袋詰脱水処理方法
【課題】袋詰脱水における脱水効率を向上させると共に、有害物質の排出防止を図る。
【解決手段】粘性土やシルトの泥土等の含水土砂を、透水性袋体内に充填して脱水を行う方法において、袋体5内の含水土砂に対して一対の電極10,11を用いて直流電圧を印加し、電気浸透現象を発生させて土粒子間の間隙水の移動を促進させると共に、イオン化して水に溶けている有害物質、直流電流によりイオン化する有害物質を電気泳動により電極10,11表面に捕捉させる。
【解決手段】粘性土やシルトの泥土等の含水土砂を、透水性袋体内に充填して脱水を行う方法において、袋体5内の含水土砂に対して一対の電極10,11を用いて直流電圧を印加し、電気浸透現象を発生させて土粒子間の間隙水の移動を促進させると共に、イオン化して水に溶けている有害物質、直流電流によりイオン化する有害物質を電気泳動により電極10,11表面に捕捉させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泥土、特に粘性土やシルトの泥土等の含水土砂を、透水性袋体内に充填して脱水を行う袋詰脱水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、河川、湖沼、海洋などから浚渫された高含水比の泥土を脱水処理し、有効利用を図る方法の一つして、透水性布帛等からなる袋体に泥土を充填し、水分を袋体外に透過させることにより脱水を図る袋詰脱水方法がある(特許文献1参照)。この方法によれば、含水土砂を土質改良して土工材料として再利用する、もしくは、環境汚染物質を含有する泥土を脱水・減量化して封じ込めることが可能となる。
【0003】
しかしながら、従来の袋詰脱水処理方法は、脱水に長時間を要するという問題点があり、特にこの傾向は、充填する対象土の土質性状が粘性土やシルトからなる場合に顕著であった。
【0004】
そして、このように脱水に長時間を要するということは、広大な脱水養生スペースが長期間必要になるため好ましくない。また、脱水処理土を有効利用する場合、泥土の発生側工事と利用側工事の工程調整の難渋や工期が遅れるといった問題を引き起こすため好ましくない。
【0005】
一方、袋詰脱水処理方法は、土粒子や懸濁物質に吸着しているダイオキシンやPCB、窒素、リンなどの有害物質を、土粒子や懸濁物質とともに袋体内に封じ込め、脱水・減量化するという特長を有しているが(特許文献1参照)、重金属類などのうち、イオン化して水に溶ける有害物質は、水と共に袋体外に排出されてしまい、封じ込めが不可能であることから、そのような有害物質の排出対策も要望されていた。
【特許文献1】特開2002−178000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の主たる課題は、脱水効率の向上を図ることにある。また他の課題は有害物質の排出対策を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
含水土砂を透水性袋体内に充填し、この袋体内容物のうち水分を袋体外に透過させて脱水する袋詰脱水処理工法において、
前記袋体内の含水土砂に対して一対の電極を用いて電圧を印加し、電気浸透現象を発生させて土粒子間の間隙水の移動を促進させる、ことを特徴とする袋詰脱水処理方法。
【0008】
(作用効果)
泥土の脱水を促進させる方法としては界面活性剤等の脱水剤を添加する方法が知られているが、本発明者らは、このような従来の考え方に捉われずに鋭意研究した結果、電気浸透現象における水分子の移動促進作用を応用できるのではないか、との着想を得て本発明をなしたものである。
【0009】
電気浸透現象とは、液体で満たされた毛細管や多孔体の両端に電圧を印加したときに液体が移動する現象であり、含水土砂においては土粒子間隙が毛細管に相当する。すなわち、含水土砂に電圧を印加し電気浸透現象を発生させると、土粒子は移動できないが、土粒子(たいてい表面が負に帯電している)にクーロン力で引き寄せられていた陽イオンが陰極に向かって移動する。この際、陽イオンはそれを取り囲む水分子と衝突しながら移動するため、土粒子間の間隙水も陰極側へ向かって推し進められるのである。そしてこの結果、土粒子間隙からの間隙水の排出が促進されることにより、袋詰脱水における脱水効率が向上するようになるのである。
【0010】
<請求項2記載の発明>
少なくとも陰極を、前記袋体自体、袋体の内面または袋体の外面に設置し、直流電圧を印加する、請求項1記載の袋詰脱水処理方法。
【0011】
(作用効果)
前述のとおり間隙水は陰極に向かって引き寄せられるので、少なくとも陰極を、前記袋体自体、袋体の内面または袋体の外面に設置し、直流電圧を印加するようにすると、袋体内の含水土砂が袋体外へ向かって移動し易くなるため好ましい。ただし、このような配置でなくても、移動する水分子がクーロン力により引き寄せられるわけではないため、間隙水の排出が促進されることに変わりがなく脱水促進の効果は顕著に現れる。
【0012】
<請求項3記載の発明>
前記含水土砂は、イオン化する性質を有する有害物質を含むものである、請求項1または2記載の袋詰脱水処理方法。
【0013】
(作用効果)
イオン化する性質を有する有害物質を含む含水土砂を対象として本発明による処理を行うと、イオン化して水に溶けて存在している有害物質、あるいは本発明の直流電流によりイオン化する有害物質は、電気泳動によって陽イオンは陰極に、陰イオンは陽極に引き寄せられ捕捉される。よって、イオン化する有害物質であっても、水分と分離して袋体内に封じ込める、あるいは袋体外に電極を配置した場合には袋体外で水分と分離して捕捉することができ、排水に混入したまま放流してしまうといった事態を防止できるようになる。
【発明の効果】
【0014】
以上のとおり、本発明によれば脱水効率の向上により、脱水時間を短縮することができるようになり、もって、脱水養生ヤードの縮小化、工期期間短縮、工費節減を図ることができるとともに、都市内河川や脱水養生ヤードが確保できない小規模の河川工事への適用も可能となり、袋詰脱水処理工法の対象工事の拡大を図れる。
【0015】
また、また対象の含水土砂がイオン化する有害物質を含む場合、これらのイオン化有害物質を電極により捕捉することができ、封じ込め対象物質の拡大化および効率向上を図ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しつつ詳説する。
図1は、河川や湖沼等1の底に存在する泥土、ヘドロ等の含水土砂1bを、付近の岸辺で処理する例を示している。もちろん、本発明は含水土砂であれば泥土でなくても適用できる。また処理場所にも限定されないことはいうまでもない。
【0017】
図示形態についてより詳細に説明すると、含水土砂1bは浚渫船2によって取り出され、圧送ホース2aを介して予め岸辺に設けた処理ピット3に供給され、一時的に貯留される。続いて、処理ピット3内に沈殿した含水土砂1bは注入ポンプ4によって吸引・圧送され、注入管4aを介して透水性袋体5内に順次注入される。これにより、水分だけが袋体5外に透過排出され、土粒子等の固形分は袋体5内に残留し、封じ込められる。排水は非常に綺麗であるので、有害物質の心配がない場合には、排水溝6を介してそのまま又は必要に応じて適宜の浄化処理をおこなった後に元の河川等1に放流することもできる。
【0018】
このような袋詰脱水に際して、本発明では、例えば図2及び図3に示すように、袋体5内の含水土砂1bに対して一対の電極10,11を用いて電圧を印加する。電圧の印加は、含水土砂1bの充填中、または充填の前後に開始することができる。袋体5内の含水土砂1bに対して電圧を印加すると、図中実線矢印で示す陰極方向に水分子が推進される電気浸透現象により、土粒子間の間隙水の移動が促進され、脱水が促進されるようになる。
【0019】
電圧は、連続的に印加する他、断続的もしくはパルス状に印加することもできる。また、陽極及び陰極位置を固定し、電圧を一方向に印加することのみならず、電圧の方向を、例えば交流のように交互に変化させることもできる。この場合、電極の配置を固定したままで適宜のスイッチやインバータによりプラスマイナスを切り替えることで対応できる。
【0020】
電圧を印加するための具体的手段としては、袋体5内、袋体5自体、袋体5の内面、または袋体5の外面に一対の電極10,11を適切な間隔をもって設置し、これらの電極10,11をケーブルCで電源装置Pに接続することを提案する。電極10,11は一組設置しても、また複数組設置しても良い。電源装置Pとしては電圧を調整できるものが好適である。
【0021】
印加電圧は、電気浸透現象による脱水促進効果がある限り特に限定されるものではないが、単位電極間距離あたりの印加電圧が0.3V/cm以上、特に0.5V/cm以上となるように、電圧及び電極間距離Dを設定するのが好ましい。また、適切な印加時間は、印加電圧、対象土砂、袋体5の素材・形状・サイズ、電極の配置等の諸条件により変化するため、適宜試験を行って定めるのが好ましい。
【0022】
電極の配置は適宜定めることができ、どのような配置であっても電気浸透現象が発生するレベルの電圧を与えうる限り、基本的に脱水促進効果は発揮される。ただし、電気浸透現象は陽極11側から陰極10側に間隙水が移動するため、袋体5自体、その内面、またはその外面(図示形態)に、陰極10を設置して直流電圧を印加するように構成するのが好ましい。この場合、図2に示すように陽極11は袋体5内の含水土砂1b内に設置しても良く、また袋体5自体、その内面または外面(図4に示す形態)における陰極10とは別の位置に設置しても良い。
【0023】
土粒子間隙から排出された水分は、比重の関係から土砂1bの上面に滲み出るため、袋体5の上面に陰極10を設置し、これよりも下側、特に図4に示すように袋体5の下面に陽極を設置するのが好ましい。ただし、袋体5の上下面に陰極10を配置すると、袋体5の厚さによっては十分な電圧を印加できない場合もあり、このような場合等においては図2に示すように陽極11を袋体5内の含水土砂1b内に設置し、袋体5の上下面に陰極10,10を設置するのも好ましい形態である。
【0024】
また、袋体5内の含水土砂1bの略全体にわたり電圧を作用させるために、図3に示すように、少なくとも一方の電極10は袋体5の略全体にわたり設置するのが好ましい。
【0025】
電極10,11としては、含水土砂を充填した袋体5内へ挿入等する場合には、脱着が容易な形状のもの、例えば炭素棒、鉄筋、銅線などを用いることができる。一方、袋体5が布帛からなる場合にはその素材にカーボン繊維や電線などを織り込むことにより、袋体5自体を電極とすることもできる。ただしこの場合、電極を再利用できなくなるため、マット状またはシート状の電極シートを袋体5内面または外面に貼付する等により設置する形態も好ましい。この場合、所定の電圧印加時間経過後に電極を外して再利用することが可能になる。
【0026】
他方、含水土砂1bの注入に際して、好適には含水土砂1bを袋体5内に圧入する。これにより、その注入圧により袋体内容物が加圧脱水されるので、高効率での袋詰および脱水を行うことができる。ただし、本発明においては圧入せずに、注入した含水土砂1bの自重による加圧および水分の蒸発により脱水させたり、図示のように注入済み袋体5を順次積み重ねて下側の袋体5を加圧脱水したり、注入済み袋体を機械的に加圧脱水することもできる。
【0027】
袋詰脱水では、袋体5の目合いの粗さによって、注入開始からフィルター効果を十分に発揮するまでの時間には差はあるが、いずれにせよある程度まで注入すれば十分なフィルター効果が発揮される。よって、基本的には透水性袋体5の目合いの粗さは問わないが、注入当初からある程度十分なフィルター効果を発揮させるためには、透水性袋体5としては、透水係数が1.0×10-3cm/sec以上、水透過孔径が90〜600μmのものが好ましい。また耐酸性、耐アルカリ性が高く化学的に安定しているという観点から、ポリエステルやポリプロピレン繊維等の化学繊維からなる不織布、織布、編物等により形成した袋体を好適に使用することができる。具体的な透水性袋体の例を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
特に、前述のように含水土砂1bを圧入するときには、袋体5が膨張し破壊する虞があるので、予め袋外周囲に引っ張り強度の高いジオグリッド等の補強材を巻き付けておく等により補強された袋体を用いることができる。
【0030】
またフィルター効果を高めるためには、袋体5を複数枚重ねた多重袋体を用いることで、含水土砂1b中の粒子捕捉効果を高めることができ、袋体の強度も向上する。この場合において、異なる素材の袋体を組み合わせて重ねることもできる。
【0031】
その他、特願平8−21437号、特願平10−37151号、特願平8−59964号、特願平8−188203号および特願平11−030139号に記載された脱水用袋体など、公知の脱水用袋体を使用することができる。なお、これら従来の脱水技術は、本願発明のように有害物質含有泥土類を対象として有害物質を袋体内に封じ込めるものではない。
【0032】
他方、泥土等の含水土砂には、有害物質(環境汚染物質)を含む場合があるが、多くの有害物質、特にダイオキシン、PCB、砒素、鉛、などの有害物質の多くは、土粒子やその他の懸濁粒子に付着して存在している。よって、上記のように袋詰脱水を行うと、これらの有害物質は袋体5内に封じ込められる。
【0033】
これに対して、水中でイオン化して水に溶ける有害物質、例えば鉛、水銀、カドミウム、クロムなどの重金属はイオン化して水に溶解するため、従来の単なる袋詰脱水方法では袋体5内に封じ込めることはできず、水とともに排出されてしまう。しかし、本発明の方法では、一対の電極10,11を配置して電圧を印加しているため、CrO42-等の陰イオンは陽極11に、またPb2+、Cd2+、Ni2+等の陽イオンは陰極10に引き寄せて捕捉することができる。したがって、袋体5内に電極を設置した場合には、袋体5内にこれらのイオン化した有害物質を封じ込めることができる。また、袋体5外に電極を設置した場合であっても、電極表面にイオン化した有害物質を捕捉することができる。具体的に図2に示す例では、袋体5内の陽極11に陰イオンを引き寄せて封じ込め、袋体5外の陰極10に陽イオンを吸着することができる。
【0034】
このような有害物質を含む含水土砂としては、その存在場所に応じて多少の広狭があり、一概には言えないが、「土壌の汚染に係る環境基準について(平成3年8月23日、環境庁告示第46号)」、「排水基準を定める総理府令(昭和46年6月21日、総理府令第35号)」、「地下水の水質汚濁に係る環境基準について(平成9年3月13日、環境庁告示第10号)」、「水質汚濁に係る環境基準について(昭和46年12月28日、環境庁告示第59号)」、「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律(昭和45年12月25日、法律第139号)」、「ダイオキシン類による大気の汚染、水質の汚濁及び土壌の汚染に係る環境基準(平成11年12月27日、環境庁告示第68号)」等の各種法規や運用基準等の基準に適合しないものを意味する。具体的な有害物質の例とともに各種基準を表2及び表3に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【実施例】
【0037】
以下、実施例を示して本発明の効果を明らかにする。なお、以下の実験1及び実験2では、表4に示す砂質粘性土を試料として用いた。
【0038】
【表4】
【0039】
<予備実験>
先ず、電気浸透現象による脱水促進効果を確認するために、次に示す予備実験を行った。
(1) 図5に示すように、試料に水を加えて良く混合し含水比を70%に調整した後、ビーカー20に静かに投入した。
(2) 次いで、一対の電極10,11を5cm間隔で、且つビーカー20の底から10mm離間するように挿入した。
(3) しかる後、電極10,11間に所定の直流電圧を印加し、電極10,11の挿入後から1、2、3、4、5、24時間経過後の沈降部分上面から水面までの高さhを計測し、間隙比 (土粒子の間隙の体積と土粒子の体積との比)を算出した。なお、電圧は、0、3、5、10Vの4つのケース(それぞれ0、0.6、1、2V/cmの電位勾配に相当)で行った。
【0040】
実験結果を図6に示した。実験結果より、含水土砂における電気浸透現象では、脱水効果は電圧が高い方が大きいこと、脱水効果は電位勾配が大きい方が大きいこと、電圧が高いほうが間隙比低下が著しいこと、および電位勾配が大きいほうが間隙比低下が著しいことが判明した。
【0041】
<本実験>
本実験として、表5に示す特性及び図7に示す形状を有する袋体5を使用して、次に示す脱水促進の確認実験を行った。なお、図7中の符号5iは袋体内に連通する筒状の供給路を示している。
【0042】
【表5】
【0043】
(実施例1)
予め、図8に示すように袋体5の上面及び下面に陰極10を固定し、袋体5内の厚さ方向中央に陽極11を配置した。電極10,11には電線(直径2mmの軟銅線)を使用した。この袋体5内に、含水比を70%に調整した試料を60リットル(約100kg)充填するとともに、電圧勾配(単位電極間距離当たりの印加電圧)が2V/cmとなるように陽極・陰極間に電圧12Vを印加して静置し、加圧等せずに自然に脱水させた。
【0044】
袋体の静置完了時点を測定開始とし、測定開始から1.0時間経過後、2.0時間経過後、4.0時間経過後、24時間経過後、以降は24時間置きに14日経過後まで、袋体の質量および排水量を計測し、間隙比および含水比を算出した。また電流値も記録した。
【0045】
(実施例2)
電極の配置を図9に示すように、袋体5の上面に陰極10を固定し、袋体の下面に陽極11を固定し、袋体5内には電極を設けない配置とした以外は、実施例1と同様にして測定を行った。なお、この場合、実施例1に対して電極間距離が2倍となるため、電圧勾配は1V/cmであった。
【0046】
(従来例)
電極を設置せず、電圧を印加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして測定を行った。
【0047】
(結果及び考察)
図10は、間隙比と時間との関係を表したものである。この曲線を見ると、試験初期では、電圧を印加した実施例1,2が同程度で従来例よりも大きくなっており、電圧勾配が大きいほど脱水が促進されることが判る。実施例1、2では、従来例と比べて約43%の脱水時間短縮が確認された。
【0048】
一方、時間の経過とともに曲線勾配は緩やかになり、脱水促進効果が経時的に低下していることがわかる。より詳細には、実施例2、実施例1、従来例の順で勾配が減少し、最終的には1.26〜1.21程度となり、ほぼ同じ間隙比レベルに漸近していくことが読み取れる。
【0049】
図11は電流値と時間との関係、図12は電流値と間隙比との関係、図13は電流値と含水比との関係をそれぞれ示している。図から、電流値が経時的に、あるいは間隙比もしくは含水比の減少に伴って低下することが判る。脱水促進効果が実質的に無くなる下限電流値の存在が推測される。
【0050】
さらに、図14は、間隙比減少速度と電流値との関係を表したものである。同図より0.5A前後で間隙比減少速度が0.010(1/h)以下でほぼ一定となることがわかる。したがって、例えば間隙比減少速度がある閾値(0.010等)よりも低下しないように、電圧等を設定もしくは制御すると好ましい結果が得られることが予測される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、河川、湖沼、海洋などから浚渫された泥土等の含水土砂を脱水処理し、有効利用を図る際等に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態の概略図である。
【図2】透水性袋体への電極設置例を示す縦断面図である。
【図3】透水性袋体への電極設置例を示す平面図である。
【図4】透水性袋体への電極設置例を示す縦断面図である。
【図5】予備試験の概要図である。
【図6】予備試験結果を示すグラフである。
【図7】本実験で使用した袋体の形状を示す平面図である。
【図8】実施例1の試験要領を示す(a)平面図、(b)断面図、(c)別の断面図である。
【図9】実施例2の試験要領を示す(a)平面図、(b)断面図、(c)別の断面図である。
【図10】間隙比と時間との関係を示すグラフである。
【図11】電流値と時間との関係を示すグラフである。
【図12】電流値と含水比との関係を示すグラフである。
【図13】電流値と間隙比との関係を示すグラフである。
【図14】間隙比減少率と電流値との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0053】
1…河川等、2…浚渫船、3…貯留ピット、4…注入ポンプ、5…透水性袋体、6…排水溝、10,11…電極。
【技術分野】
【0001】
本発明は、泥土、特に粘性土やシルトの泥土等の含水土砂を、透水性袋体内に充填して脱水を行う袋詰脱水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、河川、湖沼、海洋などから浚渫された高含水比の泥土を脱水処理し、有効利用を図る方法の一つして、透水性布帛等からなる袋体に泥土を充填し、水分を袋体外に透過させることにより脱水を図る袋詰脱水方法がある(特許文献1参照)。この方法によれば、含水土砂を土質改良して土工材料として再利用する、もしくは、環境汚染物質を含有する泥土を脱水・減量化して封じ込めることが可能となる。
【0003】
しかしながら、従来の袋詰脱水処理方法は、脱水に長時間を要するという問題点があり、特にこの傾向は、充填する対象土の土質性状が粘性土やシルトからなる場合に顕著であった。
【0004】
そして、このように脱水に長時間を要するということは、広大な脱水養生スペースが長期間必要になるため好ましくない。また、脱水処理土を有効利用する場合、泥土の発生側工事と利用側工事の工程調整の難渋や工期が遅れるといった問題を引き起こすため好ましくない。
【0005】
一方、袋詰脱水処理方法は、土粒子や懸濁物質に吸着しているダイオキシンやPCB、窒素、リンなどの有害物質を、土粒子や懸濁物質とともに袋体内に封じ込め、脱水・減量化するという特長を有しているが(特許文献1参照)、重金属類などのうち、イオン化して水に溶ける有害物質は、水と共に袋体外に排出されてしまい、封じ込めが不可能であることから、そのような有害物質の排出対策も要望されていた。
【特許文献1】特開2002−178000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の主たる課題は、脱水効率の向上を図ることにある。また他の課題は有害物質の排出対策を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
含水土砂を透水性袋体内に充填し、この袋体内容物のうち水分を袋体外に透過させて脱水する袋詰脱水処理工法において、
前記袋体内の含水土砂に対して一対の電極を用いて電圧を印加し、電気浸透現象を発生させて土粒子間の間隙水の移動を促進させる、ことを特徴とする袋詰脱水処理方法。
【0008】
(作用効果)
泥土の脱水を促進させる方法としては界面活性剤等の脱水剤を添加する方法が知られているが、本発明者らは、このような従来の考え方に捉われずに鋭意研究した結果、電気浸透現象における水分子の移動促進作用を応用できるのではないか、との着想を得て本発明をなしたものである。
【0009】
電気浸透現象とは、液体で満たされた毛細管や多孔体の両端に電圧を印加したときに液体が移動する現象であり、含水土砂においては土粒子間隙が毛細管に相当する。すなわち、含水土砂に電圧を印加し電気浸透現象を発生させると、土粒子は移動できないが、土粒子(たいてい表面が負に帯電している)にクーロン力で引き寄せられていた陽イオンが陰極に向かって移動する。この際、陽イオンはそれを取り囲む水分子と衝突しながら移動するため、土粒子間の間隙水も陰極側へ向かって推し進められるのである。そしてこの結果、土粒子間隙からの間隙水の排出が促進されることにより、袋詰脱水における脱水効率が向上するようになるのである。
【0010】
<請求項2記載の発明>
少なくとも陰極を、前記袋体自体、袋体の内面または袋体の外面に設置し、直流電圧を印加する、請求項1記載の袋詰脱水処理方法。
【0011】
(作用効果)
前述のとおり間隙水は陰極に向かって引き寄せられるので、少なくとも陰極を、前記袋体自体、袋体の内面または袋体の外面に設置し、直流電圧を印加するようにすると、袋体内の含水土砂が袋体外へ向かって移動し易くなるため好ましい。ただし、このような配置でなくても、移動する水分子がクーロン力により引き寄せられるわけではないため、間隙水の排出が促進されることに変わりがなく脱水促進の効果は顕著に現れる。
【0012】
<請求項3記載の発明>
前記含水土砂は、イオン化する性質を有する有害物質を含むものである、請求項1または2記載の袋詰脱水処理方法。
【0013】
(作用効果)
イオン化する性質を有する有害物質を含む含水土砂を対象として本発明による処理を行うと、イオン化して水に溶けて存在している有害物質、あるいは本発明の直流電流によりイオン化する有害物質は、電気泳動によって陽イオンは陰極に、陰イオンは陽極に引き寄せられ捕捉される。よって、イオン化する有害物質であっても、水分と分離して袋体内に封じ込める、あるいは袋体外に電極を配置した場合には袋体外で水分と分離して捕捉することができ、排水に混入したまま放流してしまうといった事態を防止できるようになる。
【発明の効果】
【0014】
以上のとおり、本発明によれば脱水効率の向上により、脱水時間を短縮することができるようになり、もって、脱水養生ヤードの縮小化、工期期間短縮、工費節減を図ることができるとともに、都市内河川や脱水養生ヤードが確保できない小規模の河川工事への適用も可能となり、袋詰脱水処理工法の対象工事の拡大を図れる。
【0015】
また、また対象の含水土砂がイオン化する有害物質を含む場合、これらのイオン化有害物質を電極により捕捉することができ、封じ込め対象物質の拡大化および効率向上を図ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しつつ詳説する。
図1は、河川や湖沼等1の底に存在する泥土、ヘドロ等の含水土砂1bを、付近の岸辺で処理する例を示している。もちろん、本発明は含水土砂であれば泥土でなくても適用できる。また処理場所にも限定されないことはいうまでもない。
【0017】
図示形態についてより詳細に説明すると、含水土砂1bは浚渫船2によって取り出され、圧送ホース2aを介して予め岸辺に設けた処理ピット3に供給され、一時的に貯留される。続いて、処理ピット3内に沈殿した含水土砂1bは注入ポンプ4によって吸引・圧送され、注入管4aを介して透水性袋体5内に順次注入される。これにより、水分だけが袋体5外に透過排出され、土粒子等の固形分は袋体5内に残留し、封じ込められる。排水は非常に綺麗であるので、有害物質の心配がない場合には、排水溝6を介してそのまま又は必要に応じて適宜の浄化処理をおこなった後に元の河川等1に放流することもできる。
【0018】
このような袋詰脱水に際して、本発明では、例えば図2及び図3に示すように、袋体5内の含水土砂1bに対して一対の電極10,11を用いて電圧を印加する。電圧の印加は、含水土砂1bの充填中、または充填の前後に開始することができる。袋体5内の含水土砂1bに対して電圧を印加すると、図中実線矢印で示す陰極方向に水分子が推進される電気浸透現象により、土粒子間の間隙水の移動が促進され、脱水が促進されるようになる。
【0019】
電圧は、連続的に印加する他、断続的もしくはパルス状に印加することもできる。また、陽極及び陰極位置を固定し、電圧を一方向に印加することのみならず、電圧の方向を、例えば交流のように交互に変化させることもできる。この場合、電極の配置を固定したままで適宜のスイッチやインバータによりプラスマイナスを切り替えることで対応できる。
【0020】
電圧を印加するための具体的手段としては、袋体5内、袋体5自体、袋体5の内面、または袋体5の外面に一対の電極10,11を適切な間隔をもって設置し、これらの電極10,11をケーブルCで電源装置Pに接続することを提案する。電極10,11は一組設置しても、また複数組設置しても良い。電源装置Pとしては電圧を調整できるものが好適である。
【0021】
印加電圧は、電気浸透現象による脱水促進効果がある限り特に限定されるものではないが、単位電極間距離あたりの印加電圧が0.3V/cm以上、特に0.5V/cm以上となるように、電圧及び電極間距離Dを設定するのが好ましい。また、適切な印加時間は、印加電圧、対象土砂、袋体5の素材・形状・サイズ、電極の配置等の諸条件により変化するため、適宜試験を行って定めるのが好ましい。
【0022】
電極の配置は適宜定めることができ、どのような配置であっても電気浸透現象が発生するレベルの電圧を与えうる限り、基本的に脱水促進効果は発揮される。ただし、電気浸透現象は陽極11側から陰極10側に間隙水が移動するため、袋体5自体、その内面、またはその外面(図示形態)に、陰極10を設置して直流電圧を印加するように構成するのが好ましい。この場合、図2に示すように陽極11は袋体5内の含水土砂1b内に設置しても良く、また袋体5自体、その内面または外面(図4に示す形態)における陰極10とは別の位置に設置しても良い。
【0023】
土粒子間隙から排出された水分は、比重の関係から土砂1bの上面に滲み出るため、袋体5の上面に陰極10を設置し、これよりも下側、特に図4に示すように袋体5の下面に陽極を設置するのが好ましい。ただし、袋体5の上下面に陰極10を配置すると、袋体5の厚さによっては十分な電圧を印加できない場合もあり、このような場合等においては図2に示すように陽極11を袋体5内の含水土砂1b内に設置し、袋体5の上下面に陰極10,10を設置するのも好ましい形態である。
【0024】
また、袋体5内の含水土砂1bの略全体にわたり電圧を作用させるために、図3に示すように、少なくとも一方の電極10は袋体5の略全体にわたり設置するのが好ましい。
【0025】
電極10,11としては、含水土砂を充填した袋体5内へ挿入等する場合には、脱着が容易な形状のもの、例えば炭素棒、鉄筋、銅線などを用いることができる。一方、袋体5が布帛からなる場合にはその素材にカーボン繊維や電線などを織り込むことにより、袋体5自体を電極とすることもできる。ただしこの場合、電極を再利用できなくなるため、マット状またはシート状の電極シートを袋体5内面または外面に貼付する等により設置する形態も好ましい。この場合、所定の電圧印加時間経過後に電極を外して再利用することが可能になる。
【0026】
他方、含水土砂1bの注入に際して、好適には含水土砂1bを袋体5内に圧入する。これにより、その注入圧により袋体内容物が加圧脱水されるので、高効率での袋詰および脱水を行うことができる。ただし、本発明においては圧入せずに、注入した含水土砂1bの自重による加圧および水分の蒸発により脱水させたり、図示のように注入済み袋体5を順次積み重ねて下側の袋体5を加圧脱水したり、注入済み袋体を機械的に加圧脱水することもできる。
【0027】
袋詰脱水では、袋体5の目合いの粗さによって、注入開始からフィルター効果を十分に発揮するまでの時間には差はあるが、いずれにせよある程度まで注入すれば十分なフィルター効果が発揮される。よって、基本的には透水性袋体5の目合いの粗さは問わないが、注入当初からある程度十分なフィルター効果を発揮させるためには、透水性袋体5としては、透水係数が1.0×10-3cm/sec以上、水透過孔径が90〜600μmのものが好ましい。また耐酸性、耐アルカリ性が高く化学的に安定しているという観点から、ポリエステルやポリプロピレン繊維等の化学繊維からなる不織布、織布、編物等により形成した袋体を好適に使用することができる。具体的な透水性袋体の例を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
特に、前述のように含水土砂1bを圧入するときには、袋体5が膨張し破壊する虞があるので、予め袋外周囲に引っ張り強度の高いジオグリッド等の補強材を巻き付けておく等により補強された袋体を用いることができる。
【0030】
またフィルター効果を高めるためには、袋体5を複数枚重ねた多重袋体を用いることで、含水土砂1b中の粒子捕捉効果を高めることができ、袋体の強度も向上する。この場合において、異なる素材の袋体を組み合わせて重ねることもできる。
【0031】
その他、特願平8−21437号、特願平10−37151号、特願平8−59964号、特願平8−188203号および特願平11−030139号に記載された脱水用袋体など、公知の脱水用袋体を使用することができる。なお、これら従来の脱水技術は、本願発明のように有害物質含有泥土類を対象として有害物質を袋体内に封じ込めるものではない。
【0032】
他方、泥土等の含水土砂には、有害物質(環境汚染物質)を含む場合があるが、多くの有害物質、特にダイオキシン、PCB、砒素、鉛、などの有害物質の多くは、土粒子やその他の懸濁粒子に付着して存在している。よって、上記のように袋詰脱水を行うと、これらの有害物質は袋体5内に封じ込められる。
【0033】
これに対して、水中でイオン化して水に溶ける有害物質、例えば鉛、水銀、カドミウム、クロムなどの重金属はイオン化して水に溶解するため、従来の単なる袋詰脱水方法では袋体5内に封じ込めることはできず、水とともに排出されてしまう。しかし、本発明の方法では、一対の電極10,11を配置して電圧を印加しているため、CrO42-等の陰イオンは陽極11に、またPb2+、Cd2+、Ni2+等の陽イオンは陰極10に引き寄せて捕捉することができる。したがって、袋体5内に電極を設置した場合には、袋体5内にこれらのイオン化した有害物質を封じ込めることができる。また、袋体5外に電極を設置した場合であっても、電極表面にイオン化した有害物質を捕捉することができる。具体的に図2に示す例では、袋体5内の陽極11に陰イオンを引き寄せて封じ込め、袋体5外の陰極10に陽イオンを吸着することができる。
【0034】
このような有害物質を含む含水土砂としては、その存在場所に応じて多少の広狭があり、一概には言えないが、「土壌の汚染に係る環境基準について(平成3年8月23日、環境庁告示第46号)」、「排水基準を定める総理府令(昭和46年6月21日、総理府令第35号)」、「地下水の水質汚濁に係る環境基準について(平成9年3月13日、環境庁告示第10号)」、「水質汚濁に係る環境基準について(昭和46年12月28日、環境庁告示第59号)」、「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律(昭和45年12月25日、法律第139号)」、「ダイオキシン類による大気の汚染、水質の汚濁及び土壌の汚染に係る環境基準(平成11年12月27日、環境庁告示第68号)」等の各種法規や運用基準等の基準に適合しないものを意味する。具体的な有害物質の例とともに各種基準を表2及び表3に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【実施例】
【0037】
以下、実施例を示して本発明の効果を明らかにする。なお、以下の実験1及び実験2では、表4に示す砂質粘性土を試料として用いた。
【0038】
【表4】
【0039】
<予備実験>
先ず、電気浸透現象による脱水促進効果を確認するために、次に示す予備実験を行った。
(1) 図5に示すように、試料に水を加えて良く混合し含水比を70%に調整した後、ビーカー20に静かに投入した。
(2) 次いで、一対の電極10,11を5cm間隔で、且つビーカー20の底から10mm離間するように挿入した。
(3) しかる後、電極10,11間に所定の直流電圧を印加し、電極10,11の挿入後から1、2、3、4、5、24時間経過後の沈降部分上面から水面までの高さhを計測し、間隙比 (土粒子の間隙の体積と土粒子の体積との比)を算出した。なお、電圧は、0、3、5、10Vの4つのケース(それぞれ0、0.6、1、2V/cmの電位勾配に相当)で行った。
【0040】
実験結果を図6に示した。実験結果より、含水土砂における電気浸透現象では、脱水効果は電圧が高い方が大きいこと、脱水効果は電位勾配が大きい方が大きいこと、電圧が高いほうが間隙比低下が著しいこと、および電位勾配が大きいほうが間隙比低下が著しいことが判明した。
【0041】
<本実験>
本実験として、表5に示す特性及び図7に示す形状を有する袋体5を使用して、次に示す脱水促進の確認実験を行った。なお、図7中の符号5iは袋体内に連通する筒状の供給路を示している。
【0042】
【表5】
【0043】
(実施例1)
予め、図8に示すように袋体5の上面及び下面に陰極10を固定し、袋体5内の厚さ方向中央に陽極11を配置した。電極10,11には電線(直径2mmの軟銅線)を使用した。この袋体5内に、含水比を70%に調整した試料を60リットル(約100kg)充填するとともに、電圧勾配(単位電極間距離当たりの印加電圧)が2V/cmとなるように陽極・陰極間に電圧12Vを印加して静置し、加圧等せずに自然に脱水させた。
【0044】
袋体の静置完了時点を測定開始とし、測定開始から1.0時間経過後、2.0時間経過後、4.0時間経過後、24時間経過後、以降は24時間置きに14日経過後まで、袋体の質量および排水量を計測し、間隙比および含水比を算出した。また電流値も記録した。
【0045】
(実施例2)
電極の配置を図9に示すように、袋体5の上面に陰極10を固定し、袋体の下面に陽極11を固定し、袋体5内には電極を設けない配置とした以外は、実施例1と同様にして測定を行った。なお、この場合、実施例1に対して電極間距離が2倍となるため、電圧勾配は1V/cmであった。
【0046】
(従来例)
電極を設置せず、電圧を印加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして測定を行った。
【0047】
(結果及び考察)
図10は、間隙比と時間との関係を表したものである。この曲線を見ると、試験初期では、電圧を印加した実施例1,2が同程度で従来例よりも大きくなっており、電圧勾配が大きいほど脱水が促進されることが判る。実施例1、2では、従来例と比べて約43%の脱水時間短縮が確認された。
【0048】
一方、時間の経過とともに曲線勾配は緩やかになり、脱水促進効果が経時的に低下していることがわかる。より詳細には、実施例2、実施例1、従来例の順で勾配が減少し、最終的には1.26〜1.21程度となり、ほぼ同じ間隙比レベルに漸近していくことが読み取れる。
【0049】
図11は電流値と時間との関係、図12は電流値と間隙比との関係、図13は電流値と含水比との関係をそれぞれ示している。図から、電流値が経時的に、あるいは間隙比もしくは含水比の減少に伴って低下することが判る。脱水促進効果が実質的に無くなる下限電流値の存在が推測される。
【0050】
さらに、図14は、間隙比減少速度と電流値との関係を表したものである。同図より0.5A前後で間隙比減少速度が0.010(1/h)以下でほぼ一定となることがわかる。したがって、例えば間隙比減少速度がある閾値(0.010等)よりも低下しないように、電圧等を設定もしくは制御すると好ましい結果が得られることが予測される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、河川、湖沼、海洋などから浚渫された泥土等の含水土砂を脱水処理し、有効利用を図る際等に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態の概略図である。
【図2】透水性袋体への電極設置例を示す縦断面図である。
【図3】透水性袋体への電極設置例を示す平面図である。
【図4】透水性袋体への電極設置例を示す縦断面図である。
【図5】予備試験の概要図である。
【図6】予備試験結果を示すグラフである。
【図7】本実験で使用した袋体の形状を示す平面図である。
【図8】実施例1の試験要領を示す(a)平面図、(b)断面図、(c)別の断面図である。
【図9】実施例2の試験要領を示す(a)平面図、(b)断面図、(c)別の断面図である。
【図10】間隙比と時間との関係を示すグラフである。
【図11】電流値と時間との関係を示すグラフである。
【図12】電流値と含水比との関係を示すグラフである。
【図13】電流値と間隙比との関係を示すグラフである。
【図14】間隙比減少率と電流値との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0053】
1…河川等、2…浚渫船、3…貯留ピット、4…注入ポンプ、5…透水性袋体、6…排水溝、10,11…電極。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水土砂を透水性袋体内に充填し、この袋体内容物のうち水分を袋体外に透過させて脱水する袋詰脱水処理工法において、
前記袋体内の含水土砂に対して一対の電極を用いて電圧を印加し、電気浸透現象を発生させて土粒子間の間隙水の移動を促進させる、ことを特徴とする袋詰脱水処理方法。
【請求項2】
前記袋体内の含水土砂内に陽極を設置し、袋体自体、その内面、またはその外面に陰極を設置し、これら陽極及び陰極間に直流電圧を印加することにより前記電気浸透現象を発生させる、請求項1記載の袋詰脱水処理方法。
【請求項3】
前記含水土砂は、イオン化する性質を有する有害物質を含むものである、請求項1または2記載の袋詰脱水処理方法。
【請求項1】
含水土砂を透水性袋体内に充填し、この袋体内容物のうち水分を袋体外に透過させて脱水する袋詰脱水処理工法において、
前記袋体内の含水土砂に対して一対の電極を用いて電圧を印加し、電気浸透現象を発生させて土粒子間の間隙水の移動を促進させる、ことを特徴とする袋詰脱水処理方法。
【請求項2】
前記袋体内の含水土砂内に陽極を設置し、袋体自体、その内面、またはその外面に陰極を設置し、これら陽極及び陰極間に直流電圧を印加することにより前記電気浸透現象を発生させる、請求項1記載の袋詰脱水処理方法。
【請求項3】
前記含水土砂は、イオン化する性質を有する有害物質を含むものである、請求項1または2記載の袋詰脱水処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−38105(P2007−38105A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224236(P2005−224236)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000112196)株式会社ピーエス三菱 (181)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000112196)株式会社ピーエス三菱 (181)
【Fターム(参考)】
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