説明

表面検査装置における検査ヘッドの支持構造

【課題】検査ヘッドの回転の振れに対する精度を高め、検査ヘッドを着脱等する際の芯出し作業の負担を軽減し、又は解消できる検査ヘッドの支持構造を提供する。
【解決手段】検査ヘッド16のベアリングハウス16bとヘッド支持筒8との間に一対のアンギュラコンタクト軸受20A、20Bを設け、軸受20A、20Bの外輪20o間にはスペーサ25及びばね受けリング26を設ける。スペーサ25及びばね受けリング26をコイルばね27によって外輪20o側に付勢する。スペーサ25と軸受20Bの外輪20oとの間にOリング28を配置し、その外周をベアリングハウス16bの内周に密着させる。ベアリングハウス16b内の段部16fと検査ヘッド16にねじ込まれるエンドキャップ29とによって外輪20oを拘束する。エンドキャップ29を取り外してベアリングハウジング16bと主軸部16cとを軸受20A、20B上から一体的に抜き取り可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査ヘッドから被検査物に検査光を照射してその被検査物の表面を検査する表面検査装置における検査ヘッドの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒状の被検査物の内周面を検査する装置として、中空軸状の検査ヘッドをその軸線の回り回転させつつ軸線方向に送り出して被検査物の内部に検査ヘッドを挿入し、その検査ヘッドの外周から検査光としてのレーザ光を被検査物に照射してその被検査物の内周面をその軸線方向一端から他端まで逐次走査し、その走査に対応した被検査物からの反射光を検査ヘッドを介して受光し、その受光した反射光の光量に基づいて被検査物の内周面の状態、例えば欠陥等の有無を判別する表面検査装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−281582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した表面検査装置においては、検査効率を高めるための対策として、検査ヘッドの回転の高速化が必要とされている。しかしながら、検査ヘッドの回転速度を高めるほど検査ヘッドの回転の振れに対する精度の要求が高くなる。その要求を満たすには、検査ヘッドの支持構造にも相応の精度が求められる。また、保守点検等の目的で検査ヘッドを着脱し、あるいは検査ヘッドを交換する際に検査ヘッドに芯ずれが生じると、その芯出し作業が必要となり、その作業に手間取って検査効率が損なわれるおそれがある。
【0004】
そこで、本発明は検査ヘッドの回転の振れに対する精度を高めることができ、検査ヘッドを着脱あるいは交換する際の芯出し作業の負担を軽減し、又は解消することが可能な検査ヘッドの支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の検査ヘッドの支持構造は、中空筒状の軸受嵌合部(16b)とその軸受嵌合部から先端側に延びる主軸部(16c)とを備えた検査ヘッド(16)をその軸線の回りに回転させつつ該検査ヘッドの外周から被検査物(100)に検査光を照射し、前記被検査物から前記検査ヘッドに返される反射光を受光し、該反射光の光量に基づいて前記被検査物の表面を検査する表面検査装置(1)に適用される検査ヘッドの支持構造(7)であって、前記検査ヘッドの前記軸受嵌合部の内部に同軸的に配置されるヘッド支持軸(8)と、前記検査ヘッドの軸線方向に距離をおいた状態で前記ヘッド支持軸の外周と前記軸受嵌合部の内周との間に配置され、ラジアル荷重及び一方向のアキシアル荷重をそれぞれ負荷可能な一対の軸受(20A、20B)と、前記一対の軸受のそれぞれの内輪(20i)を前記軸線方向に関して前記ヘッド支持軸上の一定位置に拘束する内輪拘束手段(8a、21、22、23、24)と、前記一対の軸受のそれぞれの外輪(20o)間にて前記検査ヘッドに対して前記軸線方向へ移動可能な状態で並べて配置された筒状又は環状の第1及び第2の予圧部材(25、26)と、前記予圧部材間に配置され、これらの予圧部材を前記一対の軸受のそれぞれの外輪に向かって付勢するばね手段(27)と、前記第1の予圧部材(25)と一方の軸受(20B)の外輪との間に配置され、かつ外周が前記軸受嵌合部の内周に接触する弾性体リング(28)と、前記軸受嵌合部内に設けられた第1拘束部(16f)と前記検査ヘッドの基端部に着脱自在に設けられた第2拘束部(29)とによって、前記一対の軸受のそれぞれの外輪を前記軸線方向外側から拘束する外輪拘束手段と、を備え、前記第2の拘束部を前記検査ヘッドから取り外すことにより、前記検査ヘッドが前記軸受嵌合部及び前記主軸部を含んだ状態で前記一対の軸受上から前記軸線方向先端側に抜き取り可能とされた検査ヘッドの支持構造により、上述した課題を解決する。
【0006】
本発明の支持構造によれば、第1及び第2の予圧部材がばね手段にて付勢されることにより、一対の軸受の外輪が軸線方向外側に押し込まれて各軸受に予圧が負荷される。これにより、軸受のガタツキを減らして検査ヘッドの回転振れの精度を高めることができる。検査ヘッドを取り外す必要が生じた場合には、外輪拘束手段の第2拘束部を検査ヘッドから取り外して軸受嵌合部を軸受上から軸線方向先端側に抜き取ることにより、検査ヘッドをその軸受嵌合部及び主軸部を含んだ状態で一体的に取り外すことができる。そして、検査ヘッドを軸受に取り付ける際には、検査ヘッドの軸受嵌合部を軸受の外周に嵌め合わせて外輪拘束手段の第2拘束部を検査ヘッドの基端部に装着すればよく、軸受嵌合部からの主軸部の分離を必要としない。このように、軸受嵌合部と主軸部とを取り外すことなく一体的に軸受に対して着脱することができるため、軸受嵌合部を軸受上に取り付けた後に軸受嵌合部と主軸部との間の芯出し作業を行う必要がない。これにより、検査ヘッドを着脱し、あるいは交換する際の芯出し作業の負担を軽減し、又は解消することができる。さらに、ばね手段の力で弾性体リングが軸受嵌合部の内周及び一方の軸受の外輪に密着することにより、これらの接触面間に摩擦力を作用させることができる。従って、検査ヘッドの回転の加速度又は減速度を高めても、軸受嵌合部と軸受の外輪との間でスリップが生じ難い。このため、スリップに起因する軸受嵌合部の内面の摩耗を抑え、回転振れ精度の径時的な劣化を抑えて回転振れの精度を長期間に亘って高く維持することができる。
【0007】
本発明の支持構造の一形態においては、前記ばね手段として、前記予圧部材間に、前記検査ヘッドの周方向に等間隔をおいて複数のばね部材(27)が設けられてもよい。複数のばね部材によって予圧部材を周方向に分担して付勢することにより、軸受に対して予圧を均等に負荷することができる。これにより、予圧荷重の偏りに起因する回転性能の低下を抑えることができる。
【0008】
本発明の支持構造の一形態においては、前記弾性体リングとしてOリング(28)が設けられてもよい。シール部材として容易かつ安価に入手可能なOリングを弾性体リングとして利用することにより、支持構造を容易かつ安価に実現することができる。
【0009】
本発明の支持構造の一形態においては、前記軸受の外輪と前記検査ヘッドの前記軸受嵌合部との間のはめあい公差がすきまばめ領域に設定されてもよい。はめあい公差をすきまばめ領域に設定することにより、軸受に対する軸受嵌合部の着脱を一層容易に行うことができる。はめあい公差がすきまばめ領域であっても、弾性体リングが軸受嵌合部に密着しているため、軸受嵌合部に半径方向のガタツキが生じるおそれがなく、回転振れの精度が劣化しない。
【0010】
本発明の支持構造の一形態においては、前記検査ヘッドの前記軸受嵌合部が、前記主軸部に対して分解不能な一体構造で形成されてもよい。上記のように軸受嵌合部と主軸部とを一体的に軸受に対して着脱することができるため、軸受嵌合部と主軸部とを予め分解不可能な一体構造で形成しても検査ヘッドの着脱には何ら支障がない。しかも、これらを一体構造で形成することにより、軸受嵌合部と主軸部との間で芯ずれが発生するおそれを排除し、回転振れ精度の劣化を未然に防止することができる。
【0011】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0012】
以上に説明したように、本発明の支持構造によれば、ラジアル荷重及び一方向のアキシアル荷重を負荷可能な一対の軸受にて検査ヘッドを回転自在に支持し、しかもこれらの軸受に予圧を負荷しているため、軸受のガタツキを減らして検査ヘッドの回転振れの精度を高めることができる。検査ヘッドの軸受嵌合部と主軸部とを取り外すことなく一体的に軸受に対して着脱可能としたため、軸受嵌合部を軸受上に取り付けた後に軸受嵌合部と主軸部との間の芯出し作業を行う必要がない。これにより、検査ヘッドを着脱し、あるいは交換する際の芯出し作業の負担を軽減し、又は解消することができる。さらに、ばね手段の力で弾性体リングを軸受嵌合部の内周及び一方の軸受の外輪に密着させてこれらの接触面間に摩擦力を作用させているので、検査ヘッドの回転の加速度又は減速度を高めても、軸受嵌合部と軸受の外輪との間でスリップが生じ難い。このため、スリップに起因する軸受嵌合部の内面の摩耗を抑え、回転振れ精度の径時的な劣化を抑えて回転振れの精度を長期間に亘って高く維持することができる。さらに、回転の加速度及び減速度を高めることにより、検査に要する時間を短縮して検査効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明の一形態に係る表面検査装置の概略構成を示している。表面検査装置1は被検査物100に設けられた円筒形の内周面100aの検査に適した装置であり、検査を実行するための検査機構2と、その検査機構2の動作制御、検査機構2による測定結果の処理等を実行するための制御部3とを備えている。さらに、検査機構2は、被検査物100に対して検査光を投光し、かつ被検査物100からの反射光を受光するための検出手段としての検出ユニット5と、その検出ユニット5に所定の動作を与えるための駆動ユニット6とを備えている。
【0014】
検出ユニット5は、検査光の光源としてのレーザダイオード(以下、LDと呼ぶ。)11と、被検査物100からの反射光を受光し、その反射光の単位時間当りの光量(反射光強度)に応じた電流又は電圧の信号を出力するフォトディテクタ(以下、PDと呼ぶ。)12と、LD11から射出される検査光を被検査物100に向かって導く投光ファイバ13と、被検査物100からの反射光をPD12に導くための受光ファイバ14と、それらのファイバ13、14を束ねた状態で保持する保持筒15と、その保持筒15の外側に同軸的に設けられる中空軸状の検査ヘッド16とを備えている。検査ヘッド16は図2に示す支持構造7を介して保持筒15のさらに外側にて回転自在に支持されている。支持構造7の詳細は後述する。
【0015】
図1に戻って、保持筒15の先端には、投光ファイバ13を介して導かれた検査光を検査ヘッド16の軸線AXの方向(以下、軸線方向と呼ぶ。)に沿ってビーム状に射出させ、かつ検査ヘッド16の軸線方向に沿って検査光とは逆向きに進む反射光を受光ファイバ14に集光するレンズ17が設けられている。検査ヘッド16の先端部(図1において右端部)には、光路変更手段としてのミラー18が固定され、検査ヘッド16の外周にはそのミラー18と対向するようにして透光窓16aが設けられている。ミラー18は、レンズ17から射出された検査光の光路を透光窓16aに向けて変更し、かつ、透光窓16aから検査ヘッド16内に入射した反射光の光路をレンズ17に向かって進む方向に変更する。
【0016】
駆動ユニット6は、直線駆動機構30と、回転駆動機構40と、焦点調節機構50とを備えている。直線駆動機構30は検査ヘッド16をその軸線方向に移動させる直線駆動手段として設けられている。そのような機能を実現するため、直線駆動機構30は、ベース31と、そのベース31に固定された一対のレール32と、レール32に沿って検査ヘッド16の軸線方向に移動可能なスライダ33と、そのスライダ33の側方に検査ヘッド16の軸線AXと平行に配置された送りねじ34と、その送りねじ34を回転駆動する電動モータ35とを備えている。スライダ33は検出ユニット5の全体を支持する手段として機能する。すなわち、LD11及びPD12はスライダ33に固定され、検査ヘッド16は回転駆動機構40を介してスライダ33に取り付けられ、保持筒15は焦点調節機構50を介してスライダ33に取り付けられている。さらに、スライダ33にはナット36が固定され、そのナット36には送りねじ34がねじ込まれている。従って、電動モータ35にて送りねじ34を回転駆動することにより、スライダ33がレール32に沿って検査ヘッド16の軸線方向に移動し、それに伴ってスライダ33に支持された検出ユニット5の全体が検査ヘッド16の軸線方向に移動する。直線駆動機構30を用いた検出ユニット5の駆動により、被検査物100の内周面100aに対する検査光の照射位置(走査位置)を検査ヘッド16の軸線方向に関して変化させることができる。
【0017】
ベース31の前端(図1において右端)には壁部31aが設けられ、その壁部31aには検査ヘッド16と同軸の通し孔31bが設けられている。その通し孔31bにはサンプルピース37が取り付けられている。サンプルピース37は表面検査装置1の動作状態を判別するためのサンプルとして設けられるものであり、その中心線上には検査ヘッド16と同軸の貫通孔37aが設けられている。貫通孔37aは検査ヘッド16が通過可能な内径を有しており、検査ヘッド16はその貫通孔37aを通過して被検査物100の内部へと繰り出される。
【0018】
回転駆動機構40は検査ヘッド16を軸線AXの回りに回転させる回転駆動手段として設けられている。そのような機能を実現するため、回転駆動機構40は、回転駆動源としての電動モータ41と、その電動モータ41の回転を検査ヘッド16に伝達する伝達機構42とを備えている。伝達機構42には、ベルト伝達装置、歯車列等の公知の回転伝達機構を利用してよいが、この形態ではベルト伝達装置が利用される。電動モータ41の回転を伝達機構42を介して検査ヘッド16に伝達することにより、検査ヘッド16がその内部に固定されたミラー18を伴って軸線AXの回りに回転する。回転駆動機構40を用いた検査ヘッド16の回転により、被検査物100の内周面100aに対する検査光の照射位置を被検査物100の周方向に関して変化させることができる。そして、検査ヘッド16の軸線方向への移動と軸線AXの回りの回転とを組み合わせることにより、被検査物100の内周面100aをその全面に亘って検査光で走査することが可能となる。なお、検査ヘッド16の回転時において、保持筒15は回転しない。さらに、回転駆動機構40には、検査ヘッド16が所定の単位角度回転する毎にパルス信号を出力するロータリエンコーダ43が設けられている。ロータリエンコーダ43から出力されるパルス信号の個数は検査ヘッド16の回転量(回転角度)に相関し、そのパルス信号の周期は検査ヘッド16の回転速度に相関する。
【0019】
焦点調節機構50は、検査光が被検査物100の内周面100aにて焦点を結ぶように保持筒15を軸線AXの方向に駆動する焦点調整手段として設けられている。その機能を実現するため、焦点調節機構50は、保持筒15の基端部に固定された支持板51と、直線駆動機構30のスライダ33と支持板51との間に配置されて支持板51を検査ヘッド16の軸線方向に案内するレール52と、検査ヘッド16の軸線AXと平行に配置されて支持板51にねじ込まれた送りねじ53と、その送りねじ53を回転駆動する電動モータ54とを備えている。電動モータ54にて送りねじ53を回転駆動することにより、支持板51がレール52に沿って移動して保持筒15が検査ヘッド16の軸線方向に移動する。これにより、検査光が被検査物100の内周面100a上で焦点を結ぶようにレンズ17からミラー18を経て内周面100aに至る光路の長さを調節することができる。
【0020】
次に制御部3について説明する。制御部3は、表面検査装置1による検査工程の管理、検出ユニット5の測定結果の処理等を実行するコンピュータユニットとしての演算処理部60と、その演算処理部60の指示に従って検出ユニット5の各部の動作を制御する動作制御部61と、PD12の出力信号に対して所定の処理を実行する信号処理部62と、演算処理部60に対してユーザが指示を入力するための入力部63と、演算処理部60が処理した検査結果等をユーザに提示するための出力部64と、演算処理部60にて実行すべきコンピュータプログラム、及び、測定されたデータ等を記憶する記憶部65とを備えている。演算処理部60、入力部63、出力部64及び記憶部65はパーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータ機器を利用してこれらを構成することができる。この場合、入力部63にはキーボード、マウス等の入力機器が設けられ、出力部64にはモニタ装置が設けられる。プリンタ等の出力機器が出力部64に追加されてもよい。記憶部65には、ハードディスク記憶装置、あるいは記憶保持が可能な半導体記憶素子等の記憶装置が用いられる。動作制御部61及び信号処理部62はハードウエア制御回路によって実現されてもよいし、コンピュータユニットによって実現されてもよい。
【0021】
被検査物100の内周面100aの表面を検査する場合、演算処理部60、動作制御部61及び信号処理部62のそれぞれは次の通り動作する。なお、この場合、被検査物100は検査ヘッド16と同軸上に配置される。検査の開始にあたって、演算処理部60は入力部63からの指示に従って動作制御部61に被検査物100の内周面100aを検査するために必要な動作の開始を指示する。その指示を受けた動作制御部61は、LD11を所定の強度で発光させるとともに、検査ヘッド16が軸線方向に移動し、かつ軸線AXの回りに一定速度で回転するようにモータ35及び41の動作を制御する。さらに、動作制御部61は、検査光が被検査面としての内周面100a上で焦点を結ぶようにモータ54の動作を制御する。このような動作制御により、内周面100aがその一端から他端まで検査光によって走査される。なお、検査ヘッド16の軸線方向の駆動に関しては、一定速度の送り動作としてもよいし、検査ヘッド16が一回転する毎に所定ピッチずつ移動する間欠的な送り動作としてもよい。
【0022】
上述した内周面100aの走査に連係して信号処理部62にはPD12の出力信号が順次導かれる。信号処理部62は、PD12の出力信号を演算処理部60にて処理するために必要なアナログ信号処理を実施し、さらに、その処理後のアナログ信号を所定のビット数でA/D変換し、得られたデジタル信号を反射光信号として演算処理部60に出力する。演算処理部60にて実行する信号処理としては、PD12が検出した反射光の明暗差を拡大するようにその出力信号を非線形に増幅する処理、出力信号からノイズ成分を除去する処理といった各種の処理を適宜に用いてよい。高速フーリエ変換処理、逆フーリエ変換処理等を適宜に組み合わせることも可能である。また、信号処理部62によるA/D変換は、ロータリエンコーダ43から出力されるパルス列をサンプリングクロック信号として利用して行われる。これにより、検査ヘッド16が所定角度回転する間のPD12の受光量に相関した階調のデジタル信号が生成されて信号処理部62から出力される。
【0023】
信号処理部62から反射光信号を受け取った演算処理部60は、その取り込んだ信号を記憶部65に記憶する。さらに、演算処理部60は、記憶部65が記憶する反射光信号を利用して被検査物100の内周面100aを平面的に展開した2次元画像を生成する。その2次元画像は、例えば被検査物100の周方向をx軸方向、検査ヘッド16の軸線方向をy軸方向とする直交2軸座標系で定義される平面上に内周面100aを展開した画像に相当する。なお、演算処理部60における2次元画像の生成時には、反射光信号から得られる原画像に対して、エッジ処理、二値化処理等を施すことにより、検出すべき欠陥等を強調した2次元画像を生成してもよい。そして、演算処理部60は、得られた画像を所定のアルゴリズムで処理することにより、内周面100aに許容限度を超える欠陥等が存在するか否か等を判定し、その判定結果を出力部64に出力する。
【0024】
図2は検査ヘッド16に対する支持構造7の詳細を示す。なお、図2において検査ヘッド16の右端部がその先端部、左端部がその基端部にそれぞれ対応する。支持構造7は、上述した保持筒15と検査ヘッド16との間に配置されるヘッド支持筒8を、検査ヘッド16の内部に同軸的に配置されるヘッド支持軸として利用する。ヘッド保持筒8はスライダ33に支持されており、その内部に保持筒15が軸線方向に沿って移動自在に挿入される。なお、図2では保持筒15の図示を省略している。また、検査ヘッド16は、ヘッド本体16Aと、そのヘッド本体16Aの軸線方向先端部に着脱自在に装着されるミラーハウジング16Bとを組み合わせた構成を有している。そのヘッド本体16Aには、軸受嵌合部としての中空筒状のベアリングハウス16bと、そのベアリングハウス16bから検査ヘッド16の先端側(図2において右端側)に延びる主軸部16cとが設けられている。ベアリングハウス16bもまた支持構造7の一部として利用される。ベアリングハウス16bは、主軸部16cに対して分解不能な一体構造で形成されている。例えば、ベアリングハウス16bと主軸部16cとを単一のパイプ状素材から切削加工することによりヘッド本体16Aが形成されている。主軸部16cは被検査物100の内部に挿入されるべくベアリングハウス16bよりも小径に形成されている。なお、ミラーハウジング16Bは、主軸部16cの先端に同軸的に固定される外筒16dとその外筒16dの内周に接着等の固定手段を用いて同軸的に固定されるミラー保持筒16eとを備えている。ミラー18はミラー保持筒16eに取り付けられている。但し、検査ヘッド16の先端部にミラー18を取り付けることが可能な限りにおいて、ミラーハウジング16Bを主軸部16cの一部としてヘッド本体16Aと一体化してもよい。
【0025】
ヘッド支持筒8の外周と検査ヘッド16のベアリングハウス16bの内周との間には一対の軸受20A、20Bが軸線方向に距離をおいて配置されている。軸受20A、20Bのそれぞれは、ラジアル荷重と一方向のアキシアル荷重とを負荷できるアンギュラコンタクト型のボールベアリングである。軸受20A、20Bは、それぞれの外輪20oの背面(肉厚が大きい側の面)を向かい合わせるようにしてヘッド支持筒8の外周に組み付けられている。軸受20A、20Bに対して検査ヘッド16を容易に着脱できるように、軸受20A、20Bのそれぞれの外輪20oとベアリングハウス16bとの間のはめあい公差はすきまばめ領域に設定されている。
【0026】
ヘッド支持筒8の外周には段部8aが設けられ、検査ヘッド16の基端側の軸受20Aの内輪20iはその段部8aにワッシャ21を介して突き当てられている。軸受20A、20Bの内輪20i間においてヘッド支持筒8の外周にはスリーブ22が嵌め合わされ、軸受20Bの内輪20iよりも検査ヘッド16の先端側には、カラー23を介してロックナット24がねじ込まれている。これにより、軸受20A、20Bのそれぞれの内輪20iが検査ヘッド16の軸線方向に関してヘッド支持筒8上の一定位置に拘束される。つまり、段部8a、ワッシャ21、スリーブ22、カラー23及びロックナット24の組み合わせが内輪拘束手段として機能する。
【0027】
スリーブ22の外周には第1の予圧部材としてのスペーサ25、及び第2の予圧部材としてのばね受けリング26が検査ヘッド16の軸線方向に並べて設けられている。スペーサ25及びばね受けリング26はスリーブ22に対して回転自在であり、かつ、検査ヘッド16のベアリングハウス16bに対して軸線方向に移動可能である。スペーサ25とばね受けリング26との間には複数のコイルばね27が検査ヘッド16の周方向(回転方向)に等間隔に設けられている。図2では2つのコイルばね27のみを示すが、本形態では8本のコイルばね27が周方向に等間隔で設けられている。但し、コイルばね27の個数は適宜でよい。コイルばね27はいずれも同一である。これらのコイルばね27により、スペーサ25及びばね受けリング26が外輪20oに向かって周方向に均等な力で付勢される。これらのコイルばね27がばね手段として機能する。
【0028】
スペーサ25の外輪20oと対向する端部には、弾性体リングとしてのOリング28が装着されている。Oリング28は軸受20Bの外輪20oの背面及び検査ヘッド16のベアリングハウス16bの内周にそれぞれ接するように設けられている。さらに、ベアリングハウス16bの内部には、軸受20Bの外輪20oを検査ヘッド16の軸線方向先端側から拘束する第1拘束部としての段部16fが設けられている。ベアリングハウス16bの基端側(図2において左端側)には、第2拘束部として機能するエンドキャップ29が設けられている。エンドキャップ29はベアリングハウス16bの内周にねじ込まれている。このエンドキャップ29により、軸受20Aの外輪20oが検査ヘッド16の軸線方向基端側から拘束される。つまり、段部16f及びエンドキャップ29が外輪拘束手段として機能する。なお、エンドキャップ29には、ロータリエンコーダ43の回転円盤43aが取り付けられる。また、ベアリングハウス16bの基端側の外周には、伝達機構42のプーリ42aが一体回転可能に取り付けられる。
【0029】
外輪20oが段部16f及びエンドキャップ29にて軸線方向外側から拘束された状態でコイルばね27は適度に圧縮される。その圧縮に対するコイルばね27の反発力でスペーサ25及びばね受けリング26が外輪20oに向かって付勢される。これにより、ばね受けリング26が基端側の外輪20oの背面に押し付けられて軸受20Aに予圧が負荷される。他方、コイルばね27の力により、スペーサ25に装着されたOリング28が先端側の外輪20oの背面に押し付けられて軸受20Bに予圧が負荷される。さらに、コイルばね27の力でOリング28が軸線方向に圧縮されることにより、そのOリング28が検査ヘッド16の半径方向に膨張する。これにより、Oリング28がベアリングハウス16bの内周に密着し、両者間に適度な摩擦力が作用する。
【0030】
以上の支持構造7によれば、検査ヘッド16を回転自在に支持するための軸受20A、20Bとしてアンギュラコンタクトベアリングを使用し、これらの軸受20A、20Bにコイルばね27の力で予圧を負荷しているため、一般的な深溝玉軸受を使用する場合と比較して軸受20A、20Bのガタツキを減らし、検査ヘッド16の回転振れの精度を高めることができる。しかも、ばね手段として、複数のコイルばね27を周方向に等間隔に設けているので、軸受20A、20Bに対して予圧を均等に負荷することができる。
【0031】
検査ヘッド16を取り外す必要が生じた場合には、エンドキャップ29に対して検査ヘッド16のベアリングハウス16bをねじの緩み方向に回転させて軸受20A、20Bの外周から検査ヘッド16を先端側に抜き取ることができる。これにより、検査ヘッド16のヘッド本体16Aを、あるいは検査ヘッド16の全体を一度に取り外すことができる。検査ヘッド16を取り付ける際にも、ベアリングハウス16bを軸受20A、20Bの外周上に差し込んでエンドキャップ29をねじ込むことにより、検査ヘッド16のヘッド本体16Aを、あるいは検査ヘッド16の全体を一度に取り付けることができ、ベアリングハウス16bの装着後にそのベアリングハウス16bと主軸部16cとの芯出し作業を実施する必要がない。しかも、軸受20A、20Bの外輪20oとベアリングハウス16bとの間のはめあい公差がすきまばめ領域に設定されているので、軸受20A、20Bに対して検査ヘッド16を容易に着脱することができる。さらに、スペーサ25にOリング28を設け、これをベアリングハウス16bの内周と密着させているので、軸受20A、20Bとベアリングハウス16bとをすきまばめで嵌合させた構造であっても、ベアリングハウス16bに半径方向のガタツキが生じるおそれがなく、回転振れの精度が劣化しない。
【0032】
さらに、Oリング28が軸受20Bの外輪20o及びベアリングハウス16bと密着してこれらの間に摩擦力が作用しているため、検査ヘッド16の回転の加速度、あるいは減速度を高めても、外輪20oがベアリングハウス16bに対して周方向にスリップするおそれがない。このため、外輪20oとベアリングハウス16bとの間のスリップに起因するベアリングハウス16bの内面の摩耗が生じるおそれがない。このため、回転振れ精度の径時的な劣化も抑えることができ、長期間に亘って回転振れの精度を高く維持することができる。回転の加速度及び減速度を高めることにより、検査に要する時間を短縮して検査効率を高められる利点もある。
【0033】
本発明は上述した形態に限定されることなく、種々の形態にて実施してよい。例えば、上記の形態においてスペーサ25及びばね受けリング26は左右方向に勝手違いに配置されてもよい。第1の予圧部材及び第2の予圧部材はスペーサ及びばね受けリングの形状に限ることなく、筒状又は環状でかつ軸受の外輪間で軸線方向に移動可能に並べられている限りにおいて適宜に変更してよい。上記の形態では軸受にアンギュラコンタクト型のボールベアリングを用いたが、これに限らず、ラジアル荷重と一方向のアキシアル荷重とを負荷することが可能な構造の軸受であれば、軸線方向に予圧を与えることによって軸受のガタツキをなくして検査ヘッドの回転振れの精度を高めることができる。一例として円すいコロ軸受を使用してもよい。
【0034】
ばね手段はコイルばねに限らず、皿ばね、板ばね等の各種のばね手段を用いてよい。弾性体リングはOリングに限らず、リング状でかつ検査ヘッドの内周と全周に亘って接触しつつ弾性変形することが可能な部材であれば適宜に変更してよい。
【0035】
軸受嵌合部と主軸部との一体構造は、検査ヘッドの取り付け後に両者の芯出しが必要とならない限りにおいて適宜に変更してよい。例えば、軸受嵌合部と主軸部とを溶接にて接合し、その接合後に軸受嵌合部及び主軸部の少なくともいずれか一方を切削又は研削して両者の芯を一致させることにより両者を一体化してもよい。軸受嵌合部と主軸部とをボルト等の着脱が可能な連結手段によって結合した場合でも、両者の芯出し後に位置決めピン等の芯ずれ防止手段を設けて両者間の芯ずれのおそれを排除することにより、軸受嵌合部と主軸部とを実質的に分解不可能な一体構造として構成することができる。さらに、軸受嵌合部と主軸部が分解可能な構造であっても、軸受嵌合部と主軸部とを分解することなく軸受嵌合部を軸受から検査ヘッドの軸線方向先端側に抜き取り可能とする限り、検査ヘッドの取り付け時においても軸受嵌合部と主軸部とは分解不要であり、芯出し作業の負担の軽減又は解消を図ることができる。
【0036】
本発明の検査ヘッドの支持構造は検査ヘッドがその軸線回りに回転する限りにおいて様々な構成の表面検査装置に適用することができる。例えば、検査ヘッドを軸線方向に移動する機構が存在しない表面検査装置に対しても本発明の支持構造は適用可能である。検査ヘッドの形状、あるいは、検査光を照射し、かつ反射光を受光するための構成も上記の形態に限らず、適宜の変更が可能である。例えば、検査ヘッドの外周に発光素子及び受光素子を設けた構成の表面検査装置でも本発明の支持構造は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一形態に係る表面検査装置の概略構成を示す図。
【図2】図1の表面検査装置に組み込まれる検査ヘッドの支持構造を示す断面図。
【符号の説明】
【0038】
1 表面検査装置
7 支持構造
8 ヘッド支持筒(ヘッド支持軸)
8a 段部(内輪拘束手段)
16 検査ヘッド
16A ヘッド本体
16B ミラーハウジング
16a 透光窓
16b ベアリングハウス(軸受嵌合部)
16c 主軸部
16f 段部(外輪拘束手段の第1拘束部)
20A、20B 軸受
20i 内輪
20o 外輪
21 ワッシャ(内輪拘束手段)
22 スリーブ(内輪拘束手段)
23 カラー(内輪拘束手段)
24 ロックナット(内輪拘束手段)
25 スペーサ(第1の予圧部材)
26 ばね受けリング(第2の予圧部材)
27 コイルばね(ばね手段)
28 Oリング(弾性体リング)
29 エンドキャップ(外輪拘束手段の第2拘束部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空筒状の軸受嵌合部とその軸受嵌合部から先端側に延びる主軸部とを備えた検査ヘッドをその軸線の回りに回転させつつ該検査ヘッドの外周から被検査物に検査光を照射し、前記被検査物から前記検査ヘッドに返される反射光を受光し、該反射光の光量に基づいて前記被検査物の表面を検査する表面検査装置に適用される検査ヘッドの支持構造であって、
前記検査ヘッドの前記軸受嵌合部の内部に同軸的に配置されるヘッド支持軸と、
前記検査ヘッドの軸線方向に距離をおいた状態で前記ヘッド支持軸の外周と前記軸受嵌合部の内周との間に配置され、ラジアル荷重及び一方向のアキシアル荷重をそれぞれ負荷可能な一対の軸受と、
前記一対の軸受のそれぞれの内輪を前記軸線方向に関して前記ヘッド支持軸上の一定位置に拘束する内輪拘束手段と、
前記一対の軸受のそれぞれの外輪間にて前記検査ヘッドに対して前記軸線方向へ移動可能な状態で並べて配置された筒状又は環状の第1及び第2の予圧部材と、
前記予圧部材間に配置され、これらの予圧部材を前記一対の軸受のそれぞれの外輪に向かって付勢するばね手段と、
前記第1の予圧部材と一方の軸受の外輪との間に配置され、かつ外周が前記軸受嵌合部の内周に接触する弾性体リングと、
前記軸受嵌合部内に設けられた第1拘束部と前記検査ヘッドの基端部に着脱自在に設けられた第2拘束部とによって、前記一対の軸受のそれぞれの外輪を前記軸線方向外側から拘束する外輪拘束手段と、を備え、
前記第2の拘束部を前記検査ヘッドから取り外すことにより、前記検査ヘッドが前記軸受嵌合部及び前記主軸部を含んだ状態で前記一対の軸受上から前記軸線方向先端側に抜き取り可能とされている、
ことを特徴とする検査ヘッドの支持構造。
【請求項2】
前記ばね手段として、前記予圧部材間に、前記検査ヘッドの周方向に等間隔をおいて複数のばね部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の検査ヘッドの支持構造。
【請求項3】
前記弾性体リングとしてOリングが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の検査ヘッドの支持構造。
【請求項4】
前記軸受の外輪と前記検査ヘッドの前記軸受嵌合部との間のはめあい公差がすきまばめ領域に設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の検査ヘッドの支持構造。
【請求項5】
前記検査ヘッドの前記軸受嵌合部が、前記主軸部に対して分解不能な一体構造で形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の検査ヘッドの支持構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−315798(P2007−315798A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143034(P2006−143034)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(390014661)キリンテクノシステム株式会社 (126)
【出願人】(505216449)株式会社 KTSオプティクス (17)
【Fターム(参考)】