袋状微細管のメッキ膜形成方法及びメッキ膜形成システム
【課題】 袋状の微細管の内壁面に対しても、貫通孔を設けることなく均一なメッキ膜を形成することが可能な方法及びシステムを提供する。
【解決手段】 本方法は、真空雰囲気内に配置された微細管にプラズマを照射することにより、内外壁面の不純物を除去するプラズマ洗浄工程と、不純物が除去され内空間に空気が残留していない状態の真空雰囲気内の微細管を脱脂液に浸漬させ、真空雰囲気を大気圧雰囲気に置換することにより、微細管の内空間の全体に脱脂液を注入し、微細管の内壁及び外壁の脱脂処理を行う脱脂工程とを含む。本方法は、さらに、脱脂された微細管の少なくとも内空間に空気が入らないようにしながら脱脂液を洗浄液に置換し、微細管を洗浄する脱脂液洗浄工程と、洗浄された微細管の少なくとも内空間に空気が入らないようにしながら洗浄液をメッキ液に置換し、微細管にパルスリバース電気メッキ処理を行うメッキ工程と、を含む。
【解決手段】 本方法は、真空雰囲気内に配置された微細管にプラズマを照射することにより、内外壁面の不純物を除去するプラズマ洗浄工程と、不純物が除去され内空間に空気が残留していない状態の真空雰囲気内の微細管を脱脂液に浸漬させ、真空雰囲気を大気圧雰囲気に置換することにより、微細管の内空間の全体に脱脂液を注入し、微細管の内壁及び外壁の脱脂処理を行う脱脂工程とを含む。本方法は、さらに、脱脂された微細管の少なくとも内空間に空気が入らないようにしながら脱脂液を洗浄液に置換し、微細管を洗浄する脱脂液洗浄工程と、洗浄された微細管の少なくとも内空間に空気が入らないようにしながら洗浄液をメッキ液に置換し、微細管にパルスリバース電気メッキ処理を行うメッキ工程と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッキ膜形成技術に関し、より具体的には、微小な内空間を有する袋状の微細管の内外壁面に均一な厚みのメッキ膜を形成するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報関連機器の小型化、高機能化により、これらの機器に用いられる部品や関連機器等も微小化が要求されている。このような要求を満たすべき部品や関連機器の一つに、半導体集積回路検査機器のテストヘッドの心臓部であるコンタクトプローブがある。コンタクトプローブは、通常、例えば特許文献1の図3に記載されているように、一端が閉塞された導電チューブとプランジャとを備える。プランジャは、導電チューブの内壁面に沿って摺動し、導電チューブに対して相対移動することにより、その一端が導電チューブの他端の開口から突出するように構成されている。プランジャは、導電チューブ内に設置されたスプリングによって付勢されている。プランジャの先端が被検体に当接した際におけるプランジャと被検体との間の電気的導通により、被検体の電気回路の断線、ショート等の点検が行われることになる。
【0003】
上述のように、コンタクトプローブにおいては、導電チューブとプランジャとの間の電気的導通は、導電チューブの内壁とプランジャの外壁とが接触することによって得られる。この接触の際の電気抵抗を小さくするとともに、耐摩耗性、耐食性、密着性を向上させる目的で、一般に、導電チューブの内壁とプランジャの外壁とに導電性薄膜、いわゆるメッキ膜が形成される。メッキ膜の形成は、一般に、電解メッキ又は無電解メッキのいずれを用いて行ってもよい。
【0004】
導電チューブのような「細管」は、その内径が長さに対して極めて小さいのが一般的である。こういった細管の内壁面にメッキ膜を形成する際の問題は、メッキ膜の形成工程に必要な各種の処理液が、液の表面張力のために細管の内部に入らないことである。液が細管の内部に入らないと、メッキ膜の形成工程において必要な脱脂液、エッチング液、活性化液、メッキ液などが細管の奥まで届かず、必要なメッキ膜を内壁面に形成することができない。こうした問題を解決する手段として、例えば特許文献1の従来技術に記載された技術が提案されている。特許文献1に記載の技術では、例えば内径400μm、長さ2500μmの細管の内壁面にメッキ膜を形成することを目的として、細管の閉塞端側に細管の内部と外部とを連通する貫通孔が設けられる。この貫通孔の存在によって、細管内の閉塞端側までメッキ液などを侵入させることができるようになるため、内壁面へのメッキ膜の形成が可能になる。
【0005】
特許文献2には、両端が開放された細管の内壁面へのメッキ膜形成に関する技術が提案されている。この技術では、細管の内側と外側に存在するそれぞれのメッキ液の濃度を、細管の内側のメッキ液を強制的に流動させて同等に保つことによって、正常で均一なメッキ膜を内壁面に形成するものである。
【0006】
これらの技術のように、内径が小さく長さが長い細管であっても、閉塞端に貫通孔を設けることができるか又は両端が開放されている場合には、メッキ膜形成に必要な各種の処理液が細管の内部の奥にまで到達できるため、内壁面へのメッキ膜の形成が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4149196号
【特許文献2】特開2007−169771
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、細管の内壁面にメッキ膜を形成する従来の技術では、両端が開放されている細管や、袋状であっても閉塞端側に貫通孔を設けることができる細管の場合には、内壁面へのメッキは不可能ではない。しかしながら、内径(より具体的には、細管の開放端の内径)が例えば約300μmより小さく長さが長い細管のような極めて微小な内空間を有する袋状の細管(以下、本明細書においては「袋状微細管」という。)の場合には、袋状微細管の閉塞端の内外をつなぐ貫通孔を設けること自体が極めて難しく、特に内径が約100μmより小さい袋状微細管においては、貫通孔を設けることは技術的にほぼ不可能である。
【0009】
また、たとえ貫通孔を設けて内壁面をメッキする技術を用いることができるような内径を有する袋状の細管の場合であっても、貫通孔から袋状の細管の内部に塵埃などが侵入して内壁面に付着し、袋状の細管の接触抵抗が増大し、動作不良が発生するおそれがある。特許文献1では、こうした問題に対応するための方法として、細管内の閉塞端とスプリングの端部との間に閉塞部材を設けることによって、貫通孔による導電チューブの内部と外部との連通を遮断する方法が提案されている。しかしながら、こうした方法は、細管の内部にさらに小径の部品を挿入し、所望の位置に位置決めするという極めて複雑な工程を必要とするため、実際の製品への適用は難しいと考えられる。
【0010】
さらに、袋状の細管においては、貫通孔を設けることができる場合であっても、内部におけるメッキ液の拡散が不均一となり、袋状の細管の入り口近くの内壁面と奥の内壁面とでメッキ膜厚に差が生じるため、均一なメッキ膜の形成は不可能であった。
【0011】
本発明は、内径が極めて小さく長さが長い袋状の細管、中でも内径が約100μm以下のアスペクト比の大きい袋状微細管の内壁面に対しても、貫通孔を設けることなく均一なメッキ膜を形成することが可能な方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、内径が約100μm以下の微小な内空間を有する袋状微細管であっても、プラズマ処理による内壁面の濡れ性の向上と内空間への処理液の新たな注入方法とを組み合わせることによって、通常の方法では処理液が入らない微小な空間にも処理液を注入できることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
本発明の第1の態様は、一端が閉じた袋状微細管の外壁と内空間の内壁とにメッキ膜を形成する方法を提供する。本方法は、真空雰囲気内に配置された袋状微細管にプラズマを照射することにより、袋状微細管の内壁及び外壁の表面の不純物を除去するプラズマ洗浄工程と、不純物が除去され内空間に空気が残留していない状態の真空雰囲気内の袋状微細管を脱脂液に浸漬させ、真空雰囲気を大気圧雰囲気に置換することにより、袋状微細管の内空間の全体に脱脂液を注入し、袋状微細管の内壁及び外壁の脱脂処理を行う脱脂工程とを含む。本方法は、さらに、脱脂された袋状微細管の少なくとも内空間に空気が入らないようにしながら脱脂液を洗浄液に置換し、袋状微細管を洗浄する脱脂液洗浄工程と、洗浄された袋状微細管の少なくとも内空間に空気が入らないようにしながら洗浄液をメッキ液に置換し、袋状微細管にパルスリバース電気メッキ処理を行うメッキ工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
一実施形態においては、本方法は、さらに、上述のメッキ工程の後、メッキされた袋状微細管の少なくとも内空間に空気が入らないようにしながら袋状微細管を洗浄液で洗浄し、洗浄後に袋状微細管を乾燥させる工程を含むことが好ましい。本方法は、さらに、乾燥された袋状微細管を真空雰囲気内に配置した後、内空間に空気が残留していない状態の袋状微細管をメッキ液とは別のメッキ液に浸漬させ、真空雰囲気を大気圧雰囲気に置換することにより、袋状微細管の内空間の全体に別のメッキ液を注入し、袋状微細管に別のメッキ液によるパルスリバース電気メッキ処理を行う工程を含むことが好ましい。
【0015】
一実施形態においては、本方法は、さらに、脱脂液洗浄工程の後、洗浄された袋状微細管の少なくとも内空間に空気が入らないようにしながら洗浄液をエッチング液に置換してエッチング処理を行うエッチング工程と、エッチングされた袋状微細管の少なくとも内空間に空気が入らないようにしながらエッチング液を洗浄液に置換して袋状微細管を洗浄するエッチング液洗浄工程とを含むことが好ましい。エッチング工程を行った場合には、本方法は、さらに、エッチング工程に続く袋状微細管の洗浄工程の後、洗浄された袋状微細管の少なくとも内空間に空気が入らないようにしながら洗浄液を活性化液に置換して活性化処理を行う活性化工程と、活性化された袋状微細管の少なくとも内空間に空気が入らないようにしながら活性化液を洗浄液に置換して袋状微細管を洗浄する活性化液洗浄工程とを含むことが好ましい。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、本発明は、一端が閉じた袋状微細管の内空間の全体に液体を注入するための液体注入装置を提供する。本装置は、真空チャンバと、真空チャンバの内部に配置され、袋状微細管と液体とを収容可能な容器と、真空チャンバの内部の空気を真空チャンバの外部に排出するためのポンプと、真空チャンバの内部と外部とを連通する排出口とを含む排気手段と、真空チャンバの内部に配置された容器の内部と真空チャンバの外部とを連通する流路と、流路内の液体の通過又は遮断を制御するためのバルブとを含む液体導入手段と、真空チャンバの外部に配置され、流路を介して容器の内部に供給される液体を収容可能な液体容器と、真空チャンバの内部の真空雰囲気を大気圧雰囲気に置換するための大気導入手段と、を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の第3の態様によれば、本発明は、一端が閉じた袋状微細管の外壁と内空間の内壁とにメッキ膜を形成するためのメッキ膜形成システムを提供する。本システムは、真空雰囲気の真空チャンバの内部に配置された袋状微細管に照射されるプラズマを発生させるプラズマ発生手段を備えるプラズマ洗浄装置と、請求項5に記載の液体注入装置において液体として脱脂液を用いた、プラズマの作用によって不純物が除去された袋状微細管の内空間に脱脂液を注入するための脱脂液注入装置と、少なくとも内空間に空気が入らないようにしながら洗浄液を用いて洗浄され内空間にメッキ液が入れられた袋状微細管にパルスリバース電気メッキを行うメッキ装置と、を備えることを特徴とする。
【0018】
一実施形態によれば、本システムは、請求項5に記載の液体注入装置において液体として前述のメッキ液とは別のメッキ液を用い、前述のメッキ液による電気メッキ処理が行われた袋状微細管の内空間に別のメッキ液を注入するためのメッキ液注入装置と、袋状微細管に別のメッキ液によるパルスリバース電気メッキ処理を行うメッキ装置と、を備えることが好ましい。
【0019】
本発明によれば、プラズマ処理工程において袋状微細管をプラズマ洗浄することによって、袋状微細管の微小な内空間の壁面においても効果的に不純物を除去して壁面の濡れ性を向上させることができ、その後、脱脂処理工程及びその後の工程において新規な注入方法を利用して、壁面の濡れ性が向上し且つ空気が残留していない内空間全体に脱脂液及びその後の処理液を注入することができる。さらに、内空間全体にメッキ液を注入した後のパルスリバース電気メッキ処理によって、袋状微細管の壁面に均一な厚みのメッキ膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る、袋状微細管にメッキ膜を形成するための方法のフロー図である。
【図2A】プラズマ洗浄処理前の壁面と液体との接触角を測定した実験結果の写真である。
【図2B】プラズマ洗浄処理後の壁面と液体との接触角を測定した実験結果の写真である。
【図3】開口部の向きによる洗浄効果(接触角の変化)の実験結果を示す。
【図4】本発明に係る2段階真空注入方法を実現するための装置の一実施形態の概略図を示す。
【図5】図4に示される2段階真空注入装置を用いて袋状微細管の内空間に液体を注入した実験の結果を示す写真である。
【図6】従来の方法によって袋状微細管の内空間に液体を注入した実験の結果を示す写真である。
【図7A】直流電源による電気メッキ処理(直流メッキ法)によって袋状微細管にニッケルメッキ膜を形成した場合の写真である。
【図7B】パルス電源によるパルスリバース電気メッキ処理(PRメッキ法)によってニッケルメッキ膜を形成した場合の写真である。
【図8】本発明の一実施形態に係る方法によって作成された、均一な厚さのニッケルメッキ膜及び金メッキ膜が生成された袋状微細管の断面を示す写真である。
【図9】従来の注入方法を用いて脱脂液が注入された袋状微細管に金メッキ膜を形成した場合の断面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る袋状微細管へのメッキ膜形成方法を詳細に示す。図1は、本発明の一実施形態に係る、袋状微細管にメッキ膜を形成するための方法のフロー図である。本発明において、メッキ膜を形成することができる袋状微細管は、径が極めて小さい中空の内空間を有する一端が閉じた形状の微細な管状部材で、断面の形状は円形であることが好ましく、その材質は、例えば真鍮、ベリリウム銅、快削黄銅といった金属とすることができる。本発明によれば、例えば内空間の径(すなわち、袋状微細管の内径)が約100μm、内空間の長さ(すなわち、内空間の入り口から最奥部までの長さ)が約1400μmなどといったアスペクト比の大きな袋状微細管であっても、その内外壁面に均一なメッキ膜を形成することができる。袋状微細管の外壁の形状は、特に限定されるものではなく、例えば外壁のいずれかの位置にいずれかの形状の突起部が設けられた形状であっても良い。一方、袋状微細管の内空間の壁面は、突起が存在しない平坦な面であることが好ましい。
【0022】
以下の説明においては、本発明の一実施形態として、袋状微細管の内外壁面に2層のメッキ膜を形成する場合について説明する。ここでは、ベリリウム銅製の袋状微細管(内径が100μm、内空間の入り口から最奥部までの長さが1300μm)の内外壁面上に直接形成されるメッキ膜をニッケルメッキ膜とし、ニッケルメッキ膜の上にさらに形成されるメッキ膜を金メッキ膜とする。こうしたメッキ膜の構成においては、一般に、ニッケルメッキ膜は、耐食性及び硬度の向上を目的とし、金メッキ膜は、耐食性及び導電性の向上を目的としている。なお、こうしたメッキ膜の構成以外にも、例えば、密着性向上を目的として銅メッキ膜を形成し、その上にニッケルメッキ膜と金メッキ膜とを形成した構成とすることもでき、本発明に係るメッキ膜の形成方法は、こうした三層のメッキ膜構成の場合にも適用可能である。
【0023】
1.袋状微細管の製造
袋状微細管は、当業者に周知の方法で製造することができる。袋状微細管の製造方法の一例は、以下のとおりである。まず、所定の合金組成を満たすように複数の原料粉末を混合して原料混合粉末を調製する。この原料混合粉末から溶解法によりインゴットを作製する。次いで、線引き加工、圧延加工、鍛造加工などの方法によって、所定の直径を有する合金線材を作製する。これを必要な長さに切断した後、先端部から切削加工によって内空間を形成し、最終的に袋状微細管を製造する。
【0024】
2.プラズマ洗浄処理工程
上述の製造工程によって製造された袋状微細管の内外壁面は、製造の際に付着した油分や切削屑などの不純物によって表面が汚れており、このままでは表面上にメッキ膜を形成することができない。従って、こうした不純物を除去するために、通常は、壁面の表面の脱脂液による脱脂処理が必要である。しかしながら、このような壁面は、通常、不純物によって表面の濡れ性が低下している。したがって、表面の濡れ性の低下と液の表面張力の影響により、袋状微細管の内空間に液が入っていかず、内空間の全体に脱脂液を注入することはきわめて難しい。この問題を解決するため、本発明においては、脱脂液による脱脂処理の前処理として、プラズマによる洗浄処理を行う。プラズマによって洗浄処理を行うことにより、袋状微細管の最奥部であっても内壁面の表面の不純物が除去されて濡れ性が向上し、内空間の奥まで脱脂液を注入することが可能になる。
【0025】
プラズマ洗浄処理工程は、本発明の一実施形態においては、市販のプラズマ処理装置(例えば、ヤマト科学株式会社のプラズマクリーナ PDC200)を用いて行うことができる。プラズマ洗浄処理工程は、以下のように行われる。まず、プラズマ処理装置のチャンバ内に袋状微細管が配置される。袋状微細管は、例えばガラスシャーレ等の容器に入れた状態でチャンバ内に配置されることが好ましい。次いで、プラズマ処理の条件を設定し、プラズマ洗浄処理を行う。プラズマ洗浄処理を行う際の条件は、本発明の一実施形態においては、例えば上述のプラズマ処理装置を用いる場合には、空気プラズマを用いて、真空度約10Pa、出力300W、1分間以上という条件での処理が好ましい。プラズマ洗浄処理が完了した後、チャンバを大気圧に戻し、袋状微細管が取り出される。洗浄ガスとしては、空気、アルゴンガス、水素ガスなどを用いることができる。
【0026】
図2は、プラズマ洗浄による表面の濡れ性の向上を示す実験の結果を示す写真であり、プラズマ洗浄処理前後の試験片の表面と液体との接触角を測定した結果の写真である。実験の方法は以下のとおりである。まず、試験片A、B(真鍮製、20mm×20mm)を、ヘプタンにオレイン酸を0.05%含有させたものに浸漬し、乾燥させた。次いで、ガラスシャーレに試験片Aを乗せプラズマ処理を行った。プラズマ処理の条件は、上述したとおりである。プラズマ処理を行った試験片Aとプラズマ処理を行っていない試験片Bに、純水1μLを滴下し、その水滴と試験片表面との接触角を測定、比較した。図2から、プラズマ洗浄処理を行った場合(図2A)の接触角が、プラズマ洗浄処理を行わない場合(図2B)の接触角と比べて、極めて小さくなっており、表面の濡れ性が向上していることが分かる。
【0027】
プラズマ洗浄処理工程における処理条件について、発明者らは、種々の実験を行っている。それらの実験によれば、プラズマ洗浄処理の効果は、プラズマ処理装置において十分な出力で処理ができれば、プラズマ処理装置内における袋状微細管の位置及び開口の向きに依存しないことが分かった。図3には、開口部の向きによる洗浄効果(接触角の変化)の実験結果を示す。開口部の幅が0.5mm、内空間の奥行きが約15mmの微小空間サンプルを用いて、上述のプラズマ処理装置によって処理時間1分、出力200W、真空度10Paの条件で処理した。微小空間サンプルは、20mm角の真鍮板2枚の間に「コ」の字型の厚さ0.5mmのシリコンシートを挟むことによって作成した。プラズマ処理装置内に、開口部の向きをそれぞれ変えて5つの微小空間サンプルを配置した。プラズマ洗浄処理後、微小空間サンプルを分解し、2枚の真鍮板のうちの1枚の微小空間に相当する部分に水滴を滴下して、接触角を測定した。接触角の測定位置は、微小空間サンプルの開口部から10mmの位置である。図3から、プラズマ洗浄処理後の接触角は、開口部の向きに依存しないことが分かる。したがって、本発明に係るプラズマ洗浄処理においては、多数の袋状微細管をその向きや配置を考慮する必要なく同時に洗浄処理することが可能であることが分かる。
【0028】
3.2段階真空注入方法による脱脂液の注入
プラズマ洗浄処理工程によって壁面の不純物が除去されて濡れ性が向上した袋状微細管は、次いで、脱脂処理が行われる。脱脂処理を行うためには、内空間の全体に脱脂液が注入されなければならない。しかしながら、内壁面の濡れ性が向上したとしても、脱脂液の表面張力の影響により、内径が極めて小さい袋状微細管の内空間全体に脱脂液を注入することは難しい。そこで、本発明においては、本発明者らが考案した2段階真空注入方法を用いて、内空間に脱脂液を注入する。なお、この2段階真空注入方法は、ここでの脱脂液の注入のみに用いられるのではなく、本発明に係るメッキ膜形成方法において袋状微細管の内空間に空気が存在している場合に、内空間に処理液(例えば、金メッキ液)を注入する際のいずれにも用いることができる。
【0029】
図4は、本発明の一実施形態に係る、2段階真空注入方法を実現するための装置40の概略図である。装置40は、真空チャンバ41と、該真空チャンバ41内の容器47の内部とパイプ42を通して接続された容器43と、容器43内に保持された脱脂液44と、パイプ42の連通又は遮断を制御することができるバルブ45と、真空チャンバ41内と外部とを連通するパイプ及びバルブを備える大気導入手段48と、チャンバ内41の空気を排出する排気口49とを備える。真空チャンバ内の容器47内には袋状微細管46が入れられる。脱脂液44は、特に限定されるものではなく、電気メッキの前処理において一般に用いられる市販の脱脂液(例えば、中央化学株式会社のギルデオンMK330)とすることができる。なお、ここでは、容器43内に入れられるのは脱脂液であるが、液44は、処理に応じて必要な処理液とされる。
【0030】
本発明に係る2段階真空注入方法は、装置40を用いて以下の手順で行われる。まず、プラズマ洗浄が終了した袋状微細管46が容器47に入れられ、真空チャンバ41内に配置される。容器43内には脱脂液44が入れられ、容器47の内部と容器43の内部とが、パイプ42を介して連通される。パイプ42に設けられたバルブ45が閉じられ、真空チャンバ内の空気が真空ポンプ(図示せず)によって排出口49から排出される。真空チャンバ41内が十分な真空雰囲気になった後(本発明の一実施形態においては、10Pa程度)、バルブ45を開放する。このとき、真空チャンバ41内が真空雰囲気であるため、脱脂液44は、バルブ45の開放に伴って容器47内に供給される。脱脂液44は、容器47内において袋状微細管46全体が脱脂液44に浸漬するのに十分な量が供給される。容器47内の袋状微細管46が脱脂液44に十分に浸漬されたことを確認した後、バルブ48を開放し(パージする)、真空ポンプを停止する。この方法によれば、真空チャンバ41内を真空雰囲気にすることで袋状微細管46の内空間に滞留している空気が排出され、内空間の内壁面は濡れ性が向上しているため、容器47内に脱脂液44が供給されたときに脱脂液44が袋状微細管46の内空間に入り込む。この時点でも脱脂液44は袋状微細管46の内空間に注入されているが、次に真空チャンバ41内に空気が導入されたときに、より確実に脱脂液44が袋状微細管46の内空間に押し込まれることになる。
【0031】
図5は、2段階真空注入装置40を用いて、袋状微細管の内空間に液を注入した実験の結果を示す写真である。袋状微細管の内空間の径は、200μm、100μm、及び50μmとし、内空間の長さは5mmとした。この実験では、内部の状態が観察できるように、透明アクリル製の袋状微細管を用いた。図5の結果から、いずれの径の袋状微細管においても、内空間の全体に、空気が残留することなく液が注入されていることが分かる。
【0032】
一方、袋状の細管内に処理液を注入するための従来方法として、真空浸漬注入方法が存在する。この方法は、真空チャンバ内に予め処理液と細管とを入れた容器を配置し、その状態で真空チャンバ内を、例えば10Pa程度まで減圧した後、真空チャンバ内をパージすることによって、細管の内空間に処理液を注入する方法である。図6は、この従来方法によって袋状微細管の内空間に液体を注入した実験の結果を示す写真であり、内空間の長さを5mmとし、径が300μm、200μm及び100μmの場合の各々について、液の注入状態を示している。実験結果より、内空間の径が300μmの袋状微細管の場合には従来方法によっても内空間の全体に液を注入することができるが、径が300μmより小さくなると、液が内空間を完全に満たさず、内空間の最奥部に空気が残留していることが分かる。
【0033】
4.脱脂処理
袋状微細管の内空間に脱脂液が注入された後、袋状微細管の壁面の脱脂処理が行われる。袋状微細管が脱脂液に浸漬され内空間に脱脂液が注入された段階で壁面の脱脂処理が開始され、脱脂液と壁面とが接する状態を維持することにより、脱脂液の拡散作用により新たな脱脂液が壁面に供給され、脱脂が進行する。ここで、脱脂液によって浮き上がった汚れを物理的に表面から剥離させるために、超音波処理を利用することが好ましい。
【0034】
脱脂処理は、以下のように行われる。まず、袋状微細管が脱脂液に浸漬され、袋状微細管の内空間に脱脂液が注入された後、脱脂液と脱脂液に浸漬された状態の袋状微細管とが入った容器(図4における容器47)を超音波槽内に設置する。超音波槽は、市販の超音波槽(例えば、本多電子株式会社の超音波洗浄機W−115)を用いることができる。超音波槽内の温度は、脱脂液の使用温度(本発明の一実施形態においては、例えば55℃)に設定される。脱脂液の使用温度に設定された超音波槽において、適当な時間(本発明の一実施形態においては、例えば約10分間)超音波処理を行う。
【0035】
なお、後述する工程、例えば水による洗浄処理工程、エッチング液によるエッチング処理工程などにおいて、処理時間を短縮することを目的として、処理液(例えば洗浄液、エッチング液)を拡散させることが必要な場合がある。この場合においても超音波処理が利用されることが好ましく、その方法及び装置は、上述の脱脂処理において説明したものと同様の方法及び装置とすることができる。
【0036】
5.洗浄処理
脱脂処理が終了した後、次の処理を行うために脱脂液を洗浄する必要がある。洗浄処理は、本発明の一実施形態においては以下のように行われる。まず、脱脂処理工程において用いられた脱脂液と袋状微細管とが入った容器から、脱脂液のみを除去する。この際、袋状微細管の内空間に空気を入れないために、袋状微細管の少なくとも内空間が外気に触れない状態で、すなわち袋状微細管の少なくとも内空間が脱脂液の液面から露出しない程度の量の脱脂液が容器内に残るように、脱脂液を除去する。次に、ある程度の量の脱脂液を捨てた容器内に洗浄液を入れ(この時点では、洗浄液と脱脂液とが混合した液体が容器内に存在することになる)、撹拌することによって、容器内の袋状微細管及び容器の内壁を洗浄液で洗浄する。洗浄液は、例えば純水であることが好ましい。再び、袋状微細管の少なくとも内空間が脱脂液と洗浄液との混合液から露出しない程度の量の液体が容器内に残るように、容器内の液体を除去する。さらに容器内に洗浄液を入れ、同様に袋状微細管と容器とを洗浄する。洗浄液の投入、洗浄、及び除去は、脱脂液の泡が消えるまで行うことが好ましく、理想的には3回以上行うことが好ましい。その後、好ましくは、袋状微細管と洗浄液とが入った容器を超音波槽内に配置し、適当な時間(本発明の一実施形態においては、例えば約5分間)超音波による置換洗浄を行う。
【0037】
この処理において、袋状微細管の内空間に空気を入れないために、袋状微細管の少なくとも内空間が液から露出しない程度の量の液が容器内に残るように液を除去することの意味は、以下のとおりである。すなわち、本発明における課題の一つは、袋状微細管の微小な内空間に、メッキ膜形成工程において必要な各種の処理液を如何に注入するかということである。その課題を解決するため、本発明においては、上述した新規な2段階真空注入方法を採用している。ところが、メッキ膜形成工程においては処理ごとに処理液を交換することが必要であり、処理液の交換ごとに2段階真空注入方法を行うことは現実的ではない。そこで、本発明においては、一旦2段階真空注入方法によって袋状微細管の内空間に処理液を注入した後は、次に袋状微細管の内空間に空気を入れることが必要となるまで(例えば、内空間の壁面を乾燥させることが必要となるまで)、処理液の交換の際に少なくとも内空間が空気に露出しないようにする。このように処理することによって、袋状微細管の内空間全体にわたって容易に処理液を置換することができる。
【0038】
6.エッチング処理
脱脂が終了し、脱脂液が洗浄された袋状微細管は、次にエッチング処理が行われることが好ましい。エッチング処理は、袋状微細管の壁面を粗化することによって壁面とメッキ膜との密着性を向上させることを目的として行われる。前の洗浄処理工程において洗浄が終了した微細管と洗浄液とが入った容器から、少なくとも微細管の内空間が露出しないように洗浄液を除去し、容器内にエッチング溶液を入れる。エッチング溶液は、限定されるものではなく、市販のエッチング溶液(例えば、菱江化学株式会社のCPB−40)を用いることができる。洗浄液とエッチング溶液との混合液を容器から除去し、容器内にエッチング溶液を入れる作業を、複数回繰り返してもよい。袋状微細管とエッチング溶液とが入った容器を超音波槽内に配置し、超音波を当てながら、適当な時間(本発明の一実施形態においては、例えば約1分間)エッチング処理を行う。
【0039】
7.洗浄処理
エッチング処理の終了後、超音波槽から容器を取り出し、上述の洗浄処理において説明された方法と同様の方法で洗浄処理を行う。すなわち、容器内の袋状微細管の少なくとも内空間が露出しない程度に容器内の液を除去して容器内に洗浄液を入れることを繰り返しながら、洗浄を行う。その後、好ましくは、超音波層において置換洗浄を行う。
【0040】
8.活性化処理
エッチング処理が終了し、エッチング液が洗浄された袋状微細管は、次に活性化処理が行われることが好ましい。活性化処理は、袋状微細管の壁面に生成された酸化膜を除去することを目的として行われる。前の洗浄工程において洗浄処理が終了した袋状微細管と洗浄液とが入った容器から、少なくとも袋状微細管の内空間が露出しないように洗浄液を除去し、容器内に活性化溶液を入れる。活性化溶液は、限定されるものではなく、市販の活性化溶液(例えば、市販の塩酸35%と純水とを1:1で混合した溶液)を用いることができる。洗浄液と活性化溶液との混合液を容器から除去し、容器内に活性化溶液を入れる作業を、複数回繰り返してもよい。袋状微細管と活性化溶液とが入った容器を超音波槽内に配置し、超音波を当てながら、適当な時間(本発明の一実施形態においては、例えば約1分間)活性化処理を行う。
【0041】
9.洗浄処理
活性化処理の終了後、超音波槽から容器を取り出し、上述の洗浄処理において説明された方法と同様の方法で洗浄処理を行う。すなわち、容器内袋状の微細管の少なくとも内空間が露出しない程度に容器内の液を除去して容器内に洗浄液を入れることを繰り返しながら、洗浄を行う。その後、好ましくは、超音波層において置換洗浄を行う。
【0042】
10.ニッケルメッキ膜形成処理
次に、脱脂処理が終了した袋状微細管、又は、エッチング処理及び活性化処理が終了した袋状微細管の内壁及び外壁に、ニッケルメッキ膜を形成する。脱脂処理後においても、エッチング処理及び活性化処理後においても、洗浄液による洗浄処理が行われている。従って、ニッケルメッキ膜形成処理の前には、洗浄処理の終了した袋状微細管が洗浄液に浸漬した状態で容器内に入っている。ニッケルメッキ膜形成処理においては、まず、容器内の洗浄液とニッケルメッキ液とを置換する。置換は、上述の洗浄処理において説明された方法と同様の方法で行う。すなわち、容器内の袋状微細管の少なくとも内空間が洗浄液から露出しない程度に容器内の洗浄液を容器から除去し、容器内にニッケルメッキ液を入れる。洗浄液とニッケルメッキ液との混合液を容器から除去し、容器にニッケルメッキ液を追加する工程を、複数回繰り返してもよい。微細管とニッケルメッキ液とが入った容器を超音波槽内に配置し、超音波を当てながら、適当な時間(本発明の一実施形態においては、例えば約10分間)ニッケルメッキ液の置換処理を行う。超音波を当てることによって、袋状微細管の内部の金属塩濃度と外部の濃度とを均一にすることができる。
【0043】
ニッケルメッキ液は、限定されるものではなく、例えば、硫酸ニッケル、塩化ニッケル及びホウ酸を主成分とするワット浴などのような一般的なニッケルメッキ液を用いることができる。本発明の一実施形態においては、ニッケルメッキ液として、1種又は数種類の市販の光沢剤を添加した光沢ニッケルメッキ液を用いることが好ましい。
【0044】
なお、ニッケルメッキ膜の形成前に、洗浄液を乾燥させておくことも可能である。その場合には、乾燥終了後には、袋状微細管の内空間には空気が存在しているため、上述の脱脂液の注入又は後述する金メッキ液の注入と同様に、2段階真空注入方法を利用して内空間にニッケルメッキ液を注入することになる。
【0045】
次いで、袋状微細管とニッケルメッキ液とが入った容器を超音波槽から取り出し、パルスリバース電気メッキ処理を行う。パルスリバース電気メッキ処理には、バレルメッキ方法を用いることが好ましい。通常は、電気メッキ処理においては、直流電源を用いて直流電流によってメッキ処理が行われる。しかしながら、本発明が対象とする袋状の微小内空間を有する微細管の場合には、通常の直流電源による電気メッキによる処理では、生成されるメッキ膜の厚さが内空間の入り口の部分と奥の部分とで異なることがある。これは、微小な内空間を有する袋状微細管においては、袋状微細管の内壁面全体で電流密度に差が生じ、表面への金属析出が不均一になることが原因と考えられる。例えば、内面のメッキ膜の厚さが不十分な袋状微細管の場合には、耐食性や褶動による摩耗への耐久性が下がる。また、開口部付近のメッキ膜の厚さが厚い場合には、外形寸法が変わる、内径の狭まりによりプランジャが入らなくなるといった問題が生じる可能性がある。そこで、本発明においては、電気メッキ処理の方法としてパルスリバース電気メッキ処理を行う。
【0046】
パルスリバース電気メッキ処理は、電気メッキ装置において、直流電源に代えてパルス電源を用い、電流の方向を周期的に変えながら行うメッキ処理である。パルスリバース電気メッキ処理においては、袋状微細管の壁面に一旦形成されたメッキ膜が、逆方向の電流を流すことによってイオン化され、メッキ液に戻る。メッキ膜がイオン化される際には、形成されたメッキ膜の厚みが厚い部分、すなわち高電部から優先的にイオン化されるため、最終的には均一な厚みのメッキ膜が全体に形成されることになる。図7は、袋状微細管に、通常の直流電源による電気メッキ処理によってニッケルメッキ膜を形成した場合(図7A)と、パルス電源によるパルスリバース電気メッキ処理によってニッケルメッキ膜を形成した場合(図7B)と示す写真である。図7Aは、電流密度1A/dm2、反応時間30分で直流電源による電気メッキ処理を行い、図7Bは、電流密度−3A/dm2〜1A/dm2、反応時間30分、パルス幅0.5msec〜0.1msecでパルス電源によるパルスリバース電気メッキ処理を行った結果である。この結果から、パルスリバース電気メッキ処理を行うことによって、均一な厚みのメッキ膜が形成されることが分かる。
【0047】
本発明の一実施形態に係るパルスリバース電気メッキ処理においては、まず、洗浄後の容器内の袋状微細管とニッケルメッキ液とを回転容器(バレル)に投入する。この際、容器内のニッケルメッキ液は、袋状微細管の少なくとも内空間が液から露出しない最小限の量のみがバレルに入るようにすることが好ましい。バレル内には、洗浄処理済みのダミー材も投入する。ダミー材は、通常、バレル内において電極と袋状微細管との間を通電し、撹拌性を向上させる目的で用いられる。ニッケルメッキ浴槽内でバレルを回転させながら、バレル外部の浴槽内に設置されたニッケル電極と袋状微細管との間にパルス電源を用いて周期的に方向が変化する電流を流すことによって、袋状微細管の内外壁表面に均一な厚みのニッケルメッキ膜が形成される。パルスリバース電気メッキ装置は、市販の装置(例えば、北斗電工株式会社のHCP−301H)を用いることができる。本発明の一実施形態においては、例えば、内径100μm、内空間の長さ1300μm、外径160μm、長さ1450μmの微細管にメッキ膜を形成する場合には、電流密度−3A/dm2〜1A/dm2、反応時間30分、パルス幅0.5msec〜0.1msecという条件でパルスリバース電気メッキ処理が行われることが好ましい。
【0048】
11.洗浄処理
ニッケルメッキ膜の形成後、バレルからメッキ液ごと袋状微細管を容器に取り出し、上述の洗浄処理において説明された方法と同様の方法で洗浄処理を行う。すなわち、容器内の袋状微細管の少なくとも内空間が液から露出しない程度に容器内の液を除去して容器内に洗浄液を入れることを繰り返しながら、洗浄を行う。その後、好ましくは、超音波層において置換洗浄を行う。
【0049】
12.2段階真空注入装置による金メッキ液の注入
ニッケルメッキ膜が形成された袋状微細管の表面には、次に金メッキ膜が形成される。金メッキ膜の形成処理に進む前には、袋状微細管の内外壁の表面を一旦乾燥させる必要がある。乾燥の方法は特に限定されるものではないが、この後に必要となる金メッキ液の注入に、脱脂液の注入の際に行われた方法と同様の2段階真空注入方法を利用することになるため、洗浄後の袋状微細管を図4に示される2段階真空注入装置の真空チャンバ41に入れて真空乾燥させることが好ましい。まず、洗浄が終了した袋状微細管46を容器47に入れ、真空チャンバ41内に配置する。容器47の内部と連通されたパイプ42を介して接続された容器43内には金メッキ液44を入れる。パイプ42に設けられたバルブ45を閉じて、真空チャンバ内の空気を真空ポンプ(図示せず)によって排出口49から排出する。そのまま、真空チャンバ41内が十分な真空雰囲気になり(本発明の一実施形態においては、10Pa程度)、微細管が乾燥状態となるまで(本発明の一実施形態においては、例えば約30分〜1時間)待機する。
【0050】
袋状微細管が十分に乾燥した後、バルブ45を開放して金メッキ液44を容器47内に供給する。金メッキ液は、市販の金メッキ液(例えば、メルテックス株式会社のオウロナール44BC)を用いることができる。金メッキ液44は、容器47内において袋状微細管46全体が金メッキ液44に浸漬するのに十分な量が供給される。容器47内の袋状微細管46が金メッキ液44に十分に浸漬されたことを確認した後、バルブ48を開放し(パージする)、真空ポンプを停止する。この方法によれば、真空チャンバ41内を真空雰囲気にすることで袋状微細管46の内空間に滞留している空気が排出されるため、容器47内に金メッキ液44が供給されたときに金メッキ液44が袋状微細管46の内空間に入り込む。この時点でも金メッキ液44は袋状微細管46の内空間に注入されているが、次に真空チャンバ41内に空気が導入されたときに、より確実に金メッキ液44が袋状微細管46の内空間に押し込まれることになる。
【0051】
13.金メッキ膜の形成処理
金メッキ膜の形成は、上述のニッケルメッキ膜の形成と同様に、パルスリバース電気メッキによって行われる。一実施形態においては、パルスリバース電気メッキ処理は、バレルメッキ方法を用いることが好ましい。まず、金メッキ液注入後の容器内の袋状微細管と金メッキ液とをバレルに投入する。この際、容器内の金メッキ液は、袋状微細管の少なくとも内空間が液から露出しない最小限の量のみがバレルに入るようにすることが好ましい。バレル内には、洗浄処理済みのダミー材も投入する。次いで、袋状微細管及びダミー材が投入されたバレルを金メッキ浴槽内で回転させながら、バレル外部の浴槽内に設置された金電極と袋状微細管との間にパルス電源を用いて周期的に方向が変化する電流を流すことによって、袋状微細管の内外壁表面に均一な厚みの金メッキ膜が形成される。本発明の一実施形態においては、例えば、ニッケルメッキ膜が形成された上述の微細管に金メッキ膜を形成する場合には、電流密度−0.3A/dm2〜0.1A/dm2、反応時間80分、パルス幅0.5msec〜0.1msecという条件でパルスリバース電気メッキ処理が行われることが好ましい。
【0052】
14.洗浄処理
金メッキ膜の形成後、バレルからメッキ液ごと袋状微細管を容器に取り出し、上述の洗浄処理において説明された方法と同様の方法で洗浄処理を行う。すなわち、容器内の袋状微細管の少なくとも内空間が露出しない程度に容器内の液を除去して容器内に洗浄液を入れることを繰り返しながら、洗浄を行う。洗浄処理の終了後、袋状微細管を洗浄液から取り出し、乾燥させる。
【実施例】
【0053】
(実施例)
図8に、本発明の一実施形態に係る方法によって作成された、均一な厚さのニッケルメッキ膜及び金メッキ膜が生成された袋状微細管の断面を示す。このメッキ膜は、本明細書における発明を実施するための形態に記載された、上述の本発明の一実施形態による方法、装置、及び条件を用いて作成されたものである。図8から、袋状微細管の内壁面にメッキ切れを起こすことなく概ね均一のメッキ膜が形成されていることが分かる。メッキ膜の厚さは、袋状微細管の開口部(図8において袋状微細管の右側)から400μm、800μm、及び1200μmの位置で、ニッケルメッキ膜の厚さは、それぞれ1.17μm、0.454μm、及び0.556μmであり、金メッキ膜の厚さは、それぞれ0.14μm、0.025μm、及び0.104μmであった。
【0054】
(比較例1)
図9は、従来の処理液注入方法を用いて脱脂液及びメッキ液が注入された場合の袋状微細管の断面を示す写真である。図9は、内径350μm、奥行き1800μmのベリリウム鋼の袋状細管に、ニッケルメッキ膜を形成したものである。ニッケルメッキ膜の形成方法は以下のとおりである。まず、本明細書において従来の処理液注入方法として上述された真空浸漬注入方法を用いて、袋状細管の内空間に脱脂液を注入した。次に、本明細書において上述された方法と同じ脱脂処理、洗浄処理、エッチング処理、洗浄処理、活性化処理、及び洗浄処理を行った。次に、袋状細管の入った容器にニッケルメッキ液を入れ、本明細書において上述された真空浸漬注入方法を用いて、袋状細管の内空間にニッケルメッキ液を注入した。最後に、直流電源による電気メッキ処理(電流密度1A/dm2、反応時間30分)を行った。各処理液は、本明細書において上述されたものを用いた。従来の真空浸漬注入方法では、図6に示されるように細管の内空間の最奥部に空気が残留するため、この部分には脱脂液やメッキ液などの処理液が到達せず、結果として、この部分(図9における袋状微細管の内空間の左側端部における黒っぽい部分)にメッキ不良(メッキ切れ)が生じたことが分かる。
【0055】
(比較例2)
本明細書において上述したように、図7は、直流電源による電気メッキ処理(直流メッキ法)によって微細管にニッケルメッキ膜を形成した場合と、パルス電源によるパルスリバース電気メッキ処理(PRメッキ法)によってニッケルメッキ膜を形成した場合とを比較した結果である。図7から、上述のとおり、パルスリバース電気メッキ処理を行わない場合には、均一な厚みのメッキ膜が形成されないことが分かる。
【符号の説明】
【0056】
40:2段階真空注入装置
41:真空チャンバ
42:パイプ
43、47:容器
44:液
45:バルブ
46:微細管
48:大気導入手段
49:排気手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッキ膜形成技術に関し、より具体的には、微小な内空間を有する袋状の微細管の内外壁面に均一な厚みのメッキ膜を形成するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報関連機器の小型化、高機能化により、これらの機器に用いられる部品や関連機器等も微小化が要求されている。このような要求を満たすべき部品や関連機器の一つに、半導体集積回路検査機器のテストヘッドの心臓部であるコンタクトプローブがある。コンタクトプローブは、通常、例えば特許文献1の図3に記載されているように、一端が閉塞された導電チューブとプランジャとを備える。プランジャは、導電チューブの内壁面に沿って摺動し、導電チューブに対して相対移動することにより、その一端が導電チューブの他端の開口から突出するように構成されている。プランジャは、導電チューブ内に設置されたスプリングによって付勢されている。プランジャの先端が被検体に当接した際におけるプランジャと被検体との間の電気的導通により、被検体の電気回路の断線、ショート等の点検が行われることになる。
【0003】
上述のように、コンタクトプローブにおいては、導電チューブとプランジャとの間の電気的導通は、導電チューブの内壁とプランジャの外壁とが接触することによって得られる。この接触の際の電気抵抗を小さくするとともに、耐摩耗性、耐食性、密着性を向上させる目的で、一般に、導電チューブの内壁とプランジャの外壁とに導電性薄膜、いわゆるメッキ膜が形成される。メッキ膜の形成は、一般に、電解メッキ又は無電解メッキのいずれを用いて行ってもよい。
【0004】
導電チューブのような「細管」は、その内径が長さに対して極めて小さいのが一般的である。こういった細管の内壁面にメッキ膜を形成する際の問題は、メッキ膜の形成工程に必要な各種の処理液が、液の表面張力のために細管の内部に入らないことである。液が細管の内部に入らないと、メッキ膜の形成工程において必要な脱脂液、エッチング液、活性化液、メッキ液などが細管の奥まで届かず、必要なメッキ膜を内壁面に形成することができない。こうした問題を解決する手段として、例えば特許文献1の従来技術に記載された技術が提案されている。特許文献1に記載の技術では、例えば内径400μm、長さ2500μmの細管の内壁面にメッキ膜を形成することを目的として、細管の閉塞端側に細管の内部と外部とを連通する貫通孔が設けられる。この貫通孔の存在によって、細管内の閉塞端側までメッキ液などを侵入させることができるようになるため、内壁面へのメッキ膜の形成が可能になる。
【0005】
特許文献2には、両端が開放された細管の内壁面へのメッキ膜形成に関する技術が提案されている。この技術では、細管の内側と外側に存在するそれぞれのメッキ液の濃度を、細管の内側のメッキ液を強制的に流動させて同等に保つことによって、正常で均一なメッキ膜を内壁面に形成するものである。
【0006】
これらの技術のように、内径が小さく長さが長い細管であっても、閉塞端に貫通孔を設けることができるか又は両端が開放されている場合には、メッキ膜形成に必要な各種の処理液が細管の内部の奥にまで到達できるため、内壁面へのメッキ膜の形成が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4149196号
【特許文献2】特開2007−169771
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、細管の内壁面にメッキ膜を形成する従来の技術では、両端が開放されている細管や、袋状であっても閉塞端側に貫通孔を設けることができる細管の場合には、内壁面へのメッキは不可能ではない。しかしながら、内径(より具体的には、細管の開放端の内径)が例えば約300μmより小さく長さが長い細管のような極めて微小な内空間を有する袋状の細管(以下、本明細書においては「袋状微細管」という。)の場合には、袋状微細管の閉塞端の内外をつなぐ貫通孔を設けること自体が極めて難しく、特に内径が約100μmより小さい袋状微細管においては、貫通孔を設けることは技術的にほぼ不可能である。
【0009】
また、たとえ貫通孔を設けて内壁面をメッキする技術を用いることができるような内径を有する袋状の細管の場合であっても、貫通孔から袋状の細管の内部に塵埃などが侵入して内壁面に付着し、袋状の細管の接触抵抗が増大し、動作不良が発生するおそれがある。特許文献1では、こうした問題に対応するための方法として、細管内の閉塞端とスプリングの端部との間に閉塞部材を設けることによって、貫通孔による導電チューブの内部と外部との連通を遮断する方法が提案されている。しかしながら、こうした方法は、細管の内部にさらに小径の部品を挿入し、所望の位置に位置決めするという極めて複雑な工程を必要とするため、実際の製品への適用は難しいと考えられる。
【0010】
さらに、袋状の細管においては、貫通孔を設けることができる場合であっても、内部におけるメッキ液の拡散が不均一となり、袋状の細管の入り口近くの内壁面と奥の内壁面とでメッキ膜厚に差が生じるため、均一なメッキ膜の形成は不可能であった。
【0011】
本発明は、内径が極めて小さく長さが長い袋状の細管、中でも内径が約100μm以下のアスペクト比の大きい袋状微細管の内壁面に対しても、貫通孔を設けることなく均一なメッキ膜を形成することが可能な方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、内径が約100μm以下の微小な内空間を有する袋状微細管であっても、プラズマ処理による内壁面の濡れ性の向上と内空間への処理液の新たな注入方法とを組み合わせることによって、通常の方法では処理液が入らない微小な空間にも処理液を注入できることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
本発明の第1の態様は、一端が閉じた袋状微細管の外壁と内空間の内壁とにメッキ膜を形成する方法を提供する。本方法は、真空雰囲気内に配置された袋状微細管にプラズマを照射することにより、袋状微細管の内壁及び外壁の表面の不純物を除去するプラズマ洗浄工程と、不純物が除去され内空間に空気が残留していない状態の真空雰囲気内の袋状微細管を脱脂液に浸漬させ、真空雰囲気を大気圧雰囲気に置換することにより、袋状微細管の内空間の全体に脱脂液を注入し、袋状微細管の内壁及び外壁の脱脂処理を行う脱脂工程とを含む。本方法は、さらに、脱脂された袋状微細管の少なくとも内空間に空気が入らないようにしながら脱脂液を洗浄液に置換し、袋状微細管を洗浄する脱脂液洗浄工程と、洗浄された袋状微細管の少なくとも内空間に空気が入らないようにしながら洗浄液をメッキ液に置換し、袋状微細管にパルスリバース電気メッキ処理を行うメッキ工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
一実施形態においては、本方法は、さらに、上述のメッキ工程の後、メッキされた袋状微細管の少なくとも内空間に空気が入らないようにしながら袋状微細管を洗浄液で洗浄し、洗浄後に袋状微細管を乾燥させる工程を含むことが好ましい。本方法は、さらに、乾燥された袋状微細管を真空雰囲気内に配置した後、内空間に空気が残留していない状態の袋状微細管をメッキ液とは別のメッキ液に浸漬させ、真空雰囲気を大気圧雰囲気に置換することにより、袋状微細管の内空間の全体に別のメッキ液を注入し、袋状微細管に別のメッキ液によるパルスリバース電気メッキ処理を行う工程を含むことが好ましい。
【0015】
一実施形態においては、本方法は、さらに、脱脂液洗浄工程の後、洗浄された袋状微細管の少なくとも内空間に空気が入らないようにしながら洗浄液をエッチング液に置換してエッチング処理を行うエッチング工程と、エッチングされた袋状微細管の少なくとも内空間に空気が入らないようにしながらエッチング液を洗浄液に置換して袋状微細管を洗浄するエッチング液洗浄工程とを含むことが好ましい。エッチング工程を行った場合には、本方法は、さらに、エッチング工程に続く袋状微細管の洗浄工程の後、洗浄された袋状微細管の少なくとも内空間に空気が入らないようにしながら洗浄液を活性化液に置換して活性化処理を行う活性化工程と、活性化された袋状微細管の少なくとも内空間に空気が入らないようにしながら活性化液を洗浄液に置換して袋状微細管を洗浄する活性化液洗浄工程とを含むことが好ましい。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、本発明は、一端が閉じた袋状微細管の内空間の全体に液体を注入するための液体注入装置を提供する。本装置は、真空チャンバと、真空チャンバの内部に配置され、袋状微細管と液体とを収容可能な容器と、真空チャンバの内部の空気を真空チャンバの外部に排出するためのポンプと、真空チャンバの内部と外部とを連通する排出口とを含む排気手段と、真空チャンバの内部に配置された容器の内部と真空チャンバの外部とを連通する流路と、流路内の液体の通過又は遮断を制御するためのバルブとを含む液体導入手段と、真空チャンバの外部に配置され、流路を介して容器の内部に供給される液体を収容可能な液体容器と、真空チャンバの内部の真空雰囲気を大気圧雰囲気に置換するための大気導入手段と、を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の第3の態様によれば、本発明は、一端が閉じた袋状微細管の外壁と内空間の内壁とにメッキ膜を形成するためのメッキ膜形成システムを提供する。本システムは、真空雰囲気の真空チャンバの内部に配置された袋状微細管に照射されるプラズマを発生させるプラズマ発生手段を備えるプラズマ洗浄装置と、請求項5に記載の液体注入装置において液体として脱脂液を用いた、プラズマの作用によって不純物が除去された袋状微細管の内空間に脱脂液を注入するための脱脂液注入装置と、少なくとも内空間に空気が入らないようにしながら洗浄液を用いて洗浄され内空間にメッキ液が入れられた袋状微細管にパルスリバース電気メッキを行うメッキ装置と、を備えることを特徴とする。
【0018】
一実施形態によれば、本システムは、請求項5に記載の液体注入装置において液体として前述のメッキ液とは別のメッキ液を用い、前述のメッキ液による電気メッキ処理が行われた袋状微細管の内空間に別のメッキ液を注入するためのメッキ液注入装置と、袋状微細管に別のメッキ液によるパルスリバース電気メッキ処理を行うメッキ装置と、を備えることが好ましい。
【0019】
本発明によれば、プラズマ処理工程において袋状微細管をプラズマ洗浄することによって、袋状微細管の微小な内空間の壁面においても効果的に不純物を除去して壁面の濡れ性を向上させることができ、その後、脱脂処理工程及びその後の工程において新規な注入方法を利用して、壁面の濡れ性が向上し且つ空気が残留していない内空間全体に脱脂液及びその後の処理液を注入することができる。さらに、内空間全体にメッキ液を注入した後のパルスリバース電気メッキ処理によって、袋状微細管の壁面に均一な厚みのメッキ膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る、袋状微細管にメッキ膜を形成するための方法のフロー図である。
【図2A】プラズマ洗浄処理前の壁面と液体との接触角を測定した実験結果の写真である。
【図2B】プラズマ洗浄処理後の壁面と液体との接触角を測定した実験結果の写真である。
【図3】開口部の向きによる洗浄効果(接触角の変化)の実験結果を示す。
【図4】本発明に係る2段階真空注入方法を実現するための装置の一実施形態の概略図を示す。
【図5】図4に示される2段階真空注入装置を用いて袋状微細管の内空間に液体を注入した実験の結果を示す写真である。
【図6】従来の方法によって袋状微細管の内空間に液体を注入した実験の結果を示す写真である。
【図7A】直流電源による電気メッキ処理(直流メッキ法)によって袋状微細管にニッケルメッキ膜を形成した場合の写真である。
【図7B】パルス電源によるパルスリバース電気メッキ処理(PRメッキ法)によってニッケルメッキ膜を形成した場合の写真である。
【図8】本発明の一実施形態に係る方法によって作成された、均一な厚さのニッケルメッキ膜及び金メッキ膜が生成された袋状微細管の断面を示す写真である。
【図9】従来の注入方法を用いて脱脂液が注入された袋状微細管に金メッキ膜を形成した場合の断面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る袋状微細管へのメッキ膜形成方法を詳細に示す。図1は、本発明の一実施形態に係る、袋状微細管にメッキ膜を形成するための方法のフロー図である。本発明において、メッキ膜を形成することができる袋状微細管は、径が極めて小さい中空の内空間を有する一端が閉じた形状の微細な管状部材で、断面の形状は円形であることが好ましく、その材質は、例えば真鍮、ベリリウム銅、快削黄銅といった金属とすることができる。本発明によれば、例えば内空間の径(すなわち、袋状微細管の内径)が約100μm、内空間の長さ(すなわち、内空間の入り口から最奥部までの長さ)が約1400μmなどといったアスペクト比の大きな袋状微細管であっても、その内外壁面に均一なメッキ膜を形成することができる。袋状微細管の外壁の形状は、特に限定されるものではなく、例えば外壁のいずれかの位置にいずれかの形状の突起部が設けられた形状であっても良い。一方、袋状微細管の内空間の壁面は、突起が存在しない平坦な面であることが好ましい。
【0022】
以下の説明においては、本発明の一実施形態として、袋状微細管の内外壁面に2層のメッキ膜を形成する場合について説明する。ここでは、ベリリウム銅製の袋状微細管(内径が100μm、内空間の入り口から最奥部までの長さが1300μm)の内外壁面上に直接形成されるメッキ膜をニッケルメッキ膜とし、ニッケルメッキ膜の上にさらに形成されるメッキ膜を金メッキ膜とする。こうしたメッキ膜の構成においては、一般に、ニッケルメッキ膜は、耐食性及び硬度の向上を目的とし、金メッキ膜は、耐食性及び導電性の向上を目的としている。なお、こうしたメッキ膜の構成以外にも、例えば、密着性向上を目的として銅メッキ膜を形成し、その上にニッケルメッキ膜と金メッキ膜とを形成した構成とすることもでき、本発明に係るメッキ膜の形成方法は、こうした三層のメッキ膜構成の場合にも適用可能である。
【0023】
1.袋状微細管の製造
袋状微細管は、当業者に周知の方法で製造することができる。袋状微細管の製造方法の一例は、以下のとおりである。まず、所定の合金組成を満たすように複数の原料粉末を混合して原料混合粉末を調製する。この原料混合粉末から溶解法によりインゴットを作製する。次いで、線引き加工、圧延加工、鍛造加工などの方法によって、所定の直径を有する合金線材を作製する。これを必要な長さに切断した後、先端部から切削加工によって内空間を形成し、最終的に袋状微細管を製造する。
【0024】
2.プラズマ洗浄処理工程
上述の製造工程によって製造された袋状微細管の内外壁面は、製造の際に付着した油分や切削屑などの不純物によって表面が汚れており、このままでは表面上にメッキ膜を形成することができない。従って、こうした不純物を除去するために、通常は、壁面の表面の脱脂液による脱脂処理が必要である。しかしながら、このような壁面は、通常、不純物によって表面の濡れ性が低下している。したがって、表面の濡れ性の低下と液の表面張力の影響により、袋状微細管の内空間に液が入っていかず、内空間の全体に脱脂液を注入することはきわめて難しい。この問題を解決するため、本発明においては、脱脂液による脱脂処理の前処理として、プラズマによる洗浄処理を行う。プラズマによって洗浄処理を行うことにより、袋状微細管の最奥部であっても内壁面の表面の不純物が除去されて濡れ性が向上し、内空間の奥まで脱脂液を注入することが可能になる。
【0025】
プラズマ洗浄処理工程は、本発明の一実施形態においては、市販のプラズマ処理装置(例えば、ヤマト科学株式会社のプラズマクリーナ PDC200)を用いて行うことができる。プラズマ洗浄処理工程は、以下のように行われる。まず、プラズマ処理装置のチャンバ内に袋状微細管が配置される。袋状微細管は、例えばガラスシャーレ等の容器に入れた状態でチャンバ内に配置されることが好ましい。次いで、プラズマ処理の条件を設定し、プラズマ洗浄処理を行う。プラズマ洗浄処理を行う際の条件は、本発明の一実施形態においては、例えば上述のプラズマ処理装置を用いる場合には、空気プラズマを用いて、真空度約10Pa、出力300W、1分間以上という条件での処理が好ましい。プラズマ洗浄処理が完了した後、チャンバを大気圧に戻し、袋状微細管が取り出される。洗浄ガスとしては、空気、アルゴンガス、水素ガスなどを用いることができる。
【0026】
図2は、プラズマ洗浄による表面の濡れ性の向上を示す実験の結果を示す写真であり、プラズマ洗浄処理前後の試験片の表面と液体との接触角を測定した結果の写真である。実験の方法は以下のとおりである。まず、試験片A、B(真鍮製、20mm×20mm)を、ヘプタンにオレイン酸を0.05%含有させたものに浸漬し、乾燥させた。次いで、ガラスシャーレに試験片Aを乗せプラズマ処理を行った。プラズマ処理の条件は、上述したとおりである。プラズマ処理を行った試験片Aとプラズマ処理を行っていない試験片Bに、純水1μLを滴下し、その水滴と試験片表面との接触角を測定、比較した。図2から、プラズマ洗浄処理を行った場合(図2A)の接触角が、プラズマ洗浄処理を行わない場合(図2B)の接触角と比べて、極めて小さくなっており、表面の濡れ性が向上していることが分かる。
【0027】
プラズマ洗浄処理工程における処理条件について、発明者らは、種々の実験を行っている。それらの実験によれば、プラズマ洗浄処理の効果は、プラズマ処理装置において十分な出力で処理ができれば、プラズマ処理装置内における袋状微細管の位置及び開口の向きに依存しないことが分かった。図3には、開口部の向きによる洗浄効果(接触角の変化)の実験結果を示す。開口部の幅が0.5mm、内空間の奥行きが約15mmの微小空間サンプルを用いて、上述のプラズマ処理装置によって処理時間1分、出力200W、真空度10Paの条件で処理した。微小空間サンプルは、20mm角の真鍮板2枚の間に「コ」の字型の厚さ0.5mmのシリコンシートを挟むことによって作成した。プラズマ処理装置内に、開口部の向きをそれぞれ変えて5つの微小空間サンプルを配置した。プラズマ洗浄処理後、微小空間サンプルを分解し、2枚の真鍮板のうちの1枚の微小空間に相当する部分に水滴を滴下して、接触角を測定した。接触角の測定位置は、微小空間サンプルの開口部から10mmの位置である。図3から、プラズマ洗浄処理後の接触角は、開口部の向きに依存しないことが分かる。したがって、本発明に係るプラズマ洗浄処理においては、多数の袋状微細管をその向きや配置を考慮する必要なく同時に洗浄処理することが可能であることが分かる。
【0028】
3.2段階真空注入方法による脱脂液の注入
プラズマ洗浄処理工程によって壁面の不純物が除去されて濡れ性が向上した袋状微細管は、次いで、脱脂処理が行われる。脱脂処理を行うためには、内空間の全体に脱脂液が注入されなければならない。しかしながら、内壁面の濡れ性が向上したとしても、脱脂液の表面張力の影響により、内径が極めて小さい袋状微細管の内空間全体に脱脂液を注入することは難しい。そこで、本発明においては、本発明者らが考案した2段階真空注入方法を用いて、内空間に脱脂液を注入する。なお、この2段階真空注入方法は、ここでの脱脂液の注入のみに用いられるのではなく、本発明に係るメッキ膜形成方法において袋状微細管の内空間に空気が存在している場合に、内空間に処理液(例えば、金メッキ液)を注入する際のいずれにも用いることができる。
【0029】
図4は、本発明の一実施形態に係る、2段階真空注入方法を実現するための装置40の概略図である。装置40は、真空チャンバ41と、該真空チャンバ41内の容器47の内部とパイプ42を通して接続された容器43と、容器43内に保持された脱脂液44と、パイプ42の連通又は遮断を制御することができるバルブ45と、真空チャンバ41内と外部とを連通するパイプ及びバルブを備える大気導入手段48と、チャンバ内41の空気を排出する排気口49とを備える。真空チャンバ内の容器47内には袋状微細管46が入れられる。脱脂液44は、特に限定されるものではなく、電気メッキの前処理において一般に用いられる市販の脱脂液(例えば、中央化学株式会社のギルデオンMK330)とすることができる。なお、ここでは、容器43内に入れられるのは脱脂液であるが、液44は、処理に応じて必要な処理液とされる。
【0030】
本発明に係る2段階真空注入方法は、装置40を用いて以下の手順で行われる。まず、プラズマ洗浄が終了した袋状微細管46が容器47に入れられ、真空チャンバ41内に配置される。容器43内には脱脂液44が入れられ、容器47の内部と容器43の内部とが、パイプ42を介して連通される。パイプ42に設けられたバルブ45が閉じられ、真空チャンバ内の空気が真空ポンプ(図示せず)によって排出口49から排出される。真空チャンバ41内が十分な真空雰囲気になった後(本発明の一実施形態においては、10Pa程度)、バルブ45を開放する。このとき、真空チャンバ41内が真空雰囲気であるため、脱脂液44は、バルブ45の開放に伴って容器47内に供給される。脱脂液44は、容器47内において袋状微細管46全体が脱脂液44に浸漬するのに十分な量が供給される。容器47内の袋状微細管46が脱脂液44に十分に浸漬されたことを確認した後、バルブ48を開放し(パージする)、真空ポンプを停止する。この方法によれば、真空チャンバ41内を真空雰囲気にすることで袋状微細管46の内空間に滞留している空気が排出され、内空間の内壁面は濡れ性が向上しているため、容器47内に脱脂液44が供給されたときに脱脂液44が袋状微細管46の内空間に入り込む。この時点でも脱脂液44は袋状微細管46の内空間に注入されているが、次に真空チャンバ41内に空気が導入されたときに、より確実に脱脂液44が袋状微細管46の内空間に押し込まれることになる。
【0031】
図5は、2段階真空注入装置40を用いて、袋状微細管の内空間に液を注入した実験の結果を示す写真である。袋状微細管の内空間の径は、200μm、100μm、及び50μmとし、内空間の長さは5mmとした。この実験では、内部の状態が観察できるように、透明アクリル製の袋状微細管を用いた。図5の結果から、いずれの径の袋状微細管においても、内空間の全体に、空気が残留することなく液が注入されていることが分かる。
【0032】
一方、袋状の細管内に処理液を注入するための従来方法として、真空浸漬注入方法が存在する。この方法は、真空チャンバ内に予め処理液と細管とを入れた容器を配置し、その状態で真空チャンバ内を、例えば10Pa程度まで減圧した後、真空チャンバ内をパージすることによって、細管の内空間に処理液を注入する方法である。図6は、この従来方法によって袋状微細管の内空間に液体を注入した実験の結果を示す写真であり、内空間の長さを5mmとし、径が300μm、200μm及び100μmの場合の各々について、液の注入状態を示している。実験結果より、内空間の径が300μmの袋状微細管の場合には従来方法によっても内空間の全体に液を注入することができるが、径が300μmより小さくなると、液が内空間を完全に満たさず、内空間の最奥部に空気が残留していることが分かる。
【0033】
4.脱脂処理
袋状微細管の内空間に脱脂液が注入された後、袋状微細管の壁面の脱脂処理が行われる。袋状微細管が脱脂液に浸漬され内空間に脱脂液が注入された段階で壁面の脱脂処理が開始され、脱脂液と壁面とが接する状態を維持することにより、脱脂液の拡散作用により新たな脱脂液が壁面に供給され、脱脂が進行する。ここで、脱脂液によって浮き上がった汚れを物理的に表面から剥離させるために、超音波処理を利用することが好ましい。
【0034】
脱脂処理は、以下のように行われる。まず、袋状微細管が脱脂液に浸漬され、袋状微細管の内空間に脱脂液が注入された後、脱脂液と脱脂液に浸漬された状態の袋状微細管とが入った容器(図4における容器47)を超音波槽内に設置する。超音波槽は、市販の超音波槽(例えば、本多電子株式会社の超音波洗浄機W−115)を用いることができる。超音波槽内の温度は、脱脂液の使用温度(本発明の一実施形態においては、例えば55℃)に設定される。脱脂液の使用温度に設定された超音波槽において、適当な時間(本発明の一実施形態においては、例えば約10分間)超音波処理を行う。
【0035】
なお、後述する工程、例えば水による洗浄処理工程、エッチング液によるエッチング処理工程などにおいて、処理時間を短縮することを目的として、処理液(例えば洗浄液、エッチング液)を拡散させることが必要な場合がある。この場合においても超音波処理が利用されることが好ましく、その方法及び装置は、上述の脱脂処理において説明したものと同様の方法及び装置とすることができる。
【0036】
5.洗浄処理
脱脂処理が終了した後、次の処理を行うために脱脂液を洗浄する必要がある。洗浄処理は、本発明の一実施形態においては以下のように行われる。まず、脱脂処理工程において用いられた脱脂液と袋状微細管とが入った容器から、脱脂液のみを除去する。この際、袋状微細管の内空間に空気を入れないために、袋状微細管の少なくとも内空間が外気に触れない状態で、すなわち袋状微細管の少なくとも内空間が脱脂液の液面から露出しない程度の量の脱脂液が容器内に残るように、脱脂液を除去する。次に、ある程度の量の脱脂液を捨てた容器内に洗浄液を入れ(この時点では、洗浄液と脱脂液とが混合した液体が容器内に存在することになる)、撹拌することによって、容器内の袋状微細管及び容器の内壁を洗浄液で洗浄する。洗浄液は、例えば純水であることが好ましい。再び、袋状微細管の少なくとも内空間が脱脂液と洗浄液との混合液から露出しない程度の量の液体が容器内に残るように、容器内の液体を除去する。さらに容器内に洗浄液を入れ、同様に袋状微細管と容器とを洗浄する。洗浄液の投入、洗浄、及び除去は、脱脂液の泡が消えるまで行うことが好ましく、理想的には3回以上行うことが好ましい。その後、好ましくは、袋状微細管と洗浄液とが入った容器を超音波槽内に配置し、適当な時間(本発明の一実施形態においては、例えば約5分間)超音波による置換洗浄を行う。
【0037】
この処理において、袋状微細管の内空間に空気を入れないために、袋状微細管の少なくとも内空間が液から露出しない程度の量の液が容器内に残るように液を除去することの意味は、以下のとおりである。すなわち、本発明における課題の一つは、袋状微細管の微小な内空間に、メッキ膜形成工程において必要な各種の処理液を如何に注入するかということである。その課題を解決するため、本発明においては、上述した新規な2段階真空注入方法を採用している。ところが、メッキ膜形成工程においては処理ごとに処理液を交換することが必要であり、処理液の交換ごとに2段階真空注入方法を行うことは現実的ではない。そこで、本発明においては、一旦2段階真空注入方法によって袋状微細管の内空間に処理液を注入した後は、次に袋状微細管の内空間に空気を入れることが必要となるまで(例えば、内空間の壁面を乾燥させることが必要となるまで)、処理液の交換の際に少なくとも内空間が空気に露出しないようにする。このように処理することによって、袋状微細管の内空間全体にわたって容易に処理液を置換することができる。
【0038】
6.エッチング処理
脱脂が終了し、脱脂液が洗浄された袋状微細管は、次にエッチング処理が行われることが好ましい。エッチング処理は、袋状微細管の壁面を粗化することによって壁面とメッキ膜との密着性を向上させることを目的として行われる。前の洗浄処理工程において洗浄が終了した微細管と洗浄液とが入った容器から、少なくとも微細管の内空間が露出しないように洗浄液を除去し、容器内にエッチング溶液を入れる。エッチング溶液は、限定されるものではなく、市販のエッチング溶液(例えば、菱江化学株式会社のCPB−40)を用いることができる。洗浄液とエッチング溶液との混合液を容器から除去し、容器内にエッチング溶液を入れる作業を、複数回繰り返してもよい。袋状微細管とエッチング溶液とが入った容器を超音波槽内に配置し、超音波を当てながら、適当な時間(本発明の一実施形態においては、例えば約1分間)エッチング処理を行う。
【0039】
7.洗浄処理
エッチング処理の終了後、超音波槽から容器を取り出し、上述の洗浄処理において説明された方法と同様の方法で洗浄処理を行う。すなわち、容器内の袋状微細管の少なくとも内空間が露出しない程度に容器内の液を除去して容器内に洗浄液を入れることを繰り返しながら、洗浄を行う。その後、好ましくは、超音波層において置換洗浄を行う。
【0040】
8.活性化処理
エッチング処理が終了し、エッチング液が洗浄された袋状微細管は、次に活性化処理が行われることが好ましい。活性化処理は、袋状微細管の壁面に生成された酸化膜を除去することを目的として行われる。前の洗浄工程において洗浄処理が終了した袋状微細管と洗浄液とが入った容器から、少なくとも袋状微細管の内空間が露出しないように洗浄液を除去し、容器内に活性化溶液を入れる。活性化溶液は、限定されるものではなく、市販の活性化溶液(例えば、市販の塩酸35%と純水とを1:1で混合した溶液)を用いることができる。洗浄液と活性化溶液との混合液を容器から除去し、容器内に活性化溶液を入れる作業を、複数回繰り返してもよい。袋状微細管と活性化溶液とが入った容器を超音波槽内に配置し、超音波を当てながら、適当な時間(本発明の一実施形態においては、例えば約1分間)活性化処理を行う。
【0041】
9.洗浄処理
活性化処理の終了後、超音波槽から容器を取り出し、上述の洗浄処理において説明された方法と同様の方法で洗浄処理を行う。すなわち、容器内袋状の微細管の少なくとも内空間が露出しない程度に容器内の液を除去して容器内に洗浄液を入れることを繰り返しながら、洗浄を行う。その後、好ましくは、超音波層において置換洗浄を行う。
【0042】
10.ニッケルメッキ膜形成処理
次に、脱脂処理が終了した袋状微細管、又は、エッチング処理及び活性化処理が終了した袋状微細管の内壁及び外壁に、ニッケルメッキ膜を形成する。脱脂処理後においても、エッチング処理及び活性化処理後においても、洗浄液による洗浄処理が行われている。従って、ニッケルメッキ膜形成処理の前には、洗浄処理の終了した袋状微細管が洗浄液に浸漬した状態で容器内に入っている。ニッケルメッキ膜形成処理においては、まず、容器内の洗浄液とニッケルメッキ液とを置換する。置換は、上述の洗浄処理において説明された方法と同様の方法で行う。すなわち、容器内の袋状微細管の少なくとも内空間が洗浄液から露出しない程度に容器内の洗浄液を容器から除去し、容器内にニッケルメッキ液を入れる。洗浄液とニッケルメッキ液との混合液を容器から除去し、容器にニッケルメッキ液を追加する工程を、複数回繰り返してもよい。微細管とニッケルメッキ液とが入った容器を超音波槽内に配置し、超音波を当てながら、適当な時間(本発明の一実施形態においては、例えば約10分間)ニッケルメッキ液の置換処理を行う。超音波を当てることによって、袋状微細管の内部の金属塩濃度と外部の濃度とを均一にすることができる。
【0043】
ニッケルメッキ液は、限定されるものではなく、例えば、硫酸ニッケル、塩化ニッケル及びホウ酸を主成分とするワット浴などのような一般的なニッケルメッキ液を用いることができる。本発明の一実施形態においては、ニッケルメッキ液として、1種又は数種類の市販の光沢剤を添加した光沢ニッケルメッキ液を用いることが好ましい。
【0044】
なお、ニッケルメッキ膜の形成前に、洗浄液を乾燥させておくことも可能である。その場合には、乾燥終了後には、袋状微細管の内空間には空気が存在しているため、上述の脱脂液の注入又は後述する金メッキ液の注入と同様に、2段階真空注入方法を利用して内空間にニッケルメッキ液を注入することになる。
【0045】
次いで、袋状微細管とニッケルメッキ液とが入った容器を超音波槽から取り出し、パルスリバース電気メッキ処理を行う。パルスリバース電気メッキ処理には、バレルメッキ方法を用いることが好ましい。通常は、電気メッキ処理においては、直流電源を用いて直流電流によってメッキ処理が行われる。しかしながら、本発明が対象とする袋状の微小内空間を有する微細管の場合には、通常の直流電源による電気メッキによる処理では、生成されるメッキ膜の厚さが内空間の入り口の部分と奥の部分とで異なることがある。これは、微小な内空間を有する袋状微細管においては、袋状微細管の内壁面全体で電流密度に差が生じ、表面への金属析出が不均一になることが原因と考えられる。例えば、内面のメッキ膜の厚さが不十分な袋状微細管の場合には、耐食性や褶動による摩耗への耐久性が下がる。また、開口部付近のメッキ膜の厚さが厚い場合には、外形寸法が変わる、内径の狭まりによりプランジャが入らなくなるといった問題が生じる可能性がある。そこで、本発明においては、電気メッキ処理の方法としてパルスリバース電気メッキ処理を行う。
【0046】
パルスリバース電気メッキ処理は、電気メッキ装置において、直流電源に代えてパルス電源を用い、電流の方向を周期的に変えながら行うメッキ処理である。パルスリバース電気メッキ処理においては、袋状微細管の壁面に一旦形成されたメッキ膜が、逆方向の電流を流すことによってイオン化され、メッキ液に戻る。メッキ膜がイオン化される際には、形成されたメッキ膜の厚みが厚い部分、すなわち高電部から優先的にイオン化されるため、最終的には均一な厚みのメッキ膜が全体に形成されることになる。図7は、袋状微細管に、通常の直流電源による電気メッキ処理によってニッケルメッキ膜を形成した場合(図7A)と、パルス電源によるパルスリバース電気メッキ処理によってニッケルメッキ膜を形成した場合(図7B)と示す写真である。図7Aは、電流密度1A/dm2、反応時間30分で直流電源による電気メッキ処理を行い、図7Bは、電流密度−3A/dm2〜1A/dm2、反応時間30分、パルス幅0.5msec〜0.1msecでパルス電源によるパルスリバース電気メッキ処理を行った結果である。この結果から、パルスリバース電気メッキ処理を行うことによって、均一な厚みのメッキ膜が形成されることが分かる。
【0047】
本発明の一実施形態に係るパルスリバース電気メッキ処理においては、まず、洗浄後の容器内の袋状微細管とニッケルメッキ液とを回転容器(バレル)に投入する。この際、容器内のニッケルメッキ液は、袋状微細管の少なくとも内空間が液から露出しない最小限の量のみがバレルに入るようにすることが好ましい。バレル内には、洗浄処理済みのダミー材も投入する。ダミー材は、通常、バレル内において電極と袋状微細管との間を通電し、撹拌性を向上させる目的で用いられる。ニッケルメッキ浴槽内でバレルを回転させながら、バレル外部の浴槽内に設置されたニッケル電極と袋状微細管との間にパルス電源を用いて周期的に方向が変化する電流を流すことによって、袋状微細管の内外壁表面に均一な厚みのニッケルメッキ膜が形成される。パルスリバース電気メッキ装置は、市販の装置(例えば、北斗電工株式会社のHCP−301H)を用いることができる。本発明の一実施形態においては、例えば、内径100μm、内空間の長さ1300μm、外径160μm、長さ1450μmの微細管にメッキ膜を形成する場合には、電流密度−3A/dm2〜1A/dm2、反応時間30分、パルス幅0.5msec〜0.1msecという条件でパルスリバース電気メッキ処理が行われることが好ましい。
【0048】
11.洗浄処理
ニッケルメッキ膜の形成後、バレルからメッキ液ごと袋状微細管を容器に取り出し、上述の洗浄処理において説明された方法と同様の方法で洗浄処理を行う。すなわち、容器内の袋状微細管の少なくとも内空間が液から露出しない程度に容器内の液を除去して容器内に洗浄液を入れることを繰り返しながら、洗浄を行う。その後、好ましくは、超音波層において置換洗浄を行う。
【0049】
12.2段階真空注入装置による金メッキ液の注入
ニッケルメッキ膜が形成された袋状微細管の表面には、次に金メッキ膜が形成される。金メッキ膜の形成処理に進む前には、袋状微細管の内外壁の表面を一旦乾燥させる必要がある。乾燥の方法は特に限定されるものではないが、この後に必要となる金メッキ液の注入に、脱脂液の注入の際に行われた方法と同様の2段階真空注入方法を利用することになるため、洗浄後の袋状微細管を図4に示される2段階真空注入装置の真空チャンバ41に入れて真空乾燥させることが好ましい。まず、洗浄が終了した袋状微細管46を容器47に入れ、真空チャンバ41内に配置する。容器47の内部と連通されたパイプ42を介して接続された容器43内には金メッキ液44を入れる。パイプ42に設けられたバルブ45を閉じて、真空チャンバ内の空気を真空ポンプ(図示せず)によって排出口49から排出する。そのまま、真空チャンバ41内が十分な真空雰囲気になり(本発明の一実施形態においては、10Pa程度)、微細管が乾燥状態となるまで(本発明の一実施形態においては、例えば約30分〜1時間)待機する。
【0050】
袋状微細管が十分に乾燥した後、バルブ45を開放して金メッキ液44を容器47内に供給する。金メッキ液は、市販の金メッキ液(例えば、メルテックス株式会社のオウロナール44BC)を用いることができる。金メッキ液44は、容器47内において袋状微細管46全体が金メッキ液44に浸漬するのに十分な量が供給される。容器47内の袋状微細管46が金メッキ液44に十分に浸漬されたことを確認した後、バルブ48を開放し(パージする)、真空ポンプを停止する。この方法によれば、真空チャンバ41内を真空雰囲気にすることで袋状微細管46の内空間に滞留している空気が排出されるため、容器47内に金メッキ液44が供給されたときに金メッキ液44が袋状微細管46の内空間に入り込む。この時点でも金メッキ液44は袋状微細管46の内空間に注入されているが、次に真空チャンバ41内に空気が導入されたときに、より確実に金メッキ液44が袋状微細管46の内空間に押し込まれることになる。
【0051】
13.金メッキ膜の形成処理
金メッキ膜の形成は、上述のニッケルメッキ膜の形成と同様に、パルスリバース電気メッキによって行われる。一実施形態においては、パルスリバース電気メッキ処理は、バレルメッキ方法を用いることが好ましい。まず、金メッキ液注入後の容器内の袋状微細管と金メッキ液とをバレルに投入する。この際、容器内の金メッキ液は、袋状微細管の少なくとも内空間が液から露出しない最小限の量のみがバレルに入るようにすることが好ましい。バレル内には、洗浄処理済みのダミー材も投入する。次いで、袋状微細管及びダミー材が投入されたバレルを金メッキ浴槽内で回転させながら、バレル外部の浴槽内に設置された金電極と袋状微細管との間にパルス電源を用いて周期的に方向が変化する電流を流すことによって、袋状微細管の内外壁表面に均一な厚みの金メッキ膜が形成される。本発明の一実施形態においては、例えば、ニッケルメッキ膜が形成された上述の微細管に金メッキ膜を形成する場合には、電流密度−0.3A/dm2〜0.1A/dm2、反応時間80分、パルス幅0.5msec〜0.1msecという条件でパルスリバース電気メッキ処理が行われることが好ましい。
【0052】
14.洗浄処理
金メッキ膜の形成後、バレルからメッキ液ごと袋状微細管を容器に取り出し、上述の洗浄処理において説明された方法と同様の方法で洗浄処理を行う。すなわち、容器内の袋状微細管の少なくとも内空間が露出しない程度に容器内の液を除去して容器内に洗浄液を入れることを繰り返しながら、洗浄を行う。洗浄処理の終了後、袋状微細管を洗浄液から取り出し、乾燥させる。
【実施例】
【0053】
(実施例)
図8に、本発明の一実施形態に係る方法によって作成された、均一な厚さのニッケルメッキ膜及び金メッキ膜が生成された袋状微細管の断面を示す。このメッキ膜は、本明細書における発明を実施するための形態に記載された、上述の本発明の一実施形態による方法、装置、及び条件を用いて作成されたものである。図8から、袋状微細管の内壁面にメッキ切れを起こすことなく概ね均一のメッキ膜が形成されていることが分かる。メッキ膜の厚さは、袋状微細管の開口部(図8において袋状微細管の右側)から400μm、800μm、及び1200μmの位置で、ニッケルメッキ膜の厚さは、それぞれ1.17μm、0.454μm、及び0.556μmであり、金メッキ膜の厚さは、それぞれ0.14μm、0.025μm、及び0.104μmであった。
【0054】
(比較例1)
図9は、従来の処理液注入方法を用いて脱脂液及びメッキ液が注入された場合の袋状微細管の断面を示す写真である。図9は、内径350μm、奥行き1800μmのベリリウム鋼の袋状細管に、ニッケルメッキ膜を形成したものである。ニッケルメッキ膜の形成方法は以下のとおりである。まず、本明細書において従来の処理液注入方法として上述された真空浸漬注入方法を用いて、袋状細管の内空間に脱脂液を注入した。次に、本明細書において上述された方法と同じ脱脂処理、洗浄処理、エッチング処理、洗浄処理、活性化処理、及び洗浄処理を行った。次に、袋状細管の入った容器にニッケルメッキ液を入れ、本明細書において上述された真空浸漬注入方法を用いて、袋状細管の内空間にニッケルメッキ液を注入した。最後に、直流電源による電気メッキ処理(電流密度1A/dm2、反応時間30分)を行った。各処理液は、本明細書において上述されたものを用いた。従来の真空浸漬注入方法では、図6に示されるように細管の内空間の最奥部に空気が残留するため、この部分には脱脂液やメッキ液などの処理液が到達せず、結果として、この部分(図9における袋状微細管の内空間の左側端部における黒っぽい部分)にメッキ不良(メッキ切れ)が生じたことが分かる。
【0055】
(比較例2)
本明細書において上述したように、図7は、直流電源による電気メッキ処理(直流メッキ法)によって微細管にニッケルメッキ膜を形成した場合と、パルス電源によるパルスリバース電気メッキ処理(PRメッキ法)によってニッケルメッキ膜を形成した場合とを比較した結果である。図7から、上述のとおり、パルスリバース電気メッキ処理を行わない場合には、均一な厚みのメッキ膜が形成されないことが分かる。
【符号の説明】
【0056】
40:2段階真空注入装置
41:真空チャンバ
42:パイプ
43、47:容器
44:液
45:バルブ
46:微細管
48:大気導入手段
49:排気手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が閉じた微細管の外壁と内空間の内壁とにメッキ膜を形成する方法であって、
真空雰囲気内に配置された微細管にプラズマを照射することにより、前記微細管の内壁及び外壁の表面の不純物を除去する、プラズマ洗浄工程と、
不純物が除去され内空間に空気が残留していない状態の真空雰囲気内の前記微細管を脱脂液に浸漬させ、真空雰囲気を大気圧雰囲気に置換することにより、前記微細管の前記内空間の全体に脱脂液を注入し、前記微細管の前記内壁及び外壁の脱脂処理を行う、脱脂工程と、
脱脂された前記微細管の少なくとも前記内空間に空気が入らないようにしながら脱脂液を洗浄液に置換し、前記微細管を洗浄する、脱脂液洗浄工程と、
洗浄後の前記微細管にパルスリバース電気メッキ処理を行う、メッキ工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記メッキ工程は、前記脱脂液洗浄工程において洗浄された前記微細管の少なくとも前記内空間に空気が入らないようにしながら洗浄液をメッキ液に置換する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メッキ工程は、
前記脱脂液洗浄工程において洗浄された前記微細管を乾燥する工程と、
乾燥された前記微細管を真空雰囲気内に配置した後、前記内空間に空気が残留していない状態の真空雰囲気内の前記微細管をメッキ液に浸漬させ、真空雰囲気を大気圧雰囲気に置換することにより、前記微細管の前記内空間の全体に前記メッキ液を注入する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記メッキ工程の後、前記メッキされた微細管の少なくとも前記内空間に空気が入らないようにしながら前記微細管を洗浄液で洗浄する工程と、
洗浄された前記微細管を乾燥させる工程と、
乾燥された前記微細管を真空雰囲気内に配置した後、前記内空間に空気が残留していない状態の前記微細管を前記メッキ液とは別のメッキ液に浸漬させ、真空雰囲気を大気圧雰囲気に置換することにより、前記微細管の前記内空間の全体に前記別のメッキ液を注入する工程と、
前記微細管に前記別のメッキ液によるパルスリバース電気メッキ処理を行う工程と、
をさらに含むことを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記脱脂液洗浄工程の後、洗浄された前記微細管の少なくとも前記内空間に空気が入らないようにしながら洗浄液をエッチング液に置換してエッチング処理を行うエッチング工程と、
エッチングされた前記微細管の少なくとも前記内空間に空気が入らないようにしながらエッチング液を洗浄液に置換して前記微細管を洗浄するエッチング液洗浄工程と、
をさらに含むことを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記エッチング工程に続く前記微細管の洗浄工程の後、洗浄された前記微細管の少なくとも前記内空間に空気が入らないようにしながら洗浄液を活性化液に置換して活性化処理を行う活性化工程と、
活性化された前記微細管の少なくとも前記内空間に空気が入らないようにしながら活性化液を洗浄液に置換して前記微細管を洗浄する活性化液洗浄工程と、
をさらに含むことを特徴とする、前記請求項5に記載の方法。
【請求項7】
一端が閉じた微細管の内空間の全体に液体を注入するための液体注入装置であって、
真空チャンバと、
前記真空チャンバの内部に配置され、微細管と液体とを収容可能な容器と、
前記真空チャンバの内部の空気を前記真空チャンバの外部に排出するための排気手段と、
前記真空チャンバの内部に配置された前記容器の内部と前記真空チャンバの外部とを連通する流路と、前記流路内の液体の通過又は遮断を制御するためのバルブとを含む、液体導入手段と、
前記真空チャンバの外部に配置され、前記流路を介して前記容器の内部に供給される液体を収容可能な液体容器と、
前記真空チャンバの内部の真空雰囲気を大気圧雰囲気に置換するための大気導入手段と、
を備えることを特徴とする液体注入装置。
【請求項8】
一端が閉じた微細管の外壁と内空間の内壁とにメッキ膜を形成するためのメッキ膜形成システムであって、
真空雰囲気の真空チャンバの内部に配置された微細管に照射されるプラズマを発生させるプラズマ発生手段を備える、プラズマ洗浄装置と、
請求項7に記載の液体注入装置において液体として脱脂液を用いた、プラズマの作用によって不純物が除去された前記微細管の内空間に脱脂液を注入するための脱脂液注入装置と、
洗浄液を用いて洗浄され内空間にメッキ液が入れられた前記微細管にパルスリバース電気メッキを行う、メッキ装置と、
を備えることを特徴とするメッキ膜形成システム。
【請求項9】
請求項7に記載の液体注入装置において液体として前記メッキ液を用い、洗浄された前記微細管の前記内空間に前記メッキ液を注入するためのメッキ液注入装置をさらに含むことを特徴とする、請求項8に記載のメッキ膜形成システム。
【請求項10】
請求項7に記載の液体注入装置において液体として前記メッキ液とは別のメッキ液を用い、前記メッキ液による電気メッキ処理が行われた前記微細管の前記内空間に前記別のメッキ液を注入するためのメッキ液注入装置と、
前記微細管に前記別のメッキ液によるパルスリバース電気メッキ処理を行うメッキ装置と、
を備えることを特徴とする、請求項8又は請求項9に記載のメッキ膜形成システム。
【請求項1】
一端が閉じた微細管の外壁と内空間の内壁とにメッキ膜を形成する方法であって、
真空雰囲気内に配置された微細管にプラズマを照射することにより、前記微細管の内壁及び外壁の表面の不純物を除去する、プラズマ洗浄工程と、
不純物が除去され内空間に空気が残留していない状態の真空雰囲気内の前記微細管を脱脂液に浸漬させ、真空雰囲気を大気圧雰囲気に置換することにより、前記微細管の前記内空間の全体に脱脂液を注入し、前記微細管の前記内壁及び外壁の脱脂処理を行う、脱脂工程と、
脱脂された前記微細管の少なくとも前記内空間に空気が入らないようにしながら脱脂液を洗浄液に置換し、前記微細管を洗浄する、脱脂液洗浄工程と、
洗浄後の前記微細管にパルスリバース電気メッキ処理を行う、メッキ工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記メッキ工程は、前記脱脂液洗浄工程において洗浄された前記微細管の少なくとも前記内空間に空気が入らないようにしながら洗浄液をメッキ液に置換する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メッキ工程は、
前記脱脂液洗浄工程において洗浄された前記微細管を乾燥する工程と、
乾燥された前記微細管を真空雰囲気内に配置した後、前記内空間に空気が残留していない状態の真空雰囲気内の前記微細管をメッキ液に浸漬させ、真空雰囲気を大気圧雰囲気に置換することにより、前記微細管の前記内空間の全体に前記メッキ液を注入する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記メッキ工程の後、前記メッキされた微細管の少なくとも前記内空間に空気が入らないようにしながら前記微細管を洗浄液で洗浄する工程と、
洗浄された前記微細管を乾燥させる工程と、
乾燥された前記微細管を真空雰囲気内に配置した後、前記内空間に空気が残留していない状態の前記微細管を前記メッキ液とは別のメッキ液に浸漬させ、真空雰囲気を大気圧雰囲気に置換することにより、前記微細管の前記内空間の全体に前記別のメッキ液を注入する工程と、
前記微細管に前記別のメッキ液によるパルスリバース電気メッキ処理を行う工程と、
をさらに含むことを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記脱脂液洗浄工程の後、洗浄された前記微細管の少なくとも前記内空間に空気が入らないようにしながら洗浄液をエッチング液に置換してエッチング処理を行うエッチング工程と、
エッチングされた前記微細管の少なくとも前記内空間に空気が入らないようにしながらエッチング液を洗浄液に置換して前記微細管を洗浄するエッチング液洗浄工程と、
をさらに含むことを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記エッチング工程に続く前記微細管の洗浄工程の後、洗浄された前記微細管の少なくとも前記内空間に空気が入らないようにしながら洗浄液を活性化液に置換して活性化処理を行う活性化工程と、
活性化された前記微細管の少なくとも前記内空間に空気が入らないようにしながら活性化液を洗浄液に置換して前記微細管を洗浄する活性化液洗浄工程と、
をさらに含むことを特徴とする、前記請求項5に記載の方法。
【請求項7】
一端が閉じた微細管の内空間の全体に液体を注入するための液体注入装置であって、
真空チャンバと、
前記真空チャンバの内部に配置され、微細管と液体とを収容可能な容器と、
前記真空チャンバの内部の空気を前記真空チャンバの外部に排出するための排気手段と、
前記真空チャンバの内部に配置された前記容器の内部と前記真空チャンバの外部とを連通する流路と、前記流路内の液体の通過又は遮断を制御するためのバルブとを含む、液体導入手段と、
前記真空チャンバの外部に配置され、前記流路を介して前記容器の内部に供給される液体を収容可能な液体容器と、
前記真空チャンバの内部の真空雰囲気を大気圧雰囲気に置換するための大気導入手段と、
を備えることを特徴とする液体注入装置。
【請求項8】
一端が閉じた微細管の外壁と内空間の内壁とにメッキ膜を形成するためのメッキ膜形成システムであって、
真空雰囲気の真空チャンバの内部に配置された微細管に照射されるプラズマを発生させるプラズマ発生手段を備える、プラズマ洗浄装置と、
請求項7に記載の液体注入装置において液体として脱脂液を用いた、プラズマの作用によって不純物が除去された前記微細管の内空間に脱脂液を注入するための脱脂液注入装置と、
洗浄液を用いて洗浄され内空間にメッキ液が入れられた前記微細管にパルスリバース電気メッキを行う、メッキ装置と、
を備えることを特徴とするメッキ膜形成システム。
【請求項9】
請求項7に記載の液体注入装置において液体として前記メッキ液を用い、洗浄された前記微細管の前記内空間に前記メッキ液を注入するためのメッキ液注入装置をさらに含むことを特徴とする、請求項8に記載のメッキ膜形成システム。
【請求項10】
請求項7に記載の液体注入装置において液体として前記メッキ液とは別のメッキ液を用い、前記メッキ液による電気メッキ処理が行われた前記微細管の前記内空間に前記別のメッキ液を注入するためのメッキ液注入装置と、
前記微細管に前記別のメッキ液によるパルスリバース電気メッキ処理を行うメッキ装置と、
を備えることを特徴とする、請求項8又は請求項9に記載のメッキ膜形成システム。
【図1】
【図3】
【図4】
【図2A】
【図2B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図3】
【図4】
【図2A】
【図2B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−1996(P2013−1996A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138113(P2011−138113)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(590005911)株式会社日本アレフ (19)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(590005911)株式会社日本アレフ (19)
【Fターム(参考)】
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