説明

被接着物の接着方法

【課題】水分透過性の低い被接着物どうしを、生産効率よく、かつ、強力に接着する接着方法を提供する
【解決手段】人造大理石等の水分透過性の低い被接着物どうしを接着する方法であって、空気と接触する端縁側に空気中の水分と反応して硬化するシアノアクリレート系一液性接着剤1の塗布面を設けるとともに、上記シアノアクリレート系一液性接着剤塗布面1より内側に主剤と硬化剤とからなる二液性接着剤2の塗布面を設けて接着してなる異種接着剤を併用する接着方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は接着方法に関するものであり、詳しくは、一液性接着剤と二液性接着剤とを併用する接着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一液性接着剤はα−シアノアクリレートを主成分とした接着剤であり、空気中の水分と反応して短時間に急速硬化し、簡便に使用できるため、一般的に「瞬間接着剤」としてその使用が普及している。しかしながら、価格的に高価であるため、食器等の家庭用小物の補修、玩具の補修、ゴルフ用品、釣り具等趣味用品の補修等その用途は限られていた。一方、近年、その接着の迅速性、接着強度に優れていること等の理由により、工業用としての用途も広まり、電機部品、精密機器、建築、土木等の分野でも使用されつつある。
【0003】
一方、主剤と硬化剤とからなる二液性接着剤、例えば、エポキシ樹脂とアミン系硬化剤等とからなる反応性接着剤もその優れた接着性、接着強度や、使用の容易さ等の観点からから家庭用、工業用等としての使用が普及している。
【0004】
特開昭63−12677号公報には、(A)α−シアノアクリレート系化合物と1,1−ジ置換ジエン系化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種のアニオン重合性化合物を主成分とする水分による常温アニオン重合硬化型接着剤と、(B)イソシアネート基を分子中に少なくとも2個有するポリイソシアネート化合物、および加水分解可能な基が結合したケイ素原子を分子中に少なくとも2個有する有機シリコン化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1個の常温湿気硬化性化合物を主成分とする常温湿気硬化型接着剤を使用し、接着すべき両被着体の接着界面に前記の2種類の接着剤をなるべく互いに混合しないようにかつ互いに重ならないように(ただし一部で混合し又は重なるのを妨げない)別々に施用して接着を行わせることを特徴とする接着方法が開示されている。
【0005】
そして、その効果として、セットタイム(仮止めに要する時間)が短く、しかも空気中の水分と化学量論的に容易に反応して硬化するので、一般被着体はもちろんのこと、繊維等の多質面や凹凸の接着面を有する被着体に対しても優れた接着性能を示し、特に耐水性、耐剥離性、耐衝撃性および耐老化性に優れた接着性を付与することができる、とその効果が述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−12677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、近年、建築用、特にハウジング分野において、人造大理石どうしを接着して使用するケースや、人造大理石と金属板とを接着、複合化して利用することが盛んに行われている。例えば、上記複合化材は、キッチンカウンターや洗面カウンター等の水回りの用途に広く利用され、また、インテリア素材として他のクリアー素材とコーディネートして用いられることも多い。
【0008】
上記人造大理石や金属板は、実質的に水分の透過や吸湿を行わないため、上記した水回りの分野で使用されることが多い。しかしながら、これらの素材を接着させる場合は、接着界面に存在する水分と一液性接着剤とを反応して硬化させなければならず、実質的に水分の透過や吸湿を行わない上記素材を上記特許文献1に記載の技術を適用して接着させることは困難である。
【0009】
本願第1発明は上記背景技術に鑑みて発明されたものであり、人造大理石等の水分透過性の低い被接着物どうしを、接着界面に存在する空気中の水分が少ない場合においても、生産効率よく、かつ、強力に接着する接着方法を提供することを、その目的とする。
【0010】
また、本願第2発明は、水分透過性の低い合成樹脂等からなるシンクとカウンターとを別々に作製し、その後シンクとカウンターとを接着、一体化してキッチンカウンターを製造する方法において、上記シンクに延設された上縁鍔部を同じく合成樹脂製のカウンターに設けられたシンク取付け用開口部裏面周縁に生産効率よく、かつ、強力に接着する接着方法を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本願請求項1に記載の第1発明にかかる被接着物の接着方法は、水分透過性の低い被接着物どうしを接着する方法であって、接着する部分の空気と接触する端縁側に空気中の水分と反応して硬化するシアノアクリレート系一液性接着剤の塗布面を設けるとともに、上記シアノアクリレート系一液性接着剤塗布面より内側に硬化剤硬化型の接着剤の塗布面を設けて接着することを特徴としている。
【0012】
また、本願請求項2に記載の第2発明にかかる合成樹脂製シンクと合成樹脂製カウンターとの接着方法は、上縁に鍔部が延設された合成樹脂製シンクを合成樹脂製カウンターの開口部裏面周縁に接着する方法であって、上記シンクの上縁鍔部の端縁部分に水分と反応して硬化するシアノアクリレート系一液性接着剤を塗布するとともに、上記端縁部分の内側に硬化剤硬化型の接着剤を塗布し、上記シンクの上縁鍔部を上記カウンター開口部裏面周縁に接着してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本願請求項1記載の発明に係る接着方法においては、水分透過性の低い被接着物どうしを接着する場合、空気と接触する端縁側に空気中の水分と反応して硬化するシアノアクリレート系一液性接着剤の塗布面を設けることにより、接着界面からの水分補給が十分でなくてもシアノアクリレート系一液性接着剤が硬化して端縁どうしをしっかりと接着することができる。
【0014】
一方、上記シアノアクリレート系一液性接着剤塗布面より内側に硬化剤硬化型の接着剤の塗布面が設けられているため、水分の補給がない状態でも、主剤と硬化剤とが架橋反応することにより、例えば、人造大理石の内側どうしをしっかりと接着することができる。
【0015】
このように、接着速度が速く、硬い被膜を形成するシアノアクリレート系一液性接着剤と、硬化時間はシアノアクリレート系一液性接着剤より長くかかるが、接着性に優れ、接着強度も大きい硬化剤硬化型の接着剤とを併用することにより、両者が相互に補完して、水分透過性の低い、例えば、人造大理石どうしや、人造大理石と金属板とをしっかりと接着することができる。
【0016】
本願請求項2に記載の第2発明にかかる合成樹脂製シンクと合成樹脂製カウンターとの接着方法においては、上記シンクの上縁側に設けられた鍔部の端縁部分に水分と反応して硬化するシアノアクリレート系一液性接着剤を塗布することにより、接着界面からの水分補給が十分でなくてもシアノアクリレート系一液性接着剤が硬化して端部どうしをしっかりと接着することができる。
【0017】
また、端縁部分の内側に硬化剤硬化型の接着剤を塗布し上記シンクの上縁鍔部を上記カウンター開口部裏面周縁に接着してなるため、シアノアクリレート系一液性接着剤と、硬化剤硬化型の接着剤とを併用することにより、両者が相互に補完して、水分透過性の低い合成樹脂製からなるシンクとカウンターとをしっかりと接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】シアノアクリレート系一液性接着剤と二液性接着剤とを用いて水分透過性の低い人造大理石と金属板とを接着する実施形態を模式的に示す説明図。
【図2】シアノアクリレート系一液性接着剤と、二液性接着剤とを塗布した金属板に人造大理石を接着した状態を模式的に示す断面説明図。
【図3】上縁に鍔部が延設された合成樹脂製シンクを合成樹脂製カウンターに設けられた開口部の裏面周縁に接着する方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願第1発明にかかる被接着物の接着方法の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、シアノアクリレート系一液性接着剤1と硬化剤硬化型の二液性接着剤2とを用いて水分透過性の低い人造大理石3と金属板4とを接着する実施形態を模式的に示す説明図である。
【0020】
図1に示すように、水分透過性の低い人造大理石3の端縁31側に相当する金属板4上にシアノアクリレート系一液性接着剤1を塗布した面を設け、かつ、上記金属板4上の一液性接着剤塗布面より内側に二液性接着剤2を塗布した面を設けて人造大理石3を金属板4に圧着することにより、両者は接着される。
【0021】
上記人造大理石3は、公知の熱硬化性樹脂からなり、表面には大理石調、御影石調、墨ぼかし調、幾何模様調等、各種のデザインの模様が付けられている。また、金属板4としては、鋼板、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、亜鉛メッキ鋼、クロムメッキ鋼等各種のものをあげることができる。
【0022】
シアノアクリレート系一液性接着剤1は、空気中の水分と化学反応して接着力を発揮する瞬間接着剤であり、例えば、エチル−α−シアノアクリレート、エトキシエチル−α−シアノアクリレート等のα−シアノアクリル酸エチルエステルを主成分とするもの等の一液性接着剤が用いられる。アセトン等の溶媒に溶解させた溶液タイプのもの、あるいはゼリー状のもの等、使用場面に応じて適宜、好適なタイプのものを選んで塗布すればよい。塗布は、図1に示すように、金属板4の人造大理石3の両端縁31側に相当する位置に容器から直接、またはアプリケータを用いて行い、シアノアクリレート系一液性接着剤1の塗布面を設ける。
【0023】
一方、硬化剤硬化型の接着剤である二液性接着剤2は、主剤と硬化剤とからなるものであり、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、反応性アクリル樹脂等を主剤として、これらと反応する硬化剤を組み合わせて用いる。中でもエポキシ樹脂は、接着性、接着強度、硬化時の体積収縮が少ないこと、硬化中に揮発成分をほとんど発生しないこと等、その性能が優れているため、一般的に広く用いられている。
【0024】
上記エポキシ樹脂と組み合わせて用いる硬化剤としては、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン等のアミン系化合物があげられる。上記アミン系化合物にポリチオールや変性シリコン系ポリマー等を使用目的に応じて添加することもできる。そして、主剤と硬化剤とを略等量ずつ混合して塗布する。通常、上記混合物はゲル状であるため、上記シアノアクリレート系一液性接着剤1の塗布面の間にヘラ等のアプリケータ等を用いて塗布する。なお、主剤中に硬化剤が配合された一液性の硬化剤硬化型接着剤を用いることもできる。
【0025】
図2は位置決めを行った後、上記のようにして、シアノアクリレート系一液性接着剤1と、二液性接着剤2とを塗布した金属板4に人造大理石3を接着した状態を模式的に示す断面説明図である。人造大理石3や金属板4等は、表面が密であり水分透過性が低く水分がほとんど吸着されないため、シアノアクリレート系一液性接着剤1は、図2に白抜き矢印で示す位置で空気と接触し、接触面から空気中の水分を吸収して硬化反応が進行する。一方、二液性接着剤2は硬化剤を含んで塗布されるため、水分の存在がなくても主剤と硬化剤とが架橋反応して人造大理石3と金属板4とを接着する。
【0026】
シアノアクリレート系一液性接着剤1は、接着速度は速く硬い被膜を形成するが被膜は脆性を有し、一方、二液性接着剤2は、硬化時間が数分ないし数時間とシアノアクリレート系一液性接着剤1より長くかかるが、人造大理石3や金属板4との接着性に優れ、接着強度も大きい。したがって、図1、図2に示すように異種の接着剤を併用することにより、相互に補完して、水分透過性の低い被接着物、例えば、人造大理石3と金属板4とを全体的にしっかりと接着することができる。
【0027】
つぎに、本願第2発明にかかる合成樹脂製シンクと合成樹脂製カウンターとの接着方法の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図3は、上縁に鍔部51が延設された合成樹脂製シンク5を合成樹脂製カウンター6に設けられた開口部61の裏面周縁に接着する方法を示す説明図である。
【0028】
本実施形態においては、合成樹脂製カウンター6としては、人造大理石からなるものが用いられ、上記開口部61からやや離間して開口部61の裏面の周縁を補強するための補強材7が周設されている。補強材7の材質は特に限定されず、木材、プラスチック、金属等が適宜用いられる。
【0029】
合成樹脂製シンク5としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂を原料とし、金型を用いてシンク本体と上縁鍔部とを一体的に成形したものが用いられる。通常、これらのホモポリマーは無色透明であるため、合成樹脂製カウンターと調和するように着色して用いられる。
【0030】
そして図3(a)に示すように、上記合成樹脂製カウンター6は、図外作業用ベースに人造大理石の表側を下にして載置され、開口部61の裏面周縁と接着しようとする上記上縁鍔部51の両側の端縁部分には、シアノアクリレート系一液性接着剤1が塗布されている。また、シアノアクリレート系一液性接着剤1が塗布された端縁部分の内側には硬化剤硬化型の接着剤である二液性接着剤2が塗布されている。
【0031】
ここで、シアノアクリレート系一液性接着剤1としては、例えば、エチル−α−シアノアクリレート系一液性接着剤等の本願第1発明にかかる接着方法の場合と同様のものが用いられ、一方、硬化剤硬化型の接着剤としては、二液性接着剤2であるエポキシ樹脂を主剤とし、これと反応するアミン系化合物を硬化剤としたもの等の本願第1発明にかかる接着方法の場合と同様のものが用いられる。
【0032】
図3(b)は、合成樹脂製シンク5の上縁鍔部51をカウンター6の開口部61の裏面周縁に白抜き矢印で示すように圧着し、合成樹脂製シンク5を合成樹脂製カウンター6に接着した状態を示す説明図である。このとき、迅速に硬化するシアノアクリレート系一液性接着剤1と、硬化速度は数分ないしは数時間とシアノアクリレート系一液性接着剤1より長くかかるが接着強度の大きい二液性接着剤2とを併用することにより、両者が相互に補完して、合成樹脂製シンク5を、例えば、人造大理石からなる合成樹脂製カウンター6にしっかりと接着することができる。
【0033】
なお、本願第1発明にかかる実施形態においては、人造大理石3と金属板4とを接着する形態を例にして説明したが、人造大理石3と人造大理石3とを接着する場合も同様に実施できる。また、本願第2発明にかかる実施形態においては、合成樹脂製シンク5を合成樹脂製カウンター6に接着する形態を例にして説明したが、合成樹脂製シンク5を金属板4、例えば、ステンレス板製のカウンターに接着する場合も同様に実施できる。
【0034】
以上述べたように、本願発明にかかる異種接着剤を併用する接着方法は設計変更自在であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り、本願発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0035】
1 シアノアクリレート系一液性接着剤
2 二液性接着剤
3 人造大理石
31 端縁
4 金属板
5 合成樹脂製シンク
51 上縁鍔部
6 合成樹脂製カウンター
61 開口部
7 補強材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分透過性の低い被接着物どうしを接着する方法であって、接着する部分の空気と接触する端縁側に空気中の水分と反応して硬化するシアノアクリレート系一液性接着剤の塗布面を設けるとともに、上記シアノアクリレート系一液性接着剤塗布面より内側に硬化剤硬化型の接着剤の塗布面を設けて接着してなる被接着物の接着方法。
【請求項2】
上縁に鍔部が延設された合成樹脂製シンクを合成樹脂製カウンターの開口部裏面周縁に接着する方法であって、上記シンクの上縁鍔部の端縁部分に水分と反応して硬化するシアノアクリレート系一液性接着剤を塗布するとともに、上記端縁部分の内側に硬化剤硬化型の接着剤を塗布し、上記シンクの上縁鍔部を上記カウンター開口部裏面周縁に接着してなる合成樹脂製シンクと合成樹脂製カウンターとの接着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−68704(P2011−68704A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218374(P2009−218374)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】