説明

被覆水溶性粒状体の製造方法

【課題】本発明は、被覆層の厚みが薄くでき、被覆層表面の欠陥が抑制され、かつ、煩雑な操作を必要とせず、製造時間を短縮せしめ、大量生産を実現した被覆水溶性粒状体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】水溶性粒状体の表面に2層以上の被覆層が形成された被覆水溶性粒状体の製造方法であって、ポリオール成分及びイソシアネート成分を含む第1の被覆材を供給した後、当該第1の被覆材の熱硬化が不十分な被覆層を有する第1の被覆体の表面に新たに第2の被覆材を供給して、第2の被覆材の被覆層が形成された第2の被覆体を得る工程A、を含むことを特徴とする被覆水溶性粒状体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性粒状体の被覆方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、粒状肥料や粒状農薬等の溶出成分の流亡による環境への影響、農業就労者の高年齢化に伴う省力化等の面から、より省力型で効率の高い肥料及び農薬、並びにその使用法が要求されている。このような背景のもとに、種々の溶出調整型の肥料や農薬が提案され、実用化されている。
【0003】
被覆粒状物は、粒状肥料や粒状農薬の表面を有機系あるいは無機系の被覆資材を用いて被覆することにより内部成分の溶出を制御したものである。中でも樹脂等の有機系の被覆資材を用いた被覆粒状物は溶出制御機能がより優れており、この様な型が被覆肥料や被覆農薬の主流を占めている。
【0004】
上記被覆資材として用いられる樹脂は、各種様々なものが使用されているが、ウレタン樹脂などの熱硬化樹脂は被膜の強度、耐水性が大きい、溶出特性の制御の容易さ、溶剤を使用しないで塗布することができるなどの理由から広く用いられている。
【0005】
特許文献1では、羊毛洗浄の際に回収されるウールグリス、ラノリン、ラノリン脂肪酸またはラノリンアルコールの1種またはそれらの混合物からなるポリヒドロキシル化合物とポリイソシアネートとの反応生成物により粒状肥料を被覆してなる被覆粒状肥料が記載されており、被覆工程と有機溶剤の噴霧および蒸発工程を繰り返すことで溶出を制御することが提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、ポリイソシアネートおよびポリオールの層をなす塗布によって膜被覆された肥料粒状物を製造するための方法において、被覆材料を、層がそれぞれ10〜30μm、好ましくは15〜20μmの層厚を有するような程度の割合で塗布された肥料粒状物の製造法が記載されており、樹脂塗布、混合、アミン塗布、給気を繰り返すことで溶出を制御することが提案されている。
【0007】
また、特許文献3には、熱硬化性樹脂で被覆した被覆粒状肥料の製造方法において、(1)粒状肥料を転動状態にする工程、(2)転動状態にある粒状肥料に層厚が1乃至10μmになる量の液状の未硬化熱硬化性樹脂を添加する工程、(3)該粒状肥料の転動状態を維持し、各肥料粒子表面を該未硬化熱硬化性樹脂で被覆する工程、(4)該粒状肥料の転動状態を維持し、該未硬化熱硬化性樹脂を熱硬化させる工程、(5)上記(1)乃至(4)の工程をさらに1回またはそれ以上繰り返す工程、を(1)〜(5)の順に行うことで塗装欠陥のない粒状肥料を製造する方法が開示されている。なお、上記文献では、樹脂の粘着性が増大し肥料粒子同士が樹脂により粘着され、多数の粒子からなる塊状体となると、樹脂表面に損傷を与えるために、層厚を10μm以下とする必要があると記載されている。
【0008】
また、特許文献4には、ポリウレタンでカプセル化された徐放性肥料粒子の製造方法において、(1)ポリエステルエーテルポリオールを含むイソシアナート反応性成分を肥料粒子に適用して、被覆された肥料粒子を生成させる工程、(2)ポリイソシアナート成を工程(1)の被覆された肥料粒子に適用して、ポリウレタンでカプセル化された肥料粒子を生成させる工程を含み、所望によりこれらの工程を、工程(2)のポリウレタンカプセル化肥料粒子を工程(1)の肥料粒子の代わりに用いて、必要な多回数(連続して)繰り返して、カプセル化された肥料組成物の総重量に基づいて約2〜約20重量%のポリウレタンを含有するポリウレタンカプセル化肥料粒子が形成されるようにし、ポリウレタンカプセル化肥料粒子を形成するポリウレタンがポリウレタンカプセル化物の総重量に基づいて1重量%未満の水分吸収とする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−305085号公報
【特許文献2】特表平7−500560号公報
【特許文献3】特開平9−202683号公報
【特許文献4】特開2001−213685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
熱硬化性樹脂を用いた被覆粒状体の製造過程において、被覆粒状体の表面に欠陥が発生するという問題があった。
【0011】
またさらに、工場等の大型の設備において大量生産を行うと、実験用の小型の装置で少量生産を行った場合とは異なり、被覆粒状体表面の欠陥が増大するという問題があった。
【0012】
上記の問題に対し、従来の方法では前述したような被覆粒状体表面の欠陥を防ぐ目的で、被覆材を複数回添加し、被覆層の厚みを厚くせざるを得なかった。
【0013】
特許文献1の方法では、有機溶剤を用いているため被覆工程が複雑になり製造時間が増大するばかりでなく、製造時の毒性、引火性等に十分注意が必要であり、また有機溶剤の除去が不完全であると環境に対して悪影響を及ぼすことから、有機溶剤の除去および回収には繁雑な操作を要するという問題があった。
【0014】
また、特許文献2の方法では、樹脂塗布以外にアミンミストを塗布するため被覆工程が複雑になり製造時間が増大するばかりでなく、製造時の毒性、引火性等に十分注意が必要であり、またアミンミストの除去が不完全であると環境に対して悪影響を及ぼすことから、アミンミストの除去および回収には繁雑な操作を要するという問題があった。
【0015】
また、特許文献3の方法では、粒状肥料に少量の被覆材添加を繰り返すため被覆層の厚みが厚くなり、なおかつ製造時間が増大し生産性が低下する問題があった。
【0016】
また、特許文献4の方法では、各層の被覆にポリエステルエーテルポリオールの添加、ポリイソシアナート成分の添加、乾燥、という3工程を繰り返すため製造時間が増大し生産性が低下する問題があった。
【0017】
本発明は、被覆層の厚みが薄くでき、被覆層表面の欠陥が抑制され、かつ、煩雑な操作を必要とせず、製造時間を短縮せしめ、大量生産を実現した被覆水溶性粒状体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
熱硬化性樹脂は熱による熱硬化反応とともに流動性を失い、粘着性が増加するため、該熱硬化性樹脂によって被覆されている水溶性粒状体同士が、表面に形成された該熱硬化性樹脂により粘着され、粒子同士が付着し塊状体となる。本発明者らが鋭意検討した結果、前記のように粘着した被覆層同士が剥がれる、あるいは、流動状態又は転動状態を維持する装置と被覆層とが接触あるいは粘着し該被覆層に剥がれや磨耗を起こすことにより、前記欠陥が生じることがわかり、前記熱硬化性樹脂がウレタン樹脂の場合に、意外にも、熱硬化反応が不十分な被覆層に、次層の被覆層を形成する被覆材を塗布することにより、従来の被覆水溶性粒状体と比べて、前記欠陥が改善された被覆水溶性粒状体が得られることが明らかとなった。
【0019】
すなわち本発明は、水溶性粒状体の表面に2層以上の被覆層が形成された被覆水溶性粒状体の製造方法であって、
ポリオール成分及びイソシアネート成分を含む第1の被覆材を供給した後、当該第1の被覆材の熱硬化が不十分な被覆層を有する第1の被覆体の表面に新たに第2の被覆材を供給して、第2の被覆材の被覆層が形成された第2の被覆体を得る工程A、
を含むことを特徴とする。
【0020】
前記工程Aは2〜10回繰り返して2〜10層の被覆層を形成してもよい。たとえば、供給された被覆材の熱硬化が不十分な被覆層を有する被覆体の表面に新たな被覆材を供給し、当該被覆材の熱硬化が不十分な被覆層を有する被覆体の表面に新たな被覆材を供給するように、先行する被覆材の熱硬化が不十分な状態で新たな被覆材を供給することを連続的に行うことによって、複数の被覆層を形成してもよい。
【0021】
前記第1の被覆材とは、少なくともポリオール成分及びイソシアネート成分を含み、前記熱硬化が不十分な被覆層を形成するための各々の材料成分を指す材料液としてもよい。また、被覆層とは前記水溶性粒状体及び前記被覆体の表面を被覆するものであり、熱硬化が十分なもの、不十分なもの、その両方を指すものとしても差し支えない。
【0022】
また、前記第1の被覆体とは、少なくとも表面に熱硬化が不十分な被覆層が形成されたものであり、表面に形成された被覆層よりも内層に他の被覆層が形成されていてもよく、また、該熱硬化が不十分な被覆層が水溶性粒状体の表面に直接形成されていてもよい。
【0023】
また、本発明の被覆水溶性粒状体の製造方法において、前記第2の被覆材がポリオール成分及びイソシアネート成分を含むことを特徴とする。
【0024】
また、前記第2の被覆体とは、前記第2の被覆材を、前記第1の被覆体の表面に供給して被覆層を形成したものである。該第2の被覆材がポリオール成分及びイソシアネート成分を含む際、当該被覆材によって形成された第2の被覆体は熱硬化が十分なもの、不十分なもの、両方を含むものとするが、前記工程Aを繰り返す際、該第2の被覆体は熱硬化が不十分な被覆層を表面に含むものとするのが好ましい。
【0025】
また、本発明の被覆水溶性粒状体の製造方法は、前記第1の被覆材の供給を完了した後、前記被覆体同士が付着して塊状体が形成され始める時間をT、その後塊状体の体積が最大になる時間をTとするとき、次の関係式
0.5≦(T−T)/(T−T)≦3.0
を満たすTの時間的範囲内に、前記第2の被覆材の供給を開始することを特徴とする。
【0026】
前記「塊状体の体積」は、前記被覆体を目視で観察し、該被覆体表面の前記被覆層を介して該被覆体同士が付着して形成された塊状体のみかけの体積を指す。また、該塊状体の体積が最大となっている時、該被覆体表面の被覆層の粘着性は最大となっていると推察される。前記第1の被覆材の供給を終えて暫くすると、熱硬化が不十分な被覆層が表面に形成された第1の被覆体となり、該被覆体同士が付着し始め前記粒状物を形成し、塊状体の体積の増加が始まる(この時間をTとする)。
【0027】
また、前記の第2の被覆材は、上記Tの時間的範囲内において、実質的に全量を供給することが好ましいとしてもよい。「実質的に全量」とは、当該操作で加えるべき第2の被覆材の通常90%以上であり、当該操作で加えるべき第2の被覆材の好ましくは98%以上であり、当該操作で加えるべき第2の被覆材の全量をこの時間的範囲内に供給し、それ以外の時間的範囲には供給を行わないことが、さらに好ましい。
【0028】
また、本発明の被覆水溶性粒状体の製造方法は、次の関係式
0.5≦(T−T)/(T−T)≦2.0
を満たすTの時間的範囲内に、第2の被覆材の供給を開始することを特徴とする。
【0029】
また、本発明の被覆水溶性粒状体の製造方法は、前記第1の被覆材及び第2の被覆材が、アミン化合物を含むものであることを特徴とする。
【0030】
また、本発明の被覆水溶性粒状体の製造方法は、前記被覆水溶性粒状体の質量に対して、被覆層の1層あたりの質量が0.5〜5質量%であることを特徴とする。
【0031】
また、本発明の被覆水溶性粒状体の製造方法は、前記水溶性粒状体の粒径が1〜10mmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明の被覆水溶性粒状体の製造方法は、被覆層表面の欠陥が抑制され、かつ、製造時間を短縮し、また、被覆層全体の厚みを薄くすることが可能である。また、本発明の好適な実施形態のひとつは、溶媒を使用しないことから、溶媒を除去・回収するための煩雑な操作を必要としない。さらに、本発明の好適な実施形態のひとつは、品質を安定させ大量生産に耐え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】製造時間と塊状体の体積との関係の一例を表した模式図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の好適な実施形態を以下に示す。本発明は、流動状態又は転動状態の水溶性粒状体に、ポリオール成分及びイソシアネート成分を含む第1の被覆材を供給し、流動状態又は転動状態を維持して熱硬化の不十分な被覆層を有する第1の被覆体を形成し、続いて新たに第2の被覆材を供給し熱硬化が不十分な被覆層を有する第2の被覆体を形成し、前記の第1の被覆体及び第2の被覆体を形成するように、熱硬化が不十分な被覆層を所望の層数を形成した後、全体を加熱し十分熱硬化させるものである。
【0035】
例えば、第1の被覆体の表面に新たに被覆層を形成する場合、第2の被覆材を供給する時間Tは、前述した以下の式、
0.5≦(T−T)/(T−T)≦3.0
を満たすことが好ましい。また、
0.5≦(T−T)/(T−T)≦2.0
を満たすことがより好ましい。該Tが0.5未満であると、第1の被覆材を供給して形成される被覆層の形成が不十分なまま第2の被覆材を供給することになり、好適な溶出性能が得られないことがある。また、該Tが3.0を超えると第1の被覆材を供給して形成される被覆層は硬化が進行し、一度塊状体を形成した後、該被覆層の剥がれ等が生じ始めることから欠陥が増大してしまい、良好な溶出性能が得られないことがある。
【0036】
図1を参照しながら、前述したTについて以下説明する。図では前記工程Aにおける製造時間と塊状体の体積との関係の一例を模式的に表しており、T0(1) またはT0(2)は第1または第2の被覆材の供給を完了した後に第1または第2の被覆体が塊状体を形成し始める時間、Ta(1)またはTa(2)は第1または第2の被覆体の塊状体の体積が最大となる時間、Tx(1)またはTx(2)は第1または第2の被覆材を供給し始める時間、をそれぞれ示している。なお、このとき上記(T−T)/(T−T)の式は以下のように記載されるものである。
(Tx(2)−T0(1))/(Ta(1)−T0(1)
第1の被覆材を供給した後、供給された被覆材は徐々に粘性が増加し始め、当該被覆材を介して、第1の被覆体と装置、あるいは第1の被覆体と第1の被覆体とが付着し始める。ここで、Tでは前記の第1の被覆体同士が付着し、流動状態又は転動状態においても付着したまま離れない塊状体が確認され始める。
【0037】
前記Tの状態を経た後、前記塊状体の体積は増加していき、みかけの体積が最大になる時間Tにおいて、該塊状体の表面に形成された熱硬化が不十分な被覆層は粘着性が最も高くなる。そして該Tの状態を経た後、前記塊状体は徐々にほぐれ始め、塊状体の体積が減少し始める。なお、Tの状態を経た後、第2の被覆材を供給しないまま、さらに熱硬化を進行させると、該第1の被覆体は装置との摩擦、あるいは該第1の被覆体同士の剥がれ等によって、表面に形成された被覆層が損傷し始める。
【0038】
また、第2の被覆材を供給し始める時間Tは、図1ではTの後としているが、前述した式の範囲内であればTの前でも差し支えない。Tで第2の被覆材を供給すると、付着していた第1の被覆体と第1の被覆体との間に、粘性がまだ低い第2の被覆材が入りこむことにより、速やかに塊状体をほぐすことが可能となり、当該塊状体の体積を急激に減少させることが可能となる。この時、該第1の被覆体の表面は熱硬化による損傷が生じる前に第2の被覆材が表面を被覆し、第2の被覆体が形成されることとなる。
【0039】
水溶性粒状体を流動状態又は転動状態にする際、該水溶性粒状体はあらかじめ熱風等によって一定時間予熱される。この時予熱時間及び予熱温度は、水溶性粒状体の水分が、第1の被覆材及び第2の被覆材等の使用する被覆材に大きな影響を及ぼさない程度の水分量、及び該水溶性粒状物の温度が被覆温度となるように適宜調整されればよい。
【0040】
前記被覆温度は、通常常温(25℃程度)〜150℃、好ましくは40〜100℃程度とするのが好ましく、形成時間、使用する被覆材の組成比、使用する水溶性粒状体の種類により適宜選定する。また、熱により分解ないし変質しやすい成分を含む水溶性粒状体の場合は、比較的低温で被覆することが必要であり、例えば水溶性粒状体として尿素を用いる場合は90℃以下の温度で被覆することが好ましい。
【0041】
水溶性粒状体の流動化には流動層または噴流層等の装置、転動化には回転パンまたは回転ドラム等の装置を使用することが可能である。水溶性粒状体を流動状態又は転動状態にすることによって、連続的に前記被覆層を形成することが可能となり、また、表面に形成する該被覆層を均一なものとすることが可能となる。
【0042】
また、本発明は大量生産用の設備でも実施することが可能であり、例えば、本実施例に記載したように100kg以上の水溶性粒状体に前記被覆層を形成することが可能である。また、本発明の方法は大量生産用の設備以外にも当然適用することが可能である。
【0043】
第1の被覆材及び第2の被覆材等の使用する被覆材の供給方法としては、効率よく分散添加できるものであればよく、例えば噴霧、滴下等が挙げられ、特に、圧縮空気を用いた二流体ノズルによって噴霧添加する方法は良好な前記被覆層を形成させることが可能であるため好適に利用される。また、当該被覆材はそれぞれ成分毎に独立に供給し、装置内で混合させてもよく、あるいは予め一部または全部の成分を混合した後に供給することも可能である。
【0044】
前記被覆材は、前記被覆水溶性粒状体の質量に対して、該被覆層の1層あたりの質量が0.5〜5質量%となるように供給するのが好ましく、より好ましくは0.7〜3質量%としてもよい。0.5質量%未満では、均一な層の形成が困難になるばかりでなく、目的とする溶出性能を得るために被覆層を積層する回数を増やさなくてはならず、操作的に非効率となり、また、5質量%を超えると層の厚みが厚くなり不均一な層となるばかりか、装置内に付着する被覆材が急激に増えるため被覆材の利用効率が低下する場合がある。また特に、最も表面側に形成される被覆層(以下、最表層と記載することもある)は、該最表層よりも内側に形成される被覆層が大きく損傷しない程度であれば薄くてもよく、0.2〜2質量%程度であってもよい。
【0045】
また、前記被覆水溶性粒状体の質量に対して、形成される被覆層の合計は1〜15質量%であるのが好ましく、より好ましくは1.5〜12質量%としてもよい。1質量%未満では、目的とする溶出性能を達成することが困難であり、また、15質量%を超えると厚みが厚くなるため被覆層での水分の透過、及び水溶性粒状体の溶出が困難となる。
【0046】
また、前記第1の被覆材は芳香族ポリイソシアネートと、ポリオール化合物と、アミン化合物とを有するのが好ましく、該被覆材はウレタン樹脂を形成する。また、前記第2の被覆材も芳香族ポリイソシアネートと、ポリオール化合物と、アミン化合物とを有するのが好ましい。また、上記材料を有する被覆材の粘度は、水溶性粒状体の表面を被覆材で均一に覆うために、低粘度であることが好ましく、例えば被覆温度において0.1〜200mPa・sであることが好ましい。
【0047】
前記芳香族ポリイソシアネートは、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等、あるいはこれらの変性体、例えば、ウレア変性体、二量体、三量体、カルボジイミド体、アロハネート変性体、ビュレット変性体などが挙げられる。これらは2種類以上を併せて使用することができ、また、工業的に使用されるいわゆる「粗製」ポリイソシアネートであってもよい。上記のうちMDI、粗製MDI、カルボジイミド化MDI(液状MDI)、TDI、粗製TDIなどが特に好適に用いられる。
【0048】
また、前記芳香族ポリイソシアネートは、該芳香族ポリイソシアネートから調製されたイソシアネート基末端プレポリマーとして使用してもよい。イソシアネート基末端プレポリマーを調製する方法は、公知の方法でよく、ポリイソシアネートとポリオ−ルとのイソシアネート基/活性水素基の当量比を、1.1〜50.0、好ましくは1.2〜25.0として、30〜130℃、好ましくは40〜90℃で1〜5時間反応を行うことにより得られるものである。このようにして得られるMDIをイソシアネート基末端プレポリマーとして使用することにより、他の成分との相溶性が良くなり反応を促進したり、粘度を作業性のし易いものに調節できる等の効果がある。
【0049】
前記ポリオール成分としては、例えば、ひまし油およびその誘導体(たとえばひまし油、ひまし油のアルキレンオキサイド付加体、ひまし油脂肪酸の多価アルコール変性体等)、低分子多官能アルコールのアルキレンオキサイド付加体(たとえば、ジオール類、トリオール類、ヘキサオール類、グリセリン、トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドの単独付加体、共付加体等)、低分子多官能カルボン酸のアルキレンオキサイド付加体(たとえばドデカン二酸のプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドの単独付加体、共付加体等)、 低分子多官能ポリエステルのアルキレンオキサイド付加体(たとえばグリセリンとドデカン二酸とのポリエステルのプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドの単独付加体、共付加体等)、およびこれら2種以上の混合物が挙げられる。上記の中で、ひまし油、ひまし油をエチレングリコールまたはプロピレングリコールでエステル交換した誘導体、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレントリオールが好適に使用されるとしてもよい。
【0050】
前記アミン化合物としては、アルキルアミン類またはアミン系ポリオールが用いられる。アルキルアミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルイソプロピルアミンなどが挙げられる。また、アミン化合物としてはアミン系ポリオールが好ましく、その様なアミン系ポリオールとしては、ジ−、トリ−、エタノ−ルアミン、N−メチル−N,N´−ジエタノールアミン等の低分子アミン系ポリオ−ル、あるいはエチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,6−ヘキサンジアミンのようなアミノ化合物にプロピレンオキサイド(PO)またはエチレンオキサイド(EO)等のアルキレンオキサイドを付加したアミン系ポリオール等が挙げられる。付加の比率はとくに限定されないが、窒素原子1個に対しアルキレンオキサイド1〜200、好ましくは1〜50であるが、2〜2.4程度のものが被覆層の親水性に関する物性の調節のためには特に好ましい。その様なものとして、例えば、N,N,N′,N′−テトラキス[2−ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラキス[2−ヒドロキシエチル]エチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラキス[2−ヒドロキシプロピル]−1,3−プロパンジアミン、N,N,N′,N′−テトラキス[2−ヒドロキシエチル]−1,6−ヘキサンジアミン等が挙げられる。特に好ましいものは、反応性と物性が良好となることから、N,N,N′,N′−テトラキス[2−ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン,及び、N,N,N′,N′−テトラキス[2−ヒドロキシエチル]エチレンジアミンまたはそれらを主成分とするオキシプロピレン化エチレンジアミン、オキシエチレン化エチレンジアミンである。
【0051】
また、他の成分と良好な相溶性が得られ、均一な被覆層が容易に形成されることから、前記ポリオール成分として前述したアミン系ポリオールを好適に用いることができる。また、該アミン系ポリオールは反応を促進すると共に架橋剤および鎖延長剤としても働き、良好な硬化性と強靭な被覆層が得られるため好ましい。また、該アミン系ポリオールの使用量は、均一に被覆された後に架橋反応が進むように調整されればよい。
【0052】
また、前記第1の被覆材及び第2の被覆材等の被覆材において、イソシアネート成分とポリオール成分との全量に含まれるイソシアネート基と水酸基とのモル比の割合は、イソシアネート基/水酸基の比率として0.6〜1.5となるようにするのが好ましい。この比率が0.6未満または1.5を越える場合には得られる被覆層の架橋が充分ではなく、水溶性粒状体の成分の溶出速度が、好適なものとならないことがある。また、前記被覆層に未反応のイソシアネート基を残さず、また該被覆層に柔軟性を付与する目的で、イソシアネート基/水酸基の比率として0.6〜0.99とすることも好ましい。さらに、最外層よりも内層の被覆層の該比率を前記のように0.6〜0.99としたとき、該最外層のイソシアネート基/水酸基を1〜1.5とすることで、該被覆層表面の過剰な水酸基と該最外層の過剰なイソシアネート基を反応させることができ、より効果的に被覆層を形成することが可能となるため、好ましい。
【0053】
前記被覆層の形成後、前記被覆体を流動状態又は転動状態に維持しながら、加熱を行い該被覆層を熱硬化させ、被覆水溶性粒状体を得る。このときの加熱時間は、加熱温度、被覆材の種類、量により異なるが、少なくとも最外層が粘着性を示さなくなるまで加熱を行うのであればよい。また、該最外層が粘着性を示さなくなった後、ウレタン反応を促進するためさらに加熱を行ってもよいが、加熱時間が長くなり過ぎると生産性が低下するばかりでなく、徐々に該最外層が被覆装置との接触により磨耗してしまい、該最外層表面に損傷を与えてしまうことがあるため、該損傷が生じない程度にする必要がある。例えば、該最外層が粘着性を示さなくなる時間の10倍以下としてもよい。また、前記加熱方法としては被覆装置からの伝導熱や熱風等を用いるのが好ましい。
【0054】
前記第1の被覆材及び第2の被覆材等の被覆材には、ウレタン結合の形成を促進するために触媒を添加してもよく、例えば、ジブチルスズラウレート、オクテン酸鉛などの有機金属触媒が使用できる。
【0055】
また、前記第1の被覆材及び第2の被覆材等の被覆材から得られる被覆層の溶出特性や粘着性を調整することを目的として、高吸水性樹脂や植物油等を含んだ被覆材を用いても良い。
【0056】
前記植物油は非反応成分であり、該植物油が空隙として作用することでウレタン樹脂の三次元構造を疎とすることが可能であり、該空隙への水の浸透が容易になり、被覆材硬化時の粘着性を低下させることができる。また該植物油は、単独で加えても差し支えないが、イソシアネート成分やポリオール成分等と予め混合して、均一な液体として供給されるのが好ましい。
【0057】
植物油としては、例えばココナッツオイル、コーン油、綿実油、オリーブ・オイル、パーム油、ピーナッツ油、菜種油、キャノーラ油、サフラワー油(紅花油)、ごま油、大豆油、ヒマワリ油、あまに油、トール油、およびそれらの混合物が挙げられる。これらのうちオレイン酸またはリノール酸成分の含有量の多い植物油が好ましく、菜種油、キャノーラ油、大豆油などが好ましく、菜種油、キャノーラ油がより好ましい。また、植物油の一部または全部をこれらの植物油に含まれる脂肪酸のトリグリセリドに代えて使用することもできる。該脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸などが挙げられる。
【0058】
前記高吸水性物樹脂は、水を多量に吸収することで乾燥体積の5倍以上に膨潤する物質である。特に吸水時に溶解性が低くゲル状になるものが好ましい。例えば、アクリル酸塩系重合体(例えば、住友化学工業(株)製スミカゲルS、L、Rタイプ、住友精化(株)製のアクアキープ10SH、10SHP、10SH−NF(20)、SA60NTYPE2、積水化成品工業(株)製のアクアメイトAQ−200、AQ−200B−02、三洋化成工業(株)製のサンフレッシュST−250MPS、ST−500MPSA)、イソブチレン系重合体(例えば、(株)クラレ製のKIゲル−201K、KIゲル−201K−F2、KIゲル溶液システム、KIゲルコンパウンド)、アクリル酸・ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンオキサイド変性樹脂、澱粉グラフト重合体、澱粉(例えば、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、甘藷澱粉、可溶性澱粉)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、CMC金属塩およびベントナイトが挙げられる。これらのうち、アクリル酸塩系重合体、イソブチレン系重合体、澱粉が好ましく、アクリル酸塩系重合体が特に好ましい。
【0059】
前記高吸水性樹脂の粒径は、1〜100μmであることが好ましく、2〜50μmがより好ましい。1μm未満では高吸水性樹脂を加えたことによる溶出時期、溶出速度の変化が小さく、また、100μmを超えると均一性のよい被覆層が得られず、被覆層表面に欠陥を生じやすくなることがある。
【0060】
前記高吸水性樹脂の添加量はその粒径により異なるが、通常、ウレタン樹脂と高吸水性樹脂の合計質量の0.1〜30質量%であり、0.5〜20質量%が好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。0.1質量%未満では高吸水性樹脂を加えたことによる溶出時期、溶出速度の変化が小さく、これをもって溶出特性の調節を行うのは効果的でない。また、30質量%を超えると親水性が大きくなり溶出開始時期の調節が困難となることがある。
【0061】
また、前記高吸水性樹脂はポリオール成分と予め混合・分散させて分散液を調製し、該分散液をポリイソシアネート成分と混合した直後に水溶性粒状体に加える、または別々に被覆装置内の水溶性粒状体に加える等、によって供給されるのが好ましい。また、前記高吸水性樹脂は、該高吸水性樹脂を含む層が、最外層以外であれば何れに位置する層であってもよい。
【0062】
また、実質的に本発明の被覆層の性質を損なわない限り、前記高吸水性樹脂以外にも第1の被覆材及び第2の被覆材等の被覆材に有機系または無機系の添加材を加えることも可能である。添加材の例としては、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、脂肪酸エステル、ロジンおよびその誘導体、エステルガム、界面活性剤、石油樹脂、タルク、ケイソウ土、シリカ、尿素、イオウ粉末等が挙げられる。これらを本発明のウレタン樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部で添加し、これらの種類および添加量によって作業性または溶出特性の調節を行うことも可能である。
【0063】
また、本発明の被覆水溶性粒状体においては、該被覆水溶性粒状体相互の固着を防止することを目的として、前記最外層の表面を無機質粉末で処理してもよい。該無機粉末としては、例えばタルク、イオウ、炭酸カルシウム、シリカ、ゼオライト、ケイソウ土、クレー、金属酸化物等が挙げられ、これらを単独又は混合して用いてもよく、取扱いが容易であることからタルクを用いるのが好ましい。
【0064】
前記無機質粉末は、被覆層に対して0.1〜15質量%用いることが好ましく、1〜10質量%であるのがより好ましい。0.1質量%未満では固着防止効果が弱く、また、15質量%を超えて使用しても被覆水溶性粒状体の表面に付着しない。また、該無機質粉末は前記最外層の形成後に、粉末のままで転動又は流動状態にある被覆水溶性粒状体に散布すると、該無機質粉末が該最外層の表面に留まり被覆層の中に入り込まないため、溶出が安定するため好ましい。
【0065】
本発明の被覆水溶性粒状体は、溶出成分の溶出パターンが調節可能であることから、粒状肥料を被覆した被覆粒状肥料として好適に使用される。該被覆粒状肥料は、水溶性の粒状肥料であればよく、その例としては、尿素、塩安、硫安、硝安、塩化カリ、硫酸カリ、硝酸カリ、硝酸ソーダ、燐酸カリ、燐酸アンモニア、および燐酸石灰、からなる群から選ばれる少なくとも1種の肥料又は複合肥料、および粒状の有機肥料等が挙げられる。
【0066】
また、本発明の被覆水溶性粒状体は、粒状農薬を被覆した被覆粒状農薬として好適に使用される。該被覆粒状農薬は、水溶性の粒状農薬であればよく、その例としては、各種の殺虫剤、昆虫忌避剤、殺菌剤、除草剤、殺そ剤、植物生長調整剤等が挙げられる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により本発明を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明の製造条件を表1に示した。
【0068】
[実施例1]
粒状尿素(粒径2.5〜4.0mm)100kgを直径1.4mのドラム型転動被覆装置に仕込み、7rpmで転動させながら、熱風発生機により粒状尿素温度を70℃に保持した。
【0069】
次に、第1層目の被覆層としてひまし油(水酸基価160mgKOH/g)と、エチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物(プロピレンオキサイド/窒素原子の比;2.2、水酸基価;760mgKOH/g)を水酸基のモル比が8:2となるように混合した液764gと、MDI変成ひまし油(ひまし油を過剰量のMDIと混合してイソシアネート基の質量を全質量の19質量%としたイソシアネート基末端プレポリマー)839gとを、被覆材(合計1,603g(1.6質量%、膜厚10.8μmに相当する))として二流体ノズルから装置内に30秒かけて噴霧(塗布)し被覆体を形成した。被覆材の噴霧から2.5分後に被覆体は付着しはじめ、3分後にみかけの体積が最大となり、3.5分後には被覆体同士は強く付着するものの塊状体が一部ほぐれているのを確認した。
【0070】
次に、第1層目の被覆材の噴霧から3.5分後に第2層目の被覆層として第1層目と同一成分、同一量(1.6質量%)の被覆材を二流体ノズルから装置内に30秒かけて噴霧した。
【0071】
次に、第2層目の被覆材の噴霧を終えてから3.5分後に、最外層として第1層目と同一成分の被覆材(合計534g(0.5質量%、膜厚3.6μmに相当する))を二流体ノズルから装置内に10秒かけて噴霧した。該最外層の被覆材の噴霧から約2.5分後に被覆体は付着しはじめ、3.0分後には該被覆体は強く付着するものの塊状体は形成せず、3.5分後には塊状体の体積が減少しはじめ、7分後には付着する被覆体はなくなることを確認した。
【0072】
次に、最外層の被覆材の噴霧を終えてから約30分間転動させ、被覆体の被覆層を硬化させた。これを常温(約25℃)まで冷却し、目的の被覆粒状肥料を得た。
【0073】
得られた被覆粒状肥料について、良品率、被覆率を測定し、その結果を表2に記載した。表2から、時間経過と共に生じる良品率の低下が抑えられ、被覆層の欠陥が大幅に抑制できたことがわかった。なお、このとき被覆率は3.5質量%でこのときの被覆層の厚さは25μmであった。
【0074】
【表1】

【0075】
[良品率の評価]
最外層の被覆材を噴霧後、加熱を行った30分間に発生する欠陥を確認するため、所定時間経過後に被覆粒状肥料を取り出し、良品率の測定を行なった。
【0076】
縮分した被覆粒状肥料のうち10gを採取して、予め希釈したインク(S−1(赤),シヤチハタ社製)希釈液(2.5g/250ml純水)を、被覆粒状肥料が完全に浸漬するまで加え25℃で1時間静置し、該被覆粒状肥料をろ過回収した。続いて該被覆粒状肥料に付着したインクを水洗後、インクで着色された被覆粒状肥料および溶出が完了した被覆層を取り除き、着色されなかった被覆粒状肥料の質量から良品率((非着色被覆粒状肥料の質量)g/10g×100)を算出し、その結果を表2に示した。
【0077】
[被覆率の測定]
得られた被覆粒状肥料を縮分して被覆率((被覆層質量/被覆粒状肥料の質量)×100)を算出した。
【0078】
【表2】

【0079】
[実施例2]
最外層として噴霧する被覆材の質量を合計1,074g(1.0質量%、膜厚7.2μmに相当する)とした以外は、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料について、良品率の評価、被覆率の測定を行った。表2から、時間経過と共に生じる良品率の低下が抑えられ、さらに被覆層の欠陥が大幅に抑制できたことがわかった。また、被覆率は4.0質量%でこのときの被覆層の厚さは29μmであった。
【0080】
[実施例3]
最外層として噴霧する被覆材の質量を合計213g(0.2質量%、膜厚1.4μmに相当する)とした以外は、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料について、良品率の評価、被覆率の測定を行った。表2から、時間経過と共に生じる良品率の低下が抑えられ、被覆層の欠陥が大幅に抑制できたことがわかった。なお、被覆率は3.2質量%でこのときの被覆層の厚さは23μmであった。
【0081】
[実施例4]
第1層目の被覆材の噴霧から2.8分後(塊状体の体積が最大になる直前)に、第2層目の被覆材の噴霧を開始し、さらに第2層目の被覆材の噴霧を終えてから2.8分後に最外層の被覆材を噴霧し始めた以外は、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料について、良品率の評価、被覆率の測定を行った。表2より、実施例1と同様に被覆層の欠陥を大幅に抑制することが可能であることがわかった。なお、被覆率は3.5質量%でこのときの被覆層の厚さは25μmであった。
【0082】
[実施例5]
粒状尿素の温度を60℃に保持し、第1層目の被覆層を形成する際、ひまし油と、エチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物を水酸基のモル比が8:2となるように混合した液967gと、MDIオリゴマー(平均分子量約400)653gとを、被覆材(合計1,620g(1.6質量%、膜厚11.0μmに相当する))とし、ニ流体ノズルから装置内に30秒かけて噴霧し、第1層目の被覆材の噴霧から1.5分後に第2層目の被覆材として、第1層目と同一成分の被覆材(合計2,700g(2.6質量%、膜厚18.3μmに相当する))を二流体ノズルから装置内に30秒かけて噴霧し、さらに、第2層目の噴霧から1.8分後に最外層に第1層目と同一成分の被覆材(合計540g(0.5質量%、膜厚3.7μmに相当する))を二流体ノズルから装置内に10秒かけて噴霧した後20分間転動させ、被覆体の被覆層を硬化させた以外は、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料について、良品率の評価、被覆率の測定を行った。
【0083】
また、実施例5の被覆材について上記とは別に予め以下の検討を行った。第1層目の被覆材は、噴霧から1分後に被覆体は付着し始め、1.5分後に塊状体が最大となり、2分後には被覆体同士は付着するものの塊状体がほぐれた状態となった。また、第2層目の被覆材は、噴霧から1.5分後に被覆体は付着し始め、2分後に塊状体が最大となり、3分後には被覆体同士は付着するものの塊状体がほぐれた状態となった。また、最外層の被覆材は、噴霧から5分後には被覆体同士が付着することがなくなった。
【0084】
表2より、時間経過と共に生じる良品率の低下が抑えられ、被覆層の欠陥が大幅に抑制できたことがわかった。なお、被覆率は4.5質量%でこのときの被覆層の厚みは33μmであった。
【0085】
[実施例6]
第1層目の被覆層を形成する際、ポリプロピレントリオール(水酸基価280mgKOH/g)とエチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物とを水酸基のモル比が75:25となるように混合した液562gと、MDI変成ひまし油878gとを、被覆材(合計1,440g(1.4質量%、膜厚9.5μmに相当する))とし、第1層目の噴霧から4.5分後に、第1層目と同一成分、同一量の被覆材を二流体ノズルから装置内に30秒かけて噴霧し、第2層目の噴霧を始め、第2層目の噴霧を終えてから4.5分後に第3層目の噴霧を始め、第3層目の噴霧から4.5分後に最外層として、第1層目と同一成分の被覆材(合計540g(0.5質量%、膜厚0.5μmに相当する))を二流体ノズルから装置内に10秒かけて噴霧した以外は、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料について、良品率の評価、被覆率の測定を行った。
【0086】
また、実施例6の被覆材について上記とは別に検討を行った。1〜3層目の被覆材は、噴霧から3.5分後に被覆体が付着し始め、4分後に塊状体を形成し、4.5分後には被覆体同士は付着するものの塊状体はほぐれた状態となった。また、最外層の被覆材は、噴霧を終えてから10分後には被覆体同士が付着することはなくなった。
【0087】
表2より、時間経過と共に生じる良品率の低下が抑えられ、被覆層の欠陥が大幅に抑制できたことがわかった。なお、被覆率は4.5質量%でこのときの被覆層の厚さは33μmであった。
【0088】
[実施例7]
粒状尿素(粒径2.5〜4.0mm)100kgを直径1.4mのドラム型転動被覆装置に仕込み、7rpmで転動させながら、熱風発生機により粒状尿素温度を70℃に保持した。
【0089】
次に、第1層目の被覆層を形成する際、ひまし油(水酸基価160mgKOH/g)と、エチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物(プロピレンオキサイド/窒素原子の比;2.2、水酸基価;760mgKOH/g)を水酸基のモル比が8:2となるように混合した液772gと、高吸水性樹脂(平均粒径25μmの架橋アクリル酸塩重合体;三洋化成工業製ST−500MPSA)64gと、MDI変成ひまし油(ひまし油を過剰量のMDIと混合してイソシアネート基の質量を全質量の19%としたイソシアネート基末端プレポリマー)848gとを、被覆材(合計1,684g(1.7質量%、膜厚11.4μmに相当する))として二流体ノズルから装置内に30秒かけて噴霧(塗布)し、第1層目の噴霧から3.5分後に第2層目の被覆層として第1層目と同一成分、同一量の被覆材を二流体ノズルから装置内に30秒かけて噴霧(塗布)した。
【0090】
次に、第2層目の噴霧から3.5分後に第3層目の被覆層として、ひまし油(水酸基価160mgKOH/g)とエチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物(プロピレンオキサイド/窒素原子の比;2.2、水酸基価;760mgKOH/g)を水酸基のモル比が8:2となるように混合した液1,070gと、MDI変成ひまし油(ひまし油を過剰量のMDIと混合してイソシアネート基の質量を全質量の19%としたイソシアネート基末端プレポリマー)1,175gとを、被覆材(合計2,245g(2.1質量%、膜厚15.3μmに相当する))として二流体ノズルから装置内に30秒かけて噴霧(塗布)し、第3層目の噴霧から4分後に第4層目の被覆層として第3層目と同一成分、同一量の被覆材を二流体ノズルから装置内に30秒かけて噴霧(塗布)した。
【0091】
次に、第4層目の噴霧から4分後に最外層として第3層目と同一成分の被覆材(合計1,122g(1.0質量%、膜厚3.8μmに相当する))を二流体ノズルから装置内に10秒かけて噴霧(塗布)した。最外層を形成する際、噴霧を終えてから7分後には被覆体同士が付着することはなくなった。
【0092】
次に最外層の噴霧を終えてから30分間転動させ、被覆体上に被覆層を形成した。これを常温(約25℃)まで冷却し、目的の被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料について、良品率の評価、被覆率の測定を行った。表2より、時間経過と共に生じる良品率の低下が抑えられ、被覆層の欠陥が大幅に抑制できたことがわかった。なお、被覆率は8質量%でこのときの被覆層の厚さは60μmであった。また、実施例7で用いた被覆材の熱硬化反応は、実施例1で用いた被覆材と同様の傾向を示した。
【0093】
[比較例1]
第1層目と第2層目の被覆材の噴霧間隔を10分とし、第3層目を形成しなかった以外は、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。また、得られた被覆粒状肥料について、良品率の評価、被覆率の測定を行った。表2より、時間経過と共に良品率が大幅に低下しており、被覆層の欠陥が増大していることがわかった。なお、被覆率は3.0質量%でこのときの被覆層の厚さは22μmであった。
【0094】
[比較例2]
第1層目と第2層目の被覆材の噴霧量を1,870g(1.75質量%、膜厚12.5μmに相当する)、被覆材の噴霧間隔を10分とし、第3層目を形成しなかった以外は、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。また、得られた被覆粒状肥料について、良品率の評価、被覆率の測定を行った。表2より、時間経過と共に良品率が大幅に低下しており、被覆層の欠陥が増大していることがわかった。なお、被覆率は3.5質量%でこのときの被覆層の厚さは25μmであった。
【0095】
[比較例3]
被覆材の噴霧間隔を10分とした以外は、実施例7と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。また、得られた被覆粒状肥料について、良品率の評価、被覆率の測定を行った。表2より、時間経過と共に良品率の低下が見られ、被覆層の欠陥が発生していることがわかった。なお、被覆率は8質量%でこのときの被覆層の厚さは60μmであった。
【0096】
[比較例4]
被覆層を7層とし、被覆材の噴霧量を508g(0.5質量%、膜厚3.5μmに相当する)、被覆材の噴霧間隔を7分とし、7層全ての被覆材の噴霧量を同じとした以外は、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。また、得られた被覆粒状肥料について、良品率の評価、被覆率の測定を行った。表2より、時間経過と共に良品率が大幅に低下しており、被覆層の欠陥が増大していることがわかった。なお、被覆率は3.5質量%でこのときの被覆層の厚さは25μmであった。
【0097】
[比較例5]
被覆材の噴霧間隔を10分とした以外は、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。また、得られた被覆粒状肥料について、良品率の評価、被覆率の測定を行った。表2より、時間経過と共に良品率が大幅に低下しており、被覆層の欠陥が増大していることがわかった。なお、被覆率は3.5質量%でこのときの被覆層の厚さは25μmであった。
【0098】
[比較例6]
被覆材の噴霧間隔を2分とした以外は、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。また、得られた被覆粒状肥料について、良品率の評価、被覆率の測定を行った。表2より、時間経過と共に良品率が大幅に低下しており、被覆層の欠陥が増大していることがわかった。なお、被覆率は3.2質量%でこのときの被覆層の厚さは23μmであり、良好な被覆ができていなかった。
【0099】
全体の被覆率が3.5質量%である、実施例1、実施例4、比較例2、比較例4〜6を比較すると、被覆層の数が少ない比較例2よりも実施例1及び実施例4の方が良品率が高く、また、層数を同じくした比較例4〜6よりも実施例1及び実施例4の方が良品率が高いことがわかった。
【0100】
また、実施例1と実施例4とを比較すると、良品率は同程度であることから、被覆膜を形成する際、被覆層を形成する熱硬化性樹脂の硬化が不十分で次層の被覆材を噴霧しても良好な良品率が維持されることがわかった。また、実施例1、実施例4、比較例5、比較例6を比較すると、被覆層を十分熱硬化させた後に次層の形成を行うと良品率は大きく低下し、一方で、被覆材を噴霧するのが早過ぎる場合でも良品率の低下が見られることがわかった。
【0101】
また、全体の被覆率が8質量%の実施例7と比較例3を比較すると、両者とも高い良品率を実現するものであり、被覆率を高くすることで良品率の向上が図れることがわかる。また、比較例4についても、被覆率が3.5質量%で多層化により高い良品率を実現するものであると言えるが、比較例3及び比較例4は、積層する被覆層を1層毎に十分熱硬化させたものであり、製造時間が長くなることから、本発明の目的には適さないと言える。
【0102】
以上より、被覆層を形成する熱硬化性樹脂の熱硬化が不十分な状態で次層を積層すると、全体の被覆率が同じであっても、良品率が高い被覆粒状肥料が得られ、さらに製造時間を短縮することが可能であることがわかった。
【0103】
[溶出試験]
実施例1〜実施例7、及び比較例1〜比較例6について、得られた被覆粒状肥料を縮分して溶出試験を行い、その結果を表3に示した。溶出試験は縮分した被覆粒状尿素のうち10gを採取して200ccのイオン交換水に投入し、25℃の恒温槽内に保存して所定時間経過後に取り出し、水中に溶出した尿素を定量して求めた。なお、表3には、それぞれ10%、50%、80%の尿素の溶出が見られた日数を示した。
【0104】
【表3】

【0105】
表3より、被覆率が同程度であっても実施例1、実施例4、実施例7の方が比較例2、比較例4、比較例5、比較例6、比較例3よりも溶出を抑制する効果を長期間持続させることが可能であり、さらに初期の溶出を抑制する効果が高いことが示された。また、実施例7と比較例3を比較した場合、実施例7は比較例3よりも製造時間が短いのにも関わらず、比較例3よりも長期間にわたって肥料成分の溶出を抑制することが可能であることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性粒状体の表面に2層以上の被覆層が形成された被覆水溶性粒状体の製造方法であって、
ポリオール成分及びイソシアネート成分を含む第1の被覆材を供給した後、当該第1の被覆材の熱硬化が不十分な被覆層を有する第1の被覆体の表面に新たに第2の被覆材を供給して、第2の被覆材の被覆層が形成された第2の被覆体を得る工程A、
を含むことを特徴とする被覆水溶性粒状体の製造方法。
【請求項2】
前記工程Aを2〜10回繰り返して2〜10層の被覆層形成することを特徴とする請求項1に記載の被覆水溶性粒状体の製造方法。
【請求項3】
前記第2の被覆材がポリオール成分及びイソシアネート成分を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の被覆水溶性粒状体の製造方法。
【請求項4】
前記第1の被覆材の供給を完了した後、前記第1の被覆体同士が付着して塊状体が形成され始める時間をT、その後塊状体の体積が最大になる時間をTとするとき、次の関係式
0.5≦(T−T)/(T−T)≦3.0
を満たすTの時間的範囲内に、前記第2の被覆材の供給を開始することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の被覆水溶性粒状体の製造方法。
【請求項5】
次の関係式
0.5≦(T−T)/(T−T)≦2.0
を満たすTの時間的範囲内に、前記第2の被覆材の供給を開始することを特徴とする請求項4に記載の被覆水溶性粒状体の製造方法。
【請求項6】
前記第1の被覆材及び前記第2の被覆材が、アミン化合物を含むものであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の被覆水溶性粒状体の製造方法。
【請求項7】
前記被覆水溶性粒状体の質量に対して、被覆層の1層あたりの質量が0.5〜5質量%であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の被覆水溶性粒状体の製造方法。
【請求項8】
前記水溶性粒状体の粒径が1〜10mmであることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の被覆水溶性粒状体の製造方法。
【請求項9】
前記水溶性粒状体が肥料であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の被覆水溶性粒状体の製造方法によって製造された被覆粒状肥料。
【請求項10】
前記水溶性粒状体が農薬であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の被覆水溶性粒状体の製造方法によって製造された被覆粒状農薬。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−173780(P2011−173780A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212340(P2010−212340)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】