被膜形成部材の製造方法
【課題】部位毎に硬度が異なる被膜を迅速且つ確実に形成できる被膜形成部材の製造方法を提供する。
【解決手段】当該被膜形成部材の製造方法として、基材面1aに対して凹所2を形成する凹所形成工程、凹所2を含む基材面1a上へ被膜積層Cを形成する被膜積層形成工程、被膜積層C全体を面一に研削する研削工程を順に、設ける。これにより、部位毎に硬度の異なる被膜を形成することは勿論、マスキング材等の特別な部材の準備等を不要として、製造工程の簡素化図ること、同種の工程が時間をおいて繰り返されることがないようにして作業効率を高めること、マスキング材の取り外しのようにそれに伴って被膜が剥がれるおそれが生じることをなくすこと、を実現する。
【解決手段】当該被膜形成部材の製造方法として、基材面1aに対して凹所2を形成する凹所形成工程、凹所2を含む基材面1a上へ被膜積層Cを形成する被膜積層形成工程、被膜積層C全体を面一に研削する研削工程を順に、設ける。これにより、部位毎に硬度の異なる被膜を形成することは勿論、マスキング材等の特別な部材の準備等を不要として、製造工程の簡素化図ること、同種の工程が時間をおいて繰り返されることがないようにして作業効率を高めること、マスキング材の取り外しのようにそれに伴って被膜が剥がれるおそれが生じることをなくすこと、を実現する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被膜形成部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被膜形成部材を製造するに際しては、一般に、特許文献1に示すように、必要部位のみに被膜を形成するべく、その必要部位以外の部分をマスキング材によりマスキングしつつ、その必要部位に対して溶射が行われている。このようなマスキング材を用いた方法を用いれば、数種類の溶射材料を部位毎に区分けして溶射することもでき、複数の異なる被膜を有する被膜形成部材を製造できる。
【0003】
ところで、近時、摺動部材の摺動を受け止める支持面等においては、単に、耐摩耗性を向上させるために溶射被膜等の被膜を形成するだけでなく、摺動部材の摺動との関係から、部分的に同一平面上で被膜の硬度を異ならせることが求められる場合がある。その実現手段としては、前述のように、マスキング材と溶射とを用いれば、部位毎に硬度の異なる被膜を形成することができる。
【特許文献1】特開平5−111666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、マスキング材と溶射とを用いて部位毎に硬度の異なる被膜を形成する場合には、マスキング材を用意しなければならないばかりか、そのマスキング材のセット、取り外しという独自の作業が必要となる。しかも、そのマスキング材のセット作業においては正確性(セット位置の正確性)が要求され、マスキング材の取り外し作業においては、その取り外し作業に伴い、形成被膜を損傷させないこと(被膜が剥がれないようにすること等)等が求められる。
また、マスキング材を用いる場合において、複数種類として2種類の硬度の異なる被膜を形成する作業工程を見た場合、一方の被膜形成予定領域に被膜を形成するときには、他方の被膜形成予定領域をマスキング材を用いてマスキングし、他方の被膜形成予定領域に被膜を形成するときには、一方の被膜形成予定領域上の被膜をマスキング材を用いてマスキングする必要がある。このため、(i)マスキング材のセット工程、(ii)溶射工程、(iii)マスキング材の取り外し工程、(iv)マスキング材のセット工程、(v)溶射工程、(vi)マスキング材の取り外し工程、(vi)研削工程の順に作業を行わなければならず、同種の作業工程が時間をおいて繰り返され、作業効率上好ましいものではない。
さらには、一般的に、マスキング材を用いる場合には、その取り外し時に形成被膜が剥がれないようにすることから、マスキング材と溶射とを用いて部位毎に硬度の異なる被膜を形成する場合には、硬度の異なる被膜を部位毎に正確に区画することが困難な傾向にある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、部位毎に硬度が異なる被膜を迅速且つ確実に形成できる被膜形成部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記技術的課題を達成するために本発明(請求項1に係る発明)においては、
基材面上に、被膜硬度を他部と異なる領域にしたい個所において凹所を形成し、
次に、前記凹所を含む基材面上に、被膜を、該被膜の膜厚を一定にすると共に該被膜の硬度が増減方向のいずれか一方の方向に変化するようにしつつ、順次、積層状に形成することにより、被膜積層を形成し、
次に、前記被膜積層を、該被膜積層の外面全体が面一となるように研削する構成としてある。この請求項1の好ましい態様としては、請求項2以下の記載の通りとなる。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、凹所形成工程、被膜積層形成工程、研削工程を経ることにより、マスキング材等の特別の部材を何等準備しなくても、部位毎に硬度の異なる被膜を形成できることになり、それに伴い、そのマスキング材のセット、取り外しという作業を不要として、製造工程の簡素化(少なくともマスキング材の取り外し工程を省略)を図ることができる。
また、凹所形成工程、被膜積層形成工程、研磨工程の順に、各工程が1回だけ行われ、同種の工程が時間をおいて繰り返されるようなことはない。このため、作業効率を高めて製造時間の短縮化を図ることができる。
さらに、硬度の異なる被膜を区画するために利用された凹所は、研削工程を経ることにより存在しなくなり、マスキング材の取り外し作業の場合のようにそれに伴って被膜が剥がれるおそれが生じることはなくなる。また、その被膜の剥がれを考慮することなく異なる硬度の被膜を区画できることになり、異なる硬度の被膜の区画(見切り線)を明確且つ正確に行うことができる。
したがって、部位毎に硬度が異なる被膜を迅速且つ確実に形成できる被膜形成部材の製造方法を提供できる。
【0008】
請求項2に係る発明によれば、被膜積層における各被膜の硬度を、基材面に近いものほど高くすることから、被膜積層と基材面との間、さらには、積層方向に隣り合う被膜同士間の付着安定性を高めることができる。
【0009】
請求項3に係る発明によれば、被膜積層を3層以上の被膜により形成し、各被膜の硬度を基材面に向けて徐々に高くすることから、3層以上の被膜を有する被膜積層において、積層方向に隣り合う被膜同士間の付着安定性を高める上で、より好ましいものとなる。
【0010】
請求項4に係る発明によれば、各被膜を溶射により形成することから、請求項1に係る作用効果を簡単且つ確実に得ることができる。
【0011】
請求項5に係る発明によれば、被膜積層における各被膜の硬度を積層方向に隣り合う被膜の硬度に対して変えるに際して、基材面と、溶射を行う溶射ガンとの間の距離を変えることから、各被膜の硬度を極めて簡単に変えることができる。
【0012】
請求項6に係る発明によれば、基材が、摺動部材の摺動を支持する支持面を構成することから、耐摩耗性と馴染み性という相反する要求に対して、部位毎に被膜の硬度を異ならせる手法により的確に応えることができる。
【0013】
請求項7に係る発明によれば、凹所として、平坦な凹所底面から垂直に内壁が起立する形状のものを形成することから、研削工程において、硬度が異なる2種類の被膜面が露出することになり、硬度が異なる被膜領域を鋭敏に区画することができる。
【0014】
請求項8に係る発明によれば、凹所として、凹所底面からその開口側に向かうに従って相対向する内壁が離間する形状のものを形成することから、研削工程において、硬度が異なる複数の被膜面が露出することになり、硬度が異なる被膜領域を徐々に変化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
本実施形態に係る製造方法は、図1に示す工程図に従って行われる。
先ず、図1〜図3に示すように、基材1の基材面1aに対して、機械加工を行って凹所2を形成する(機械加工工程)。後工程である溶射工程(第1,第2,第3溶射被膜形成工程)において形成される溶射被膜の連続性を凹所2により途切れさせて、凹所底面2a上の溶射被膜を凹所2以外の非加工面3上の溶射被膜よりも低くするためである。本実施形態においては、凹所2は、その平坦な凹所底面2aから内壁が垂直に起立する形状とされ、その凹所2の深さDは、例えば60μm程度とされている。
ここで、上記基材1としては、基本的には、摺動部材の摺動を支持するような部材であって、その摺動部材の摺動特性に応じて、部分的な領域で耐摩耗性と馴染み性とが個々に要求されるような部材が対象となる。材質からは、アルミ製、鋳鉄製等のものが対象となる。本実施形態においては、基材面1aの馴染み性が要求される領域に対して凹所2が形成され、基材面1aの非加工面3においては高い耐摩耗性が要求されることになる。
【0016】
基材面1a上に凹所2が形成されると、図1に示すように、凹所2を含む被膜形成予定個所全体に対して溶射を行う(溶射工程)。基材面1a上の被膜形成予定個所全体に溶射被膜を形成して、基本的に、基材面1aの耐摩耗性を確保するためである。
溶射は、本実施形態においては、図4に示すように、第1,第2,第3の溶射被膜C1,C2,C3を基材面1a上に積層状態をもって形成して被膜積層Cを形成することになっており、その被膜積層Cの各溶射被膜C1(C2,C3)の厚みm1(m2,m3)は、その各溶射被膜C1(C2,C3)毎に一定とされている。具体的には、基材面1aから外方に向けて第1,第2,第3の溶射被膜C1,C2,C3が形成され、その各厚みm1,m2,m3は、それぞれ40μm程度とされている。このため、基材面1a上の第1,第2,第3溶射被膜C1,C2,C3の連続性は、凹所2で途切れ、凹所2内においても第1,第2,第3溶射被膜C1,C2,C3が積層状態をもって形成されるものの、それらは、非加工面3上の第1,第2,第3溶射被膜C1,C2,C3よりも低い位置に位置することになる。この溶射に用いられる溶射粉末には、例えばCr3C2−25%NiCr(粒径10〜38μm)が用いられる。
【0017】
上記溶射は、第1,第2,第3溶射被膜C1,C2,C3の形成毎に、溶射ガン位置から基材面1aまでの距離(W/D)が異ならされている。第1,第2,第3溶射被膜C1,C2,C3の硬度をそれぞれ異ならせるためである。つまり、溶射ガン位置から基材面1aまでの距離(W/D)は、最適値で高硬度となり、その最適値よりも長くなるほど低硬度となる関係があり、それを利用して溶射被膜の硬度を調整しようとしているのである。
【0018】
具体的に説明する。図3において、符号L1,L2,L3で示す一点鎖線は、第1,第2,第3溶射被膜C1,C2,C3を形成するときの溶射ガン位置を示し、S1,S2,S3(S1(最適値)<S2<S3)は、第1,第2,第3溶射被膜C1,C2,C3を形成を形成する際における溶射ガン位置と非加工面3との距離をそれぞれ示し(ワークディスタンスW/D)、H1,H2,H3(H1<H2<H3)は、第1,第2,第3溶射被膜C1,C2,C3を形成する際における溶射ガン位置と凹所底面2aとの距離をそれぞれ示している。このため、第1溶射被膜C1から第3溶射被膜C3を形成するに伴って、溶射ガン位置L1(L2,L3)から基材面1aまでの距離が長くなることになり、第1溶射被膜C1よりも第3溶射被膜C3に近いものほど、硬度は低くなる。この場合、第1,第2,第3の各溶射被膜C1,C2,C3を形成するに際して、溶射ガン位置から基材面1aまでの距離S1,S2,S3が、溶射ガン位置から凹所底面2aまでの距離H1,H2,H3よりも凹所2の深さDだけ短くなるが、この差D(例えば60μm程度)は、硬度変化にあまり影響を与えず、各溶射被膜C1,C2,C3毎の硬度に関しては、非加工面3上にあるものも、凹所底面2a上にあるものも、実質的に同一の状態にある。もっとも、凹所2の深さDが硬度に影響を与えることになったとしても、本実施形態においては(凹所2存在部を低硬度仕様の場合)、有利に働くことになる。
【0019】
本実施形態においては、溶射ガン位置から基材面1aまでの距離(W/D)は、第1溶射被膜C1から第3溶射被膜C3を形成するに伴い、180mmから250mmの範囲で変えられることになる。またこの場合、基材面1aの被膜形成予定個所全体に対して溶射が、パス回数:6回をもって行われる。1〜2回目のパスでは高硬度条件(最も近づいた状態)で溶射することにより第1溶射被膜C1が形成され、次の3〜4回目のパスでは中硬度条件で溶射することにより第2溶射被膜C2が形成され、次の5〜6回目のパスでは低硬度条件(最も離れた状態)で溶射することにより第3溶射被膜C3が形成されることになっている。ここで、パスとは、基材面1aの被膜形成予定個所全体を溶射する回数をいう。
【0020】
次に、図2,図5,図6に示すように、基材面1a上の被膜積層C全体に対して研削を行う(研削工程)。被膜積層Cの最外表面を面一(同一平面)として、摺動部材の摺動を可能とする支持面5を形成すると共に、被膜積層Cの表面硬度を、凹所底面2aの上方領域に存在するものと、非加工面3の上方領域に存在するものとで異ならせるためである。
すなわち、被膜積層C全体を面一にするためには、非加工面3の上方領域に存在する被膜積層C部分を、凹所底面2aの上方領域に存在する被膜積層C部分よりも深くまで研削しなければならず、これを利用して、非加工面3の上方領域に存在する被膜積層C部分の表面硬度を高いものとし(第1溶射被膜C1が露出)、凹所底面2aの上方領域に存在する被膜積層C部分の表面硬度を低いもの(第3溶射被膜C3が露出)としているのである。本実施形態においては、基材面1a上の溶射被膜の最上面から0.08〜0.10mm程度研削することにより、上記関係が得られる。尚、この研削工程は、従来行われる工程を利用して行われることになる。図5中、符号K示す二点鎖線は、研削後の面を示す。
【0021】
これにより、基材1の支持面5は、凹所底面2aの上方領域に存在する被膜積層C部分において、馴染み性を発揮し、非加工面3の上方領域に存在する被膜積層C部分においては、高い耐摩耗性を発揮することになり、支持面5の各部位毎に異なる機能を発揮できる。この場合、凹所2の形状が、平坦な凹所底面2aから内壁が垂直に起立する形状であるから、その凹所2の内壁を見切り線として、支持面5における硬度は鋭敏に切り替わることになる。
【0022】
このような被膜形成部材の製造方法は、例えば、ロータリエンジン6におけるサイドハウジング8の支持面9(ロータ10との当接面)に利用される。
ロータリエンジン1においては、ロータハウジング11内をロータ10が回転するに伴い、そのロータ10側面に取付けられるサイドシール12及びオイルシールOは、サイドハウジング8(支持面9)に対して摺動する。この場合、オイルシールOのサイドハウジング8(支持面9)上での摺動領域OSは、サイドハウジング8の中心点を基準として円環状部分(ハッチをもって示す)となり、サイドシール12のサイドハウジング8(支持面9)上での摺動領域SSは、サイドハウジング8の中央領域(レモン形状部分)の外側部分(ハッチをもって示す)となるが、サイドシール12の摺動に関しては、図10に示すサイドシール12の摺動軌跡からも明らかなように、サイドハウジング8の短軸側部分にその摺動が集中する(サイドシール12の摺動が集中する部分を符号14をもって示す(図9中では、囲んだ部分))。このため、サイドシール12の支持面9には、基本的に高い耐摩耗性が要求されるが、サイドシール12の摺動が集中する部分14においては、より一層の高い耐摩耗性が必要とされる。
これに対する対処として、サイドシール12の摺動が集中する部分14に合わせて、サイドハウジング8(支持面9)全体の溶射被膜の硬度を上げ、耐摩耗性を向上させることが考えられる。しかし、そのように耐摩耗性を向上させた場合には、オイルシール13の摺動領域OSで、オイルシール13と溶射被膜との馴染みが遅れ、その間のシール性が低下する。逆に、オイルシール13の摺動領域OSに合わせて、サイドハウジング8(支持面9)全体の溶射被膜の硬度を下げると、サイドシール12の摺動集中部分14に段付き摩耗が発生するおそれがある。
このことから、サイドハウジング8の支持面9においては、前述の製造方法を用いて、サイドシール12の摺動集中部分14の硬度をより高めると共に、サイドシール12の摺動集中部分14以外の部分の硬度を、サイドシール12の摺動集中部分14の硬度よりも低めることとされている。
【0023】
図11〜図14は第2実施形態を示す。この第2実施形態において、前記第1実施形態と同一構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0024】
この第2実施形態においては、図11に示すように、基材1に形成する凹所2として、その底面中央から開口側に離間するに従って相対する内壁が離れる形状のものが用いられている。そして、この凹所2を含む基材面1a上に、前記第1実施形態と同様の方法により、膜厚がそれぞれ一定の第1〜第4溶射皮膜C1〜C4が順に形成され、その第1〜第4溶射皮膜C1〜C4の硬度も、第4溶射皮膜C4に向かうに従って低くされる。この被膜積層Cに対して研削が行われ、支持面5には、凹所2中央から凹所2外方に向かうに従って、第3溶射被膜C3、第2溶射皮膜C2、第1溶射被膜C1が露出する。このため、本実施形態においては、支持面5の硬度は、凹所2中央から凹所2外方に向かうに従って徐々に高くなる。
【0025】
以上実施形態について説明したが本発明にあっては、次の態様を包含する。
(1)本発明に係る被膜形成部材の製造方法を、ロータリエンジンのサイドハウジング以外のものにも、適宜、適用すること。
(2)実施形態においては、各溶射被膜の硬度を順次、変えるために溶射ガンを基材面1aから離間するようにしているが、逆に、各溶射被膜を順次、形成するに伴い、溶射ガンを基材面1aに最適値(高硬度)に近づけること。この場合には、研削工程を経ると、凹所底面2aの上方領域に存在する被膜積層C部分の最外表面硬度は高くなり、非加工面3の上方領域に存在する被膜積層C部分の最外表面硬度は相対的に低くなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態に係る一連の製造工程を示す工程図。
【図2】第1実施形態に係る凹所加工前の基材表面を示す説明図。
【図3】図2に続く製造工程を説明する説明図。
【図4】図3に続く製造工程を説明する説明図。
【図5】図4に続く製造工程を説明する説明図。
【図6】図5に続く製造工程を説明する説明図。
【図7】ロータリエンジンを説明する説明図。
【図8】オイルシールの摺動領域を示す図。
【図9】サードシールの摺動領域を示す図。
【図10】サイドシールの摺動軌跡を説明する説明図。
【図11】第2実施形態に係る凹所を説明する説明図。
【図12】図11に続く製造工程を説明する説明図。
【図13】図12に続く製造工程を説明する説明図。
【図14】図13に続く製造工程を説明する説明図。
【符号の説明】
【0027】
1 基材(サイドハウジング)
1a 基材面
2 凹所
2a 凹所底面
3 非加工面
5 支持面
8 サイドハウジング
9 支持面
C 被覆積層
C1 第1溶射被膜
C2 第2溶射被膜
C3 第3溶射被膜
C4 第4溶射被膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、被膜形成部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被膜形成部材を製造するに際しては、一般に、特許文献1に示すように、必要部位のみに被膜を形成するべく、その必要部位以外の部分をマスキング材によりマスキングしつつ、その必要部位に対して溶射が行われている。このようなマスキング材を用いた方法を用いれば、数種類の溶射材料を部位毎に区分けして溶射することもでき、複数の異なる被膜を有する被膜形成部材を製造できる。
【0003】
ところで、近時、摺動部材の摺動を受け止める支持面等においては、単に、耐摩耗性を向上させるために溶射被膜等の被膜を形成するだけでなく、摺動部材の摺動との関係から、部分的に同一平面上で被膜の硬度を異ならせることが求められる場合がある。その実現手段としては、前述のように、マスキング材と溶射とを用いれば、部位毎に硬度の異なる被膜を形成することができる。
【特許文献1】特開平5−111666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、マスキング材と溶射とを用いて部位毎に硬度の異なる被膜を形成する場合には、マスキング材を用意しなければならないばかりか、そのマスキング材のセット、取り外しという独自の作業が必要となる。しかも、そのマスキング材のセット作業においては正確性(セット位置の正確性)が要求され、マスキング材の取り外し作業においては、その取り外し作業に伴い、形成被膜を損傷させないこと(被膜が剥がれないようにすること等)等が求められる。
また、マスキング材を用いる場合において、複数種類として2種類の硬度の異なる被膜を形成する作業工程を見た場合、一方の被膜形成予定領域に被膜を形成するときには、他方の被膜形成予定領域をマスキング材を用いてマスキングし、他方の被膜形成予定領域に被膜を形成するときには、一方の被膜形成予定領域上の被膜をマスキング材を用いてマスキングする必要がある。このため、(i)マスキング材のセット工程、(ii)溶射工程、(iii)マスキング材の取り外し工程、(iv)マスキング材のセット工程、(v)溶射工程、(vi)マスキング材の取り外し工程、(vi)研削工程の順に作業を行わなければならず、同種の作業工程が時間をおいて繰り返され、作業効率上好ましいものではない。
さらには、一般的に、マスキング材を用いる場合には、その取り外し時に形成被膜が剥がれないようにすることから、マスキング材と溶射とを用いて部位毎に硬度の異なる被膜を形成する場合には、硬度の異なる被膜を部位毎に正確に区画することが困難な傾向にある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、部位毎に硬度が異なる被膜を迅速且つ確実に形成できる被膜形成部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記技術的課題を達成するために本発明(請求項1に係る発明)においては、
基材面上に、被膜硬度を他部と異なる領域にしたい個所において凹所を形成し、
次に、前記凹所を含む基材面上に、被膜を、該被膜の膜厚を一定にすると共に該被膜の硬度が増減方向のいずれか一方の方向に変化するようにしつつ、順次、積層状に形成することにより、被膜積層を形成し、
次に、前記被膜積層を、該被膜積層の外面全体が面一となるように研削する構成としてある。この請求項1の好ましい態様としては、請求項2以下の記載の通りとなる。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、凹所形成工程、被膜積層形成工程、研削工程を経ることにより、マスキング材等の特別の部材を何等準備しなくても、部位毎に硬度の異なる被膜を形成できることになり、それに伴い、そのマスキング材のセット、取り外しという作業を不要として、製造工程の簡素化(少なくともマスキング材の取り外し工程を省略)を図ることができる。
また、凹所形成工程、被膜積層形成工程、研磨工程の順に、各工程が1回だけ行われ、同種の工程が時間をおいて繰り返されるようなことはない。このため、作業効率を高めて製造時間の短縮化を図ることができる。
さらに、硬度の異なる被膜を区画するために利用された凹所は、研削工程を経ることにより存在しなくなり、マスキング材の取り外し作業の場合のようにそれに伴って被膜が剥がれるおそれが生じることはなくなる。また、その被膜の剥がれを考慮することなく異なる硬度の被膜を区画できることになり、異なる硬度の被膜の区画(見切り線)を明確且つ正確に行うことができる。
したがって、部位毎に硬度が異なる被膜を迅速且つ確実に形成できる被膜形成部材の製造方法を提供できる。
【0008】
請求項2に係る発明によれば、被膜積層における各被膜の硬度を、基材面に近いものほど高くすることから、被膜積層と基材面との間、さらには、積層方向に隣り合う被膜同士間の付着安定性を高めることができる。
【0009】
請求項3に係る発明によれば、被膜積層を3層以上の被膜により形成し、各被膜の硬度を基材面に向けて徐々に高くすることから、3層以上の被膜を有する被膜積層において、積層方向に隣り合う被膜同士間の付着安定性を高める上で、より好ましいものとなる。
【0010】
請求項4に係る発明によれば、各被膜を溶射により形成することから、請求項1に係る作用効果を簡単且つ確実に得ることができる。
【0011】
請求項5に係る発明によれば、被膜積層における各被膜の硬度を積層方向に隣り合う被膜の硬度に対して変えるに際して、基材面と、溶射を行う溶射ガンとの間の距離を変えることから、各被膜の硬度を極めて簡単に変えることができる。
【0012】
請求項6に係る発明によれば、基材が、摺動部材の摺動を支持する支持面を構成することから、耐摩耗性と馴染み性という相反する要求に対して、部位毎に被膜の硬度を異ならせる手法により的確に応えることができる。
【0013】
請求項7に係る発明によれば、凹所として、平坦な凹所底面から垂直に内壁が起立する形状のものを形成することから、研削工程において、硬度が異なる2種類の被膜面が露出することになり、硬度が異なる被膜領域を鋭敏に区画することができる。
【0014】
請求項8に係る発明によれば、凹所として、凹所底面からその開口側に向かうに従って相対向する内壁が離間する形状のものを形成することから、研削工程において、硬度が異なる複数の被膜面が露出することになり、硬度が異なる被膜領域を徐々に変化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
本実施形態に係る製造方法は、図1に示す工程図に従って行われる。
先ず、図1〜図3に示すように、基材1の基材面1aに対して、機械加工を行って凹所2を形成する(機械加工工程)。後工程である溶射工程(第1,第2,第3溶射被膜形成工程)において形成される溶射被膜の連続性を凹所2により途切れさせて、凹所底面2a上の溶射被膜を凹所2以外の非加工面3上の溶射被膜よりも低くするためである。本実施形態においては、凹所2は、その平坦な凹所底面2aから内壁が垂直に起立する形状とされ、その凹所2の深さDは、例えば60μm程度とされている。
ここで、上記基材1としては、基本的には、摺動部材の摺動を支持するような部材であって、その摺動部材の摺動特性に応じて、部分的な領域で耐摩耗性と馴染み性とが個々に要求されるような部材が対象となる。材質からは、アルミ製、鋳鉄製等のものが対象となる。本実施形態においては、基材面1aの馴染み性が要求される領域に対して凹所2が形成され、基材面1aの非加工面3においては高い耐摩耗性が要求されることになる。
【0016】
基材面1a上に凹所2が形成されると、図1に示すように、凹所2を含む被膜形成予定個所全体に対して溶射を行う(溶射工程)。基材面1a上の被膜形成予定個所全体に溶射被膜を形成して、基本的に、基材面1aの耐摩耗性を確保するためである。
溶射は、本実施形態においては、図4に示すように、第1,第2,第3の溶射被膜C1,C2,C3を基材面1a上に積層状態をもって形成して被膜積層Cを形成することになっており、その被膜積層Cの各溶射被膜C1(C2,C3)の厚みm1(m2,m3)は、その各溶射被膜C1(C2,C3)毎に一定とされている。具体的には、基材面1aから外方に向けて第1,第2,第3の溶射被膜C1,C2,C3が形成され、その各厚みm1,m2,m3は、それぞれ40μm程度とされている。このため、基材面1a上の第1,第2,第3溶射被膜C1,C2,C3の連続性は、凹所2で途切れ、凹所2内においても第1,第2,第3溶射被膜C1,C2,C3が積層状態をもって形成されるものの、それらは、非加工面3上の第1,第2,第3溶射被膜C1,C2,C3よりも低い位置に位置することになる。この溶射に用いられる溶射粉末には、例えばCr3C2−25%NiCr(粒径10〜38μm)が用いられる。
【0017】
上記溶射は、第1,第2,第3溶射被膜C1,C2,C3の形成毎に、溶射ガン位置から基材面1aまでの距離(W/D)が異ならされている。第1,第2,第3溶射被膜C1,C2,C3の硬度をそれぞれ異ならせるためである。つまり、溶射ガン位置から基材面1aまでの距離(W/D)は、最適値で高硬度となり、その最適値よりも長くなるほど低硬度となる関係があり、それを利用して溶射被膜の硬度を調整しようとしているのである。
【0018】
具体的に説明する。図3において、符号L1,L2,L3で示す一点鎖線は、第1,第2,第3溶射被膜C1,C2,C3を形成するときの溶射ガン位置を示し、S1,S2,S3(S1(最適値)<S2<S3)は、第1,第2,第3溶射被膜C1,C2,C3を形成を形成する際における溶射ガン位置と非加工面3との距離をそれぞれ示し(ワークディスタンスW/D)、H1,H2,H3(H1<H2<H3)は、第1,第2,第3溶射被膜C1,C2,C3を形成する際における溶射ガン位置と凹所底面2aとの距離をそれぞれ示している。このため、第1溶射被膜C1から第3溶射被膜C3を形成するに伴って、溶射ガン位置L1(L2,L3)から基材面1aまでの距離が長くなることになり、第1溶射被膜C1よりも第3溶射被膜C3に近いものほど、硬度は低くなる。この場合、第1,第2,第3の各溶射被膜C1,C2,C3を形成するに際して、溶射ガン位置から基材面1aまでの距離S1,S2,S3が、溶射ガン位置から凹所底面2aまでの距離H1,H2,H3よりも凹所2の深さDだけ短くなるが、この差D(例えば60μm程度)は、硬度変化にあまり影響を与えず、各溶射被膜C1,C2,C3毎の硬度に関しては、非加工面3上にあるものも、凹所底面2a上にあるものも、実質的に同一の状態にある。もっとも、凹所2の深さDが硬度に影響を与えることになったとしても、本実施形態においては(凹所2存在部を低硬度仕様の場合)、有利に働くことになる。
【0019】
本実施形態においては、溶射ガン位置から基材面1aまでの距離(W/D)は、第1溶射被膜C1から第3溶射被膜C3を形成するに伴い、180mmから250mmの範囲で変えられることになる。またこの場合、基材面1aの被膜形成予定個所全体に対して溶射が、パス回数:6回をもって行われる。1〜2回目のパスでは高硬度条件(最も近づいた状態)で溶射することにより第1溶射被膜C1が形成され、次の3〜4回目のパスでは中硬度条件で溶射することにより第2溶射被膜C2が形成され、次の5〜6回目のパスでは低硬度条件(最も離れた状態)で溶射することにより第3溶射被膜C3が形成されることになっている。ここで、パスとは、基材面1aの被膜形成予定個所全体を溶射する回数をいう。
【0020】
次に、図2,図5,図6に示すように、基材面1a上の被膜積層C全体に対して研削を行う(研削工程)。被膜積層Cの最外表面を面一(同一平面)として、摺動部材の摺動を可能とする支持面5を形成すると共に、被膜積層Cの表面硬度を、凹所底面2aの上方領域に存在するものと、非加工面3の上方領域に存在するものとで異ならせるためである。
すなわち、被膜積層C全体を面一にするためには、非加工面3の上方領域に存在する被膜積層C部分を、凹所底面2aの上方領域に存在する被膜積層C部分よりも深くまで研削しなければならず、これを利用して、非加工面3の上方領域に存在する被膜積層C部分の表面硬度を高いものとし(第1溶射被膜C1が露出)、凹所底面2aの上方領域に存在する被膜積層C部分の表面硬度を低いもの(第3溶射被膜C3が露出)としているのである。本実施形態においては、基材面1a上の溶射被膜の最上面から0.08〜0.10mm程度研削することにより、上記関係が得られる。尚、この研削工程は、従来行われる工程を利用して行われることになる。図5中、符号K示す二点鎖線は、研削後の面を示す。
【0021】
これにより、基材1の支持面5は、凹所底面2aの上方領域に存在する被膜積層C部分において、馴染み性を発揮し、非加工面3の上方領域に存在する被膜積層C部分においては、高い耐摩耗性を発揮することになり、支持面5の各部位毎に異なる機能を発揮できる。この場合、凹所2の形状が、平坦な凹所底面2aから内壁が垂直に起立する形状であるから、その凹所2の内壁を見切り線として、支持面5における硬度は鋭敏に切り替わることになる。
【0022】
このような被膜形成部材の製造方法は、例えば、ロータリエンジン6におけるサイドハウジング8の支持面9(ロータ10との当接面)に利用される。
ロータリエンジン1においては、ロータハウジング11内をロータ10が回転するに伴い、そのロータ10側面に取付けられるサイドシール12及びオイルシールOは、サイドハウジング8(支持面9)に対して摺動する。この場合、オイルシールOのサイドハウジング8(支持面9)上での摺動領域OSは、サイドハウジング8の中心点を基準として円環状部分(ハッチをもって示す)となり、サイドシール12のサイドハウジング8(支持面9)上での摺動領域SSは、サイドハウジング8の中央領域(レモン形状部分)の外側部分(ハッチをもって示す)となるが、サイドシール12の摺動に関しては、図10に示すサイドシール12の摺動軌跡からも明らかなように、サイドハウジング8の短軸側部分にその摺動が集中する(サイドシール12の摺動が集中する部分を符号14をもって示す(図9中では、囲んだ部分))。このため、サイドシール12の支持面9には、基本的に高い耐摩耗性が要求されるが、サイドシール12の摺動が集中する部分14においては、より一層の高い耐摩耗性が必要とされる。
これに対する対処として、サイドシール12の摺動が集中する部分14に合わせて、サイドハウジング8(支持面9)全体の溶射被膜の硬度を上げ、耐摩耗性を向上させることが考えられる。しかし、そのように耐摩耗性を向上させた場合には、オイルシール13の摺動領域OSで、オイルシール13と溶射被膜との馴染みが遅れ、その間のシール性が低下する。逆に、オイルシール13の摺動領域OSに合わせて、サイドハウジング8(支持面9)全体の溶射被膜の硬度を下げると、サイドシール12の摺動集中部分14に段付き摩耗が発生するおそれがある。
このことから、サイドハウジング8の支持面9においては、前述の製造方法を用いて、サイドシール12の摺動集中部分14の硬度をより高めると共に、サイドシール12の摺動集中部分14以外の部分の硬度を、サイドシール12の摺動集中部分14の硬度よりも低めることとされている。
【0023】
図11〜図14は第2実施形態を示す。この第2実施形態において、前記第1実施形態と同一構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0024】
この第2実施形態においては、図11に示すように、基材1に形成する凹所2として、その底面中央から開口側に離間するに従って相対する内壁が離れる形状のものが用いられている。そして、この凹所2を含む基材面1a上に、前記第1実施形態と同様の方法により、膜厚がそれぞれ一定の第1〜第4溶射皮膜C1〜C4が順に形成され、その第1〜第4溶射皮膜C1〜C4の硬度も、第4溶射皮膜C4に向かうに従って低くされる。この被膜積層Cに対して研削が行われ、支持面5には、凹所2中央から凹所2外方に向かうに従って、第3溶射被膜C3、第2溶射皮膜C2、第1溶射被膜C1が露出する。このため、本実施形態においては、支持面5の硬度は、凹所2中央から凹所2外方に向かうに従って徐々に高くなる。
【0025】
以上実施形態について説明したが本発明にあっては、次の態様を包含する。
(1)本発明に係る被膜形成部材の製造方法を、ロータリエンジンのサイドハウジング以外のものにも、適宜、適用すること。
(2)実施形態においては、各溶射被膜の硬度を順次、変えるために溶射ガンを基材面1aから離間するようにしているが、逆に、各溶射被膜を順次、形成するに伴い、溶射ガンを基材面1aに最適値(高硬度)に近づけること。この場合には、研削工程を経ると、凹所底面2aの上方領域に存在する被膜積層C部分の最外表面硬度は高くなり、非加工面3の上方領域に存在する被膜積層C部分の最外表面硬度は相対的に低くなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態に係る一連の製造工程を示す工程図。
【図2】第1実施形態に係る凹所加工前の基材表面を示す説明図。
【図3】図2に続く製造工程を説明する説明図。
【図4】図3に続く製造工程を説明する説明図。
【図5】図4に続く製造工程を説明する説明図。
【図6】図5に続く製造工程を説明する説明図。
【図7】ロータリエンジンを説明する説明図。
【図8】オイルシールの摺動領域を示す図。
【図9】サードシールの摺動領域を示す図。
【図10】サイドシールの摺動軌跡を説明する説明図。
【図11】第2実施形態に係る凹所を説明する説明図。
【図12】図11に続く製造工程を説明する説明図。
【図13】図12に続く製造工程を説明する説明図。
【図14】図13に続く製造工程を説明する説明図。
【符号の説明】
【0027】
1 基材(サイドハウジング)
1a 基材面
2 凹所
2a 凹所底面
3 非加工面
5 支持面
8 サイドハウジング
9 支持面
C 被覆積層
C1 第1溶射被膜
C2 第2溶射被膜
C3 第3溶射被膜
C4 第4溶射被膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材面上に、被膜硬度を他部と異なる領域にしたい個所において凹所を形成し、
次に、前記凹所を含む基材面上に、被膜を、該被膜の膜厚を一定にすると共に該被膜の硬度が増減方向のいずれか一方の方向に変化するようにしつつ、順次、積層状に形成することにより、被膜積層を形成し、
次に、前記被膜積層を、該被膜積層の外面全体が面一となるように研削する、
ことを特徴とする被膜形成部材の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記被膜積層における各被膜の硬度を、前記基材面に近いものほど高くする、
ことを特徴とする被膜形成部材の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記被膜積層を3層以上の被膜により形成し、
前記各被膜の硬度を前記基材面に向けて徐々に高くする、
ことを特徴とする被膜形成部材の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、
前記各被膜を溶射により形成する、
ことを特徴とする被膜形成部材の製造方法。
【請求項5】
請求項4項において、
前記被膜積層における各被膜の硬度を積層方向に隣り合う被膜の硬度に対して変えるに際して、前記基材面と、溶射を行う溶射ガンとの間の距離を変える、
ことを特徴とする被膜形成部材の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、
前記基材が、摺動部材の摺動を支持する支持面を構成する、
ことを特徴とする被膜形成部材の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項において、
前記凹所として、平坦な凹所底面から垂直に内壁が起立する形状のものを形成する、
ことを特徴とする被膜形成部材の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項において、
前記凹所として、凹所底面からその開口側に向かうに従って相対向する内壁が離間する形状のものを形成する、
ことを特徴とする被膜形成部材の製造方法。
【請求項1】
基材面上に、被膜硬度を他部と異なる領域にしたい個所において凹所を形成し、
次に、前記凹所を含む基材面上に、被膜を、該被膜の膜厚を一定にすると共に該被膜の硬度が増減方向のいずれか一方の方向に変化するようにしつつ、順次、積層状に形成することにより、被膜積層を形成し、
次に、前記被膜積層を、該被膜積層の外面全体が面一となるように研削する、
ことを特徴とする被膜形成部材の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記被膜積層における各被膜の硬度を、前記基材面に近いものほど高くする、
ことを特徴とする被膜形成部材の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記被膜積層を3層以上の被膜により形成し、
前記各被膜の硬度を前記基材面に向けて徐々に高くする、
ことを特徴とする被膜形成部材の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、
前記各被膜を溶射により形成する、
ことを特徴とする被膜形成部材の製造方法。
【請求項5】
請求項4項において、
前記被膜積層における各被膜の硬度を積層方向に隣り合う被膜の硬度に対して変えるに際して、前記基材面と、溶射を行う溶射ガンとの間の距離を変える、
ことを特徴とする被膜形成部材の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、
前記基材が、摺動部材の摺動を支持する支持面を構成する、
ことを特徴とする被膜形成部材の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項において、
前記凹所として、平坦な凹所底面から垂直に内壁が起立する形状のものを形成する、
ことを特徴とする被膜形成部材の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項において、
前記凹所として、凹所底面からその開口側に向かうに従って相対向する内壁が離間する形状のものを形成する、
ことを特徴とする被膜形成部材の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−150636(P2010−150636A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332846(P2008−332846)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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