説明

被覆層を有する粒子の製造方法

【課題】芯材の表面に被覆層が均一に形成された粒子を高い量産性で容易に製造し得る方法を提供する。
【解決手段】被覆層を有する粒子の製造方法は、芯材粒子が媒体に分散してなる母液20を循環させつつ、循環経路の一部に設けられた強分散装置13に被覆層形成用の反応物を供給し、該強分散装置13において該母液20を強分散させた状態下に該芯材粒子と該反応物とを反応させて、該芯材粒子の表面に被覆層を形成する。複数の強分散装置13が、循環経路に対して並列に又は直列に設けられていることが好ましい。また時間の経過と共に反応物の供給量及び/又は濃度を漸減させることも好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯材粒子の表面が被覆層で被覆された粒子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は先に、芯材粒子の表面に酸化錫層が形成された導電性粉末及びその製造方法を提案した(特許文献1参照)。同文献で提案されている製造方法は、以下の工程を含むものである。先ず芯材を水中に分散させたスラリーが仕込まれた反応槽中に水溶性錫化合物を添加後、酸又はアルカリを用いて中和反応を行う。これによって、芯材の表面に酸化錫水和物からなる被覆層が形成された導電性粉末前駆体を、反応槽中に生成させる。この前駆体を含むスラリーの少なくとも一部を、中和の際又は中和の後に、反応槽とは別に設置した強分散装置において強分散処理し、強分散処理した液を反応槽のスラリー中に戻す。その後、スラリー中の前駆体を洗浄・乾燥した後、非酸化性雰囲気中200〜1200℃で焼成する。これによって目的とする酸化錫層が形成された導電性粉末が得られる。
【0003】
上述の方法で製造された導電性粉末は、導電性が高く、また分散性に優れ、良好な白色度を有するものとなる。したがって、この導電性粉末を、例えば紙、プラスチック、ゴム、樹脂、塗料等に配合することで、これらの材料からなる製品に導電性を容易に付与することができる。しかも、これらの材料の色が損なわれることもない。
【0004】
しかし、この種の導電性粉末に対する要求は日増しに高くなっており、更に分散性が高く、且つ一層均質なものが望まれている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−108734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は、前述した従来技術の粒子よりも更に性能が向上した被覆層を有する粒子を製造し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、芯材粒子が媒体に分散してなる母液を循環させつつ、循環経路の一部に設けられた強分散装置に被覆層形成用の反応物を供給し、
該強分散装置において該母液を強分散させた状態下に該芯材粒子と該反応物とを反応させて、該芯材粒子の表面に被覆層を形成することを特徴とする、被覆層を有する粒子の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、芯材の表面に被覆層が均一に形成された粒子を高い量産性で容易に製造することができる。本発明の方法によって製造された粒子は、凝集の程度が低く、分散性の高いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明の一実施形態として、以下の説明においては、水酸化錫で被覆された粒子を製造する方法を例に挙げる。この粒子は、その後の工程で焼成されて、最終目的物である酸化錫で被覆された導電性粒子となる。図1には、該粒子の製造に好適に用いられる製造装置の一例の模式図が示されている。
【0010】
図1に示す製造装置10は、母液槽11、母液槽11の底部から延びる第1循環配管12、第1循環配管12の出口側に接続された強分散装置13、強分散装置13の出口側に接続され、且つ母液槽11へ帰還する第2循環配管14とを備えている。これらの部材によって、装置10には循環経路が形成される。第1循環配管12の途中には第1ポンプ15が設置されている。また第2循環配管14の途中には第2ポンプ16が設置されている。
【0011】
母液槽11内には攪拌翼11aが設置されている。攪拌翼11aはシャフト11bを介して槽外に設置されたモータ11cに接続している。攪拌翼11aは、モータ11cを駆動源として一定方向に回転するようになっている。
【0012】
強分散装置13内には、攪拌部13aが設置されている。攪拌部13aはシャフト13bを介してモータ13cに接続している。攪拌部13aは、モータ13cを駆動源として一定方向に回転するようになっている。更に強分散装置13には、被覆層形成用の反応物を供給する供給部13dが設けられている。強分散装置13としてはその容積が、母液層11の容積よりも十分に小さいものが用いられる。
【0013】
以上の装置10を用いた粒子の製造方法について説明すると、先ず母液槽11内に母液20を充填する。母液20は、芯材粒子が媒体に分散してなるものである。媒体としては、芯材粒子の種類や、被覆層を形成するときの反応等に応じて適切な液体が選択される。一般的には水が用いられる。
【0014】
芯材粒子としては、その表面に水酸化錫の被覆層を形成することが可能なものが用いられる。芯材粒子の材質としては、例えば、二酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ、二酸化珪素、雲母、タルク、ホウ酸アルミニウム、酸化亜鉛(ZnO)及びチタン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。これらの芯材粒子の形状は、目的とする被覆粒子の具体的な用途に応じて適切な形状が選択される。例えば球場、フレーク状、針状等の形状のものが用いられる。
【0015】
芯材粒子の粒径は、最終目的物である酸化錫被覆導電性粒子の具体的な用途に応じて適切な値が選択される。例えば芯材粒子はその平均粒径D50が好ましくは0.01〜100μm、更に好ましくは0.1〜10μmである。芯材の平均粒径がこの範囲内にあれば、最終目的物である酸化錫被覆導電性粒子が樹脂等中に分散し易いものとなるので好ましい。本明細書において平均粒径D50とは、レーザー回折散乱法で求められる体積平均粒径をいう。
【0016】
母液20における媒体と芯材粒子との配合比率は、媒体1リットルに対して芯材粒子が60〜150g、特に80〜120gであることが好ましい。両者の配合比率がこの範囲内にあると、芯材粒子の表面に水酸化錫の均一な被覆層が容易に形成されるからである。
【0017】
母液20中には、芯材粒子に加えて水溶性錫化合物が配合されていることが好ましい。水溶性錫化合物は、被覆層である水酸化錫の層を形成するための反応物の一つである。水溶性錫化合物としては、芯材粒子の表面に水酸化錫の被覆層を形成し得るものが用いられる。そのような水溶性錫化合物としては、錫酸ナトリウム及び四塩化錫等が挙げられる。これらの水溶液錫化合物は水への溶解が容易なので好適に用いられる。
【0018】
母液20中における媒体と水溶性錫化合物との配合比率は、媒体の重量に対する水溶性錫化合物中のSn量が1〜20重量%、特に3〜10重量%であることが好ましい。両者の配合比率がこの範囲内にあると、芯材粒子の表面に水酸化錫の均一な被覆層が容易に形成されるからである。
【0019】
母液槽11内に所定量の母液20が充填されたら、母液槽11の攪拌翼11aの回転を開始して芯材粒子の沈降を防止し、母液20を均質なものとする。次いで、第1ポンプ15、強分散装置13及び第2ポンプ16を起動して、装置10に形成された循環経路内に母液20を通し、これを循環させる。
【0020】
循環経路内での母液20の循環が安定したら、強分散装置13の供給部13dを通じて強分散装置13内に、被覆層形成用の反応物を供給する。強分散装置13内に供給する反応物として、本実施形態においては酸又はアルカリを用いる。酸及びアルカリは、母液20に配合されている水溶性錫化合物を中和させて、芯材粒子の表面に水酸化錫の層を生成させる。
【0021】
酸又はアルカリによる水溶性錫化合物の中和反応は、非常に迅速に進行する。したがって、例えば非常に大容量の反応槽を用い、これに芯材粒子が分散した水溶性錫化合物の水溶液を充填しておき、その中に酸又はアルカリを添加して中和反応を起こさせようとすると、反応槽内を攪拌したとしても、酸又はアルカリを添加した部分において中和反応が局所的に生じてしまい、芯材粒子の表面に水酸化錫の被覆層を均一に形成することができない。また、水酸化錫の被覆層は軟質のものなので、中和反応の最中に被覆層どうしが付着して粒子の凝集が起こってしまう。これに対して本実施形態によれば、強分散装置13は、上述のとおり母液槽11よりもはるかに小容量のものであり、しかも母液20を高速攪拌するものであるから、局所的な中和反応が生ずることが防止され、芯材粒子の表面に水酸化錫の被覆層を均一に形成することができる。また、芯材粒子が極めて分散した状態になるので、粒子の凝集を効果的に防止することができる。このことは、特に芯材粒子として凝集の起こりやすい粒子である小粒径の粒子(例えば粒径が0.01〜1μmのもの)を用いた場合に有効である。しかも母液20は、循環経路内を循環しているので、強分散装置13に供給する酸又はアルカリの量及び/又は濃度を低くして中和反応を徐々に行うことができる。それによっても芯材粒子の表面に水酸化錫の被覆層を均一に形成することができ、また粒子の凝集を防止できる。
【0022】
背景技術の項で述べた本出願人の先の出願に係る特開2005−108734号公報においては、本実施形態と異なり、母液槽に芯材粒子、水溶性錫化合物、及び酸又はアルカリを添加して中和反応を起こさせ、中和後の液を強分散装置で分散させている。この中和反応は、上述のとおり非常に迅速に進行するので、強分散装置においては中和反応は実質的に起こらない。したがって、強分散装置で液を分散させたとしても、それに先立つ母液層において中和反応が既に完結していることから、水酸化錫の被覆層の不均一な形成や、粒子の凝集を確実に防止することは容易でない。また、母液槽中に強分散装置を設置し、該強分散装置によって液を強分散しながら該母液槽中で中和反応を行った場合であっても、一般に強分散装置の容積に比して母液槽の容積の方が非常に大きいので、反応は不均一に進行し、水酸化錫の被覆層の不均一な形成や、粒子の凝集を確実に防止することはやはり容易でない。要するに、本実施形態では母液槽とは独立した強分散装置が設置された容器内において中和反応を行うのに対し、前記の特開2005−108734号公報に記載の技術は、母液槽において中和反応を行う点で、本実施形態と全く相違するものである。
【0023】
水溶性錫化合物と酸又はアルカリとの反応は強分散装置13において瞬時に完了するので、強分散装置13に供給された酸又はアルカリが未反応のまま循環経路中に流出することや、循環する母液中に酸又はアルカリが蓄積して、強分散装置13以外の箇所において中和反応が生ずることはほとんど起こり得ないか、又は起こったとしても、目的物の品質に影響を及ぼさない程度でしかない。
【0024】
局所的な中和反応が生じることを効果的に防止する観点から、強分散装置13の容積はできるだけ小さいことが好ましい。一方、十分な処理量を確保する観点からは、強分散装置13の容積V2は大きいことが好ましい。これらのバランスを考慮すると、強分散装置13の容積V2は1〜1000cm3、特に10〜500cm3であることが好ましい。
【0025】
同様の観点から、強分散装置13における攪拌部13aによる攪拌速度は5000rpm以上、特に10000rpm以上であることが好ましい。攪拌部13aによる攪拌速度の上限値に特に制限はなく高ければ高いほど好ましいが、16000rpm程度に高速攪拌すれば、局所的な中和反応が生じることを効果的に防止することができる。
【0026】
上述の容積及び攪拌速度を有する強分散装置13として好ましいものとしては、ホモジナイザやビーズミル等が挙げられる。これらのうちホモジナイザは、低コストで実設備に組み込み易いので特に好ましい。
【0027】
強分散装置13内における母液20及び酸又はアルカリの滞留時間は、短ければ短いほど、局所的な中和反応の防止の観点から好ましい。具体的には、母液槽11から流出し強分散装置13に流入する母液20の流速をS1(cm3/min)とし、強分散装置13に供給される酸又はアルカリの速度をS3(cm3/min)とした場合、強分散装置13の容積V2(cm3)との関係で、V2/(S1+S3)の値が1〜60秒、特に30〜60秒であることが好ましい。
【0028】
強分散装置13に流入する母液の量と酸又はアルカリの量との割合は、強分散装置13における局所的な中和反応の防止に関連している。具体的には、強分散装置13に供給される酸又はアルカリの速度S3と、母液槽11から流出し強分散装置13に流入する母液20の流速S1との比であるS3/S1が0.01〜0.05、特に0.03〜0.05となるように両者の速度を調整することが好ましい。換言すれば、単位時間当たりの母液20の供給量に対して、酸又はアルカリの供給量を圧倒的に少なくすることが好ましい。酸又はアルカリの供給量を少なくすることは、局所的な中和反応の防止の点からは非常に有効であるが、その反面、芯材粒子の表面に形成される水酸化錫の被覆層の形成速度の観点からはマイナスに作用する。このマイナスの点を、本実施形態においては、母液20を循環することで解決している。
【0029】
処理量にもよるが、母液20の流速S1が例えば10〜1000cm3/minである場合には、酸又はアルカリの速度S3は0.3〜50cm3/minであることが好ましい。
【0030】
強分散装置13における局所的な中和反応を防止する観点からは、酸又はアルカリの供給量を少なくすることに代えて、又はそれに加えて、供給する酸又はアルカリの濃度を低くすることも有効である。この観点から、酸又はアルカリの濃度は、母液20に含まれる水溶性錫化合物の濃度が上述の範囲であることを条件として、規定度で表して1〜25N、特に5〜20Nであることが好ましい。
【0031】
強分散装置13に供給される酸としては、例えば硫酸、硝酸、酢酸などの水溶液が用いられる。アルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム水溶液やアンモニア水などが用いられる。
【0032】
強分散装置13に供給される酸及びアルカリは連続的でもよく、或いは断続的でもよい。芯材粒子の表面に一層均一な水酸化錫の被覆層を形成する観点からは、酸又はアルカリを連続供給することが好ましい。供給には、例えばプランジャーポンプ等を用いることができる。
【0033】
酸又はアルカリは、循環の時間経過と共にその供給量(供給速度)及び/又は濃度を変化(例えば漸増又は漸減)させてもよい。例えば、供給量を変化させる場合には、容積が数百cm3〜数m3の母液槽11を用いたときには該供給量を0.1〜10L/minの範囲で漸増又は漸減させることができる。一方、濃度を変化させる場合には、1〜50重量%の範囲で漸増又は漸減させることができる。この操作によって、反応の終期における局所的な中和反応を効果的に防止することができる。
【0034】
母液の循環時間に特に制限はなく、所望の厚みの被覆層が形成されるまで循環を行えばよい。本発明者らの検討の結果、循環開始から循環終了までの時間をT(min)としたとき、上述のS1及びV1との関係で、S1T/V1の値が5以上、特に10以上となるように循環を行うことで、満足すべき厚みの被覆層が形成されることが判明した。S1T/V1の上限値は、数百程度であれば満足すべき結果が得られる。
【0035】
本実施形態の変形例として、図2(a)及び(b)に示す実施形態が挙げられる。図2(a)に示す実施形態は、図1に示す装置10において、強分散装置13を複数個用い、それらを循環流路に対して並列に設けた例である。この実施形態によれば処理量の増大を図れる。したがって、この実施形態は、各強分散装置13の容積V2が小さい場合に特に有効である。
【0036】
図2(b)に示す実施形態は、図1に示す装置10における、強分散装置13を複数個用い、それらを循環流路に対して直列に設けた例である。この実施形態によれば、母液の強分散の増強を図ることができるので、母液20の循環の回数を減らすことが可能になる。
【0037】
水酸化錫の被覆層が形成された粒子どうしの凝集を一層効果的に防止する観点から、芯材粒子が分散してなる母液を母液槽11に供給して、該母液を循環するのに先立ち、芯材粒子を分散処理に付すことが好ましい。また、芯材粒子を予め分散処理に付すことによって、装置をスケールアップしても得られる被覆粒子にばらつきが発生しづらく、量産性を高めることができるという利点もある。分散処理は、例えば芯材粒子と水等の媒体とを含むスラリーを、メディアミル又はメディアレスの分散装置によって処理することで行われる。メディアミルとしては、例えばビーズミル、サンドミル、ボールミル等を用いることができる。一方、メディアレスの分散装置としては、ホモジナイザやアルティマイザ等を用いることができる。メディアミル又はメディアレスの分散装置による分散条件は、その種類に応じ、芯材粒子が一次粒子にまで十分に分散するような条件を適宜適用すればよい。例えば芯材粒子の凝集の程度に応じ、1パスの分散処理を行ってもよく、あるいは循環方式で複数パスの分散処理を行ってもよい。具体的には、メディアミルとしてビーズミルを用いる場合、その運転条件として、ジルコニアビーズ(0.3mmφ)を用い、周速8〜12m/s、流量10〜18kg/hにて1〜10パスの分散条件を採用することができる。一方、メディアレスの分散装置としてホモジナイザを用いる場合、その運転条件として、周速4000〜10000rpm、流量5〜20kg/h、パス回数1〜20回の分散条件を採用することができる。
【0038】
以上の方法によって、水酸化錫の被覆層が形成された粒子が得られる。この粒子においては、芯材粒子の表面全域にわたり被覆層が形成されていると共に、被覆層の厚みが均一になっている。また凝集した粒子の数が極めて少なくなっている。その結果、この粒子は、その粒度分布がシャープなものになっている。具体的には、粒度分布の指標であるD50/D90の値が好ましくは0.5〜1となる。
【0039】
このようにして得られた粒子は、反応系から分離され、洗浄及び乾燥工程を経た後に焼成工程に付される。それによって酸化錫で被覆された導電性粒子が得られる。その後、必要に応じて粉砕工程に付され、所望の粒径に調整される。この酸化錫で被覆された粒子においては、焼成前の粒子のシャープな粒度分布が維持されており、凝集が少なくなっている。具体的には、酸化錫で被覆された粒子は、粒度分布の指標であるD50/D90の値が、焼成前と同様に、好ましくは0.5〜1となる。
【0040】
前記の焼成工程は、非酸化性雰囲気中で行うことが好ましい。非酸化性雰囲気としては、例えば窒素雰囲気、水素を含有した窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等が挙げられる。これらのうち、水素を含有した窒素雰囲気は安価なので、工業的観点から好ましい。また、水素を含有した窒素雰囲気を用いる場合、水素の含有量は、好ましくは0.1〜10体積%、更に好ましくは1〜3体積%である。水素の含有量がこの範囲内にあると、錫を金属に還元させることなく、酸素欠損を有する導電性の酸化錫の被覆層を形成しやすいからである。
【0041】
前記の焼成工程における焼成温度は、好ましくは200〜1200℃、更に好ましくは400〜600℃である。焼成時間は、好ましくは5〜180分、更に好ましくは10〜120分である。焼成温度及び時間がこれらの範囲内にあると、酸素欠損を生じさせるのに十分であり、且つ凝集を起こし難いからである。この焼成工程を行うことにより導電性粒子が得られる。
【0042】
このようにして得られた導電性粒子は、例えば紙、プラスチック、ゴム、樹脂、塗料等に添加してこれらに導電性を付与する導電性フィラーとして使用される。また、電池等の電極改質剤として使用される。
【0043】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記の実施形態で用いられた製造装置10に代えて、図3に示す装置10’を用いることもできる。図3に示す装置10’においては、母液槽11の底部に強分散装置13が直接取り付けられている。同図に示す装置10’を用いても、図1に示す装置10と同様の有利な効果が奏される。
【0044】
また前記実施形態は、本発明を、芯材粒子の表面に水酸化錫の被覆層を形成する方法に適用した例であるが、本発明はこれ以外の被覆粒子の製造方法にも同様に適用できる。例えば、芯材粒子の表面に、無電解めっきによりめっき層を形成する方法に本発明を適用することができる。この場合には、母液中に芯材粒子及びめっき金属源となる化合物を含有させておき、強分散装置に還元剤を供給すればよい。また、芯材粒子の表面に、水酸化亜鉛の被覆層を形成する方法に、本発明を適用することもできる。この場合には、母液中に芯材粒子及び塩化亜鉛等の亜鉛源となる水溶性亜鉛化合物を含有させておき、強分散装置に水酸化ナトリウム等のアルカリを供給すればよい。このようにして得られた粒子を大気中で焼成することによって、酸化亜鉛で被覆された導電性粒子を得ることができる。さらに、芯材粒子の表面に、インジウム及び錫の水酸化物からなる被覆層を形成する方法に、本発明を適用することもできる。この場合には、母液中に芯材粒子並びに硝酸インジウム等のインジウム源となる水溶性インジウム化合物及び塩化錫等の錫源となる水溶性錫化合物を含有させておき、強分散装置に水酸化ナトリウム等のアルカリを供給すればよい。このようにして得られた粒子を還元雰囲気中で焼成することによって、インジウム及び錫の複合酸化物(ITO)で被覆された導電性粒子を得ることができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「重量%」を意味する。
【0046】
〔実施例1〕
図1に示す装置を用い、水酸化錫で被覆された粒子を製造した。母液槽中に純水3500cm3を投入し、次に平均粒径D50が0.1μmである球状のアルミナ芯材900gを投入して5パス循環させた。母液槽から流出するスラリーの流速は2280cm3/minであった。また強分散装置の攪拌速度は16000rpmとした。循環完了後のスラリーを純水で全量9000cm3にメスアップし、そこに1600gの錫酸ナトリウムを投入して5パス循環させた。このようにして母液を得た。この母液を、母液槽から流出する流速S1が200cm3となるように循環させながら、強分散装置としてのホモジナイザ(IKAジャパン株式会社製のT50(商品名))に20%硫酸を供給した。供給速度S3は9.2cm3/minであった。ホモジナイザの容積は500cm3、攪拌速度は16000rpmであった。循環を15分間行い、その間硫酸を連続的にホモジナイザに供給した。このようにして、アルミナ芯材の表面に水酸化錫の被覆層が形成された粒子を得た。
【0047】
得られた粒子を含むスラリーを、その導電率が600μS/cm以下となるまでリパルプ洗浄した後、ヌッチェ濾過を行い、ケーキを得た。このケーキを大気中、150℃で10時間乾燥させた。次いで乾燥ケーキを粉砕し、その粉砕粉を1体積%H2/N2雰囲気下で450℃、30分間還元焼成した。これによって、アルミナ芯材の表面に酸化錫の被覆層が形成された導電性粒子を得た。
【0048】
〔実施例2〕
実施例1において用いたアルミナ芯材に代えて、平均粒径D50が0.1μmである球状の二酸化珪素芯材900gを用いた。これ以外は実施例1と同様にして、二酸化珪素芯材の表面に水酸化錫の被覆層が形成された粒子を得た。得られた粒子を含むスラリーを、その導電率が600μS/cm以下となるまでリパルプ洗浄した後、ヌッチェ濾過を行い、ケーキを得た。このケーキを大気中、150℃で10時間乾燥させた。次いで乾燥ケーキを粉砕し、その粉砕粉を1体積%H2/N2雰囲気下で700℃、1時間還元焼成した。これによって、二酸化珪素芯材の表面に酸化錫の被覆層が形成された導電性粒子を得た。
【0049】
〔実施例3〕
図3に示す装置を用い、水酸化錫で被覆された粒子を製造した。母液槽中に純水3500cm3を投入し、次に平均粒径D50が0.15μmである球状の酸化チタン芯材900gを投入して5パス循環させた。母液槽から流出するスラリーの流速は2280cm3/minであった。また強分散装置の攪拌速度は16000rpmとした。循環完了後のスラリーを純水で全量9000cm3にメスアップし、そこに900gの錫酸ナトリウムを投入して5パス循環させた。このようにして母液を得た。この母液を、母液槽から流出する流速S1が200cm3となるように循環させながら、強分散装置としてのホモジナイザ(IKAジャパン株式会社製のmagic LAB(商品名))に20%硫酸を供給した。供給速度S3は9.2cm3/minであった。ホモジナイザの容積は20cm3、攪拌速度は16000rpmであった。循環を15分間行い、その間硫酸を連続的にホモジナイザに供給した。このようにして、酸化チタン芯材の表面に水酸化錫の被覆層が形成された粒子を得た。
【0050】
得られた粒子を含むスラリーを、その導電率が600μS/cm以下となるまでリパルプ洗浄した後、ヌッチェ濾過を行い、ケーキを得た。このケーキを大気中、150℃で10時間乾燥させた。次いで乾燥ケーキを粉砕し、その粉砕粉を1体積%H2/N2雰囲気下で450℃、30分間還元焼成した。これによって、酸化チタン芯材の表面に酸化錫の被覆層が形成された導電性粒子を得た。得られた導電性粒子のTEM像を図4に示す。
【0051】
〔実施例4〕
図3に示す装置を用い、水酸化錫で被覆された粒子を製造した。母液槽中に純水3500cm3を投入し、次に平均粒径D50が0.15μmである球状の硫酸バリウム芯材900gを投入して5パス循環させた。母液槽から流出するスラリーの流速は2280cm3/minであった。また強分散装置の攪拌速度は16000rpmとした。循環完了後のスラリーを純水で全量9000cm3にメスアップし、そこに1600gの錫酸ナトリウム及び2.3cm3の水酸化ナトリウム水溶液(濃度25N)を投入して5パス循環させた。このようにして母液を得た。この母液を、母液槽から流出する流速S1が200cm3となるように循環させながら、強分散装置としてのホモジナイザ(IKAジャパン株式会社製のmagic LAB(商品名))に20%硫酸を供給した。供給速度S3は9.2cm3/minであった。ホモジナイザの容積は20cm3、攪拌速度は16000rpmであった。循環を15分間行い、その間硫酸を連続的にホモジナイザに供給した。このようにして、硫酸バリウム芯材の表面に水酸化錫の被覆層が形成された粒子を得た。
【0052】
得られた粒子を含むスラリーを、その導電率が600μS/cm以下となるまでリパルプ洗浄した後、ヌッチェ濾過を行い、ケーキを得た。このケーキを大気中、150℃で10時間乾燥させた。次いで乾燥ケーキを粉砕し、その粉砕粉を1体積%H2/N2雰囲気下で450℃、45分間還元焼成した。これによって、硫酸バリウム芯材の表面に酸化錫の被覆層が形成された導電性粒子を得た。
【0053】
〔実施例5〕
図1に示す装置を用い、水酸化亜鉛で被覆された粒子を製造した。母液槽中に純水3500cm3を投入し、次に平均粒径D50が0.15μmである球状の硫酸バリウム芯材900gを投入して5パス循環させた。母液槽から流出するスラリーの流速は2280cm3/minであった。また強分散装置の攪拌速度は16000rpmとした。循環完了後のスラリーを純水で全量9000cm3にメスアップし、そこに1000gの無水塩化亜鉛を投入して5パス循環させた。このようにして母液を得た。この母液を、母液槽から流出する流速S1が10L/minとなるように循環させながら、強分散装置としてのホモジナイザ(IKAジャパン株式会社製のT50(商品名))に20%水酸化ナトリウム水溶液を供給した。供給速度S3は9.2cm3/minであった。pHは5.0とした。ホモジナイザの容積は500cm3、攪拌速度は16000rpmであった。循環を15分間行い、その間硫酸を連続的にホモジナイザに供給した。このようにして、硫酸バリウム芯材の表面に水酸化亜鉛の被覆層が形成された粒子を得た。
【0054】
得られた粒子を含むスラリーを、その導電率が600μS/cm以下となるまでリパルプ洗浄した後、ヌッチェ濾過を行い、ケーキを得た。このケーキを大気中、150℃で10時間乾燥させた。次いで乾燥ケーキを粉砕し、その粉砕粉を大気中、450℃で、45分還元焼成した。これによって、硫酸バリウム芯材の表面に酸化亜鉛の被覆層が形成された導電性粒子を得た。酸化亜鉛の被覆率は40%であった。
【0055】
〔実施例6〕
図1に示す装置を用い、インジウム及び錫の水酸化物で被覆された粒子を製造した。母液槽中に純水3500cm3を投入し、次に平均粒径D50が0.1μmである球状のアルミナ芯材900gを投入して5パス循環させた。母液槽から流出するスラリーの流速は2280cm3/minであった。また強分散装置の攪拌速度は16000rpmとした。循環完了後のスラリーを純水で全量9000cm3にメスアップし、そこに5gの塩化スズ塩酸溶液(44%)及び976gの硝酸インジウム水溶液(100g/1000cm3、比重1.6g/cm3)の錫酸ナトリウムを投入して5パス循環させた。このようにして母液を得た。この母液を、母液槽から流出する流速S1が10L/minとなるように循環させながら、強分散装置としてのホモジナイザ(IKAジャパン株式会社製のT50(商品名))に20%水酸化ナトリウムを供給した。供給速度S3は9.2cm3/minであった。pHは3.0とした。ホモジナイザの容積は500cm3、攪拌速度は16000rpmであった。循環を15分間行い、その間硫酸を連続的にホモジナイザに供給した。このようにして、硫酸バリウム芯材の表面にインジウム及び錫の水酸化物の被覆層が形成された粒子を得た。
【0056】
得られた粒子を含むスラリーを、その導電率が600μS/cm以下となるまでリパルプ洗浄した後、ヌッチェ濾過を行い、ケーキを得た。このケーキを大気中、150℃で10時間乾燥させた。次いで乾燥ケーキを粉砕し、その粉砕粉を1体積%H2/N2雰囲気下で450℃、45分還元焼成した。これによって、硫酸バリウム芯材の表面にインジウム及び錫の複合酸化物(ITO)の被覆層が形成された導電性粒子を得た。ITOの被覆率は10%であった。
【0057】
〔実施例7〕
実施例1において、図1に示す装置に母液を投入する前に、該母液をビーズミルによる分散処理に付した。分散処理の条件は、濃度20%、ジルコニアビーズ(0.3mmφ)、周速8m/s、流量10kg/h、5パスの分散とした。分散処理後、実施例1と同様の操作を行いアルミナ芯材の表面に水酸化錫の被覆層が形成された粒子を得た。この粒子について実施例1と同様の操作を行い、アルミナ芯材の表面に酸化錫の被覆層が形成された導電性粒子を得た。
【0058】
〔実施例8〜12〕
実施例2〜6において、図1に示す装置に母液を投入する前に、該母液を、0.3mmφのジルコニアビーズを用いたビーズミルによる分散処理に付した。分散処理の条件は表1に示すとおりとした。分散処理後、実施例2〜6と同様の操作を行い芯材粒子の表面に被覆層が形成された粒子を得た。各粒子について、洗浄、乾燥及び焼成を、実施例2〜6の条件と同様の条件で行い、芯材粒子の表面に酸化物の被覆層が形成された導電性粒子を得た。すなわち、実施例8においては実施例2と同様の条件、実施例9は実施例3と同様の条件、実施例10は実施例4と同様の条件、実施例11は実施例5と同様の条件、実施例12は実施例6と同様の条件を採用した。
【0059】
【表1】

【0060】
〔実施例13〕
実施例4において、図3に示す装置に母液を投入する前に、該母液をアルティマイザHJP−25030(株式会社スギノマシン製)を用いて分散処理した。処理条件は、2000kPa、スラリー温度40℃、通液回数10回とした。これ以外は実施例4と同様にして、硫酸バリウム芯材の表面に酸化錫の被覆層が形成された導電性粒子を得た。
【0061】
〔実施例14〕
実施例5において、図1に示す装置に母液を投入する前に、該母液をホモジナイザとしてのLPNナノジナイザー(セレンディップ製)を用いて分散処理した。処理条件は、500kPa、スラリー温度40℃、通液回数20回とした。これ以外は実施例5と同様にして、硫酸バリウム芯材の表面に酸化亜鉛の被覆層が形成された導電性粒子を得た。
【0062】
〔比較例1〕
攪拌槽中に純水3500cm3を投入し、次に平均粒径D50が0.15μmである球状の酸化チタン芯材900gを投入して液を攪拌した。得られたスラリーを純水で全量9000cm3にメスアップし、そこに930gの錫酸ナトリウムを投入して40℃で1時間攪拌した。このスラリーを70℃に昇温した後、20%硫酸を1300cm3供給し、スラリーのpHを3にした。その後、更に1時間攪拌を行った。このようにして酸化チタン芯材の表面に水酸化錫の被覆層が形成された粒子を得た。
【0063】
得られた粒子を含むスラリーを、その導電率が600μS/cm以下となるまでリパルプ洗浄した後、ヌッチェ濾過を行い、ケーキを得た。このケーキを大気中、150℃で10時間乾燥させた。次いで乾燥ケーキを粉砕し、その粉砕粉を1体積%H2/N2雰囲気下で450℃、30分間還元焼成した。これによって、酸化チタン芯材の表面に酸化錫の被覆層が形成された導電性粒子を得た。得られた導電性粒子のTEM像を図5に示す。
【0064】
〔比較例2〕
比較例1において用いた酸化チタン芯材に代えて、平均粒径D50が0.15μmである球状の硫酸バリウム芯材900gを用いた。また、錫酸ナトリウム1600gを用い、比較例1と同様の条件で、硫酸バリウム芯材の表面に水酸化錫の被覆層が形成された粒子を得た。その後の洗浄、乾燥及び焼成は実施例4と同様にして、硫酸バリウム芯材の表面に酸化錫の被覆層が形成された導電性粒子を得た。
【0065】
〔比較例3〕
図1に示す装置を用い、特開2005−108734号公報の実施例1に記載の方法に準じて被覆粒子を製造した。母液槽中に純水35l0cm3を投入し、次に平均粒径D50が0.15μmである球状の硫酸バリウム芯材200gを投入して、硫酸バリウムの粗粒がなくなるまで分散させてスラリーを生成した。該スラリーに錫酸ナトリウム576gを投入し、これを溶解させた。スラリー中のSn濃度は41%であった。該スラリーに20%硫酸をスラリーのpHが2.5になるまで添加して中和した。母液槽における中和の開始と同時に、第1ポンプ、ホモジナイザ及び第2ポンプを順次起動して母液槽中のスラリーをホモジナイザに送液して強分散処理を行い、強分散処理後のスラリーを反応槽に戻すようにした。ホモジナイザは、4500rpmで攪拌させた。中和を開始してから終了するまでの98分間にわたり強分散処理を行い続けた。このようにして、硫酸バリウム芯材の表面に水酸化錫の被覆層が形成された粒子を得た。その後は実施例4と同様にして、硫酸バリウム芯材の表面に酸化錫の被覆層が形成された導電性粒子を得た。
【0066】
〔比較例4〕
母液槽中にホモジナイザ(IKAジャパン製 T−50)を取り付けた装置を用い、水酸化錫で被覆された粒子を製造した。母液槽中に純水3510cm3を投入し、次に平均粒径D50が0.15μmである球状の硫酸バリウム芯材200gを投入して硫酸バリウムの粗粒がなくなるまでホモジナイザで強分散処理させてスラリーを生成した。ホモジナイザを用いて強分散処理しながら該スラリーに錫酸ナトリウム576gを投入し、これを溶解させた。スラリー中のSn濃度は41%であった。次にホモジナイザにて強分散処理しながら該スラリーに20%硫酸をスラリーのpHが2.5になるまで添加して中和した。中和を開始してから終了するまで98分間にわたり強分散処理を行い続けた。この間、ホモジナイザは4500rpmで攪拌させた。このようにして硫酸バリウム芯材の表面に水酸化錫の被覆層が形成された粒子を得た。その後は実施例4と同様にして、硫酸バリウム芯材の表面に酸化錫の被覆層が形成された導電性粒子を得た。
【0067】
〔評価〕
実施例及び比較例について、反応後でかつ洗浄前の粒子について、粒度分布(D50、D90)を以下の方法で測定した。また、焼成後の導電性粒子についても、粒度分布(D50、D90)を測定した。更に焼成後の導電性粒子について、比表面積及び体積抵抗を以下の方法で測定した。それらの結果を以下の表2に示す。
【0068】
〔粒度分布の測定〕
200cm3のサンプル容器に試料約0.1gを採り、これに0.2g/lのヘキサメタリン酸ソーダを10cm3添加混合し、引き続き純水90cm3を添加した。日本精機株式会社製の超音波分散機であるUS−300Tを用いて試料を10分間分散しサンプル液を調製した。このサンプル液を用い、日機装株式会社製マイクロトラックHRAを用いて分散粒度D50及びD90を測定した。
【0069】
〔比表面積の測定〕
ユアサアイオニクス株式会社製モノソーブを用い、BET比表面積を測定した。
【0070】
〔体積抵抗率の測定〕
三菱化学株式会社製ロレスタPAPD−41を用い、試料を500kgf/cm2に加圧した状態下に、同社製ロレスタAPを用い体積抵抗率を測定した。
【0071】
【表2】

【0072】
表2に示す結果から明らかなように、実施例で得られた粒子は、粒度分布がシャープであり、粒子の凝集の程度が低いことが判る。また、体積抵抗が低く、粒子の分散性が良好であることが判る。
【0073】
また、図4と図5との比較から明らかなように、実施例3の導電性粒子(図4)においては、酸化錫の一次粒子の凝集の程度が低く、芯材粒子である酸化チタンの表面に緻密に付着していることが判る。これに対して、比較例1の導電性粒子(図5)においては、酸化錫の一次粒子の凝集の程度が甚だしく、それに起因して芯材粒子である酸化チタンの表面に粗く付着しており、凝集した粒子間に多くの空隙を有していることが判る。
【0074】
更に、実施例1〜6と実施例7〜14との対比から明らかなように、芯材粒子を予め分散処理に付し、その後に被覆層を形成すると、焼成前の粒子はそのD50/D90の値が大きくなり、シャープな粒度分布を有していることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の製造方法に好適に用いられる装置を示す模式図である。
【図2】図1に示す装置の変形例を示す模式図である。
【図3】本発明の製造方法に好適に用いられる別の装置を示す模式図である。
【図4】実施例3で得られた導電性粒子のTEM像である。
【図5】比較例1で得られた導電性粒子のTEM像である。
【符号の説明】
【0076】
10 製造装置
11 母液槽
12 第1循環配管
13 強分散装置
14 第2循環配管
20 母液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材粒子が媒体に分散してなる母液を循環させつつ、循環経路の一部に設けられた強分散装置に被覆層形成用の反応物を供給し、
該強分散装置において該母液を強分散させた状態下に該芯材粒子と該反応物とを反応させて、該芯材粒子の表面に被覆層を形成することを特徴とする、被覆層を有する粒子の製造方法。
【請求項2】
芯材粒子が分散してなる前記母液を循環させるのに先立ち、該芯材粒子をメディアミル又はメディアレスの分散装置によって分散させる請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
複数の前記強分散装置が、前記循環経路に対して並列に又は直列に設けられている請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
時間の経過と共に前記反応物の供給量及び/又は濃度を変化させる請求項1ないし3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記芯材粒子が、二酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ又は二酸化珪素からなり、
前記母液中に1)水溶性錫化合物、2)水溶性亜鉛化合物、又は3)水溶性インジウム化合物及び水溶性錫化合物が含まれており、
前記反応物が酸又はアルカリである請求項1ないし4の何れかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記芯材粒子の表面に、前記化合物の水酸化物からなる被覆層が形成された粒子を分離して、洗浄及び乾燥させた後に焼成し、前記水酸化物が酸化されてなる酸化物の層で被覆された粒子を得る請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法によって製造された、導電性の被覆層を有する導電性粒子。
【請求項8】
粒度分布D50/D90の値が0.5〜1である請求項7記載の導電性粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−255042(P2009−255042A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317614(P2008−317614)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】