説明

表面実装型電子部品

【課題】振動による端子の破断を防止して、車載用部品として信頼性の高い表面実装型電子部品を提供することを目的としている。
【解決手段】ボディー22の対向する側面にそれぞれ端子23の一端を固定し、側面から底面に向かって折り曲げた表面実装型電子部品において、ボディー22の底面に、端子23を固定した側面と直交する両側面から内側に向かって、一対の端子23の他端の角部30と対向する範囲を含むとともに底面より直方体形状に落ち込んで切り欠いた凹欠部31を形成し、端子23に、凹欠部31の両側面から内側に向かう内壁に対応して切り欠いた切欠部43を形成しており、端子23の角部30を凹欠部31の内側の内壁42に沿って折り曲げることにより、端子23の角部30を凹欠部31の両側面から内側に向かう内壁41に当接させて係止したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器に用いられる表面実装型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の駆動系、制御系の電子制御化が益々進み、一台の自動車に数多くの電子制御機器が搭載されるようになり、電子制御機器の益々の小型化と高信頼性化が望まれている。
【0003】
そして、これらの電子制御機器に用いられる電子部品に対しても、小型化のために表面実装が可能で車載用部品に求められる高い信頼性を有するものが求められてきている。
【0004】
次に、このような従来の表面実装型電子部品について回路素子としてコイル素子を用いた例を、図面を参照しながら説明する。
【0005】
図11は従来の表面実装型電子部品の平面図、図12は図11のA−A線断面図であり、図12では表面実装型電子部品を実装基板に実装した状態を示している。
【0006】
図11、図12に示すように従来の表面実装型電子部品は、絶縁皮膜付き銅線を巻回してコイル素子1を形成し、このコイル素子1を金属磁性体粉末と熱硬化性樹脂からなる結合材との混合粉に埋設して加圧成形することによりボディー2を形成し、このボディー2の側面から突出したコイル素子1の両端部の引き出し線3を平板状に押し潰すとともにボディー2の側面から底面に向かって折り曲げて表面実装型の端子4を形成し、このようにして表面実装型電子部品を構成していた。
【0007】
そして、この表面実装型電子部品を、リフローはんだ槽を用いて実装基板5のランド6にはんだ7によって実装していた。
【0008】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−123927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、自動車の電子制御機器の取り付け位置も、今までのエンジンルーム外からエンジンルーム内に取り付けるものが増えてきており、より耐振動性を向上することが望まれてきている。
【0011】
しかしながら、上記、従来の面実装型電子部品では、端子4をボディー2の側面から底面に向かって折り曲げている構成であるため、折り曲げ部のスプリングバックによって端子4とボディー2の間に隙間8が生じることがあった。
【0012】
この隙間8が生じると、実装基板5を通じて自動車の振動がボディー2に伝わった時に、端子4が隙間8の寸法分の撓みを発生し、これを往復運動で交互に繰り返すことによりボディー2が振り子のように振動を起こす。
【0013】
そして、この振動が繰り返される結果、端子4の折り曲げ部9や、端子4とはんだ7のフィレットとの境界部10が支点となって応力が集中し、ついには金属疲労を起こして破断し、電子部品が断線する恐れがあるという課題が生じてきていた。
【0014】
本発明は、振動による端子の破断を防止して、車載用部品として信頼性の高い表面実装型電子部品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記課題を解決するために、回路素子を内部に有した略四角柱形状のボディーと、回路素子と接続した一対の板状の端子とを備え、ボディーの対向する側面にそれぞれ端子の一端を固定し、端子の一端を固定した側面から底面に向かって折り曲げて端子の他端をボディーの底面に配置した表面実装型電子部品において、ボディーの底面に、端子の一端を固定した側面と直交する両側面から内側に向かって、一対の端子の他端の角部と対向する範囲を含むとともに底面より直方体形状に落ち込んで切り欠いた凹欠部を形成し、端子に、凹欠部の両側面から内側に向かう内壁に対応して切り欠いた切欠部を形成しており、端子の角部を凹欠部の内側の内壁に沿って折り曲げることにより、端子の角部を凹欠部の側面から内側に向かう内壁に当接させて端子の角部をボディーの底面に係止したものである。
【発明の効果】
【0016】
上記構成により、端子の角部が、端子の角部とボディーの側面に配置した端子とが直交配置された状態でボディーを挟み込んで固定しているために、端子が金属平板の厚みが薄いものであっても強固に係止することができ、ボディーの側面に固定された端子の折り曲げ部分にスプリングバックが発生することをなくすことができる。
【0017】
これにより、端子をボディーの側面と凹欠部の両側面から内側に向かう内壁に接触させて固定することができ、ボディーと端子との間の隙間によって発生するボディーが振り子状に振動することをなくして端子の破断を防止することができる。
【0018】
このように、本発明によれば、振動による端子の破断を防止して、表面実装型電子部品の信頼性を高めるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態における表面実装型電子部品の底面側斜視図
【図2】図1のB−B線断面図
【図3】図1のC−C線断面図
【図4】図1のD−D線断面図
【図5】本発明の一実施の形態における表面実装型電子部品を実装基板に実装した状態を示す側面図
【図6】本発明の一実施の形態における表面実装型電子部品の製造工程を説明する図
【図7】本発明の一実施の形態における表面実装型電子部品の製造工程を説明する図
【図8】本発明の一実施の形態における表面実装型電子部品の製造工程を説明する図
【図9】本発明の一実施の形態における表面実装型電子部品の製造工程を説明する図
【図10】本発明の一実施の形態における表面実装型電子部品の製造工程を説明する図
【図11】従来の表面実装型電子部品の平面図
【図12】図11のA−A線の断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態における表面実装型電子部品について、回路素子にコイル素子を用いた例を、図面を参照して説明する。
【0021】
図1は本発明の一実施の形態の表面実装型電子部品の底面側斜視図であり、図2は図1のB−B線の断面図、図3は図1のC−C線の断面図、図4は図1のD−D線の断面図、図5は本発明の一実施の形態における表面実装型電子部品を実装基板に実装した状態を示す側面図である。
【0022】
図1〜図5に示すように、本発明の表面実装型電子部品は、回路素子としてコイル素子21を内部に有した略四角柱状のボディー22と、コイル素子21と接続した板状の端子23とを備えている。
【0023】
そして、端子23は、ボディー22の対向する側面にそれぞれ一端を固定し、この端子23の一端を固定した側面から底面に向かって折り曲げ、端子23の他端をボディー22の底面に配置した表面実装型の端子23にしたものである。
【0024】
ボディー22は、鉄を主成分とした金属磁性体粉末にエポキシ等の熱硬化性樹脂からなる結合材を混合し、これを顆粒状に造粒した磁性体材料からなり、この磁性体材料にコイル素子21と端子23の一端を埋設したものである。
【0025】
ボディー22に埋設したコイル素子21は、融着層付きの絶縁被膜銅線を螺旋状に巻回して空芯のコイルを形成したもので、本実施の形態では、太さが0.28mmの銅線を用い、軸芯径を2.8mmにして40ターン巻回し、両端部の引き出し線24を互いに反対方向に引き出した後、融着層を硬化反応させて形状を維持したものである。
【0026】
端子23は金属平板からなり、本実施の形態では厚さが0.2mmのリン青銅板を用いてコイル素子21の引き出し線24と電気的に接続しており、一方の端部をカタカナのコの字形状に形成し、コの字形状の突出部25をボディー22に埋設させている。
【0027】
端子23と引き出し線24との接続は、ボディー22内部の突出部25に接続部分を形成して接続したり、ボディー22外部の突出部25に隣接する端子23に接続してもよいが、本実施の形態では、端子23が伸長する方向の中央にプレス加工により収納溝26を形成し、この収納溝26に引き出し線24を収めて抵抗溶接などの電気溶接を用いて一体的に電気接続している。
【0028】
このように引き出し線24を収納溝26に配置することにより、端子23の一端を固定したボディー22の側面から底面に向かって折り曲げた時に、引き出し線24もボディー22の底面に配置され、銅線の太さが0.28mm程度の細い銅線でも、端子23が保持部材となって引き出し線24の形状を維持して、引き出し線24と実装基板34のランド35とを直接接続させることができるので、ボディー22の内部で配線したり突出部25に隣接する端子23に接続した場合に比べて、端子23と引き出し線24との接続部分が外れて断線するなどの不具合がなくなり、より信頼性を高めることができる。
【0029】
さらに、このように、収納溝26に引き出し線24を収納する場合に、引き出し線24の径寸法が太く収納溝26からはみ出す場合には、あらかじめ平坦にプレス加工したり、電気溶接する際に、電極(図示していない)を押し当てて引き出し線24の高さを、端子23の面高さと同等としておくことが望ましい。このようにすることにより、端子23の平坦性が良くなり実装基板34のランド35への接続性を向上することができる。
【0030】
さらに、ボディー22の側面と底面の稜部に対応する位置に貫通孔27を設けておくとよく、このようにすることで、端子23を折り曲げた際に、この貫通孔27が逃がし部となって引き出し線24を引き伸ばしてしまうことがなくなり、より信頼性を高めることができる。
【0031】
このようにして、コイル素子21と端子23の一端である突出部25を磁性体材料に埋設させ、金型を用いて加圧成形し、本実施の形態では外形寸法が8.0×8.0×5.4mmのボディー22を形成している。
【0032】
この加圧成形したボディー22を熱処理することにより熱硬化性樹脂からなる結合材を硬化させて、端子23の一端をボディー22の側面に固定し、ボディー22を熱処理した後、端子23を側面から底面に向かって折り曲げて、端子23の他端をボディー22の底面に配置している。
【0033】
ボディー22の側面と底面には、ボディー22を形成する際に、端子23のプレス加工により形成した収納溝26の反対側に突出した凸部28を収納する収納凹部29を形成しており、収納凹部29に凸部28を収納して端子23の平面部がボディー22の側面に沿うように折り曲げている。
【0034】
次に、本発明の特徴部である端子23の他端とボディー22の底面との固定について説明する。
【0035】
まず、ボディー22の底面に、端子23の一端を固定したボディー22の側面と直交する両側面から内側に向かって、一対の端子23の他端の角部30と対向する範囲を含むとともに底面より直方体形状に落ち込んで切り欠いた凹欠部31を形成する。
【0036】
直方体形状に形成した凹欠部31は、ボディー22の端子23の一端を固定した側面と直交する両側面から見て、両側面から内側に向かう内壁41と、両側面から内側に向かう内壁41に直交配置した内側の内壁42を形成しており、両側面から内側に向かう内壁41は端子23の幅方向と平行に配置され、内側の内壁42は端子23の幅方向と直交して配置されている。
【0037】
また、端子23に、凹欠部31の両側面から内側に向かう内壁41に対応して切り欠いた切欠部43を形成して、角部30の縁部を形成する。
【0038】
そして、端子23の角部30を凹欠部31の内側の内壁42に沿って折り曲げることにより、端子23の角部30の縁部を凹欠部31の両側面から内側に向かう内壁41に当接させて端子23の角部30をボディー22の底面に係止している。
【0039】
このように端子23の他端をボディー22の底面に固定することにより、端子23の角部30とボディー22の側面に配置した端子23とが直交配置した状態でボディー22を挟み込んで係止しているために、端子23が金属平板の厚みが薄いものであっても強固に係止することができ、ボディー22の側面に固定された端子23の折り曲げ部分にスプリングバックが発生することをなくすことができる。
【0040】
また、凹欠部31の内側の内壁42に沿わせて折り曲げた端子23の角部30にスプリングバックが発生しても、端子23の角部30がスプリングバックによって折り曲げる前の元の状態まで戻らない限り、角部30の縁部が凹欠部31の両側面から内側に向かう内壁41から外れることがないので、的確に端子23のボディー22の側面に固定された折り曲げ部分にスプリングバックが発生することをなくすことができる。
【0041】
さらに、本実施の形態のように、対向する端子23の角部30を含む範囲に凹欠部31を設けることにより、対向する端子23の角部30の間が大きく切り欠いた空間となるので、表面実装型電子部品を実装基板34にリフローはんだ付けする際に、角部30にも熱風が当たって温まりやすくなり、図5に示すように端子23の角部30にもはんだフィレット32を形成することができる。
【0042】
このはんだフィレット32は、大きなバックフィレット33となって、ボディー22の側面側の端子23に形成したはんだフィレット32との相乗効果により、耐振動性をより向上させることができる。
【0043】
ここで、切欠部43の、凹欠部31の両側面から内側に向かう内壁41に対応して切り欠いたとは、切欠部43によって形成される角部30の縁部が、角部30を凹欠部31の内側の内壁42に沿って折り曲げた際に、凹欠部31の両側面から内側に向かう内壁41に当接することを可能にする位置に切欠部43を形成することを意味している。
【0044】
リン青銅板などの金属平板にプレス金型などで打ち抜いて切り欠きを形成する場合、プレス金型の耐磨耗性を考慮すると、通常、材厚の2倍以上の切り欠き幅が必要となる。
【0045】
このため、切欠部43は、凹欠部31の両側面から内側に向かう内壁41に隣接するボディー22の底面と対向する位置に配置し、切欠部43の縁部を凹欠部31の両側面から内側に向かう内壁41にあわせて形成するとよく、このようにすることにより、端子23の角部30を凹欠部31の両側面から内側に向かう内壁41に当接させることができる。
【0046】
しかしながら、端子23の一端をボディー22の側面に固定したときの固定位置にずれが発生した場合、切欠部43も位置ずれとなり、端子23の角部30の縁部が凹欠部31の両側面から内側に向かう内壁41に当接しない場合が発生することも考えられる。
【0047】
このため、より好ましくは、図1に示すように、端子23の角部30に、凹欠部31の両側面から内側に向かう内壁41と隣接するボディー22の底面と重なり合う突片44を延設し、端子23の角部30を凹欠部31の内側の内壁42に沿って折り曲げることにより、突片44を凹欠部31の両側面から内側に向かう内壁41に沿うように折り曲げて当接させ、端子23の角部30をボディー22の底面に係止することがよい。
【0048】
この場合の切欠部43の縁部は、突片44に対応する部分はボディー22の底面側に配置し、突片44以外の部分は、突片44を折り曲げたときの曲げしろに必要な少なくとも端子23の厚み寸法分を凹欠部31の内側に配置する。
【0049】
このようにすることにより、切欠部43に位置ずれが発生しても突片44がずれを吸収して、端子23の角部30を確実に凹欠部31の両側面から内側に向かう内壁41に当接させることができる。
【0050】
特に、端子23を側面から底面に向けて折り曲げた後に、端子23の側面部分の折り曲げ部にスプリングバックが発生してボディー22と端子23との間に隙間が生じていても、端子23の角部30を凹欠部31の内側の内壁42に沿って折り曲げる際に、突片44が凹欠部31の両側面から内側に向かう内壁41に沿うように折り曲がる応力を受けて、隙間を挟んでボディー22側面に位置していた端子23がボディー22側に引き寄せられて、端子23をボディー22の側面に接触させることができる。
【0051】
そして、端子23の角部30側も、突片44が凹欠部31の両側面から内側に向かう内壁41に当接させて係止しているので、端子23の角部30を係止した後にスプリングバックが発生することがなく、端子23をボディー22の側面と凹欠部31の内壁に接触させて固定することができる。
【0052】
その結果、本実施の形態の表面実装型電子部品を実装基板34に実装し、自動車等の振動による応力を受けても、ボディー22と端子23とが接触していて端子23が撓まないので、ボディー22が振り子状に振動することがなくなり、端子23の破断を防止することができるものである。
【0053】
なお、端子23の角部30を凹欠部31の内壁に沿わせて折り曲げる寸法は、端子23の厚み寸法の3倍以上にすることが好ましく、こうすることにより、より的確に凹欠部31に端子23の角部30を係止することができ、はんだフィレット32を形成することができる。
【0054】
また、本実施の形態ではボディー22がコイル素子21の閉磁路磁芯を構成しているが、凹欠部31がボディー22の側面側に位置しているので、磁気効率的に影響はなく特性が劣化することなく耐振動性を向上させることができるものである。
【0055】
次に、本発明の一実施の形態の表面実装型電子部品の製造方法について図6〜図10を参照して説明する。
【0056】
最初に、図6のように、融着層付き絶縁被膜銅線を螺旋状に巻回して空芯のコイル素子21を形成する。
【0057】
所定の巻軸に銅線を巻回し、両端部の引き出し線24を互いに反対方向に引き出した後、巻回部分に熱風を吹きつけたり溶剤を滴下したりして融着層を硬化反応させ、巻回部の形状を維持させて巻軸から取り外し、空芯のコイル素子21を形成する。
【0058】
次に、図7のように、引き出し線24と端子23を接続する。
【0059】
端子23は、リン青銅板などの金属板からなり、一方の端部をカタカナのコの字形状に形成し二つの突出部25を設けている。端子23の伸長方向の中央には引き出し線24を収納する収納溝26を形成しており、ボディー22の側面と底面との稜部に対応する位置に貫通孔27を設けている。
【0060】
また、端子23の他端側に、端子23の伸長方向と直交する方向から端子23を切り欠いて角部30の縁部を形成する切欠部43を形成する。
【0061】
切欠部43は、後の工程で形成されるボディー22の底面の凹欠部31の両側面から内側に向かう内壁41に対応して所定の寸法で形成するもので、切欠部43の形状をアルファベットのL字状に形成して、端子23の角部30の縁部に突片44を一体に延設させて形成している。
【0062】
L字状の切欠部43によって形成される角部30の縁部のうち、突片44の縁部は、ボディー22の底面と対向する位置に配置して突片44が底面と重なるように形成し、突片44を形成していない角部30の縁部は、凹欠部31と対向する位置に形成するとともに、凹欠部31の両側面から内側に向かう内壁41から、突片44を折り曲げたときの曲げしろに必要な少なくとも端子23の厚み寸法分を凹欠部31の内側に配置して形成している。
【0063】
そして、引き出し線24の絶縁被膜を剥離した後、端子23の収納溝26に引き出し線24を収納して、抵抗溶接等の電気溶接を用いて、端子23と引き出し線24とを一体的に電気接続する。
【0064】
引き出し線24の径寸法が収納溝26の深さより大きい場合には、抵抗溶接の電極を押し当てたり、あらかじめ引き出し線24をプレス加工して引き出し線24を潰し、端子23の平面部の高さと同等となるようにして端子23表面の平坦性を確保している。
【0065】
端子23は、図7のように個片で接続してもよいが、連続したフープ状(図示していない)にすることにより生産性を向上することができる。
【0066】
次に、図8のように、鉄を主成分にした金属磁性体粉末と熱硬化性樹脂からなる結合材とを混合し、これを顆粒状に造粒した磁性体材料と、コイル素子21と、端子23の突出部25を金型(図示していない)に挿入して加圧成形することによりボディー22を形成する。図8において、ボディー22の輪郭を破線で示している。
【0067】
このとき、ボディー22には金型を用いて、ボディー22の側面から底面に向けて、端子23の収納溝26裏面の凸部28を納める収納凹部29を形成する。
【0068】
さらに、ボディー22の底面に、端子23を固定したボディー22の側面と直交する両側面から内側に向かって、一対の端子23の他端の角部30と対向する範囲を含むとともに底面より直方体形状に落ち込んで切り欠いた凹欠部31を形成する。
【0069】
そして、加圧成形したボディー22は、熱処理を行い熱硬化性樹脂からなる結合材を熱硬化させて、ボディー22の側面に端子23の突出部25を強固に固定する。
【0070】
熱処理した後、実装基板34への実装性をよくするために、端子23を溶融はんだに浸漬するなどして、端子23の表面にはんだめっきを行うとよい。
【0071】
次に、図9のように、端子23をボディー22の側面から底面に向けて折り曲げ加工をおこなう。
【0072】
まず、端子23の他端側の余剰分を切断し、ボディー22の側面と底面との稜部に対応する位置を折り曲げる(図9(a))。
【0073】
そして、ボディー22の側面から突出した部分を底面方向に折り曲げる。この時、端子23の収納溝26裏面の凸部28をボディー22に形成した収納凹部29に収納して、端子23の平面部をボディー22に沿わすように折り曲げを行う(図9(b))。
【0074】
最後に、端子23の角部30を、凹欠部31の内側の内壁42に沿って折り曲げることにより、突片44を凹欠部31の両側面から内側に向かう内壁41に沿うように折り曲げて当接させるとともに、端子23の角部30をボディー22の底面に係止する。
【0075】
この端子23の角部30の折り曲げについて図10を参照してさらに詳しく説明する。
【0076】
端子23の角部30の折り曲げは、凹欠部31と近似形状で嵌め込み可能なパンチ36を準備し、このパンチ36を端子23の角部30に当てながら凹欠部31に押し込むことにより行う。
【0077】
パンチ36の寸法は、凹欠部31の平面寸法から端子23の厚み寸法を減じた寸法にしたものである。
【0078】
このようなパンチ36を端子23の角部30に当てながら押し込むことにより、角部30が凹欠部31の内側の内壁42に沿って折り曲げられ、突片44も凹欠部31の両側面から内側に向かう内壁41とパンチ36との間で折り曲げられる。
【0079】
突片44はボディー22の底面と重なるように延設されているので、突片44は凹欠部31の両側面から内側に向かう内壁41に沿うように当接した状態で折り曲げられ、このとき、突片44が折れ曲がるときの応力を受けてボディー22の側面に配置した端子23がボディー22側に引き寄せることができ、パンチ36を引き抜いた後も突片44のバネ効果により当接した状態を維持して係止させる。
【0080】
また、四箇所の角部30を同時に折り曲げることにより、ボディー22の側面の端子23がバランスよくボディー22側に引き寄せられて、ボディー22と端子23との間に隙間ができることを抑えることができ、また、一方の端子23の角部30間においても、互いに引き合うように作用して、いずれか一方に引き寄せられて傾くことがなく、底面側の端子23の平坦性を損なうことなく端子23の角部30を折り曲げることができる。
【0081】
以上のようにすることにより、図1に示した表面実装型電子部品を製造することができる。
【0082】
なお、本実施の形態では、ボディー22を、磁性体材料を加圧成形したもので説明したが、プラスチック容器に回路素子を入れ樹脂を充填したものでもよく、端子の一端を容器の側面に固定し、端子の他端の角部を容器の底面に形成した凹欠部に沿わせて折り曲げて係止すれば、本実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明に係る表面実装型電子部品は、端子をボディーの側面と凹欠部の内壁に接触させて固定できるので、ボディーの振り子状の振動による端子の破断を防止して、表面実装型電子部品の信頼性を高めることができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0084】
21 コイル素子
22 ボディー
23 端子
24 引き出し線
25 突出部
26 収納溝
27 貫通孔
28 凸部
29 収納凹部
30 角部
31 凹欠部
32 はんだフィレット
33 バックフィレット
34 実装基板
35 ランド
36 パンチ
41 両側面から内側に向かう内壁
42 内側の内壁
43 切欠部
44 突片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路素子を内部に有した略四角柱形状のボディーと、前記回路素子と接続した一対の板状の端子とを備え、前記ボディーの対向する側面にそれぞれ前記端子の一端を固定し、前記端子の一端を固定した側面から底面に向かって折り曲げて前記端子の他端を前記ボディーの底面に配置した表面実装型電子部品において、前記ボディーの底面に、前記端子の一端を固定した側面と直交する両側面から内側に向かって、一対の前記端子の他端の角部と対向する範囲を含むとともに底面より直方体形状に落ち込んで切り欠いた凹欠部を形成し、前記端子に、前記凹欠部の両側面から内側に向かう内壁に対応して切り欠いた切欠部を形成しており、前記端子の前記角部を前記凹欠部の内側の内壁に沿って折り曲げることにより、前記端子の前記角部を前記凹欠部の前記側面から内側に向かう内壁に当接させて前記端子の前記角部を前記ボディーの底面に係止したことを特徴とする表面実装型電子部品。
【請求項2】
前記端子の前記角部に、前記凹欠部の両側面から内側に向かう内壁と隣接する前記ボディーの底面と重なり合う突片を延設し、前記端子の前記角部を前記凹欠部の内側の内壁に沿って折り曲げることにより、前記突片を前記凹欠部の両側面から内側に向かう内壁に沿うように折り曲げて前記端子の前記角部を前記ボディーの底面に当接させて係止したことを特徴とする請求項1記載の表面実装型電子部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−45871(P2013−45871A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182384(P2011−182384)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】