説明

袋内の粉体の吸引取出方法および装置

【課題】袋内に差し込んだ吸引ノズルにより粉体を吸引し取り出すときに、吸引ノズルの吸引口に袋が吸着し粉体を取り出すことができなくなる問題を容易に防止することができ吸引による良好な粉体の取り出しを確保できる、粉体の吸引取出方法および装置を提供する。
【解決手段】粉体を吸引する吸引空気量を、袋内の粉体の残量が所定の量より少なくなったときに減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋内の粉体を吸引ノズルによって吸引し取り出すときに、ノズルの吸引口に袋が吸着し粉体を効率よく取り出すことができない問題を解決する、粉体の吸引取出方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に袋に封入された粉体を取り出すには、袋の上部を開口し上下を反転させ粉体を下方に落下させることによって行なわれる。しかしながらこの方法においては、袋の外側の汚れ・ほこりなどの異物が粉体に混入する、また粉塵が発生する、などの問題がある。
【0003】
そこで袋を反転させることなく粉体を取り出す方法として、開口から差し込んだ吸引ノズルによって粉体を吸引し取り出す方法が用いられている。この方法はしかしながら、特に紙袋にポリエチレンのような樹脂製の袋を内挿した袋において、樹脂袋がノズルの吸引口に吸着し粉体の吸引を妨げてしまう問題がある。
【0004】
この吸着の問題を解決するために、吸引ノズルの吸引口の周りに圧縮空気の噴射ノズルを備え圧縮空気の噴射によって袋の縮みを防止する方法が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−254942号公報(第7図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したとおりの吸引による袋内の粉体の取り出しには、次のとおりの改善の望まれている問題がある。
【0006】
すなわち、袋内の粉体を迅速に取り出せるように吸引ノズルの吸引空気量はできるだけ多く設定される。一方、吸引口に袋が吸着しないようにするための噴射ノズルの噴射空気量を多くすると、袋内の粉体が吹き飛ばされ粉塵が発生する。したがって、噴射空気量を大きくするには限界があるので、吸引空気によって袋が吸引口に吸着され、吸引口が部分的に塞がれ、良好な吸引が妨げられてしまうことがある。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、袋内に差し込んだ吸引ノズルによって粉体を吸引し取り出すときに、吸引ノズルの吸引口に袋が吸着し粉体を取り出すことができなくなる問題を容易に防止することができ、吸引による良好な粉体の取り出しを確保することができる、粉体の吸引取出方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は鋭意検討および実験を重ねた結果、袋内の粉体を吸引ノズルによって吸引し取り出すときに、袋内の粉体の量が比較的多いときには吸引口に袋は吸引されにくく粉体を迅速に取り出すことができること、また粉体の残量が少なくなると袋が吸引口に吸着されやすい状態になるが吸引空気量を少なくすると袋の吸着を防止でき粉体を良好に吸引できること、を確認した。
【0009】
すなわち本発明によれば、上記技術的課題を解決するために、上方が開口された袋の中に開口を通し吸引ノズルを下降させ袋内の粉体を吸引し取り出す粉体の吸引取出方法において、袋内の粉体の残量が所定の量より少なくなったときに、粉体を吸引する吸引空気量を減少させる、ことを特徴とする袋内の粉体の吸引取出方法が提供される。
【0010】
好適には、粉体の残量が少なくなったときにはさらに、吸引ノズルの吸引口の近傍から吸引口の周辺の外方に向けて圧力空気を噴出する。そして、粉体の残量は、袋の底から吸引ノズルの吸引口までの距離によって規定される。
【0011】
また、本発明によれば上記技術的課題を解決するために、上方が開口された袋の中に開口を通し吸引ノズルを下降させ袋内の粉体を吸引し取り出す粉体の吸引取出装置において、袋内の粉体の残量を検出する残量検出手段と、粉体を吸引する吸引空気量を断続および調整を可能に供給する吸引空気源と、制御手段とを備え、残量検出手段によって粉体の残量が所定の量より少なくなったことが検出されたときには制御手段によって吸引空気源の吸引空気量を減少させる、ことを特徴とする粉体の吸引取出装置が提供される。
【0012】
好適には、吸引ノズルの吸引口の周辺の外方に向けて圧力空気を噴出する吸引ノズルに設置された複数個の噴射ノズルと、噴射ノズルに圧力空気を断続可能に供給する圧力空気源とを備え、残量検出手段の信号により粉体の残量が所定の量より少なくなったことが検出されたときにはさらに、制御手段によって圧力空気源の圧力空気を噴射ノズルから噴射させる。さらに、残量検出手段は、吸引ノズルの昇降位置を検出するノズル位置検出手段を備え、粉体の残量の少なくなったことが、袋の底から吸引ノズルの吸引口までの所定の距離によってノズル位置検出手段により検出される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に従って構成された袋内の粉体の吸引取出方法および装置によれば、袋内の粉体量が多いときには吸引空気量を多くして粉体を迅速に取り出すことができ、粉体量が少なくなったときには吸引空気量を減少させて吸引口に袋が吸着するのを防止できる。したがって、吸引ノズルの吸引口に袋が吸着し粉体を取り出すことができなくなる問題を容易に確実に防止でき、良好な吸引による粉体の取り出しを確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に従って構成された袋内の粉体の吸引取出方法および装置について、好適実施形態を図示している添付図面を参照して、さらに詳細に説明する。
【0015】
粉体の吸引取出装置の構成説明図である図1を参照して説明する。全体を番号2で示す吸引取出装置は、粉体Pが収容され上方が開口された袋4の中に開口を通し昇降される上下に伸びた吸引ノズル6と、袋4内の粉体の残量を検出する残量検出手段としてのノズル6の昇降位置を検出するノズル位置検出手段8と、粉体Pを吸引する吸引空気量を断続および調整可能に供給する吸引空気源10と、ノズル位置検出手段8の信号により吸引空気源10の作動を制御する制御手段12を備えている。
【0016】
吸引取出装置2はまた、圧力空気を断続可能に供給する圧力空気源14と、吸引ノズル6の下端の吸引口7の周辺の外方に向けてこの圧力空気を噴出する吸引ノズル6に設置された複数個の噴射ノズル16を備えている。圧力空気源14の作動は上記制御手段12によって制御される。
【0017】
粉体Pを収容する袋4は、その典型例であるクラフト紙で作られた袋体4aと、袋体4aに内挿されたポリエチレン製の樹脂袋4bを有している。袋4は粉体取出し時の姿勢を安定させるために、開口を上方に位置付けて保持する枠体容器状の治具(図示していない)内に収められている。
【0018】
図1とともに図2、主として図2を参照して吸引ノズル6および噴射ノズル16について説明する。吸引ノズル6および噴射ノズル16は、ステンレスの鋼管、鋼材などを適宜に成形、接合して形成されている。
【0019】
吸引ノズル6は、円管により形成された管体18と、管体18の下端の吸引口7の部分に取り付けられた吸着防止ガイド20を備えている。管体18は上下方向略中央から下部分を扁平の楕円管状に成形され、吸引口7は扁平楕円状に形成されている。上端の円形の開口端に吸引空気源10が連結される。
【0020】
噴射ノズル16は、吸引ノズル6の管体18の周囲に略等間隔で6個、管体18の上下方向略中央の円形部から下部の扁平楕円管に沿って下方に延び、それぞれが管体18に支持片16aを介して一体的に取り付けられている。噴射ノズル16の上端には圧力空気源14に接続される配管継手16bが備えられている。噴射ノズル16の下端部は、吸引口7の近傍において管体18の外方に向けて(実施例においては上下方向に対し15°の角度で)曲げられ先端によって圧力空気の噴射口16cが形成されている。
【0021】
吸着防止ガイド20は、管体18の吸引口7の周囲の噴射ノズル16の外側を取り巻き配設された矩形環状の帯状部材20aと、吸引口7の周縁に沿った楕円環状の棒状部材20bを備えている。帯状部材20aは管体18の周囲の扁平部にそれぞれ2個所ずつ計4個の支持片20cによって一体的に取り付けられている。棒状部材20bは、管体18の吸引口7の端との間に管体18の上下方向において隙間21を有して一体的に取り付けられている。
【0022】
主として図1を参照して説明を続ける。吸引ノズル6は、昇降手段22に取り付けられている。昇降手段22は、吸引ノズル6を矢印24aで示す上昇方向あるいは矢印24bで示す下降方向に移動させる周知の機構、例えば電動モーター22aにより駆動されるベルト機構あるいはラックピニオン機構でよい。あるいは、エアーシリンダによって上下動させる機構でもよい。この昇降手段22は本発明の新規特徴を構成するものではないので、詳細な説明は省略する。
【0023】
ノズル位置検出手段8は、吸引ノズル6に取り付けられた従動片9と、吸引ノズル6とは別体に固設され吸引ノズル6の昇降に応じて従動片9が当接し「ON・OFF」されるリミットスイッチLS−1、LS−2を備えている。
【0024】
従動片9とリミットスイッチLS−1、LS−2は次のように配置されている。すなわち吸引ノズル6の下降(矢印24b)に合わせて位置Z1の従動片9が、先ず位置Z2のリミットスイッチLS−1に接触しリミットスイッチLS−1を「ON」にし「ON」を維持する。従動片9がさらに下降するとリミットスイッチLS−1から距離Hの間隔で配設されたリミットスイッチLS−2に接触しリミットスイッチLS−2を「ON」にし「ON」を維持する。
【0025】
従動片9、リミットスイッチLS−1、LS−2は、それぞれの取付位置を調整自在に設置されている。
【0026】
上述の距離Hは、下降した吸引ノズル6の吸引口7の所定の位置Z4と袋4の底までの距離によって規定されている。すなわち距離Hによって粉体Pの所定の残量が規定される。この距離Hは、粉体の残量が少なくなったときに吸引口7に袋4が吸引されない位置を規定するように、袋4の大きさ、構造、材質、粉体Pの粒度、湿りなどの性状、などに応じて、吸引ノズル6の吸引空気量と関連させ設定される。
【0027】
吸引空気源10は、電動モーターにより駆動されるブロワーを備えた周知のものである。吸引ノズル6と可撓性を有した配管26によって結ばれ、配管26の途中に吸引した粉体を収容する、下部に排出口を備えた貯槽28が設置されている。
【0028】
吸引空気源10は、制御手段12により、運転スイッチ30を「ON」にし吸引ノズル6を下降(矢印24b)させると作動し、所定量の吸引空気を生成し、リミットスイッチLS−1が「ON」状態になるとこの吸引空気量を減少させ、次いでリミットスイッチLS−2が「ON」状態になると停止し吸引空気の生成が止められる。
【0029】
圧力空気源14は、電動モーターにより駆動されるコンプレッサー、圧力空気タンク、圧力空気供給開閉弁を備えた周知のものである。噴射ノズル16の上端の配管継手16bと可撓性を有する配管32によって結ばれている。
【0030】
圧力空気源14は、リミットスイッチLS−1が「ON」状態になるとその開閉弁が開けられて噴射ノズル6に圧力空気を供給し、次いでリミットスイッチLS−2が「ON」状態になると開閉弁が閉じられ圧力空気の供給が止められる。
【0031】
制御手段12は、マイクロコンピュータ、電気リレー回路などによって構成され、ノズル位置検出手段8のリミットスイッチLS−1、LS−2の信号に基づいて昇降手段22、吸引空気源10、および圧力空気源14の作動を制御する。
【0032】
図1とともに吸引取出装置2の作動制御フローチャートである図3を参照して、袋内の粉体の取出方法について説明する。
【0033】
ステップS1において吸引取出装置2の運転スイッチ30を「ON」にすると、ステップS2において吸引ノズル6が袋4の中の粉体Pに向けて下降(矢印24b)し、ステップS3において吸引空気源10の吸引ブロワーが「ON」される。このとき圧力空気源14は「OFF」状態に維持されその開閉弁は閉じられている。
【0034】
この状態において、袋4内の粉体Pは吸引ノズル6によって吸引され貯槽28に収容される。
【0035】
ステップS4においてリミットスイッチLS−1が「ON」状態かどうか、すなわち吸引ノズル6の吸引口7が袋4の底から所定の距離Hに達したかどうかが判定され、「ON」状態でないときにはステップS2に戻り吸引ノズル6の下降が継続され「ON」状態のときにはステップS5に進む。
【0036】
ステップS5において吸引空気源10の吸引ブロワーの空気量が減少され、また圧力空気源14が「ON」され噴射ノズル16の噴射口16cから圧力空気が噴射される。
【0037】
ステップS6においてリミットスイッチLS−2が「ON」状態かどうか、すなわち吸引ノズル6の吸引口7が袋4の底まで達したかどうかが判定され、「ON」状態でないときにはステップS5に戻り「ON」状態のときにはステップS7に進む。
【0038】
ステップS7において吸引ノズル6の下降が停止され、ステップS8において圧力空気源14が「OFF」され、ステップS9において吸引ブロワーが「OFF」され、粉体Pの吸引が停止され、ステップS10において運転スイッチ30が「OFF」される。
【0039】
実際の粉体吸引作業における制御手段12には、袋4の底に達した吸引ノズル6を昇降手段22により上昇(矢印24a)させ当初の位置に戻すシーケンス制御回路が用意されている。また、各制御ステップおよびステップの間はタイマーによって作動時間、間隔が適宜に設定される。
【0040】
上述したとおりの粉体の吸引取出方法および装置によれば、袋内の粉体量が多いときには吸引空気量を多くして粉体を迅速に取り出すことができ、粉体量が少なくなったときには吸引空気量を減少させて吸引口に袋が吸着するのを防止できる。したがって、吸引ノズルの吸引口に袋が吸着し粉体を取り出すことができなくなる問題を容易に確実に防止でき、良好な吸引による粉体の取り出しを確保できる。
【0041】
以上、本発明を実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、さまざまな変形あるいは修正ができるものである。
【0042】
例えば、本実施例においては粉体の所定の残量を検出する手段としてノズル位置検出手段8が備えられているが、残量検出手段は、粉体の残量を袋と粉体残量の重量によって検出するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に従って構成された粉体の吸引取出装置の構成説明図。
【図2】図1の吸引ノズルおよび噴射ノズルの拡大詳細図。
【図3】本発明に従って構成された粉体の吸引取出装置の作動フローチャート。
【符号の説明】
【0044】
2:吸引取出装置
4:袋
6:吸引ノズル
8:ノズル位置検出手段(残量検出手段)
10:吸引空気源
12:制御手段
14:圧力空気源
16:噴射ノズル
P:粉体
LS−1:リミットスイッチ
LS−2:リミットスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方が開口された袋の中に開口を通し吸引ノズルを下降させ袋内の粉体を吸引し取り出す粉体の吸引取出方法において、
袋内の粉体の残量が所定の量より少なくなったときに、粉体を吸引する吸引空気量を減少させる、
ことを特徴とする袋内の粉体の吸引取出方法。
【請求項2】
粉体の残量が少なくなったときにはさらに、
吸引ノズルの吸引口の近傍から吸引口の周辺の外方に向けて圧力空気を噴出する、
ことを特徴とする請求項1記載の粉体の吸引取出方法。
【請求項3】
粉体の残量が、袋の底から吸引ノズルの吸引口までの距離によって規定される、
ことを特徴とする請求項1または2記載の粉体の吸引取出方法。
【請求項4】
上方が開口された袋の中に開口を通し吸引ノズルを下降させ袋内の粉体を吸引し取り出す粉体の吸引取出装置において、
袋内の粉体の残量を検出する残量検出手段と、
粉体を吸引する吸引空気量を断続および調整を可能に供給する吸引空気源と、
制御手段と
を備え、
残量検出手段によって粉体の残量が所定の量より少なくなったことが検出されたときには制御手段によって吸引空気源の吸引空気量を減少させる、
ことを特徴とする粉体の吸引取出装置。
【請求項5】
吸引ノズルの吸引口の周辺の外方に向けて圧力空気を噴出する吸引ノズルに設置された複数個の噴射ノズルと、
噴射ノズルに圧力空気を断続可能に供給する圧力空気源と
を備え、
残量検出手段の信号により粉体の残量が所定の量より少なくなったことが検出されたときにはさらに、
制御手段によって圧力空気源の圧力空気を噴射ノズルから噴射させる、
ことを特徴とする請求項4記載の粉体の吸引取出装置。
【請求項6】
残量検出手段が、吸引ノズルの昇降位置を検出するノズル位置検出手段を備え、
粉体の残量の少なくなったことが、袋の底から吸引ノズルの吸引口までの所定の距離によってノズル位置検出手段により検出される、
ことを特徴とする請求項4または5記載の粉体の吸引取出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−111282(P2006−111282A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−298382(P2004−298382)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(591147786)赤武エンジニアリング株式会社 (27)
【Fターム(参考)】