときはバリ取り工具を対象物に押し付ける力が小さく、十分にバリ取りを行うことができない。ストロークが大きすぎるとバリ取り工具を対象物に押し付ける力が過大となってバリ取り以外に対象物を削ってしまうことが生じ得る。バリ取り以外の面取り等の表面加工作業についても同様のことが生じる。
【0007】
例えば、鋳物、アルミダイキャストを加工したものは、寸法ばらつきが多いので、ロボットで加工したときに、その加工軌跡に基づいて作成された表面加工作業のための加工プログラムを用いると、ストロークが小さすぎることも大きすぎることも生じ得る。このような場合には、ロボットによる表面加工作業が不十分なものとなる。
【0008】
なお、特許文献1にはブラシ状体の頂部に油あるいは空気等の流体を緩衝材として介在させることも述べられているが、この場合には流体の密閉構造がブラシ状体の頂部に設けることになり、構造が複雑となる。
【0009】
本発明の目的は、簡単な構成で、表面加工作業工具を対象物に押し付けるストロークに関わらず対象物に与える力を一定とできる表面加工作業工具ユニットを提供することである。他の目的は、簡単な構成で、表面加工作業工具を対象物に押し付けるストロークに関わらず対象物に与える力を一定としながら、表面加工作業工具を目的に応じて交換可能とする表面加工作業工具ユニットを提供することである。以下の手段は、これらの目的の少なくとも1つに貢献する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る表面加工作業工具ユニットは、回転軸に取り付けられることで表面加工作業工具を対象物に押付ながら回転させて対象物の表面加工作業を行う表面加工作業工具ユニットであって、軸方向に移動可能な出力軸を有し、出力軸の軸方向のストロークに応じて出力軸から出力される軸方向抗力が予め定めた有効ストロークの範囲内でストロークの大きさに関わらず予め定めた一定範囲内の大きさとなる特性を有するダンパ装置と、軸方向に沿った先端部に表面加工作業工具が配置され、他方端側の外周面に突き出して案内ピンが設けられる工具取付軸と、ダンパ装置を保持するダンパ保持穴と、表面加工作業工具の押付ストロークに対応するダンパ装置の出力軸の軸方向のストロークに応じて工具取付軸を軸方向に移動可能に支持する取付軸支持穴と、取付軸支持穴に接続して軸方向に沿って設けられ案内ピンの軸方向移動を案内する案内穴部とを有する案内軸と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る表面加工作業工具ユニットにおいて、案内穴部は、軸方向に沿った溝穴を有し、その溝穴の軸方向に沿った長さが、ダンパ装置の有効ストロークの範囲に対応することが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る表面加工作業工具ユニットにおいて、案内軸に対し工具取付軸を交換可能に着脱できる着脱機構を備えることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る表面加工作業工具ユニットにおいて、着脱機構として、工具取付軸の軸方向に垂直方向に設けられ、案内ピンの全長よりも長い深さを有し、メネジ部を備えるピン案内穴と、頭部に操作溝を有し、工具取付軸のメネジ部に噛み合うオネジ部を備える案内ピンとを用い、案内ピンの頭部の正方向回転または逆方向回転によって案内軸に対し工具取付軸を着脱自在とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
上記構成により、表面加工作業工具ユニットは、軸方向に移動可能な出力軸を有し、出力軸の軸方向のストロークに応じて出力軸から出力される軸方向抗力が予め定めたストロークの範囲内でストロークの大きさに関わらず予め定めた一定範囲内の大きさとなる特性を有するダンパ装置と、先端部に表面加工作業工具が配置される工具取付軸と、ダンパ装置と工具取付軸とを支持する案内軸とを備える。このように、表面加工作業工具を対象物に押し付けるストロークに関わらず対象物に与える力を一定範囲内とできるダンパ装置を工具取付軸と分離することで、工具取付軸に特別な流体密閉構造を設けることを不要にして構成を簡単なものとできる。
【0015】
また、表面加工作業工具ユニットにおいて、案内穴部の溝穴の軸方向に沿った長さが、ダンパ装置の有効ストロークの範囲に対応するので、表面加工作業中において、表面加工作業工具を対象物に押し付けるストロークに関わらず、常に、対象物に与える力を一定範囲内とできる。
【0016】
また、表面加工作業工具ユニットにおいて、案内軸に対し工具取付軸を交換可能に着脱できる着脱機構を備える。上記のように、ダンパ装置と工具取付軸とは分離されているので、着脱機構を設けることで、ダンパ装置をそのままとして、先端に表面加工作業工具が配置された工具取付軸を簡単に交換可能に着脱できる。
【0017】
また、表面加工作業工具ユニットにおいて、案内ピンを工具取付軸の軸方向に垂直方向に出し入れ自在に支持する着脱機構を備えるので、例えば、ロボット装置として案内ピンを出し入れ自在に自動操作する機構を設けることで、工具取付軸を用途に応じて自動的に交換することができる。
【0018】
また、表面加工作業工具ユニットにおいて、着脱機構として、工具取付軸の軸方向に垂直方向に設けられ、案内ピンの全長よりも長い深さを有し、メネジ部を備えるピン案内穴と、頭部に操作溝を有し、工具取付軸のメネジ部に噛み合うオネジ部を備える案内ピンとを用いる。これにより、例えば、ロボット装置に表面加工作業工具ユニットを搭載する場合、ロボット装置のアームに表面加工作業工具ユニットの案内軸を取り付け、ロボット装置として案内ピンの頭部の操作溝を用いて案内ピンを正方向回転または逆方向回転に自動操作する機構を設けることで、工具取付軸を用途に応じて自動的に交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る実施の形態の表面加工作業工具ユニットが搭載されるロボット装置の様子を説明する図である。
【図2】本発明に係る実施の形態の表面加工作業工具ユニットの構成を説明する図である。
【図3】本発明に係る実施の形態の表面加工作業工具ユニットの分解図である。
【図4】本発明に係る実施の形態において、ダンパ装置の特性を説明する図である。
【図5】本発明に係る実施の形態の表面加工作業工具ユニットについて、表面加工作業工具交換の様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、表面加工作業工具ユニットはロボット装置に搭載されるものとして説明するが、勿論、手作業用のサンディングディスク装置に取り付けられるものとしてもよい。なお、以下では、加工の後の表面を擦って滑らかにする表面加工作業をバリ取りとして説明するが、これは説明のための例示であって、バリ取り作業の他に、面取り作業、表面磨き作業等の加工の後の表面を擦って滑らかにする表面加工作業が広く含まれる。
【0021】
以下では、交換可能な工具取付軸として、3種類のものを説明するが、勿論、表面加工作業であるバリ取りの内容に合わせ、他の種類の工具取付軸を用いるものとすることができる。
【0022】
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0023】
図1は、ロボット装置に表面加工作業工具ユニット10が搭載される様子を示す図である。ここで、ロボット装置としては、揺動アーム2と回転アーム4と軸方向移動アーム6とが組み合わされているものが図示されている。勿論、これ以外の構成のロボット装置に表面加工作業工具ユニット10が搭載されるものとしてもよい。表面加工作業工具ユニット10は、ここでは、対象物のバリ取り作業をすることができる工具であり、ロボット装置の操作アームの先端に設けられる工具取付軸8に取り付けられる。図1の場合は、操作アームは軸方向移動アーム6であるので、この軸方向移動アーム6の先端に設けられた工具取付軸8に、表面加工作業工具ユニット10がしっかり取り付けられる。工具取付軸8は、工具を取り付けることができるチャック機構を有する回転軸である。
【0024】
このようにロボット装置に表面加工作業工具ユニット10を搭載することで、図示されていない対象物の3次元形状に合わせて操作アームの位置および角度を変更できる。これによって、3次元形状上のバリの位置に適切なバリ取り角度となるように、表面加工作業工具ユニット10を移動させることができる。また、ロボットの加工プログラムとして、対象物を加工したときの加工軌跡に基づいて、工具取付軸8に取り付けられた表面加工作業工具ユニット10の動作軌跡を作成するものとすることができる。この場合には、この加工プログラムを実行させることで、表面加工作業工具ユニット10がバリ取りを行うべき箇所に沿って自動的に移動させることができる。
【0025】
表面加工作業工具ユニット10は、後述するダンパ装置30を内蔵する案内軸20と、工具取付軸60とを含んで構成される。ここで、工具取付軸60は、軸方向に沿った先端部に表面加工作業工具70が配置されるもので、案内軸20に保持され、案内ピン50を操作することで案内軸20から容易に取り外して他のものと交換できる。
【0026】
図2は、表面加工作業工具ユニット10の構成を説明する図、図3は、表面加工作業工具ユニット10の分解図である。なお、図2と図3は、案内ピン50の様子が分かりやすいように、軸方向回りに互いに90度異ならせた方向からそれぞれ見た様子が示されている。
【0027】
表面加工作業工具ユニット10は、上記のように、案内軸20と工具取付軸60を含んで構成されるが、案内軸20は、案内軸本体部22と、内部に内蔵されるダンパ装置30を含み、工具取付軸60は、取付軸本体部40と、ナット48と、表面加工作業工具70を含む。
【0028】
案内軸20の案内軸本体部22は、段付軸の外形を有し、中心軸に沿った段付有底穴を有する軸部材である。案内軸20は、ダンパ装置30を保持し、また、工具取付軸60を軸方向移動可能に案内しながら支持する機能を有する。
【0029】
案内軸20のダンパ保持穴26は、段付有底穴の底部側の細めの有底穴である。ダンパ保持穴26は、ダンパ装置30の外径よりもやや大きい内径を有し、これによってダンパ装置30を出し入れ自由とし、底部にダンパ装置30の底部を突き当てて、保持する機能を有する。
【0030】
案内軸20の取付軸支持穴28は、段付軸である案内軸20の太めの軸の端部からダンパ保持穴26に向かって開けられた段付有底穴の開口部側の太目の穴である。取付軸支持穴28の内径は、ダンパ保持穴26の内径よりも大きく、また、取付軸本体部40の外径よりも大きい。これによって、取付軸支持穴28は、工具取付軸60を軸方向移動可能として保持する機能を有する。
【0031】
案内軸20の取付軸支持穴28に接続して軸方向に沿って設けられる案内穴部24は、工具取付軸60に設けられる案内ピン50の軸方向移動を案内する溝穴である。案内穴部24の軸方向に沿った溝穴の長さは、案内ピン50のストロークSであるフリーティング長さを規制することになるので、次に説明するダンパ装置30において、抗力Fが(F0±ΔF)の範囲となる有効ストロークS0の範囲に対応する長さとすることがよい。好ましくは、有効ストロークS0よりも狭い範囲の長さとすることがよい。例えば、案内穴部24の軸方向に沿った溝穴の長さを約5mmとすることができる。勿論、これ以外の長さとすることもできる。
【0032】
ダンパ装置30は、筐体32と、軸方向に移動可能な出力軸34を有し、出力軸34の移動方向と逆方向に抗力を作用させながら移動することで、仕事=力×距離を行い、これによって出力軸34の移動によるエネルギを吸収して出力軸34の移動を停止させようとする作用を行う装置である。このような作用を行う装置は、衝撃を吸収するために広く用いられ、一般的にショックアブソーバと呼ばれている。ダンパ装置30は、このショックアブソーバと呼ばれている装置を、衝撃を吸収する特性とは別に、出力軸34に現れる抗力Fが、出力軸34の移動量であるストロークSに関わらず、ほぼ一定となる特性を利用するものである。
【0033】
かかる特性を有するダンパ装置30としては、出力軸34が突き出る箇所を除き密閉構造とされる筐体32をアウターチューブとし、アウターチューブの中に配置されるインナーチューブを有し、インナーチューブにストローク方向に沿って複数のオリフィス孔が設けられ、この二重構造に密封される圧油等の高圧流体の中で、インナーチューブの内壁に沿って出力軸34と一体化されたピストンが摺動する構造を有する多孔オリフィス型ショックアブソーバを用いることができる。
【0034】
図4は、多孔オリフィス型ショックアブソーバをダンパ装置30として用いたときの抗力FとストロークSの特性80を示す図である。図4の横軸は、出力軸34の軸方向移動量であるストロークSであり、縦軸は、出力軸34が移動するときに発生する軸方向の抗力Fである。図4には、参考のために、バネについての抗力FとストロークSの特性82も示した。
【0035】
図4に示されるように、ダンパ装置30の抗力FとストロークSの特性80は、出力軸34の軸方向のストロークSに応じて出力軸34から出力される軸方向の抗力Fが予め定めた有効ストロークS0の範囲内でストロークSの大きさに関わらず予め定めた一定範囲内(F0±ΔF)の大きさとなる特性を有する。±ΔFは、多孔オリフィスの孔数を適当に多くすることで小さな範囲とすることができる。
【0036】
このように、ダンパ装置30の特性80は、出力軸34に現れる抗力Fが、出力軸34の移動量であるストロークSに関わらず、ほぼ一定となる。これに対し、バネの抗力FとストロークSの特性82は、ストロークSが大きくなると、これに比例して抗力Fが大きくなる。
【0037】
したがって、ダンパ装置30の出力軸34の動きを工具取付軸60の動きと同じになるようにすれば、工具取付軸60をバリ取りの対象物に押し付けるストロークSが変動しても、工具取付軸60がバリ取りの対象物に与える抗力Fはほぼ一定となる。これによって、バリに与える力をほぼ一定としてバリ取りができるので、効率的にバリ取り処理を行うことができる。
【0038】
再び図2、図3に戻り、工具取付軸60の取付軸本体部40は、細長い軸部42の先端部にフランジ部44とオネジ46を有するネジ付き軸部材である。ナット48は、オネジ46に対応するメネジを有する締め付け部材である。
【0039】
細長い軸部42の外直径は、案内軸20のダンパ保持穴26の内径よりも大きく、取付軸支持穴28の内径よりも小さい。フランジ部44は、ナット48と共に、表面加工作業工具70を挟みこんで固定する機能を有する部分であり、表面加工作業工具70の中央部に設けられる取付穴71の内径よりも大きな外径を有する。先端部のオネジ46の最大外径は、表面加工作業工具70の取付穴71の内径よりも小さい。
【0040】
細長い軸部42の軸方向の適当な中間部に設けられる案内ピン50は、案内軸20の案内穴部24と協働して、工具取付軸60の案内軸20に対する軸方向の移動範囲を規制する機能を有するピンである。
【0041】
案内ピン50の細長い軸部42の軸方向における配置位置は次のようにして設定される。すなわち、図2に示されるように、案内軸20のダンパ保持穴26の底部にダンパ装置30の底部が来るようにダンパ装置30を挿入し、次にダンパ装置30の出力軸34の先端に工具取付軸60の細長い軸部42の底部が来るように工具取付軸60を取付軸支持穴28に挿入する。そして、ダンパ装置30の効力Fが(F0±ΔF)となる最も短いストロークの状態にしたときに、案内ピン50が案内軸20の案内穴部24の溝穴の一方側の端部となるように、案内ピン50の配置位置が設定される。溝穴の一方側の端部とは、案内軸20の開口部側の方の端部である。
【0042】
また、案内ピン50は、工具取付軸60の細長い軸部42の軸方向に垂直方向に出し入れ自在に支持される。そのために、工具取付軸60の細長い軸部42の軸方向に垂直方向にピン案内穴54が設けられ、そのピン案内穴54の中にピン付勢バネ56が配置される。そして、ピン案内穴54に対し案内ピン50が飛び出して外れてしまわないように規制する規制手段として、ピン案内穴54にはメネジ部が設けられ、案内ピン50にはこれに噛み合うオネジ部が設けられる。
【0043】
そして、ピン案内穴54の穴深さは、案内ピン50の全長よりも長く設定される。穴深さは、ピン付勢バネ56の付勢力に抗しながら案内ピン50をピン案内穴54に押し込んだときに、案内ピン50が完全にピン案内穴54の中に沈み込むことができる長さに設定される。すなわち、ピン付勢バネ56の圧縮されたときのバネ長さに案内ピン50の長さを加えて得られる長さよりも長いようにピン案内穴56の穴深さが設定される。なお、場合によっては、ピン付勢バネ56を省略してもよい。この場合には、単純に、ピン案内穴54の穴深さは、案内ピン50の全長よりも長く設定される。
【0044】
案内ピン50の頭部には操作溝52が設けられる。この操作溝52は、ピン案内穴54のメネジ部と案内ピン50のオネジ部との間の噛み合わせによってピン案内穴54に対し案内ピン50を出し入れする際の操作を容易にするために設けられる。具体的には、ロボット装置に用いられるナットランナ等によって、案内ピン50が容易に正回転または逆回転ができる溝形状の操作溝52が設けられる。
【0045】
これによって、例えば、案内ピン50を時計周りの正方向回転させることで案内ピン50を頭部を含めてピン案内穴54の中に沈めて、案内軸20から工具取付軸60を取り外すことができる。また、案内ピン50を反時計周りの逆方向回転させることで、案内ピン50を工具取付軸60の外周面から突き出させ、案内軸20の案内穴部24に案内されるようにして案内軸20に工具取付軸60を取り付けることができる。なお、案内ピン50の頭部の外径よりもオネジ部の最大径を小さくして、案内穴部24にオネジ部が直接接触しないようにすることもできる。オネジ、メネジの正逆に応じて、上記の正方向回転と逆方向回転とを入れ替えることもできる。このように、案内ピン50のオネジ部とピン案内穴54のメネジ部とは、案内軸20に対し工具取付軸60を交換可能に着脱できる着脱機構を構成する。
【0046】
この着脱機構を用い、図1で説明したロボット装置において、案内ピン50の頭部の操作溝52に適合する先端を有するビットランナ等のネジ回転装置を有する工具取付軸交換ステーションを設けることで、案内軸20に対し工具取付軸60を着脱して交換することを自動的に行うことが可能となる。
【0047】
すなわち、現在の工具取付軸60についてネジ回転装置によって案内ピン50を正方向に回転させて工具取付軸60を案内軸20から取り外す。次に、別の工具取付軸60について、その工具取付軸60の案内ピン50を正方向に回転させて、その工具取付軸60の細長い軸部42を先ほどの案内軸20の取付穴支持穴28に挿入する。そして、案内ピン50を案内軸20の案内穴部28に合せて、案内ピン50を逆回転させ、案内ピン50を案内穴部28の中で突き出せる。こうして、別の工具取付軸60が案内軸20に取付けられる。このように、ロボット装置にネジ回転装置を有する工具取付軸交換ステーションを設けることで、案内軸20に対し工具取付軸60を着脱して交換することを自動的に行うことが可能となる。
【0048】
なお、案内軸20に対し工具取付軸60を交換可能に着脱できる着脱機構としては、案内ピン50を工具取付軸60に対し出し入れ可能なようにする他の機構を用いてもよい。例えば、案内穴部54の中にピン付勢バネ56を配置し、ピン案内穴54に対し案内ピン50をピン付勢バネ56で付勢しながら飛び出さないように規制する規制手段を設ける機構を用いることができる。規制手段としては、例えば、案内ピン50に適当なフランジ部を設け、案内穴部54にフランジ部の移動を規制するリングを設けるものとすることができる。
【0049】
この場合には、図1で説明したロボット装置において、案内ピン50を押して工具取付軸60を案内軸20から取り外し、別の工具取付軸60についてその案内ピン50を押しながら案内軸20に取り付ける工具取付軸交換ステーションを設けることで、案内軸20に対し工具取付軸60を着脱して交換することを自動的に行うことが可能となる。
【0050】
図2、図3の表面加工作業工具70は、バリ取りの対象物に回転させながら接触させることで、バリを除去するための工具で、具体的には、サンディングディスクが用いられる。一般的にサンディングディスクとは、砥粒を適当な結合材で布または紙材に貼り付けた円板であるが、ここでは、この円板を複数枚に切断し、これらを相互に一部が重なるようにずらしながら円周方向に配置したものが用いられる。したがって、サンディングディスクである表面加工作業工具70の底面側は、複数枚に切断されて一部重複して重ねあわされたことによる段差が複数配置されたものとなり、これによって凹凸状の底面を有するものとなっている。複数枚の例としては、例えば、20枚から30枚程度とすることができる。勿論、1枚の平坦なサンディングディスクを用いるものとしてもよい。
【0051】
表面加工作業工具70は、上記のように、その中央部に取付穴71が設けられ、この取付穴71を用いて、取付軸本体部40の先端のオネジ46とナット48とによって、取付軸本体部40にしっかりと取り付けられる。
【0052】
上記構成の作用を図1から図5を用いて詳細に説明する。図1に示すように、表面加工作業工具ユニット10をロボット装置の操作アームの先端の工具取付軸8に取り付ける。具体的には、表面加工作業工具ユニット10の案内軸20の案内軸本体部22の軸方向を工具取付軸8の軸方向に合わせて、しっかりと固定する。この状態でロボット装置を操作し、表面加工作業工具ユニット10の表面加工作業工具70がちょうどバリ取りの対象物に接触する位置まで移動させる。そこで、工具取付軸8を所定の回転数で回転させながら、表面加工作業工具70をバリ取りの対象物に押し付ける。
【0053】
工具取付軸8が回転すると案内軸20が回転し、案内軸20が回転すると、工具取付軸60の案内ピン50は案内軸20の案内穴部24によって径方向の移動を拘束されているので、工具取付軸60が回転する。これにより、対象物に表面加工作業工具70のサンディングディスクが回転しながら接触するので、バリが回転するサンディングディスクの砥粒に除去される。ロボットの加工プログラムとして、対象物を加工したときの加工軌跡に基づいて、表面加工作業工具ユニット10の動作軌跡を作成したものを用いるときは、その加工プログラムを実行させることで、表面加工作業工具ユニット10がバリ取りを行うべき箇所に沿って自動的に移動させることができる。
【0054】
このバリ取りの間において、工具取付軸60はバリ取りの対象物に押し付けられるが、その押し付けの移動距離であるストロークSは、ロボット装置によって適当に設定される。図4で説明したように、ダンパ装置30の機能によって、ストロークSが有効ストロークS0の範囲であれば、工具取付軸60がバリ取りの対象物に与える抗力Fは、ダンパ装置30の仕様で予め定められる(F0±ΔF)の範囲内でほぼ一定値となる。
【0055】
そして、案内軸20に設けられる案内穴部24の溝穴の長さは、この有効ストロークS0に対応する長さまたはそれ以下に設定されるので、ロボット装置によって設定されるストロークSはこの有効ストロークS0の範囲に制限される。したがって、バリ取り作業の間、ストロークが変動しても、この有効ストロークS0の範囲内となるので、工具取付軸60がバリ取りの対象物に与える抗力Fは、常に、(F0±ΔF)の範囲内となる。
【0056】
このように、バリ取りの対象に応じて、バリ取りに適した(F0±ΔF)を求め、その仕様を満足するダンパ装置30を選択して、表面加工作業工具ユニット10の案内軸20の内部に内蔵させることで、バリ取りの対象物に過大な抗力を与えて損傷させることもなく、また、バリ取りに対し過小となる抗力となることもないので、安定して効果的なバリ取りを行うことができる。
【0057】
図5は、表面加工作業であるバリ取りの対象物に合わせ、工具取付軸60を交換するときの様子を説明する図である。図5には、図1から図4で説明した工具取付軸60を含み、他の工具取付軸62,64が示される。工具取付軸60は、比較的小型のサンディングディスクを用いた表面加工作業工具70が配置されたものである。工具取付軸62は、比較的大型のサンディングディスクを用いた表面加工作業工具72が配置されたものである。
【0058】
比較的小型、比較的大型とは相対的な外形の大きさを区別するもので、例えば、表面加工作業工具70は、外径が約50mm、表面加工作業工具72は、外径が約100mmのものとすることができる。勿論、これ以外の寸法のサンディングディスクを用いるものとしてもよい。
【0059】
工具取付軸64は、先端に超硬ロータリ工具を用いた表面加工作業工具74が配置されたものである。サンディングディスクは、比較的軟質の金属、プラスチック、木材、これらの複合材等に生じるバリ取りに用いることができ、超硬ロータリ工具は、比較的硬質の金属、セラミック等に生じるバリまたは凹凸等について平坦化するために用いることができる。
【0060】
これらの工具取付軸60,62,64は、いずれも共通の取付軸本体部40が用いられる。そして、工具取付軸60,62は、共通のナット48が用いられ、取付軸本体部40の先端部のオネジ46との間に、それぞれ対応する表面加工作業工具70,72が挟み込まれてしっかりと固定される。工具取付軸64については、超硬ロータリ工具を用いた表面加工作業工具74を取付軸本体部40のオネジ46を用いて固定するために、適当な袋ナット49が用いられる。
【0061】
そして、これらの工具取付軸60,62,64にはそれぞれ共通の案内ピン50が設けられ、これらの案内ピン50は、工具取付軸60の取付軸本体部40の軸方向に垂直方向に出し入れ自在に支持される。したがって、これらの工具取付軸60,62,64のいずれについても、案内ピン50を正方向に回転させて案内ピン50を工具取付軸60の外周面に出ないように沈め、取付軸本体部40を案内軸20の取付軸支持穴28に挿入し、案内ピン50が案内穴部24に来たときに案内ピン50を逆方向に回転させれば、案内ピン50が案内穴部24の中に突き出すので、案内軸20に取り付けることができる。
【0062】
また、このようにして案内軸20に取り付けられた工具取付軸60,62,64のいずれも、案内ピン50を正方向に回転させて案内ピン50を工具取付軸60の外周面に出ないように沈め、取付軸本体部40を案内軸20の取付軸支持穴28から引き出すことで、案内軸20から取り外すことができる。案内ピン50を正方向または逆方向に回転させることは、案内ピン50の頭部の操作溝52に適合する先端を有するビットランナ等の適当なネジ回転装置を用いることで自動的に行うことができる。
【0063】
このようにして、工具取付軸60,62,64の中の任意の1つを案内軸20に取り付けることも取り外すこともできるので、案内軸20に対し、工具取付軸60,62,64を交換可能に着脱することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る表面加工作業工具ユニットは、金属、プラスチック等の加工に生じるバリ取り作業、面取り作業、表面磨き作業等に利用できる。
【符号の説明】
【0065】
2 揺動アーム、4 回転アーム、6 軸方向移動アーム、8 工具取付軸、10 表面加工作業工具ユニット、20 案内軸、22 案内軸本体部、24 案内穴部、26 ダンパ保持穴、28 取付軸支持穴、30 ダンパ装置、32 筐体、34 出力軸、40 取付軸本体部、42 細長い軸部、44 フランジ部、46 オネジ、48 ナット、49 袋ナット、50 案内ピン、52 操作溝、54 ピン案内穴、56 ピン付勢バネ、60,62,64 工具取付軸、70,72,74 表面加工作業工具、71 取付穴、80,82 特性。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に取り付けられることで表面加工作業工具を対象物に押付ながら回転させて対象物の表面加工作業を行う表面加工作業工具ユニットであって、
軸方向に移動可能な出力軸を有し、出力軸の軸方向のストロークに応じて出力軸から出力される軸方向抗力が予め定めた有効ストロークの範囲内でストロークの大きさに関わらず予め定めた一定範囲内の大きさとなる特性を有するダンパ装置と、
軸方向に沿った先端部に表面加工作業工具が配置され、他方端側の外周面に突き出して案内ピンが設けられる工具取付軸と、
ダンパ装置を保持するダンパ保持穴と、工具取付軸を軸方向に移動可能に支持する取付軸支持穴と、取付軸支持穴に接続して軸方向に沿って設けられ案内ピンの軸方向移動を案内する案内穴部とを有する案内軸と、
を備えることを特徴とする表面加工作業工具ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の表面加工作業工具ユニットにおいて、
案内穴部は、軸方向に沿った溝穴を有し、その溝穴の軸方向に沿った長さが、ダンパ装置の有効ストロークの範囲に対応することを特徴とする表面加工作業工具ユニット。
【請求項3】
請求項1に記載の表面加工作業工具ユニットにおいて、
案内軸に対し工具取付軸を交換可能に着脱できる着脱機構を備えることを特徴とする表面加工作業工具ユニット。
【請求項4】
請求項3に記載の表面加工作業工具ユニットにおいて、
着脱機構として、
工具取付軸の軸方向に垂直方向に設けられ、案内ピンの全長よりも長い深さを有し、メネジ部を備えるピン案内穴と、
頭部に操作溝を有し、工具取付軸のメネジ部に噛み合うオネジ部を備える案内ピンとを用い、案内ピンの頭部の正方向回転または逆方向回転によって案内軸に対し工具取付軸を着脱自在とすることを特徴とする表面加工作業工具ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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