説明

表面形状認識用センサ、その製造方法

【課題】表面引っ掻きに対する強度が高められた表面形状認識用センサを提供する
【解決手段】本発明の表面形状認識用センサは、半導体基板上に電源供給配線を有する下地回路層と、下地回路層上に下層絶縁膜と、下層絶縁膜上にセンサ電極及びアース下部電極と、センサ電極及びアース下部電極を覆うパシベーション膜と、表面が露出するようにパシベーション膜に埋め込まれたアース上部電極と、アース下部電極とアース上部電極とを電気的に接続する接続電極とを備え、アース下部電極は、平面的に見たときに電源供給配線に重ならないように配置され、アース上部電極は、表面が平坦であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面形状認識用センサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セキュリティ向上のために、個人認証技術の開発が進められている。個人認証としては、指紋、顔、声紋、虹彩などの検出が挙げられるが、この中でも特に指紋認証に関して数多くの技術開発がなされている。
指紋の形状を検出する方式としては、光学方式と静電容量方式に大別される。この内、静電容量方式は、人間の指紋の凹凸を電気信号に置き換えて検出する。構造としては、LSIの最上層に下部電極および容量膜からなるキャパシタを形成したものである。このセンサ表面に指先が触れると、皮膚の表面がキャパシタの上部電極として機能し、キャパシタ容量膜のみからなるキャパシタに蓄積される電荷量と、キャパシタ容量膜および皮膚表面の凹部の空気からなるキャパシタに蓄積される電荷量との差で皮膚表面の凹凸を検出する。この構造は、光学方式に比べ小型化が可能となり、携帯電話への搭載が容易である。
また、静電容量方式において皮膚を電極としていることから、指先の皮膚表面のアースをとるために、表面が露出したアース電極がセンサ表面に形成されている。
【0003】
ここで、従来の表面形状認識用センサのアース電極を形成する方法を簡単に説明する(例えば、特許文献1を参照)。
まず、半導体基板上の下地回路層上にセンサ電極と、接続電極膜を形成する。接続電極膜は、後工程でアース電極に接続される。
次に、センサ電極と、接続電極膜を覆うパシベーション膜を形成する。
次に、接続電極膜に到達する貫通孔をパシベーション膜に形成する。
次に、パシベーション膜を覆う金属膜を形成する。この金属膜は、基板表面の凹凸を反映した形状で形成されるので、前記貫通孔の部分が、凹部になっている。
次に、前記貫通孔とその周囲の領域以外の金属膜をエッチング除去する。これによって残った金属膜が、アース電極となる。
【特許文献1】特開2003−269907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記方法でアース電極を形成すると、アース電極の表面が凹凸になるので、ボールペンやカッターなどの先端が尖ったもので引っ掻くと、アース電極表面の凹部に引っ掛かって、アース電極とその近傍の構造が破壊され、アース電極と下地回路の配線がショートしてしまうことがある。特に、アース電極と電源供給配線がショートすると、センサが表面形状を全く認識しなくなる。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、表面引っ掻きに対する強度が高められた表面形状認識用センサを提供するものである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
本発明の表面形状認識用センサは、半導体基板上に電源供給配線を有する下地回路層と、下地回路層上に下層絶縁膜と、下層絶縁膜上にセンサ電極及びアース下部電極と、センサ電極及びアース下部電極を覆うパシベーション膜と、表面が露出するようにパシベーション膜に埋め込まれたアース上部電極と、アース下部電極とアース上部電極とを電気的に接続する接続電極とを備え、アース下部電極は、平面的に見たときに電源供給配線に重ならないように配置され、アース上部電極は、表面が平坦であることを特徴とする。
【0007】
本発明のセンサでは、アース上部電極表面が平坦である。このため、ボールペンやカッターなどの先端が尖ったものでセンサ表面を引っ掻いたときの引っ掛かりを回避することができ、表面引っ掻き強度が向上する。また、従来のアース電極は、その表面に凹凸があったので、その分、指で触れたときの接触面積が小さくなり、そのため、接触抵抗が大きくなっていたが、本発明のセンサでは、アース上部電極表面が平坦なので、指で触れたときの接触面積が大きくなり、そのため、接触抵抗が小さくなる。
【0008】
また、アース下部電極が平面的に見たときに電源供給配線に重ならないように配置されるので、表面引っ掻きなどによってアース下部電極とその周辺の構造が破壊されたときでも、アース下部電極と電源供給配線との間のショートが起こりにくい。本発明によれば、この点からも表面引っ掻き強度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図面は、説明の便宜のために用いられるものであり、本発明の範囲は、図面に示す実施形態に限定されない。
【0010】
本発明の表面形状認識用センサの構造を図1(a)〜(c)に示す。図1(a)は、平面図であり、図1(b),(c)は、それぞれ、図1(a)中のI−I,II−II断面図である。このセンサは、半導体基板1上に電源供給配線3を有する下地回路層5と、下地回路層5上に下層絶縁膜7と、下層絶縁膜7上にセンサ電極9及びアース下部電極11と、センサ電極9及びアース下部電極11を覆うパシベーション膜13と、表面が露出するようにパシベーション膜13に埋め込まれたアース上部電極15と、アース下部電極11とアース上部電極15とを電気的に接続する接続電極17とを備え、アース下部電極11は、平面的に見たときに(すなわち、図1(a)に示すような平面図で見たときに)電源供給配線3に重ならないように配置され、アース上部電極15は、表面が平坦である。接続電極17及びアース上部電極15は、密着膜19と第1高融点金属膜21の積層膜からなる。
【0011】
以下、このようなセンサを製造する方法の一例を図2(a)〜(e)を用いて説明する。図2(a)〜(e)は、図1(b)に対応した断面図である。
【0012】
1.センサ電極及びアース下部電極形成工程
まず、図2(a)に示すように、半導体基板1上に電源供給配線3を有する下地回路層5及び下層絶縁膜7を順次形成し、下層絶縁膜7上にセンサ電極9及びアース下部電極11を形成する。
半導体基板1は、シリコン基板などからなる。下地回路層5には、センサ回路などが形成されている。下地回路層5は、通常、複数の配線層からなり、上下に隣接する2つの配線層間は、絶縁膜によって互いに絶縁されている。各配線層の配線は、スパッタ法又は蒸着法などにより導電体膜を形成し、この導電体膜をフォトリソグラフィ及びエッチング技術を用いてパターニングすることによって形成することができる。導電体膜は、Al膜又はTiNとTiの積層膜などからなる。前記絶縁膜は、CVD法などにより形成することができる。前記絶縁膜は、シリコン酸化膜又はシリコン窒化膜などからなる。下層絶縁膜7は、CVD法などにより形成することができる。下層絶縁膜7は、シリコン酸化膜又はシリコン窒化膜などからなる。
【0013】
次に、下層絶縁膜7上にセンサ電極9及びアース下部電極11を形成する。
センサ電極9及びアース下部電極11は、スパッタ法又は蒸着法などにより導電体膜を形成し、この導電体膜をフォトリソグラフィ及びエッチング技術を用いてパターニングすることによって形成することができる。導電体膜は、Al膜又はTiNとTiの積層膜などからなる。導電体膜は、例えば、厚さ0.6μmで形成する。
センサ電極9及びアース下部電極11は、通常は、同時に同じ材料・膜厚で形成されるが、別々の工程で形成してもよい。例えば、センサ電極9のみを形成し、その後、アース下部電極11のみを形成してもよい。この場合、センサ電極9とアース下部電極11の材料・膜厚は、互いに異なっていてもよい。
アース下部電極11は、平面的に見たときに電源供給配線3に重ならないように配置する。これによって、表面引っ掻きなどによってアース下部電極11とその周辺の構造が破壊されたときでも、アース下部電極11と電源供給配線3の間のショートが起こりにくくなり、表面引っ掻きに対する強度が向上する。
センサ電極9は、通常は、複数個が、マトリックス状に配置される。隣接するセンサ電極9間は、互いに絶縁分離される。
【0014】
2.パシベーション膜形成工程
次に、センサ電極9及びアース下部電極11を覆うパシベーション膜13を形成する。ここまでの工程で図2(a)に示す構造を得られる。
パシベーション膜13は、CVD法などにより、形成することができる。パシベーション膜13は、シリコン窒化膜又はシリコン窒化膜とシリコン酸化膜の積層膜などからなる。パシベーション膜13は、例えば、厚さ2μmで形成する。
次に、好ましくは、パシベーション膜13表面を平坦化する工程を行う。平坦化は、CMP(化学的機械的研磨)によって行うことができる。CMPによって、パシベーション膜13の厚さを、例えば1μm程度にする。
【0015】
3.貫通孔及びアース上部電極用溝形成工程
次に、パシベーション膜13にアース下部電極11に繋がる貫通孔17aと、前記貫通孔と繋がったアース上部電極用溝15aを形成する。貫通孔17a及び溝15aは、それぞれ、後工程で導電体が充填されて、接続電極17及びアース上部電極15となる。
貫通孔17aと溝15aは、どちらを先に形成してもよく、同時に形成してもよい。ここでは、貫通孔17aを先に形成する場合を例にとって説明を進める。
【0016】
まず、アース下部電極11に繋がる貫通孔17aをパシベーション膜13に形成し、図2(b)に示す構造を得る。貫通孔17aの形状は、限定されず、例えば、平面形状が、円形、矩形、細長い形状などであってもよい。
貫通孔17aは、パシベーション膜13上に貫通孔形成用のレジストパターンを形成し、このパターンをマスクとして、エッチング(例えば、リアクティブイオンエッチングなどドライエッチング)を行うことによって、パシベーション膜13を部分的に除去して形成する。上記レジストパターンは、エッチング後に除去する。エッチングは、アース下部電極11に到達するまで行ってもよく、溝15aの深さ分が残るようにしてもよい。後者の場合、溝15a形成時に、残りがエッチングされて貫通孔17aが形成される。
溝15aは、パシベーション膜13上に溝15a形成用のレジストパターンを形成する点以外は、貫通孔17aと同様の方法で形成することができる。溝15aを形成して得られる構造を図2(c)に示す。溝15aは、幅が0.15〜0.6μm程度である。
【0017】
溝15aは、電源供給配線3と平面的に見たときに重ならないように形成することが好ましい。この場合、後工程でアース上部電極15が、電源供給配線3と平面的に見たときに重ならないように形成され、表面引っ掻きに対する強度がさらに高くなる。別の実施形態では、溝15aは、格子状に形成してもよい。この場合、溝15aは、電源供給配線3と平面的に見たときに重なる。格子状の溝15aに導電体が充填されると、格子状のアース上部電極15が得られ、その結果、図3(a)〜(c)に示すような構造のセンサが得られる。
溝15a内にパシベーション膜13を島状に残してもよく、この場合、後工程で形成されるアース上部電極15にスロットが形成される。この場合、アース上部電極15をCMPによって形成する際のディッシングを防止することができる。
【0018】
4.導電体膜形成工程
次に、貫通孔17a及び溝15aを充填するように導電体膜を得られた基板上に形成し、図2(d)に示す構造を得る。導電体膜は、密着膜19と第1高融点金属膜21の積層膜とからなる。密着膜19は、第1高融点金属膜21と下地との間の密着性を向上させる機能を有する膜である。密着膜19は、例えば、第2高融点金属膜とその窒化物膜の積層膜からなる。第1及び第2高融点金属膜は、それぞれ、例えば、Cr,Ti,Nb,V,W,Ta,Zr,Hfの何れかからなる。一例では、導電体膜は、Ti/TiNからなる密着膜19と、Wからなる第1高融点金属膜21とで構成される。Ti/TiN/W膜の厚さは、それぞれ、例えば、30〜50nm/100〜150nm/0.3〜0.6μm程度である。別の実施形態では、接続電極17及びアース上部電極15は、第1高融点金属膜21のみからなってもよい。各金属膜,窒化物膜は、スパッタ法などで形成することができる。
【0019】
5.導電体膜平坦化工程
次に、パシベーション膜13上面が露出するように導電体膜を平坦化し、アース上部電極15及び接続電極17を形成し、図2(e)に示す構造を得る。
この工程によって、溝15a内にアース上部電極15が形成され、貫通孔17a内に接続電極17が形成される。アース上部電極15の表面は平坦である。本明細書において「平坦」とは、本発明の作用効果によって表面引っ掻き強度が向上する程度に平坦であることを意味し、表面の凹凸が、アース上部電極15の厚さ以下であることが好ましい。平坦化は、CMPなどによって行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態の表面形状認識用センサの構造を示し、(a)は平面図、(b),(c)は、それぞれ、(a)中のI−I,II−II断面図である。
【図2】(a)〜(e)は、本発明の表面形状認識用センサの製造工程を示す、図1(b)に対応した断面図である。
【図3】本発明の別の実施形態の表面形状認識用センサの構造を示し、(a)は平面図、(b),(c)は、それぞれ、(a)中のI−I,II−II断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1:半導体基板 3:電源供給配線 5:下地回路層 7:下層絶縁膜 9:センサ電極 11:アース下部電極 13:パシベーション膜 15:アース上部電極 15a:アース上部電極用溝 17:接続電極 17a:貫通孔 19:密着膜 21:第1高融点金属膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に電源供給配線を有する下地回路層と、
下地回路層上に下層絶縁膜と、
下層絶縁膜上にセンサ電極及びアース下部電極と、
センサ電極及びアース下部電極を覆うパシベーション膜と、
表面が露出するようにパシベーション膜に埋め込まれたアース上部電極と、
アース下部電極とアース上部電極とを電気的に接続する接続電極とを備え、
アース下部電極は、平面的に見たときに電源供給配線に重ならないように配置され、
アース上部電極は、表面が平坦であることを特徴とする表面形状認識用センサ。
【請求項2】
アース上部電極は、平面的に見たときに電源供給配線に重ならないように配置される請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
アース上部電極は、スロットを有する請求項1に記載のセンサ。
【請求項4】
パシベーション膜は、シリコン窒化膜又はシリコン窒化膜とシリコン酸化膜の積層膜からなる請求項1に記載のセンサ。
【請求項5】
接続電極及びアース上部電極は、第1高融点金属膜からなる請求項1に記載のセンサ。
【請求項6】
接続電極及びアース上部電極は、密着膜と第1高融点金属膜の積層膜からなる請求項1に記載のセンサ。
【請求項7】
密着膜は、第2高融点金属膜とその窒化物膜の積層膜からなる請求項6に記載のセンサ。
【請求項8】
第1及び第2高融点金属膜は、それぞれ、Cr,Ti,Nb,V,W,Ta,Zr,Hfの何れかからなる請求項7に記載のセンサ。
【請求項9】
半導体基板上に電源供給配線を有する下地回路層及び下層絶縁膜を順次形成し、
下層絶縁膜上にセンサ電極及びアース下部電極を形成し、
センサ電極及びアース下部電極を覆うパシベーション膜を形成し、
パシベーション膜にアース下部電極に繋がる貫通孔と、前記貫通孔と繋がったアース上部電極用溝を形成し、
前記貫通孔及びアース上部電極用溝を充填するように導電体膜を得られた基板上に形成し、
パシベーション膜上面が露出するように導電体膜を平坦化し、アース上部電極及び接続電極を形成する工程を備え、
アース下部電極は、平面的に見たときに電源供給配線に重ならないように形成される表面形状認識用センサの製造方法。
【請求項10】
アース上部電極は、平面的に見たときに電源供給配線に重ならないように配置される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
導電体膜の平坦化は、CMP法によって行う請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−155608(P2007−155608A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353775(P2005−353775)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】