説明

被膜組成物とその使用法

【課題】被膜組成物を提供する。
【解決手段】本被膜組成物は、樹脂と帯電防止剤と帯電防止補助剤とを含み、帯電防止補助剤はシロキサン化合物、フルオロ化合物、及びこれらの組合せから成るグループから選択される。帯電防止補助剤は帯電防止剤との相乗効果を生み、被膜表面から帯電防止剤を運び出す。そのため、少量の帯電防止補助剤を使用することで、帯電防止剤の量を削減し、所望の帯電防止効果を達成できる。本被膜組成物は、帯電防止を必要とする様々な製品に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被膜組成物に関し、特に良好な帯電防止性を有する被膜組成物に関する。
[関連する出願への相互参照]
本出願は、2008年4月16日付で出願した台湾特許出願第097113833号に基づく優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信産業では、様々な部品が、高い電気絶縁性を持ち摩擦により容易に静電気を生成するプラスチック材料で構成される。軽微な静電気は容易に汚染のしみを作り、ひどい静電気は製品の性能に影響を与え、その結果、欠陥製品の数を増やす。
【0003】
一般に、製品に帯電防止性を与える従来の被膜は、樹脂、帯電防止剤、溶媒、及び添加剤を含む。現在、導電性カーボンブラック、導電性繊維、金属粉又は酸化金属、有機塩又は無機塩、界面活性剤、及び導電性ポリマーを含む様々な帯電防止剤が販売されている。しかし、様々な帯電防止剤が様々な問題を持っている。例えば、導電性カーボンブラック又は金属粉を加えることは、容易に汚染のしみを作り、透明性を減少させる。界面活性剤は低湿度の環境では有効な帯電防止効果を提供できない。また、導電性ポリマーは値段が高過ぎる。
【0004】
また、上記帯電防止剤に共通の問題は、帯電防止剤の量を増やすと、帯電防止性は増加するが、被膜の質は低下することである。従って、優れた帯電防止効果を有し、比較的少量で製品に十分な帯電防止性を与える帯電防止剤が、当分野において望まれている。
【0005】
特許文献1は透明なポリカーボネートと、透明なアクリレート系重合体粒子と、帯電防止剤とを含む光散乱帯電防止性の透明な熱可塑性組成物を開示している。この重合体粒子はコアシェルの形態を持ち、その直径は1μm〜100μmである。また、フルオロアルカン・アンモニウムスルホナートが帯電防止剤として0.1重量%〜4.0重量%の濃度で使用されている。得られる膜の表面抵抗率は1014Ω/sqより高い。帯電防止効果は現在の製品が必要とするレベルをほとんど満たすことができない。
【0006】
特許文献2は、基層と、樹脂層と、帯電防止剤とを含み、該基層上に該樹脂層が配置され、該帯電防止剤は酸化金属のナノ粒子で該樹脂層内に分散されている光学膜を開示している。特許文献2の開示によれば、帯電防止剤を加えることは、良好な帯電防止効果を提供するが、その濃度は全組成の20重量%〜80重量%に達する。
【0007】
特許文献3はリン酸エステル塩系帯電防止剤を含む被膜層が片面又は両面に形成された帯電防止フィルムを開示している。この被膜層の帯電防止剤の含有率は、5〜40重量部、好ましくは10〜30重量部の範囲である。その濃度が40重量部を超えた場合、被膜層の耐ブロッキング性及び接着性は不十分になる。また、濃度が5重量部未満の場合、帯電防止効果は弱い。
【0008】
以前の調査から、従来技術は帯電防止補助剤の研究ではなく帯電防止製品のための帯電防止剤の改善を重視していることが分かった。本発明者らは帯電防止補助剤を使用することで被膜組成物中の帯電防止剤の量を大幅に低減でき、それでも相対的に多量の帯電防止剤を含有する製品と同等の帯電防止効果を提供できることを発見した。
【特許文献1】台湾特許出願公開第200728360号公報
【特許文献2】台湾特許出願公開第200720734号公報
【特許文献3】特開平9−076443号公報(特願平07−241502)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの目的は、樹脂と帯電防止剤と帯電防止補助剤とを含む被膜組成物を提供することである。この帯電防止補助剤はシロキサン化合物、フルオロ化合物、及びこれらの組合せから成るグループから選択される。帯電防止補助剤は帯電防止剤との相乗効果を生み、被膜表面から帯電防止剤を運び出す。そのため、少量の帯電防止補助剤を使用することで、帯電防止剤の量を大幅に削減し、所望の帯電防止効果を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の被膜組成物には任意の適切な樹脂、例えば熱硬化性樹脂を使用することができる。この熱硬化性樹脂は、これらに限定されないが、アクリレート樹脂、メタクリル酸樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、フルオロ樹脂、フェノール樹脂、又はこれらの組合せから成り、好ましくはアクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、又はこれらの組合せ、より好ましくはアクリレート樹脂から成る。随意に、アクリレート樹脂はヒドロキシル(-OH)、カルボキシル (-COOH)、及びアミノ(-HN2)から成るグループから選択された1つ以上の基、好ましくはヒドロキシルを含んでよく、例えばヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA), メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(HEMA)、メタクリル酸ヒドロキシプロピル(HPMA)、又はこれらの混合物であってよい。この樹脂の含有量は、被膜組成物の全固形重量の約50重量%〜約99.55重量%、好ましくは約60重量%〜約99.55重量%、より好ましくは約70重量%〜約97.85重量%の範囲である。
【0011】
一般に、本発明において使用される帯電防止剤はいかなる限定もないが、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、第四アンモニウム化合物、有機塩、無機塩、及びこれらの組合せから成るグループから選択してよい。例えば、本発明において有用な帯電防止剤の例は、ポリエーテルポリオール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、過塩素酸リチウム、塩素酸カリウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、加硫シアン酸ナトリウム、フルオロリチウムイミド塩、ピリジニウム塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルスルホン酸塩、又はこれらの組合せである。好適な帯電防止剤はポリエーテルポリオール、ピリジニウム塩、過塩素酸リチウム又はこれらの組合せのいづれでもよい。
【0012】
一般に、少量の帯電防止剤は、不十分な導電性と弱い帯電防止効果とを提供するであろう。一方、帯電防止剤の含有量が多すぎると、被膜の質に容易に影響を与える。本発明の被膜組成物中の帯電防止剤の含有量は、帯電防止補助剤を使用する場合、被膜組成物の全固形重量の約0.1重量%〜約10重量%、好ましくは約0.1重量%〜約5重量%の範囲である。
【0013】
本発明の被膜組成物は帯電防止補助剤を更に含む。帯電防止補助剤を使用することによって、帯電防止補助剤は帯電防止剤との相乗効果を生み、被膜表面から帯電防止剤を運び出す。結果として、本発明の組成物は、少量の帯電防止補助剤を使用することで、相対的に多量の帯電防止剤を含有する他の組成物と同等の帯電防止効果を提供でき、従って、帯電防止剤の含有量を削減して所望の帯電防止効果を達成できる。本発明の被膜組成物に適切な帯電防止補助剤はシロキサン化合物、フルオロ化合物、及びこれらの組合せから成るグループから選択してよい。シロキサン化合物は式(1)又は式(2):
【0014】
【化1】

【0015】
【化2】

で表され、ここで、R1, R2, R3, R4, R5, R6, R7はそれぞれ独立にH, CH3, C2H5, C3H7, OCH3, 又はOC2H5を表し、x, y, z, aはそれぞれ独立に1〜20の整数であり、Rは下記:
【0016】
【化3】

を表し、ここで、nは1〜5の整数であり、b, cはそれぞれ独立に1〜20の整数であり、dは0〜20の整数であり、そして、R8は下記:
【0017】
【化4】

を表す。
【0018】
本発明の被膜組成物の一実施形態では、シロキサン化合物は前記式(1)によって表される。ここで、R1, R2, R3, R4, R5, R6, R7はそれぞれ独立にCH3またはOCH3を表し、x, y, zはそれぞれ独立に1〜10の整数であり、Rは下記:
【0019】
【化5】

を表し、ここで、nは1〜3の整数であり、bは1〜10の整数であり、dは0〜5の整数である。
また、本発明で使用される帯電防止補助剤は、下記式(4)によって表されるフルオロ化合物であってもよい。
【0020】
【化6】

ここで、mは1〜10、好ましくは3〜7の整数であり、aは1〜20、好ましくは2〜10の整数である。例えば、本発明の被膜組成物で有用なフルオロ化合物の例は、γ−グリシドキシトリフルオロプロパン、γ−グリシドキシペンタフルオロブタン、γ−グリシドキシヘプタフルオロペンタン、及びこれらの組合せである。
【0021】
本発明の被膜組成物で使用される帯電防止補助剤は、好ましくは、下記式(3)によって表されるシロキサン化合物である。
【0022】
【化7】

ここで、x, y, z, bはそれぞれ独立に1〜5の整数であり、nは1〜3の整数である。例えば、本発明の被膜組成物で帯電防止補助剤として使用されるシロキサン化合物の例は、エーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ヒドロキシポリジメチルシロキサン、エステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、フェニルシロキサン、ジメチコーン、アルキルメチルシロキサン、ジメチコーンコポリオール、又はこれらの組合せである。他の例は、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、又はこれらの組合せである。
【0023】
本発明に従うと、少量の帯電防止補助剤を添加することで、帯電防止剤の量を減らし、改善された帯電防止効果を持った被膜組成物を得ることができる。一般に、帯電防止補助剤の含有量は、被膜組成物の全固形重量の約0.05重量%〜約5重量%、好ましくは約0.1重量%〜約2重量%、より好ましくは約0.2重量%〜約1重量%の範囲である。
【0024】
被膜を付けた最終製品の用途によっては、本発明の被膜組成物は、必要であれば、当業者が通常使用する1つ以上の他の添加剤を更に含んでもよい。例えば、随意に使用されるこれらの添加剤は架橋剤、無機微粒子、粘着促進剤、可塑剤、充填剤、UV安定剤、流動平坦化剤、分散剤、開始剤、触媒、及び安定剤を含む。
【0025】
被膜組成物に随意に添加することができる架橋剤は、当業者に周知である。通常、ポリイソシアネート、アルキル化メラミンホルムアルデヒド樹脂、及びこれらの組合せから成るグループから選択された架橋剤、好ましくはポリイソシアネートを使用できる。架橋剤は分子と分子の間の化学的連結を生成し、架橋結合を形成する。例えば、ヒドロキシル基を持つアクリレート樹脂はポリイソシアネートと反応し架橋結合を形成する。架橋剤を添加する場合、その含有量は被膜組成物の全固形重量の約0.1重量%〜約30重量%、好ましくは約0.3重量%〜約20重量%の範囲である。
【0026】
適切なポリイソシアネート架橋剤は、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、及びこれらの組合せから成るグループから選択してよい。例えば、脂肪族ポリイソシアネートの例は、シクロヘキサンジイソシアネート二量体、三量体、又はこれらの付加物;トリメチルシクロヘキサンジイソシアネート二量体、三量体、又はこれらの付加物;シクロヘキサンジ(メチルイソシアネート)二量体、三量体、又はこれらの付加物;イソホロンジイソシアネート二量体、三量体、又はこれらの付加物;又はこれらの組合せである。芳香族ポリイソシアネートの例は、トルエンジイソシアネート二量体、三量体、又はこれらの付加物;キシレンジイソシアネート二量体、三量体、又はこれらの付加物;ジフェニルメタンジイソシアネート二量体、三量体、又はこれらの付加物;又はこれらの組合せである。
【0027】
本発明の被膜組成物に適切なアルキル化メラミンホルムアルデヒド樹脂架橋剤は、これらに限定されないが、ヘキサ(メチルホルムアルデヒド)メラミン樹脂、ヘキサ(エチルホルムアルデヒド)メラミン樹脂、テトラ(メチルホルムアルデヒド)ジアミノメラミン樹脂、テトラ(メチルホルムアルデヒド)ビ(ブチルホルムアルデヒド)メラミン樹脂、テトラ(メチルホルムアルデヒド)ビ(プロピルホルムアルデヒド)メラミン樹脂、又はこれらの組合せであるメチル化、エチル化、プロピル化、又はブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂であってもよい。
【0028】
また、紫外線を吸収する基層が黄変するのを防ぐために、紫外線吸収能力のある無機微粒子、例えば酸化亜鉛、二酸化シリコン、二酸化チタン、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、又はこれらの組合せを被膜組成物に随意に添加することができる。粒子直径が好ましくは約1nm〜約100nmの範囲であるナノ級の微粒子が通常選択される。無機微粒子を含む場合、その含有量は通常、被膜組成物の全固形重量の約1重量%〜約10重量%の範囲である。
【0029】
被膜組成物に含まれる上記の様々な成分を均一に混合するために、また次の被覆工程の便宜のために、本発明の被膜組成物は溶媒を更に含んでもよい。この溶媒は結合剤を含む溶液又は架橋剤を含む溶液として、又は追加によって提供することができる。本発明の被膜組成物に適切な溶媒は当業者に周知であり、これらに限定されないが、ベンゼン化合物、エステル化合物、ケトン化合物、又はこれらの組合せである。例えば、ベンゼン化合物溶媒の例は、ベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、トリメチルベンゼン、スチレン、又はこれらの組合せである。エステル化合物溶媒の例は、酢酸エチル、酢酸ブチル、炭酸ジエチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エトキシブチル、酢酸エトキシプロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、又はこれらの組合せである。ケトン化合物溶媒の例は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、又はこれらの組合せである。
【0030】
本発明の被膜組成物が溶媒を含む場合、その溶媒の含有量は、被膜組成物の全固形重量に対して約30重量%〜約90重量%、好ましくは約40重量%〜約80重量%の範囲である。
【0031】
本発明の被膜組成物は、任意の適切な基層面上に直接被覆することができ、その基層表面に良好な帯電防止性を提供する。その表面抵抗率は1013Ω/□より低く、好ましくは1012Ω/□より低く、より好ましくは108〜1011Ω/□(Ω/□はオーム/平方メートルを表す)の間である。基層には何ら特別な制限はなく、金属、合金、ガラス、コンピュータケース、木材、プラスチック、革、石等の任意の材料からできていてよい。
【0032】
プラスチック基層は当業者に周知である。例えば、この基層はポリアクリレート樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA))、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)又はポリエチレンテレフタレート(PET))、ポリイミド樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、トリアセテートセルロース(TAC)、又はこれらの組合せから成る材料でできていてもよい。
【0033】
上記プラスチック基層は、広告灯、パネルディスプレー等のランプ装置において光学膜の基層として使用することができる。基層の厚みは通常、製品用途によって決まる。現在の技術において使用されている全ての基層厚を本発明において使用することができる。約16μm〜200μmの範囲の厚みが好ましい。
【0034】
本発明の被膜組成物は、バーコーティング、スロットダイコーティング、グラビアコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング等の任意の適切な処理法により基層の1つ又は2つの面に被覆することができる。
【0035】
次に、被膜組成物は適当な温度で乾燥され、溶媒を蒸発させ、重合反応が行われて、被膜層を形成する。乾燥工程は、通風又は加熱を行う(例えば、熱風を通風する)強制揮発法により実行可能である。
【0036】
本発明の1つの実施形態に従えば、製品に帯電防止性を提供するために、次のステップによりコーティングを実行可能である。
(I)樹脂と、帯電防止剤と、帯電防止補助剤と、随意の架橋剤及び他の添加剤とを混合してコーティング溶液を調製する。この溶液は、必要であれば、溶媒を加えることで希釈することができる。
(II)バーコーティングロッドにより基層の表面上にこのコーティング溶液を塗布する。
(III)塗布された基層を乾燥機に入れ適当な温度で数分間加熱する。
【実施例1】
【0037】
100重量部のアクリレート樹脂溶液E-7713(約25%の固形成分含有量、Eternal Chemical Co., Ltd.)を0.3重量部の非イオン帯電防止剤(参照No. 9398-0155-R2, Marubishi Oil Chemical Company Ltd., 約30%の固形成分含有量)、0.3重量部の帯電防止補助剤Dow Corning 57 Additive(Dow Corning Corporation, ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)、及び1重量部の架橋剤Desmodur N75(Bayer AG, イソシアネート、約75%の固形成分含有量)と混合した。均一に攪拌して、被膜組成物を得た。放置して消泡した後、この組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(T100G-38, 38 μm厚, Mitsubishi Chemical Corporation製)の1つの面にバーコーティングロッドにより塗布した。次に塗布されたフィルムを120℃で2分間乾燥し、溶媒を蒸発させた。約20g/m2の堅固な被膜の被膜層が得られた。
【0038】
得られたサンプルの表面抵抗率の評価を行った。抵抗率計(MCP-HT450, Mitsubishi Chemical Corporation)を使用し、60秒間100V印加で、サンプルの表面抵抗率(オーム/sq)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0039】
[比較例1]
帯電防止補助剤なしで実施例1の調製ステップと測定方法を実行した。測定結果を表1に示す。
【0040】
[比較例2]
0.3重量部ではなく3重量部の非イオン帯電防止剤を添加し帯電防止補助剤なしで実施例1の調製ステップと測定方法を実行した。測定結果を表1に示す。
【実施例2】
【0041】
0.3重量部の帯電防止補助剤BYK-333(BYK Additives & Instruments, ポリエーテル変性アルキルシロキサン)を使用した以外は、実施例1の調製ステップと測定方法を実行した。測定結果を表1に示す。
【実施例3】
【0042】
1重量部の帯電防止補助剤BYK-340(BYK Additives & Instruments, フルオロ化合物)を使用した以外は、実施例1の調製ステップと測定方法を実行した。測定結果を表1に示す。
【実施例4】
【0043】
1重量部の帯電防止補助剤KBM-403(Shin-Etsu Chemical Co., Ltd., エポキシシランカップリング剤)を使用した以外は、実施例1の調製ステップと測定方法を実行した。測定結果を表1に示す。
【実施例5】
【0044】
1重量部の帯電防止補助剤KBM-503(Shin-Etsu Chemical Co., Ltd., アクリル酸シランカップリング剤)を使用した以外は、実施例1の調製ステップと測定方法を実行した。測定結果を表1に示す。
【0045】
[比較例3]
帯電防止剤なしで実施例1の調製ステップと測定方法を実行した。測定結果を表1に示す。
【0046】
[比較例4]
0.3重量部の帯電防止補助剤BYK-361(BYK Additives & Instruments, アクリレート共重合体)を使用した以外は、実施例1の調製ステップと測定方法を実行した。測定結果を表1に示す。
【実施例6】
【0047】
0.5重量部の帯電防止剤PEL-100(Japan Carlit Co., Ltd., 過塩素酸リチウム/ポリエーテルポリオール)を使用した以外は、実施例1の調製ステップと測定方法を実行した。測定結果を表1に示す。
【実施例7】
【0048】
0.3重量部の帯電防止剤IL-C1(Koei Chemical Co., Ltd., ピリジニウム誘導体)と0.5重量部の架橋剤Desmodur 3390(Bayer AG, イソシアネート、約90%の固形成分含有量)を使用した以外は、実施例1の調製ステップと測定方法を実行した。測定結果を表1に示す。
【実施例8】
【0049】
126.6重量部のアクリレート樹脂溶液Eterac 7363-ts-50(約50%の固形成分含有量、Eternal Chemical Co., Ltd.)を45重量部のメチルエチルケトン及びトルエン、3重量部の35nm酸化亜鉛/硫酸バリウム、1重量部の帯電防止剤PEL-100(Japan Carlit Co., Ltd., 過塩素酸リチウム/ポリエーテルポリオール)、1重量部の帯電防止補助剤BYK-333(BYK Additives & Instruments, ポリエーテル変性アルキルシロキサン)、及び18.4重量部の架橋剤Desmodur 3390(Bayer AG, イソシアネート、約90%の固形成分含有量)とこの順に混合した。均一に攪拌して、被膜組成物を得た。放置して消泡した後、この被膜組成物を基層、UX-150フィルム(Teijin Limited製)上にバーコーティングロッドにより塗布した。次に塗布された基層を120℃で2分間乾燥し、溶媒を蒸発させた。約10g/m2の堅固な被膜の被膜層が得られた。
【0050】
[比較例5]
帯電防止補助剤なしで実施例8の調製ステップと測定方法を実行した。測定結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
実施例1〜実施例8から、樹脂と、ポリエーテルポリオール、ピリジニウム塩、過塩素酸リチウム、又はこれらの混合物等の帯電防止剤と、シロキサン化合物、フルオロ化合物、及びこれらの組合せから成るグループから選択された帯電防止補助剤とを含む本発明の被膜組成物は良好な帯電防止効果を示していることが分かる。
【0053】
実施例1の結果を比較例1と比較すると、本発明の被膜組成物は帯電防止補助剤を含まない場合、帯電防止効果が弱いことが分かる。
【0054】
実施例1の結果を比較例2と比較すると、本発明の被膜組成物は帯電防止補助剤を含まない場合、同等の帯電防止効果を得るためには多量の帯電防止剤を添加する必要があることが分かる。
【0055】
実施例1の結果を比較例3と比較すると、本発明の被膜組成物は帯電防止剤なしで帯電防止補助剤だけを含む場合、帯電防止補助剤は帯電防止効果がないので帯電防止効果が弱いことが分かる。
【0056】
実施例1の結果を比較例4と比較すると、本発明の被膜組成物はシロキサン化合物、フルオロ化合物、又はこれらの組合せを帯電防止補助剤として含まない場合、帯電防止効果が弱いことが分かる。
【0057】
実施例8の結果を比較例5と比較すると、本発明の被膜組成物は帯電防止補助剤を含まない場合、帯電防止効果が弱いことが分かる。
【0058】
本発明の被膜組成物はシロキサン化合物、フルオロ化合物、又はこれらの組合せを帯電防止補助剤として活用し、それにより、少量だけの帯電防止剤を使用して優れた帯電防止効果を示すことが立証された。
【0059】
上記の実施例は、本発明の範囲を限定する意図ではなく、本発明を更に例証するよう意図されている。当業者が容易に想到することができる変更又は置換えはいづれも、本出願の明細書及び添付の請求項の開示の範囲に入る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、帯電防止剤とを含む被膜組成物であって、
シロキサン化合物、フルオロ化合物、及びこれらの組合せから成るグループから選択された帯電防止補助剤を更に含むことを特徴とする被膜組成物。
【請求項2】
前記帯電防止補助剤は、シロキサン化合物である請求項1に記載の被膜組成物。
【請求項3】
前記シロキサン化合物は式(1)又は式(2):
【化1】

【化2】

で表され、式中、R1, R2, R3, R4, R5, R6, R7はそれぞれ独立にH, CH3, C2H5, C3H7, OCH3, 又はOC2H5を表し、x, y, z, aはそれぞれ独立に1〜20の整数であり、Rは下記:
【化3】


を表し、ここで、nは1〜5の整数であり、b, cはそれぞれ独立に1〜20の整数であり、dは0〜20の整数であり、そして、R8は下記:
【化4】

を表す請求項2に記載の被膜組成物。
【請求項4】
前記シロキサン化合物は前記式(1)で表され、式中、R1, R2, R3, R4, R5, R6, R7はそれぞれ独立にCH3またはOCH3を表し、x, y, zはそれぞれ独立に1〜10の整数であり、Rは下記:
【化5】

を表し、ここで、nは1〜3の整数であり、bは1〜10の整数であり、dは0〜5の整数である請求項2に記載の被膜組成物。
【請求項5】
前記シロキサン化合物は式(3):
【化6】

で表され、式中、x, y, z, bはそれぞれ独立に1〜5の整数であり、nは1〜3の整数である請求項4に記載の被膜組成物。
【請求項6】
前記シロキサン化合物は、エーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ヒドロキシポリジメチルシロキサン、エステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、フェニルシロキサン、ジメチコーン、アルキルメチルシロキサン、ジメチコーンコポリオール、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及びこれらの組合せから成るグループから選択される請求項5に記載の被膜組成物。
【請求項7】
前記帯電防止補助剤は、フルオロ化合物である請求項1に記載の被膜組成物。
【請求項8】
前記フルオロ化合物は式(4):
【化7】

で表され、式中、mは1〜10の整数であり、aは1〜20の整数である請求項7に記載の被膜組成物。
【請求項9】
前記フルオロ化合物はγ−グリシドキシトリフルオロプロパン、γ−グリシドキシペンタフルオロブタン、γ−グリシドキシヘプタフルオロペンタン、及びこれらの組合せから成るグループから選択される請求項8に記載の被膜組成物。
【請求項10】
前記帯電防止補助剤の含有量は該被膜組成物の全固形重量の約0.05重量%〜約5重量%の範囲である請求項1に記載の被膜組成物。
【請求項11】
前記帯電防止補助剤の含有量は該被膜組成物の全固形重量の約0.1重量%〜約2重量%の範囲である請求項10に記載の被膜組成物。
【請求項12】
前記帯電防止補助剤の含有量は該被膜組成物の全固形重量の約0.2重量%〜約1重量%の範囲である請求項11に記載の被膜組成物。
【請求項13】
前記樹脂は、アクリレート樹脂、メタクリル酸樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、フルオロ樹脂、フェノール樹脂、及びこれらの組合せから成るグループから選択される請求項1に記載の被膜組成物。
【請求項14】
前記樹脂は、アクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、及びこれらの組合せから成るグループから選択される請求項13に記載の被膜組成物。
【請求項15】
前記樹脂の含有量は該被膜組成物の全固形重量の約50重量%〜約99.55重量%の範囲である請求項1に記載の被膜組成物。
【請求項16】
前記樹脂の含有量は該被膜組成物の全固形重量の約60重量%〜約99.5重量%の範囲である請求項15に記載の被膜組成物。
【請求項17】
前記帯電防止剤は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、第四アンモニウム化合物、有機塩、無機塩、及びこれらの組合せから成るグループから選択される請求項1に記載の被膜組成物。
【請求項18】
前記帯電防止剤の含有量は該被膜組成物の全固形重量の約0.1重量%〜約10重量%の範囲である請求項1に記載の被膜組成物。
【請求項19】
前記帯電防止剤の含有量は該被膜組成物の全固形重量の約0.1重量%〜約5重量%の範囲である請求項18に記載の被膜組成物。
【請求項20】
架橋剤、無機微粒子、粘着促進剤、可塑剤、充填剤、UV安定剤、流動平坦化剤、分散剤、開始剤、触媒、安定剤、及びこれらの組合せから成るグループから選択された添加剤を更に含む請求項1に記載の被膜組成物。
【請求項21】
前記架橋剤は、ポリイソシアネート、アルキル化メラミンホルムアルデヒド樹脂、及びこれらの組合せから成るグループから選択される請求項20に記載の被膜組成物。
【請求項22】
前記架橋剤は、ポリイソシアネートである請求項20に記載の被膜組成物。
【請求項23】
前記架橋剤の含有量は該被膜組成物の全固形重量の約0.1重量%〜約30重量%の範囲である請求項20に記載の被膜組成物。
【請求項24】
被膜組成物であって、その全固形重量に対して、
約60重量%〜約99.5重量%のアクリレート樹脂と、
約0.1重量%〜約10重量%の帯電防止剤としてのポリエーテルポリオールと、
約0.1重量%〜約2重量%の帯電防止補助剤としてのポリシロキサン樹脂と、
約0.3重量%〜約20重量%の架橋剤としてのポリイソシアネートと
を含み、該ポリシロキサン樹脂は式(3):
【化8】

で表され、式中、x, y, z, bはそれぞれ独立に1〜5の整数であり、nは1〜3の整数である被膜組成物。
【請求項25】
被膜組成物であって、その全固形重量に対して、
約70重量%〜約97.85重量%のアクリレート樹脂と、
約0.1重量%〜約5重量%の帯電防止剤としてのポリエーテルポリオールと、
約0.2重量%〜約1重量%の帯電防止補助剤としてのポリシロキサン樹脂と、
約0.3重量%〜約20重量%の架橋剤としてのポリイソシアネートと、
約1重量%〜約10重量%の無機微粒子と
を含み、該無機微粒子は酸化亜鉛、二酸化シリコン、二酸化チタン、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、及びこれらの組合せから成るグループから選択され、該ポリシロキサン樹脂は式(3):
【化9】

で表され、式中、x, y, z, bはそれぞれ独立に1〜5の整数であり、nは1〜3の整数である被膜組成物。
【請求項26】
前記無機微粒子の粒子直径は約1nm〜約100nmの範囲である請求項25に記載の被膜組成物。

【公開番号】特開2009−256561(P2009−256561A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172605(P2008−172605)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(500202322)長興化學工業股▲ふん▼有限公司 (30)
【Fターム(参考)】