説明

表面検査装置及び表面検査システム

【課題】球面の全部又は一部を表面に有する検査対象物の表面を広範囲に且つ高精度に検査することのできる表面検査装置及び表面検査システムを提供する。
【解決手段】本発明の表面検査装置1は、平行光を発する光源部11と、光源部11が発した平行光を検査対象球2に向けて集光すると共に、集光された光が検査対象球2の球面部分で反射した反射光を受ける集光レンズ12と、検査対象球2を撮像する撮像素子15と、集光レンズ12を通過した反射光を受けて、検査対象球2の球面部分の像を撮像素子15上に結像する結像レンズ14と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球面の全部又は一部を表面に有する検査対象物の表面を検査する表面検査技術に関する。特に、本発明の表面検査技術は、合金製もしくはセラミックス製の人工股関節用の骨頭ボール、骨頭ボールが嵌り込む人工股関節用カップの表面の検査に好適である。
【背景技術】
【0002】
工業用ベアリングや医療用の人工股関節などは、表面に疵などの欠陥がない球体を必要とするので、球体表面の性状を高精度に検査する方法が求められている。
球体表面の性状を検査する装置として、特許文献1や特許文献2に示す球体表面検査装置がある。
特許文献1に開示された球体表面検査装置は、被検査球体の表面を照射する光源と、前記被検査球体の表面から反射した反射光を集光する集光手段と、該集光手段の光量を検出する光量検出手段と、該光量検出手段により検出された検出値に基づいて前記被検査球体の表面性状を判定する表面性状判定手段とを備えている。球体表面検査装置は、光源から被検査球体にレーザ光を照射して、被検査球体の表面で反射した反射光を光量検出手段であるフォトダイオードで受光する。フォトダイオードは、受光量に対応した電圧の電気信号を出力するので、球体表面検査装置は、出力された電圧を基準の電圧と比較することで反射光の量を把握して、球体表面の欠陥の位置を把握する。
【0003】
特許文献2に開示された検査装置は、球体物の表面全周の欠陥を検査する装置であって、球体物を回転させる回転機構と、球体物にハロゲン等の白色光源からの照明光を照射する照明機構と、球体物からの反射光を検知する検出機構と、検出機構からの入力信号に基づいて欠陥を判別する判別機構とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−333157号公報
【特許文献2】特開2000−338050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の球体表面検査装置には、以下に述べる難点が存在することが明らかとなっている。
すなわち、特許文献1の球体表面検査装置では、光量検出手段としてフォトダイオードを用いており、検査対象である球体の表面像を結像する結像手段は示されていない。そのため、特許文献1の球体表面検査装置では、表面の像はもとより表面に存在する疵などの欠陥を映像として確認することは困難である。同文献の[0027]に示されているような複数のフォトダイオードを連接した光量検出手段を採用したとしても、一次元又は二次元の画像分布として、球体の表面映像を明瞭に検出することはできない。ゆえに、表面の疵の有無は判断できても、疵の2次元的な大きさや2次元的な形状を認識することはできず、その判断結果を基に疵の分析などを行うことは難しい。
【0006】
また、特許文献1の球体表面検査装置に用いられている光源は、レーザを用いたものとなっている。しかしながら、光源がレーザであると、検査光がコヒーレンスの高い光となり干渉性が高くなるので、疵と判断する必要のない研磨痕によって特定の干渉縞を生じる可能性がある。そのため、研磨痕の形状によっては、光量検出手段で検出される光量減少が、検出したい疵よりも大きい場合があり、誤検出の原因となりかねない。つまり、特許文献1の球体表面検査装置は、検査対象の表面性状の影響を受けやすいことが明らかとなっている。
【0007】
加えて、特許文献1の球体表面検査装置では、検査対象の表面における検査光の反射割合が大きく、表面皮下の欠陥を光学的検査することができないという難点がある。例えば検査対象の材質がセラミックスの場合は、疵等の欠陥は表面のみに留まらず、表面近傍の内部に存在することが多い。このような表面近傍の内部欠陥の光学的検査に関しては、特許文献1の球体表面検査装置は対応困難であると思われる。
【0008】
一方、特許文献2の検査装置は、撮像対象をボールベアリング等の球体物とし、撮像手段として1次元CCDカメラを用い、光源としてハロゲン光を採用している。
この検査装置であれば、特許文献1が有する幾つかの難点を克服可能ではあるが、検査対象物表面に光源から入射する光の角度が検査対象物表面の部分によって異なり、これによって反射特性も異なることとなるため、たとえ均一な正常面であっても撮像光学系によって局所的に強い反射光として検出される場合があり、安定した画像を得ることができない。また、検査対象物の広範囲に亘る高精度な表面検査もできない。
【0009】
そこで本発明は、上記問題点に鑑み、球面の全部又は一部を表面に有する検査対象物の表面を広範囲に且つ高精度に検査することのできる表面検査装置及び表面検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明に係る表面検査装置は、球面の全部または一部を表面に有する検査対象球の前記球面部分の表面検査を行う表面検査装置であって、平行光を発する第1の光源部と、前記第1の光源部が発した平行光を前記検査対象に向けて集光すると共に、前記集光された光が前記球面部分で反射した反射光を受ける集光レンズと、前記検査対象を撮像する撮像素子と、前記集光レンズを通過した反射光を受けて、球面部分の像を前記撮像素子上に結像する結像レンズと、を具備することを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記結像レンズが、前記第1の光源部と前記集光レンズとの間に形成される光路の外に配置され、前記集光レンズを通過した前記反射光の進行方向を、前記結像レンズに向かうように変化させる光路変更手段が具備されるとよい。
また、前記結像レンズと撮像素子との間に設けられ、且つ前記結像レンズを通過した光を部分的に遮るアパーチャーが具備されるとよい。
【0012】
また、前記第1の光源部は、点光源と、この点光源から発せられる光を平行光に変換するコリメータレンズとが具備されるとよい。
さらには、前記検査対象に設けられた孔部に挿入して用いられる第2の光源が具備されるとよい。
本発明に係る表面検査装置は、球面の全部または一部を表面に有すると共に、中心部に向かう孔部を備えた検査対象の前記球面部分の表面検査を行う表面検査装置であって、前記検査対象の孔部に挿入して用いられる光源と、前記光源から検査対象の球面部分を通過し外部へと発せられた光を撮像する撮像手段と、を具備することを特徴とする。
【0013】
好ましくは、前記撮像手段は、前記光源から検査対象の表面部分を通過し外部へと発せられた光を受ける集光レンズと、前記検査対象を撮像する撮像素子と、前記集光レンズを通過した光を受けて、球面部分の像を前記撮像素子上に結像する結像レンズと、を具備するとよい。
好ましくは、前記検査対象は、骨頭ボールであればよい。
【0014】
本発明に係る表面検査システムは、上記表面検査装置と、球面の全部または一部を表面に有する検査対象を所定の位置に支持する支持軸と、前記検査対象が前記球面の曲率中心を回転中心として回転するように前記支持軸を回転させる回転手段、及び/又は、前記検査対象の位置と前記表面検査装置の位置とを相対的に移動させる移動手段と、を具備することを特徴とする。
【0015】
好ましくは、前記移動手段は、前記検査対象の回転方向を経度方向としたときに、緯度方向を向く軌道上で前記表面検査装置を移動させるよう構成されていればよい。
また、前記検査対象は、中心部に向かう孔部を備えた骨頭ボールであって、前記孔部に前記支持軸が挿入されていればよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る表面検査装置及び表面検査システムによれば、球面の全部又は一部を表面に有する検査対象物の表面を広範囲に且つ高精度に検査することが可能となる。特に、本発明の表面検査装置及び表面検査システムは、合金製もしくはセラミックス製の人工股関節用の骨頭ボール、骨頭ボールが嵌り込む人工股関節用カップの表面及び内部の検査に好適なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態による表面検査装置及び検査対象球を示す図である。
【図2】球面の状態によって異なる、反射光の進行方向及び強度を概念的に示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態による表面検査装置及び検査対象半球を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態による表面検査システム及び検査対象球を示す図である。
【図5】本発明の第3実施形態による表面検査装置及び検査対象球を示す図である。
【図6】本発明の第3実施形態による表面検査装置の変形例及び検査対象球を示す図である。
【図7】本発明の第3実施形態による他の表面検査装置及び検査対象球を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態による表面検査装置1及び検査対象球2を示している。検査対象球2として、本実施形態の場合、人体に用いられる人工股関節の構成要素である「骨頭ボール」を用いている。骨頭ボールは、合金製、セラミック製のものがあり、略球体を呈している。
【0019】
図1に示すように、表面検査装置1は、第1の光源部である光源部11、集光レンズ12、ハーフミラー13、結像レンズ14、撮像素子15、アパーチャー16、画像処理装置17、及びモニタ20を有する。また、表面検査装置1は、検査対象球2の表面に光を照射し、その反射光を受けることで検査対象球2の表面を撮像し、撮像された検査対象球2の画像に対して画像処理を行うことで、検査対象球2の表面や表面直下(表面近傍内部)に存在する疵や欠陥を検出するものである。
【0020】
以下、表面検査装置1の詳細について説明する。
表面検査装置1に備えられた光源部11は、点光源であり白色光を発するLED光源111と、LED光源111が発した光を平行光に変換するコリメータレンズ112とを含んでいる。コリメータレンズ112は、焦点に配置された点光源が発した放射光を平行光に変換する機能を有するように収差補正されたレンズであり、一般的には凸レンズ、又は組合せによって凸レンズとして作用するレンズ群で構成されている。
【0021】
LED光源111は、コリメータレンズ112の焦点に配置されている。なお、点光源としては、可干渉性の低い光を発するものが望ましいので、単色光を発するレーザ光源ではないのが好ましく、本実施形態のような白色LEDがよい。白色LED以外の光源としては、例えばハロゲンランプ光源が適している。このような光源を用いれば、検査対象球2表面での反射光に干渉縞が生じることはない。
【0022】
集光レンズ12は、光源部11が発した平行光を自身の焦点に集光するものであって、一般的には凸レンズ、又は組合せによって凸レンズとして作用するレンズ群で構成されている。集光レンズ12は、集光レンズ12の光軸がコリメータレンズ112の光軸に基本的には一致するように配置されている。
ハーフミラー13は、光源部11と集光レンズ12との間に配置される光路変更手段であって、光源部11からの平行光を透過させ、集光レンズ12からの光を所定の方向(図1の場合は、右側90°)に向かって反射させるものである。通常、白色光に対しては、金属膜を用いたハーフミラーが用いられるが、レーザ光に対しては、誘電体多層膜を用いたハーフミラーが用いられる。
【0023】
結像レンズ14は、ハーフミラー13で反射した集光レンズ12からの光を受け、次に説明する撮像素子15上に像を結ぶものである。結像レンズ14は、集光レンズ12と同様に一般的には凸レンズ、又は組合せによって凸レンズとして作用するレンズ群で構成されている。結像レンズ14は、集光レンズ12の光軸を通ってハーフミラー13で反射した光が、結像レンズ14の光軸を通るような位置に基本的には配置されている。
【0024】
撮像素子15は、例えば2次元のCCD素子から構成され、素子表面で受けた光を電気信号に変換し出力するものである。検査対象球2をカラー画像として撮像したいのであれば、撮像素子15としてカラーCCD素子を採用するとよい。
アパーチャー16は、光が通過する開口を有している。アパーチャー16は、結像レンズ14と撮像素子15との間に配置される。アパーチャー16は、開口の大きさを適宜変更して、結像レンズ14から撮像素子15に向かう光の量を調整するとともに、結像に用いる反射光の角度を調整する。
【0025】
画像処理装置17は、撮像素子15が出力した信号を受け取り、信号を基に画像の状態を判断して、判断結果に応じた様々な処理を実行する。画像処理装置17は、撮像画像を取り込むためのフレームメモリを有すると共に、取り込んだ画像に対して画像処理を行うための処理部(CPU)を有している。画像処理装置17は、パソコンやDSPなどで構成されたハードウエアで構成されており、この画像処理装置17の処理部(CPU)で動作する画像処理アルゴリズムは、既存のものが採用可能である。例えば、撮像画像を2値化した上で低輝度領域を抽出することで表面の割れを検知したり、撮像画像を2値化した上でパターンマッチングを行うことで、表面の疵を検知するようにしてもよい。
【0026】
また、画像処理装置17には、モニタ20が接続されており、撮像素子15が出力した信号や画像処理結果がモニタに表示可能となっている。モニタ20には、例えばCRTや液晶などの、一般的なディスプレイを用いる。
以下に、このように構成された表面検査装置1の動作を説明する。
図1に示すように、検査対象球2は、中心の位置が集光レンズ12の焦点位置と一致するように配置される。その後、光源部11が発光すると、光源部11を出た平行光はハーフミラー13を透過し、集光レンズ12に入射する。
【0027】
集光レンズ12に入射した平行光は、収束されて検査対象球2の表面に照射される。このとき、集光レンズの焦点と検査対象球2の中心とが一致しているので、集光レンズ12からの収束光は、検査対象球2表面の任意の位置に対して垂直に入射する。検査対象球2表面の任意の位置に垂直に入射した光は、当該任意の位置に対して垂直に反射し、集光レンズ12に入射する。
【0028】
集光レンズ12に入射した反射光は、平行光となって集光レンズ12を通過して、ハーフミラー13に入射し、入射した光の一部が結像レンズ14に向かって反射する。ハーフミラー13で反射した光は、結像レンズ14に入射して通過する。結像レンズ14を通過した光のうちアパーチャー16を通過した光は、撮像素子15上で結像する。
ここで、集光レンズ12の焦点と検査対象球2の中心とが厳密に一致している場合は、集光レンズ12に入射した反射光は、ほぼ完全に平行光となって、集光レンズ12を通過する。しかし、アパーチャー16がある大きさを持つために、反射光は完全な平行光でなくてもアパーチャー16を通過することができ、撮像素子15上での結像に寄与することができる。
【0029】
したがって、集光レンズ12の焦点と検査対象球2の中心とは、厳密に一致している必要はない。一致の許容の程度は、アパーチャー16の大きさや、コリメータレンズ112によって変換された平行光の平行度などに影響をうける。
コリメータレンズ112によって変換された平行光の平行度が良くない場合は、光源からの光に平行光でない成分も多く含まれているため、集光レンズ12の焦点と検査対象球2の中心とが厳密に一致していなくても、検査対象球2の表面の任意の位置に対して垂直に入射する成分が存在する場合がある。この場合は、集光レンズ12の焦点と検査対象球2の中心との一致が要求される厳密性は小さくなる。
【0030】
また、アパーチャー16が大きくなると、反射光に要求される平行光の平行度が小さくなるため、この場合も、集光レンズ12の焦点と検査対象球2の中心との一致が要求される厳密性は小さくなる。
本実施形態においては、検査対象球2の中心と集光レンズ12の焦点とが、検査対象球2の表面の任意の位置に対して垂直に入射する成分が存在するような位置関係にあれば、検査対象球2の中心と集光レンズ12の焦点とが一致しているとみなす。
【0031】
撮像素子15は、入射光を電気信号に変換し、その信号を画像処理装置17に出力する。画像処理装置17は、撮像素子15が出力した信号を受信し、検査対象球2の表面の欠陥の有無などについての判断を、この信号に基づいて実行する。また、画像処理装置17は、受信した信号を用いて検査対象球2の表面の画像に対する画像処理を行い、その結果をモニタ20に表示する。
【0032】
次に、図2を参照しながら、本発明に係る表面検査装置1の光学系における、検査対象球2の表面の状態と表面からの反射光の特性との関係を説明する。
図2は、検査対象球2の表面への入射光とこの表面からの反射光との進行方向及び強度を概念的に示す図である。図中、矢印の向きは入射光及び反射光の進行方向を示しており、入射光及び反射光の光量は矢印線の太さに比例している。
【0033】
図2(a)は、検査対象球2の表面が欠陥のない正常面である場合を示している。検査対象球2の表面が正常面である場合は、入射光の進行方向と反射光の進行方向が正反対である。例えば正常面の反射率を1とした場合は、それぞれの光量はほぼ同じである。この反射光は、集光レンズ12、結合レンズ14、及びアパーチャー16を順に通過すると、撮像素子15の表面に照射される。このとき、検査対象球2の表面と撮像素子表面との間には、結像レンズによる結像関係があるので、検査対象球2の表面の像が、撮像素子15の表面に結像する。
【0034】
図2(b)は、検査対象球2の表面に凹状の疵が存在する場合を示している。例えば、検査対象球2である骨頭ボールは、チタン合金製などの場合、鋳造にて製造される。そのため、製造工程において、内部に空隙が不可避的に存在することがあり、この空隙が表面研磨の過程で検査対象球2表面に出てくるとボイド状の疵となる。このようにしてできるボイド疵は、図2(b)に示すような深さが浅く幅が広い疵である。このような検査対象球2表面の凹状のボイド疵に入射した光の反射光は、疵表面の向きに依存して入射方向の正反対の方向には向かわないため、反射光の多くがアパーチャー16を通過することはできず、撮像素子15に入射することはない。したがって、結像した画像のうちで疵に相当する部分は暗くなり、撮像画像が黒く観察される。
【0035】
図2(c)は、検査対象球2の表面の反射率が低い場合を示している。検査対象球2の表面に異物等が混入している場合や、表面の粗度が高い場合等では、検査対象球2表面からの反射光の光量は小さくなる。この反射光は、アパーチャー16を通過できるが、その光量は正常面での反射光量と比べて小さい。このため、結像した画像のうちで、異物などが混入している、又は粗度が高くなっている部分は暗くなり、撮像画像が黒く観察される。
【0036】
従来の検査装置(例えば、ビデオカメラを用いた表面画像の撮像)によっても、図2(c)のような疵の検出が可能な場合はあるが、図2(b)のように正常面と反射率がほとんど変わらず面の傾きだけがわずかに異なるボイド疵のような疵の検出は困難であった。しかしながら、本実施形態の表面検査装置1によれば、骨頭ボールのような検査対象球2の表面に存在する疵や欠陥を確実に可視化でき、検査対象球2表面に存在する疵や異物等をモニタを通じて目視、又は画像処理手法を用いて顕在化することができるようになるため、検査対象球2の表面を確実に検査することができるようになる。検査対象球2を回転させるか、表面検査装置1を移動させれば、検査対象球2の球面全体を検査することができる。
【0037】
また、光源からの光は検査対象球表面に垂直に入射し、ほぼ垂直な反射光を検出するため、正常面においては常に安定した反射光が得られ、表面上の部位による輝度の変動が少ない(このことは、特許文献2に対する有利な効果である)。さらに、球面の広い範囲にわたって合焦した画像が得られる。
次に、図3を参照しながら、第1実施形態の変形例を説明する。本変形例では、検査対象球2の代わりに検査対象半球3を用いている。他の点、例えば光学系に関しては、図1と何ら変わる点はない。
【0038】
図3に示すように、検査対象半球3は、例えば人工股関節の骨盤側のカップであって、前述した検査対象球2(骨頭ボール)が嵌り込むものである。検査対象半球3は、半球状であるとともに、内側に凹状の半球面を有している。
この凹状半球面の曲率中心が集光レンズ12の焦点と一致するように検査対象半球3を配置する。その上で前述の通りに表面検査装置1を動作させると、半球面に垂直に入射した光が半球面から垂直に反射して、結像レンズ14によって、凹状半球面の像が撮像素子15に結像する。
【0039】
なお、検査対象球2を用いる第1実施形態の場合と同様に、凹状半球面の曲率中心と集光レンズ12の焦点とは、必ずしも厳密に一致する必要はない。本変形例においては、凹状半球面の曲率中心と集光レンズ12の焦点とが、凹状半球面の表面の任意の位置に対して垂直に入射する成分が存在するような位置関係にあれば、凹状半球面の曲率中心と集光レンズ12の焦点とが一致しているとみなす。
【0040】
この凹状半球面に、図2(b)及び(c)で説明したような疵や欠陥があったとしても、それら疵や欠陥をモニタを通じて目視、又は画像処理手法を用いて顕在化することができるため、検査対象半球3の表面を確実に検査できるようになる。
[第2実施形態]
次に、本発明に係る表面検査システムを第2実施形態として述べる。
【0041】
本実施形態の表面検査システム4は、第1実施形態で説明した表面検査装置1を有している。表面検査システム4はさらに、検査対象球5を所定の位置に支持する検査対象支持軸6と、検査対象球5が球面の曲率中心を回転中心として回転するように支持軸を回転させる回転手段、及び/又は、表面検査装置1の位置と検査対象球5の位置とを検査対象球5の曲率中心を中心に持つ軌道上で相対的に移動させる移動手段と、を具備している。
【0042】
図4は、本実施形態による表面検査システム4及び検査対象球5を示している。
この図に示されているように、表面検査装置1は画像処理装置17以外の構成要素がセンサヘッド18としてユニット化されており、図中の12が集光レンズである。表面検査装置1には、第1実施形態で示した光学系と略同様の構成が内蔵されている。
検査対象球5は、この集光レンズ12の直前に配置される。検査対象球5としては、本実施形態の場合、人工股関節の骨頭ボールであり、特に表面から中心に向かう略円筒状の孔部を有するものである。この孔部は、人工股関節を構成するステムが嵌り込むためのもの(ステム嵌合孔21)であり、ステムと骨頭ボールが嵌り込むことで、人工股関節の大腿部側の部材が形成される。
【0043】
検査対象支持軸6は、例えば図に示すような直線状の柱状の部材であって、検査対象球5の孔部に挿入されて接合することで、検査対象球5を支持するものである。検査対象支持軸6は、検査対象球5の中心が常にセンサヘッド18の集光レンズ12の焦点と一致するように、検査対象球5を支持する。
さらに、本実施形態の表面検査システム4は、前述したセンサヘッド18を、電気的、機械的な動力手段によって、又は手動の操作によって、検査対象球5の周りで相対的に移動させる図示しない移動手段と、検査対象支持軸6を回転させる図示しない回転手段を有している。
【0044】
回転手段は、まず、検査対象支持軸6を図中矢印で示す方向(以下、地球上の位置の座標に例えて経度方向という)に回転させる。これによって、検査対象球5は自身の中心を通る軸を回転軸として経度方向に回転する。
また、移動手段は、集光レンズ12の焦点を中心とする軌道上で、センサヘッド18を相対的に移動させる。詳しくは、移動手段は、検査対象球5の緯度方向を向き、検査対象球5のほぼ全周を取り囲むように配備されたガイドレール19を有している。移動手段は、このガイドレール19に沿ってセンサヘッド18を移動させるように構成されている。
【0045】
また、検査対象球5とセンサヘッド18の相対的位置関係を変えるために、センサヘッド18を固定して、検査対象球5を移動させてもよい。
このような構成を有する回転手段及び移動手段を、表面検査装置1の撮像タイミングに合わせて動作させる。例えば、連続的に撮像しながら検査対象球5を経度方向に360°回転させた後、いったん撮像をやめ、所定角度(例えば5°)だけセンサヘッド18を緯度方向に移動させて、再度、撮像しながら検査対象球5を経度方向に360°回転させる。このようなセンサヘッド18の移動を、北極に相当する位置から南極に相当する位置(0°〜180°)まで行うことで、検査対象球5のほぼ全表面を容易且つ確実に検査することができる。
【0046】
ここでは、回転手段が検査対象支持軸6を経度方向に回転させ、移動手段がセンサヘッド18を緯度方向に移動させる場合を説明したが、これら回転及び移動方向は任意に決定することができる。つまり、検査対象球5の中心とセンサヘッド18の集光レンズ12の焦点とが一致していれば、回転手段は、緯度方向及び経度方向に関係なく、検査対象球5をいかなる方向に回転させてもよいし、移動手段は、センサヘッド18を相対的にいかなる方向に移動させてもよい。
[第3実施形態]
図5は、本発明の第3実施形態による表面検査装置7を示している。
【0047】
表面検査装置7は、第1実施形態の表面検査装置1と同様の、平行光を発する光源部11と、光源部11が発した平行光を集光し、かつ検査対象球5に照射する集光レンズ12と、検査対象球5の表面で反射して集光レンズ12を透過した反射光の光路を変更するハーフミラー13と、検査対象球5を撮像する撮像素子15と、ハーフミラー13からの反射光を受けて、撮像素子15に検査対象球5の像を結像する結像レンズ14と、結像レンズ14と撮像素子15の間で結像レンズ14を通過した光を部分的に遮るアパーチャー16とを有する光学系、及び画像処理装置17に加え、第2の光源部である光源部8を有している。
【0048】
検査対象球5は、第2実施形態で説明したように、例えば人工股関節の骨頭ボールであり、ステムを取り付けるための孔部(ステム嵌合孔21)が表面から中心に向かって設けられている。本実施形態では、内部から外部に向かって光を透過可能な検査対象球5を想定しており、検査対象球5は、例えばセラミックス製である。
光源部8は、検査対象球5の孔部に挿入される点光源であり、光源部8を制御する制御部9に接続されている。光源部8には、点光源のLED、ハロゲンランプ、又はファイバ導光光源などを用いることができる。
【0049】
上述のような構成の表面検査装置7に対して、検査対象球5は、中心の位置が集光レンズ12の焦点位置と一致するように配置される。検査対象球5が配置されると、検査対象球5のステム嵌合孔21に光源部8の点光源が挿入される。
なお、表面検査装置1を用いる第1実施形態及び第2実施形態の場合と同様に、検査対象球5の中心と集光レンズ12の焦点とは、必ずしも厳密に一致する必要はない。本実施形態においては、検査対象球5の中心と集光レンズ12の焦点とが、検査対象球5の表面の任意の位置に対して垂直に入射する成分が存在するような位置関係にあれば、検査対象球5の中心と集光レンズ12の焦点とが一致しているとみなす。
【0050】
次に、本実施形態による表面検査装置7の動作を説明する。
上述のように表面検査装置7と検査対象球5を配置した後に光源部8を発光させると、光源部8が発した光の一部は、検査対象球5の内部を透過して検査対象球5の球面から外部に出る。球面から出た光のうち集光レンズ12に入射した光は、第1実施形態で説明した表面検査装置1と同様の経路で撮像素子15に入射し、像として結ばれる。
【0051】
このように検査対象球5の内部を透過する光は、検査対象球5内部(特に表面近傍の内部)の異物混入部やクラックなどの欠陥を透過できなかったり、それら欠陥によって散乱したりする。画像処理装置17において、それら欠陥が存在する部分の画像は欠陥のない正常部の画像とは異なるので、検査対象球5内部を透過する光を検査対象球5の表面で観察するだけで、内部(特に、表面直下)に存在する欠陥を検査することができる。検査対象球5表面の汚れ及び付着物なども光速の透過率を低下させるので、内部の欠陥と同時にそれら汚れや付着物も検出できる。
【0052】
ここで光源部8と同時に又は交互に光源部11を発光させ、それぞれの画像を得ることで、上述の内部の欠陥と共に第1実施形態で観察した検査対象球5の表面の欠陥を検査することができる。
図6(a)を参照しながら、第3実施形態の変形例1を説明する。
上述の第3実施形態において、特に、表面近傍内部に存在する欠陥を検出したい場合、図6(a)に示すような、表面検査装置22を用いてもよい。図6(a)の表面検査装置22は、図5に示す第3実施形態の表面検査装置7から、光源部11だけを除いた構成を有しており、他の構成要素は表面検査装置7のものと同一である。
【0053】
なお、変形例1の構成は、表面検査装置7と共通の光学系を用いることができるので、表面検査装置7の構成から容易に実現することができる。また、光源部11を着脱可能な構成にしておけば、表面検査装置7の構成と本変形例の構成とを容易に切り替えることができる。また、第1実施形態において、光源を無点灯状態とすることでも本変形例の構成は実現可能である。
【0054】
本変形例においては、光源部8が発して検査対象球5の内部を透過した光のうち、球面に対してほぼ垂直な方向に向かう透過光のみを検出するため、正常面においては常に安定した透過光が得られ、表面上の部位による輝度の変動が少ない。さらに、球面の広い範囲にわたって合焦した画像が得られる。
次に、図6(b)を参照しながら、第3実施形態の変形例2を説明する。
【0055】
変形例1のように、第3実施形態の表面検査装置7と共通の光学系を用いる必要がなければ、図6(b)のように、ハーフミラー13を含まない構成の表面検査装置23を用いてもよい。この表面検査装23は、図6(a)の表面検査装置22からハーフミラー13を除いて、集光レンズ12と結像レンズ14のそれぞれの光軸を一致させた構成となっている。本構成によれば、ハーフミラーを用いない分容易かつ安価に表面検査装置を実現することができる。
【0056】
この変形例2も変形例1と同様に、球面の広い範囲にわたって合焦することができ、任意の球面部分を同等の明るさで撮像することができる。
なお、図6(a)又は図6(b)においても、表面検査装置7の場合と同様に、検査対象球5の中心と集光レンズ12の焦点とは、必ずしも厳密に一致する必要はない。
アパーチャー16はある大きさを持つために、透過光は完全な平行光でなくてもアパーチャー16を通過することができ、撮像素子15上での結像に寄与することができる。
【0057】
したがって、集光レンズ12の焦点と検査対象球2の中心とは、厳密に一致している必要はない。一致の許容の程度は、アパーチャー16の大きさなどに影響をうける。例えば、アパーチャー16が大きくなると、透過光に要求される平行光の平行度が小さくなるため、集光レンズ12の焦点と検査対象球2の中心との一致が要求される厳密性は小さくなる。
【0058】
本実施形態の変形例1及び2においては、検査対象球5の中心と集光レンズ12の焦点とが、検査対象球5の表面の任意の位置に対して垂直に透過する成分が存在するような位置関係にあれば、検査対象球5の中心と集光レンズ12の焦点とが一致しているとみなす。
図7を参照しながら、第3実施形態の変形例3を説明する。
【0059】
上述の第3実施形態では、第1実施形態の表面検査装置1と光源部8とで表面検査装置7を構成したが、表面検査装置1に相当する部分を、図7に示すように、結像レンズ14、撮像素子15、及び画像処理装置17だけの構成、すなわち、ビデオカメラ等の一般的な撮像手段に置き換えてもよい。検査対象球5と結像レンズ14の距離を調整してピントを合わせれば、このような構成でも、検査対象球5の内部の欠陥と、表面の汚れ及び付着物を検査することができ、簡易な構成で且つ安価な表面検査装置を提供することができる。
【0060】
以上の第3実施形態及び第3実施形態の変形例1〜3では、光源をステム嵌合孔21から検査対象球5の内部に挿入しているが、検査対象球5の表面の任意の位置から検査対象球5の内部を照射する光源を用いてもかまわない。ステム嵌合孔21のないセラミック製球体の場合、表面の任意の位置から内部を照射し、球体中心をはさんで照射位置のほぼ反対側で球体内部を透過した光を受ければよい。
【0061】
ところで、今回開示された各実施形態はそれぞれの変形例も含めて全ての点で例示であって、これら例示によって本発明を限定するものではない。本発明の範囲は上記の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、検査対象球2及び5として骨頭ボールを例示したが、球状の検査対象物であれば、検査対象球2及び5として採用可能である。上記実施形態の表面検査装置1であれば、検査対象物の検査面を均一な輝度で撮像可能であるため、ベアリング等の鋼球ボールの表面検査も可能である。
【0062】
また、上記実施形態では、検査対象球2及び5並びに検査対象半球3を合金製又はセラミックス製としたが、ポリエチレンなどの高分子材料であってもよい。
また、光源部11として白色光を発するLEDやハロゲンランプを開示したが、可干渉性の低い可視光線を発する光源であれば、LEDやハロゲンランプに限らず光源部11に用いることができる。
【0063】
また、光路変更手段としてハーフミラーを用いたが、同等の機能を有するものであれば、ハーフミラーでなくともよい。
【符号の説明】
【0064】
1 表面検査装置
2 検査対象球
3 検査対象半球
4 表面検査システム
5 検査対象球
6 検査対象支持軸
7 表面検査装置
8 光源部
9 制御部
11 光源部
12 集光レンズ
13 ハーフミラー
14 結像レンズ
15 撮像素子
16 アパーチャー
17 画像処理装置
18 センサヘッド
19 ガイドレール
20 モニタ
21 ステム嵌合孔
22 表面検査装置
23 表面検査装置
111 LED光源
112 コリメータレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球面の全部または一部を表面に有する検査対象球の前記球面部分の表面検査を行う表面検査装置であって、
平行光を発する第1の光源部と、
前記第1の光源部が発した平行光を前記検査対象に向けて集光すると共に、前記集光された光が前記球面部分で反射した反射光を受ける集光レンズと、
前記検査対象を撮像する撮像素子と、
前記集光レンズを通過した反射光を受けて、球面部分の像を前記撮像素子上に結像する結像レンズと、を具備することを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
前記結像レンズが、前記第1の光源部と前記集光レンズとの間に形成される光路の外に配置され、
前記集光レンズを通過した前記反射光の進行方向を、前記結像レンズに向かうように変化させる光路変更手段を具備することを特徴とする請求項1に記載の表面検査装置。
【請求項3】
前記結像レンズと撮像素子との間に設けられ、且つ前記結像レンズを通過した光を部分的に遮るアパーチャーを具備することを特徴とする請求項1又は2に記載の表面検査装置。
【請求項4】
前記第1の光源部は、点光源と、この点光源から発せられる光を平行光に変換するコリメータレンズとを具備していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表面検査装置。
【請求項5】
前記検査対象に設けられた孔部に挿入して用いられる第2の光源を具備する請求項1〜4のいずれかに記載の表面検査装置。
【請求項6】
球面の全部または一部を表面に有すると共に、中心部に向かう孔部を備えた検査対象の前記球面部分の表面検査を行う表面検査装置であって、
前記検査対象の孔部に挿入して用いられる光源と、
前記光源から検査対象の球面部分を通過し外部へと発せられた光を撮像する撮像手段と、を具備することを特徴とする表面検査装置。
【請求項7】
前記撮像手段は、
前記光源から検査対象の表面部分を通過し外部へと発せられた光を受ける集光レンズと、
前記検査対象を撮像する撮像素子と、
前記集光レンズを通過した光を受けて、球面部分の像を前記撮像素子上に結像する結像レンズと、を具備することを特徴とする請求項6に記載の表面検査装置。
【請求項8】
前記検査対象は、骨頭ボールであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の表面検査装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の表面検査装置と、
球面の全部または一部を表面に有する検査対象を所定の位置に支持する支持軸と、
前記検査対象が前記球面の曲率中心を回転中心として回転するように前記支持軸を回転させる回転手段、及び/又は、前記検査対象の位置と前記表面検査装置の位置とを相対的に移動させる移動手段と、を具備することを特徴とする表面検査システム。
【請求項10】
前記移動手段は、前記検査対象の回転方向を経度方向としたときに、緯度方向を向く軌道上で前記表面検査装置を移動させるよう構成されていることを特徴とする請求項9に記載の表面検査システム。
【請求項11】
前記検査対象は、中心部に向かう孔部を備えた骨頭ボールであって、前記孔部に前記支持軸が挿入されることを特徴とする請求項9又は10に記載の表面検査システム。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−107092(P2011−107092A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265281(P2009−265281)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000130259)株式会社コベルコ科研 (174)
【Fターム(参考)】