被検体情報取得装置およびその制御方法
【課題】光路に対する被検体の位置が正しいか否かの判定を精度良く行うことが可能な被検体情報取得装置を提供する。
【解決手段】被検体に光を照射して光音響波を発生させる光照射手段と、光音響波を受信して光音響信号を出力し、かつ、被検体に超音波ビームを送受信して超音波エコー信号を出力する振動子と、光照射手段からの光路に被検体があるか否かを判定する判定手段と、光音響信号を用いて被検体内部の画像データを生成する画像処理手段を有する被検体情報取得装置を用いる。
【解決手段】被検体に光を照射して光音響波を発生させる光照射手段と、光音響波を受信して光音響信号を出力し、かつ、被検体に超音波ビームを送受信して超音波エコー信号を出力する振動子と、光照射手段からの光路に被検体があるか否かを判定する判定手段と、光音響信号を用いて被検体内部の画像データを生成する画像処理手段を有する被検体情報取得装置を用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体情報取得装置およびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パルス光を被検体に照射し、被検体内部から発生する光音響波を探触子で受信して被検体内部の形態や機能を画像化する光音響装置が医療分野で多く研究されている。また、被検体内部からの光音響波と超音波エコーの両方を取得し、リアルタイムで画像を表示することができる光音響装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
このような光音響装置において、被検体内部から光音響波を発生させ探触子で正しく取得するには、被検体と光路および探触子の位置関係が正しいことが必要である。すなわち、被検体が光路の中にあり、かつ探触子に密着していることが必要である。被検体が光路から外れていると光音響波が発生せず、被検体と探触子が密着していないと光音響波が探触子と被検体との間で反射してしまい探触子まで届かないためである。
【0004】
そこで、位置関係の一つとして被検体と探触子との接触状態を検出するセンサを備えた光音響装置が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−540904号公報
【特許文献2】特開2008−191160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
被検体が光路から外れている場合、光音響波が発生しないため測定ができない問題がある。さらに、特に光源としてレーザ光を用いている場合、安全上注意を要する。例えばハンドヘルド型の探触子に光照射口と振動子が設置されている場合、その探触子が被検体に接触していないときに光を照射すると、光が意図せぬ方向へ進む可能性がある。またベッド型の光音響装置でも、被検体がいないときに不必要に光を照射することは好ましくない。従って光路上に被検体があるか否かの判定が必要とされていた。
【0007】
上述したように従来の光音響装置においては、センサで被検体と探触子の接触状態を検出していた。しかしこの方法では接触センサを設けた地点の接触状態しか検出できないため、被検体の位置が正しいか否かの判定の精度に限界があった。また、多数の接触センサを設けた場合には装置の大型化、コスト上昇につながるという別の問題があった。またこの方法では、探触子に光照射口が含まれている場合はともかく、光を探触子と別の位置から照射する場合は光路上に被検体があるか否かの判定ができなかった。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、光路に対する被検体の位置が正しいか否かの判定を精度良く行うことが可能な被検体情報取得装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の構成を採用する。すなわち、被検体に光を照射して光音響波を発生させる光照射手段と、前記光音響波を受信して光音響信号を出力するとともに、前記被検体に超音波ビームを送受信して超音波エコー信号を出力する振動子と、前記振動子より出力さ
れた超音波エコー信号に基づいて前記光照射手段からの光路に前記被検体があるか否かを判定する判定手段と、少なくとも前記光音響信号を用いて前記被検体内部の画像データを生成する画像処理手段と、を有することを特徴とする被検体情報取得装置である。
【0010】
本発明はまた、以下の構成を採用する。すなわち、振動子が、被検体に超音波ビームを送受信して超音波エコー信号を出力するステップと、判定手段が、前記振動子より出力された超音波エコー信号に基づいて光照射手段からの光路に前記被検体があるか否かを判定するステップと、前記光照射手段が、前記被検体に光を照射して光音響波を発生させるステップと、前記振動子が、前記光音響波を受信して光音響信号を出力するステップと、画像処理手段が、少なくとも前記光音響信号を用いて前記被検体内部の画像データを生成するステップと、を有することを特徴とする被検体情報取得装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光路に対する被検体の位置が正しいか否かの判定を精度良く行うことが可能な被検体情報取得装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1におけるブロック構成図。
【図2】本発明の実施例1におけるコントローラの内部構成図。
【図3】本発明の実施例1における被検体近傍の位置関係を示す図。
【図4】本発明の実施例1における動作フローチャート。
【図5】本発明の実施例1における位置判定処理のフローチャート。
【図6】本発明の実施例1における被検体近傍の位置関係を示す図。
【図7】本発明の実施例1における受信信号の一例を示す図。
【図8】本発明の実施例2におけるブロック構成図。
【図9】本発明の実施例2における被検体近傍の位置関係を示す図。
【図10】本発明の実施例2における動作フローチャート。
【図11】本発明の実施例3における位置判定処理のフローチャート。
【図12】本発明の実施例4におけるブロック構成図。
【図13】本発明の実施例4における被検体近傍の位置関係を示す図。
【図14】本発明の実施例2における測定点と移動方向を示す図。
【図15】本発明の実施例2の変形例における測定点と移動方向を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照しつつ、本発明の好適な実施の形態を説明する。本発明は、被検体に光(電磁波)を照射することにより被検体内で発生した音響波(光音響波とも言い、典型的には超音波)を受信して、被検体情報を画像データとして取得する光音響効果を利用した装置に適用できる。このような装置は光音響装置と呼ばれる。本発明の光音響装置は、被検体に超音波を送信し、被検体内部で反射した反射波を受信して、被検体情報を画像データとして取得する超音波エコー技術を利用できる様に構成される。従って本発明の装置は、光音響装置と超音波エコー装置を兼ねた被検体情報取得装置とも呼べる。
【0014】
前者の光音響装置として見ると、取得される被検体情報とは、光照射によって生じた音響波の発生源分布や、被検体内の初期音圧分布、あるいは初期音圧分布から導かれる光エネルギー吸収密度分布や、吸収係数分布、組織を構成する物質の濃度分布を示す。物質の濃度分布とは、例えば、酸素飽和度分布や酸化・還元ヘモグロビン濃度分布などである。
被検体情報取得装置を後者の超音波エコー装置として見ると、取得される被検体情報とは、被検体内部の組織の音響インピーダンスの違いを反映した情報である。
【0015】
なお、音響波とは、典型的には超音波であり、音波、超音波、音響波、光音響波、光超
音波と呼ばれる弾性波を含む。また本発明において光とは、可視光線や赤外線を含む電磁波を示す。被検体情報取得装置が測定対象とする成分により特定の波長の光を選択すると良い。
【0016】
被検体は本発明の被検体情報取得装置の一部を構成するものではないが、以下に説明する。本発明の被検体情報取得装置は、人や動物の悪性腫瘍や血管疾患、血糖値などの診断や化学治療の経過観察などが可能である。よって、被検体としては生体、具体的には人体や動物の乳房や指、手足などを想定できる。被検体内部の光吸収体としては、被検体内で相対的に吸収係数が高いものを示す。例えば、人体が測定対象であれば、酸化あるいは還元ヘモグロビンやそれらを含む血管、あるいは新生血管を多く含む悪性腫瘍が該当する。
【実施例1】
【0017】
図1は本発明に係る光音響装置の実施例1を示すブロック構成図である。図1において、101は光音響装置の測定対象となる被検体であり、被検者の体の一部である。ここでは乳房を例として説明する。102は探触子であり、被検体に超音波を送受信するための振動子103および、パルス光を照射するための光照射口104を備えている。振動子103はPZT,CMUTなどの超音波センサ素子をアレイ状に並べたものである。光照射口104は光ファイバの射出口であり、ミラーや拡散板などの光学部品を備えてもよい。また、振動子と空気の間に音響レンズを備えてもよい。
【0018】
105は被検体内部に存在する光吸収の大きな部位(光吸収体)を表したものであり、例えば乳がんに起因する新生血管などがこれにあたる。105にパルス光などの光が照射されると、光音響効果により光音響波106が生じる。光音響波106は探触子102内部の振動子103により電気信号に変換される。この電気信号を光音響信号と呼ぶ。
【0019】
107はパルス光を発生させるための光源であり、YAGレーザ、チタンサファイアレーザなどで構成される。パルスレーザ光源は内部のレーザ媒質を励起するための手段としてフラッシュランプをもち、外部から電気的に制御可能な構成になっている。また、パルスレーザ光源はQスイッチを持ち、外部から電気的に制御可能な構成になっている。外部から一定周期でフラッシュランプを点灯させ、レーザ媒質に励起エネルギーを蓄積した後にQスイッチをONにするとジャイアントパルスと呼ばれる高いエネルギーをもつパルス光が出力される。
【0020】
108は探触子102から出力された光音響信号を受信するとともに、パルスレーザ光源107および、探触子105の超音波送受信動作を制御するコントローラである。109は使用者が光音響装置で測定開始の指示をしたり、装置の設定を入力したりするためのキーボードである。110は使用者が被検体内部の画像を見るためのディスプレイである。なお、使用者とのインターフェースとしてキーボードとディスプレイ以外の適切な方法を用いても構わない。
【0021】
111はコントローラ108と振動子103を電気的に接続するためのケーブルである。112はパルス光源107からのパルス光を光照射口104へ導くための光ファイバである。また、振動子103はコントローラ108からの信号に基づいて、被検体101に超音波を照射するとともに、被検体101から反射した超音波を受信し、電気信号に変換し出力する。この電気信号を超音波エコー信号と呼ぶ。
【0022】
光源107と光照射口104の間は、光ファイバ112のほかにも様々な光学部材で接続できる。光学部材としては、例えば、光を反射するミラーや、光を集光したり拡大したり形状を変化させるレンズ、光を分散・屈折・反射するプリズム、光を伝搬させる光ファイバ、拡散板等が挙げられる。このような光学部材は、光源から発せられた光が被検体に
所望の形状で照射されれば、どのようなものを用いてもかまわない。
【0023】
図2にコントローラ108の内部の構成を示す。201は光音響装置の全体の動作を制御するCPUであり、組み込みマイコンおよびソフトウェアで構成される。また、CPU201は使用者の指示をキーボード109経由で受け付け、装置の動作に反映させる。202は振動子に対して高電圧のパルス信号を送信するための送信回路であり、パルサおよび送信メモリを備えている。超音波送信に際しては、CPU201から送信メモリに振動子の素子ごとの遅延量を設定する。そして送信開始指示を行うと、送信メモリに設定された時間だけタイミングをずらし、パルス信号を振動子103の各超音波センサ素子に送信する。これにより、振動子の各超音波センサ素子から発生する超音波の位相を制御し、超音波の方向を電子的に制御することができる。一つの方向に進む超音波を超音波ビームと呼ぶ。
【0024】
203は振動子からの超音波エコー信号および光音響信号を受信する受信回路であり。プリアンプ、A/Dコンバータ、受信メモリ、FPGAから構成される。超音波エコー信号および光音響信号はプリアンプで増幅される。この際に信号の入力時刻に応じてプリアンプのゲインを変化させ、被検体内部の奥深くから発生する微弱な信号も取得することができる。増幅された信号はA/Dコンバータにてデジタル値に変換され、FPGAへ入力される。FPGAでは受信メモリへのデータの読み書きおよびノイズ除去処理や整相加算などの信号処理を行う。整相加算の際に超音波センサ素子ごとに位相をずらして加算することにより、任意の方向の超音波を生成する。受信回路で信号処理を施された超音波エコー信号および光音響信号はコントローラ108内部のメモリ206へ保存される。メモリ206に保存されているデータをそれぞれ超音波エコー信号データおよび光音響信号データと呼ぶ。
【0025】
204は光源107のフラッシュランプやQ−スイッチの制御信号を発生させる光照射制御回路である。CPU201からパルス光の照射指示を行うと、一定の周波数でフラッシュランプおよびQ−スイッチの制御パルスを発生させ、光源107にてパルス光を発生させる。CPU201からパルス光の停止指示を受け付けると、フラッシュランプおよびQ−スイッチの制御パルスを停止しパルス光を停止させる。
【0026】
205は画像処理回路であり、超音波エコー信号データからBモード画像を生成する。また、光音響信号データから画像再構成処理を行い、被検体101のパルス光に対する吸収係数分布を示す画像を生成する。これらの画像をそれぞれ、超音波エコー画像、光音響画像と呼ぶ。これらの画像を重畳し、ディスプレイ110へ表示させる。なお、画像処理回路205で行う処理は使用者に表示するための画像の前段階の画像データを生成することにとどめても良い。
206は受信回路203から出力された信号データおよび画像処理回路205から出力されたデータを一時的に保存するメモリである。207はそれぞれの回路を接続し、CPU201からの指示や、各回路からのデータをやり取りするためのバスである。
【0027】
図3は探触子102近傍の位置関係を示す図である。301、302、303、304は振動子から送受信される超音波ビームである。コントローラ108は超音波ビーム送受信のたびに送信回路202および受信回路203内部の送信メモリおよび受信メモリの値を変え、超音波ビームを電子スキャンさせる。例えば301、302、303の順番に逐次的に超音波の送受信を行う。これを被検体101の全体にわたって繰り返すことにより、広い範囲の超音波エコー信号を取得する。305は光照射口104から照射されるパルス光の光路である。この光路の向きは光照射口104の位置と取り付け角度によって定まる。超音波ビーム304と光路305が交わる点が306である。
【0028】
図4にコントローラ108で実行される光音響装置の動作フローを示す。
ステップS401においてCPU201は送信回路202へ送信指示を行い、超音波ビームを301の方向に送信する。
続いてステップS402において、301の方向の超音波エコー信号を探触子102および受信回路203で受信し、増幅、デジタル化、整相加算などの処理を行いメモリ206へ保存する。
【0029】
ステップS403において、その前にパルス光を発光させてから所定の時間が経過している場合にはステップS404に進む。まだ所定の時間が経過していない場合にはステップS401に戻り、次の方向に超音波ビームを送信する。この例では301の次には302の方向に超音波ビームを送信する。ステップS403における所定時間は光源107がパルス光を発光させる周期であり、本実施例では100ミリ秒とする。ステップS403で、前回パルス光を発生させてから100ミリ秒経過している場合には、光源107では次のパルス光を照射する準備ができているのでステップS404へ進む。
【0030】
ステップS404においてCPU201はメモリ206に保存された超音波エコー信号データを解析し、被検体101が光音響信号を取得するうえで正しい位置にあるか否かを判定する。すなわち、被検体101が光路305の中にあり、探触子102に接触しているか否かを判定する。この判定処理の詳細は後述する。このときCPU201は、判定手段として動作する。
次にステップS405において、被検体101が正しい位置にあると判定された場合にはステップS406に進む。一方、被検体101が正しい位置にないと判定された場合には、ステップS408に進む。
【0031】
ステップS406では、CPU201は光照射制御回路204に光照射指示を行い、光源107にパルス光を発生させる。パルス光は光照射口104から被検体101に向けて照射される。
続いてステップS407において受信回路203は光音響信号を受信し、増幅、デジタル化、ノイズ除去などの処理を行い、メモリ206へ保存する。
【0032】
一方ステップS405において光音響信号を正しく取得可能な位置に被検体101がセットされていないと判定した場合には、ステップS408にて使用者の警告を表示しステップS409に進む。警告の表示方法はディスプレイ110に警告メッセージを表示してもよいし、ディスプレイとは別にLEDなどの表示手段をもち点灯させてもよい。
【0033】
ステップS409では、画像処理回路205はそれぞれ、ステップS402およびステップS407においてメモリ206に保存された超音波エコー信号および光音響信号をもとに画像再構成処理、スキャン変換処理などの画像処理を行う。そして超音波エコー画像および光音響画像を生成する。そして、ディスプレイ110に超音波エコー画像および光音響画像を表示する。この際に使用者の設定により、どちらか一方の画像のみを生成し、ディスプレイ110に表示してもよい。ただし、ステップS405で光音響信号を正しく取得可能な位置に被検体101がセットされていないと判定し、光音響信号データがメモリ206に保存されていない場合には、超音波エコー画像のみを表示する。
続いてステップS410において使用者からの信号取得終了指示があるか否かを判定する。信号取得終了の指示がある場合には処理を終了する。信号取得終了の指示がない場合にはステップS401に戻り、超音波エコー信号および光音響信号の取得を繰り返す。
【0034】
続いて、ステップS404における被検体の位置の判定処理について詳細を説明する。図5は判定処理の詳細を示したフローチャートである。図6は被検体101と探触子102の位置関係の例を示す図である。
【0035】
図6(a)は被検体101が探触子102の全面に接触しており、光が被検体に入射している場合の一例である。図6(b)は被検体101が探触子の正面にない場合の一例である。図6(c)は被検体101が探触子102の正面にあるが、位置がずれており光が正しく照射されていない場合の一例である。図6(d)は被検体101が探触子102の正面にあり、一部が接触していないが光は正しく被検体に入射している場合である。
【0036】
図6において603および604は被検体101の位置が正しいか否かを判定する点であり、目標点と呼ぶ。本実施例では、目標点は光路305上において光照射口から一定距離にある点である。光路上の目標点の座標はあらかじめ定められ、メモリ206に保存されているものとする。判定処理では目標点603および604と探触子102の間に空気の層があるか否かを、超音波信号データを利用して調べる。601および、602は探触子102から目標点603および604へ向かう超音波ビームであり、判定用超音波ビームと呼ぶ。目標点は、探触子から送受信される超音波ビームと光照射口からの光路が交差する位置となる。605は判定用超音波ビームの基点とする。
【0037】
図7は判定用超音波ビーム601および602に対応する超音波エコー信号を表す図であり、受信回路203から出力され、メモリ206に保存されるデータをグラフ化した物である。図7(a)の上図は、図6(a)の位置関係における超音波ビーム601に対する超音波エコー信号である。図7(a)の下図は、図6(a)の位置関係における超音波ビーム602に対する超音波エコー信号である。同様に、図7(b)、図7(c)、図7(d)はそれぞれ図6(b),図6(c),図6(d)に対応する。また上図は超音波ビーム601に、下図は超音波ビーム602に対応する。
【0038】
まず、図6(a)の場合を例にとり、図5のフローチャートについて説明する。
ステップS501においてCPU201はメモリ206より、目標点603から振動子までの距離d601を読み出す。図中では目標点603から605までの距離に当たる。この距離は探触子102内の光照射口104と振動子103の配置と、判定用超音波ビーム601の方向により予め計算され、メモリ206に保存されているものとする。
【0039】
続いてステップS502において距離d601の2倍を被検体内部の音速で割り、目標点603からの超音波エコー信号が受信される時刻を求める。そして、目標点603および604と探触子102の間に空気の層があるか否かを判定するための時刻の範囲を求める。この時刻の範囲を判定時刻範囲と呼ぶ。なお、目標点603からの超音波エコー信号が受信される時刻をt603、目標点604からの超音波エコー信号が受信される時刻をt604とする(図7を参照)。本実施例では、目標点603の判定時刻範囲は0からt603、目標点604の判定時刻範囲は0からt604とする。なお、超音波ビームを送信開始した時刻を0とする。
続いて、ステップS503においてCPU201はメモリ206より判定用超音波ビーム601に対応する超音波エコー信号データを読み出す。
【0040】
続いてステップS504において、判定時刻範囲内のデータを予め設定された閾値と比較する。そして、ステップS505において判定時刻内に閾値v1を越えるデータがM個以上あり、その後のデータが閾値v2以下の場合にはステップS506に進む。そして、光路上の目標点が被検体の外部にあるか、あるいは被検体と探触子が接触していないと判定し、判定結果を示す情報を目標点と対応づけてCPU201内部のメモリに保存し、ステップS508に進む。Mは予め設定された自然数である。また閾値v1は被検体内部からの超音波エコー信号よりも大きな値であり、閾値v2は受信回路203のノイズレベルよりわずかに大きな値に設定される。これは、超音波ビーム601上に被検体表面がある場合には、被検体表面でほとんどの超音波が反射され大きな超音波エコー信号データが受
信されるため、閾値v1を越えるデータが多くなるためである。また、被検体表面より先へは超音波が伝わらないことから、それ以降の超音波エコー信号データは小さな値になるため、閾値v2以下のデータが多くなるためである。
【0041】
一方、ステップS505において判定時刻内に閾値v1を越えるデータがM個より少ないか、あるいは閾値v1を越えるデータがM個以上だがその後のデータが閾値v2より大きい場合にはステップS507に進む。そして目標点が被検体内部にあり、被検体と探触子が接触していると判定し、判定結果を示す情報を目標点と対応づけてCPU201内部のメモリに保存し、ステップS508に進む。
【0042】
ステップS508において、他に判定用超音波ビームがあるか否かを判定する。図6(a)の例では判定用超音波ビームとして超音波ビーム602が残っているのでステップS501へ戻り、引き続き目標点604についても目標点603と同様に被検体との位置関係を判定する。一方、ステップS508において全ての超音波ビームの判定が終了している場合にはステップS509に進む。
ステップS509において、目標点のうちN個以上が被検体内部にあり、かつ被検体と探触子が接触していると判定されている場合にはステップS510に進み、被検体は正しい位置にセットされていると判定し、処理を終了する。一方、目標点のうち、被検体内部にあり、かつ被検体と探触子が接触していると判定されたものがN個より少ない場合にはステップS511に進み、被検体が正しい位置にセットされていないと判定し、処理を終了する。Nは予め設定された自然数である。本実施例ではNは1とする。
【0043】
図6(a)の位置関係の場合には、超音波ビーム601および602と目標点603、604の間には空気がなく、探触子102と被検体101が密着している。そのため、送信超音波ビームの大部分は被検体内部へ伝播し、徐々に減衰していく。一部、被検体内部からの超音波エコー信号が見られる場合があるが、全体として図7(a)に示すように受信される超音波エコー信号の電圧は閾値v2よりは大きくv1よりは低いものになる。その結果、ステップS507において、目標点が被検体の内部にあり、被検体と探触子が十分接触していると判定される。最終的にはステップS510において、被検体は正しい位置にセットされており、光音響信号取得可能と判定される。
【0044】
図6(b)の位置関係の場合には、被検体101がないため、超音波ビーム601および602のほとんどが探触子102表面と空気との境界606で反射される。境界606に相当する時刻をt606とする。そのため、図7(b)に示すように、超音波エコー信号は受信開始直後の時刻t606付近に大きな電圧の信号が現れる。そして、その後の信号レベルは閾値v2を越えないほどに低くなる。その結果ステップS506において、被検体と探触子の接触が不十分と判定される。最終的にはステップS511において、被検体は正しい位置にセットされておらず、光音響信号取得不可能と判定される。
【0045】
図6(c)の位置関係の場合には、超音波ビーム601および602のほとんどは目標点603および604に到達する前に、被検体101と空気との境界607および608で反射される。境界の点607からの超音波エコー信号が受信される時刻をt607、境界の点608からの超音波エコー信号が受信される時刻をt608とすると、t607およびt608の時刻において、空気との境界から反射された大きな電圧の信号が受信される。図6(c)の位置関係の場合には、境界の点607、608はそれぞれ目標点603、604よりも探触子に近いためt607およびt608はそれぞれt603,t604よりも小さくなり、判定時刻範囲内である。その結果、図7(c)に示すように、判定時刻範囲内に大きな電圧の信号が現れ、その後の電圧は低くなる。その結果ステップS506において目標点が被検体の外部にあると判定される。最終的にはステップS511において、被検体は正しい位置にセットされておらず、光音響信号取得不可能と判定される。
【0046】
図6(d)の位置関係の場合には、判定用超音波ビーム601のほとんどは目標点603に到達する前に被検体101と空気との境界609で反射される。一方、判定用超音波ビーム602は目標点604に到達したあとに被検体101と空気との境界610で反射される。境界の点609からの超音波エコー信号が受信される時刻をt609、境界の点610からの超音波エコー信号が受信される時刻をt610とすると、t609およびt610の時刻において、空気との境界から反射された大きな電圧の信号が受信される。図6(d)の位置関係の場合には、境界の点609は目標点603よりも探触子に近いため、t609はt603よりも小さくなり、判定時刻範囲内である。一方、境界の点610は目標点604よりも探触子から遠いため、t610はt604よりも小さくなり、判定時刻範囲外である。
【0047】
その結果、図7(d)に示すように、図6(d)の判定用超音波ビーム601に対応する超音波エコー信号は、判定時刻範囲内に大きな電圧の信号が現れ、その後の信号レベルは低くなる。また、超音波ビーム602に対応する超音波エコー信号は、判定時刻範囲内には大きな電圧の信号ピークが現れず、判定時刻範囲外に強いピークが現れる。その結果、目標点603は被検体の外部にあるか、あるいは判定用超音波ビーム601上での探触子と被検体の間の接触が不十分と判定される。一方、目標点604は被検体の内部にあり、判定用超音波ビーム602上での探触子と被検体は十分接触していると判定される。最終的にはステップS510において、被検体は正しい位置にセットされており、光音響信号取得可能と判定される。
【0048】
このように判定用超音波ビーム上の目標点を用いて被検体と探触子の位置関係を判定することにより、例えば乳房の辺縁部や腕などの細い部分などのように被検体を探触子全面に接触させることが難しい場合にも、光音響信号取得可能か否かを判定できる。
【0049】
なお、本実施例では判定用超音波ビームの本数は2本としたが、本発明の光音響装置では、判定用超音波ビームの本数は2本に限らない。より多くの超音波ビームをもとに位置関係を判定すれば精度を高めることができる。また、少ない本数の超音波ビームで判定すれば、判定に要する時間を短縮することができる。
【0050】
また、本実施例では先に受信回路203で超音波エコー信号データをメモリ206へ書き込み、CPU201はメモリに保存された超音波エコー信号データを読み出してから被検体の位置の判定処理を行っている。しかし、本発明の判定処理のタイミングはこれに限るものではない。例えばメモリ読み書きの時間を削減するために受信回路203がメモリ206に書き込む際に被検体の位置の判定処理を行うようにしてもよい。
【0051】
また、本実施例では光音響信号を正しく取得できる位置に被検体がセットされていないと判定された場合に光源のQスイッチを停止することによりパルス光の照射を停止したが、本発明のパルス光の照射方法はこれに限定されるものではない。例えば、光源外部にシャッターを設け、シャッターを閉じることにより被検体へのパルス光の照射を停止する構成にしても良い。
【0052】
また、本実施例では、光照射口は振動子の横に一つ設置されている例を用いて説明したが、本発明における光音響装置の光照射口の位置および個数はこれに限定されるものではない。例えば、振動子の両側に光照射口がある場合にも適切な判定用超音波ビームを選択することにより被検体の位置の判定を行うことが可能である。
【0053】
なお、本実施例では、目標点と探触子の位置関係によって定まる判定時刻範囲内で超音波エコー信号データを閾値比較することにより、探触子と被検体との接触状態が正しいか
どうかを判定していたが、接触状態の判定の方法はこの方法に限定されない。例えば、探触子102と被検体101の境界付近に相当する深さに応じて閾値比較方法を変更してもよい。例えば、探触子102と被検体101の境界付近に閾値v1を超える超音波エコー信号データが見られた場合には、被検体101と探触子102が接触しておらず、図7(b)のような状態であると判定してもよい。また、例えば、探触子102と被検体101の境界付近に閾値v1を超える超音波信号データが見られない場合には、被検体101と探触子102が接触しており、図7(a)のような状態であると判定してもよい。
【0054】
また、別の判定方法として、例えば、探触子102と被検体101の境界よりも深い位置に閾値v2を超える超音波エコー信号データが見られた場合には、被検体101と探触子102が接触しており、図7(a)のような状態であると判定してもよい。また、探触子102と被検体101の境界よりも深い位置に閾値v2を超える超音波信号データが見られない場合には、被検体101と探触子102が接触しておらず、図7(b)のような状態であると判定してもよい。
【0055】
また、被検体101と探触子102が接触していない場合には、探触子と空気との境界近傍で超音波が多重反射し、周期的な信号がみられる場合がある。図7(b)のt606付近を拡大したものを図7(e)に示す。このような多重反射を検出するために、超音波エコー信号の周波数成分を利用してもよい。例えば、探触子102と被検体101の境界付近までの超音波エコー信号をフーリエ変換し、探触子の構造に起因する特定の周波数成分近傍のピークが現れた場合には、探触子102内部の多重反射が生じている。したがって、探触子102と被検体101が接触していないと判定してもよい。この特定の周波数とは、探触子102内部の振動子から音響レンズまでの平均音速を2000m/s、厚さを0.25mmとしたとき、超音波伝搬距離であり、0.5mmに相当する周波数成分(2000m/s/0.5mm=4MHz)である。
【0056】
以上説明してきたように、本実施例の光音響装置では超音波ビームを用いて被検体と探触子および光路の位置関係を判定し、正しく光音響信号を取得できる状態にあるか否かを事前に判定することができる。その結果、取得した光音響信号の精度を高めることができ診断精度の向上につながる。また、正しく光音響信号が取得できない状況ではパルス光を照射しないことにより、装置の長寿命化、安全性向上が可能になる。このような効果は、ハンドヘルド型の探触子に光照射口と振動子が設置されている場合でも、ベッド型の光音響装置の場合でも同様に得られる。
【実施例2】
【0057】
続いて本発明の実施例2を説明する。本発明の実施例2が実施例1と異なる点は、被検体と探触子の間に2枚の圧迫板813および815があることである。2枚の圧迫板は、被検体を挟んで保持するために用いられる。
【0058】
図8は本発明に係る光音響装置の実施例2を示すブロック構成図である。図8において被検体801、探触子802、振動子803、光照射口804、光吸収部位805、光音響波806、光源807、キーボード809、ディスプレイ810、ケーブル811、光ファイバ812については実施例1と同様であるので説明を省略する。813および815は圧迫板であり、被検体を挟んで固定するためのものである。光および超音波に対して透過性のよい材料を用いる。814は探触子802を2次元走査するための機構(走査手段)であり、例えばモータ、2次元ステージ、エンコーダなどから構成される。
【0059】
本発明の実施例2における光音響装置では使用者は予め圧迫板の間に被検体801を固定し、キーボード809を介して測定開始指示を行う。コントローラ808は測定開始指示を受け、モータ814により探触子802を圧迫板813に接触させたまま被検体80
1の表面を走査するように移動させる。移動しながら図4のフローに従い超音波エコー信号と光音響信号の取得を行う。
【0060】
被検体801上の光音響信号を取得する位置と探触子802の移動方向について図14を用いて説明する。以後、光音響信号を取得する位置のことを測定点と呼ぶ。図14は被検体801を探触子802側からみた図である。1401、1402、1403、1404の各点、および図中のそれ以外の点は測定点である。測定点は被検体801全域にわたって存在している。矢印1405は探触子802の移動方向である。本実施例の光音響装置では最初に測定点1401の光音響信号を取得した後に探触子802を水平方向に移動させ、測定点1402に移動する。これを繰り返し、測定点1403の光音響信号の取得を終えた後に探触子802を垂直方向に移動させ、測定点1404に移動する。これを繰り返し、被検体801の全域の光音響信号を取得する。
【0061】
図9に本発明の実施例2における被検体801と探触子802周辺の拡大図を示す。901および902は判定用超音波ビームである。903は判定用超音波ビーム901上の目標点であり、本実施例では判定用超音波ビーム901と光路907の交点である。904は判定用超音波ビーム902上の目標点であり、本実施例では超音波ビーム902と光路907の交点である。905は超音波ビーム901と圧迫板813の被検体側の面が交差する点である。906は超音波ビーム902と圧迫板813の被検体側の面が交差する点である。905および906を判定開始点と呼ぶ。
【0062】
図10に本発明の動作フローを示す。
ステップS1001において、CPU201はモータ814に指示を出し、被検体801の光音響信号を取得する位置まで移動させる。
続いてステップS1002からステップS1004において、ステップS401からステップS403と同様に超音波エコー信号データを取得する。ステップS1004において前回パルス光を発生させてから一定時間が経過している場合には、光源807では次のパルス光を照射する準備ができているのでステップS1005へ進む。一方ステップS1004において前回パルス光を発生させてから一定時間が経過していない場合には、ステップS1001に戻り、次の測定点まで探触子802を移動させる。
【0063】
ステップS1005においてCPU201はメモリ206に保存された超音波エコー信号データを解析し、被検体801が正しい位置にセットされているか否かを判定する。この処理の実施例1と異なる点は圧迫板813の厚みについて判定時刻範囲を補正する点である。
続いてステップS1006からステップS1010において、実施例1のステップS405からステップS409と同様にして光音響信号データの取得を行う。
最後にステップS1011において被検体801の全測定点の超音波エコー信号データと光音響信号データの取得が完了しているか否かを判定する。取得が完了している場合には使用者に測定終了を通知し、処理を終了する。完了していない場合にはステップS1001に戻り、次の測定点まで探触子802を移動させる。
【0064】
本実施例のステップS1005における判定処理のフローは図5で説明した実施例1の動作フローと同じである。
ただし、ステップS502で計算する判定時刻範囲の計算方法が異なる。実施例1においては、ステップS502において、超音波エコー信号の受信開始時刻から、目標点からの超音波エコーが探触子まで戻ってくるまでの期間を判定時刻範囲としていた。しかし、本実施例では、送信された超音波が判定開始点905または906を通過した時刻から、目標点903または904からの超音波エコーが探触子802まで戻ってくるまでを判定時刻範囲とする。すなわち、圧迫板813から発生する超音波エコー信号を無視する。こ
れにより、圧迫板813と探触子802の間で起きる、超音波ビーム901および902の反射エコーの影響を回避し、被検体801が光路をさえぎっているか否かを確度よく判定することができる。
【0065】
<変形例>
なお、本実施例では被検体の位置判定処理の結果によらず、図14のように予め決められた全ての測定点を網羅するように探触子を走査させる例を用いて説明したが、被検体の位置判定処理の結果に応じて走査範囲を限定しても良い。例えば、探触子が被検体の正面に存在せず光音響信号の取得に適さない測定点への探触子移動を省略することにより、測定点を減らし、測定時間を短縮することができる。
【0066】
この変形例について図15を参照しつつ説明する。通常は、水平方向に探触子802を移動させ測定を行う。そして位置判定処理の結果の変化から被検体の左右の境界点(例えば1502、1503のような測定点)を検出した場合には、被検体の境界外部の測定点への移動を省略し、探触子を垂直方向へ移動させる。このように走査範囲を変更することにより、被検体のない領域で測定を行うことがなくなる。
また、端部の測定点1504まで移動しても光音響信号の取得に適した点が見つからない場合には、それ以上探触子を垂直方向へ移動させずに測定を終了させることにより、図15の矢印1501のように探触子を走査させ測定時間の短縮をはかることができる。
【実施例3】
【0067】
続いて本発明の実施例3を説明する。実施例3が実施例1乃至実施例2と異なる点は、被検体の位置を判定する際に、それまでに受信した超音波エコー信号を読み出して解析するのではなく、新たに目標点付近に超音波を送受信して取得された超音波エコー信号に基づいて判定を行う点である。すなわち、光音響波を受信するための光の照射に先立って、判定用の超音波ビームの送受信が行われる。
【0068】
本発明の実施例3のブロック構成図および動作フローは実施例1乃至実施例2と同じであるため説明を省略する。図11に本実施例の被検体位置判定処理のフローを示す。
ステップS1101およびステップS1102においてCPU201は上記実施例と同様に目標点までの距離と判定時刻の範囲を計算する。
【0069】
続いてステップS1103においてCPU201は送信回路202に指示を送り、目標点903へ向けて判定用超音波ビーム901を送信する。この際に判定用の超音波ビームは目標点903まで届くだけの強さで十分なので、送信回路の電圧を低くすることで判定用超音波ビームの送受信にかかる時間を短縮することができる。
続いてステップS1104において受信回路203において判定用超音波ビーム901の超音波エコー信号を受信し、デジタル化する。
【0070】
続いてステップS1105において受信された判定用超音波ビーム901から得られた超音波エコー信号データのうち、ステップS1102で計算された判定時刻範囲内のデータを、実施例1乃至実施例2と同様に予め設定された閾値と比較する。この際に判定用超音波ビーム901のエコー信号データを受信回路203で閾値比較し、判定処理の高速化を図ってもよい。
続いてステップS1106からステップS1112にかけて、上記実施例のステップS505からステップS511までの処理と同様の処理を行い、被検体801が正しい位置にセットされている否かを判定する。
【0071】
本実施例では、パルス光照射直前に取得した超音波ビームを用いて判定を行う。これにより、ステップS401からS403で行っていた超音波の送受信からステップS404
での光音響信号の取得までに時間がかかり、探触子と被検体の相対位置が変化してしまった場合にも、被検体と探触子の位置関係を精度よく判定することができる。
【実施例4】
【0072】
続いて本発明の実施例4を説明する。本発明の実施例4が実施例2と異なる点は、前記光照射口が探触子から離れた場所にある点である。
【0073】
図12は本発明に係る光音響装置の実施例2を示すブロック構成図である。図12において被検体1201、振動子1203、光吸収部位1205、光音響波1206、光源1207、コントローラ1208については実施例2と同様であるので説明を省略する。また図12において、キーボード1209、ディスプレイ1210、ケーブル1211、光ファイバ1212、圧迫板1213、モータ1214についても実施例2と同様であるので説明を省略する。
【0074】
1202は超音波を送受信可能な探触子である。1204は光照射口であるが、実施例2と異なり、被検体を挟んで探触子1202と対向する側に設置されている。1215は圧迫板であり、被検体1201を挟んで圧迫板1213と反対側に位置するものである。圧迫板1213と圧迫板1215で被検体1201を挟んで固定する。1216は光照射口1204を2次元走査するための機構であり、モータ、X−Yステージ、エンコーダなどから構成される。
【0075】
1217は圧迫板1213と圧迫板1215の間の距離を測定するセンサであり、ポテンショメータで構成される。本実施例における光音響装置では使用者は予め圧迫板の間に被検体1201を固定し、キーボード1209を介して測定開始指示を行う。コントローラ1208は測定開始指示を受け、モータ1214により探触子1202を圧迫板1213に接触させたまま2次元に移動させる。光照射口側のモータ1216は、光照射口1204を探触子1202と同期して移動させる。これにより、光照射口1204は常に探触子1202の正面に位置している。探触子1202および光照射口1204は移動しながら図10のフローに従い超音波エコー信号と光音響信号の取得を行う。
【0076】
図13に本発明の実施例4における被検体1201と探触子1202周辺の拡大図を示す。1301は判定用の超音波ビームである。1302は判定用超音波ビーム1301上の目標点である。本実施例では目標点1302は圧迫板1215と光路1303の交点とする。また、判定開始点1304は圧迫板1213と光路1303の交点とする。1303は光照射口1204から被検体1201に照射される光路である。1305は被検体1201の圧迫板1215側の表面と超音波ビーム1301の交点である。
【0077】
図13(a)は圧迫板1213と圧迫板1215の間に被検体1201が固定され、正しく圧迫されている場合の例である。図13(b)は圧迫板1213と圧迫板1215の間に被検体があるが、被検体と圧迫板1215の間に隙間があり正しく固定されていない場合の例である。また、圧迫板に乳房ではなく手をかけた場合など、被検体ではないものを圧迫板に乗せた場合にも図13(b)のような位置関係になる場合がある。また、被検体と圧迫板の間に部分的に隙間ができる場合もある。
【0078】
本実施例での判定処理のフローは図5のフローチャートと同様であるが、本実施例では圧迫板1213と圧迫板1215の間の距離は被検体1201の個体差により変動する。そのため、目標点1302の位置も測定ごとに異なったものとなる。この変化を距離計1217で測定し、目標点までの距離を計算する際に反映させる。即ち、図5のステップS501において、予めメモリ206に保存されている値を目標点までの距離として用いるのではなく、距離計1217で計測された圧迫板1213および1215の距離を用いる
。これ以降は実施例2と同様の処理を行う。なお、本実施例では、判定開始点1304からの超音波エコーが目標点1302に到達してから、目標点1302からの超音波エコーが探触子1202まで戻ってくるまでを判定時刻範囲とする。
【0079】
図13(a)の位置関係の場合には、判定用超音波ビーム1301と目標点1302の間には空気がなく、探触子1202と圧迫板1213および被検体1201が密着している。そのため、送信超音波ビームの大部分は被検体内部へ伝播し、目標点1302に到達することができる。判定開始点1304と目標点1302の間からの超音波エコー信号の電圧は閾値v2よりは大きくv1よりは低いものになる。その結果、ステップS507において、目標点が被検体の内部にあり、被検体と探触子が十分接触していると判定される。最終的にはステップS510において、被検体は正しい位置にセットされており、光音響信号取得可能と判定される。
【0080】
一方、図13(b)の位置関係の場合には、被検体1201と圧迫板1215の間に空気があるため、判定用超音波ビーム1301のほとんどが被検体1201表面と空気との境界の点1305で反射される。そのため、超音波エコー信号は判定時刻範囲内に大きな電圧の信号が現れ、その後の信号レベルは低くなる。その結果ステップS506において、目標点1302は被検体の外部にあると判定される。最終的にはステップS511において、被検体は正しい位置にセットされておらず、光音響信号取得不可能と判定される。
【0081】
なお、本実施例では探触子1202に対向する向きから光を照射する場合について説明したが、本発明の光音響装置では、光照射の方向はこれに限定されるものではない。他の方向から光を照射する場合にも光路と判定用超音波ビームの交点に目標点を設定することにより、被検体の位置を判定することが可能である。上述した方法により、光照射口1204が探触子1202と離れている場合にも被検体が正しい位置にセットされており、光音響信号を取得可能な状態であるかどうかを判定することができる。さらに、目標点の位置が被検体によって変わる場合にも精度よく被検体の位置を判定することができる。
【符号の説明】
【0082】
102:探触子、103:振動子、104:光照射口、107:光源、201:CPU、202:送信回路、203:受信回路、204:光照射制御回路、205:画像処理回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体情報取得装置およびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パルス光を被検体に照射し、被検体内部から発生する光音響波を探触子で受信して被検体内部の形態や機能を画像化する光音響装置が医療分野で多く研究されている。また、被検体内部からの光音響波と超音波エコーの両方を取得し、リアルタイムで画像を表示することができる光音響装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
このような光音響装置において、被検体内部から光音響波を発生させ探触子で正しく取得するには、被検体と光路および探触子の位置関係が正しいことが必要である。すなわち、被検体が光路の中にあり、かつ探触子に密着していることが必要である。被検体が光路から外れていると光音響波が発生せず、被検体と探触子が密着していないと光音響波が探触子と被検体との間で反射してしまい探触子まで届かないためである。
【0004】
そこで、位置関係の一つとして被検体と探触子との接触状態を検出するセンサを備えた光音響装置が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−540904号公報
【特許文献2】特開2008−191160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
被検体が光路から外れている場合、光音響波が発生しないため測定ができない問題がある。さらに、特に光源としてレーザ光を用いている場合、安全上注意を要する。例えばハンドヘルド型の探触子に光照射口と振動子が設置されている場合、その探触子が被検体に接触していないときに光を照射すると、光が意図せぬ方向へ進む可能性がある。またベッド型の光音響装置でも、被検体がいないときに不必要に光を照射することは好ましくない。従って光路上に被検体があるか否かの判定が必要とされていた。
【0007】
上述したように従来の光音響装置においては、センサで被検体と探触子の接触状態を検出していた。しかしこの方法では接触センサを設けた地点の接触状態しか検出できないため、被検体の位置が正しいか否かの判定の精度に限界があった。また、多数の接触センサを設けた場合には装置の大型化、コスト上昇につながるという別の問題があった。またこの方法では、探触子に光照射口が含まれている場合はともかく、光を探触子と別の位置から照射する場合は光路上に被検体があるか否かの判定ができなかった。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、光路に対する被検体の位置が正しいか否かの判定を精度良く行うことが可能な被検体情報取得装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の構成を採用する。すなわち、被検体に光を照射して光音響波を発生させる光照射手段と、前記光音響波を受信して光音響信号を出力するとともに、前記被検体に超音波ビームを送受信して超音波エコー信号を出力する振動子と、前記振動子より出力さ
れた超音波エコー信号に基づいて前記光照射手段からの光路に前記被検体があるか否かを判定する判定手段と、少なくとも前記光音響信号を用いて前記被検体内部の画像データを生成する画像処理手段と、を有することを特徴とする被検体情報取得装置である。
【0010】
本発明はまた、以下の構成を採用する。すなわち、振動子が、被検体に超音波ビームを送受信して超音波エコー信号を出力するステップと、判定手段が、前記振動子より出力された超音波エコー信号に基づいて光照射手段からの光路に前記被検体があるか否かを判定するステップと、前記光照射手段が、前記被検体に光を照射して光音響波を発生させるステップと、前記振動子が、前記光音響波を受信して光音響信号を出力するステップと、画像処理手段が、少なくとも前記光音響信号を用いて前記被検体内部の画像データを生成するステップと、を有することを特徴とする被検体情報取得装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光路に対する被検体の位置が正しいか否かの判定を精度良く行うことが可能な被検体情報取得装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1におけるブロック構成図。
【図2】本発明の実施例1におけるコントローラの内部構成図。
【図3】本発明の実施例1における被検体近傍の位置関係を示す図。
【図4】本発明の実施例1における動作フローチャート。
【図5】本発明の実施例1における位置判定処理のフローチャート。
【図6】本発明の実施例1における被検体近傍の位置関係を示す図。
【図7】本発明の実施例1における受信信号の一例を示す図。
【図8】本発明の実施例2におけるブロック構成図。
【図9】本発明の実施例2における被検体近傍の位置関係を示す図。
【図10】本発明の実施例2における動作フローチャート。
【図11】本発明の実施例3における位置判定処理のフローチャート。
【図12】本発明の実施例4におけるブロック構成図。
【図13】本発明の実施例4における被検体近傍の位置関係を示す図。
【図14】本発明の実施例2における測定点と移動方向を示す図。
【図15】本発明の実施例2の変形例における測定点と移動方向を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照しつつ、本発明の好適な実施の形態を説明する。本発明は、被検体に光(電磁波)を照射することにより被検体内で発生した音響波(光音響波とも言い、典型的には超音波)を受信して、被検体情報を画像データとして取得する光音響効果を利用した装置に適用できる。このような装置は光音響装置と呼ばれる。本発明の光音響装置は、被検体に超音波を送信し、被検体内部で反射した反射波を受信して、被検体情報を画像データとして取得する超音波エコー技術を利用できる様に構成される。従って本発明の装置は、光音響装置と超音波エコー装置を兼ねた被検体情報取得装置とも呼べる。
【0014】
前者の光音響装置として見ると、取得される被検体情報とは、光照射によって生じた音響波の発生源分布や、被検体内の初期音圧分布、あるいは初期音圧分布から導かれる光エネルギー吸収密度分布や、吸収係数分布、組織を構成する物質の濃度分布を示す。物質の濃度分布とは、例えば、酸素飽和度分布や酸化・還元ヘモグロビン濃度分布などである。
被検体情報取得装置を後者の超音波エコー装置として見ると、取得される被検体情報とは、被検体内部の組織の音響インピーダンスの違いを反映した情報である。
【0015】
なお、音響波とは、典型的には超音波であり、音波、超音波、音響波、光音響波、光超
音波と呼ばれる弾性波を含む。また本発明において光とは、可視光線や赤外線を含む電磁波を示す。被検体情報取得装置が測定対象とする成分により特定の波長の光を選択すると良い。
【0016】
被検体は本発明の被検体情報取得装置の一部を構成するものではないが、以下に説明する。本発明の被検体情報取得装置は、人や動物の悪性腫瘍や血管疾患、血糖値などの診断や化学治療の経過観察などが可能である。よって、被検体としては生体、具体的には人体や動物の乳房や指、手足などを想定できる。被検体内部の光吸収体としては、被検体内で相対的に吸収係数が高いものを示す。例えば、人体が測定対象であれば、酸化あるいは還元ヘモグロビンやそれらを含む血管、あるいは新生血管を多く含む悪性腫瘍が該当する。
【実施例1】
【0017】
図1は本発明に係る光音響装置の実施例1を示すブロック構成図である。図1において、101は光音響装置の測定対象となる被検体であり、被検者の体の一部である。ここでは乳房を例として説明する。102は探触子であり、被検体に超音波を送受信するための振動子103および、パルス光を照射するための光照射口104を備えている。振動子103はPZT,CMUTなどの超音波センサ素子をアレイ状に並べたものである。光照射口104は光ファイバの射出口であり、ミラーや拡散板などの光学部品を備えてもよい。また、振動子と空気の間に音響レンズを備えてもよい。
【0018】
105は被検体内部に存在する光吸収の大きな部位(光吸収体)を表したものであり、例えば乳がんに起因する新生血管などがこれにあたる。105にパルス光などの光が照射されると、光音響効果により光音響波106が生じる。光音響波106は探触子102内部の振動子103により電気信号に変換される。この電気信号を光音響信号と呼ぶ。
【0019】
107はパルス光を発生させるための光源であり、YAGレーザ、チタンサファイアレーザなどで構成される。パルスレーザ光源は内部のレーザ媒質を励起するための手段としてフラッシュランプをもち、外部から電気的に制御可能な構成になっている。また、パルスレーザ光源はQスイッチを持ち、外部から電気的に制御可能な構成になっている。外部から一定周期でフラッシュランプを点灯させ、レーザ媒質に励起エネルギーを蓄積した後にQスイッチをONにするとジャイアントパルスと呼ばれる高いエネルギーをもつパルス光が出力される。
【0020】
108は探触子102から出力された光音響信号を受信するとともに、パルスレーザ光源107および、探触子105の超音波送受信動作を制御するコントローラである。109は使用者が光音響装置で測定開始の指示をしたり、装置の設定を入力したりするためのキーボードである。110は使用者が被検体内部の画像を見るためのディスプレイである。なお、使用者とのインターフェースとしてキーボードとディスプレイ以外の適切な方法を用いても構わない。
【0021】
111はコントローラ108と振動子103を電気的に接続するためのケーブルである。112はパルス光源107からのパルス光を光照射口104へ導くための光ファイバである。また、振動子103はコントローラ108からの信号に基づいて、被検体101に超音波を照射するとともに、被検体101から反射した超音波を受信し、電気信号に変換し出力する。この電気信号を超音波エコー信号と呼ぶ。
【0022】
光源107と光照射口104の間は、光ファイバ112のほかにも様々な光学部材で接続できる。光学部材としては、例えば、光を反射するミラーや、光を集光したり拡大したり形状を変化させるレンズ、光を分散・屈折・反射するプリズム、光を伝搬させる光ファイバ、拡散板等が挙げられる。このような光学部材は、光源から発せられた光が被検体に
所望の形状で照射されれば、どのようなものを用いてもかまわない。
【0023】
図2にコントローラ108の内部の構成を示す。201は光音響装置の全体の動作を制御するCPUであり、組み込みマイコンおよびソフトウェアで構成される。また、CPU201は使用者の指示をキーボード109経由で受け付け、装置の動作に反映させる。202は振動子に対して高電圧のパルス信号を送信するための送信回路であり、パルサおよび送信メモリを備えている。超音波送信に際しては、CPU201から送信メモリに振動子の素子ごとの遅延量を設定する。そして送信開始指示を行うと、送信メモリに設定された時間だけタイミングをずらし、パルス信号を振動子103の各超音波センサ素子に送信する。これにより、振動子の各超音波センサ素子から発生する超音波の位相を制御し、超音波の方向を電子的に制御することができる。一つの方向に進む超音波を超音波ビームと呼ぶ。
【0024】
203は振動子からの超音波エコー信号および光音響信号を受信する受信回路であり。プリアンプ、A/Dコンバータ、受信メモリ、FPGAから構成される。超音波エコー信号および光音響信号はプリアンプで増幅される。この際に信号の入力時刻に応じてプリアンプのゲインを変化させ、被検体内部の奥深くから発生する微弱な信号も取得することができる。増幅された信号はA/Dコンバータにてデジタル値に変換され、FPGAへ入力される。FPGAでは受信メモリへのデータの読み書きおよびノイズ除去処理や整相加算などの信号処理を行う。整相加算の際に超音波センサ素子ごとに位相をずらして加算することにより、任意の方向の超音波を生成する。受信回路で信号処理を施された超音波エコー信号および光音響信号はコントローラ108内部のメモリ206へ保存される。メモリ206に保存されているデータをそれぞれ超音波エコー信号データおよび光音響信号データと呼ぶ。
【0025】
204は光源107のフラッシュランプやQ−スイッチの制御信号を発生させる光照射制御回路である。CPU201からパルス光の照射指示を行うと、一定の周波数でフラッシュランプおよびQ−スイッチの制御パルスを発生させ、光源107にてパルス光を発生させる。CPU201からパルス光の停止指示を受け付けると、フラッシュランプおよびQ−スイッチの制御パルスを停止しパルス光を停止させる。
【0026】
205は画像処理回路であり、超音波エコー信号データからBモード画像を生成する。また、光音響信号データから画像再構成処理を行い、被検体101のパルス光に対する吸収係数分布を示す画像を生成する。これらの画像をそれぞれ、超音波エコー画像、光音響画像と呼ぶ。これらの画像を重畳し、ディスプレイ110へ表示させる。なお、画像処理回路205で行う処理は使用者に表示するための画像の前段階の画像データを生成することにとどめても良い。
206は受信回路203から出力された信号データおよび画像処理回路205から出力されたデータを一時的に保存するメモリである。207はそれぞれの回路を接続し、CPU201からの指示や、各回路からのデータをやり取りするためのバスである。
【0027】
図3は探触子102近傍の位置関係を示す図である。301、302、303、304は振動子から送受信される超音波ビームである。コントローラ108は超音波ビーム送受信のたびに送信回路202および受信回路203内部の送信メモリおよび受信メモリの値を変え、超音波ビームを電子スキャンさせる。例えば301、302、303の順番に逐次的に超音波の送受信を行う。これを被検体101の全体にわたって繰り返すことにより、広い範囲の超音波エコー信号を取得する。305は光照射口104から照射されるパルス光の光路である。この光路の向きは光照射口104の位置と取り付け角度によって定まる。超音波ビーム304と光路305が交わる点が306である。
【0028】
図4にコントローラ108で実行される光音響装置の動作フローを示す。
ステップS401においてCPU201は送信回路202へ送信指示を行い、超音波ビームを301の方向に送信する。
続いてステップS402において、301の方向の超音波エコー信号を探触子102および受信回路203で受信し、増幅、デジタル化、整相加算などの処理を行いメモリ206へ保存する。
【0029】
ステップS403において、その前にパルス光を発光させてから所定の時間が経過している場合にはステップS404に進む。まだ所定の時間が経過していない場合にはステップS401に戻り、次の方向に超音波ビームを送信する。この例では301の次には302の方向に超音波ビームを送信する。ステップS403における所定時間は光源107がパルス光を発光させる周期であり、本実施例では100ミリ秒とする。ステップS403で、前回パルス光を発生させてから100ミリ秒経過している場合には、光源107では次のパルス光を照射する準備ができているのでステップS404へ進む。
【0030】
ステップS404においてCPU201はメモリ206に保存された超音波エコー信号データを解析し、被検体101が光音響信号を取得するうえで正しい位置にあるか否かを判定する。すなわち、被検体101が光路305の中にあり、探触子102に接触しているか否かを判定する。この判定処理の詳細は後述する。このときCPU201は、判定手段として動作する。
次にステップS405において、被検体101が正しい位置にあると判定された場合にはステップS406に進む。一方、被検体101が正しい位置にないと判定された場合には、ステップS408に進む。
【0031】
ステップS406では、CPU201は光照射制御回路204に光照射指示を行い、光源107にパルス光を発生させる。パルス光は光照射口104から被検体101に向けて照射される。
続いてステップS407において受信回路203は光音響信号を受信し、増幅、デジタル化、ノイズ除去などの処理を行い、メモリ206へ保存する。
【0032】
一方ステップS405において光音響信号を正しく取得可能な位置に被検体101がセットされていないと判定した場合には、ステップS408にて使用者の警告を表示しステップS409に進む。警告の表示方法はディスプレイ110に警告メッセージを表示してもよいし、ディスプレイとは別にLEDなどの表示手段をもち点灯させてもよい。
【0033】
ステップS409では、画像処理回路205はそれぞれ、ステップS402およびステップS407においてメモリ206に保存された超音波エコー信号および光音響信号をもとに画像再構成処理、スキャン変換処理などの画像処理を行う。そして超音波エコー画像および光音響画像を生成する。そして、ディスプレイ110に超音波エコー画像および光音響画像を表示する。この際に使用者の設定により、どちらか一方の画像のみを生成し、ディスプレイ110に表示してもよい。ただし、ステップS405で光音響信号を正しく取得可能な位置に被検体101がセットされていないと判定し、光音響信号データがメモリ206に保存されていない場合には、超音波エコー画像のみを表示する。
続いてステップS410において使用者からの信号取得終了指示があるか否かを判定する。信号取得終了の指示がある場合には処理を終了する。信号取得終了の指示がない場合にはステップS401に戻り、超音波エコー信号および光音響信号の取得を繰り返す。
【0034】
続いて、ステップS404における被検体の位置の判定処理について詳細を説明する。図5は判定処理の詳細を示したフローチャートである。図6は被検体101と探触子102の位置関係の例を示す図である。
【0035】
図6(a)は被検体101が探触子102の全面に接触しており、光が被検体に入射している場合の一例である。図6(b)は被検体101が探触子の正面にない場合の一例である。図6(c)は被検体101が探触子102の正面にあるが、位置がずれており光が正しく照射されていない場合の一例である。図6(d)は被検体101が探触子102の正面にあり、一部が接触していないが光は正しく被検体に入射している場合である。
【0036】
図6において603および604は被検体101の位置が正しいか否かを判定する点であり、目標点と呼ぶ。本実施例では、目標点は光路305上において光照射口から一定距離にある点である。光路上の目標点の座標はあらかじめ定められ、メモリ206に保存されているものとする。判定処理では目標点603および604と探触子102の間に空気の層があるか否かを、超音波信号データを利用して調べる。601および、602は探触子102から目標点603および604へ向かう超音波ビームであり、判定用超音波ビームと呼ぶ。目標点は、探触子から送受信される超音波ビームと光照射口からの光路が交差する位置となる。605は判定用超音波ビームの基点とする。
【0037】
図7は判定用超音波ビーム601および602に対応する超音波エコー信号を表す図であり、受信回路203から出力され、メモリ206に保存されるデータをグラフ化した物である。図7(a)の上図は、図6(a)の位置関係における超音波ビーム601に対する超音波エコー信号である。図7(a)の下図は、図6(a)の位置関係における超音波ビーム602に対する超音波エコー信号である。同様に、図7(b)、図7(c)、図7(d)はそれぞれ図6(b),図6(c),図6(d)に対応する。また上図は超音波ビーム601に、下図は超音波ビーム602に対応する。
【0038】
まず、図6(a)の場合を例にとり、図5のフローチャートについて説明する。
ステップS501においてCPU201はメモリ206より、目標点603から振動子までの距離d601を読み出す。図中では目標点603から605までの距離に当たる。この距離は探触子102内の光照射口104と振動子103の配置と、判定用超音波ビーム601の方向により予め計算され、メモリ206に保存されているものとする。
【0039】
続いてステップS502において距離d601の2倍を被検体内部の音速で割り、目標点603からの超音波エコー信号が受信される時刻を求める。そして、目標点603および604と探触子102の間に空気の層があるか否かを判定するための時刻の範囲を求める。この時刻の範囲を判定時刻範囲と呼ぶ。なお、目標点603からの超音波エコー信号が受信される時刻をt603、目標点604からの超音波エコー信号が受信される時刻をt604とする(図7を参照)。本実施例では、目標点603の判定時刻範囲は0からt603、目標点604の判定時刻範囲は0からt604とする。なお、超音波ビームを送信開始した時刻を0とする。
続いて、ステップS503においてCPU201はメモリ206より判定用超音波ビーム601に対応する超音波エコー信号データを読み出す。
【0040】
続いてステップS504において、判定時刻範囲内のデータを予め設定された閾値と比較する。そして、ステップS505において判定時刻内に閾値v1を越えるデータがM個以上あり、その後のデータが閾値v2以下の場合にはステップS506に進む。そして、光路上の目標点が被検体の外部にあるか、あるいは被検体と探触子が接触していないと判定し、判定結果を示す情報を目標点と対応づけてCPU201内部のメモリに保存し、ステップS508に進む。Mは予め設定された自然数である。また閾値v1は被検体内部からの超音波エコー信号よりも大きな値であり、閾値v2は受信回路203のノイズレベルよりわずかに大きな値に設定される。これは、超音波ビーム601上に被検体表面がある場合には、被検体表面でほとんどの超音波が反射され大きな超音波エコー信号データが受
信されるため、閾値v1を越えるデータが多くなるためである。また、被検体表面より先へは超音波が伝わらないことから、それ以降の超音波エコー信号データは小さな値になるため、閾値v2以下のデータが多くなるためである。
【0041】
一方、ステップS505において判定時刻内に閾値v1を越えるデータがM個より少ないか、あるいは閾値v1を越えるデータがM個以上だがその後のデータが閾値v2より大きい場合にはステップS507に進む。そして目標点が被検体内部にあり、被検体と探触子が接触していると判定し、判定結果を示す情報を目標点と対応づけてCPU201内部のメモリに保存し、ステップS508に進む。
【0042】
ステップS508において、他に判定用超音波ビームがあるか否かを判定する。図6(a)の例では判定用超音波ビームとして超音波ビーム602が残っているのでステップS501へ戻り、引き続き目標点604についても目標点603と同様に被検体との位置関係を判定する。一方、ステップS508において全ての超音波ビームの判定が終了している場合にはステップS509に進む。
ステップS509において、目標点のうちN個以上が被検体内部にあり、かつ被検体と探触子が接触していると判定されている場合にはステップS510に進み、被検体は正しい位置にセットされていると判定し、処理を終了する。一方、目標点のうち、被検体内部にあり、かつ被検体と探触子が接触していると判定されたものがN個より少ない場合にはステップS511に進み、被検体が正しい位置にセットされていないと判定し、処理を終了する。Nは予め設定された自然数である。本実施例ではNは1とする。
【0043】
図6(a)の位置関係の場合には、超音波ビーム601および602と目標点603、604の間には空気がなく、探触子102と被検体101が密着している。そのため、送信超音波ビームの大部分は被検体内部へ伝播し、徐々に減衰していく。一部、被検体内部からの超音波エコー信号が見られる場合があるが、全体として図7(a)に示すように受信される超音波エコー信号の電圧は閾値v2よりは大きくv1よりは低いものになる。その結果、ステップS507において、目標点が被検体の内部にあり、被検体と探触子が十分接触していると判定される。最終的にはステップS510において、被検体は正しい位置にセットされており、光音響信号取得可能と判定される。
【0044】
図6(b)の位置関係の場合には、被検体101がないため、超音波ビーム601および602のほとんどが探触子102表面と空気との境界606で反射される。境界606に相当する時刻をt606とする。そのため、図7(b)に示すように、超音波エコー信号は受信開始直後の時刻t606付近に大きな電圧の信号が現れる。そして、その後の信号レベルは閾値v2を越えないほどに低くなる。その結果ステップS506において、被検体と探触子の接触が不十分と判定される。最終的にはステップS511において、被検体は正しい位置にセットされておらず、光音響信号取得不可能と判定される。
【0045】
図6(c)の位置関係の場合には、超音波ビーム601および602のほとんどは目標点603および604に到達する前に、被検体101と空気との境界607および608で反射される。境界の点607からの超音波エコー信号が受信される時刻をt607、境界の点608からの超音波エコー信号が受信される時刻をt608とすると、t607およびt608の時刻において、空気との境界から反射された大きな電圧の信号が受信される。図6(c)の位置関係の場合には、境界の点607、608はそれぞれ目標点603、604よりも探触子に近いためt607およびt608はそれぞれt603,t604よりも小さくなり、判定時刻範囲内である。その結果、図7(c)に示すように、判定時刻範囲内に大きな電圧の信号が現れ、その後の電圧は低くなる。その結果ステップS506において目標点が被検体の外部にあると判定される。最終的にはステップS511において、被検体は正しい位置にセットされておらず、光音響信号取得不可能と判定される。
【0046】
図6(d)の位置関係の場合には、判定用超音波ビーム601のほとんどは目標点603に到達する前に被検体101と空気との境界609で反射される。一方、判定用超音波ビーム602は目標点604に到達したあとに被検体101と空気との境界610で反射される。境界の点609からの超音波エコー信号が受信される時刻をt609、境界の点610からの超音波エコー信号が受信される時刻をt610とすると、t609およびt610の時刻において、空気との境界から反射された大きな電圧の信号が受信される。図6(d)の位置関係の場合には、境界の点609は目標点603よりも探触子に近いため、t609はt603よりも小さくなり、判定時刻範囲内である。一方、境界の点610は目標点604よりも探触子から遠いため、t610はt604よりも小さくなり、判定時刻範囲外である。
【0047】
その結果、図7(d)に示すように、図6(d)の判定用超音波ビーム601に対応する超音波エコー信号は、判定時刻範囲内に大きな電圧の信号が現れ、その後の信号レベルは低くなる。また、超音波ビーム602に対応する超音波エコー信号は、判定時刻範囲内には大きな電圧の信号ピークが現れず、判定時刻範囲外に強いピークが現れる。その結果、目標点603は被検体の外部にあるか、あるいは判定用超音波ビーム601上での探触子と被検体の間の接触が不十分と判定される。一方、目標点604は被検体の内部にあり、判定用超音波ビーム602上での探触子と被検体は十分接触していると判定される。最終的にはステップS510において、被検体は正しい位置にセットされており、光音響信号取得可能と判定される。
【0048】
このように判定用超音波ビーム上の目標点を用いて被検体と探触子の位置関係を判定することにより、例えば乳房の辺縁部や腕などの細い部分などのように被検体を探触子全面に接触させることが難しい場合にも、光音響信号取得可能か否かを判定できる。
【0049】
なお、本実施例では判定用超音波ビームの本数は2本としたが、本発明の光音響装置では、判定用超音波ビームの本数は2本に限らない。より多くの超音波ビームをもとに位置関係を判定すれば精度を高めることができる。また、少ない本数の超音波ビームで判定すれば、判定に要する時間を短縮することができる。
【0050】
また、本実施例では先に受信回路203で超音波エコー信号データをメモリ206へ書き込み、CPU201はメモリに保存された超音波エコー信号データを読み出してから被検体の位置の判定処理を行っている。しかし、本発明の判定処理のタイミングはこれに限るものではない。例えばメモリ読み書きの時間を削減するために受信回路203がメモリ206に書き込む際に被検体の位置の判定処理を行うようにしてもよい。
【0051】
また、本実施例では光音響信号を正しく取得できる位置に被検体がセットされていないと判定された場合に光源のQスイッチを停止することによりパルス光の照射を停止したが、本発明のパルス光の照射方法はこれに限定されるものではない。例えば、光源外部にシャッターを設け、シャッターを閉じることにより被検体へのパルス光の照射を停止する構成にしても良い。
【0052】
また、本実施例では、光照射口は振動子の横に一つ設置されている例を用いて説明したが、本発明における光音響装置の光照射口の位置および個数はこれに限定されるものではない。例えば、振動子の両側に光照射口がある場合にも適切な判定用超音波ビームを選択することにより被検体の位置の判定を行うことが可能である。
【0053】
なお、本実施例では、目標点と探触子の位置関係によって定まる判定時刻範囲内で超音波エコー信号データを閾値比較することにより、探触子と被検体との接触状態が正しいか
どうかを判定していたが、接触状態の判定の方法はこの方法に限定されない。例えば、探触子102と被検体101の境界付近に相当する深さに応じて閾値比較方法を変更してもよい。例えば、探触子102と被検体101の境界付近に閾値v1を超える超音波エコー信号データが見られた場合には、被検体101と探触子102が接触しておらず、図7(b)のような状態であると判定してもよい。また、例えば、探触子102と被検体101の境界付近に閾値v1を超える超音波信号データが見られない場合には、被検体101と探触子102が接触しており、図7(a)のような状態であると判定してもよい。
【0054】
また、別の判定方法として、例えば、探触子102と被検体101の境界よりも深い位置に閾値v2を超える超音波エコー信号データが見られた場合には、被検体101と探触子102が接触しており、図7(a)のような状態であると判定してもよい。また、探触子102と被検体101の境界よりも深い位置に閾値v2を超える超音波信号データが見られない場合には、被検体101と探触子102が接触しておらず、図7(b)のような状態であると判定してもよい。
【0055】
また、被検体101と探触子102が接触していない場合には、探触子と空気との境界近傍で超音波が多重反射し、周期的な信号がみられる場合がある。図7(b)のt606付近を拡大したものを図7(e)に示す。このような多重反射を検出するために、超音波エコー信号の周波数成分を利用してもよい。例えば、探触子102と被検体101の境界付近までの超音波エコー信号をフーリエ変換し、探触子の構造に起因する特定の周波数成分近傍のピークが現れた場合には、探触子102内部の多重反射が生じている。したがって、探触子102と被検体101が接触していないと判定してもよい。この特定の周波数とは、探触子102内部の振動子から音響レンズまでの平均音速を2000m/s、厚さを0.25mmとしたとき、超音波伝搬距離であり、0.5mmに相当する周波数成分(2000m/s/0.5mm=4MHz)である。
【0056】
以上説明してきたように、本実施例の光音響装置では超音波ビームを用いて被検体と探触子および光路の位置関係を判定し、正しく光音響信号を取得できる状態にあるか否かを事前に判定することができる。その結果、取得した光音響信号の精度を高めることができ診断精度の向上につながる。また、正しく光音響信号が取得できない状況ではパルス光を照射しないことにより、装置の長寿命化、安全性向上が可能になる。このような効果は、ハンドヘルド型の探触子に光照射口と振動子が設置されている場合でも、ベッド型の光音響装置の場合でも同様に得られる。
【実施例2】
【0057】
続いて本発明の実施例2を説明する。本発明の実施例2が実施例1と異なる点は、被検体と探触子の間に2枚の圧迫板813および815があることである。2枚の圧迫板は、被検体を挟んで保持するために用いられる。
【0058】
図8は本発明に係る光音響装置の実施例2を示すブロック構成図である。図8において被検体801、探触子802、振動子803、光照射口804、光吸収部位805、光音響波806、光源807、キーボード809、ディスプレイ810、ケーブル811、光ファイバ812については実施例1と同様であるので説明を省略する。813および815は圧迫板であり、被検体を挟んで固定するためのものである。光および超音波に対して透過性のよい材料を用いる。814は探触子802を2次元走査するための機構(走査手段)であり、例えばモータ、2次元ステージ、エンコーダなどから構成される。
【0059】
本発明の実施例2における光音響装置では使用者は予め圧迫板の間に被検体801を固定し、キーボード809を介して測定開始指示を行う。コントローラ808は測定開始指示を受け、モータ814により探触子802を圧迫板813に接触させたまま被検体80
1の表面を走査するように移動させる。移動しながら図4のフローに従い超音波エコー信号と光音響信号の取得を行う。
【0060】
被検体801上の光音響信号を取得する位置と探触子802の移動方向について図14を用いて説明する。以後、光音響信号を取得する位置のことを測定点と呼ぶ。図14は被検体801を探触子802側からみた図である。1401、1402、1403、1404の各点、および図中のそれ以外の点は測定点である。測定点は被検体801全域にわたって存在している。矢印1405は探触子802の移動方向である。本実施例の光音響装置では最初に測定点1401の光音響信号を取得した後に探触子802を水平方向に移動させ、測定点1402に移動する。これを繰り返し、測定点1403の光音響信号の取得を終えた後に探触子802を垂直方向に移動させ、測定点1404に移動する。これを繰り返し、被検体801の全域の光音響信号を取得する。
【0061】
図9に本発明の実施例2における被検体801と探触子802周辺の拡大図を示す。901および902は判定用超音波ビームである。903は判定用超音波ビーム901上の目標点であり、本実施例では判定用超音波ビーム901と光路907の交点である。904は判定用超音波ビーム902上の目標点であり、本実施例では超音波ビーム902と光路907の交点である。905は超音波ビーム901と圧迫板813の被検体側の面が交差する点である。906は超音波ビーム902と圧迫板813の被検体側の面が交差する点である。905および906を判定開始点と呼ぶ。
【0062】
図10に本発明の動作フローを示す。
ステップS1001において、CPU201はモータ814に指示を出し、被検体801の光音響信号を取得する位置まで移動させる。
続いてステップS1002からステップS1004において、ステップS401からステップS403と同様に超音波エコー信号データを取得する。ステップS1004において前回パルス光を発生させてから一定時間が経過している場合には、光源807では次のパルス光を照射する準備ができているのでステップS1005へ進む。一方ステップS1004において前回パルス光を発生させてから一定時間が経過していない場合には、ステップS1001に戻り、次の測定点まで探触子802を移動させる。
【0063】
ステップS1005においてCPU201はメモリ206に保存された超音波エコー信号データを解析し、被検体801が正しい位置にセットされているか否かを判定する。この処理の実施例1と異なる点は圧迫板813の厚みについて判定時刻範囲を補正する点である。
続いてステップS1006からステップS1010において、実施例1のステップS405からステップS409と同様にして光音響信号データの取得を行う。
最後にステップS1011において被検体801の全測定点の超音波エコー信号データと光音響信号データの取得が完了しているか否かを判定する。取得が完了している場合には使用者に測定終了を通知し、処理を終了する。完了していない場合にはステップS1001に戻り、次の測定点まで探触子802を移動させる。
【0064】
本実施例のステップS1005における判定処理のフローは図5で説明した実施例1の動作フローと同じである。
ただし、ステップS502で計算する判定時刻範囲の計算方法が異なる。実施例1においては、ステップS502において、超音波エコー信号の受信開始時刻から、目標点からの超音波エコーが探触子まで戻ってくるまでの期間を判定時刻範囲としていた。しかし、本実施例では、送信された超音波が判定開始点905または906を通過した時刻から、目標点903または904からの超音波エコーが探触子802まで戻ってくるまでを判定時刻範囲とする。すなわち、圧迫板813から発生する超音波エコー信号を無視する。こ
れにより、圧迫板813と探触子802の間で起きる、超音波ビーム901および902の反射エコーの影響を回避し、被検体801が光路をさえぎっているか否かを確度よく判定することができる。
【0065】
<変形例>
なお、本実施例では被検体の位置判定処理の結果によらず、図14のように予め決められた全ての測定点を網羅するように探触子を走査させる例を用いて説明したが、被検体の位置判定処理の結果に応じて走査範囲を限定しても良い。例えば、探触子が被検体の正面に存在せず光音響信号の取得に適さない測定点への探触子移動を省略することにより、測定点を減らし、測定時間を短縮することができる。
【0066】
この変形例について図15を参照しつつ説明する。通常は、水平方向に探触子802を移動させ測定を行う。そして位置判定処理の結果の変化から被検体の左右の境界点(例えば1502、1503のような測定点)を検出した場合には、被検体の境界外部の測定点への移動を省略し、探触子を垂直方向へ移動させる。このように走査範囲を変更することにより、被検体のない領域で測定を行うことがなくなる。
また、端部の測定点1504まで移動しても光音響信号の取得に適した点が見つからない場合には、それ以上探触子を垂直方向へ移動させずに測定を終了させることにより、図15の矢印1501のように探触子を走査させ測定時間の短縮をはかることができる。
【実施例3】
【0067】
続いて本発明の実施例3を説明する。実施例3が実施例1乃至実施例2と異なる点は、被検体の位置を判定する際に、それまでに受信した超音波エコー信号を読み出して解析するのではなく、新たに目標点付近に超音波を送受信して取得された超音波エコー信号に基づいて判定を行う点である。すなわち、光音響波を受信するための光の照射に先立って、判定用の超音波ビームの送受信が行われる。
【0068】
本発明の実施例3のブロック構成図および動作フローは実施例1乃至実施例2と同じであるため説明を省略する。図11に本実施例の被検体位置判定処理のフローを示す。
ステップS1101およびステップS1102においてCPU201は上記実施例と同様に目標点までの距離と判定時刻の範囲を計算する。
【0069】
続いてステップS1103においてCPU201は送信回路202に指示を送り、目標点903へ向けて判定用超音波ビーム901を送信する。この際に判定用の超音波ビームは目標点903まで届くだけの強さで十分なので、送信回路の電圧を低くすることで判定用超音波ビームの送受信にかかる時間を短縮することができる。
続いてステップS1104において受信回路203において判定用超音波ビーム901の超音波エコー信号を受信し、デジタル化する。
【0070】
続いてステップS1105において受信された判定用超音波ビーム901から得られた超音波エコー信号データのうち、ステップS1102で計算された判定時刻範囲内のデータを、実施例1乃至実施例2と同様に予め設定された閾値と比較する。この際に判定用超音波ビーム901のエコー信号データを受信回路203で閾値比較し、判定処理の高速化を図ってもよい。
続いてステップS1106からステップS1112にかけて、上記実施例のステップS505からステップS511までの処理と同様の処理を行い、被検体801が正しい位置にセットされている否かを判定する。
【0071】
本実施例では、パルス光照射直前に取得した超音波ビームを用いて判定を行う。これにより、ステップS401からS403で行っていた超音波の送受信からステップS404
での光音響信号の取得までに時間がかかり、探触子と被検体の相対位置が変化してしまった場合にも、被検体と探触子の位置関係を精度よく判定することができる。
【実施例4】
【0072】
続いて本発明の実施例4を説明する。本発明の実施例4が実施例2と異なる点は、前記光照射口が探触子から離れた場所にある点である。
【0073】
図12は本発明に係る光音響装置の実施例2を示すブロック構成図である。図12において被検体1201、振動子1203、光吸収部位1205、光音響波1206、光源1207、コントローラ1208については実施例2と同様であるので説明を省略する。また図12において、キーボード1209、ディスプレイ1210、ケーブル1211、光ファイバ1212、圧迫板1213、モータ1214についても実施例2と同様であるので説明を省略する。
【0074】
1202は超音波を送受信可能な探触子である。1204は光照射口であるが、実施例2と異なり、被検体を挟んで探触子1202と対向する側に設置されている。1215は圧迫板であり、被検体1201を挟んで圧迫板1213と反対側に位置するものである。圧迫板1213と圧迫板1215で被検体1201を挟んで固定する。1216は光照射口1204を2次元走査するための機構であり、モータ、X−Yステージ、エンコーダなどから構成される。
【0075】
1217は圧迫板1213と圧迫板1215の間の距離を測定するセンサであり、ポテンショメータで構成される。本実施例における光音響装置では使用者は予め圧迫板の間に被検体1201を固定し、キーボード1209を介して測定開始指示を行う。コントローラ1208は測定開始指示を受け、モータ1214により探触子1202を圧迫板1213に接触させたまま2次元に移動させる。光照射口側のモータ1216は、光照射口1204を探触子1202と同期して移動させる。これにより、光照射口1204は常に探触子1202の正面に位置している。探触子1202および光照射口1204は移動しながら図10のフローに従い超音波エコー信号と光音響信号の取得を行う。
【0076】
図13に本発明の実施例4における被検体1201と探触子1202周辺の拡大図を示す。1301は判定用の超音波ビームである。1302は判定用超音波ビーム1301上の目標点である。本実施例では目標点1302は圧迫板1215と光路1303の交点とする。また、判定開始点1304は圧迫板1213と光路1303の交点とする。1303は光照射口1204から被検体1201に照射される光路である。1305は被検体1201の圧迫板1215側の表面と超音波ビーム1301の交点である。
【0077】
図13(a)は圧迫板1213と圧迫板1215の間に被検体1201が固定され、正しく圧迫されている場合の例である。図13(b)は圧迫板1213と圧迫板1215の間に被検体があるが、被検体と圧迫板1215の間に隙間があり正しく固定されていない場合の例である。また、圧迫板に乳房ではなく手をかけた場合など、被検体ではないものを圧迫板に乗せた場合にも図13(b)のような位置関係になる場合がある。また、被検体と圧迫板の間に部分的に隙間ができる場合もある。
【0078】
本実施例での判定処理のフローは図5のフローチャートと同様であるが、本実施例では圧迫板1213と圧迫板1215の間の距離は被検体1201の個体差により変動する。そのため、目標点1302の位置も測定ごとに異なったものとなる。この変化を距離計1217で測定し、目標点までの距離を計算する際に反映させる。即ち、図5のステップS501において、予めメモリ206に保存されている値を目標点までの距離として用いるのではなく、距離計1217で計測された圧迫板1213および1215の距離を用いる
。これ以降は実施例2と同様の処理を行う。なお、本実施例では、判定開始点1304からの超音波エコーが目標点1302に到達してから、目標点1302からの超音波エコーが探触子1202まで戻ってくるまでを判定時刻範囲とする。
【0079】
図13(a)の位置関係の場合には、判定用超音波ビーム1301と目標点1302の間には空気がなく、探触子1202と圧迫板1213および被検体1201が密着している。そのため、送信超音波ビームの大部分は被検体内部へ伝播し、目標点1302に到達することができる。判定開始点1304と目標点1302の間からの超音波エコー信号の電圧は閾値v2よりは大きくv1よりは低いものになる。その結果、ステップS507において、目標点が被検体の内部にあり、被検体と探触子が十分接触していると判定される。最終的にはステップS510において、被検体は正しい位置にセットされており、光音響信号取得可能と判定される。
【0080】
一方、図13(b)の位置関係の場合には、被検体1201と圧迫板1215の間に空気があるため、判定用超音波ビーム1301のほとんどが被検体1201表面と空気との境界の点1305で反射される。そのため、超音波エコー信号は判定時刻範囲内に大きな電圧の信号が現れ、その後の信号レベルは低くなる。その結果ステップS506において、目標点1302は被検体の外部にあると判定される。最終的にはステップS511において、被検体は正しい位置にセットされておらず、光音響信号取得不可能と判定される。
【0081】
なお、本実施例では探触子1202に対向する向きから光を照射する場合について説明したが、本発明の光音響装置では、光照射の方向はこれに限定されるものではない。他の方向から光を照射する場合にも光路と判定用超音波ビームの交点に目標点を設定することにより、被検体の位置を判定することが可能である。上述した方法により、光照射口1204が探触子1202と離れている場合にも被検体が正しい位置にセットされており、光音響信号を取得可能な状態であるかどうかを判定することができる。さらに、目標点の位置が被検体によって変わる場合にも精度よく被検体の位置を判定することができる。
【符号の説明】
【0082】
102:探触子、103:振動子、104:光照射口、107:光源、201:CPU、202:送信回路、203:受信回路、204:光照射制御回路、205:画像処理回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に光を照射して光音響波を発生させる光照射手段と、
前記光音響波を受信して光音響信号を出力するとともに、前記被検体に超音波ビームを送受信して超音波エコー信号を出力する振動子と、
前記振動子より出力された超音波エコー信号に基づいて前記光照射手段からの光路に前記被検体があるか否かを判定する判定手段と、
少なくとも前記光音響信号を用いて前記被検体内部の画像データを生成する画像処理手段と、
を有することを特徴とする被検体情報取得装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記超音波エコー信号の電圧が所定の閾値v1を越えることがある場合に、前記光照射手段からの光路に前記被検体がないと判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の被検体情報取得装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記光照射手段からの光路上の目標点に向けて前記振動子により前記超音波ビームが送信された時刻から、前記振動子と前記目標点の間の距離に基づき求められた時間が経過した時刻までを判定時刻範囲として、当該判定時刻範囲に取得された超音波エコー信号を対象として判定を行う
ことを特徴とする請求項2に記載の被検体情報取得装置。
【請求項4】
前記判定時刻範囲は、前記振動子により前記超音波ビームが送信された時刻から、前記振動子と前記目標点の間の距離の2倍を前記被検体内部の音速で割って求められた時間が経過した時刻までの範囲である
ことを特徴とする請求項3に記載の被検体情報取得装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記判定時刻範囲内に、前記所定の閾値v1を越える前記超音波エコー信号の電圧があった場合に、前記光照射手段からの光路に前記被検体がないと判定することを特徴とする請求項3または4に記載の被検体情報取得装置。
【請求項6】
閾値v1は、超音波ビームが被検体内部で反射したときに取得される超音波エコー信号の電圧よりも大きな値である
ことを特徴とする請求項5に記載の被検体情報取得装置。
【請求項7】
前記判定手段は、閾値v1を越えた後の前記超音波エコー信号の電圧が、閾値v1よりも低い閾値v2以下である場合のみ、前記光照射手段からの光路に被検体がないと判定する
ことを特徴とする請求項5または6に記載の被検体情報取得装置。
【請求項8】
閾値v2は、前記振動子が取得した信号を処理する回路のノイズレベルに基づき決められる値である
ことを特徴とする請求項7に記載の被検体情報取得装置。
【請求項9】
前記判定手段は、前記超音波エコー信号から、前記振動子の表面の多重反射があるかどうかを判定し、多重反射がある場合には前記被検体がないと判定する
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項10】
前記判定手段は、前記振動子の表面に対応する超音波エコー信号に所定の周波数成分のピークが見られた場合に多重反射があると判定する
ことを特徴とする請求項9に記載の被検体情報取得装置。
【請求項11】
前記被検体を保持する圧迫板をさらに有し、
前記振動子は、前記圧迫板を介して前記被検体に超音波ビームを送受信するものであり、
前記判定手段は、前記判定時刻範囲から、前記振動子から送信された超音波ビームが前記圧迫板を通過する範囲を除いて判定を行う
ことを特徴とする請求項3ないし8のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項12】
前記被検体を保持する圧迫板と、
前記圧迫板に設置された前記振動子および前記光照射手段を同期して移動させる走査手段と、
をさらに有し、
前記判定手段は、前記走査手段により前記振動子が移動したそれぞれの位置で判定を行い、
前記光照射手段からの光路に被検体がないと判定された場合、前記走査手段は、前記振動子および前記光照射手段を移動させる範囲を変更する
ことを特徴とする請求項3ないし10のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項13】
前記被検体を挟んで保持する2枚の圧迫板と、
前記2枚の圧迫板の距離を測定する距離計と、
をさらに有し、
前記振動子および前記光照射手段は前記被検体を介して反対側の圧迫板に設置されており、
前記判定手段は、前記2枚の圧迫板の距離に応じて前記目標点の位置を変更する
ことを特徴とする請求項3ないし8のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項14】
前記画像処理手段は前記超音波エコー信号をも用いて前記被検体内部の画像データを生成するものであり、
前記判定手段は、画像データを生成するために取得された超音波エコー信号を用いて判定を行う
ことを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項15】
前記振動子は、光照射手段による光の照射に先立って、前記判定手段が用いるための判定用超音波ビームの送受信を行い、
前記判定手段は、前記判定用超音波ビームの送受信により取得された超音波エコー信号を用いて判定を行う
ことを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項16】
前記光照射手段からの光路に被検体がないと前記判定手段により判定された場合、前記光照射手段は光の照射を行わない
ことを特徴とする請求項1ないし15のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項17】
振動子が、被検体に超音波ビームを送受信して超音波エコー信号を出力するステップと、
判定手段が、前記振動子より出力された超音波エコー信号に基づいて光照射手段からの光路に前記被検体があるか否かを判定するステップと、
前記光照射手段が、前記被検体に光を照射して光音響波を発生させるステップと、
前記振動子が、前記光音響波を受信して光音響信号を出力するステップと、
画像処理手段が、少なくとも前記光音響信号を用いて前記被検体内部の画像データを生成するステップと、
を有することを特徴とする被検体情報取得装置の制御方法。
【請求項1】
被検体に光を照射して光音響波を発生させる光照射手段と、
前記光音響波を受信して光音響信号を出力するとともに、前記被検体に超音波ビームを送受信して超音波エコー信号を出力する振動子と、
前記振動子より出力された超音波エコー信号に基づいて前記光照射手段からの光路に前記被検体があるか否かを判定する判定手段と、
少なくとも前記光音響信号を用いて前記被検体内部の画像データを生成する画像処理手段と、
を有することを特徴とする被検体情報取得装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記超音波エコー信号の電圧が所定の閾値v1を越えることがある場合に、前記光照射手段からの光路に前記被検体がないと判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の被検体情報取得装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記光照射手段からの光路上の目標点に向けて前記振動子により前記超音波ビームが送信された時刻から、前記振動子と前記目標点の間の距離に基づき求められた時間が経過した時刻までを判定時刻範囲として、当該判定時刻範囲に取得された超音波エコー信号を対象として判定を行う
ことを特徴とする請求項2に記載の被検体情報取得装置。
【請求項4】
前記判定時刻範囲は、前記振動子により前記超音波ビームが送信された時刻から、前記振動子と前記目標点の間の距離の2倍を前記被検体内部の音速で割って求められた時間が経過した時刻までの範囲である
ことを特徴とする請求項3に記載の被検体情報取得装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記判定時刻範囲内に、前記所定の閾値v1を越える前記超音波エコー信号の電圧があった場合に、前記光照射手段からの光路に前記被検体がないと判定することを特徴とする請求項3または4に記載の被検体情報取得装置。
【請求項6】
閾値v1は、超音波ビームが被検体内部で反射したときに取得される超音波エコー信号の電圧よりも大きな値である
ことを特徴とする請求項5に記載の被検体情報取得装置。
【請求項7】
前記判定手段は、閾値v1を越えた後の前記超音波エコー信号の電圧が、閾値v1よりも低い閾値v2以下である場合のみ、前記光照射手段からの光路に被検体がないと判定する
ことを特徴とする請求項5または6に記載の被検体情報取得装置。
【請求項8】
閾値v2は、前記振動子が取得した信号を処理する回路のノイズレベルに基づき決められる値である
ことを特徴とする請求項7に記載の被検体情報取得装置。
【請求項9】
前記判定手段は、前記超音波エコー信号から、前記振動子の表面の多重反射があるかどうかを判定し、多重反射がある場合には前記被検体がないと判定する
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項10】
前記判定手段は、前記振動子の表面に対応する超音波エコー信号に所定の周波数成分のピークが見られた場合に多重反射があると判定する
ことを特徴とする請求項9に記載の被検体情報取得装置。
【請求項11】
前記被検体を保持する圧迫板をさらに有し、
前記振動子は、前記圧迫板を介して前記被検体に超音波ビームを送受信するものであり、
前記判定手段は、前記判定時刻範囲から、前記振動子から送信された超音波ビームが前記圧迫板を通過する範囲を除いて判定を行う
ことを特徴とする請求項3ないし8のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項12】
前記被検体を保持する圧迫板と、
前記圧迫板に設置された前記振動子および前記光照射手段を同期して移動させる走査手段と、
をさらに有し、
前記判定手段は、前記走査手段により前記振動子が移動したそれぞれの位置で判定を行い、
前記光照射手段からの光路に被検体がないと判定された場合、前記走査手段は、前記振動子および前記光照射手段を移動させる範囲を変更する
ことを特徴とする請求項3ないし10のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項13】
前記被検体を挟んで保持する2枚の圧迫板と、
前記2枚の圧迫板の距離を測定する距離計と、
をさらに有し、
前記振動子および前記光照射手段は前記被検体を介して反対側の圧迫板に設置されており、
前記判定手段は、前記2枚の圧迫板の距離に応じて前記目標点の位置を変更する
ことを特徴とする請求項3ないし8のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項14】
前記画像処理手段は前記超音波エコー信号をも用いて前記被検体内部の画像データを生成するものであり、
前記判定手段は、画像データを生成するために取得された超音波エコー信号を用いて判定を行う
ことを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項15】
前記振動子は、光照射手段による光の照射に先立って、前記判定手段が用いるための判定用超音波ビームの送受信を行い、
前記判定手段は、前記判定用超音波ビームの送受信により取得された超音波エコー信号を用いて判定を行う
ことを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項16】
前記光照射手段からの光路に被検体がないと前記判定手段により判定された場合、前記光照射手段は光の照射を行わない
ことを特徴とする請求項1ないし15のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項17】
振動子が、被検体に超音波ビームを送受信して超音波エコー信号を出力するステップと、
判定手段が、前記振動子より出力された超音波エコー信号に基づいて光照射手段からの光路に前記被検体があるか否かを判定するステップと、
前記光照射手段が、前記被検体に光を照射して光音響波を発生させるステップと、
前記振動子が、前記光音響波を受信して光音響信号を出力するステップと、
画像処理手段が、少なくとも前記光音響信号を用いて前記被検体内部の画像データを生成するステップと、
を有することを特徴とする被検体情報取得装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−231979(P2012−231979A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102842(P2011−102842)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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