説明

被測定物特性測定装置

【課題】装置を小型化するとともに、弾性表面波の減衰を防ぎ、測定精度の維持を図ることができる被測定物特性測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】被測定物特性測定装置10は、入力電極21(22,23)と出力電極31(32,33)との間に被測定物26が負荷される短絡伝搬路41(42,43)が形成された複数の第1弾性表面波素子11(12,13)を備え、入力電極21から信号を入力し、出力電極33から出力された出力信号に基づいて被測定物26の特性を求める。被測定物特性測定装置10では、導電性が低い被測定物26の物理的特性を測定する場合であっても、被測定物26が負荷される伝搬路を所定の長さへの変更が可能となり、測定装置として小型化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入出力電極間に被測定物が負荷される伝搬路が形成された複数の弾性表面波素子を備え、前記被測定物の特性を求める被測定物特性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、弾性表面波素子は、圧電基板と、前記圧電基板上に設けられた櫛歯状電極指からなる入力電極及び出力電極を備えている。弾性表面波素子では、入力電極に電気信号が入力されると、電極指間に電界が発生し、圧電効果により弾性表面波が励振され、圧電基板上を伝搬していく。この弾性表面波のうち、伝搬方向と直交する方向に変位するすべり弾性表面波(SH-SAW: Shear horizontal Surface Acoustic Wave)を利用する弾性表面波素子を用いた各種物質の検出や物性値等の測定を行うための弾性波センサが研究されている(特許文献1)。
【0003】
弾性波センサでは、圧電基板上に負荷された被測定物の領域が電気的に開放されている場合と、短絡されている場合とでは、出力電極から出力される出力信号の特性に差異があることを利用して被測定物の物理的特性として誘電率、導電率を求めることができる。また、弾性表面波素子の入力電極と出力電極の間の伝搬路上に凹凸構造を形成し、その凹部に被測定物を負荷すると、負荷された被測定物は擬似的に膜を形成する。この膜は圧電基板とともに励振し、膜の質量に基づいて共振周波数が変化する質量負荷効果を利用して、被測定物の密度を求めることができる(特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特許第3481298号公報
【特許文献2】特許第3248683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導電性の低い被測定物の物理的特性を測定する場合には、分解能を高くする必要がある。一般的に、導電性の変化では、周波数に反比例して分解能が高くなることが知られており、導電性の低い被測定物の物理的特性を測定する場合には、分解能を高くするために周波数を低くする必要がある。
【0006】
しかしながら、低周波化を図るためには伝搬路長を長くする必要があり、そのためには弾性表面波が伝搬する方向に基板を長くする必要があり、弾性波センサ自体が大型化する。また、単に伝搬路長を長くした場合には、伝搬する弾性表面波が減衰するために測定精度の低下を招くおそれがある。
【0007】
本発明は、上記の課題を考慮してなされたものであって、装置を小型化するとともに、弾性表面波の減衰を防ぎ、測定精度の維持を図ることができる被測定物特性測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る被測定物特性測定装置は、入出力電極間に被測定物が負荷される伝搬路が形成された複数の弾性表面波素子を備え、前記入力電極から信号を入力し、前記出力電極から出力された出力信号に基づいて前記被測定物の特性を求める被測定物特性測定装置であって、前記各弾性表面波素子は並列に配列され、一の弾性表面波素子の出力電極と、前記一の弾性表面波素子と隣接する他の弾性表面波素子の入力電極との間に整合器が接続され、前記各弾性表面波素子は、縦列接続されていることを特徴とする。
【0009】
また、被測定物特性測定装置では、前記一の弾性表面波素子の出力電極と、前記隣接する他の弾性表面波素子の入力電極との間に増幅器を接続してもよい。
【0010】
本発明に係る他の被測定物特性測定装置は、入出力電極間に被測定物が負荷される第1伝搬路が形成された複数の第1弾性表面波素子と、入出力電極間に被測定物が負荷され前記第1伝搬路と異なる振幅・位相特性の第2伝搬路を有する複数の第2弾性表面波素子とを備え、前記第1弾性表面波素子の入力電極と前記第2弾性表面波素子の入力電極とに同一の信号を入力し、前記第1弾性表面波素子の出力電極からの出力信号と、前記第2弾性表面波素子の出力電極からの出力信号とに基づいて前記被測定物の特性を求める被測定物特性測定装置であって、前記各第1及び第2弾性表面波素子は並列に配列され、一の第1弾性表面波素子の出力電極と、前記一の第1弾性表面波素子と隣接する他の第1弾性表面波素子の入力電極との間に整合器が接続され、前記各第1弾性表面波素子は、縦列接続され、一の第2弾性表面波素子の出力電極と、前記一の第2弾性表面波素子と隣接する他の第2弾性表面波素子の入力電極との間に整合器が接続され、前記各第2弾性表面波素子は、縦列接続されていることを特徴とする。
【0011】
また、被測定物特性測定装置では、前記一の第1弾性表面波素子の出力電極と、前記隣接する他の第1弾性表面波素子の入力電極との間に増幅器を接続し、前記一の第2弾性表面波素子の出力電極と、前記隣接する他の第2弾性表面波素子の入力電極との間に増幅器を接続してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、各弾性表面波素子を縦列接続することにより、粘性を測定する場合に、被測定物26が負荷される伝搬路を所定の長さへの変更が可能となり、測定装置として小型化することができる。また、被測定物の物理的特性の測定では、被測定物が負荷される伝搬路が所定の長さ以上の場合には回折が生じる場合があるが、前記伝搬路の長さを短くし、必要な伝搬長を弾性表面波素子を縦列接続して補うことにより、回折を抑制した被測定物の物理的特性が可能となる。さらに、各弾性表面波素子間に増幅器を設けることにより、被測定物が負荷される伝搬路で減衰が大きい被測定物であっても、物理的特性を精度良く測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る被測定物特性測定装置10の構成の説明図である。被測定物特性測定装置10は、SAWセンサ14と、高周波の電気信号を発生する発振器50と、発振器50からの電気信号を分配する分配器52と、分配器52から分配された電気信号と、弾性表面波に対応した出力信号との振幅比、位相差等を測定する弾性波検出器54と、粘性を算出する粘性算出部56とを備える。
【0014】
SAWセンサ14は、第1弾性表面波素子11、12、13を備える。第1弾性表面波素子11は、入力電極21及び出力電極31を備え、入力電極21と出力電極31との間には、短絡伝搬路41が形成され、第1弾性表面波素子12は、入力電極22及び出力電極32を備え、入力電極22と出力電極32との間には、短絡伝搬路42が形成され、第1弾性表面波素子13は、入力電極23及び出力電極33を備え、入力電極23と出力電極33との間には、短絡伝搬路43が形成される。また、第1弾性表面波素子11、12、13は、圧電基板38上に互いに並列になるように配置されている。
【0015】
第1弾性表面波素子11の出力電極31と第1弾性表面波素子12の入力電極22との間にはインピーダンス整合をするために整合器58が接続され、第1弾性表面波素子12の出力電極32と第1弾性表面波素子13の入力電極23との間にも、整合器58と同様の整合器60が接続され、第1弾性表面波素子11、12、13は縦列接続されている。整合器58、60としては、例えば、R、L、Cで構成されるインピーダンス整合器を用いることができが、インピーダンスを整合することができれば特にその構成については限定されるものではない。
【0016】
入力電極21、22、23は、発振器50から分配器52を介して入力された電気信号に基づいて弾性表面波を励振させるために櫛形電極で構成される。また、出力電極31、32、33は、入力電極21、22、23の各々から励振され伝搬してきた弾性表面波を受信するために櫛形電極で構成されている。
【0017】
短絡伝搬路41、42、43は、圧電基板38上に蒸着された金属膜40で形成され、金属膜40は電気的に短絡された短絡伝搬路である。金属膜40の材料は特に限られないが、被測定物26に対して、化学的に安定している金で形成することが好ましい。
【0018】
圧電基板38は、すべり弾性表面波を伝搬することができれば、特に限られないが、36度Y板X伝搬LiTaO3であることが好ましい。
【0019】
被測定物特性測定装置10による被測定物26の物理的特性の測定は、次のように行われる。
【0020】
まず、被測定物26が短絡伝搬路41、短絡伝搬路42、短絡伝搬路43に負荷され、その後、発振器50からの電気信号が分配器52で分配されて弾性波検出器54及び入力電極21に同一信号が入力される。入力電極21では、入力された信号に基づいて弾性表面波が励振され、短絡伝搬路41上を伝搬(図1中X1方向)して出力電極31で受信される。出力電極31で受信された信号は、整合器58を経て入力電極22に出力される。入力電極22では、入力された前記信号に基づいて弾性表面波が励振され、短絡伝搬路42上を伝搬(図1中X2方向)して出力電極32で受信される。出力電極32で受信された信号は、整合器60を経て入力電極23に出力される。入力電極23では、入力された前記信号に基づいて弾性表面波が励振され、短絡伝搬路43上を伝搬(図1中X3方向)して出力電極33で受信される。
【0021】
弾性波検出器54では、発振器50から出力され、分配器52で分配された信号と、出力電極33からの出力信号との振幅比、位相差及び伝搬遅延差が検出される。当該検出された振幅比、位相差は、被測定物26の質量負荷効果に対応しており、この振幅比、位相差に基づく信号が粘性算出部56に出力されて、粘性算出部56で被測定物26の物理的特性として粘性が算出される。
【0022】
以上説明したように、被測定物特性測定装置10は、入力電極21(22,23)と出力電極31(32,33)との間に被測定物26が負荷される短絡伝搬路41(42,43)が形成された複数の第1弾性表面波素子11、12、13を備え、入力電極21から信号を入力し、出力電極33から出力された出力信号に基づいて被測定物26の特性を求める。被測定物特性測定装置10では、第1弾性表面波素子11、12、13を並列に配列し、第1弾性表面波素子11の出力電極31と、第1弾性表面波素子11と隣接する第1弾性表面波素子12の入力電極22との間に整合器58を接続し、第1弾性表面波素子12の出力電極32と、第1弾性表面波素子12と隣接する第1弾性表面波素子13の入力電極23との間に整合器60を接続し、第1弾性表面波素子11、12、13を縦列接続することにより、粘性を測定する場合に、被測定物26が負荷される伝搬路を所定の長さへの変更が可能となり、測定装置として小型化することができる。また、被測定物26の物理的特性の測定では、被測定物26が負荷される伝搬路が所定の長さ以上の場合には回折が生じる場合があるが、前記伝搬路の長さを短くし、必要な伝搬長を弾性表面波素子を縦列接続して補うことにより、回折を抑制した被測定物26の物理的特性として粘性の算出が可能となる。
【0023】
次に、本発明の第1実施形態の変形例について説明する。図2は、第1実施形態の変形例に係る被測定物特性測定装置10Aの構成の説明図である。被測定物特性測定装置10Aでは、被測定物特性測定装置10に対して、第1弾性表面波素子11の出力電極31と、第1弾性表面波素子12の入力電極22とが、直列接続された整合器58、増幅器62、整合器58aを介して接続され、第1弾性表面波素子12の出力電極32と、第1弾性表面波素子13の入力電極23とが、直列接続された整合器60、増幅器64、整合器60aを介して接続されている。なお、図1に示した被測定物特性測定装置10と同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0024】
被測定物特性測定装置10Aでは、第1弾性表面波素子11の出力電極31と第1弾性表面波素子12の入力電極22との間に増幅器62を接続し、第1弾性表面波素子12の出力電極32と第1弾性表面波素子13の入力電極23との間に増幅器64を接続することにより、被測定物26が短絡伝搬路41、42、43で大きく減衰する場合であっても、増幅器62、64で適切に増幅することにより被測定物26の位相変化を正確に測定し、被測定物26の物理的特性を算出することができる。また、増幅器62、64の増幅度を予め求めておくことにより、被測定物26の振幅を正確に測定し、被測定物26の物理的特性として粘性を算出することができる。
【0025】
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照して説明する。図3は、本発明の第2実施形態に係る被測定物特性測定装置10Bの構成の説明図である。被測定物特性測定装置10Bでは、被測定物特性測定装置10に対して、SAWセンサ18と、比誘電率、導電率を算出する比誘電率・導電率算出部74とが追加されている。また、分配器52は発振器50からの電気信号をSAWセンサ14の入力電極21とSAWセンサ18の入力電極21とに分配して出力し、弾性波検出器54は、SAWセンサ14の出力電極33からの出力信号と、SAWセンサ18の出力電極33からの出力信号との振幅比、位相差を測定する。なお、図1に示した被測定物特性測定装置10と同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0026】
SAWセンサ18は、第2弾性表面波素子15、16、17とを備える。第2弾性表面波素子15は、入力電極21及び出力電極31を備え、入力電極21と出力電極31との間には、開放伝搬路71が形成され、第2弾性表面波素子16は、入力電極22及び出力電極32を備え、入力電極22と出力電極32との間には、開放伝搬路72が形成され、第2弾性表面波素子17は、入力電極23及び出力電極33を備え、入力電極23と出力電極33との間には、開放伝搬路73が形成される。また、第2弾性表面波素子15、16、17は、圧電基板38上に互いに並列になるように配置されている。
【0027】
開放伝搬路71、72、73は、電気的に短絡された金属膜40で形成され、金属膜40の一部が剥離され、圧電基板38が露出するように開放領域44が形成される。従って、圧電基板38が露出している開放領域44は電気的に開放状態となっている。
【0028】
被測定物特性測定装置10Bを用いた被測定物26の比誘電率、導電率の測定は、以下のように行われる。
【0029】
短絡伝搬路41、42、43及び開放伝搬路71、72、73に被測定物26が負荷された状態で、発振器50からの電気信号を分配器52で分配して、第1弾性表面波素子11の入力電極21及び第2弾性表面波素子15の入力電極21へ同一信号を入力する。
【0030】
第1弾性表面波素子11の入力電極21では、入力された信号に基づいて弾性表面波が励振され、短絡伝搬路41上を伝搬(図3中X1方向)して出力電極31で受信される。出力電極31で受信された信号は、整合器58を経て入力電極22に出力される。入力電極22では、入力された前記信号に基づいて弾性表面波が励振され、短絡伝搬路42上を伝搬(図3中X2方向)して出力電極32で受信される。出力電極32で受信された信号は、整合器60を経て入力電極23に出力される。入力電極23では、入力された前記信号に基づいて弾性表面波が励振され、短絡伝搬路43上を伝搬(図3中X3方向)して出力電極33で受信される。
【0031】
第2弾性表面波素子15の入力電極21では、入力された信号に基づいて弾性表面波が励振され、開放伝搬路71上を伝搬(図3中X4方向)して出力電極31で受信される。出力電極31で受信された信号は、整合器58を経て入力電極22に出力される。入力電極22では、入力された前記信号に基づいて弾性表面波が励振され、開放伝搬路72上を伝搬(図3中X5方向)して出力電極32で受信される。出力電極32で受信された信号は、整合器60を経て入力電極23に出力される。入力電極23では、入力された前記信号に基づいて弾性表面波が励振され、開放伝搬路73上を伝搬(図3中X6方向)して出力電極33で受信される。
【0032】
第1弾性表面波素子13の出力電極33と、第2弾性表面波素子17の出力電極33とで受信した弾性表面波から取り出した両出力信号を弾性波検出器54で比較し振幅比及び位相差を検出し、比誘電率・導電率算出部74において被測定物26の物理的特性として比誘電率、導電率が算出される。
【0033】
以上説明したように、被測定物特性測定装置10Bは、入力電極21(22,23)と出力電極31(32,33)との間に被測定物26が負荷される短絡伝搬路41(42,43)が形成された複数の第1弾性表面波素子11、12、13と、入力電極21(22,23)と出力電極31(32,33)との間に被測定物26が負荷され短絡伝搬路41(42,43)と異なる振幅・位相特性の開放伝搬路71(72,73)を有する複数の第2弾性表面波素子15、16、17とを備え、第1弾性表面波素子11の入力電極21と第2弾性表面波素子15の入力電極21とに同一の信号を入力し、第1弾性表面波素子13の出力電極33からの出力信号と、第2弾性表面波素子17の出力電極33からの出力信号とに基づいて被測定物26の特性を求める。
【0034】
被測定物特性測定装置10Bでは、第1弾性表面波素子11、12、13、開放伝搬路71、72、73を並列に配列し、第1弾性表面波素子11の出力電極31と、第1弾性表面波素子11と隣接する第1弾性表面波素子12の入力電極22との間に整合器58を接続し、第1弾性表面波素子12の出力電極32と、第1弾性表面波素子12と隣接する第1弾性表面波素子13の入力電極23との間に整合器60を接続し、第1弾性表面波素子11、12、13を縦列接続し、第2弾性表面波素子15の出力電極31と、第2弾性表面波素子15と隣接する第2弾性表面波素子16の入力電極22との間に整合器58を接続し、第2弾性表面波素子16の出力電極32と、第2弾性表面波素子16と隣接する第2弾性表面波素子17の入力電極23との間に整合器60を接続し、第2弾性表面波素子15、16、17を縦列接続することにより、導電性が低い被測定物26の比誘電率、導電率を測定する場合であっても、被測定物26が負荷される伝搬路を所定の長さへの変更が可能となり、測定装置として小型化することができる。
【0035】
次に、本発明の第2実施形態の変形例について説明する。図4は、第2実施形態の変形例に係る被測定物特性測定装置10Cの構成の説明図である。被測定物特性測定装置10Cでは、被測定物特性測定装置10Aに対して、第1弾性表面波素子11の出力電極31と、第1弾性表面波素子12の入力電極22とが、直列接続された整合器58、増幅器62、整合器58aを介して接続され、第1弾性表面波素子12の出力電極32と、第1弾性表面波素子13の入力電極23とが、直列接続された整合器60、増幅器64、整合器60aを介して接続される。また、第2弾性表面波素子15の出力電極31と、第2弾性表面波素子16の入力電極22とが、直列接続された整合器58、増幅器62、整合器58aを介して接続され、第2弾性表面波素子16の出力電極32と、第2弾性表面波素子17の入力電極23とが、直列接続された整合器60、増幅器64、整合器60aを介して接続されている。なお、図1に示した被測定物特性測定装置10と、図2に示した被測定物特性測定装置10Aと同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0036】
被測定物特性測定装置10Cでは、第1弾性表面波素子11の出力電極31と第1弾性表面波素子12の入力電極22との間に増幅器62を接続し、第1弾性表面波素子12の出力電極32と第1弾性表面波素子13の入力電極23との間に増幅器64を接続し、また、第2弾性表面波素子15の出力電極31と第2弾性表面波素子16の入力電極22との間に増幅器62を接続し、第2弾性表面波素子16の出力電極32と第2弾性表面波素子17の入力電極23との間に増幅器64を接続することにより被測定物26が短絡伝搬路41、42、43、開放伝搬路71、72、73で大きく減衰する場合であっても、増幅器62、64で適切に増幅することにより被測定物26の位相変化を正確に測定し、被測定物26の物理的特性として比誘電率、導電率を算出することができる。
【0037】
なお、上記実施形態では、SAWセンサ14は、第1弾性表面波素子11、第1弾性表面波素子12、第1弾性表面波素子13で、SAWセンサ18は、第2弾性表面波素子15、第2弾性表面波素子16、第2弾性表面波素子17と3つの弾性表面波素子で構成されているが、被測定物26の導電性に応じて、その数を増減して物理的特性を算出することができる。
【0038】
また、被測定物特性測定装置10、10Aでは、縦列接続の最終段である第1弾性表面波素子13の出力電極33からの出力信号に基づいて、被測定物26の振幅比、位相差を算出しているが、縦列接続の中間段である第1弾性表面波素子12の出力電極32から検出して、被測定物26の物理的特性を算出してもよい。さらに、被測定物特性測定装置10B、10Cでは、縦列接続の最終段である第1弾性表面波素子13の出力電極33からの出力信号と、第2弾性表面波素子17の出力電極33からの出力信号とに基づいて、被測定物26の振幅比、位相差を算出しているが、縦列接続の中間段である第1弾性表面波素子12の出力電極32からの出力信号と、第2弾性表面波素子16の出力電極32からの出力信号とに基づいて、被測定物26の振幅比、位相差を算出して、被測定物26の物理的特性を算出してもよい。
【0039】
さらに、被測定物特性測定装置10、10Aの短絡伝搬路41、42、43を開放伝搬路又は格子状伝搬路で構成してもよく、また、被測定物特性測定装置10B、10Cの開放伝搬路71、72、73を格子状伝搬路で構成してもよい。
【0040】
さらにまた、被測定物としては、特に限定されるものではなく、少なくとも液体が含まれていればよい。また、純液、混合液のいずれであってもよく、メタノール、エタノール等のアルコールの物理的特性を測定する場合に特に有効である。さらにまた、被測定物に抗原、抗体、バクテリア等が含まれる状態においても、物理的特性を測定できることは言うまでもない。
【0041】
この場合、例えば、被測定物の中に帯電しているバクテリアが含まれている場合には、被測定物の導電率を測定することにより、バクテリアの含有率を測定することができる。また、異なる極性で帯電しているバクテリアが含まれている場合には、被測定物の導電率を測定することにより、被測定物に最も多く含まれるバクテリアの種類を特定することもできる。さらに、被測定物が負荷された伝搬路にバクテリアが付着している場合には、被測定物の粘性を測定することにより、付着したバクテリアの増減量を検知することができる。
【0042】
また、本発明は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態に係る被測定物特性測定装置の構成の説明図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る被測定物特性測定装置の変形例の構成の説明図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る被測定物特性測定装置の構成の説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る被測定物特性測定装置の変形例の構成の説明図である。
【符号の説明】
【0044】
10、10A、10B、10C…被測定物特性測定装置
11、12、13…第1弾性表面波素子
15、16、17…第2弾性表面波素子
14、18…SAWセンサ 21、22、23…入力電極
26…被測定物 31、32、33…出力電極
38…圧電基板 40…金属膜
41、42、43…短絡伝搬路 50…発振器
52…分配器 54…弾性波検出器
56…粘性算出部 58、58a、60、60a…整合器
62、64…増幅器 71、72、73…開放伝搬路
74…比誘電率・導電率算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入出力電極間に被測定物が負荷される伝搬路が形成された複数の弾性表面波素子を備え、前記入力電極から信号を入力し、前記出力電極から出力された出力信号に基づいて前記被測定物の特性を求める被測定物特性測定装置であって、
前記各弾性表面波素子は並列に配列され、
一の弾性表面波素子の出力電極と、前記一の弾性表面波素子と隣接する他の弾性表面波素子の入力電極との間に整合器が接続され、
前記各弾性表面波素子は、縦列接続されている
ことを特徴とする被測定物特性測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の被測定物特性測定装置において、
前記一の弾性表面波素子の出力電極と、前記隣接する他の弾性表面波素子の入力電極との間に増幅器が接続されている
ことを特徴とする被測定物特性測定装置。
【請求項3】
入出力電極間に被測定物が負荷される第1伝搬路が形成された複数の第1弾性表面波素子と、入出力電極間に被測定物が負荷され前記第1伝搬路と異なる振幅・位相特性の第2伝搬路を有する複数の第2弾性表面波素子とを備え、前記第1弾性表面波素子の入力電極と前記第2弾性表面波素子の入力電極とに同一の信号を入力し、前記第1弾性表面波素子の出力電極からの出力信号と、前記第2弾性表面波素子の出力電極からの出力信号とに基づいて前記被測定物の特性を求める被測定物特性測定装置であって、
前記各第1及び第2弾性表面波素子は並列に配列され、
一の第1弾性表面波素子の出力電極と、前記一の第1弾性表面波素子と隣接する他の第1弾性表面波素子の入力電極との間に整合器が接続され、
前記各第1弾性表面波素子は、縦列接続され、
一の第2弾性表面波素子の出力電極と、前記一の第2弾性表面波素子と隣接する他の第2弾性表面波素子の入力電極との間に整合器が接続され、
前記各第2弾性表面波素子は、縦列接続されている
ことを特徴とする被測定物特性測定装置。
【請求項4】
請求項3記載の被測定物特性測定装置において、
前記一の第1弾性表面波素子の出力電極と、前記隣接する他の第1弾性表面波素子の入力電極との間に増幅器が接続され、
前記一の第2弾性表面波素子の出力電極と、前記隣接する他の第2弾性表面波素子の入力電極との間に増幅器が接続されている
ことを特徴とする被測定物特性測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate