説明

表面改質のために有用なカテコール等価分子の製造方法

【課題】表面改質のために有用なカテコール等価分子の製造方法を提供する。
【解決手段】記載されているのは、吸着層を形成し得、また少なくとも一つの先頭基A、所望による結合基B、ポリマー基C、所望により存在する末端基D及び所望により存在する架橋基Rを有する化合物であって、前記先頭基Aが下記式:


[式中、
Xは互いに独立して、酸性基、例えばOH基、SH基、ホスフェート基、ホスホネート基及びN+ 2 H基(式中、Rは好ましくは互いに独立して、水素原子又は炭素原子数1ないし6のアルキル基、特に炭素原子数1ないし4のアルキル基から選択されている。)を表わし、
Yは都合の良い結合基から誘導された基、特にNL3 基又はN+ (L3 2 基を表わし、
1 、Z3 及びZ4 はC又はN+ を表わし、
2 、Z5 及びZ6 はC−L1 基又はN+ −L基を表わし、ここで、
1 は水素原子又は電子吸引性基を表わし、
Lは炭素原子数1ないし6のアルキル基、特に炭素原子数1ないし4のアルキル基を表わし、
2 及びL3 は独立して、水素原子又は炭素原子数1ないし6のアルキル基、好ましくは炭素原子数1ないし4のアルキル基から選択されており、或いは、L2 は、Z6 のL1 又はLと一緒になって、ヘテロ環、特に正荷電したヘテロ環を形成し得、
nは0又は1又は2又は3を表わし、
mは0又は1を表わすが、
但し、Z1 ないしZ6 の最大一つはN+ を表わし、そしてZ1 がN+ を表わす場合、L2 は更にエステル基、アミド基又はヘテロ環式基を表わし得る。]で表わされる化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面改質のために有用な手段、特に、形成された吸着層の安定性を向上させる、吸着質と表面との間の安定な共有結合の形成を可能にする手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高度に調節された物理化学的な表面特性は、生体材料から梱包、自動車用途に至る様々な分野のための機器の開発及び最適化における主な要因である。他の表面パラメーター、例えば荒さ及び光学的性質に影響を及ぼすことなく界面化学を調整する実施可能な手段は、非常に薄い膜、特に単分子吸着層を使用することである。このような分子システムの一般的な機能性は、表面への固定化のための結合配列、表面の機能性(安定性、拡散障壁、タンパク質抵抗性)にしばしば寄与するスペーサー及び特別な(生−)機能性部分を提供する化学基、の3倍である。従来、両親媒性物質/基材の様々な組み合わせ、例えば、金又は銀に対するアルカンチオール1 2 、種々の基材に対するシラン3-8 、金属酸化物に対するアルカンホスフェート(ホスホネート)9-13又は疎水性基材に対するプルロニクス(Pluronics)(登録商標)14が開発され、そして成功裏に適用されてきた。
【0003】
生物医学用途のための表面機能化に関し、ポリ(エチレングリコール)が、その非汚染性、タンパク質抵抗性のために、広く研究されている15。グラフトコポリマーが、スイス
フェデラル インスチチュート オブ テクノロジー チューリッヒ(Swiss Federal Institute of Technology Zurich)のラボラトリー フォー サーフェス サイエンス アンド テクノロジー(Laboratory for Surface Science and Technology)(LSST)において、近年、広範に研究されており、そして、今日、PEG−グラフトポリ電解質、例えばポリ(L−リジン)がグラフトされたポリ(エチレングリコール)(PLL−g−PEG)吸着層は、帯電した基材の表面改質のための標準手段になっている。このシステムの設計は、正に帯電した骨核(PLL、pKa =10.5)及び少しのPEG側鎖に基づいている。一旦、吸着されると、前記骨核は、負に帯電した金属酸化物基材に対する安定な静電的結合を形成し、そして前記側鎖は、生物学的環境に対する緻密な、緊密充填された、タンパク質抵抗性の吸着層を形成する。PEG側鎖とLysユニットとの比率を変化させることによりPEG密度を変更する可能性15、並びに生物機能における活性部分、例えば小さいタンパク質16又はPEG−オメガ部位における短いタンパク質配列17を添加する可能性は、このシステムを、新規なバイオセンサー及び生体材料表面の開発のために非常に多用途にする。
【0004】
しかしながら、このアセンブリーシステム及び他のアセンブリーシステムは、基材の選択並びに結合強度の面で制約を有する。これまでは、一つのシステムのみが、吸着し、そして殆ど全ての種類の表面(金属1819、ステンレススチール20、金属酸化物又はセラミック2122及びポリマー23-28 )に対して安定な、ほぼ共有結合を形成することが可能であると証明されている。このシステムは、非タンパク質性アミノ酸:3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)に基づいている。実際、例えば海産イガイは、それらがその上に居住する種々の水中基材に対する接着を仲介する多数の珍しいタンパク質を作り出すことが知られている29。これらのいわゆるイガイ接着性タンパク質は、異常に高濃度の3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)を含み、これが、これらのタンパク質の強い接着性を与えると信じられている192930。更に、メッサースミス(Messersmith)及び同僚は、PEGにDOPA含有ペプチドを結合することにより、これらの接着性を活用しており、そして最近、これらの分子は、金属、金属酸化物、半導体及びポリマー表面を改質して、細胞の接着及び伸展に対してそれらを抵抗性にすること
が可能であると説明している193132。DOPA接着機構が、表面が結合した金属中心のキレート化を介するか又は、DOPAの酸化的架橋を介するかの何れかで機能すると勘案されている203334
【0005】
国際特許出願公開第03/008376号パンフレット(特許文献1)において、ウレタン結合を介するか又はエステル若しくはアミド結合を介して、ポリマーに対してDOPAを結合させることが既に提案されている。ウレタン結合を介する結合の場合には、カルボキシル基はエステル基に変換することができる。
DOPA類似体もまた、他の生命体、例えばシアノバクテリア中に見出されている。これらの生命体は、25億年を越える間、鉄捕捉の課題に直面し、そして洗練された方法を開発することにより、この課題を満たしている。主要な物質は、Fe(III)に結合するために進化において最適化された成長因子アナケリン3536である。この分子は、DOPAから生合成により誘導された発色団を含み、そして正電荷を含む。
【特許文献1】国際特許出願公開第03/008376号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
DOPA含有ポリマーは幾つかの用途のために十分に安定な吸着層を生じさせることが見出されたけれども、より一般的に適用可能であり、及び/又は溶液中でより安定であり、及び/又はより安定な吸着層を形成する分子に対する要求が依然として存在する。
それ故、固着分子及び/又はこのような固着分子を含むポリマー(脚とも記載されている)を提供することが本発明の一般的な目的である。
このような脚及び/又はポリマー、特に、様々な表面、例えば金属及び/又は金属酸化物及び/又はポリマー、に結合する能力を持つ両性イオン性の、酸化に対して安定な新規なカテコール等価分子、特に、例えば、このような基材の表面の性質を変化させることが可能な吸着層を形成する分子、の製造方法を提供することも本発明の目的である。
表面に吸着可能な新規分子及びこのような表面改質された材料を得るために、単一又は複数のカテコール等価分子を使用することにより、様々な化合物を化学的に機能化する方法を提供することが、本発明の他の目的である。
自己集合単分子層の吸着速度及び最終的な安定性を向上させる方法を提供することが、本発明の更に他の目的である。
吸着層の安定性、特に、水性媒体、例えば緩衝液、血清又は血漿中のそれらの安定性を向上させる方法を提供することが、本発明の更に別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
さて、これら及び、下記の記述から容易に認識される、本発明のまた別の目的を実施するために、一つの観点において、本発明の安定な吸着層形成性分子は、以下の一般式(A)ないし(C):
【化1】

[式中、Aは少なくとも一つの先頭基Aを表わし、Bは所望により存在する結合基Bを表わし、Cはポリマー基Cを表わし、Dは所望により存在する末端基Dを表わし、そしてR
は所望により存在する架橋基Rを表わし、
そして前記先頭基Aが次式:
【化2】

{式中、
Xは互いに独立して、酸性基、例えばOH基、SH基、ホスフェート基、特に環式ホスフェート基(式中、二つのXは下記種類:
【化3】

のヘテロ環式基を形成する。)、ホスホネート基、及びN+ 2 H基(式中、Rは好ましくは互いに独立して、水素原子又は炭素原子数1ないし6のアルキル基、特に炭素原子数1ないし4のアルキル基から選択されている。)を表わし、そして好ましくは、両XはOH基を表わし、
Yは都合の良い結合基から誘導された基、特にNL3 基又はN+ (L3 2 基を表わし、
1 、Z3 及びZ4 はC又はN+ を表わし、
2 、Z5 及びZ6 はC−L1 基又はN+ −L基を表わし、ここで、
1 は水素原子又は電子吸引性基を表わし、
それにより、L1 =NR1 2 3 + の場合、R1 、R2 及びR3 はそれぞれ、炭素原子数1ないし6のアルキル基又は炭素原子数5若しくは炭素原子数6のアリール基、特に炭素原子数1ないし4のアルキル基、特にメチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基から選択され得、
Lは炭素原子数1ないし6のアルキル基、特に炭素原子数1ないし4のアルキル基を表わし、
2 及びL3 は独立して、水素原子又は炭素原子数1ないし6のアルキル基から選択されたもの、特に炭素原子数1ないし4のアルキル基を表わすか、或いは、L2 は、Z6 のL1 又はLと一緒になって、ヘテロ環、特に正荷電したヘテロ環を形成し得、
nは0又は1又は2又は3を表わし、
mは0又は1を表わすが、
但し、Z1 ないしZ6 の最大一つはN+ を表わし、そしてZ1 がN+ を表わす場合、L2 は更にエステル基、アミド基又はヘテロ環式基、例えばオキサゾール基、テトラゾール基、イミダゾール基等、を表わし得る。}で表わされる化合物基を表わし、
前記所望による結合基Bは以下の一般式I、II、III又はIV:
【化4】

{式中、
m及びnは互いに独立して、0、1、2、3、4又は5を表わし、
Aは上記先頭基Aを表わし、そして
Cは前記ポリマー基Cを表わす。}の一つを表わし、
前記ポリマー基Cが一般式I又はII:
【化5】

{式中、
Xは、前記A又は前記所望による結合基Bの何れかに化学的に結合することができ、
Yはポリマー基、又は、nが少なくとも3、そして疎水性表面が望まれる場合、好ましくは少なくとも6である所望により置換された(CR2 n 鎖を表わし、そしてRは水素原子又はフッ素原子を表わし、
Zは、末端基Dへのカップリングのために適する官能基を表わす。}の何れかを表わし、そして
前記所望による末端基Dは、不活性基か又は反応性基の何れかを表わし、そして
前記所望による架橋基Rは、架橋可能な何れかの分子基を表わす。]の一つを有するという特徴が認められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
好ましい実施態様において、ポリマー基Cは水溶性である。
本発明の範囲内において、カテコール等価分子は、形成された吸着層の安定性を向上させる、吸着物質と表面との間の安定な共有結合の形成を可能にする表面改質のための有用な手段であることが見出された。カテコール等価分子において、カテコール等価物質(脚)は、単機能化された残りの部分(例えば、PEG鎖)又は既に合成された多機能化されたポリマーに結合され得、それにより、マルチサイド結合の利点を使用する。
驚くべきことに、カルボン酸基、エステル基又はアミド基を欠いているカテコール等価物質は、DOPAの場合において、予め正に帯電された表面への急速な初期吸着に関与すると推測されている、カルボキシレートの相互作用が存在しないにも係わらず、多くの様々な表面に適切に吸着することが見出された。
カルボキシレート機能を欠いている一つの使用可能な、見込みのある化合物は、例えば
ドーパミンである。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)対ドーパミンのウレタン結合カップリングの場合には、表面と、形成されたウレタン結合との相互作用は殆ど無視し得るか又は存在しないことが予想され、従って、前記の初期吸着層形成は、広範囲において、表面依存性でない。低いpKa は共有結合の形成に好都合であり、従って、少なくとも、安定性を与える段階である第二段階の速度に影響を及ぼすと推測されている。
【0009】
本発明の範囲内において、カテコール等価物質に対する更なる修正が、吸着速度及び/又は吸着層の安定性及び/又はカテコール等価物質、カテコール等価分子、或いはカテコール等価物質を含む吸着層の酸化安定性を増加させることが更に見出された。
電子吸引性基、特に永久正電荷が芳香族環に結合している場合には、種々様々な物質に対する吸着速度を増加させることができることが見出された。帯電していない電子吸引性基、例えばニトロ基が芳香族環に結合している場合には、それは単に、共有結合形成性基、特に脱プロトン化したヒドロキシ基における負電荷の安定化、或いは、ヒドロキシ基のpKa の低下をもたらすであろう。正に帯電した基が付加される場合には、負に帯電した表面への初期の吸着層形成が上手くいくであろう。好ましい永久電荷の導入のために適するのは、特に第四級アミノ基である。電子吸引性基は、既に上記されたpKa 低下効果を有するので、それらは、僅かに酸性のpHにおいて十分な脱プロトン化が既に見出され、その結果、僅かに酸性のpHにおいて共有結合の形成が既に促進されるという利点を有する。いずれにせよ、正に帯電した脱離基に対する結合エネルギーの低下が、基材表面とカテコール等価物質の共有結合性基との間の共有結合の形成後の改善された挙動を生じさせると推測される得る。
【0010】
参考文献に見出されるような、特定置換のpKa 低下効果を以下の表1に示す。
【表1】

一般的に、本発明の化合物は10以下のpKa1を有する。本発明の好ましい観点において、前記化合物は9.5以下、より好ましくは9.0以下、最も好ましくは8.5以下、そして特別に好ましくは8以下のpKa1を有する。
共有結合形成を可能にする基として、それらが十分に酸性である限りは、ヒドロキシ基以外を提供することも可能である。このような代替可能な基は、例えば、SH基、ホスフェート基、特に環式ホスフェート基、及びN+ 2 H基(式中、Rは互いに独立して、水素原子又は炭素原子数1ないし6のアルキル基、特に炭素原子数1ないし4のアルキル基を表わす。)である。
しかしながら、好ましい実施態様において、吸着性化合物、即ちカテコール等価物質は、導入された永久電荷を有するか、及び/又は、複数結合部位、即ち一つよりも多くのヒドロキシ基を有する。
本発明の別の観点において、正電荷が環に取り込まれ、それにより、本明細書ではアナキャットとして記載されている、アナケリンにおいて見出された基をもたらす場合には、酸化安定性を改善することができることも見出された。
【0011】
既に上で述べたように、先頭基Aは下記式:
【化6】

で表わされる化合物であり、
前記式中、好ましい実施態様においては、
Xは互いに独立して、OH基、SH基、ホスフェート基、特に環式ホスフェート基、N+ 2 H基(式中、Rは互いに独立して、水素原子又は炭素原子数1ないし6のアルキル基から選択されており、特に炭素原子数1ないし4のアルキル基を表わす。)を表わし、そして非常に好ましくは、両XはOH基を表わし、
Yは都合の良い結合基から誘導された基、特にNL3 基又はN+ (L3 2 基を表わし、
1 、Z3 及びZ4 はC又はN+ を表わし、
2 、Z5 及びZ6 はC−L1 基又はN+ −L基を表わし、ここで、
1 は水素原子又は電子吸引性基、好ましくは負電荷を安定化する基、例えばNR1 2 3+基又はNO2 基又はフッ素原子又はCx x 基、特にCF3 基又はC2 5 基を表わし、
それにより、L1 =NR1 2 3 + の場合、R1 、R2 及びR3 はそれぞれ、炭素原子数1ないし6のアルキル基又は炭素原子数5若しくは炭素原子数6のアリール基、特にメチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基から選択され得、
Lは炭素原子数1ないし4のアルキル基を表わし、
2 及びL3 は互いに独立して、水素原子又は炭素原子数1ないし4のアルキル基から選択されたものを表わすか、或いは、L2 は、Z6 のL1 (前記L1 はNR1 2 3 + 基を表わす。)のR1 又はR2 又はR3 と一緒になって、ヘテロ環を形成し得、
nは0又は1又は2又は3を表わし、
mは0又は1、好ましくは1を表わすが、
但し、Z1 ないしZ6 の最大一つはN+ を表わし、そしてZ1 がN+ を表わす場合、L2 は更にエステル基、アミド基、又はヘテロ環式基、例えばオキサゾール基、テトラゾール基、イミダゾール基等を表わし得る。
1 ないしZ6 、L及びL1 に対する指標は、それらが下記の効果:
−DOPAのpKa に比べてより低いpKa 値、
−先頭基AのX基の間の、例えばカテコールのヒドロキシ基の間の、分子の増加された疎水性の少なくとも一つをもたらし、分子の残りの部分が、先頭基A−基材結合の加水分解に対して表面層を安定化するようなものである。
【0012】
好ましい実施態様において、先頭基Aは、次式I又はII又はIII又はIV:
【化7】

で表わされる基の一つを表わし、
前記式中、R1 、R2 、L2 、L3 及びnは上記において定義されたものと同じ意味を表わし、式IVにおいて、L2 は更にエステル又はアミドを表わし得るが、しかし、CO2 H基を表わさず、そして前記式中、脱プロトン化された基は、式II、III及びIVで表わされる基の改良された脱プロトン化特性を示す。
好ましいL2 は水素原子又は炭素原子数1ないし6のアルキル基、非常に好ましくは水素原子又は炭素原子数1ないし4のアルキル基を表わし、これにより、正電荷に起因して、更にCONR2 基及びCO2 R基であることが可能であり、前記式中、Rは互いに独立して、好ましくは水素原子又は炭素原子数1ないし6のアルキル基、非常に好ましくは水素原子又は炭素原子数1ないし4のアルキル基を表わす。
【0013】
所望による結合基Bは、それが存在する場合には、先頭基Aとポリマー基Cとの間に配置されており、また以下の一般式I、II、III又はIV:
【化8】

の一つで示され、
前記式中、
m及びnは互いに独立して、0、1、2、3、4又は5を表わし、
Aは上記先頭基Aを表わし、そして
Cは更に以下に記載されているポリマー基Cを表わす。
【0014】
前記ポリマー基Cは、以下の一般式I又はII:
【化9】

で表わされるポリマーから誘導され、
前記式中、
Xは、先頭基A又は前記所望による結合基Bの何れかに化学的に結合することができ、一般的に、カルボシキレート基、アミン基、チオール基、ヒドロキシ基、スルホン基、スルフェート基、ホスホネート基、ホスフェート基等を表わし、好ましいアミン基が先頭基A(脚分子)に存在する場合には、好ましいXは、アミド結合を介する結合をもたらすカルボシキレート基である。
Yはポリマー基、又は(CR2 )鎖、好ましくはポリマー基、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)基、ポリ−リジン(PL)基、ポリメチルオキサゾリン(PMOXA)基、ポリアクリレート基、ポリ(N−ビニルピロリドン)基、ポリ(アクリルアミド)基、ポリ(ビニルアルコール)基、ペプトイド基、ペプチド基、ポリエステル基、多糖類基、ポリエチレン基又は(CH2 n 基又は(CF2 n 基、好ましくはPEG基を表わす。
Zは、前記末端基Dに結合可能な官能基、特に、OH基、COOH基、SO2 H基、SO3 H基、NH2 基、SH基等のような基、好ましくはOH基、NH2 基、SO3 H基を表わす。
好ましくは同様に存在する末端基Dは、不活性基か又は反応性基の何れか、特に不活性基、例えばアルキル基、アリール基、アリル基、アルケニル基、アルキニル基、又はポリアルキルシリル基、又は蛍光マーカー基、生物学的に活性な化合物基、例えばプロテイン基、ペプチド配列基、サッカリド基、又は何れかの他の生物学的に活性な化合物基、又は反応性基、例えばビニルスルホン基、マレイミド基、アクリレート基、アジド基又はアル
キン基を表わす。
【0015】
所望により存在する架橋基Rは、架橋可能な何れかの分子基、例えばカテコール基、スチレン基、アクリレート基、チオール基、チオフェン基及びピロール基を表わす。
形成された吸着層の安定性を改善するために、1個のポリマー基Cに対して結合した1個よりも多く、一般的に約2個又は3個の先頭基Aを有するのが好ましいことであり得る。これは、1個のポリマー基Cに結合された1個の結合基Bに結合した1個より多く(一般的に、2個又は3個)の先頭基Aを生じさせる、適する結合基Bを使用することにより行い得る。
式(A)ないし(C)で表わされる分子は、種々様々な基材、例えば、酸化された/酸化されていない表面を持つ金属、金属酸化物、セラミック、ポリマー、生体組織、脂質二重層、カルボキシレート例えば骨等の表面に、吸着層又はコーティングをそれぞれ形成し、それにより、望ましい性質、例えばタンパク質抵抗性、例えば、抗付着性、疎水性及び親水性、潤滑、とりわけ水性環境における潤滑、生体分子特異性、接着性/反発性、細胞接着性等を有する表面を提供するために適している。
【0016】
非付着性を提供するか又は少なくとも減少した付着性をもたらす様々な鎖が存在する。PEG以外に、ポリメチルオキサゾリン(PMOXA)、ポリ−N−ビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリルアミド等もまた、好適な非付着性鎖である[ホワイトサイズ(Whitesides)ら1 を参照]。PEG、PMOXA、PVP等の高い鎖密度が非付着性に不可欠であると、一般的に認識されている。本発明の化合物の利点の一つは、それらは、このような高い鎖密度がより容易に、より経済的な方法、例えば、より低い温度で、そして様々な再現性につながる多段階表面化学を必要とすることなく達成されることを可能にすることである。
吸着層形成に先立って表面、例えばポリマー表面を処理して、不定汚染物を除去するか又は該表面の活性を向上させることもまた、本発明の範囲内である。
本発明の分子は好ましくは、水溶液、特に、共有結合形成性基の少なくとも1%、好ましくは少なくとも3%、最も好ましくは少なくとも5%が、解離した形態、特に脱プロトン化された形態で溶存する水溶液から、例えば、所望のpHを持つ水溶液から前記分子を適用することにより、適用される。解離度を選択する他の方法、例えば溶剤混合物も適用され得る。
更に、本発明の範囲内にあるものは、様々な先頭基Aの組み合わせ及び/又は様々な結合基Bの組み合わせ及び/又は様々なポリマー基Cの組み合わせ及び/又は様々な末端基Dの組み合わせ及び/又は様々な架橋基Rの組み合わせが分子形成の際に使用されるカテコール等価分子である。
本発明の分子は、当業者に公知のカップリング反応を使用して製造することができる。
【0017】
吸着層を形成するために適する本発明の具体的なカテコール等価分子は、次式:
【化10】

【化11】

(式中、R1 及びR2 は上記において定義されたものと同じ意味を表わす。)を有する。
【0018】
第二の観点において、本発明の安定な吸着層形成性分子は、最大9.9、一般的に最大9.5、好ましくは最大9、とりわけ最大8.5、最も好ましくは最大8のpKalを有すると認められ、また前記化合物は吸着層を形成し得、そして以下の一般式(A)ないし(C):
【化12】

(式中、Aは少なくとも一つの先頭基Aを表わし、Bは所望により存在する結合基Bを表わし、Cはポリマー基Cを表わし、Dは所望により存在する末端基Dを表わし、そしてRは所望により存在する架橋基Rを表わす。)で表わされ、
そして前記式中、
前記先頭基Aは次式:
【化13】

で表わされる化合物の基であり、
ここで、
Xは酸性基、好ましくはXは互いに独立して、OH基、SH基、ホスフェート基、特に環式ホスフェート基、ホスホネート基、N+ 2 H基(式中、両Rは互いに独立して、水素原子又は炭素原子数1ないし6のアルキル基、特に炭素原子数1ないし4のアルキル基から選択されている。)を表わし、そして最も好ましくは、両XはOH基を表わし、
Yはポリマー基C及び所望により存在する結合基B、所望により存在する末端基D及び/又は所望により存在する架橋基Rを含む基を表わし、
1 、Z3 及びZ4 はC又はN+ を表わし、
2 、Z5 及びZ6 はC−L1 基又はN+ −L基を表わし、それにより、
1 は水素原子又は電子吸引性基、特に、上記定義の電子吸引性基を表わし、そして
Lは中性基を表わす、という特徴を示す。
【0019】
下記の本発明の詳細な記載を参酌することにより、本発明はより良く理解され、そして上に記載された目的以外の目的が明確になるであろう。このような記載は、添付図面につき言及している。
図1は、様々なカテコール等価分子(mPEG−L−DOPA、mPEG−ミモシン、mPEG−ドーパミン、mPEG−アナキャット)を用いて改質した表面に対するエリプソメトリー測定を示す。上図には、高塩類緩衝液中4時間後(白四角)及びHEPES2中に48時間貯蔵した後(黒四角)の分子の吸着が示されている。下図は、HEPES2貯蔵表面に対する血清吸着を示す。
図2は、TiO2 に対する吸着4時間後のmPEG−L−DOPA、mPEG−ミモシン、mPEG−ドーパミン、mPEG−アナキャットについてのO1sシグナルのXPS(図2A)並びにC1sシグナルのXPS(図2B)を示す。mPEG−ドーパミン及びmPEG−アナキャットの場合において、大量のPEGが見え、分子の吸着を証明しているのに対して、他の二つの化合物においては吸着は遥かに少なく、そして大部分の炭素は環境からの不定炭素に由来している。
【実施例】
【0020】
本発明を、これより、具体的な実施例により更に詳しく説明する。ここに記載された吸着層に被覆された基材の製造方法は、非常に一般的に適用可能である。前記方法は、所望により予備処理した表面を、一つ又はそれより多くの吸着層形成分子、特に水ベースの溶液で処理することからなる。基材と吸着層との間の共有結合の形成は、例えば約50℃に加熱することによるのが好都合であり得る。更に、温度を上昇させることは、吸着(雲り点吸着)の際にPEG鎖の立体容量を減少させるので、最終的なPEG密度も増加させる。吸着層が形成されるやいなや、コートされた基材を乾燥させることができる。広範に適用可能な具体的な処理方法及び乾燥方法を、実施例から取り出すことができる。
【0021】
実施例1:mPEGアナキャット
【化14】

アナキャット[2005年に、カール ガーデマン(Karl Gademann)により製造された。37](6.8mg、22μmol)を、0℃(氷浴)にて、HCl(4M)及びジオキサン(0.5mL)に溶解した。反応混合物を0℃にて1.5時間撹拌した(30分後に黄橙色沈澱が生成した)。そしてアルゴン(Ar)下室温で10分間撹拌
した。溶剤を減圧下で除去し、そして得られたオフホワイト粉末を高真空下で乾燥した。残渣をDMF(1mL)及びCH2 Cl2 (1mL)に懸濁し、そしてN−メチルモルホリン(50μL)を添加した。更にDMF(1mL)を添加し、そして反応混合物を、橙黄色溶液が得られるまで、15分間撹拌した。メトキシ−PEG−ヒドロキシアセテート−ヒドロキシスクシニジルエステル(mPEG−ASA)(50mg、約10μmol)を一度に添加し、そして橙黄色溶液を、遮光下で18時間、アルゴン下室温で撹拌した。その後、反応混合物を濾過し、そして、ジエチルエーテル50mLで稀釈した。溶液を4℃で30分間放置し、その後、白色沈澱が生成した。沈澱を濾過し、そしてジエチルエーテルで十分に洗浄した。生成物を高真空下で乾燥して、橙色固体33.2mg(約6.6μmol、66%)を得た。
【0022】
実施例2:mPEGアナキャット
【化15】

ドーパミン(1.9mg、10μmol)をCH2 Cl2 (0.3mL)及びDMF(0.05mL)に溶解し、そして室温で10分間撹拌した。その後、mPEG−ASA(5.5mg、1.1μmol)を添加し、そして混合物を室温で3時間撹拌した。その後、エーテル(0.5mL)を添加し、そして反応混合物を室温で20分間撹拌した。懸濁液を濾過し、そして濾液を、メタノールを用いてセファデックス(Sephadex)LH−20上でクロマトグラフィーにより精製した。生成物を含むフラクションを混合し、そして溶剤を減圧下で揮発させて、白色固体として、目的化合物を得た。
【0023】
実施例3:ドーパミン/mPEG−ドーパミンコポリマー
【化16】

ドーパミン塩酸塩(7.4mg、0.0194mmol)及びmPEG(5kDa)−ドーパミン(100mg、0.0194mmol)を水7mLに溶解した。1N水酸化ナトリウム溶液1mLを添加し、そして混合物を室温で17時間撹拌した。得られた溶液を2NHCl1mLを用いて酸性化し、濾過し、そして超純水に対して透析した。最終溶液を凍結乾燥して、ポリ(mPEG−ドーパミン/ドーパミン)100mgを得た。ドーパミンとPEG−ドーパミンとの比率は変更することができる。反応条件はアミン/アミドの親核攻撃による閉環へと導き、これは、 1H−NMRスペクトルにおける芳香族プロトンの損失により証明されている。
【0024】
実施例4:mPEG−ジ−ドーパミン
【化17】

N−ベンジルオキシカルボニルグルタメート(Z−Glu)(0.281g、1mmol)をCH2 Cl2 (5mL)に溶解し、そして0℃に冷却した。トリエチルアミン(1.53mL、11mmol)、ドーパミン(0.417g、2.2mmol)、ブタノール(HOBt)(0.297g、2.2mmol)及びN,N−ジメチルアミノプロピル−エチル−カルボジイミド(EDC)(0.412g、2.2mmol)を少量づつ添加した。反応混合物を室温に加温し、そして16時間撹拌した。溶剤を揮発させ、そしてクエン酸溶液(10%、3mL)及び酢酸エチルエステル(EtOAc)(20mL)を添
加した。フラスコを激しく振震し、そして層を分離した。有機層を乾燥し(MgSO4 )、濾過し、そして溶剤を揮発させた。残渣を1NHCl溶液(6mL)に溶解し、そして水層をEtOAc(各15mL)を用いて3回抽出した。混合した有機層を乾燥し(MgSO4 )、濾過し、そして溶剤を揮発させた。残渣をメタノール(5mL)に溶解し、Pd/C(スパチュラ1杯、10%Pd)を添加し、そして反応混合物を水素雰囲気下、室温で3時間撹拌した。反応混合物をセライト(Celite)上で濾過し、そして溶剤を揮発させ、そして高真空下で乾燥して、中間体アミン(48.1mg、0.1235mmol、92%)を得た。この中間体アミン(11.1mg、28.5μmol)をCH2 Cl2 (1mL)及びDMF(1mL)に溶解した。mPEG−ASA(50mg、約10μmol)を室温で添加し、そして反応混合物をアルゴン下で一晩撹拌した。ジエチルエーテル(20mL)を反応混合物に添加し、そして4℃で30分後に白色沈澱が形成した。この粉末を濾過により捕集し、乾燥し(高真空)、そしてセファデックス(Sephadex)により精製した(MeOH)。生成物を含むフラクションを捕集し、減圧下で溶剤を除去し、残渣を水に溶解し、そして溶液を凍結乾燥して、無色粉末として、目的化合物(35mg、約6.4μmol、64%)を得た。
【0025】
実施例5:mPEG−ミモシン
【化18】

ミモシン(10mg、0.05mmol)をホウ酸ナトリウム緩衝液5mL(50mM、pH8.4)に溶解した。mPEG−ASA(252mg、0.05mmol)を添加し、そして得られた混合物を室温で16時間撹拌した。HCl(2N)溶液0.5mLを添加した。化合物をクロロホルムに抽出し、そして混合した有機相をMgSO4 を用いて乾燥した。溶剤を5mLに減少させた後、ジエチルエーテルを添加することにより、中間生成物を沈澱させた。無色粉末として、mPEG−ミモシン220mgを得た。
ドーパミン(1.9mg、10μmol)をCH2 Cl2 (0.3mL)及びDMF(0.05mL)に溶解し、そして室温で10分間撹拌した。その後、mPEG−ASA(5.5mg、1.1μmol)を添加し、そして混合物を室温で3時間撹拌した。その後、エーテル(0.5mL)を添加し、そして反応混合物を室温で20分間撹拌した。懸濁液を濾過し、そして濾液を、メタノールを用いたセファデックス(Sephadex)LH−20上のクロマトグラフィーにより精製した。生成物を含むフラクションを混合し、そして溶剤を真空下で揮発させて、白色固体として、目的化合物を得た。
【0026】
実施例6:PAAM−g−mPEG−ミモシン
mPEG−ミモシン100mg(0.019mmol)及びポリアリルアミン(PAAM)塩酸塩3.6mg(0.038mmolモノマー)をヘペス緩衝液(10mmol、pH7.4)に溶解した。1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC、3.5mg、0.038mmol)を添加した。透明溶液を16時間撹拌した。3500のMWCOと共に溶液全体を透析チューブに移し、そして水に対して48時間透析した。得られた溶液を凍結乾燥して、白色粉末として、ポリアリルアミンがグラフトしたmPEG−ミモシン90mgを得た。ポリアリルアミンとmPEG−ミモシンとの比率は変更することができる。
【0027】
実施例7:カテコールから誘導された化合物の表面に対する吸着
実施例7A
処理溶液の製造
分子を、0.1〜1mg/mLの濃度にて、3−モルホリノ−プロパンスルホン酸(MOPS)10mM、K2 SO4 0.6M及びNaCl0.6M からなる緩衝溶液にpH=6にて、該溶液を穏やかに振震しながら溶解した。溶液を、0.22μmフィルター[マサチューセッツ、ベッドフォードのミリポア(MILLIPORE)社製のミレックス(MILLEX)−GV]を通過させた。
試料処理
表面変性試験のための基材を、超純水中で15分間、そしてその後、2−プロパノール中で15分間、超音波洗浄した。乾燥後、それらを3分間酸素−プラズマ洗浄した[米国、ニューヨーク、オッシニングのハリック(Harrick)社製のプラズマ洗浄器/滅菌器PDC−32Gを使用]。その後、それらをガラス容器に移し、その後これに、分子の水溶液を添加した。50℃で4時間処理後、試料を取り出し、水で濯ぎ、そして窒素流中で乾燥した。基材に対する安定な結合の存在を証明するために、試料を生理的緩衝液中に48時間浸漬し、取り出し、水で濯ぎ、そして乾燥した。
結果
a)種々の基材について行われた分子吸着
分子を下記の表面に塗布した:Al2 3 、Cr2 3 、TiO2 、ステンレススチール、ポリスチレン、PVC、Au、Ta2 5 、Nb2 5 、ZrO2 、Fe2 3 、SiO2 、ポリエチレン、ポリアミド、ポリプロピレン(酸化チタンに対する図1を参照)。
b)吸着層の厚さ
結果は、分子溶液に暴露後の、1ないし3nmに変化し得る厚さを有する堆積層を示している。HEPES2に48時間浸漬した後、中性であるか又は正電荷を有する分子を用いて変性された試料接着層が表面にまだ存在することが判り(図1参照)、また、残りの負のカルボキシレート基を持つ分子を用いて形成されたものは安定でないことが判った。特に、正電荷のみを持つ分子は、改良された安定性を示した。それらが更にカルボキシレート基を持つ場合でさえも、改良された安定性が見出された。
c)安定性試験
0.1mMHClの溶液に1時間浸漬した試料は、表面に対する接着性を残していることが示された。比較として、PLL−g−PEGのような静電的に吸着された分子は、酸処理後に除去されることが示された。
d)溶液保存期間の決定
紫外−可視分光法を使用することにより、製造から12時間後に、ポリマー溶液の安定性を決定した。結果は、L−ドーパ及びドーパミンから誘導された分子は重合及び分解を開始し、400nm以上に広い吸着を示している。電子吸引性基、例えばmPEG−アナキャット又はミモシンから誘導されたものを有する分子は、それらの紫外−可視スペクトルにおける変化を示さず、遥かに高い安定性を示している。同様の結果が、ゲル浸透クロマトグラフィーにより見出され、L−ドーパ及びドーパミンから誘導された分子における分子量の増加を示しており、これは、それらが重合していることを証明している。
【0028】
実施例7B:
処理溶液の製造
分子を、0.1〜1mgの濃度にて、MOPS10mM、K2 SO4 0.6Mからなる緩衝溶液にpH=6にて、該溶液を穏やかに振震しながら溶解した。溶液を、0.22μmフィルター[マサチューセッツ、ベッドフォードのミリポア(MILLIPORE)社製のミレックス(MILLEX)−GV]を通過させた。実施例7Aとの相違は、付加的にNaClを添加しなかったことである。
試料処理
試料を実施例7Aと同様に処理した。
結果
形成された層は、実施例7Aにより製造されたものよりも僅かに低密度であった。
【0029】
実施例7C:
処理溶液の製造
中性又は正荷電した分子を、0.1〜1mgの濃度にて、HEPES10mM及びNaCl150mMからなる緩衝溶液にpH=7.4にて、該溶液を穏やかに振震しながら溶解した。溶液を、0.22μmフィルター[マサチューセッツ、ベッドフォードのミリポア(MILLIPORE)社製のミレックス(MILLEX)−GV]を通過させた。
試料処理
表面変性試験のための基材を、超純水中で15分間、そしてその後、2−プロパノール中で15分間、超音波洗浄した。乾燥後、それらを3分間酸素−プラズマ洗浄した[米国、ニューヨーク、オッシニングのハリック(Harrick)社製のプラズマ洗浄器/滅菌器PDC−32Gを使用]。その後、それらをガラス容器に移し、その後これに、分子の水溶液を添加した。室温で1時間処理後、物理的に吸着した吸着層が形成された。表面に共有結合させるために、試料を取り、そして50℃に1時間加熱した。代替可能な手順として、試料を他の方法、例えば紫外線又は白色光又は他のエネルギー伝達方法により、硬化させることができる。最後に、試料を窒素流中で乾燥した。基材に対する安定な結合の存在を証明するために、試料を生理的緩衝液中に48時間浸漬し、取り出し、水で濯ぎ、そして乾燥した。
【0030】
実施例7D:
処理溶液の製造
中性又は正荷電した分子を、0.1〜1mgの濃度にて、有機溶剤溶液(例えば、クロロホルム)に、該溶液を穏やかに振震しながら溶解した。
試料処理
表面変性試験のための基材を、超純水中で15分間、そしてその後、2−プロパノール中で15分間、超音波洗浄した。乾燥後、それらを3分間酸素−プラズマ洗浄した[米国、ニューヨーク、オッシニングのハリック(Harrick)社製のプラズマ洗浄器/滅菌器PDC−32Gを使用]。その後、それらをスピンコーティング装置に固定した。
その後、混合物を、3500rpmの速度で回転している試料にスピン−キャストした。均質な無色フィルムが普通に得られた。溶剤の揮発後、表面に共有結合させるために、試料を50℃ないし100℃にて1時間硬化させた。代替可能な手順として、試料を他の方法、例えば紫外線又は白色光又は他のエネルギー伝達方法により、硬化させることができる。その後、試料を水で濯ぎ、そして窒素流中で乾燥した。基材に対する安定な結合の存在を証明するために、試料を生理的緩衝液中に48時間浸漬し、取り出し、水で濯ぎ、そして乾燥した。
【0031】
本発明の好ましい実施態様をここに示し、そして記載したけれども、本発明はそれらに限定されないのみならず、本請求項の範囲内において、他に種々に実施され得、そして実用され得ることが明確に理解される。
【0032】
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35.バイダーベック,エイチ.(Beiderbeck,H.);タラズ,ケイ.(Taraz,K.);ブドジキーウィクズ,エイチ.(Budzikiewicz,H.);ワルスビー,エイ.ダブリュー(Walsby,A.W.),「アナケリン、シアノバクテリウム アナバエナ シリンドリカ CCAP 1403/2Aの親鉄剤(Anachelin,the siderophore of the cyanobacterium Anabaena)」,Zeitschrift fur Naturforschung.C,Journal of biosciences 2000,55,(9−10),681−687。
36.ガデマン,ケイ.(Gademann,K.);ブドジキーウィクズ,エイチ.(Budzikiewicz,H.),「ペプチドアルカロイドアナケリン:水溶液におけるb−ターン形成についてのNMR分光法による証拠(The peptide alkaloid Anachelin:NMR spectroscopic evidence for b−Turn formation in aqueous solution)」,Chimia 2004,58,(4),212−214。
37.ガデマン,ケイ.(Gademann,K.),「アナケリン発色団のチロシナーゼ触媒化形成についての機構的研究(Mechanistic Studies on
the Tyrosinase−Catalyzed Formation of the Anachelin Chromophore)」 ,ChemBioChem 2005,6,913−919。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、様々なカテコール等価分子(mPEG−L−DOPA、mPEG−ミモシン、mPEG−ドーパミン、mPEG−アナキャット)を用いて改質した表面に対するエリプソメトリー測定を示す図である。
【図2A】図2Aは、TiO2 に対する吸着4時間後のO1sのXPSシグナルを示す図である。
【図2B】図2Bは、TiO2 に対する吸着4時間後のmPEG−L−DOPA、mPEG−ミモシン、mPEG−ドーパミン、mPEG−アナキャットに対するC1sシグナルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着層を形成し得、そして以下の一般式(A)ないし(C):
【化1】

[式中、Aは少なくとも一つの先頭基Aを表わし、Bは所望により存在する結合基Bを表わし、Cはポリマー基Cを表わし、Dは所望により存在する末端基Dを表わし、そしてRは所望により存在する架橋基Rを表わし、
そして前記先頭基Aが次式:
【化2】

{式中、
Xは互いに独立して、酸性基、例えばOH基、SH基、ホスフェート基、特に環式ホスフェート基、ホスホネート基、及びN+ 2 H基(式中、Rは好ましくは互いに独立して、水素原子又は炭素原子数1ないし6のアルキル基、特に炭素原子数1ないし4のアルキル基から選択されている。)を表わし、そして好ましくは、両XはOH基を表わし、
Yは都合の良い結合基から誘導された基、特にNL3 基又はN+ (L3 2 基を表わし、
1 、Z3 及びZ4 はC又はN+ を表わし、
2 、Z5 及びZ6 はC−L1 基又はN+ −L基を表わし、ここで、
1 は水素原子又は電子吸引性基を表わし、
それにより、L1 =NR1 2 3 + の場合、R1 、R2 及びR3 はそれぞれ、炭素原子数1ないし6のアルキル基又は炭素原子数5若しくは炭素原子数6のアリール基、特にメチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基から選択され得、
Lは炭素原子数1ないし4のアルキル基を表わし、
2 及びL3 は独立して、水素原子又は炭素原子数1ないし6のアルキル基、特に炭素原子数1ないし4のアルキル基から選択されているか、或いは、L2 は、Z6 のL1 又はLと一緒になって、ヘテロ環、特に正荷電したヘテロ環を形成し得、
nは0又は1又は2又は3を表わし、
mは0又は1を表わすが、
但し、Z1 ないしZ6 の最大一つはN+ を表わし、そしてZ1 がN+ を表わす場合、L
2 は更にエステル基、アミド基又はヘテロ環式基を表わし得る。}で表わされる化合物基を表わし、
前記所望による結合基Bが以下の一般式I、II、III又はIV:
【化3】

{式中、
m及びnは互いに独立して、0、1、2、3、4又は5を表わし、
Aは上記先頭基Aを表わし、そして
Cは前記ポリマー基Cを表わす。}の一つを表わし、
前記ポリマー基Cが一般式I又はII:
【化4】

{式中、
Xは、前記A又は前記所望による結合基Bの何れかに化学的に結合することができ、
Yはポリマー基、又はアルキル鎖、特にnが少なくとも3である(CR2 n 鎖を表わし、そして該Rは好ましくは互いに独立して、水素原子又はフッ素原子を表わし、
Zは、前記末端基Dへのカップリングのために適する官能基を表わす。}の何れかを表わし、そして
前記所望による末端基Dは、不活性基か又は反応性基の何れかを表わし、そして
前記所望による架橋基Rは、架橋可能な何れかの分子基を表わす。]の一つを有する化合物。
【請求項2】
前記先頭基Aにおいて、Z6 に結合したL1 がNR1 2 3 + 基又はNO2 基又はフッ素原子又はCx y 基、特にCF3 基又はC2 5 基を表わし、それにより、L1 =NR1 2 3 + の場合、R1 、R2 及びR3 はそれぞれ、互いに独立して、炭素原子数1ないし6のアルキル基又は炭素原子数5若しくは炭素原子数6のアリール基から、特に炭素原子数1ないし4のアルキル基から選択され得る、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
前記R1 、R2 及びR3 がそれぞれ、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基から選択され得るか、或いは、R1 又はR2 又はR3 の一つとL2 とが一緒になって、5−員又は6−員ヘテロ環を形成する、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
前記先頭基Aが次式I又はII又はIII又はIV:
【化5】

[式中、R1 、R2 、L2 、L3 及びnは請求項1ないし3の何れか一項において定義されたものと同じ意味を表わし、該L2 は更にエステル又はアミドを表わし得るが、但し、CO2 H基を表わさない。]の何れかを表わし、
そして前記式中、脱プロトン化された基は、前記式II、III及びIVで表わされる基の改質された脱プロトン化特性を示す、請求項1ないし3の何れか一項記載の化合物。
【請求項5】
前記ポリマー基Cにおいて、
Xがカルボキシレート基、アミン基、チオール基、ヒドロキシ基、スルホン基、スルフェート基、ホスホネート基及び/又はホスフェート基を表わし、及び/又は
Yがポリエチレングリコール(PEG)基、ポリ−リシン(PL)基、ポリメチルオキサゾリン(PMOXA)基、ポリアクリレート基、ポリ(N−ビニルピロリドン)基、ポリ(アクリルアミド)基、ポリ(ビニルアルコール)基、ペプトイド基、ペプチド基、ポリエステル基、サッカリド基、ポリエチレン基又は(CH2 n 基、或いは、前記ポリマー基の一つ又はそれより多くの混合物からなる群から選択されたポリマー基を表わし、及び/又は
Zが酸素原子、COOH基、SO2 H基、SO3 H基、NH2 基、SH基及びそれらの組み合わせの基からなる群から選択されている、請求項1ないし4の何れか一項記載の化合物。
【請求項6】
前記末端基Dがアルキル基、アリール基、アリル基、アルケニル基、アルキニル基、又はポリアルキルシリル基、又は蛍光マーカー基、生物学的活性化合物基例えばプロテイン基、ペプチド配列基及びサッカリド基、又は何らかの他の生物学的活性化合物基、又はそれらの混合物の基からなる群から選択された何れかの不活性基、或いは、ビニルスルホン基、マレイミド基、アクリレート基、アジド基、アルキン基又はそれらの混合物の基からなる群から選択された反応性基を表わす、請求項1ないし5の何れか一項記載の化合物。
【請求項7】
前記架橋基Rがカテコール基、スチレン基、アクリレート基、チオール基、チオフェン基、ピロール基及びそれらの組み合わせの基からなる群から選択されている、請求項1ないし6の何れか一項記載の化合物。
【請求項8】
前記ポリマー基C当たり一つよりも多くの先頭基Aを含む、請求項1ないし7の何れか一項記載の化合物。
【請求項9】
前記末端基Dを含む、請求項1ないし8の何れか一項記載の化合物。
【請求項10】
前記結合基Bを含む、請求項1ないし9の何れか一項記載の化合物。
【請求項11】
前記架橋基Rを含む、請求項1ないし10の何れか一項記載の化合物。
【請求項12】
先頭基A、ポリマー基C及び末端基Dを含む、請求項1ないし11の何れか一項記載の化合物。
【請求項13】
先頭基A一つ、結合基B、ポリマー基C及び末端基Dを含む、請求項1ないし12の何れか一項記載の化合物。
【請求項14】
先頭基A二つ又は三つ、結合基B、ポリマー基C及び末端基Dを含む、請求項1ないし13の何れか一項記載の化合物。
【請求項15】
次式:
【化6】

(式中、R1 及びR2 は請求項1ないし14の何れか一項において定義されたものと同じ意味を表わす。)を有する、請求項1ないし14の何れか一項記載の化合物。
【請求項16】
次式:
【化7】

(式中、R1 及びR2 は請求項1ないし14の何れか一項において定義されたものと同じ意味を表わす。)を有する、請求項1ないし14の何れか一項記載の化合物。
【請求項17】
次式:
【化8】

を有する、請求項1ないし14の何れか一項記載の化合物。
【請求項18】
前記Z1 がN+ を表わし、そしてL2 が炭素原子数1ないし4のアルキル基、アミド基及びエステル基からなる群から選択されている、請求項1ないし14の何れか一項記載の化合物。
【請求項19】
次式:
【化9】

を有する、請求項1ないし14の何れか一項記載の化合物。
【請求項20】
化合物、特に請求項1ないし19の何れか一項記載の化合物であって、最大9.9、一般的に最大9.5、好ましくは最大9、とりわけ最大8.5、最も好ましくは最大8のpKalを有し、吸着層を形成し得、そして以下の一般式(A)ないし(C):
【化10】

[式中、Aは少なくとも一つの先頭基Aを表わし、Bは所望により存在する結合基Bを表わし、Cはポリマー基Cを表わし、Dは所望により存在する末端基Dを表わし、そしてRは所望により存在する架橋基Rを表わし、
そして前記先頭基Aが次式:
【化11】

{式中、
Xは酸性基、好ましくはXは互いに独立して、OH基、SH基、ホスフェート基、特に環式ホスフェート基、ホスホネート基、N+ 2 H基(式中、両Rは互いに独立して、水素原子又は炭素原子数1ないし6のアルキル基、特に炭素原子数1ないし4のアルキル基から選択されている。)を表わし、そして最も好ましくは、両XはOH基を表わし、
Yは前記ポリマー基C及び所望により存在する前記結合基B、所望により存在する前記末端基D及び/又は所望により存在する前記架橋基Rを含む基を表わし、
1 、Z3 及びZ4 はC又はN+ を表わし、
2 、Z5 及びZ6 はC−L1 基又はN+ −L基を表わし、それにより、
1 は水素原子又は電子吸引性基、特に請求項1において定義された電子吸引性基を表わし、そして
Lは中性基を表わす。}で表わされる化合物を表わす。]の一つを有する化合物。
【請求項21】
基材表面に吸着層を形成するための、請求項1ないし20の何れか一項記載の化合物の使用。
【請求項22】
基材表面の性質を変化させるための、請求項1ないし20の何れか一項記載の化合物の使用。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【公表番号】特表2009−510183(P2009−510183A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527283(P2008−527283)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【国際出願番号】PCT/CH2005/000494
【国際公開番号】WO2007/022645
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(506110634)
【Fターム(参考)】