説明

被覆電線の分別処理装置

【課題】 被覆外径が3.2mm程度の細い単線〜太い単線(例えば被覆材外径が20mm程度)、PEで被覆した撚り線、ケーブル等を一台の装置で分別処理可能にする。
【解決手段】 被覆電線の分別処理装置200は、対向する一対の回転軸10、15に、対向する一対の回転刃物30、30及び対向する一対の圧延ロール20、20を直列に取り付けた構成であり、一対の回転刃物30、30は単線、PEで被覆した撚り線、ケーブル等の被覆材に切れ目を二方向から入れて被覆材と芯線とを分別処理可能にする。対向する一対の圧延ロール20、20は被覆外径が3.2mm程度以上の単線を圧潰して高速で被覆材に亀裂を生じさせ被覆材と芯線とを効率よく分別処理可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆電線を被覆材と芯線とに分別処理する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被覆電線の被覆材と芯線とを分離して回収する装置であって、被覆電線を挾持して送り方向に送り込む一対の送込ローラと、被覆電線の被覆材を対称位置から切り裂く一対の回転刃と、上記一対の回転刃で切り裂かれた被覆材を芯線から分離させる被覆材分離具とから構成されたことを特徴とする被覆電線の被覆材・芯線分離回収装置として特開平11−196514号公報が提案されている。
また、被覆電線を一対の圧延ロールで圧延して被覆材を破壊して該被覆材を芯線から分離し、かつ前記圧延ロールの対向間隔を目盛で表示するようにした構成として特開平6−150748号公報が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−196514号公報
【特許文献2】特開平6−150748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献1における被覆電線の被覆材・芯線分離回収装置は、構成が複雑で装置が大きく、価格も大であった。また、被覆外径が3.2mm程度の細い単線に切れ目を施すことが困難で分別処理しにくかった。
【0005】
特許文献2における被覆電線の被覆材・芯線分離回収装置は、刃物を用いず圧潰により効率よく単線を分別できるものの、ケーブル(被覆した単線または被覆した撚り線を複数本束ねたもの)の分別処理ができなかった。また、ポリエチレン樹脂(PE)で被覆した撚り線を分別処理するのが困難であった。さらに、圧延ロールの対向間隔を目盛で表示するものの、目盛ダイヤルを複数回まわして対向間隔を調節しているため廻した回数を記憶しておかねばならず煩わしかった。また、目盛ダイヤルを廻した回数を忘れ、圧延ロールの対向間隔を前記圧延ロール部の目視により確認する必要があった。
本発明は被覆材の外径が3.2mm程度の細い単線〜太い単線(例えば、被覆材の外径が20mm程度)、PEで被覆した撚り線、ケーブル等を一台の装置で分別処理可能にすることを目的とする。また、装置を卓上型の小型・軽量に構成すること、故障が少なく取り扱いを簡便にすること、低価格を実現すること等を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる被覆電線の分別処理装置は、平行に対向する一対の回転軸に、対向する一対の回転刃物及び対向する一対の圧延ロールを直列に取り付けたことを特徴としたもので、対向する一対の回転刃物により被覆外径が3.2mm程度の細い単線〜太い単線(例えば被覆材の外径が20mm程度)、PEで被覆した撚り線、ケーブル等の被覆材に切れ目を二方向から入れることが出来、被覆材と芯線(銅、AL等からなる)とを分別処理できる。また、対向する一対の圧延ロールにより被覆外径が3.2mm程度以上の単線を圧潰して高速で被覆材に亀裂を生じさせ(被覆材を破断)、被覆材と芯線とを効率良く分別処理できる。その結果、一台の装置で単線、PEで被覆した撚り線、ケーブル等の分別処理が可能になる。
さらに本発明にかかる被覆電線の分別処理装置は、平行に対向する一対の回転軸の対向間隔を可変にする回転軸対向間隔可変手段と、前記回転軸対向間隔可変手段に同期して前記回転軸対向間隔を表示する目盛板とを備え、前記回転軸対向間隔可変手段と前記目盛板とに連繋する歯車列により減速して前記目盛板の略1回転で前記回転軸対向間隔の最小値から最大値までを表示するようにしたことを特徴としたもので、これにより平行に対向する一対の回転軸の対向間隔を被覆電線の外径に応じて目盛板で容易に設定できる。
【0007】
さらに本発明にかかる被覆電線の分別処理装置は、対向する一対の回転刃物がオーバラップできるようにいずれか一方の回転刃物の位置を前記回転軸の長軸方向に左右どちらか一方に0.1mm〜0.2mm程度ずらしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
上記構成により本発明の被覆電線の分別処理装置は、被覆外径が3.2mm程度の細い単線〜太い単線、PEで被覆した撚り線、ケーブル等を一台の装置で被覆材と芯線とに分別処理できる。また、装置を卓上型の小型・軽量たとえば縦375mm、横290mm、奥行き285mm、重さ27kgなどに構成できる。故障が少なく取り扱いを簡便にすることができる。低価格を実現できる。さらに目盛板を指標として、対向する一対の回転軸の対向間隔を被覆電線の外径に応じて容易に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例における被覆電線の分別処理装置の外装を取り外した状態の要部正面図
【図2】図1に外装を取り付けた状態の要部正面図
【図3】図1に外装を取り付けた状態の要部側面図
【図4】図1を構成する一対の圧延ロールで被覆電線を圧潰し被覆材を破断する過程を示す要部側面図
【図5】図3を正面から見た被覆電線破断過程の模式図
【図6】図1を構成する一対の回転刃物で被覆電線に切れ目を上下二方向から入れている過程を示す要部側面図
【図7】図1を構成する回転軸対向間隔可変手段の概念の要部側面図
【図8】図1を構成する目盛板の平面図
【図9】一般的な撚り線の一例の概観斜視図
【図10】一般的なケーブルの一例の断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明装置で分別処理する電線は単線、撚り線、ケーブルの概略3種類に大別される。単線は1本の芯線(銅またはアルミニウムなどの金属線)をポリ塩化ビニールなどの被覆材で覆ったもの。撚り線は複数本の金属線を捩って芯線とし、該芯線をポリ塩化ビニールまたはポリエチレンなどの被覆材で覆ったもの(図9参照)。ケーブルは前記単線もしくは前記撚り線を複数本束ねポリ塩化ビニールなどの樹脂製被覆材で覆ったものである(図10参照)。
本発明にかかる被覆電線の分別処理装置は上述の通りである。図1は本発明の一実施例における被覆電線の分別処理装置の外装を取り外した状態の要部正面図、図2は図1に外装を取り付けた状態の要部正面図、図3は図1に外装を取り付けた状態の要部側面図、図4は図1を構成する一対の圧延ロールで被覆電線を圧潰し被覆材を破断する過程を示す要部側面図、図5は図3を正面から見た被覆電線破断過程の模式図、図6は図1を構成する一対の回転刃物で被覆電線に切れ目を上下二方向から入れている過程を示す要部側面図である。
図1〜図6に示す本発明の被覆電線の分別処理装置200は、平行に対向する一対の回転軸に、対向する一対の回転刃物30、30及び対向する一対の圧延ロール20、20を取り付けたことを特徴とする。また、対向する一対の回転軸10、15の対向間隔を可変にする回転軸対向間隔可変手段と、前記回転軸対向間隔可変手段に同期して前記回転軸10、15の対向間隔を表示する目盛板40とを備え、前記回転軸対向間隔可変手段と前記目盛板40とに連繋する歯車列により減速し、前記目盛板40の略1回転で前記回転軸対10、15の向間隔の最小値から最大値までを表示するようにしたことを特徴とする。
【0011】
単線1の分別処理は図1、図4に示すごとく、対向する一対の圧延ローラ20、20で挟持、押圧して金属芯線2と被覆材3の密着を解き、かつ被覆材の上下部2箇所に亀裂をつくる。図5に単線1の被覆材3を破断する過程の模式図を示す。前記一対の圧延ローラ20、20は回転軸10、15に取り付き、タイミングベルト車80、81によって矢印方向に回転駆動される。なお、タイミングベルトと駆動モータは図示していない。
【0012】
撚り線またはケーブルの分別処理は図1、図6に示すごとく、対向する一対の回転刃物30、30で挟持、押圧して被覆材を上下方向から切断する。前記回転刃物30、30は回転刃物保持部材35、35を介して回転軸軸受部材67に取り付き、タイミングベルト車80、81によって矢印方向に回転駆動される。回転刃物30、30はそれぞれ回転刃保持部材35、35に着脱自在に固定されている。回転刃物30は回転刃保持部材35とプレート37で挟持し締結ねじ36で締結されている。なお、圧延ローラ20の外径より回転刃物30の外径の方を所定量だけ大きく設定している。また図1において、対向した一対を成す上下の回転刃物30、30がオーバラップできるように上下の回転刃物30、30の内、いずれか一方の位置を前記回転軸の長軸方向に左右どちらかに0.1mm〜0.2mm程度少しずらしている。
【0013】
さらに図7に示すごとく、本発明の被覆電線の分別処理装置200は対向する一対の回転軸10、15の対向間隔を可変にする対向間隔可変手段を備えてなる。即ち、回転軸10に平行な支軸66を中心に回転軸10を所定間隔の2箇所で支承する軸受部材67が回動して上下する。軸受部材67の右側先端のU字部にナット部材65の軸部130が係合している。該ナット部材65は1本の雄ねじ軸60と係合し、両側方向に軸部130を延出している。前記雄ねじ軸60は回転軸10の軸受部材67と略直交しており、回転自在にスラスト軸受70と筐体の上面に配設した軸受け部とで鉛直方向に支承されている。
【0014】
前記雄ねじ軸60の上端部には手動で回転させるハンドル50が付属している。ハンドル50を回すと前記雄ねじ軸60が回転し、該雄ねじ軸60と螺合するナット部材65が上下する。ナット部材65は軸受部材67の右側先端部に係合している。その結果、ナット部材65の上下に追従して支軸66を中心に上側の回転軸10を支承する軸受部材67が回動して上下する。即ち、軸受部材67が上下して圧延ローラ20、20の間隔及び回転刃物30、30の間隔を変化させる。
さらに、被覆電線の分別処理装置200は筐体の上面側に圧延ローラ20、20の間隔及び回転刃物30、30の間隔を目視可能に表示する目盛板40を備えてなる。該目盛板40は前記対向間隔可変手段に同期して回転する。詳しくは雄ねじ軸65の回転を減速して目盛板40に伝達するもので、雄ねじ軸65と目盛板40とに連繋する3個の歯車列61、62、63により目盛板40は略1回転で前記対向間隔の最小値から最大値までを表示する。
【0015】
さらに、被覆電線の分別処理装置200は図1に示すごとく、圧延ローラ20、20は軸受部材67の内側に位置させ、回転刃物30、30は軸受部材67の外側に位置させている。これは回転刃物30、30の交換を容易にする為である。即ち図3に示すごとく、回転刃物30、30を交換する際、拳が通る程度の直径約130mm程度の貫通穴140を筐体の右側板101に設けている。該貫通穴140は通常、蓋(図示せず)で塞がれている。回転刃物30,30を交換するときは前記蓋をはずし回転刃物保持部材35と回転刃物30との締結を解除して交換すればよい。
【0016】
さらに図2、図3に示すごとく、筐体の前板100には圧延ローラ20、20部に単線を挿入する貫通穴110と、回転刃物30、30に撚り線もしくはケーブルを挿入する貫通穴120とを設けている。前記貫通穴110、120にはそれぞれ電線ガイド115,125を装着してなる。電線ガイド115,125は輪状をなし、断面形状を略半球状に丸味を持たせて電線が引っかからないよう形成している。
【0017】
さらに、被覆電線の分別処理装置200は、一対の回転刃物30,30と電線ガイド125との間に撚り線もしくはケーブルの幅を左右から挟むように規制する2個の位置規制部材を備えてなる(図示せず)。該2個の規制部材は互いに連動して移動するようにする連動手段を備えている。該2個の規制部材の間隔は常に狭まるようにバネで付勢している(図示せず)。さらに、前記2個の位置規制部材はおのおの所望の位置に固定できるよう2個の固定手段を備えている(図示せず)。
【実施例】
【0018】
図10に示す電線は被覆材8の外径が約20mmの一般的なケーブル5の断面図を示す。該ケーブル5を本発明装置200の対向する一対の回転刃物30、30により上下二方向から切れ目を単線9の被覆材6に接する程度まで入れた後、手作業により被覆材8を剥離して3本の単線9を取り出した。前記単線9の被覆材6は外径が約7.4mm程度である。次に、前記単線9を対向する一対の圧延ロール20、20により挟持、押圧して被覆材6を破断し、同じく手作業により被覆材6を剥離して芯線7を取り出した。
上記構成により本発明の被覆電線の分別処理装置は、対向する一対の回転刃物により被覆外径が3.2mm程度の細い単線〜太い単線(例えば被覆材外径が20mm程度)、PEで被覆した撚り線、ケーブル等の被覆材に切れ目を二方向から入れることが出来、被覆材と芯線とを分別処理できる。また、対向する一対の圧延ロールにより被覆外径が3.2mm程度以上の単線を圧潰して高速で被覆材に亀裂を生じさせ被覆材と芯線とを効率良く分別処理できる。
【0019】
なお上記本発明装置において、被覆材に切れ目を形成する、または圧潰により破断を行った後、更に被覆材と芯線とを自動的に分別処理する自動分別手段(図示せず)を任意に付加してよいことは自明である。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は芯線が銅、アルミニウムなどの金属部材からなる電線に限らず、芯線が透明なガラスやプラスチックからなる光ファイバーや、各種配管部材にも応用できる。
【符号の説明】
【0021】
1 本発明の説明に用いる単線
2、7 芯線(1本の銅線)
3、6、8 被覆材(ポリ塩化ビニールなど)
5 ケーブル(複数本の単線または撚り線を束ねて被覆材で覆ったもの)
9 単線
10、15 回転軸
20 圧延ローラ
30 回転刃物
35 回転刃物保持部材
36 締結ねじ
37 プレート
40 目盛板
50 ハンドル
60 雄ねじ軸
61、62、63 歯車
65 ナット部材
66 回動支軸
67 軸受部材
68、70 軸受
80、81 タイミングベルト車
90 取付ベース
100 前板
101 右側板
102 左側板
110、120、140 貫通穴
115、125 線ガイド
116 電源スイッチ
117 表示ランプ
120 撚り線
121 芯線
122 第1層の被覆材
123 第2層の被覆材
130 軸部
200 被覆電線の分別処理装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に対向する一対の回転軸に、対向する一対の回転刃物及び対向する一対の圧延ロールを取り付けたことを特徴とする被覆電線の分別処理装置。
【請求項2】
平行に対向する一対の回転軸の対向間隔を可変にする回転軸対向間隔可変手段と、前記回転軸対向間隔可変手段に同期して前記回転軸対向間隔を表示する目盛板とを備え、前記回転軸対向間隔可変手段と前記目盛板とに連繋する歯車列により減速して前記目盛板の略1回転で前記回転軸対向間隔の最小値から最大値までを表示するようにしたことを特徴とする請求項1記載の被覆電線の分別処理装置。
【請求項3】
対向する一対の回転刃物の内、いずれか一方の回転刃物の位置を回転軸の長軸方向に所望量ずらしたことを特徴とする請求項1記載の被覆電線の分別処理装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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