説明

表面検査装置

【課題】レーザ光を孔内部表面に照射すると同時にその反射光を判定処理装置に戻すようにした表面検査装置において使用される回転筒体を小径化すると共に高速回転に耐えられるものにして小孔の内部表面を高速検査できるようにする。
【解決手段】レーザ光発振器11を備える本体部7に回転筒体10を回転自由に連結してその中空のレーザ誘導空間17を通して前記レーザ光発振器11からのレーザ光を小孔内部表面に送る一方、この内部表面からの反射光を前記回転筒体10の内周面に環状に且つ長さ方向に沿って配設する光ファイバー15に通して回収し、単一の前記回転筒体10の内部表面に照射光と反射光の光路を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面検査装置、更に詳しくは機械装置類のハウジング等の金属体に組立、連結のために穿たれるねじ孔等の内部壁面の検査をするのに好適な表面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から金属体に穿たれる孔の内部壁面の傷や亀裂、付着物の有無等を検査する技術として孔の内周壁面に光を投射して、これより反射してくる光を光信号から電気信号に変換し、この信号を解析することによって孔の内周壁面が正常な状態にあるか否かを判別し、仕上り状態等を検査する技術は広く知られ、また実用化されている。
【0003】
この光による検査は、被検査体によって方法、装置に相違があるが、原理的には光源からの光を被検査体の対象となる孔の内周壁面に投射し、これより反射してくる反射光を孔の外に取り出して、この取り出した反射光を光電変換器等に通して電気信号に変え、更にこの信号を解析することによって正常であるか、傷等がある異常なものであるのかを判別して孔の加工ないしねじの形成が正常に行われているか否かを判別している。
【0004】
この場合、上記電気信号の分析、そして分析の結果に基づく判定についてはその検査の目的等に基づき様々異なるものとなるが、孔の内周壁面に光を投射し、表面から反射してくる反射光を捉えてその変化を分析することにより孔内周壁面の正常、異常を判別するとする手法については基本的に共通している。
【0005】
しかし、この光を利用する検査方法は、被検査体となる孔の口径が数ミリ単位の例えば自動車エンジンルームの組立のためのねじ孔のように極端に小径となった場合、更には多数のねじ孔を連続的に、しかも短時間に検査するとなった場合、必ずしも容易なことではなく精度を挙げながら安定的に検査することは技術的な困難を伴う。
【0006】
従来、この種の光を利用して孔の内周壁面の検査を行う表面検査装置として例えば特許文献1〜3に記載される方法、装置が知られる。
【特許文献1】特開昭51−106488号公報
【特許文献2】特許第3887482号公報
【特許文献3】特開2002−340809号公報
【0007】
上記特許文献1に記載の装置は、被検体31の内壁表面を検査するものとして、モーター14によって回転される中空状の円筒9の先端に収束レンズ23、屈折のためのミラー26を備えたヘッド16を装着し、その一方この円筒9の軸心に沿って外周面に光ファイバー18を備えた光導パイプ17を挿入して二重構造体の筒体としたもので、検査に当っては前記円筒9の支端に備えるヘッド16を被検査体31の内部に差し入れ、前記光導パイプ17の基端側からパイプの軸心部に形成する中空部を通して外部に設ける光源1からの光(イ)を前記ヘッド16内に設ける収光レンズ23に通し、ミラー26を経て直角状に屈折させてその後この収束光(ロ)を被検体31の内壁表面に投射し、その反射光(ハ)を前記光学ファイバー18を介して円筒9の内部を折り返すようにして外部に取出し、光電気変換センサー39を通して電気信号に変換し、ブラウン管37において画像表現するものとなっている。
【0008】
この特許文献1の装置は、モーター14による円筒9の回転によって前記ミラー26で直角に屈折させた収束光(ロ)を同じく回転させることによって被検体31の内周に沿って移動させ、この移動と共に内壁表面からの反射光(ハ)を光導パイプ17の外周面に沿って付設する前記光学ファイバー18を通して外部に回収し、連続して被検体31の内壁表面の状態を検査することができるものとなっている。
【0009】
この特許文献1の装置における1つの特徴は、光源1からの光(イ)を収束レンズ23を通して収束光(ロ)として被検体31の表面に照射するに当り、上記光(イ)を光導パイプ17の中空部を通して収束レンズ23に導く一方、被検体31からの反射光(ハ)は上記光導パイプ17の外周面に設ける光学ファイバー18を通して回収する構造にしてあることにある。
つまり、ここでは反射光(ハ)として回収する光を外筒となる円筒9の内側に挿入する内筒となる光導パイプ17の外周面に付設する光学ファイバー18を通して回収する構造にしてあり、入射光と反射光を円筒9の内部に挿入する光導パイプ17を使って往復する構造にしてあることにある。
【0010】
しかし、この内外2重の筒体(円筒9、光導パイプ17)からなる装置は、筒を内外2重に組むことに併せて光導パイプ17を円筒9の内部に挿入するにあたって両者間に所定の空隙を確保する必要があること、更には内筒となる光導パイプ17の軸心部に光(イ)を通すための空間を要することから筒体の全体の外径が大になる問題があり、この結果、被検体となる孔径が小さくなった場合、例えば止め付けのねじを受けるねじ孔の様に数mm径の小孔となった場合、筒体とねじ孔内壁面との間に十分な間隙を確保することができず、筒体の挿入、更には挿入状態においての回転ができなくなる問題がある。
【0011】
一方、特許文献2に記載の表面検査装置は、発明の対象を異にしているものの、光源2からの光をファイバー保持筒5の中心部に配置する投光ファイバー3を通して反射鏡7に当て、ここで90°方向を変えて被検査物1の内壁面に投射し、その反射光を再び反射鏡7に受けてこれを前記ファイバー保持筒5の内壁面に沿って付設する受光ファイバー4a、4bに受け、これを通して外部に取り出す、とした基本的構造を備え、前記特許文献1の装置と軌を一にするものとなっている。そして、ここでは前記ファイバー保持筒5を固定のものにして、その外周に嵌装する電機子軸9aをモータによって回転させ、この電機子軸9a先端の回転筒8を回転させて内部に備える反射鏡7を回転させ、被検査物1の内壁面を周方向に沿って走査できるものとしている。
【0012】
しかし、この特許文献2の装置も、固定的に設けられるファイバー保持筒5の外側にモータによって回転する電機子軸9aを被せて2重構造とする点で前記特許文献1の装置と同じであり、筒体の実質的外径が大になるという欠点、換言すれば小径にできない構造になっている。
【0013】
これらに対して、特許文献3に記載の表面検査装置は、前記各装置において外筒となる中空の検査光学支持部材3を単体にして筒体の2重構造を廃し、その代りにこの検査光学支持部材3の内部に光源13を備え、この光源13からの光を同じく支持部材3の内部に備えるハーフミラー12に当て、筒状被検査物1の内周面1aに照射してその反射光を検査光学支持部材3の基部内部に備えるCCDカメラ4に受ける構造にしてある。
【0014】
この結果、この特許文献3における装置は筒体に相当する検査光学支持部材3を単体にすることによって自動的に2重構造を廃するものとなっているが、しかし、この2重構造を廃することに伴って外部からの光の照射ができなくなることから、ここでは光源13を支持部材3の内部に直接備えるものとなっている。
しかし、この様にした場合、上述の様に光源13を筒の内部に直接装備することになることから、この筒体の内部に光源13を収めるスペースが必要となり、結果的に筒体、即ち検査光学支持部材3の外径を小径にすることはできず、検査対象とする被検査物は自動的に大口径の孔の検査に限定されることとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、この様な事情に鑑み、開発されたもので、特にねじ孔などの数ミリ単位の小径な孔の内部表面の状態を検査するのに適した表面検査装置を提供しようとするものである。
前述したように光学的に孔の内部表面を検査する場合、光を孔の内部に持ち込み、内周壁面に照射することが必要であると同時に、照射した光の反射光を外部に取り出す必要がある。
【0016】
このとき、前記特許文献1、2の装置においては反射光を外部に取り出す手段として円筒9(電機子軸9a)の内部に光導パイプ17(ファイバー保持筒5)を嵌装して2重の筒構造とし、この光導パイプ17(ファイバー保持筒5)に光ファイバー18(受光ファイバー4a、4b)を付設することによって反射光を外部に取り出すこととしているが、前述したように筒体を2重構造とすることは筒体の外径を大径にすることになって小径な孔に対する検査装置として不向きである。
【0017】
従って、本発明では筒体の2重構造を廃して単体の筒体にした上でこの筒体の内部に照射光の光路と反射光を取り出す光路、つまり光ファイバーの配置を可能にし、これにより内筒、つまり光ファイバーを支持するための内側筒体の配置を省略し、これに伴って筒体の実質的な外径の縮少化、またこれに伴わせて必要な筒体の肉厚の確保を可能にして高速回転にも対応できる強度が得られるようにした表面検査装置を提供しようとするものである。
【0018】
表面検査装置における第一の使命は正確な検査にある。そして、製品の量産化の中にあっては検査時間の短縮であり、そのためには孔の内周壁面を高速回転を通して迅速に検査できることが大きな課題となる。
この場合、筒体の小径化と同時に、小径になることに伴って筒の肉厚が減少するのを防止し、必要な肉厚を確保して所要強度を得る必要がある。
【0019】
本発明は、従来解決されなかった小径な孔に対して光学的な表面検査が高速で、しかも安定してできるよう改善されたことにあり、特に本発明はねじ孔等小径な孔に対して容易に挿入できる小径なミラー付き回転筒体とする一方、高速回転が与えられた場合でも回転時の振れを抑えて被検査体に対する安定した挿入と、連続的で且つ迅速な検査を可能にした表面検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上記目的を達成するため、被検査体となる小径な孔に挿入し、光源からの光を孔の内周壁面に照射し、且つこの照射光の反射光を外部に取り出す筒体を単体にしてその内周面に上記反射光を誘導する光ファイバーを筒状に配置し、且つこの光ファイバーによって囲まれる中空部に上記照射光となる光の誘導空間を形成して上記筒体の内部に照射光と反射光の2つの誘導路を形成したことにある。
【0021】
そして、本発明は、この筒体を回転自由に支持し、中心部の上記誘導空間を通して照射される光を筒体の支端に設けるミラーを介して筒体の回転に伴わせて孔の内周壁面に連続的に照射し、その反射光を再度上記ミラーを通して前記筒体の内周面に付設する光ファイバーにより外部に取り出すようにしたことにある。
【0022】
その一方、本発明は上記筒体の光誘導空間に光を発する光源及び上記反射光を受ける受光手段を備える本体部を前記筒体に対峙させ、この筒体を回転自由に支持すると共に、上記光源からの光を筒体の誘導空間に送り、また光ファイバーからの反射光を受け取り、光信号の解析によって孔の内周壁面の状態を分析する判定処理装置に接続するようにしたことにある。
【0023】
上記本発明を更に詳述すると、その特徴とするところは、レーザ発振器及びレーザ発振器からのレーザ光を誘導する光路空間を先端部に向けて有する本体部と、本体部の先端部に前記光路空間の延長線上に沿って回転自由に装着される回転筒体とからなり、前記回転筒体には内周面の全周に亘り同心円上に沿わせ、且つ長さの略全長に亘って複数本の光ファイバーを筒状に付設してその中心部に前記光路空間と連通するレーザ光誘導空間を同時に形成する一方、該回転筒体の先端部に前記レーザ光誘導空間を通して送られるレーザ光を被検査体表面に照射し、反射レーザ光を前記光ファイバー先端の受光部に送るミラーを装備し、他方前記本体部の光路空間の内壁面には受光用光ファイバーを同心円上に沿って多数本筒状に配置してその先端部を前記回転筒体側の前記光ファイバーの基端部に近接して臨ませ、該回転筒体側の光ファイバーからの反射レーザ光を受光用光ファイバーに受光させて前記本体部側に装備する判定処理装置に光送信するように構成したことを特徴とする表面検査装置にある。
【0024】
この発明によると、被検査体となる孔の内壁面に照射するレーザ発振器からのレーザ光、及び孔の内壁面に反射して取り出される反射光を誘導するレーザ光誘導空間、及び光ファイバーを単体の回転筒体の内部に配置して処理する構造とすることから、回転筒体には上記光ファイバーを配置するスペースと、この光ファイバーによって囲まれる空間、つまり前記レーザ光を通すことができる誘導空間が確保できるスペースがあればよく、従って回転筒体はこれらを包含するに足る最小径の筒体とすることができ、このため小径な孔に対し挿入し、その内壁面を検査することができる表面検査装置とすることができる。
【0025】
また、上述の通り、回転筒体を単体にして内部に反射光誘導用の光路、つまり光ファイバーの配置と、この光ファイバーに囲まれる空間を以て照射光となるレーザ光の誘導空間とを備えることにより回転筒体を最小径の筒体とすることが可能になることから、この可能な範囲を利用して回転筒体自体の肉厚を増強することができ、これに基づいてその強度を高めて高速回転時に発生する振れを防止することできる。
【0026】
また本発明は、上記発明において前記回転筒体の内周面に沿って筒状に付設される多数本の光ファイバーの内側に筒状の固定部材を密着した状態で添わせ、該光ファイバーを回転筒体の内周面との間に挟持した状態で固定することを特徴とした表面検査装置を提供することにある。
【0027】
この発明によると、回転筒体の内周面に光ファイバーを容易に且つ安定的に配置することができると共に、光ファイバーの中心部に固定部材によって円形のレーザ光路空間を形成することができることになる。
【0028】
また本発明は、上記発明において、前記筒状固定部材と光ファイバーとの間に接着剤を介挿して筒状固定部材の外周面と回転筒体の内周面との間に光ファイバーを安定的に固着することを特徴とした表面検査装置を提供することにある。
【0029】
この発明によると、回転筒体の内周面に沿って配置される光ファイバー同士及び光ファイバーと回転筒体とが一体に接着固定されることから回転筒体の回転時に光ファイバーが移動することがなく、回転筒体自体の高速回転が安定して行われることになる。
【0030】
また本発明は、上記いずれかの発明において、前記本体部の先端部に連結手段を装備し、該連結手段を介して回転筒体を回転自由に連結支持すると共に、光路空間とレーザ光誘導空間、及び光ファイバーの基端部と受光用光ファイバーの先端部のそれぞれを直線上に配置することを特徴とした表面検査装置を提供することにある。
【0031】
この発明によると、本体部と回転筒体は本体部からの連結手段を介して所定の位置関係で連結され、しかも本体部に対して回転筒体は回転自由に支持されることから本体部からのレーザ光を回転筒体のレーザ光誘導空間に向けて正しく発射することができると同時に、回転筒体の光ファイバーを通して戻される反射光を正しく受光用光ファイバーに受けることができることになる。
【0032】
また本発明は、上記発明において、前記回転筒体の外周面部に回転駆動装置を装着し、該回転駆動装置を本体部に連結手段を介して支持させることを特徴とした表面検査装置を提供することにある。
【0033】
この発明によれば、回転筒体の外周面部に直接この回転筒体を回転駆動する回転駆動装置を前記連結手段を介することで組込む構造とすることから、回転筒体に対して安定した回転力を与えられると共に、回転筒体が回転駆動装置と一体的に回転するため不要な振動を与えることなく高速での回転を可能にする。
【0034】
また本発明は、上記いずれかの発明において、前記本体部の光路空間の内壁面には多層に描かれる同心円に沿って多数本の受光用光ファイバーをそれぞれ配置して複数層の受光用光ファイバー群を形成することを特徴とした表面検査装置を提供することにある。
【0035】
この発明によれば、本体部の光路空間の内壁面に付設される受光用光ファイバーが複数層となってその先端部の受光面積が広くなる結果、回転する回転筒体の光ファイバーの基端部から送られる反射光を可能な範囲で多く受光することができることになる。従って、固定の本体部側で受け取る反射光の受光量が減少するのを有効に回避することができ、正確な光信号の分析が可能になる。
【0036】
また更に他の本発明は、前記いずれかの発明において、前記回転筒体は先端部の内壁面部を切除して、実質的内径を拡大するミラー収納空間を形成し、該収納空間にミラーを収めて回転筒体の内周面に沿って付設する光ファイバーの先端受光部と対面させることを特徴とした表面検査装置を提供することにある。
【0037】
この発明によれば、回転筒体の先端部内壁面部を切削して内径を拡大し、この拡大空間をミラーの収納室とすることによってレーザ光誘導空間を通して送られて来るレーザ光はもとより、被検査体を反射して取り込まれる反射光を余すことなく光ファイバーの先端受光部に反射できる大形のミラーを装備することを可能にするもので、反射光の受け入れを効率よく行うことできることになる。
【発明の効果】
【0038】
本発明は、上述の説明において明らかな通り、その構成から、回転筒体を単体にしてその内部に複数本の光ファイバーを組入れ、更にこの光ファイバー相互間の空間によってレーザ光の誘導空間を形成する構造にして照射光と反射光を1つの回転筒体の中を通して送られるものとする一方、この回転筒体を回転させた状態にしてレーザ光の照射と反射光の受光を可能にしたことから例えば2重筒構造とした場合に発生する回転筒体の回転時に他の筒体との接触から生じる光の乱れや、回転の障害を排除することができ、高速回転を可能にする。
【0039】
また本発明によれば、回転筒体が単体であることから、筒体全体の実質外径を最小にすることが可能であり、小径な被検査体たる孔に対して対応することができると同時に、実質外径の縮減が可能であることから外径の拡大が可能な範囲で筒体の実質的肉厚を増大することができ、これによって回転筒体自体の強度を高め、高速回転に対応する表面検査装置とすることができる。
次に、本発明を実施の形態に基づき更に説明し、その特徴とするところを明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
添付する図面の図1は本発明に係る表面検査装置の一例を示す全体概略説明図で、図中の符号1は表面検査装置の本体であり、2は装置の基盤となる台座、3は台座2に垂直に起立させた支柱、4は支柱3に沿って上下に摺動する昇降装置、5はこの昇降装置5から水平に延ばされたアームであり、6はこのアーム5の先端に前記本発明表面検査装置の本体1を固定するための取付部材である。
【0041】
表面検査装置の本体1は、図2は拡大して示す如く、本体部7と被検査体8に形成される孔9(この実施形態では孔9)に先端部を挿入する回転筒体10とから構成され、大径な棒状に形成される本体部7の後端部にレーザ光を発する発振器11が装着され、本体部の中心部には先端部に向けて貫通するレーザ光を通す円形の光路空間12が形成される。
【0042】
そして、この本体部7の光路空間12の後端部にはレーザ光を集光するレンズ13が装着されると共に、光路空間12には途中から引き込まれ、内壁面に沿って付設される受光用光ファイバー14が装備される。
上記受光用光ファイバー14は、後述する回転筒体10を通して送られる反射光を受光し、判定処理装置に光信号を送り出すためのもので、本体部7を通して外部から引き込まれた複数本の光ファイバー14は光路空間12の内壁面に沿って同心円上に並び全体として筒状に配置して接着材で固めてあり、それぞれの先端部を光路空間12の先端開口部において環状に揃えて受光部14aを形成する。
【0043】
上記複数本の受光用光ファイバー14は、光路空間12の内壁面に沿って筒状に配置されることにより、光ファイバー間の中心部分に中空の空間を形成して実質的に円形となる光路空間12を形成することになる。そして、ここでは光路空間12の内壁面に受光用光ファイバー14が安定的に配置されるように内周に沿って補助管材Pを配設してこの管材の内部に実質的な光路空間12を形成するようにしてある。
【0044】
尚、この実施形態では、上記受光用光ファイバー14は複数の同心円上に沿って多層状に配置して、接着剤で固め、安定化を図るようにして光ファイバー全体の厚みを増し、環状をなす受光部14aの端面部面積を拡大して受光容量が大きくなるようにしてある。この受光容量の拡大については後述する回転筒体10の光ファイバーとの関係で詳述することにする。
【0045】
一方、前記回転筒体10は前記本体部7におけるレーザ光発振器11から発せられるレーザ光を被検査体8の孔9に送り、この孔9からの反射光を取り戻すレーザ光の誘導手段となるもので、所要長さを有する金属製のパイプ材を材料に形成してある。
この回転筒体10は孔9に挿入する関係から孔9の口径より小径な外径を有するパイプ材を選択することになるが、筒体の内周面にはレーザ光の反射光を通す光ファイバー15が、また先端部にはミラー16が装備され、軸中心部には前記発振器11からのレーザ光を通すレーザ光誘導空間17が形成される。
【0046】
上記光ファイバー15は、回転筒体10の内周面に周方向に同心円上に沿って複数本が密に配置され、且つ略全長に亘り配置されることによって全体として円筒形状をなすようになり(図4(B)を参照)、各光ファイバー15の後端15aは回転筒体10の後端開口部において環状に揃って前記受光用光ファイバー14の受光部14aに対面するようにしてある。
【0047】
一方、この光ファイバー15の各先端部15bは回転筒体10の先端部内周面を切除して拡径して形成するミラー収納空間18に同じく環状に揃って臨むようにしてある。
【0048】
図中、19は上記光ファイバー15を回転筒体10の内周面に張り付く状態で安定して固定するための円筒形をした固定部材である。この固定部材19は前記補助管材Pと同種の管材であって光ファイバー15を回転筒体10の内周面に添わせる際、その導入部材としても利用されるもので、複数本の光ファイバー15を筒体10の内周面に沿って筒状に配置したとき、光ファイバー15の内周を押えて回転筒体10との一体化を図り、安定化を図るものとなる。そして同時に、これら光ファイバー15の内側に円形の空間を確保し、回転筒体10の軸中心部に沿って全長に亘って直線状をなすレーザ光誘導空間17を形成することになる。
【0049】
ミラー収納空間18は上記レーザ光誘導空間17となる回転筒体10の内径を先端部において拡大するものであり、光ファイバー15の先端部15bと対面することのできる大型のミラー16の収納を可能にする。
【0050】
このミラー収納空間18にはミラー16の鏡面が向き合う内周面にレーザ光を通す窓20が開設し、前記レーザ光誘導空間17を通して送られる光をミラー16に反射して直角に屈折させ、この窓20を通して孔9の内壁面に照射し、またその反射光を受け入れて光ファイバー15の先端部15bの受光部に戻すことができるようにしてある。
【0051】
図中、21は上記回転筒体10の基端部(後端部)外周面に前後間隔を置いて配置する軸受部22、22を介して装着した回転駆動装置たる中空モータであり、23はこの中空モータ21を介して前記本体部7に回転筒体10を連結する連結手段たる連結腕である。
上記中空モータ21は回転筒体10の基端部を被い包む如く装着されて本体部7の先端部外周面に設ける鍔状の取付部24から延設される上記連結腕23を中空モータ21の外周面に受けて固定してあり、回転駆動時には、前記軸受部22、22を支持手段にして回転筒体10を回転する。
【0052】
この連結腕23による本体部7と回転筒体10の連結は、両者の中心軸が一線上に一致するように連結すると同時に、本体部の光路空間12の先端部と回転筒体10のレーザ光誘導空間17の後端部とが直接接触しない範囲の接近した状態で対設するように連結することになる。
【0053】
図3は、この本体部7と回転筒体10との対設した状態を拡大して示したものである。この向き合わせによって光路空間12とレーザ光誘導空間17は共に軸心を揃えると同時に、両空間12、17のそれぞれに配置した受光用光ファイバー14の受光部14aと光ファイバー15の後端部15aとが近接して向き合うことになる。
【0054】
上記光ファイバー14、15の端部14a、15b相互の向き合せは、共に環状に配置される端部同士の向き合せとなるもので、前述したように受光用光ファイバー14は多層状に光ファイバーを配置して受光端部14aにおける面積を光ファイバー15側の後端部15aより拡大したものとすることから、この後端部15aから送られて両者間の狭い空隙25を渡る反射レーザ光は、効率的に受光用光ファイバー14へと受け取られ、判定処理装置26へと送られることになる。
【0055】
上記判定処理装置26は、被検査体8の孔9の内壁面に照射してこれより反射してくる反射レーザ光を電気信号に変換する光電変換器27、この光電変換器27から送られる電気信号を解析処理し、孔9の表面の状態を判定する処理部28、判定の結果を画像として表示する表示部29、更に判定終了と共に次の判定のため他の孔9に向けて昇降装置4、そして中空モータ21を制御操作する制御装置30等を以て構成されている。
【0056】
本発明装置は、上述の如く構成されるもので、次に操作の手順に従って更に説明することにする。
孔9の検査作業に当っては、中空モータ21を駆動して回転筒体10を高速回転状態に保持しておくことになる。この状態において、台座2上に置く被検査体8の孔9の直上に回転筒体10を垂直姿勢の状態でセットし、次に制御装置30の指示によって昇降装置4を作動させ、回転筒体10の先端部を孔9の内部に降下侵入させる。
【0057】
この降下操作時にはレーザ光発振器11から光路空間12に向けてレーザ光を発射しておくことになる。
上記光路空間12に向けて発射されたレーザ光は、軸心を共通にする回転筒体10のレーザ光誘導空間17に侵入し、その先端に配置されるミラー16に達し、反射されて窓20を通して孔9の内周壁面9aに照射される。そして、孔9の内周壁面9aから反射された反射レーザ光は、再びミラー16に反射して直角に屈折したのち、ミラー収納空間18に臨む光ファイバー15の先端部受光部15bに受けられ、光ファイバー15を通して回転筒体10を抜けたのちその後端部15aからこれに対面する受光用光ファイバー14の受光部14aに空隙25を渡って受けられ、受光用光ファイバー14を通してこれに接続する判定処理装置26へと光信号の状態で送られることになる。
【0058】
上記レーザ光の発射、そして反射レーザ光を判定処理装置26に受ける間、中空モータ21は高速回転を続けて孔9に侵入する回転筒体10を回転させることになる。従って、レーザ光誘導空間17を通した光は、回転筒体15と共に回転するミラー16に従って、同じく回転する窓20を通して照射方向を孔9の周方向に回転移動することになり、これと同時に昇降装置4の操作で回転筒体10を上下動させると、孔9の内壁面の全面に亘ってレーザ光を連続して照射することができる。そのため、この反射レーザ光を連続して判定処理装置26で受信することが可能になる。
【0059】
このとき、反射レーザ光を戻す光ファイバー15はミラー16と共に回転筒体10の回転に伴って高速回転することになるが、回転筒体10の内周面に沿って環状に複数本が連続した状態で配置され円筒状に形成され、また本体部7の光路空間12の内周面に配置される受光用光ファイバー14も同じく円筒状に構成されると共に、前記受光端部14aと前記光ファイバー15の後端部15aとが接近させて向き合う関係に置かれることから、回転する側の光ファイバー15から非回転側の受光用光ファイバー14に向けて送られる反射レーザ光は円滑に且つ安定的に充分な光量が届けられることになる。
【0060】
尚、このとき、前述したように受光側の受光用光ファイバー14を多層状に形成して受光端部14aの面積を拡張させておけば、反射レーザ光の受光量を増幅することができるため更に光ファイバー14、15相互が直接接続している場合と遜色のない、つまり判定材料として不足のない反射レーザ光を安定的に伝達することができることになる。
【0061】
本発明表面検査装置は、上述の構成から孔9の内壁面の全面を連続して検査できると共に、孔9の内部に挿入する回転筒体10を単体にしてその内部に反射光を通す光ファイバー15を一体に配置し、且つ同時にこの光ファイバー15によって囲まれる軸心の中空部を利用してレーザ光誘導空間17とすることにより、照射光及び反射光の両者を分離し、これによって正確に誘導できる構造にして全で1本の回転筒体10の中に格納する構造にしていることからその実質的外径を最小径にすることを可能にしている。
【0062】
ことに、前述した特許文献1、2の場合の如く照射光と反射光の誘導を分離して行うため筒体を内外2重の筒体にして光路を振り分けるようにした場合、内筒の挿入のため外筒が拡大し、これに伴って実質的外径の縮小化が困難であったが、本発明装置は筒体となる回転筒体10が単体になることによってこの単体の中で軸中心部のレーザ光誘導空間17を確保し、また光ファイバー15を配置するスペースを確保することで、内筒の挿入スペースや、内外筒間の空隙を確保するといった必要がなくなるため最小の外径形状のパイプ材によって回転筒体10を形成することが可能となる。
【0063】
そして、上記回転筒体10の単体化によって小径化が可能になることに伴って、被検査体との関係から外径に余欲が生ずることになり、その結果回転筒体10の肉厚を拡張することが可能になり、小径化した上で回転筒体の強度を高めることができることにもなる。
【0064】
この回転筒体10の実質的外径の小径化と、強度の強化は、表面検査装置として例えば、部材相互の組立において利用される小径なねじ孔を検査する場合等において最も求められる要素の1つであって、小径である回転筒体は孔に対する挿入が容易になると同時に、迅速に出入りができることになり、また強度の強化は高速回転時の先端の振れを止める上で特に効果を挙げることになる。
【0065】
被検査体4となる製品、例えば自動車のエンジンの生産ラインにおいて連続して流されるエンジンの組立用ねじ孔の表面検査におけるように、ラインの流れに合せて多数個のねじ孔を検査する場合は、回転筒体10がこの孔9に適合した小径なものであることに加えて高速回転に耐えるものでなくてはらないが、本発明装置の回転筒体10はこれに耐えるものであり、正確且つ迅速な検査を可能にする。
【0066】
ところで、この実施の形態において、被検査体8とする自動車エンジンに組立用のねじ孔として口径8mmの孔9を形成したものに対して、その内壁表面の検査のため回転筒体10として外径が6mm、肉厚が2mmであって100mm長さのスチール製パイプ材を以て形成したところ、毎分12,000回転の運転に耐える表面検査装置を得ることができた。
【0067】
尚、同一条件の被検査体に対して、反射レーザ光を誘導する光ファイバーを配設した固定の内筒に先端にミラーを備えた回転外筒を被せて2重筒構造とした回転筒体を使用した表面検査装置において実施したところでは、上記回転外筒の回転は毎分7,000回転が限界であり、これを超えての回転では回転筒体のブレが発生し表面検査に利用できる安定した被検査体からの反射光を得ることができなかった。
【0068】
以上説明の様に、本発明の表面検査装置によれば、数mm単位の小径な孔、例えばねじ孔等の内部表面の検査に対応した検査装置とすることができると同時に、回転筒体を高速回転に対応できるものとしたことから迅速且つ正確に検査できる高速型の表面検査装置とすることができることになり、例えば、製造ラインにおいて多数の小径な孔内部を検査する場合にラインを遅らせることなく的確な検査を実行できるといった利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る表面検査装置の使用の実際を説明する概略図である。
【図2】要部の一部欠載した拡大縦断断面図である。
【図3】図2のイ部の拡大図である。
【図4】図(A)は図3のA−A線端面図、図(B)は図3のB−B線端面図である。
【図5】回転筒体の先端部を被検査体の孔内部に挿入した状態を説明する拡大縦断断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1 本発明に係る表面検査装置の本体
7 本体部
8 被検査体
9 被検査体に形成される孔
10 回転筒体
11 レーザ光発振器
12 光路空間
14 受光用光ファイバー
14a 受光用光ファイバーの受光部
15 光ファイバー
15a 光ファイバーの後端部
15b 光ファイバーの先端受光部
16 ミラー
17 レーザ光誘導空間
18 ミラー収納空間
19 光ファイバーの固定部材
20 窓
21 回転駆動装置たる中空モータ
23 連結手段たる連結腕
26 判定処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発振器及びレーザ発振器からのレーザ光を誘導する光路空間を先端部に向けて有する本体部と、本体部の先端部に前記光路空間の延長線上に沿って回転自由に装着される回転筒体とからなり、前記回転筒体には内周面の全周に亘り同心円上に沿わせ、且つ長さの略全長に亘って複数本の光ファイバーを筒状に付設してその中心部に前記光路空間と連通するレーザ光誘導空間を同時に形成する一方、該回転筒体の先端部に前記レーザ光誘導空間を通して送られるレーザ光を被検査体表面に照射し、反射レーザ光を前記光ファイバー先端の受光部に送るミラーを装備し、他方前記本体部の光路空間の内壁面には受光用光ファイバーを同心円上に沿って多数本筒状に配置してその先端部を前記回転筒体側の前記光ファイバーの基端部に近接して臨ませ、該回転筒体側の光ファイバーからの反射レーザ光を受光用光ファイバーに受光させて前記本体部側に装備する判定処理装置に光送信するように構成したことを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
回転筒体の内周面に沿って筒状に付設される多数本の光ファイバーの内側に筒状の固定部材を密着した状態で添わせ、該光ファイバーを回転筒体の内周面との間に固定することを特徴とした請求項1に記載の表面検査装置。
【請求項3】
筒状固定部材と光ファイバーとの間に接着剤を介挿して筒状固定部材の外周面と回転筒体の内周面との間に光ファイバーを安定的に固着することを特徴とした請求項2に記載の表面検査装置。
【請求項4】
本体部の先端部に連結手段を装備し、該連結手段を介して回転筒体を回転自由に連結支持すると共に、光路空間とレーザ光誘導空間、及び光ファイバーの基端部と受光用光ファイバーの先端部のそれぞれを直線上に配置することを特徴とした請求項1ないし3のいずれかに記載の表面検査装置。
【請求項5】
回転筒体の外周面部に回転駆動装置を装着し、該回転駆動装置を本体部に連結手段を介して支持させることを特徴とした請求項1ないし4のいずれかに記載の表面検査装置。
【請求項6】
本体部の光路空間の内壁面には多層に描かれる複数の同心円上に沿って多数本の受光用光ファイバーをそれぞれ配置して複数層の受光用光ファイバー群を形成することを特徴とした請求項1ないし5のいずれかに記載の表面検査装置。
【請求項7】
回転筒体は先端部の内壁面部を切除して実質的内径を拡大するミラー収納空間を形成し、該収納空間にミラーを収めて回転筒体の内周面に沿って付設する光ファイバーの先端受光部と対面させることを特徴とした請求項1ないし6のいずれかに記載の表面検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−85332(P2010−85332A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256865(P2008−256865)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(591224744)シグマ株式会社 (22)
【Fターム(参考)】