説明

被記録媒体、画像物、画像形成方法

【課題】本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、即ち本発明は、内蔵する素子(例えば無線通信素子)の信頼性に優れかつ、画像表示部の画像適性に優れた被記録媒体の提供を目的とする。
【解決手段】基材上に外部から情報のアクセス可能な素子と画像記録部を具備した被記録媒体であって、前記素子を被記録媒体の貼り合わせ位置に設けた事を特徴とする被記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バゲージタグ等の識別票として好適な、RF−ID(Radio Frequency Identification)等非接触で情報の書き込み、読み出しが可能な素子を内蔵する被記録媒体に関わり、更に詳しくは上記被記録媒体へ画像を形成させた画像物、及び上記被記録媒体への画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空港における航空荷物は、バゲージタグの表示を視覚またはバーコード等によって認識して仕分け、発送することがおこなわれている。また、降機空港において搭乗者が荷物を受け取る際も目視により認識することで特別の自動化は図られていない。しかし、これらには以下のような問題がある。
(1)航空荷物は、搭乗時期の前に空港に搭乗者とは別に送られてくる場合があり仕分けや保管が煩雑となる。
(2)航空荷物の表示の認識を人手やバーコードで行うのは時間がかかり誤りを生じ易い。そのため行き先や便を間違える事故が頻発する。
(3)認識した表示のとおりに航空荷物を仕分け、搬送するのは人手によることになりその労力が過大である。
(4)降機空港において搭乗者が荷物を自分で確認して取り上げるのは労力を必要とし、年配者や体力の弱い者には耐えられない負担となる。
(5)同様に、目視により判断して荷物を取り上げるので他人が間違ってあるいは故意に荷物を持って行ってしまうことがある。
(6)いつまでも荷物が出てこない場合は事故なのか誰かが持って行ってしまったのか分からず不安になる。
【0003】
このような問題を解決するために、最近ではバゲージタグにRF−ID(Radio Frequency Identification)等非接触で情報の書き込み、読み出しが可能な無線通信素子を内蔵するバゲージタグとそれを利用したシステムが注目されている。
【0004】
例えば、特開2001−240218、特開2001−243502では、バゲージタグに電子的に処理可能で書換え可能な非接触ICとバゲージタグの表示内容を可視的に書換え可能なリライト表示部を設けたバゲージタグとそれを利用したシステムを開示している。
【0005】
しかしながら、開示されているこのバゲージタグは、感熱方式で記録する為に、以下の問題を抱えていた。
ICが搭載されている凸凹においては、文字のかすれや欠け等が生じしまう。
IC部を避けて画像表示部を設ける必要があり、画像表示部の領域に制限があった。
IC部が搭載されていない例え表面が平滑であったとしても、部分的に熱伝導性が異なる為に良好な印字特性を得ることは困難であった。
バゲージタグを荷物の識別票として使用する際、IC部がタグの丁度彎曲部に位置している為に、荷物の物流時に容易に取り外される危険性がある。
また、IC部がタグの丁度彎曲部に位置している為に、荷物の物流時の機械的ストレスに弱い。
【0006】
【特許文献1】特開2001−240218号公報、(第4頁、図4)
【0007】
【特許文献2】特開2001−243502号公報、(第4頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、即ち本発明は、内蔵する素子(例えば無線通信素子)の信頼性に優れかつ、画像表示部の画像適性に優れた被記録媒体の提供を目的とする。
【0009】
又、本発明は、前述の被記録媒体に対して非接触で情報の読取り、情報の書き込み及び、非接触で記録可能な画像物及び、画像物形成方法の提供を目的としている。
【0010】
又、本発明は、ICが搭載されている凸凹においては、文字のかすれや欠け等が生じにくい用被記録媒体の提供を目的とする。
又、本発明の他の目的は、IC部の位置に関係無く画像表示部を設けることが出来る被記録媒体の提供を目的とする。
【0011】
又、本発明の他の目的は、部分的に熱伝導性が異なることによる良好な印字特性を得ることは困難であった事を改善する被記録媒体の提供を目的とする。
【0012】
又、本発明の他の目的は、バゲージタグを荷物の識別票として使用する際、識別票を湾曲させてもICタグ部がそれにより問題が発生しないような被記録媒体の提供することを目的とする。
【0013】
又、本発明の他の目的は、IC付きの被記録媒体の機械的なストレスに強いICタグ付き被記録媒体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成する為、本発明は、基材上に外部から情報のアクセス可能な素子と画像記録部を具備し、貼り合わせて使用する被記録媒体であって、該素子を被記録媒体の貼り合わせ位置に設けた事を特徴とする。
また本発明の他の目的は、前記被記録媒体の貼り合わせ位置が他の媒体との張り合わせ位置にしたことを特徴とする。
また本発明の他の目的は、前記素子近傍にインク遮蔽構造を設けた事を特徴とする。
【0015】
上記目的を達成する為、本発明は、前記基材が、多孔質フィルムである事を特徴とする。
【0016】
上記目的を達成する為、本発明は、前記基材上の少なくとも一方の面にインク受容層を設けた事を特徴とする。
【0017】
上記目的を達成する為、本発明は、前記インク遮蔽構造を、該素子と該画像記録部との間に設けた事を特徴とする。
【0018】
上記目的を達成する為、本発明は、素子をRF−ID(Radio Frequency Identification)素子で構成したことを特徴とする。
【0019】
上記目的を達成する為、本発明は、前記被記録媒体にインクを付与させて画像を形成して得られる事を特徴とする。
【0020】
上記目的を達成する為、本発明は、前記被記録媒体にインクを付与させて画像を形成する事を特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上詳述したように、本発明の被記録媒体によれば、無線通信素子を適性且つ正常な状態を保持でき、全体として優れたインクジェット記録部を有する被記録媒体が提供される。
又本発明の被記録媒体では、無線通信素子が、該バゲージタグを荷物に添付し識別票として使用するために貼り合わせる位置に設置されている為に、無線通信素子部が剥き出しにならない構造になり、荷物輸送時の外部の影響(水、湿度、温度)から保護され、且つ無線通信素子部が識別票として使用する際に比較的に平坦部に位置するために、荷物輸送時にかかるストレスからも保護される。又外部からは、該素子部が設置されている事が視認しにくい為に、荷物輸送時のセキュリティー性が向上される。
又、インクジェット記録による画像記録部を備えたIJ記録記憶媒体では、画像形成についてもIJ記録記憶媒体に対して非接触で行なうことができるので、回路部への処理及び画像記録部への処理を共に非接触でできる。従って、回路部が非接触情報記憶媒体から突起していても、画像記録に支障とならず、更に、回路部の設置部の上に設けられた画像記録部にも画像形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明の詳細を述べる。
【実施例】
【0023】
以下に好ましい実施の形態を挙げて、本発明を更に詳しく説明する。
図1(a)は、本発明の被記録媒体の模式断面図である。ここで、2が基材であり、図に示されているように、基材1の一方の面にインク受容層1が設けられ、それとは反対側の面に、接着層3、インク遮蔽構造4、接着層3、無線情報素子5、接着層3、インク遮蔽構造4、接着層3、剥離紙6が設置されている。
図1(b)は、図1(a)をA方向から見た透視図である。7が無線情報素子(図1(a)の無線情報素子5に対応)であり、例えば、ループ状コイル等からなる送受信アンテナ8と、ICチップ9である。
【0024】
本発明の被記録媒体では、無線通信素子が、該バゲージタグを荷物に添付し識別票として使用するために、図示のように識別票の貼り合わせる位置に設置されている。もちろん図示のように、ループ状でも良いし、折り曲げ重ねて貼り合わせても良い。また本発明では、識別票をお互いに貼り合わせるようにしたが、貼り合わせるための別の媒体が用意されても、本発明の範囲に入る。
【0025】
図2は、本発明の被記録媒体の画像形成方法及び、発明のバゲージタグを荷物に添付し識別票として使用する方法を説明する模式図である。図1(a)と同じものには同じ付番をしている。
図2(a)はAの方向から、インク滴10で画像11を形成後、剥離紙6を剥がし、荷物の取っ手等に通して、貼り合わせて識別票として使用する。
図2(b)は、本発明の被記録媒体に画像形成後、A方向から見た模式平面図である。図に示すように、無線通信素子部の設置位置に関わらず、本発明の被記録媒体の全面に、搭乗する旅客機の便名、搭乗者名、バゲージタグの発行日付、バーコード更には、広告等が視認情報として記録される。又特開2003−306228号のバゲージタグ発行システムを使用すれば、搭乗者情報にあわせた広告等の視認情報や搭乗者名の顔写真等も記録可能となる。
【0026】
又当然ながら、無線通信素子部には、電子情報として、上記した通常の視認情報の他に、搭乗者の性別、搭乗者の年齢、バゲッジタグの発効日時、荷物のセキュリティチェック情報、搭乗者が旅客機に搭乗したことを記録する搭乗確認情報、データベースの記録情報を参照する際に使用するIDナンバー、電子透かし等の改ざん防止処理等が記憶(記録)されている。
【0027】
図2(C)は、本発明の被記録媒体を荷物に添付し識別票として使用する場合の模式図である。本発明の被記録媒体の貼合わせ部に、図示のごとく被記録媒体の端部を重ね、無線通信素子部が被記録媒体の重ねの位置にある為に、無線通信素子部が剥き出しにならない構造になる為に、荷物輸送時の外部の影響(水、湿度、温度)から保護され、且つ無線通信素子部が識別票として使用する際に比較的に平坦部に位置するために、荷物輸送時にかかるストレスからも保護される。又外部からは、該素子部が設置されている事が視認しにくい為に、荷物輸送時のセキュリティー性が向上される。またセキュリティー性を向上させる為に、画像物の上に改ざん防止層を別途設けても良い。
【0028】
図2(d)は、図2(c)に示す被記録媒体と異なり、本発明の被記録媒体を荷物に添付し識別票として使用する場合の別の形態による模式図である。貼り合わせ位置は図示の如く被記録媒体の両端部で貼り合わせずに、使用用途に合わせて適宜に貼り合わせ位置を変更した例を示す。なお、この例でも、同じ被記録媒体に貼り合わせる例を示したが、他の媒体に張り合わせても良い。
続いて本発明で使用するに構成材料について説明する。
【0029】
(無線通信素子)
本発明の無線通信素子7とは、非接触で情報の書き込み又は読み書き可能にするのに必要なCPU、メモリ等、電気的に連結された素子を有していれば、特に限定される物ではなく、プラスチック等の基材上のコイルパターンと容量素子により共振回路を形成して一定周波数の電波を受信して交信することができる。一般的には125kHz、13.56MHz、2.45GHz(マイクロ波)の周波数帯が使用される。マイクロ波の場合の交信距離は数mといわれる。その大きさも30mm×30mm程度以下のサイズにできるが、ICバゲージタグの場合はかなり大きな面積があるので設計を比較的自由に行うことができる。また送受信アンテナ8は、細線の捲線により形成しても、コアシートにプリント配線技術またフォトエッチングにより形成しても良い。また、ディアクティベーター機能付きの無線通信素子を使用しても良い。
【0030】
(基材)
本発明のにおいて使用する基材は、図1に示すように、インク受容層、接着層3、インク遮蔽構造4、接着層3、無線情報素子5および剥離紙6の保持が可能であり、且つプリンタでの搬送が可能であれば、何れの基材も使用できる。
【0031】
その中でも、インクジェット記録適性の観点及び、荷物輸送時の厳しい環境に耐えうる観点で、通気性微細孔を含んでなるフィルムまたはシート(以下、「多孔質フィルム」と総称する。)を使用する事が好ましい。基材が多孔質体であることにより、記録媒体に適用されるインク中の水等の溶媒(分散媒)をいち早く吸収し、速乾性を高めることができる。
【0032】
多孔質フィルムは、上記のような効果を奏するものであれば特に限定されず、従来から画像記録媒体に使用されているものが使用できる。この多孔質フィルムの材料の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン−1等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、スチレンーブタジエンーアクリルニトリル共重合体、ポリアミド、ポリメチルメタアクリレート、ポリエステルなどが挙げられ、これらは2種以上混合して用いることができる。また、市販品としては、PPG インダストリー(株)社の多孔性延伸樹脂フィルム、(商標)Teslin樹脂フィルム等が好適である。
この基材は通気性微細孔を含むため通気性であるが、その通気性は、ガレー透気度を用いて規定すれば、通常10〜3,000秒/100mL、好適には50〜2,500秒/100mL、特に好適には100〜2,000秒/100mLの範囲である。
【0033】
なお、ここでいうガレー透気度は、JISP−8117−1980に準拠し、ガレー透気度試験機を用いて測定した値であり、通常100mLの体積の空気が通過するのに要する時間で表わされる。多孔質フィルムの空隙率(フィルム全体の体積に占める空隙の体積)は、通常10〜90体積%、好適には20〜80体積%である。また、フィルムの肉厚断面方向に垂直(延伸フィルムの水平方向)に切断して測定される孔の径は、通常0.01〜3μm、好適には0.02〜2μm、特に好適には0.03〜1μmである。
基材全体の厚さは、30〜500μm、好ましくは50〜300μmである。厚みが薄すぎると、インク乾燥性が低下するおそれと、荷物輸送時に破損する恐れがあり、反対に厚すぎると、プリンタ搬送時の記録媒体の取り扱いに不便が生じるおそれがある。
【0034】
一方、前記基材の表面および前記微細孔は、界面活性剤により親水化処理されていることが好ましい。印刷したインク画像の速乾性を効果的に高めるからである。界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、両性およびノニオン性のいずれのものも使用できる。アニオン性のものとしては、例えば、カルボン酸塩系、スルホン酸塩系、燐酸エステル塩系等が使用でき、カチオン性のものとしては、例えば、アミン塩系、四級アンモニウム塩系等が使用でき、両性のものとしては、例えば、ベタイン系、スルホベタイン系等が使用でき、ノニオン性のものとしては、例えば、ポリエチレングリコール等のポリオキシアルキレン系、ソルビタン系、ソリビトール系等が使用できる。
【0035】
親水化処理は、インク受容層を形成するための塗布液に界面活性剤を添加し、その塗布液を基材表面に塗布し、インク受容層の形成と同時に行うことができる。また、受容層形成前に行うこともできる。すなわち、まず、基材の表面に界面活性剤を含む液体を塗布し、または基材をその液体に含浸し、親水化処理を行った後、親水化処理された基材の表面に、ポリマーと凝集剤とを含む液体を塗布する等により、インク受容層を形成することが好ましい。この方法は、速乾性の高い画像記録媒体を特に容易に製造することができる。
前述の様に、親水化処理を、界面活性剤を含む液体を塗布、乾燥して行う場合、溶媒として、水や、エタノール等のアルコールを用いるのが好適である。界面活性剤を含む液体中の界面活性剤濃度は、通常1〜30質量%、好適には5〜25質量%である。また、塗布装置には、通常のコータ、たとえば、バーコータ、ナイフコータ、ロールコータ、ダイコータ等を使用することできる。
【0036】
多孔質フィルムには、必要に応じて無機微細粉末を含有させる。無機微細粉末としては、炭酸カルシウム、アルミナ、焼成クレイ、シリカ(アモルファスシリカを含む)、珪藻土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム等を使用することができる。微細粉末の粒径は、通常0.3〜10μm、好適には0.8〜5μmである。また、その他の添加剤、たとえば、熱安定剤、紫外線吸収剤、分散剤、帯電防止剤、酸化防止剤、オイル(鉱油等)などを配合することもできる。
上記した基材を使用すれば、特に受容層を設けなくても、高画質の視認情報を要求しなければ、画像形成が可能となる。例えば、図1(a)のB方向からでも、接着層3インク遮蔽構造4接着層3無線情報素子5剥離紙6が積層されていない領域には、本発明の被記録媒体の使用方法などをインクジェット画像として記録可能である。
【0037】
(インク受容層)
本発明による被記録媒体のインク受容層の形成材料としては、従来公知の材料が適宜に使用できるが、中でも、有機ポリマーと、水溶性の有機酸または無機酸の塩を含んでなる凝集剤、とを含有することが好ましい。このような凝集剤は、媒体表面に水性インクが適用(印刷等)された時、顔料等の着色成分をすばやくインク受容層の表面で凝集させる。したがって、顔料等が、媒体内部の孔内まで移行することを効果的に防止し、速乾性を高めることができる。また、凝集剤に加えて有機ポリマーを含有することは、上記のような凝集作用と、ポリマーの結着作用との相乗効果により、表面に定着されたインク像の耐水性を、効果的に高めることができる。又、インク受容層は単層であってもよいし、高い性能を付加する目的で多層構造にしてもよい。
【0038】
受容層のポリマーが、分子内に極性官能基を有する極性ポリマーの場合、凝集剤と極性ポリマーとの相乗効果により、水性インク凝集作用が効果的に高められる。このような極性ポリマーとしては、カチオン変性ポリウレタンや、ポリビニルピロリドン等の塩基性ポリマーが好適である。
有機ポリマーとしては、前述のカチオン変性ポリウレタン等の他、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、ポリアミド、アクリル系ポリマー、ポリエステル、通常の(変性していない)ポリウレタン等も使用することができる。
【0039】
有機酸又は無機酸の塩としては、多価金属塩が好適である。凝集作用が比較的高く、速乾性と、定着インク像の耐水性とを同時に高める効果にすぐれるからである。多価金属イオンとしては、アルミニウム、ガリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ニオブ、タンタル、鉄、銅、スズ、コバルト等のうちの、1または2以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
無機酸の例として好適には、硫酸、硝酸、または塩酸である。有機ポリマーが、カチオン変性ポリウレタン等のカチオン変性ポリマーの場合、有機酸塩よりも無機酸塩が好適である。速乾性と耐水性とを効果的に高めることができるからである。無機酸塩として好適には、硫酸アルミニウムである。その理由の詳細については明らかではないが、ポリマーのカチオン部分と、硫酸イオンおよびアルミニウムイオンとの相互作用により、インク定着力を効果的に高めるためと考えられる。
【0041】
有機酸の例として好適には、芳香族の、カルボン酸、スルホン酸、スルホカルボン酸、ヒドロキシスルホカルボン酸、またはヒドロキシカルボン酸を使用することができる。これらの酸のうち、1または2以上を組み合わせて使用することができる。
インク受容層に含まれる凝集剤の量は、有機ポリマー100質量部に対して、通常1〜70質量部、好適には3〜50質量部、特に好適には5〜30質量部である。凝集剤の量が少なすぎるとインク定着力が低下し、耐水性や発色性が低下するおそれがあり、反対に多すぎるとインク像のにじみが生じるおそれがある。
【0042】
インク受容層には、受容層の多孔性を高めるために、必要に応じて無機微細粉末を含ませることもできる。無機微細粉末としては、炭酸カルシウム、アルミナ、焼成クレイ、シリカ(アモルファスシリカを含む)、珪藻土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム等が使用できる。微細粉末の粒径は、通常0.3〜10μm、好適には0.8〜5μmである。また、その他の添加剤、たとえば、熱安定剤、紫外線吸収剤、分散剤、帯電防止剤、酸化防止剤、などを配合することもできる。
インク受容層の厚さは、本発明の効果を損なわない限り特に限定されない。厚みが薄すぎると、インク乾燥性が低下するおそれと、荷物輸送時に破損する恐れがあり、反対に厚すぎると、プリンタ搬送時の記録媒体の取り扱いに不便が生じるおそれがある。この様な観点から、受容層の厚さは、通常5〜200μm、好適には10〜100μmである。
インク受容層は、例えば、凝集剤および有機ポリマーを含む液体を塗布、乾燥することにより形成する。その場合の溶媒として、水やアルコールを用いることが好適である。また、塗布装置には、通常のコータ、たとえば、バーコータ、ナイフコータ、ロールコータ、ダイコータ等を使用することができる。
【0043】
インクジェット記録適性、例えば、耐ビーディング性や耐ブロッキング性等を向上させる目的で、更に、得られるインクジェット記録物の保存性、例えば、高湿環境下における画像の滲みや耐水性等を向上する目的で、インク受容層中には、上記材料の他に、水溶性の低分子有機化合物、及びカチオン性化合物、更には水不溶性の有機化合物を適宜に使用することができる。
【0044】
図3に本発明の別の形態のバゲージタグを示す。これは、基材の両面にインク受容層を設けている為に、B方向からでも高画質なインクジェット画像形成が可能となる。
【0045】
(インク遮蔽構造)
本発明で用いるインク遮蔽構造の具体的な構成としては、本発明の被記録媒体を識別票として使用する際に、画像部に付与されたインク成分が、無線通信素子にまで及ばない構造とすることが挙げられる。実施の形態としては、基材と無線通信素子の間にインク遮蔽層を設けた構造とすることで、記録によって付与されたインク成分が画像部から拡散/浸透して無線通信素子4にまで及ぶことのないように構成する。
【0046】
従って、インク遮蔽層は、画像部と無線通信素子の間にあれば特に限定されず、任意の位置に設ける事ができる。例えば、インク遮蔽層をもう一方の貼り合わせ部に設けることも出来る。図4がその模式図である。
【0047】
本発明で使用するインク遮蔽層の形成材料として、例えば、従来公知のカップリング剤(シラン系、チタン系)、界面活性剤、及び樹脂(エマルジョンを含む)等が挙げられる。
【0048】
特に、均一で強靭な連続皮膜を形成することが容易な点で樹脂が好ましく用いられる。
【0049】
この様なものとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソプレン、セルロース、酢酸セルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、尿素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、クロロプレン、ポリフルオロエチレン、ポリ三フッ化塩化エチレン、シリコーン樹脂等が挙げられるが、耐水性、耐アルカリ性、耐酸性に優れているものを選択するのが好ましい。また、使用する樹脂は高純度であり、アルカリ金属イオンや塩素イオン不純物を取り除くことが好ましい。厚みとしては、0.1〜100[μm]が好ましい。インク遮蔽層の厚みが極端に薄い場合は、荷物物流の際の厳しい環境において破損する恐れが有り、厚すぎるとプリンタ搬送時の記録媒体の取り扱いに不便が生じるおそれがある。
【0050】
しかし、本発明はこれらの方法に限定されるものではなく、インク遮蔽層として、例えば、上記した材料でインク受容層の基材として用いる方法や,既に表面に離型処理されている基材を用いる方法や、撥水材料からなる基材を使用してインク遮蔽層を形成する方法等であってもよい。
(接着層)
接着層は、本発明の被記録媒体を荷物の取って等に通して、貼り合わせて使用する。また基材とインク遮蔽層、インク遮蔽層と無線情報素子を接着させる為に使用する。従って、粘着層に含有される粘着剤としては、特に限定される物では無いく、常温で粘着性を示し、感圧接着剤として使用可能なポリマーが好適に使用できる。例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、ビニルエーテル系等溶剤型・無溶剤型の各種の公知の粘着剤を使用することができる。ゴム系粘着剤としては天然ゴムやスチレン−ブタジエンゴム等を主原料とし、ロジン系樹脂や各種の可塑剤が含有される。
又必要に応じて熱硬化性樹脂やホットメルト接着剤や平4−19568で開示されている遅延接着剤や自着性感圧接着剤層を使用することもできる。
【0051】
(剥離紙)
本発明の剥離紙は、接着層を保護する目的で設置し、紙やフィルム等の従来公知の基材上に離型層を設けられていれば、特に限定される物ではない。
また、剥離紙は本発明の記録媒体に画像形成後、剥がして接着層を基材の裏面に貼り合わせて使用する。よって、取り扱い向上の為に、プリンタ搬送時の記録媒体の取り扱いに不便が起こらない範囲で、接着層より大きな面積を所有しても良い。
離型層に用いられる材料としては、先ず、熱溶融性材料としては、カルナウバワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カスターワックス等のワックス類、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、メチルヒドロキシステアレート、グリセロールモノヒドロキシステアレート、グリセロールモノヒドロキシステアレート等の高級脂肪酸、或いはその金属塩、エステル等の誘導体、ポリアミド系樹脂、石油系樹脂、ロジン誘導体、クロマン−インデン樹脂、テルペン系樹脂、ノボラック系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、酸化ポリオレフィン等のオレフィン系樹脂、ビニルエーテル系樹脂等が挙げられる。又、この他に、シリコーン樹脂、フルオロシリコーン樹脂、フルオロオレフィンビニルエーテルターポリマー、パーフルオロエポキシ樹脂、パーフルオロアルキル基を側鎖に持つ熱硬化型アクリル樹脂やフッ化ビニリデン系硬化型塗料等も用いることができる。
【0052】
次に本発明の別の形態について説明する。
【0053】
図5は、本発明の別の形態のバゲージタグである。バゲージタグに控え票が付いており、控え票にもICタグが設けられていてバゲージタグ本体部分と同一の内容がICチップに記録されている。これにより荷物自動受取の際の認識票とすることができ、搭乗券を持たない場合にも自動ピッキングが可能となる。また必要に応じて控え票を必要枚数付加しても良い。
【0054】
(製品形態)
本発明の被記録媒体は図1に示すようにタグ形態に加工しても良いし、図6に示すように、連続紙形態として加工し、インクジェット記録後に切り離してバゲージタグとしても良いし、印刷工程に合わせて適宜に加工できる。
【0055】
(記録方法)
以上説明した本発明の被記録媒体に記録を行う場合のインク自体は、公知のものが何ら問題なく使用可能である。また、インクとしては直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、食用色素に代表される水溶性染料が使用可能であり、通常のインクジェットプリント用のものであれば特に制限なく使用することができる。
【0056】
これらの中でも、直接染料及び/または酸性染料を含有するインクを用いことが好ましい。また、最終画像物の耐候性を考慮すると水性の顔料インク、油性顔料インクを使用しても良い。
【0057】
(インクジェット記録方法)
次に、インクジェット記録方式について説明する。
又画像記録方法としてインクジェット方式を使用すれば、非接触で画像形成可能な為に、無線通信素子部の設置位置に関わらず、本発明の被記録媒体の全面に画像を記録する事が出来る。
インクジェット記録方法は、インクの小滴を種々の駆動原理を利用して、ノズルから吐出して記録を行う、従来公知の何れの記録方式にも適用可能である。
【0058】
その代表例として、特開昭54−59936号公報に記載されている方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させるインクジェット方式を挙げることができる。
【0059】
本発明の被記録媒体への記録に好適な記録装置を以下に説明する。
【0060】
図6は、本実施例で使用する情報書き込み機能付き記録装置の概略構成図である。
【0061】
記録装置(12)は、被記録材に対して記録を行う、プリンタである。被記録材ユニット(19)に装着して搬送部に供給する。
【0062】
搬送部は主に搬送モータ(20)と搬送ベルト(21)で構成され、記録時は図中の矢印方向に被記録材を搬送する機能を有する。
【0063】
ここで、搬送経路上のロールユニット(19)側を搬送入口、逆側を搬送出口とする。記録装置は記録手段として、インクジェット記録ヘッドであるブラック(K)ヘッド(17K)、シアン(C)ヘッド(17C)、マジェンタ(M)ヘッド(17M)、イエロー(Y)ヘッド(17Y)を搭載し、これらはラベル幅分の長さのノズル列を持ったラインヘッドである。
【0064】
これら4本のヘッドからそれぞれK、C、M、Yのインクを選択的に吐出し、カラー記録する。
【0065】
吐出するインクは、ブラック(K)インクカートリッジ(18K)、シアン(18C)インクカートリッジ(18C)、マジェンタ(18M)インクカートリッジ(18M)、イエロー(18Y)インクカートリッジ(18Y)から、図示しないポンプによってそれぞれの記録ヘッドに供給される。
【0066】
ロールユニット(19)は、非接触情報記録媒体(35)を装着するロール駆動軸(22)、被記録材のたるみにより位置が変化するロールセンサレバー(23)、ロール駆動軸(22)を駆動する図示しないロールモータから構成され、ロールセンサレバー(23)の状態によりロールモータを駆動、停止することで連続ラベル紙の給紙を行う。
【0067】
さらに、情報書き込み機能付き記録装置(11)と、ホストコンピュータ(25)はケーブル(13)で接続され、ホストコンピュータ(12)は記録データや記録媒体内蔵素子に書き込む情報等を制御コマンドとして記録装置(11)に転送する。
【0068】
また、搬送出口付近には記録媒体内蔵素子に情報を書き込むための非接触通信部(14)が有り、通信アンテナ(15)及び無線通信素子との通信制御を行う非接触リーダ/ライタ(16)から構成されている。
【0069】
このような装置を使用すれば、画像の記録と同時に記録媒体内蔵素子への情報の書き込みが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の被記録媒体の模式断面図。
【図2】本発明の画像形成方法を示す図。
【図3】本発明の別の形態の被記録媒体の模式断面図
【図4】本発明の別の形態の被記録媒体の模式断面図
【図5】本発明の別の形態の被記録媒体の模式断面図
【図6】本発明の被記録媒体を連続紙形態に加工した模式図
【図7】情報書き込み機能付き記録装置の概略構成図
【符号の説明】
【0071】
1 インク受容層
2 基材
3 接着層
4 インク遮蔽構造
5 無線情報素子
6 剥離紙
7 無線情報素子
8 送受信アンテナ
9 ICチップ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に外部から情報のアクセス可能な素子と画像記録部を具備した被記録媒体において、前記素子を前記被記録媒体の貼り合わせ位置に設けた事を特徴とする識別票の被記録媒体。
【請求項2】
前記被記録媒体を重ねるようにして貼り合わせるようにした事を特徴とする請求項1に記載の被記録媒体。
【請求項3】
前記被記録媒体をループ上に曲げて貼り合わせるようにした事を特徴とする請求項1に記載の被記録媒体。
【請求項4】
前記素子近傍にインク遮蔽構造を設けたことを特徴とする請求項1項記載の被記録媒体。
【請求項5】
前記基材が、多孔質フィルムである事を特徴とする請求項1記載の被記録媒体。
【請求項6】
前記基材上の少なくとも一方の面にインク受容層を設けた事を特徴とする請求項1から2記載の被記録媒体。
【請求項7】
前記インク遮蔽構造を、該素子と該画像記録部との間に設けた事を特徴とする請求項1から3記載の被記録媒体。
【請求項8】
前記素子とは無線通信素子であることを特徴とする請求項1から4記載の被記録媒体。
【請求項9】
請求項1から7記載の被記録媒体にインクを付与させて画像を形成して得られる画像物。
【請求項10】
請求項1から7記載の被記録媒体にインクを付与させて画像を形成する画像形成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−174460(P2007−174460A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−371465(P2005−371465)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】