説明

表面改質無機充填材および樹脂組成物

【課題】 ポリカーボネート樹脂等のポリエステル系樹脂に対して、その分子量の低下を効率よく抑制しながら配合することができる表面改質無機充填材を提供する。
【解決手段】 本発明の表面改質無機充填材は、水酸基含有無機充填材またはアルカリ性無機充填材を下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサンで表面処理してなる。
【化3】


(式(1)中、Rは、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表わし、各々同じであってもよいし、異なっていてもよい。ただし、少なくとも1つのRは、水素原子である。nは、50〜300の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂等のポリエステル系樹脂に対して好適に配合される表面改質無機充填材と、これを配合してなるポリエステル系樹脂組成物とに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ポリカーボネート樹脂は、機械的強度に優れ、高い透明性を有するといった特性を備えるため、従来から、自動車外装部品など様々な用途に汎用されてきた。そして、その際には、例えば剛性を向上させること等を目的として、ポリカーボネート樹脂に無機充填材を配合させることがあった。
【0003】
ポリカーボネート樹脂に用いる無機充填材としては、古くからガラス繊維や炭素繊維等が汎用されているが、自動車外装部品のように外観をも重視される用途においては、一般に、より外観性に優れるタルク、マイカ、チタン酸カリウムウィスカー等が好ましく用いられる。しかしながら、このような水酸基含有無機充填材もしくはアルカリ性無機充填材は、ポリカーボネート樹脂等のポリエステル系樹脂に配合した際に、その分子量を低下させるという欠点があり、例えば、ポリカーボネート樹脂が本来有する機械的強度を損なうこととなったり、熱安定性が低下して成形性が悪化したりするという問題を招くことがあった。
【0004】
水酸基含有無機充填材もしくはアルカリ性無機充填材の添加に起因してポリエステル系樹脂の分子量が低下するという現象を抑制する手段としては、従来、アミノシランやビニールシランのようなシランカップリング剤で無機充填材の表面を被覆する方法が知られている。また、近年では、無機充填材による分子量低下が抑制されたポリカーボネート樹脂組成物として、無機充填材とともに、二価炭化水素基を介してケイ素原子に結合のオルガノキシシリル基を含有する特定構造のオルガノポリシロキサンを添加してなるポリカーボネート樹脂組成物も提案されている(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開平6−256632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のシランカップリング剤で無機充填材を被覆する方法や特許文献1記載のポリカーボネート樹脂組成物によれば、ある程度は分子量の低下を抑制できるものの、その抑制効果は用途等によっては未だ充分とは言えない場合があった。しかも、特許文献1に記載された分子量低下を抑制するための手段は、対象とする樹脂がポリカーボネート樹脂に限定されるものであり、汎用性に欠けるという欠点もあった。
【0007】
そこで、本発明は、ポリカーボネート樹脂等のポリエステル系樹脂に対して、その分子量の低下を効率よく抑制しながら配合することができる表面改質無機充填材と、これを配合してなるポリエステル系樹脂組成物とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、水酸基含有無機充填材もしくはアルカリ性無機充填材の表面に存在する水酸基がポリエステル系樹脂を分解させ、分子量低下を招く原因となることに着目し、無機充填材表面の水酸基を効率よく封止しうる新たな表面処理剤を見出すべく、検討を重ねた。そして、例えば特許文献1に開示されたオルガノポリシロキサンや従来のシランカップリング剤では、ケイ素原子に結合する置換基が大きすぎるため、これが立体障害となって無機充填材の表面の水酸基の封止が妨げられるのに対して、ケイ素原子に少なくとも1つの水素原子が結合した特定構造のオルガノポリシロキサンであれば、無機充填材の表面に存在する水酸基を密に封止することできることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1)水酸基含有無機充填材またはアルカリ性無機充填材を下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサンで表面処理してなる、ことを特徴とする表面改質無機充填材。
【化2】

(式(1)中、Rは、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表わし、各々同じであってもよいし、異なっていてもよい。ただし、少なくとも1つのRは、水素原子である。nは、50〜300の整数である。)
(2)前記オルガノポリシロキサンは、メチル水素ポリシロキサン、または、メチル水素シロキサンを必須の構成単位とする共重合体である、前記(1)記載の表面改質無機充填材。
(3)前記水酸基含有無機充填材または前記アルカリ性無機充填材は、タルク、カオリン、マイカ、ワラストナイト、炭酸カルシウムおよびチタン酸カリウムウィスカーからなる群より選ばれる、前記(1)または(2)記載の表面改質無機充填材。
(4)前記水酸基含有無機充填材または前記アルカリ性無機充填材100重量部に対して0.1〜30重量部のオルガノポリシロキサンで表面処理された、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の表面改質無機充填材。
(5)ポリエステル系樹脂に添加される、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の表面改質無機充填材。
(6)ポリエステル系樹脂と、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の表面改質無機充填材とを含有する、ことを特徴とする樹脂組成物。
(7)前記ポリエステル系樹脂はポリカーボネート樹脂である、前記(6)記載の樹脂組成物。
(8)前記表面改質無機充填材の含有量は、組成物総量に対して0.1〜80重量%である、前記(6)または(7)記載の樹脂組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリカーボネート樹脂等のあらゆるポリエステル系樹脂に対して、その分子量の低下を効率よく抑制しながら、無機充填材を配合することができる。これにより、例えばポリカーボネート樹脂が有する機械的強度など、樹脂が本来有する特性を保持させつつ、充填材によって剛性等が改善され、しかも優れた外観性を備えたポリエステル系樹脂組成物を良好な成形性で容易に提供することができる、という効果が得られる。このようなポリエステル系樹脂組成物は、各種の成形品、特に自動車内外装部品等の素材として好適に利用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
本発明の表面改質無機充填材は、水酸基含有無機充填材またはアルカリ性無機充填材を前記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサンで表面処理してなる。
本発明においては、水酸基含有無機充填材またはアルカリ性無機充填材を表面処理に供する基材とする。つまり、本発明は、無機充填材の表面に存在する水酸基を封止することにより、該水酸基が原因となって起こるポリエステル系樹脂の分解を抑制しようとするものであるため、基材とする無機充填材としては、水酸基を含有するか、もしくはアルカリ性であるものが選択されるのである。
【0012】
前記水酸基含有無機充填材または前記アルカリ性無機充填材としては、例えば、タルク、カオリン、マイカ、ワラストナイト、炭酸カルシウムおよびチタン酸カリウムウィスカーからなる群より選ばれるものが好ましく挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これら無機充填材の形状等についても、特に制限されるものではなく、例えば、板状、球状、繊維状など任意の形状であってよい。なお、基材とする無機充填材は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0013】
本発明においては、前記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン(以下、単に「オルガノポリシロキサン」と称することもある)を表面処理剤とする。
前記式(1)中、Rは、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表わし、各々同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、式(1)中、両末端のSi原子を除くn個のSi原子に各々結合するRは、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0014】
本発明においては、前記式(1)中、少なくとも1つのRが水素原子であることが重要である。これにより、基材(無機充填材)の表面に存在する水酸基を当該オルガノポリシロキサンで密に封止することができ、ポリエステル系樹脂に添加した際に樹脂の分子量低下を効率よく抑制しうる表面改質無機充填材となる。より効率よく水酸基を封止するためには、複数の水素原子が分子上にバランスよく配されていることが望ましく、前記式(1)中、両末端のSi原子を除くn個のSi原子、好ましくは全てのSi原子が、各々1つ以上の水素原子と結合していること(換言すれば、1つのSi原子に結合する2個または3個のRのうち少なくとも1個のRが水素原子であること)が好ましい。
前記式(1)中、Rで表される炭素数1〜10のアルキル基としては、立体的に嵩高くならないものが好ましい。したがって、Rで表されるアルキル基の炭素数はなるべく少ない方が好ましく、具体的には6以下、より好ましくは3以下であるのがよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が好ましく挙げられる。
前記式(1)中、nは10〜300の整数であり、より好ましくは20〜100の整数であるのがよい。
【0015】
前記オルガノポリシロキサンの具体例としては、例えば、メチル水素ポリシロキサン、または、メチル水素シロキサンを必須の構成単位とする共重合体が好ましく挙げられる。メチル水素シロキサンを必須の構成単位とする共重合体としては、例えば、ジメチルシロキサンとメチル水素シロキサンとの共重合体が好ましく挙げられる。なお、オルガノポリシロキサンは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0016】
本発明において、基材(前記水酸基含有無機充填材または前記アルカリ性無機充填材)を表面処理剤(前記オルガノポリシロキサン)で表面処理する際には、基材(前記水酸基含有無機充填材または前記アルカリ性無機充填材)100重量部に対して0.1〜30重量部の表面処理剤(前記オルガノポリシロキサン)を用いて表面処理することが好ましい。より好ましくは、基材100重量部に対して1〜10重量部の表面処理剤を用いるのがよい。表面処理剤(前記オルガノポリシロキサン)の使用量が前記範囲より少ないと、充分な分子量低下抑制効果が得られなくなるおそれがあり、一方、前記範囲よりも多すぎると、過剰な表面処理剤が残存し、これが樹脂を分解させる要因となるおそれがある。
【0017】
本発明において、基材(前記水酸基含有無機充填材または前記アルカリ性無機充填材)を表面処理剤(前記オルガノポリシロキサン)で表面処理する際の表面処理方法は、両者が効率よく混合される方法であれば特に制限されるものではなく、用いる材料の種類等に応じて適宜設定すればよい。例えば、基材と表面処理剤とを混合し、攪拌機(例えば、ヘンシルミキサー、スーパーミキサー、デゾルバー、リボンミキサー、Vブレンダー等)を用いて室温下で攪拌する方法が好ましく採用される。このとき、攪拌条件等は特に限定されないが、例えば、攪拌速度は、通常5〜3000rpm、好ましくは10〜1500rpmとするのがよく、攪拌時間は、通常1〜60分間、好ましくは2〜30分間とするのがよい。
【0018】
また、前記表面処理においては、必要に応じて、表面処理剤をあらかじめ適当な溶剤に溶解させてから、基材と混合することもできる。このとき、用いる溶剤は、基材や表面処理剤の種類等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、イソプロピルアルコール、トルエン、キシレン、ケロシン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられる。なお、溶剤の使用量は、用いる表面処理剤の種類や量などに応じて、適宜設定すればよく、特に限定されない。
【0019】
また、前記表面処理においては、基材と表面処理剤とを混合、攪拌した後に、必要に応じて、加熱することもできる。このときの加熱条件は、表面処理剤の種類や溶剤の有無等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、例えば、加熱温度は、通常50〜600℃、好ましくは100〜500℃とするのがよく、加熱時間は、通常5秒〜10時間、好ましくは30秒〜6時間とするのがよい。
【0020】
以上のような本発明の表面改質無機充填材は、ポリエステル系樹脂、特にポリカーボネート樹脂に添加されるのが好ましい。本発明の表面改質無機充填材は、ポリエステル系樹脂に配合した際に、その分子量の低下を抑制することを目指したものであり、ポリエステル系樹脂に添加されたときに最もその効果を発揮するからである。勿論、本発明の表面改質無機充填材は、無機充填材としてポリエステル系樹脂以外の樹脂に添加されてもよい。
【0021】
本発明の樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂と前記本発明の表面改質無機充填材とを含有する。
前記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、いわゆる液晶ポリエステル(例えば、エチレンテレフタレートとパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体、フェノールおよびフタル酸とパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体、2,6−ヒドロキシナフトエ酸とパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体など)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル等が挙げられる。
これらの中でも特に、高い機械的強度を発現しうる点でポリカーボネート樹脂が好ましい。なお、ポリエステル系樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
前記ポリエステル系樹脂の分子量は、特に制限されないが、例えばポリカーボネート樹脂であれば、機械的強度および成形性の点から、粘度平均分子量が10000〜100000であることが好ましく、15000〜40000であることがより好ましい。
【0022】
本発明の樹脂組成物において、前記表面改質無機充填材の含有量は、組成物総量に対して0.1〜80重量%であることが好ましく、より好ましくは、0.5〜50重量%であるのがよい。表面改質無機充填材が前記範囲より少ないと、機械物性の発現が難しくなるおそれがあり、一方、前記範囲よりも多すぎると、加工性が困難となるおそれがある。
【0023】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、前記ポリエステル系樹脂と前記本発明の表面改質無機充填材のほかに、各種の添加剤、ポリエステル系樹脂以外の合成樹脂、エラストマー等のその他の成分を配合することができる。例えば、添加剤としては、ヒンダードフェノール系、亜リン酸エステル系、リン酸エステル系等の酸化防止剤;ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系などの光安定剤;脂肪族カルボン酸エステルやパラフィン、シリコーンオイル、ポリエチレンワックス等の内部滑剤;常用の難燃剤;難燃助剤;帯電防止剤;着色剤等が挙げられる。ポリエステル系樹脂以外の合成樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド等の公知の樹脂を挙げることができる。エラストマーとしては、例えば、イソブチレン−イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリル系エラストマー、コアシエル型のエラストマーであるMBS、MAS等が挙げられる。これらその他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0024】
本発明の樹脂組成物は、例えば、前記ポリエステル系樹脂と前記本発明の表面改質無機充填材のほかに、必要に応じて、上述したその他の成分を配合し、混練することによって得ることができる。
各成分の配合および混練は、通常の方法で行えばよく、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等を用いて行うことができる。ただし、これらの装置のなかでも、樹脂の分子量の低下を抑制することを考慮すると、例えばスクリュー押出機であれば、二軸よりも単軸の方が好ましい。
各成分を混練するに際しては、必要に応じて、加熱することができる。このときの加熱温度は、樹脂の種類等に応じて適宜設定すればよいが、通常250〜400℃、好ましくは280〜350℃の範囲とされる。
【0025】
本発明の樹脂組成物は、上記のようにして混練された混練物であってもよいし、用途に応じて、さらに、射出成形、中空成形、押出成形、圧縮成形、カレンダー成形、回転成形等の公知の成形方法に供されて得られた各種成形品であってもよい。
【実施例】
【0026】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例におけるペレット状の樹脂組成物の分子量Mv(粘度平均分子量)の測定は、下記の方法で行った。
【0027】
<粘度平均分子量測定方法>
試料を塩化メチレンに溶解し、不溶分をフィルターで取り除いた後、濾液の溶剤を蒸発させてフィルムを作製した。得られたフィルムを再度塩化メチレンに溶解させた溶液(濃度0.4w/v%)について、ウベローデ型粘度計を用いて20℃における粘度を測定し、これより、極限粘度〔n〕を求めた後、次式(1)に基づき粘度平均分子量(Mv)を算出した。
〔n〕=1.23×10-5×Mv×0.83 (1)
【0028】
(実施例1)
基材とするタルク(林化成(株)製「MW#5000S」)100重量部に、表面処理剤としてメチル水素ポリシロキサン(信越化学工業(株)製「KF−99」)4重量部を加え、スーパーミキサーを用いて、室温下、400rpmで5分間、続いて800rpmで3分間攪拌することにより、表面処理を施し、表面改質無機充填材(1)を得た。
次に、得られた表面改質無機充填材(1)20重量部と、ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製「パンライトL1225WP」、粘度平均分子量:22200)80重量部とを、単軸スクリュー押出機(シンコーマシナリー(株)製40mm単軸押出機)を用いて 260℃で混練して、ペレット状の樹脂組成物(1)を得た。
得られた樹脂組成物(1)の分子量Mv(粘度平均分子量)および分子量低下率(原料として用いたポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:22200)に対する低下率)を表1に示す。
【0029】
(実施例2)
実施例1と同様のタルク100重量部に、実施例1と同様のメチル水素ポリシロキサン4重量部を加え、実施例1と同様に攪拌した後、200℃で5分間加熱することにより、表面処理を施し、表面改質無機充填材(2)を得た。
次に、表面改質無機充填材(1)に代えて表面改質無機充填材(2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ペレット状の樹脂組成物(2)を得た。
得られた樹脂組成物(2)の分子量Mvおよび分子量低下率を表1に示す。
【0030】
(実施例3)
実施例1と同様のタルク100重量部に、実施例1と同様のメチル水素ポリシロキサン4重量部を加え、実施例1と同様に攪拌した後、300℃で5分間加熱することにより、表面処理を施し、表面改質無機充填材(3)を得た。
次に、表面改質無機充填材(1)に代えて表面改質無機充填材(3)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ペレット状の樹脂組成物(3)を得た。
得られた樹脂組成物(3)の分子量Mvおよび分子量低下率を表1に示す。
【0031】
(実施例4)
実施例1と同様のタルク100重量部に、実施例1と同様のメチル水素ポリシロキサン4重量部を加え、実施例1と同様に攪拌した後、135℃で6時間加熱することにより、表面処理を施し、表面改質無機充填材(4)を得た。
次に、表面改質無機充填材(1)に代えて表面改質無機充填材(4)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ペレット状の樹脂組成物(4)を得た。
得られた樹脂組成物(4)の分子量Mvおよび分子量低下率を表1に示す。
【0032】
(実施例5)
実施例1と同様のタルク100重量部に、実施例1と同様のメチル水素ポリシロキサン4重量部と溶剤(イソプロピルアルコール)2重量部との混合物を加え、実施例1と同様に攪拌した後、135℃で6時間加熱することにより、表面処理を施し、表面改質無機充填材(5)を得た。
次に、表面改質無機充填材(1)に代えて表面改質無機充填材(5)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ペレット状の樹脂組成物(5)を得た。
得られた樹脂組成物(5)の分子量Mvおよび分子量低下率を表1に示す。
【0033】
(実施例6)
実施例1と同様のタルク100重量部に、実施例1と同様のメチル水素ポリシロキサン8重量部と実施例1と同様の溶剤2重量部との混合物を加え、実施例1と同様に攪拌した後、135℃で6時間加熱することにより、表面処理を施し、表面改質無機充填材(6)を得た。
次に、表面改質無機充填材(1)に代えて表面改質無機充填材(6)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ペレット状の樹脂組成物(6)を得た。
得られた樹脂組成物(6)の分子量Mvおよび分子量低下率を表1に示す。
【0034】
(実施例7)
実施例1と同様のタルク100重量部に、ジメチルシロキサンとメチル水素シロキサンとの共重合体(信越化学工業(株)製「KF−9901」)4重量部と実施例1と同様の溶剤2重量部との混合物を加え、実施例1と同様に攪拌した後、135℃で6時間加熱することにより、表面処理を施し、表面改質無機充填材(7)を得た。
次に、表面改質無機充填材(1)に代えて表面改質無機充填材(7)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ペレット状の樹脂組成物(7)を得た。
得られた樹脂組成物(7)の分子量Mvおよび分子量低下率を表1に示す。
【0035】
(比較例1)
表面改質無機充填材(1)に代えて、実施例1と同様のタルクを表面処理を施さないまま用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ペレット状の樹脂組成物(C1)を得た。
得られた樹脂組成物(C1)の分子量Mvおよび分子量低下率を表1に示す。
【0036】
(比較例2)
実施例1と同様のタルク100重量部に、アミノシラン(チッソ(株)製「S−330」)1重量部と実施例1と同様の溶剤2重量部との混合物を加え、実施例1と同様に攪拌することにより、表面処理を施し、表面改質無機充填材(C2)を得た。
次に、表面改質無機充填材(1)に代えて表面改質無機充填材(C2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ペレット状の樹脂組成物(C2)を得た。
得られた樹脂組成物(C2)の分子量Mvおよび分子量低下率を表1に示す。
【0037】
(比較例3)
実施例1と同様のタルク100重量部に、ビニールシラン(チッソ(株)製「S−220」)3重量部を加え、実施例1と同様に攪拌した後、70〜80℃で30分間加熱することにより、表面処理を施し、表面改質無機充填材(C3)を得た。
次に、表面改質無機充填材(1)に代えて表面改質無機充填材(C3)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ペレット状の樹脂組成物(C3)を得た。
得られた樹脂組成物(C3)の分子量Mvおよび分子量低下率を表1に示す。
【0038】
(実施例8)
基材とするカオリン(BASF CATALYST LLC製「サテントンW」)100重量部に、実施例1と同様のメチル水素ポリシロキサン2重量部と実施例1と同様の溶剤2重量部との混合物を加え、実施例1と同様に攪拌することにより、表面処理を施し、表面改質無機充填材(8)を得た。
次に、表面改質無機充填材(1)に代えて表面改質無機充填材(8)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ペレット状の樹脂組成物(8)を得た。
得られた樹脂組成物(8)の分子量Mvおよび分子量低下率を表1に示す。
【0039】
(比較例4)
表面改質無機充填材(1)に代えて、実施例8と同様のカオリンを表面処理を施さないまま用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ペレット状の樹脂組成物(C4)を得た。
得られた樹脂組成物(C4)の分子量Mvおよび分子量低下率を表1に示す。
【0040】
(実施例11)
実施例1と同様の表面改質無機充填材(1)20重量部と、実施例1と同様のポリカーボネート樹脂80重量部とを、二軸スクリュー押出機((株)日本製鋼所製「TEX30α」)を用いて 260℃で混練して、ペレット状の樹脂組成物(11)を得た。
得られた樹脂組成物(11)の分子量Mvおよび分子量低下率を表1に示す。
【0041】
(実施例12)
実施例1と同様のタルク100重量部に、実施例1と同様のメチル水素ポリシロキサン5重量部を加え、実施例1と同様に攪拌することにより、表面処理を施し、表面改質無機充填材(12)を得た。
次に、表面改質無機充填材(1)に代えて表面改質無機充填材(12)を用いたこと以外は実施例11と同様にして、ペレット状の樹脂組成物(12)を得た。
得られた樹脂組成物(12)の分子量Mvおよび分子量低下率を表1に示す。
【0042】
(実施例13)
実施例1と同様のタルク100重量部に、実施例1と同様のメチル水素ポリシロキサン6重量部を加え、実施例1と同様に攪拌することにより、表面処理を施し、表面改質無機充填材(13)を得た。
次に、表面改質無機充填材(1)に代えて表面改質無機充填材(13)を用いたこと以外は実施例11と同様にして、ペレット状の樹脂組成物(13)を得た。
得られた樹脂組成物(13)の分子量Mvおよび分子量低下率を表1に示す。
【0043】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有無機充填材またはアルカリ性無機充填材を下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサンで表面処理してなる、ことを特徴とする表面改質無機充填材。
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表わし、各々同じであってもよいし、異なっていてもよい。ただし、少なくとも1つのRは、水素原子である。nは、10〜300の整数である。)
【請求項2】
前記オルガノポリシロキサンは、メチル水素ポリシロキサン、または、メチル水素シロキサンを必須の構成単位とする共重合体である、請求項1記載の表面改質無機充填材。
【請求項3】
前記水酸基含有無機充填材または前記アルカリ性無機充填材は、タルク、カオリン、マイカ、ワラストナイト、炭酸カルシウムおよびチタン酸カリウムウィスカーからなる群より選ばれる、請求項1または2記載の表面改質無機充填材。
【請求項4】
前記水酸基含有無機充填材または前記アルカリ性無機充填材100重量部に対して0.1〜30重量部のオルガノポリシロキサンで表面処理された、請求項1〜3のいずれかに記載の表面改質無機充填材。
【請求項5】
ポリエステル系樹脂に添加される、請求項1〜4のいずれかに記載の表面改質無機充填材。
【請求項6】
ポリエステル系樹脂と、請求項1〜5のいずれかに記載の表面改質無機充填材とを含有する、ことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリエステル系樹脂はポリカーボネート樹脂である、請求項6記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記表面改質無機充填材の含有量は、組成物総量に対して0.1〜80重量%である、請求項6または7記載の樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−191192(P2009−191192A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34319(P2008−34319)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(504105737)林化成株式会社 (4)
【Fターム(参考)】