説明

袋状型枠及び袋状型枠を使用した遮水工の構築方法

【課題】袋状型枠を他の袋状型枠と連結し得るように構成することによって、つなぎ目のない均一で頑強、そして遮水性に優れ、低コストの遮水工を構築できる袋状型枠及び袋状型枠を使用した遮水工の構築方法を提供する。
【解決手段】本発明の袋状型枠1、20、41は、他の袋状型枠1、20、41と連結するための連結フラップ構造18を備えている。また本発明の遮水工の構築方法は、初回の成形材料Mの打設に当たっては、当該袋状型枠におけるすべての連結フラップ構造を連結状態とし、次回以降の成形材料Mの打設に当たっては、当該袋状型枠において連結する一部の連結フラップ構造18のみを展開状態にし、これと連結する他の袋状型枠における連結側の一部の連結フラップ構造18と連結後、成形材料Mを打設するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急傾斜(1:0〜1:2.5の勾配)の法面等、転圧による施工が困難な場所や比較的平坦な面であっても、幅狭なU字溝のように転圧機械の搬入が不可能な場所等において、遮水工を構築する場合に好適な袋状型枠及び袋状型枠を使用した遮水工の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最終処分場等では、遮水工を構築することが義務付けられており、遮水工としては厚さ1.5mm以上の遮水シートを被せるようにしたもの、粘性土を50cm厚以上敷き詰めるようにしたもの、及びアスファルトコンクリートを厚さ5cm以上打設するようにしたものが規定されている。一般的には施工コストの安価な遮水シートを使用した遮水工の例が多いが廃棄物埋設時の破損等による漏水事故の問題があることから、信頼性の点では難がある。また上記信頼性の点では粘性土を使用した遮水工が望ましいが、施工コストが高い点で難がある。
【0003】
そこで、上記漏水に対する信頼性と施工コストの両面を満足するものとしてアスファルトコンクリートを使用した遮水工が注目され、普及を見ている。この場合、アスファルトコンクリートによる遮水工を最終処分場の底盤部のように比較的平坦な面に適用する場合には、アスファルトコンクリートを充填後、転圧機械によって転圧をかけながら舗装することでアスファルトコンクリートによる遮水工を構築できる。しかし、急傾斜な法面や、平坦面であっても転圧機械を搬入できないような場所では、いずれも転圧機械は使用できないから、アスファルトコンクリートによる遮水工は不可能とされていた。
【0004】
一方、アスファルトコンクリートによる遮水工を緩斜面に対して適用した試みも幾つか報告されており、下記特許文献1に示すように布製型枠を使用して遮水工を構築する工法も発案されている。特許文献1では、崩落した法面や崩落のおそれのある傾斜面の改修及び保護を目的とし、筒状のシート状部材である布製型枠を使用して、布製型枠の長さ方向に配設した混練物投入口から成形材料であるコンクリート、モルタル等を充填し、養生、固化させる工法が開示されている。
【0005】
しかし、施工面積が大きくなれば、1枚の布製型枠では足らず、当然複数枚の布製型枠を使用してアスファルトコンクリートによる遮水工を別々に構築する必要がある。またこの時、隣接する遮水工間には間隙が形成されているから、この間隙を埋めるためのアスファルトコンクリートの充填作業が必要となる。
【0006】
尚、これは従来の布製型枠が予め縫製加工により型枠形状になっていて、布製型枠を他の布製型枠と連結して使用するという発想自体が存在しなかったことに起因している。
【0007】
【特許文献1】特開2003−55979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような背景技術及び背景技術が抱える問題点の存在を踏まえてなされたものであって、袋状型枠を他の袋状型枠と連結し得るように構成することによって、つなぎ目のない均一で頑強、そして遮水性に優れ、低コストの遮水工を構築できる袋状型枠及び袋状型枠を使用した遮水工の構築方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の第1の態様に係る袋状型枠は、当初は流動性があり、養生、固化後所望の遮水性を発揮する成形材料を使用して遮水工を構築する場合において使用される保形性を有する袋状型枠であって、前記袋状型枠には他の袋状型枠と連結するための連結フラップ構造が設けられていることを特徴とするものである。
本発明の第1の態様によれば、連結フラップ構造が設けられているから、複数の袋状型枠を連結することが可能となり、広い面積の遮水工がつなぎ目なく、均一に構築でき、構造強度及び遮水性も向上する。
【0010】
本発明の第2の態様に係る袋状型枠は、第1の態様において、前記成形材料は固化後の透水係数が1×10−7cm/s 以下のセメントアスファルトモルタルであることを特徴とするものである。
本発明の第2の態様によれば、成形時の流動性が良好で、固化後において充分な遮水性が得られる。
【0011】
本発明の第3の態様に係る袋状型枠は、第1または第2の態様において、前記袋状型枠は施工後、容易に分解し、消失する易分解性と、固化後の成形材料との剥離性とを有する材料によって形成されており、袋状型枠の対向する上面と下面間には、両者の間隙を規定する多数の補強紐が設けられていることを特徴とするものである。
本発明の第3の態様によれば、袋状型枠は易分解性材料によって形成されているから、紫外線や雨、風、土壌中の微生物等の作用によって容易に分解し、環境を害することはない。また袋状型枠は固化後の成形材料との剥離性に優れる材料によって形成されているから、成形後他の袋状型枠と連結する作業が容易になる。また補強紐を設けることで、成形後のアスファルトコンクリートの肉厚が一様となり、袋状型枠の耐圧強度も向上する。
尚、補強紐の素材としては、ポリエステル材、ポリプロピレン材、アスファルト含浸木綿等が挙げられる。
【0012】
本発明の第4の態様に係る袋状型枠は、第1〜第3のいずれか1つの態様において、前記連結フラップ構造には連結手段として面ファスナが使用されていることを特徴とするものである。
本発明の第4の態様によれば、連結、連結の解除が容易に行え、比較的安価で頑強、しかも構造が簡単な連結フラップ構造を有する袋状型枠が提供できる。
【0013】
本発明の第5の態様に係る袋状型枠は、第1〜第4のいずれか1つの態様において、前記袋状型枠は1枚のシート状のブランク片によって構成されており、当該ブランク片は、上面と下面、上面と下面を連結する底面、そして上面及び下面の左右の側辺から外方に延びる4枚の側面フラップとを備えており、このうち側面フラップに対して連結フラップ構造が設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
尚、本明細書において使用する「ブランク片」とは、袋状型枠を成形する際に使用する枠要素のことであり、図2、図3、図7、図8等に示すように袋状型枠に立体成形される際の各面が平面的に一体に連結された展開状態の部材を意味する。
本発明の第5の態様によれば、構造が簡単で連結、連結の解除が容易で、他の袋状型枠との連結も容易に行うことができる。
【0015】
本発明の第6の態様に係る袋状型枠は、第1〜第4のいずれか1つの態様において、前記袋状型枠は2枚のシート状の上部ブランク片と下部ブランク片とによって構成されており、このうち上部ブランク片は、上面の上辺に外方に延びる天面フラップ、上面の下辺に外方に延びる底面フラップ、そして上面の左右の側辺から外方に延びる2枚の側面フラップと、左右の側面フラップの上辺及び下辺から外方に延びる4枚の重合フラップとを備えており、一方、下部ブランク片は、上面の上辺に外方に延びる天面フラップ、下面の下辺に外方に延びる底面フラップ、そして下面の左右の側辺に外方に延びる2枚の側面フラップと、左右の側面フラップの上辺及び下辺から外方に延びる4枚の重合フラップとを備えており、これらのうち各ブランク片における天面フラップ、底面フラップ、側面フラップ及び重合フラップに対して連結フラップ構造が設けられていることを特徴とするものである。本発明の第6の態様によれば、構造が頑強で、側面方向のみならず天面方向や底面方向にも他の袋状型枠を連結できる。
【0016】
本発明の第7の態様に係る袋状型枠を使用した遮水工の構築方法は、当初は流動性があり、養生、固化後所望の遮水性を発揮する成形材料を使用し、当該成形材料を保形性を有する袋状型枠に充填し、養生、固化させることによって遮水工を構築する袋状型枠を使用した遮水工の構築方法であって、前記遮水工の構築方法は、初回の成形材料の打設に当たっては、当該袋状型枠における全ての連結フラップ構造を連結状態とし、次回以降の成形材料の打設に当たっては、当該袋状型枠において連結する一部の連結フラップ構造のみを展開状態にし、これと連結する他の袋状型枠における連結側の一部の連結フラップ構造と連結後、成形材料を打設するようにしたことを特徴とするものである。
【0017】
本発明の第7の態様によれば、袋状型枠は単独でも、あるいは複数個連結しても使用できる。特に複数個連結した場合には、既に打設した成形材料とのつなぎ目が目立たなくなり、均一な成形面が得られる。また連結、連結解除するに当たっては、一部の連結フラップ構造のみを展開状態にすればよいから、連結、連結解除作業が容易になる。
【0018】
本発明の第8の態様に係る袋状型枠を使用した遮水工の構築方法は、第7の態様において、前記袋状型枠は、第1〜第6のいずれか1つの態様の袋状型枠であることを特徴とするものである。本発明の第8の態様によれば、袋状型枠には連結フラップ構造が設けられているから、複数の袋状型枠を連結することが可能となり、広い面積の遮水工がつなぎ目なく、均一に構築でき、構造強度及び遮水性も向上し、構造も簡単になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、袋状型枠を他の袋状型枠に連結でき、連結した場合につなぎ目のない均一で頑強、そして遮水性に優れる遮水工が構築できる。また構築した遮水工は構造が簡単で低コストである。また連結フラップ構造の採用によって単一の袋状型枠、あるいは複数の袋状型枠間の連結、連結解除が容易に行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本願発明に係る袋状型枠及び袋状型枠を使用した遮水工の構築方法について説明する。尚、以下の説明では、勾配が1:1程度の比較的急傾斜の法面Aに対してセメントアスファルトモルタル(以下CAモルタルという)Mを成形材料として使用して遮水工100を構築する場合を例にとって説明する。また構造の違う2種類の袋状型枠1と袋状型枠20を例にとり、袋状型枠1の構成とこの袋状型枠1を使用した遮水工の構築方法を実施例1とし、袋状型枠20の構成とこの袋状型枠20を使用した遮水工の構築方法を実施例2として説明する。
【0021】
図1は実施例1に係る袋状型枠の組み立て途中の状態を示す斜視図、図2は実施例1に係る袋状型枠の裏側を示す展開図、図3は同上、表側を示す展開図である。図4は実施例1に係る袋状型枠を単独で使用して初回に行う遮水工の構築の様子を背面側から視た状態を示す斜視図(a)と、補助フラップ周辺を拡大して示す斜視図(b)、図5は実施例1に係る袋状型枠に他の袋状型枠を連結して行う次回以降の遮水工の構築の様子を背面側から視た状態を示す斜視図(a)と、補助フラップ周辺を拡大して示す斜視図(b)である。また図6は、実施例2に係る袋状型枠の組み立て途中の状態を示す分解斜視図、図7は実施例2に係る袋状型枠の裏側を示す展開図、図8は同上、表側を示す展開図である。図9は実施例2に係る袋状型枠を単独で使用して初回に行う遮水工の構築の様子を背面側から視た状態を示す斜視図、図10は実施例2に係る袋状型枠に他の袋状型枠を連結して行う次回以降の遮水工の構築の様子を背面側から視た状態を示す斜視図である。
また図11は実施例2に係る袋状型枠を縦横に複数枚連結して遮水工を拡大して行く様子を正面側から視た状態を示す斜視図である。
【0022】
[実施例1]
実施例1に係る袋状型枠1は、1枚のシート状のブランク片2によって構成されている。ブランク片2は上面3と下面4、上面3と下面4の中間に位置し、両者を連接する底面5、そして上面3の左右の側辺6、7から外方に延びる2枚の側面フラップ8、9と、下面4の左右の側辺10、11から外方に延びる2枚の側面フラップ12、13とを備えている。
【0023】
上面3と下面4は法面Aに接する面あるいは法面Aに平行な面であり、実質的に遮水工100の形成される作用面を意味し、比較的面積の大きな矩形状をしている。一方底面5と4枚の側面フラップ8、9、12、13は、実質的に遮水工100の厚さを規定する部分であり、比較的面積の小さな細長い矩形状をしている。そして上面3の左側の側面フラップ8の裏側(図2中紙面に垂直な方向、前方)と下面3の右側の側面フラップ13の裏側には、連結手段としての面ファスナ14のループ状係合部15が一例として設けられており、上面3の右側の側面フラップ9の表側(図3中紙面に垂直な方向、前方)と、下面3の左側の側面フラップ12の表側には、連結手段としての面ファスナ14のフック状係合部16が一例として設けられている。
【0024】
そして面ファスナ14のループ状係合部15とフック状係合部16が重なり合うようにブランク片2を折り曲げて組み立てることによって袋状型枠1の外観が形成され、更に対向する上面3と下面4間に両者の間隙を規定すると共に袋状型枠1の保形性を向上させる多数の補強紐17を設けることによって実施例1に係る袋状型枠1が成形される。尚、この袋状型枠1は、施工後、容易に紫外線や雨、風、あるいは土壌中の微生物等の作用によって分解し消失する易分解性と、固化後の成形材料としてのCAモルタルMとの剥離性とに優れる材料によって成形される。
【0025】
そして、このような袋状型枠1を使用して遮水工100を構築する場合には、初回のCAモルタルMの打設に当たっては、図4(a)に示すように側面フラップ8の裏側のループ状係合部15を側面フラップ12の表側のフック状係合部16に係合させ、側面フラップ9の表側のフック状係合部16を側面フラップ13の裏側のループ状係合部15に係合させる。尚、このように連結部位となる側面フラップ8、9、12、13と、連結手段としての例えば面ファスナ14との組み合わせを本実施例において連結フラップ構造18と定義する。本実施例では、すべての側面フラップ8、9、12、13にそれぞれ面ファスナ14のループ状係合部15、あるいはフック状係合部16のいずれかが設けられているから、連結フラップ構造18は4つ設けられていることになる。そして、図4(a)に示す初回のCAモルタルMの打設時には4つの連結フラップ構造18のすべてが連結状態になっている。
【0026】
また上述の構成のみでは、側面フラップ8、12と底面5との間、側面フラップ9、13と底面5との間に隙間が形成されてしまう。従ってそのままの状態でCAモルタルMを充填するとCAモルタルMの漏出のおそれがある。そこで図4(b)に示すような面ファスナ14が貼設された補助フラップ50を用意し、この補助フラップ50を90°折り曲げた状態で貼設し、上記隙間を閉塞するようにする。尚、補助フラップ50は図示のような帯状のものの他、ひも状のものであっても構わない。
【0027】
次に成形材料としてのCAモルタルMを袋状型枠1の上部開口19から充填し、養生、固化させることによって初回の遮水工100が構築される。尚、成形材料として使用されるCAモルタルMは、アスファルト乳剤、セメント、砂、水の混合材であり、固化後の透水係数が1×10−7cm/s 以下になる特性を有している。そして遮水工100を延長形成したい側の側面フラップ(図5では側面フラップ8、12)を展開状態とし、当該袋状型枠1と連結する他の袋状型枠1の側面フラップ(図5では側面フラップ9、13)とを面ファスナ14によって連結する。また他の袋状型枠1の残りの2つの側面フラップ(図5では側面フラップ8、12となる)は、その側面フラップ同士を面ファスナ14によって連結する。
【0028】
従って次回以降のCAモルタルMの打設に当たっては、連結フラップ構造18の一部は、他の袋状型枠1と連結するのに使用され、残りの連結フラップ構造18は、当該袋状型枠1の側面を形成して袋状とするのに使用されている。またこのように袋状型枠1を連結する場合には、図5(b)に示すように補助フラップ50を隣接する袋状型枠1に跨るように展開状態に使用して連結し、隣接する袋状型枠1の底面5間に形成される隙間を閉塞するようにする。以下同様にして遮水工100を所望の長さまで延長して行けば、遮水工100の構築が完了する。そしてこのような構築方法によって構築された遮水工100にはつなぎ目が生ぜず、均一な外観が保たれ、遮水性と構造強化とが図られているのである。
【0029】
[実施例2]
実施例2に係る袋状型枠20は、2枚のシート状の上部ブランク片21と下部ブランク片22とによって構成されている。このうち上部ブランク片21は、上面23の上辺24に外方に延びる天面フラップ25、上面23の下辺26に外方に延びる底面フラップ27、そして上面23の左右の側辺28、29に外方に延びる2枚の側面フラップ30、31と、左右の側面フラップ30、31の上辺32及び下辺33から外方に延びる4枚の重合フラップ34、35、36、37とを備えている。
【0030】
一方、下部ブランク片22は、下面38の上辺24に外方に延びる天面フラップ25、下面38の下辺26の外方に延びる底面フラップ27、そして下面38の左右の側辺28、29に外方に延びる2枚の側面フラップ30、31と、左右の側面フラップ30、31の上辺32及び下辺33から外方に延びる4枚の重合フラップ34、35、36、37とを備えている。尚、下部ブランク片22は基本的に上部ブランク片21と同様の構成を有しているため、各部の名称、符号は上部ブランク片21と同一の名称、符号を使用した。
【0031】
上部ブランク片21における上面23と、下部ブランク片22における下面38は、法面Aに接する面あるいは法面Aに平行な面であり、実質的に遮水工100の形成される作用面を意味し、比較的面積の大きな矩形状をしている。一方、上部ブランク片21及び下部ブランク片22におけるそれぞれの天面フラップ25、底面フラップ27及び側面フラップ30、31は、実質的に遮水工100の厚さを規定する部分であり、比較的面積の小さな細長い矩形状をしている。また上部ブランク片21と下部ブランク片22の双方に設けられている重合フラップ34、35、36、37は、袋状型枠20に組み立てた場合の隅部の隙間を埋める役割を有している。
【0032】
そして、上部ブランク片21における天面フラップ25の裏側(図7中紙面に垂直な方向、前方)の左右両端、右上部の重合フラップ35の裏側、右側の側面フラップ31の裏側、右下部の重合フラップ37の裏側及び底面フラップ27の裏側には、連結手段としての面ファスナ14のループ状係合部15が一例として設けられている。また上部ブランク片21における天面フラップ25の表側(図8中紙面に垂直な方向、前方)、すべての重合フラップ34、35、36、37の表側及び左側(図8では右側に位置している)の側面フラップ30の表側には連結手段としての面ファスナ14のフック状係合部16が一例として設けられている。
【0033】
一方、下部ブランク片22における天面フラップ25の裏側(図7中紙面に垂直な方向、前方)、右上部の重合フラップ35の裏側、右側の側面フラップ31の裏側、右下部の重合フラップ37の裏側及び底面フラップ27の裏側の左右両端には、連結手段としての面ファスナ14のループ状係合部15が一例として設けられている。また下部ブランク片22における底面フラップ27の表側(図8中紙面に垂直な方向、前方)、すべての重合フラップ34、35、36、37の表側及び左側(図8では右側に位置している)の側面フラップ30の表側には連結手段としての面ファスナ14のフック状係合部16が一例として設けられている。
【0034】
そして、面ファスナ14のループ状係合部15とフック状係合部16が重なり合うように上部ブランク片21と下部ブランク片22とを折り曲げて組み立てることによって袋状型枠20の外観が形成され、更に対向する上面23と下面38間に両者の間隙を規定すると共に、袋状型枠20の保形性を向上させる多数の補強紐17を設けることによって実施例2に係る袋状型枠20が成形される。尚、この袋状型枠20は、実施例1に係る袋状型枠1と同様の易分解性と剥離性を備える材料によって形成されている。
【0035】
(1)初回の遮水工の構築
そしてこのような袋状型枠20を使用して遮水工100を構築する場合には、初回のCAモルタルMの打設に当たっては、図9に示すように上部ブランク片21における側面フラップ31の裏側のループ状係合部15を下部ブランク片22における側面フラップ30の表側のフック状係合部16に係合させ、上部ブランク片21における側面フラップ30の表側のフック状係合部16を下部ブランク片22における側面フラップ30の裏側のループ状係合部15に係合させる。
【0036】
次に、上部ブランク片21における重合フラップ35、37の裏側のループ状係合部15を下部ブランク片22における重合フラップ34、36の表側のフック状係合部16に係合させる。同様にして上部ブランク片21における重合フラップ34、36の表側のフック状係合部16を下部ブランク片22における重合フラップ35、37の裏側のループ状係合部15に係合させる。
【0037】
更に係合した重合フラップ34、35を内側に90°折り曲げ、上部ブランク片21における天面フラップ25の裏面の左右両端に設けられているループ状係合部15を上部ブランク片21における重合フラップ35の表側のフック状係合部16及び下部ブランク片22における重合フラップ35の表側のフック状係合部16に係合させる。同様にして重合フラップ36、37を内側に90°折り曲げ、下部ブランク片22における底面フラップ27の裏側の左右両端に設けられているループ状係合部15を上部ブランク片21における重合フラップ37の表側のフック状係合部16及び下部ブランク片22における重合フラップ37の表側のフック状係合部16に係合させる。
【0038】
そして、上部ブランク片21における天面フラップ25を90°内側に折り曲げ、更にその上に下部ブランク片22における天面フラップ25を90°内側に折り曲げて重ね合わせることによって上部ブランク片21における天面フラップ25の表側のフック状係合部16と下部ブランク片22における天面フラップ25の裏側のループ状係合部15を係合させる。同様にして、下部ブランク片22における底面フラップ27を90°内側に折り曲げ、更にその上に上部ブランク片21における底面フラップ27を90°内側に折り曲げて重ね合わせることによって下部ブランク片22における底面フラップ27の表側のフック状係合部16と上部ブランク片21における底面フラップ27の裏側のループ状係合部15を係合させる。
【0039】
尚、このように連結部位となる上部ブランク片21と下部ブランク片22のそれぞれにおける天面フラップ25、底面フラップ27、左右の側面フラップ30、31及び重合フラップ34、35、36、37と、連結手段としての例えば面ファスナ14との組み合わせを本実施例において連結フラップ構造18と定義する。本実施例では上部ブランク片21と下部ブランク片22の双方の天面フラップ25、底面フラップ27、側面フラップ30、31及び重合フラップ34、35、36、37のすべてにそれぞれ面ファスナ14のループ状係合部15、あるいはフック状係合部16のいずれか1つまたは双方が設けられているから、連結フラップ構造18は上部ブランク片21と下部ブランク片22を合わせて計16個設けられていることになる。そして図9に示す初回のCAモルタルMの打設時には16個の連結フラップ構造18のすべてが連結状態になっている。
【0040】
次に、成形材料としてのCAモルタルMを袋状型枠20の天面フラップ25に対して一例として設けられているポート39から充填し、養生、固化させることによって初回の遮水工100が構築される。尚、CAモルタルMとしては実施例1と同様の成分、透水係数のものが使用される。
【0041】
(2)次回以降の遮水工の構築
そしてこのような袋状型枠20を使用して遮水工100を連結し、更に大きな遮水工100を構築したい場合には、図10に示すように袋状型枠20を横方向に連結し、あるいは図11に示すように袋状型枠20を横方向に加えて縦方向にも連結し遮水工100を徐々に継ぎ足して行く方式で拡大して行く。この場合には、既に構築した遮水工100の形成に使用した袋状型枠20の天面フラップ25、底面フラップ27、側面フラップ30、31あるいは重合フラップ34、35、36、37のうち、新たな遮水工100を延長形成したい側のフラップ並びに当該フラップを展開することに伴って必要となってくるフラップを展開状態にする。
【0042】
また当該袋状型枠20と連結する他の袋状型枠20の連結側のフラップ並びに当該フラップを連結することに伴って必要となってくるフラップを展開状態にし、面ファスナ14を使用して上記展開状態にした既設の袋状型枠20のフラップと連結する。尚、新たに連結する袋状型枠20の残りのフラップは既に説明した初回の遮水工の構築の場合と同様、自らのフラップを重ね合わせることによって、上部ブランク片21と下部ブランク片22との間で連結し、閉塞状態にする。
【0043】
そして更に遮水工100を拡大して行きたい場合には、次々と新たな袋状型枠20を図10に示すように横方向に連結し、また図11に示すように縦横に連結すればよく、所望の長さあるいは高さまで袋状型枠20を連結し、順次CAモルタルMを打設し、養生、固化させて行けば、最終的に大型の遮水工100が構築される。尚、このような構築方法によって構築された遮水工100にはつなぎ目が生ぜず、均一な外観が保たれ、遮水性と構造強化とが図られているのである。
【0044】
[他の実施例]
本願発明に係る袋状型枠及び袋状型枠を使用した遮水工の構築方法は、以上述べたような構成を基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。例えば、連結手段は、面ファスナ14に限らず、ボタン、ホック、ファスナあるいはターンバックル状のもの等種々の構成のものが使用可能である。また、図11に示すように連結フラップ構造18を型枠本体40と別体に構成した袋状型枠41とすることも可能である。尚、上述の実施例1において述べた補助フラップ50も別体に構成した連結フラップ構造18の一種であり、本実施例でも補助フラップ50として同一の符号を付けて図示している。
【0045】
また、実施例2に係る袋状型枠20において、上部ブランク片21側の重合フラップ34、36と下部ブランク片22側の重合フラップ34、36を省略することも可能であるし、実施例1に係る袋状型枠1において、上部開口19を閉塞する天面フラップを設け、天面フラップに対してCAモルタルMを充填するポートを設ける構成とすることも可能である。また、上記実施例1、2では法面Aに対して遮水工100を構築する場合を例にとって説明したが、本発明の袋状型枠1、20、41は、法面Aに限らず、平坦面でも使用でき、特に転圧機械等が搬入できないようなU字溝のような溝部底面の遮水工100の構築にも使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本願発明は、法面等に遮水工を構築する施工現場、より具体的にはつなぎ目のない均一な遮水工を形成したい場合に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例1に係る袋状型枠の組み立て途中の状態を示す斜視図である。
【図2】実施例1に係る袋状型枠の裏側を示す展開図である。
【図3】実施例1に係る袋状型枠の表側を示す展開図である。
【図4】実施例1に係る袋状型枠を単独で使用して初回に行う遮水工の構築の様子を示す斜視図(a)と、補助フラップ周辺を拡大して示す斜視図(b)である。
【図5】実施例1に係る袋状型枠に他の袋状型枠を連結して行う次回以降の遮水工の構築の様子を示す斜視図(a)と、補助フラップ周辺を拡大して示す斜視図(b)である。
【図6】実施例2に係る袋状型枠の組み立て途中の状態を示す分解斜視図。
【図7】実施例2に係る袋状型枠の裏側を示す展開図である。
【図8】実施例2に係る袋状型枠の表側を示す展開図である。
【図9】実施例2に係る袋状型枠を単独で使用して初回に行う遮水工の構築の様子を示す斜視図である。
【図10】実施例2に係る袋状型枠に他の袋状型枠を連結して行う次回以降の遮水工の構築の様子を示す斜視図である。
【図11】実施例2に係る袋状型枠を縦横に複数枚連結して遮水工を拡大して行く様子を正面側から視た状態を示す斜視図である。
【図12】他の実施例に係る袋状型枠の組み立て途中の状態を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
1 袋状型枠、2 ブランク片、3 上面、4 下面、5 底面、6 側辺、7 側辺、8 側面フラップ、9 側面フラップ、10 側辺、11 側辺、12 側面フラップ、13 側面フラップ、14 面ファスナ(連結手段)、15 ループ状係合部、
16 フック状係合部、17 補強紐、18 連結フラップ構造、19 上部開口、
20 袋状型枠、21 上部ブランク片、22 下部ブランク片、23 上面、
24 上辺、25 天面フラップ、26 下辺、27 底面フラップ、28 側辺、
29 側辺、30 側面フラップ、31 側面フラップ、32 上辺、33 下辺、
34 重合フラップ、35 重合フラップ、36 重合フラップ、37 重合フラップ、38 下面、39 ポート、40 型枠本体、41 袋状型枠、50 補助フラップ、
100 遮水工、A 法面、M セメントアスファルト(CA)モルタル(成形材料)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
当初は流動性があり、養生、固化後所望の遮水性を発揮する成形材料を使用して遮水工を構築する場合において使用される保形性を有する袋状型枠であって、
前記袋状型枠には他の袋状型枠と連結するための連結フラップ構造が設けられていることを特徴とする袋状型枠。
【請求項2】
請求項1において、前記成形材料は固化後の透水係数が1×10−7cm/s 以下のセメントアスファルトモルタルであることを特徴とする袋状型枠。
【請求項3】
請求項1または2において、前記袋状型枠は施工後、容易に分解し、消失する易分解性と、固化後の成形材料との剥離性とを有する材料によって形成されており、袋状型枠の対向する上面と下面間には、両者の間隙を規定する多数の補強紐が設けられていることを特徴とする袋状型枠。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、前記連結フラップ構造には連結手段として面ファスナが使用されていることを特徴とする袋状型枠。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、前記袋状型枠は1枚のシート状のブランク片によって構成されており、当該ブランク片は、上面と下面、上面と下面を連結する底面、そして上面及び下面の左右の側辺から外方に延びる4枚の側面フラップとを備えており、このうち側面フラップに対して連結フラップ構造が設けられていることを特徴とする袋状型枠。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項において、前記袋状型枠は2枚のシート状の上部ブランク片と下部ブランク片とによって構成されており、このうち上部ブランク片は、上面の上辺に外方に延びる天面フラップ、上面の下辺に外方に延びる底面フラップ、そして上面の左右の側辺から外方に延びる2枚の側面フラップと、左右の側面フラップの上辺及び下辺から外方に延びる4枚の重合フラップとを備えており、
一方、下部ブランク片は、上面の上辺に外方に延びる天面フラップ、下面の下辺に外方に延びる底面フラップ、そして下面の左右の側辺に外方に延びる2枚の側面フラップと、左右の側面フラップの上辺及び下辺から外方に延びる4枚の重合フラップとを備えており、これらのうち各ブランク片における天面フラップ、底面フラップ、側面フラップ及び重合フラップに対して連結フラップ構造が設けられていることを特徴とする袋状型枠。
【請求項7】
当初は流動性があり、養生、固化後所望の遮水性を発揮する成形材料を使用し、当該成形材料を保形性を有する袋状型枠に充填し、養生、固化させることによって遮水工を構築する袋状型枠を使用した遮水工の構築方法であって、
初回の成形材料の打設に当たっては、当該袋状型枠における全ての連結フラップ構造を連結状態とし、次回以降の成形材料の打設に当たっては、当該袋状型枠において連結する一部の連結フラップ構造のみを展開状態にし、これと連結する他の袋状型枠における連結側の一部の連結フラップ構造と連結後、成形材料を打設するようにしたことを特徴とする袋状型枠を使用した遮水工の構築方法。
【請求項8】
請求項7において、前記袋状型枠は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の袋状型枠であることを特徴とする袋状型枠を使用した遮水工の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−750(P2006−750A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179185(P2004−179185)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000148346)株式会社錢高組 (67)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【出願人】(591063626)大丸興業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】