説明

被覆された基質およびその製造方法

金属性またはセラミックス性のいずれかの実質的に均一に被覆された基質、並びにその製造方法。実質的に均一に被覆された基質は、典型的には多数の入口;多数の出口;基質の多数の壁;および該基質の壁によって規定される多数の通路を含む基質を含んで成り、該通路は少なくとも一つの出口から直接または間接的に延び出し;基質の壁には隣接した通路の間を連絡する多数の開口部および/または波形起伏および/またはタブが存在し、該基質は非吸着性の非触媒材料;吸着性の非触媒材料;触媒材料;およびこれらの二つ以上の混合物から成る群から選ばれる被覆材料の一つの実質的に均一な少なくとも一つの層を含んでいる。このような被覆された基質を製造する方法は、所望の材料のスラリを含む容器の中に基質を浸漬し、この基質を遠心分離にかけ、該材料を実質的に均一な層として基質の上に分布させ、基質の上に存在することが望まれるよりも過剰の該材料を除去し、しかる後被覆された基質を乾燥しカ焼する段階を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は2003年9月8日出願の米国特許出願第60/501,136号の利益を請求する。該出願の全内容は引用により本明細書に包含される。
【技術分野】
【0002】
本発明はその上に実質的に均一な被覆層を有する基質に関し、またこのような被覆された基質の製造法に関する。被覆された基質は自動車のエンジン、即ちガソリンまたはディーゼル用の内燃機関から放出される排ガス流を処理し、このようなガス流中に存在する未燃焼の炭化水素、一酸化炭素および窒素酸化物のレベルを減少させるのに有用である。
【背景技術】
【0003】
本発明に有用な基質は従来法において公知である。従来法においては被覆された金属箔も公知である。例えば特許文献1参照。
【0004】
しかし従来法の基質、特に多数の開口部を含む金属箔から成る基質は、現在に至るまでこのような箔の表面の上に実質的に均一な所望の非吸着性、吸着性、および/または触媒作用をもった被膜をつくるようにはうまく被覆できなかった。さらに、1インチ当たり600個より高い細孔密度をもったセラミックスおよび金属の基質は、両方とも現在までこのような実質的に均一な層で被覆することはできなかった。
【0005】
従来法の金属箔の基質
下記の公刊された特許出願および特許は本発明方法によって被覆できる従来法の金属箔の基質の種々の種類の例である。
【0006】
特許文献2は金属の基質およびその製造法に関する。この金属の基質は触媒の被膜を担持するのに有用であることが示されている。金属箔の幅の広いシートを直列に配列された4個のハニカム状のマトリックスの外周面の周りに連続して巻き付けて中間の管をつくり、これによって部分アセンブリーをつくる。蝋付け用の充填材料を該部分アセンブリーの外周面の周りにその端の部分の所で巻き付ける。そして外側の管の中にこの部分アセンブリーを挿入しコーキングを行って外径を減少させる。その後で、真空中で熱加工して波状のシートと平らなシートを拡散接合させてハニカム状のマトリックスと中間の管をつくる。次に中間の管と外側の管を互いに蝋付けする。
【0007】
特許文献3および4は、自動車の排ガス精製用の金属箔の担体およびその製造法に関する。この担体は厚さ8〜25μmの波形の金属箔から構成された薄い金属箔とそれに蝋付けされた平らな金属箔とからつくられ、該平らな金属箔の少なくとも70%は該薄い箔の厚さの1.5〜4倍の厚さをもっている。ハニカム・ユニットは波形の金属箔および平らな金属箔からつくられ、粒径がハニカム・ユニットをつくっている金属箔の厚さの4.5倍よりも大きくない蝋付け用粉末によって蝋付けされている。
【0008】
特許文献5はハニカム構造体の胴部およびその製造法に関する。ハニカム構造体の胴部は第1および第2の金属箔を含み、その金属箔の互いに蝋付されたた連結点の厚さは0.05mmよりも薄い。この連結点は蝋付け媒体で充填された楔形部分をつくっている。金属箔の連結部の厚さは50μmよりも薄い。
【0009】
特許文献6は、ニッケルをベースにし17〜23重量%のクロム、2〜10重量%の珪素、18〜20重量%の鉄および0.5重量%未満の硼素を含む蝋付け材料を用いて蝋付
けされた金属箔の複合体に関する。この金属箔のアルミニウム含量は少なくとも6重量%である。この金属箔は層状に配置されるかおよび/または層状に巻き付けられてハニカム構造体の胴部をつくっている。
【0010】
特許文献7は、排ガス系、特にディーゼルエンジンのような内燃機関の排ガス系に主として使用されるハニカム構造体の胴部に関する。このハニカム構造体の胴部は、その軸の長さ方向の部分に亙って延びた金属層の滑らかな部分によって取り囲まれている。この層はハニカム構造体の胴部と一体となっており、ハニカム構造体の胴部とジャケット管との間の軸方向の部分区域の中に配置されている。
【0011】
特許文献8は、粒子フィルターおよび該フィルターの製造法に関する。この粒子フィルターは入口と出口をもった流体の通路を規定する壁を有する金属箔を具備している.第1の通路は第1の端の側に開いた入口の断面をもっている。第2の通路は入口の断面に実質的に対応した開いた出口の断面をもっている。第1の通路の壁の一つは第2の通路へと導かれるフィルターの通過孔をもっている。第2の端の側へ向かった入口の断面に相対する第1の通路の蓋は流体に対して第1の通路を孤立させている。金属箔を巻き付けるか積み重ねて反対方向に向った第1および第2の通路がつくられる。
【0012】
特許文献9は、流体を透過する通路を多数備えたハニカム構造体の胴部の製造法に関する。多数の少なくとも部分的に構造をもったシートの金属層から積層物をつくる。曲げ線の周りに各積層片を折り曲げ、曲がった第1の端の区域および第2の端の区域を有する金属シートのパックをつくる。金属シートのパックは成形型の中に配置されたループ成形装置によって保持され、ループ成形装置を回転させて金属シートのパックをループ状にしてハニカム構造体の胴部の中に入れる。
【0013】
特許文献10は、貫通した孔を有する金属箔、およびこのような金属箔からつくられたハニカム構造体の胴部に関する。この金属箔は少なくとも二つの交叉した構造を有し、この構造は仮想的な表面から間隔を空けて配置され交叉した区域を規定している。この少なくとも二つの交叉した構造は交叉区域において部分的に互いに重なり合い、交叉区域の中に少なくとも一つの貫通した孔をもつようにつくられている。
【0014】
特許文献11は、排ガス処理触媒用のハニカム構造体の胴部に関する。このハニカム構造体の胴部は流体が交叉して流れる通路をもった取込み区域および排出区域において熱伝導率が減少している。該胴部は流入および流出区域の近くに配置された熱伝導率が減少した区画を含んでいる。該胴部は少なくともいくつかの通路の壁の中につくられた凹みをもっている。
【0015】
特許文献12は、セラミックスおよび/または金属材料の押出されたハニカム構造体の胴部に関する。この胴部は、互いにほぼ平行に延びた仕切りによって互いに分離された多数の導通管をもっている。この仕切りは、胴部の断面から見て分かるように、少なくとも外側の区域において半径方向に剛性をもった構造および/または周方向に延びた剛性をもった支持物をつくらないような配置および形をもっている。
【0016】
特許文献13は、触媒コンバータの担体の胴部として使用される電気的に加熱し得るハニカム構造体の胴部に関する。この胴部は巻き付け、積層化、または他の方法で層状にされたシート金属を含み、流体はこのシートに沿って主要方向に流れることができ、該層の少なくともいくつかは構造をもっている。少なくとも一つの層は該胴部の中における電気伝導経路を長くするかおよび/または狭くするための孔を有している。一つのシートの金属層は高くなった位置にあり、持ち上がったおよび落ち込んだ区域を有する周期的な、波形の、或いは台形の構造をしている。
【0017】
特許文献14は、触媒の担体胴部として有用なハニカム構造体の胴部に関する。該胴部は流体が流れ得る多数の通路の壁をつくる少なくとも部分的に構造をもった金属シートを含んでいる。シートのいくつかは頂上、谷間(troughs)、および与えられた波の高さを有する主要な波状構造をもっている。頂上および/または谷間は多数の逆転した区域をもち、その高さは最大でも与えられた波状構造の高さに等しい。
【0018】
特許文献15は、セラミックスの触媒材料で被覆するための金属の担体の箔に関する。この箔は好ましくは電鋳され、その中につくられた多数の微小な孔をもっている。
【0019】
特許文献16は、高温耐性をもった鋼のシートを含む排ガス用触媒の金属の担体に関し、該シートは与えられた排ガスの方向において排ガスを透過し得る多数の細孔をつくっている。この鋼のシートの中には与えられた排ガスの方向を実質的に横切る方向にスリットがつくられている。
【0020】
従来法における基質被覆システムおよび方法
下記の特許文献はセラミックスおよび/または金属の箔を含んで成る基質を被覆する従来法のシステムおよび方法の例である。
【0021】
特許文献17は中空のモノリスの基質に触媒を被覆するシステムに関する。被覆用のスラリの浴を含む容器に基質を浸漬することにより触媒材料を基質に被覆する。次いで、部分的に浸漬された基質を真空をかける。真空の強さおよび真空をかける時間は、被覆用のスラリが浴から中空の基質の内部にある多数の通路を通って上方に引き込まれるのに十分な値である。浴から基質を取り出した後、これを180°回転させる。被覆用のスラリが基質の通路の内部に分布しその中に均一な輪郭をもった被膜をつくるのに十分な強さと時間で加圧した空気を吹付ける。
【0022】
特許文献18は、被覆媒体を用い多数の通路を有する基質を被覆する方法に関する。被覆媒体の浴を含む容器の中に基質を部分的に浸漬し、この際浸漬された基質の端の上方にある被覆媒体の容積が所望のレベルまで基質を十分に被覆するようにする。次に被覆媒体が浴から各通路の中に上方に引き込まれ均一な輪郭をもった被膜がつくられるのに十分な強さと時間で真空をかける。
【0023】
特許文献19は、貴金属を正確な量で含む触媒コンバータの基質を被覆する方法および装置に関する。相対する開いた端を有する処理すべき中空の基質を、貴金属を含む予め定められた量のスラリ材料がまえもって導入されている浸漬用の平皿の中に基質の一端を沈めて最初の位置から移動させる。基質の一端をスラリの中に入れ、他の端に真空をかけてスラリの全量を浸漬用の平皿から吸い上げ基質の下方の部分を被覆する。その後で基質を浸漬用の平皿から引き上げる。さらに真空をかけ続け、基質のすべての内部表面に均一に被膜を分布させるように操作を行う。次いで基質を回転させ、再び基質を引き下げて他の端を他の予め定められた装入量のスラリの中に浸漬し、上記操作を繰り返す。次いで基質を再び浸漬用の平皿から持ち上げる。再び真空をかけ続け、予め定められた時間の間この操作を行い、確実に被膜が均一に分布するようにする。次に基質を再び元の位置に回転させ、最初の位置に戻す。
【特許文献1】米国特許第5,958,829号明細書
【特許文献2】公開された米国特許出願第20030152795号明細書
【特許文献3】公開された米国特許出願第20030152794号明細書
【特許文献4】公開された米国特許出願第20010016266号明細書
【特許文献5】米国特許第6,598,782号明細書
【特許文献6】米国特許第6,589,670号明細書
【特許文献7】米国特許第6,458,329号明細書
【特許文献8】米国特許第6,576,032号明細書
【特許文献9】米国特許第6,449,843号明細書
【特許文献10】米国特許第6,316,121号明細書
【特許文献11】米国特許第6,254,837号明細書
【特許文献12】米国特許第5,866,230号明細書
【特許文献13】米国特許第5,643,484号明細書
【特許文献14】米国特許第5,130,208号明細書
【特許文献15】米国特許第4,822,766号明細書
【特許文献16】米国特許第4,753,918号明細書
【特許文献17】米国特許第6,478,874号明細書
【特許文献18】米国特許第5,866,210号明細書
【特許文献19】米国特許第4,609,563号明細書
【発明の開示】
【0024】
本発明の目的
本発明の目的は、基質、特に金属箔であって多数の開口部および/または箔の表面から上方へ延びたタブを含む基質を実質的に均一に被覆するシステムおよび方法を提供することである。
【0025】
本発明の他の目的は、セラミックスおよび金属の基質、特に奇妙な形の基質、細孔密度が高い、例えば細孔密度が1平方インチ当たり700個より高い基質、非対称的な基質、円錐形の基質、軸方向に沿って孔をもった基質などを実質的に均一に被覆するシステムおよび方法を提供することである。
【0026】
本発明の上記目的および他の目的は、下記に説明するように本発明を実施することによって達成される。
【0027】
本発明の概要
本発明の被覆された基質は実質的に均一な少なくとも一つの層の被膜を含んで成り、該被膜は非吸着性の非触媒材料;吸着性の非触媒材料;触媒材料;またはこれらの材料の二つまたはそれ以上の混合物であることができる。また本発明は細孔の壁の所またはその中に位置した開口部および/または波形起伏および/またはタブを含んで成る実質的に均一に被覆されたモノリスに関する。さらに本発明は奇妙な形をした、非対称な形の、或いは細孔密度が1平方インチ当たり700個より高い実質的に均一に被覆されたモノリスに関する。さらに本発明はこのような実質的に均一に被覆された基質およびモノリスを製造する方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
基質は従来法ではしばしばモノリスの担体とも呼ばれてきたが、多数の入口、多数の出口、多数の基質の壁;および基質の壁によって規定される多数の通路を含んで成り、該通路は直接または間接的に少なくとも一つの出口から延び;基質の壁には隣接した通路と連絡した多数の開口部が存在している。典型的には通路は壁によって規定されているが、この壁の上には被覆材料が均一に沈積し、該通路を通って流れる排ガスが被覆材料と接触するようになっている。典型的には通路の壁は連続的であり、穿孔または壁の表面からの延長部、例えばタブは存在しない。通路は任意の形の断面および大きさ、例えば台形、矩形、正方形、正弦波の形、六角形、卵形、円形などをしていることができる。基質は好ましくはハニカム構造体の胴部をもっている。
【0029】
本発明の第1の具体化例においては、基質は典型的には厚さ約5〜約100μmの一つまたはそれ以上の金属箔のシートを含んで成っている。典型的にはこの箔は従来法の金属箔の基質をつくるのに用いられたのと同じ金属または金属合金、例えばチタン、ステンレス鋼、および鉄、ニッケル、クロムおよび/またはアルミニウムを含む合金を含んで成っている。金属箔は一つまたはそれ以上の形で使用することができる。例えば金属箔は構造をもたない平らな箔であることができ、また構造をもった箔、例えば波形の箔を含む起伏(corrugations)、うねり(undulations)、台形の構造、隆起(ridges)などを含む箔であることができる。ここで起伏は蛇行状にまたは「ジグザグ」な形で配置されている。また金属箔は多数の孔、例えば穿孔をもった箔であることができ、また起伏と多数の開口部をもった箔であることもでき、さらに箔の表面から上方に延びた「タブ」を有する箔であることもでき、またいろいろな特徴の組み合わせ、例えば起伏、多数の開口部、および多数のこのような「タブ」などの組み合わせをもった箔であることもできる。
【0030】
多数の開口部をもった金属箔の基質の場合、本発明の目的に対してはこのような開口部はスリット、穿孔、概して多角形の形の孔、概して卵形の孔、および/または概して円形の孔、或いは上記の型の開口部を二つまたはそれ以上組み合わせた形の孔であることができるものと了解されたい。好ましくは、開口部は概して卵形または円形の孔であり、直径は約2〜約10mm、好ましくは4〜8mmである。このような開口部は典型的には箔の面積の約10〜約80%、好ましくは20〜60%を占めている。
【0031】
基質はハニカム構造をもったセラミックスまたは金属のモノリスを含んで成っている。モノリスが金属のモノリスの場合、該金属は本発明の第1の具体化例の基質に関して説明したのと同じ材料から成り、同じ特徴をもっていることができる。基質がセラミックスの場合、それは耐火材料、例えばコージエライト、コージエライト−アルミナ、窒化珪素、炭化珪素、ジルコン・ムライト、スポジュメン、アルミナ−シリカ・マグネシア、ジルコン・シリケート、珪線石、珪酸マグネシウム、ジルコン、葉長石、α−アルミナ、およびアルミノ珪酸塩であることができる。本発明の第2の具体化例に対する好適なセラミックスはコージエライトを含んで成っている。
【0032】
第1または第2の具体化例の基質の上に少なくとも一つの実質的に均一な被覆層をつくるのに用いられる被覆材料は、通常の種類の当業界に公知のものである。典型的にはこの被覆材料は固体分含量が約20〜60重量%、好ましくは30〜45重量%の水性スラリの形で用いられるであろう。被覆材料は非吸着性の非触媒材料;吸着性の非触媒材料;触媒材料;またはこれらの材料の二つまたはそれ以上の混合物であることができる。
【0033】
非吸着性の非触媒材料にはジルコニア、シリカ、シリカ−アルミナ、およびアルミナが含まれる。
【0034】
吸着性の非触媒材料にはゼオライト、活性炭素、アルカリ金属酸化物、およびアルカリ土類金属酸化物が含まれる。
【0035】
触媒材料の例には従来法において一般的に三元変換触媒と呼ばれていた材料が含まれる。何故ならこれらの材料は排ガス流を処理し一酸化炭素を二酸化炭素に、未燃焼の炭化水素を二酸化炭素と水に、また窒素酸化物を窒素に変換する能力をもっているからである。典型的には三元変換触媒は耐火金属酸化物の担体の上に配置した1種またはそれ以上の白金族金属を含んで成っている。適当な白金族金属には白金、パラジウム、ルテニウムなどが含まれる。
【0036】
耐火金属酸化物は高表面積の金属酸化物、例えばアルミナ、チタニア、ジルコニア、およびアルミナと1種またはそれ以上のチタニア、ジルコニアおよびセリアとの混合物を含んで成っている。耐火金属酸化物は混合酸化物、例えばシリカ−アルミナ、無定形または結晶性のアルミノ珪酸塩、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−クロミア、アルミナ−セリアなどから成っていることができる。好適な耐火金属酸化物はBET表面積が約60〜約300m/gのγ−アルミナを含んで成っている。
【0037】
典型的には上記触媒材料に酸素貯蔵成分も存在し得る。好適な酸素貯蔵成分はセリウムおよびプラセオジムから成る群から選ばれる1種またはそれ以上の金属の酸化物を含んでいる。酸素貯蔵性を示し得る他の酸化物には鉄、ニッケル、コバルト、希土類金属、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の酸化物が含まれる。通常の促進剤および安定剤、希土類金属酸化物なども被覆材料の中に存在することができる。
【0038】
広範囲に亙る適当な触媒材料、このような材料の製造法、およびこのような材料を基質の上に被覆する方法に関しては極めて多数の従来法が存在している。下記の特許および公開された特許出願はこのような従来法の例である:米国特許第4,134,860号明細書;同第4,438,219号明細書;同第4,171,288号明細書;同第4,714,694号明細書;同第4,727,052号明細書;同第4,708,946号明細書;同第4,923,842号明細書;同第4,808,564号明細書;同第4,438,219号明細書;同第4,591,580号明細書;同第4,780,447号明細書;同第4,965,243号明細書;同第4,504,598号明細書;および同第4,587,231号明細書。さらに最近になって発表された米国特許には米国特許第5,202,300号明細書;同第5,462,907号明細書;同第5,597,771号明細書;同第5,627,124号明細書;同第5,968,861号明細書;同第6,044,644号明細書;同第6,080,377号明細書;同第6,150,291号明細書;同第6,171,556号明細書が含まれる。さらにまた公開された米国特許出願第20030166466、ヨーロッパ特許第0 765 189号明細書および国際公開第99/55459号パンフレットも含まれる。
【0039】
基質上の被膜は基質の表面に実質的に均一に被覆された少なくとも一つの層を含んで成っている。本発明の方法の段階を単に所望の回数だけ繰り返すことにより同じまたは異なった被覆材料の多数の実質的に均一な層を容易に得ることができる。さらに本発明方法を用いれば二つまたはそれ以上の隣接した区域として基質の上に実質的に均一な層を沈積させ、一つの区域の被覆材料が隣接した区域の被覆材料の組成物と異なるようにすることができる。
【0040】
本発明の目的に対して「実質的に均一な」という言葉は少なくとも一つの実質的に均一な層の厚さが基質全体に亙って約10%以下、好ましくは5%以下しか変化しないことを意味するものと理解されたい。典型的には実質的に均一な各被覆層は厚さが約10〜約50μm、好ましくは20〜40μmである。
【0041】
本発明の被覆法は本発明の第1の具体化例並びに第2の具体化例の被覆された基質の製造に適用することができる。被覆過程は次の段階を含んでいる:
(a)基質をその長さの少なくとも約30%、好ましくは少なくとも50%まで、所望の材料のスラリを含む容器の中に浸漬し;
(b)段階(a)から得られる基質を遠心分離することにより、被覆材料を基質の上に実質的に均一な層として分布させ、基質の上に存在することが望まれるよりも過剰の被覆材料を除去し;
(c)段階(b)から得られる被覆された基質を乾燥させ;
(d)段階(c)から得られる乾燥した被覆された基質をカ焼する。
【0042】
典型的には段階(c)は約70〜約180℃、好ましくは80〜120℃の温度において約1〜約60分間、好ましくは15〜30分間行われる。段階(d)は典型的には温度約400〜約700℃、好ましくは450〜550℃において、約20分〜約5時間、好ましくは30分〜3時間の間行われる。
【0043】
必要に応じ、段階(a)において下記の変形を行うことにより2種またはそれ以上の異なった被覆材料を実質的に均一に基質の上に被覆することができる:即ち基質を被覆材料の第1のスラリの中にその長さの約30%〜約70%まで浸漬し、しかる後基質を再び
浸漬して残りの長さの部分を他の被覆材料の1種またはそれ以上の他のスラリの中に浸漬する。
【0044】
本発明の被覆方法は、直径が約2〜約6インチ、長さが約1.7〜約4インチの基質を実質的に均一に被覆するのに使用されてきた。
【0045】
本発明の被覆方法は基質の上に実質的に均一な被覆層を所望の数だけ被覆するのに役立てることができる。段階(a)および(b)は必要に応じ同じまたは異なったスラリを用い所望の回数だけ繰り返すことができる。好ましくは、各被覆操作の後で被覆した基質を乾燥させ、最も好ましくは各被覆操作の後で乾燥とカ焼の両方を行う。
【0046】
一般に段階(a)の後で、遠心分離にかける基質の軸を遠心分離の回転の半径方向の軸に対して平行に配向させる。段階(b)における遠心分離の速度および時間は種々の因子、例えば被覆材料のスラリの粘度および固体分含量、基質の大きさと長さ、細孔密度、即ち断面1平方インチ当たりの細孔の数などに依存するであろう。しかし一般に、遠心分離の回転速度は約10〜約1600rpm、好ましくは20〜150rpmであり、操作時間は約4〜約30秒、好ましくは5〜20秒であることが大部分の基質および大部分の被覆材料に対して理想的である。
【0047】
遠心分離は比較的簡単な設計の遠心分離器により容易に行うことができる:即ち遠心分離器の外殻はステンレス鋼の槽から成り、その底部は漏斗の形をしている。この漏斗の端には一定の長さのパイプと連絡した開口部があり、このパイプは、遠心分離が終わった後、槽からスラリの媒質および過剰のスラリを容易に取り出すための簡単なオン・オフ式の弁を含んでいる。槽の上方部分にはローターが取り付けられ、その端には多数の孔を有する籠、例えば針金の籠がある。ローターは均一にバランスが保たれていなければならない。即ち籠は例えばローターの端から互いに均一の間隔をもって正反対の側に取り付けられ、ほぼ同じ大きさおよび重さの多数の基質、例えばハニカム構造体を望ましくは同時に遠心分離にかける限り反対錘りを必要としないものでなければならない。
【0048】
上記のようにして所望のスラリに浸漬した基質を籠の内部に固定し、その軸を遠心分離器の回転の半径方向の軸に対して平行に配置する。ローターは不均衡を最低限度に抑制するためにローターの中心に取り付けられた電気モーターによって駆動される。遠心分離器の速度および操作時間は電気制御ユニットによって調節し制御することができ、このユニットは特定のロットの基質が同じ条件で遠心分離を受けるようにプログラムすることができる。
【0049】
図面の詳細な説明
図1において、基質10(下方の基質)は多数の穿孔12を含む平らな金属の箔であり、基質14(上方の基質)は起伏16および多数の穿孔18を含む波形の金属箔である。図1Aには基質10の詳細がもっと明瞭に示されており、図1Bには基質14の詳細がもっと明瞭に示されている。
【0050】
図2は平らな金属箔の基質21が多数の起伏23および波形の金属箔の基質の表面の上方に延びた多数のタブ25をもった波形の金属箔の基質と組み合わされたハニカム構造体20の断面図である。
【0051】
図2Aはハニカム構造体の胴部20の一区画を通る流れの層状の(laminar)輪郭および境界部の輪郭を示す。
【0052】
図2Bは多数の穿孔27、および基質26の表面の上方に延びた多数のタブ29を含む金属箔の基質26の顕微鏡写真である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】二つの穿孔された箔の基質の立面図。下方の金属箔の基質は穿孔された平らな箔であり、上方の金属箔の基質は波形の穿孔された箔である。
【図1A】図1に示した下方の箔の顕微鏡写真。
【図1B】図1に示した上方の箔の顕微鏡写真。
【図2】平らな金属箔の基質が、多数の起伏および波形の金属箔の基質の表面の上方に延びた多数のタブをもった波形の金属箔の基質と組み合わされたハニカム構造体の胴部の断面図。
【図2A】図2に示した構造体の胴部の一区画を通る流れの特徴を示す図。
【図2B−3】図2に示した金属箔の基質の他の具体化例の顕微鏡写真。図2Bおよび図3においては金属箔の基質は多数の穿孔、並びに基質の表面の上方へと延びた多数の「タブ」をもつように示されている。
【図4】三つの異なったハニカム構造体の断面図。構造体Aは従来のハニカム構造体;構造体Bは図2に示した基質からつくられたハニカム構造体;構造体Cは図2Bおよび図3に示した基質からつくられたハニカム構造体である。
【図5】図1〜3の一つまたはそれ以上に示された金属箔の基質からつくり得る種々の型および大きさをもった筒状のハニカム構造体の胴部の写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の入口;多数の出口;基質の多数の壁;および該基質の壁によって規定される多数の通路を含む基質を含んで成り、該通路は少なくとも一つの出口から直接または間接的に延び出し;基質の壁には隣接した通路の間を連絡する多数の開口部および/または波形起伏および/またはタブが存在し、該基質は非吸着性の非触媒材料;吸着性の非触媒材料;触媒材料;およびこれらの二つ以上の混合物から成る群から選ばれる一つの被覆材料の実質的に均一な少なくとも一つの層を含んでいることを特徴とする被覆された基質。
【請求項2】
該基質は金属箔を含んで成ることを特徴とする請求項1記載の被覆された基質。
【請求項3】
開口部はスリット、穿孔、概して多角形の形をした孔、概して卵形をした孔、および/または概して円形をした孔を含んで成ることを特徴とする請求項1記載の被覆された基質。
【請求項4】
基質は、開口部に隣接して箔の表面から上方に延びた多数のタブを含んでいることを特徴とする請求項1記載の被覆された基質。
【請求項5】
基質の表面は波形になっていることを特徴とする請求項1記載の被覆された基質。
【請求項6】
非吸着性の非触媒材料は、ジルコニア、シリカ、シリカ−アルミナ、およびアルミナから成る群から選ばれる酸化物を含んで成っていることを特徴とする請求項1記載の被覆された基質。
【請求項7】
吸着性の非触媒材料はゼオライト、活性炭素、アルカリ金属酸化物、および/またはアルカリ土類金属酸化物を含んで成っていることを特徴とする請求項1記載の被覆された基質。
【請求項8】
触媒材料は三元変換触媒を含んで成っていることを特徴とする請求項1記載の被覆された基質。
【請求項9】
被覆された基質は筒状の部材の内部に配置され、ハニカム構造体の胴部をつくっていることを特徴とする請求項1記載の被覆された基質。
【請求項10】
被膜は基質の上に二つまたはそれ以上の隣接した区域として存在し、一つの区域の被覆材料の組成は隣接した区域の被覆材料の組成と異なっていることを特徴とする請求項1記載の被覆された基質。
【請求項11】
1種またはそれ以上の被覆材料から成る多数の実質的に均一な層を含んで成ることを特徴とする請求項1記載の被覆された基質。
【請求項12】
基質上に非吸着性の非触媒材料;吸着性の非触媒材料;触媒材料;又はこれらの二つ以上の混合物の実質的に均一な少なくとも一つの層を被覆する方法において、該方法は
(a)所望の材料のスラリを含む容器の中に基質をその長さの少なくとも約30%まで浸漬し、
(b)段階(a)から得られる基質を遠心分離することにより、該材料を実質的に均一な層として基質の上に分布させ、基質の上に存在することが望まれるよりも過剰の該材料を除去し;
(c)段階(b)から得られる被覆された基質を乾燥させ;
(d)段階(c)から得られる乾燥した基質をカ焼する段階を含んで成ることを特徴と
する方法。
【請求項13】
段階(a)において、基質をその長さの少なくとも約30%までスラリの中に浸漬し、その後で基質の残りの長さの部分が一つまたはそれ以上の他のスラリの中に1回またはそれ以上浸漬されるように基質を再び浸漬することを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
基質は多数の入口;多数の出口;基質の多数の壁;および該基質の壁によって規定される多数の通路を含む基質を含んで成り、該通路は少なくとも一つの出口から直接または間接的に延び出し;基質の壁には隣接した通路の間を連絡する多数の開口部および/または波形起伏部および/またはタブが存在することを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項15】
被膜を基質の上に二つまたはそれ以上の隣接した区域として被覆し、一つの区域の被覆材料の組成が隣接した区域の被覆材料の組成と異なるようにすることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項16】
請求項12記載の方法であって、各層を基質に被覆した後に段階(a)〜(c)を繰り返すことにより多数の実質的に均一な層を基質の上に被覆することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項12記載の方法であって、各層を基質に被覆した後にさらにまた段階(d)を繰り返すことを特徴とする方法。

【図1】
image rotate

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2−2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2007−504935(P2007−504935A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525485(P2006−525485)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/028866
【国際公開番号】WO2005/025747
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(591044371)エンゲルハード・コーポレーシヨン (43)
【氏名又は名称原語表記】ENGELHARD CORPORATION
【Fターム(参考)】