説明

表面粗さの低い触媒上で塩化水素を酸化する方法

【課題】ニッケルを含むスチール製反応器内で運転される流動床触媒がディーコン反応中に反応器の腐食と侵食のためNiClを生成する。この侵食が進むと流動床反応器の寿命が短かくなるという欠点を克服すること。
【解決手段】上記課題は、平均粒度が10〜200μmのα−酸化アルミニウムを含む粒子状支持体上にルテニウムを含有する触媒の存在下で、流動床プロセスにより塩化水素を酸素で触媒酸化して塩素を得る方法であって、触媒支持体が、低い表面粗さを有し、且つ流動床プロセスで少なくとも500時間の運転に使用された使用済触媒から得られるものであることを特徴とする方法により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面粗さの低い粒子状支持体上に担持されているルテニウム含有触媒上で塩化水素を接触酸化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1868年にディーコンにより開発された塩化水素の触媒酸化方法では、発熱性の平衡反応で塩化水素が酸素により塩素に酸化される。塩化水素の塩素への変換により、塩素の製造がクロルアルカリ電気分解による水酸化ナトリウムの製造から切り離されることとなった。塩素の世界需要が水酸化ナトリウムへの需要より早く増加していることから、この製造の分離には魅力がある。また、塩化水素は、例えばイソシアネートの製造の際に、例えばホスゲン化反応で副生成物として多量に得られる。
【0003】
EP−A0743277には、塩化水素の触媒酸化で塩素を製造する方法で、ルテニウム含有担持触媒が用いられているものが開示されている。ここでは、ルテニウムは、塩化ルテニウムの形で、オキシ塩化ルテニウム、クロロルテニウム酸錯体、水酸化ルテニウム、ルテニウムアミン錯体または他のルテニウム錯体の形で支持体に添加される。この触媒は、パラジウムや銅、クロム、バナジウム、マンガン、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類を他の金属として含むことができる。
【0004】
GB1,046,313によると、酸化アルミニウム上に担持されたルテニウム(III)塩化物が塩化水素の触媒酸化プロセスにおける触媒として用いられている。
【0005】
DE102005040286A1には、塩化水素酸化用の機械的に安定な触媒で、支持体であるα−酸化アルミニウム上に、
a)0.001〜10質量%のルテニウム、銅及び/又は金と、
b)0〜5質量%の一種以上のアルカリ土類金属と、
c)0〜5質量%の一種以上のアルカリ金属と、
d)0〜10質量%の一種以上の希土類と、
e)0〜10質量%の、パラジウムと白金、オスミウム、イリジウム、銀、レニウムからなる群から選ばれる一種以上の他の金属を含むものが開示されている。
【0006】
ドーピングに好適な促進剤としては、リチウムやナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどのアルカリ金属(好ましくはリチウムとナトリウム、カリウム、特に好ましくはカリウム)、マグネシウムやカルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属(好ましくはマグネシウムやカルシウム、特に好ましくはマグネシウム)、スカンジウムやイットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジミウムなどの希土類(好ましくは、スカンジウムやイットリウム、ランタン、セリウム、特に好ましくはランタンやセリウム)、またはこれらの混合物、さらにはチタンやマンガン、モリブデン、スズがあげられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP−A0743277
【特許文献2】GB1,046,313
【特許文献3】DE102005040286A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ニッケルを含むスチール製反応器(例えばHC4、インコネル600等)内で運転される流動床触媒は、ディーコン反応中に反応器の腐食と侵食のためNiClを生成する。侵食が進むとこの流動床反応器の寿命が短かくなる。
【0009】
本発明の目的は、上記の欠点を克服することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本目的は、平均粒度が10〜200μmのα−酸化アルミニウムを含む粒子状支持体上にルテニウムを含有する触媒の存在下で、流動床プロセスにより塩化水素を酸素で触媒酸化して塩素を得る方法であって、触媒支持体が、低い表面粗さを有し、且つ流動床プロセスで少なくとも500時間の運転に使用された使用済触媒から得られることを特徴とする方法により達成される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、新鮮な触媒の写真である。
【図2】図2は、675時間運転後の触媒の写真である。
【図3】図3は、7175時間運転後の触媒の写真である。
【図4】図4は、9485時間運転後の触媒の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
使用済流動床触媒から回収されたα−酸化アルミニウム支持体粒子からなる流動床触媒を使用すると、もしそれが流動床プロセス中で少なくとも500時間の運転に使用されたものである場合は、流動床反応器の壁面材料の剥離が大きく減少することとなることが明らかとなった。この使用済流動床触媒は、流動床プロセス中で少なくとも1000時間運転に使用されたものであることが好ましい。
【0013】
この触媒支持体の、平均径(d50)は、好ましくは30〜100であり、特に好ましくは40〜80である。
【0014】
一般に、本発明の方法で用いる流動床反応器は、ニッケル含有材料製の反応器である。このニッケル含量は少なくとも10質量%であることが好ましい。また、このニッケル含有材料は、一種以上の他の金属を、例えば鉄とモリブデン、クロム、チタンから選ばれる金属を合金成分として含むことができる。ニッケル含有材料の例としては、HC4(2.4810NiCr15Fe)やインコネル600(NiMo16Cr16Ti)があげられる。
【0015】
この流動床は、一般的には、流動開始点(即ち、流動化の始まる点)でのガス速度の3〜500倍、好ましくは10〜200倍、特に好ましくは30〜100倍のガス速度で運転される。
【0016】
本発明で用いられる粉末状の触媒支持体は、好ましくはα−酸化アルミニウムを支持体として含み、ディーコンプロセス中で使用された使用済ルテニウム含有触媒から、適当なら他の支持体材料との混合物として得られる。一般にこの支持体は実質的にα−酸化アルミニウムからなるが、他の支持体材料、例えばグラファイトや二酸化ケイ素、二酸化チタン及び/又は二酸化ジルコニウムを、好ましくは二酸化チタン及び/又は二酸化ジルコニウムを含むことができる。
【0017】
本発明で用いられる支持体は、酸化ルテニウムを含む使用済触媒から、
a)酸化ルテニウムを含む触媒を、塩化水素と適当なら不活性ガスを含むガス流中で300〜500℃の温度で還元し、
b)酸素含有ガスの存在下で工程a)からの還元触媒を塩酸で処理して、
支持体上に存在する金属ルテニウムを塩化ルテニウムとして溶解して
塩化ルテニウム水溶液として分離して、
または
a)酸化ルテニウム含有触媒を、水素と適当なら不活性ガスを含むガス流中で150〜600℃の温度で還元し、
b)酸素含有ガスの存在下で工程a)からの還元触媒を塩酸で処理して、
支持体上に存在する金属ルテニウムを塩化ルテニウムとして溶解して塩化ルテニウム水溶液として分離して、得ることができる。
【0018】
この塩化ルテニウム溶液は、適当なら濃縮後に、新鮮な触媒の製造に用いることができる。
【0019】
本発明で用いられる触媒は、使用支持体材料に金属塩の水溶液を含浸させて得られる。これらの金属は、通常その塩化物、オキシ塩化物または酸化物の水溶液として支持体に塗布される。
【0020】
金属塩の析出前のα−酸化アルミニウム支持体の比表面積は、一般的に0.1〜10m/gの範囲である。α−酸化アルミニウムは、γ−酸化アルミニウムを1000℃を超える温度で加熱して製造でき、またこの方法で製造することが好ましい。通常これを2〜24時間熱処理する。
【0021】
本発明で用いられる触媒は、ルテニウムに加えて他の金属を促進剤として含むことができる。これらは、通常触媒中に触媒の質量に対して最大で10質量%の量で含まれる。
【0022】
ある好ましい実施様態においては、本発明で用いられる触媒が、ルテニウムに加えてニッケルを含む。ニッケルでドープされたルテニウム含有触媒がニッケルを含まない触媒より大きな活性を示すことが明らかとなった。この活性の増加は、塩化ニッケルによる促進性と、塩化ニッケルでよる触媒表面上での活性成分の分散の改善に帰するものと考えられる。したがって、ルテニウムは、本発明の触媒上に、大きさが<7nmのRuO微結晶として、新鮮状態または再生状態で存在する。この微結晶の大きさは、XRD測定におけるこの種による反射の半値幅として求められる。
【0023】
この塩化水素の触媒酸化用のルテニウム含有触媒は、さらにパラジウムと白金、イリジウム、銀から選ばれる一種以上の貴金属の化合物を含むことができる。これらの触媒はさらにレニウムを含む。これらの触媒は、また一種以上の他の金属でドープされていてもよい。ドーピング用促進剤として好適な金属としては、リチウムやナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどのアルカリ金属(好ましくはリチウムやナトリウム、カリウム、特に好ましくはカリウム)、マグネシウムやカルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属(好ましくは、マグネシウム)、スカンジウムやイットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジミウムなどの希土類(好ましくはスカンジウムやイットリウム、ランタン、セリウム、特に好ましくはランタンとセリウム)、またはこれらの混合物やチタンがあげられる。
【0024】
この塩化水素の酸化に好ましい触媒は、触媒の総質量に対して
a)0.1〜10質量%のルテニウムと、
b)0〜10質量%のニッケルと、
c)0〜5質量%の一種以上のアルカリ土類金属と、
d)0〜5質量%の一種以上のアルカリ金属と、
e)0〜5質量%の一種以上の希土類と、
f)0〜5質量%の、パラジウムと白金、イリジウム、銀、レニウムからなる群から選ばれる一種以上の他の金属とを含んでいる。
【0025】
これら金属は一般的には酸化物または塩化物の形で支持体上に存在しているが、この質量%は、金属の質量による値である。
【0026】
一般にルテニウムに加えて存在する他の金属c)〜f)と適当ならニッケルの総量は5質量%以下である。
【0027】
本発明で用いられる触媒が触媒質量に対して0.5〜5質量%のルテニウムと0.5〜5質量%のニッケルを含むことが極めて好ましい。ある特定の実施様態においては、本発明で用いられる触媒は、支持体のα−酸化アルミニウム上に、約1〜3質量%のルテニウムと1〜3.5質量%のニッケルを含み、他の活性金属または促進剤金属を含まず、ルテニウムはRuOとして存在する。
【0028】
この担持ルテニウム触媒は、例えば支持体材料にRuCl水溶液と、適当ならNiClと他のドープ用促進剤を、好ましくはこれらの塩化物の形で含浸させて得ることができる。この粉末を次いで乾燥し、適当なら100〜500℃の温度で、好ましくは100〜300℃の温度で、例えば窒素、アルゴンまたは空気雰囲気下で熱処理することができる。この粉末は、まず100〜150℃で焼成し、次いで200〜500℃で焼成することが好ましい。
【0029】
触媒の失活後、この持体を回収して担持ルテニウム触媒の製造に再利用することができる。
【0030】
塩化水素の酸化を行うために、塩化水素含有流と酸素含有流とを流動床反応器に供給し、触媒の存在下で塩化水素を部分的に塩素に酸化し、塩素と未反応の酸素と未反応の塩化水素と水蒸気とを含む生成物ガス流を得る。イソシアネート製造プラントから出る塩化水素流は、ホスゲンや一酸化炭素などの不純物を含むことがある。
【0031】
通常の反応温度は150〜500℃の範囲であり、通常の反応圧力は1〜25barの範囲、例えば4barである。この反応温度は、好ましくは>300℃であり、特に好ましくは350℃〜420℃の範囲である。酸素を過剰量で使用することも有利である。例えば1.5倍〜4倍過剰の酸素がよく使われる。選択性の低下の心配が無いため、比較的高圧で、従って大気圧におけるより長い滞留時間で実施することが経済的に有利である。
【0032】
この触媒流動床は、触媒に加えて不活性材料を、好ましくは他の不活性支持体材料の形で含むことができる。この不活性材料もまた、流動床プロセス中で少なくとも500時間の運転に使用されて表面粗さの低くなった使用済触媒材料である。不活性材料は、触媒と不活性材料の総量に対して0〜90質量%の量で、好ましくは10〜50質量%の量で使用できる。
【0033】
一回の通過による塩化水素の変換率を、15〜90%に、好ましくは40〜85%に制限できる。未反応の塩化水素は、分離後に、部分的にあるいは全量を塩化水素の触媒酸化に再循環できる。反応器供給口での塩化水素の酸素対する体積比は、一般的には1:1〜20:1の範囲であり、好ましくは1.5:1〜8:1、特に好ましくは1.5:1〜5:1の範囲である。
【0034】
次いで生成する塩素を、塩化水素の触媒酸化で得られる生成物ガスから通常の方法で分離することができる。この分離は、通常複数の段階からなり、即ち、塩化水素の触媒酸化で得られる生成物ガス流からの未反応塩化水素の分離と、適当ならその塩化水素の再循環と、得られる実質的に塩素と酸素からなる残存ガス流の乾燥と、この乾燥流からの塩素の分離とからなっている。
【0035】
本発明で用いられるルテニウム含有塩化水素酸化触媒は、塩化水素の酸化プロセス中で少なくとも500時間の運転に使用された使用済流動床触媒を再生して得ることもできる。この触媒は、例えば:
a)塩化水素と適当なら不活性ガスとを含むガス流中で300〜500℃の温度で触媒を還元し、
b)この触媒を酸素含有ガス流中で200〜450℃の温度で再焼成して再生できる。
【0036】
RuOが塩化水素で還元されることがあることがわかった。この還元は、RuClを経由して元素状ルテニウムに至ると考えられる。したがって、部分的に失活した酸化ルテニウム含有触媒を塩化水素で処理すると、十分に長い処理時間後には酸化ルテニウムは定量的にルテニウムに還元されると考えられる。この還元の結果、RuO微結晶が破壊され、このルテニウムは、元素状ルテニウム、塩化ルテニウムと元素状ルテニウムの混合物、あるいは塩化ルテニウムとして、支持体上に再分散される。還元後にこのルテニウムを、酸素含有ガス、例えば空気で触媒活性なRuOに再酸化できる。このようにして得られる触媒も、新鮮触媒に近い活性をもつことがわかった。本プロセスの利点は、この触媒が反応器中のその場で再生可能であり、反応器から分離する必要が無いことである。再生触媒は、運転時間に比例して低下した表面粗さを有する。
【0037】
以下、本発明を実施例で説明する。
【実施例】
【0038】
実施例1
支持体(α−Al粉末、d50=50μm)にRuCl水溶液を含浸させ、これを乾燥し、300〜450℃で0.5〜5.0時間焼成して、新鮮な触媒を生産する。
【0039】
この新鮮な触媒は、非常に粗い表面を持ち、このため流動床プロセス中で反応器を大きく磨耗させる。200標準l・h−1のHClと100標準l・h−1のOを用いて400℃で、流動床直径が44mmで高さが990mm、床の高さが300〜350mmの反応器中で600gの触媒を運転する。触媒は平均径が50ミクロン(d50)の粉末の形で存在している。塩化水素変換率として61%が得られる。この触媒を360〜380℃で運転する。
【0040】
図1は新鮮な触媒の写真である。
図2は675時間運転後の触媒の写真である。
図3は7175時間運転後の触媒の写真である。
図4は9485時間運転後の触媒の写真である。
【0041】
この新鮮な触媒は粗い表面をもち、そのため反応器壁面の平均侵食速度は0.30mm/年となる。675時間後には触媒表面がやや丸みを帯び、このため侵食速度が0.28mm/年と少し低下する。7175時間後には触媒が丸くなり、侵食速度が0.04mm/年にまで低下する。最終的に、9485時間後には、触媒表面が平滑となりこの侵食速度が実質的にゼロとなる。
【0042】
この支持体を再利用すると、最初から反応器壁面の侵食が実質的にない新鮮な触媒を製造でき、反応器寿命を大幅に伸ばすことができる。
【0043】
実施例2
585gの使用済の失活流動床触媒で、α−Al(平均径(d50):50μm)上に2質量%のRuOと、ニッケル含有反応器の腐食と侵食の結果として2.5質量%の塩化ニッケルを含むものを、実施例1の流動床反応器中で100標準l/hのガス状のHClを用いて430℃で70時間処理する。2500mLのガラス反応器中で強く攪拌しながら、このようにして得られる還元触媒を、100℃で、2000mLの20%濃度のHCl溶液で96時間処理する。全期間に渡り、20標準l/hの空気を投入する。RuとNiを含有する上澄液を固体(支持体)から濾過で分離し、濾塊を500mLの水で洗浄する。集めた水相は、ルテニウムとニッケルをそれぞれを>98%で含む。この溶液の一部を蒸発させて18mLとして、4.2質量%のルテニウムと7.0質量%のニッケルを含む溶液を得る。
【0044】
実施例3
実施例1に記載の流動床反応器中で9485時間運転して得られた200gの失活した流動床触媒を、実施例2に記載の再利用プロセスにかけて支持体を回収する。回転するガラスフラスコ中で、このようにして得られる丸みを帯びた支持体50gに、噴霧法で18mLのRuCl水溶液(Ru含量=4.2質量%)を含浸させ、得られる固体を120℃で16時間乾燥させる。この乾燥材料を大気下380℃で1時間焼成する。このようにして得られるRuO含有触媒は、OによるHClの触媒酸化に再利用できる。
【0045】
2gのこの触媒を118gのα−Alと混合し、流動床反応器(d=29mm;流動床の高さ:20〜25cm)中360℃で、9.0標準l/hのHClと4.5標準l/hのOを下からガラスフリットを経由して混合物中を通過させ、得られるガス流をヨウ化カリウム溶液に通過させ、次いで生成するヨウ素をチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定してHCl変換率を求める。HCl変換率は37.7%であった。
【0046】
実施例4
直径が108mmで高さが4〜4.5m、床の高さが2.5〜3mである流動床反応器中で、400℃で10.5kg・h−1のHClと4.6kg・h−1のOと0.9kg・h−1のNを用いて、21kgの実施例2の使用済触媒(2.5質量%の塩化ニッケルを含むα−Al担持RuO)を運転する。この触媒は、平均径が50ミクロン(d50)の粉末状で存在する。得られるHClの変換率は77%である。次いで酸素の供給を停止し(20時間、400℃)、10.0kg・h−1のHClで置換する。20時間後、この触媒を、2.0kg・h−1のOと8.0kg・h−1のN下で400℃で30分間再焼成して再活性化させる。この処理後、この触媒の、10.5kg・h−1のHClと4.6kg・h−1のOと0.9kg・h−1のfNを用いる場合の400℃でのHCl変換率は84%である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒度が10〜200μmのα−酸化アルミニウムを含む粒子状支持体上にルテニウムを含有する触媒の存在下で、流動床プロセスにより塩化水素を酸素で触媒酸化して塩素を得る方法であって、
触媒支持体が、低い表面粗さを有し、且つ流動床プロセスで少なくとも500時間の運転に使用された使用済触媒から得られることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記粒子状支持体が、実質的にα−酸化アルミニウムからなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒が、
a)0.1〜10質量%のルテニウム、
b)0〜10質量%のニッケル、
c)0〜5質量%の一種以上のアルカリ土類金属、
d)0〜5質量%の一種以上のアルカリ金属、
e)0〜5質量%の一種以上の希土類、
f)0〜5質量%の、パラジウム、白金、イリジウム、銀及びレニウムからなる群から選択される一種以上のさらなる金属
を含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒支持体が、酸化ルテニウムを含む使用済み触媒から、
a)当該酸化ルテニウムを含む触媒を塩化水素及び適宜に不活性ガスを含むガス流中で300〜500℃の温度で還元するか、又は当該触媒を水素及び適宜に不活性ガスを含むガス流中で150〜600℃の温度で還元する工程;
b)工程a)からの還元触媒を酸素含有ガスの存在下で塩酸で処理することにより、前記支持体上に存在する金属ルテニウムを塩化ルテニウムとして溶解し、且つ塩化ルテニウム水溶液として分離する工程
により得られる請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒が、ルテニウムと適宜に一種以上の更なる促進剤金属とを含む一種以上の金属塩溶液での前記支持体の含浸、及び当該含浸支持体の乾燥及び焼成により得られる請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−529415(P2012−529415A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514427(P2012−514427)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057814
【国際公開番号】WO2010/142604
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】