説明

被記録媒体及びインクジェット記録装置

【課題】高画質、高品質な画像を形成することができる被記録媒体および高画質、高品質な印刷物を高速で作製することができるインクジェット記録装置を提供すること。
【解決手段】基材と、基材の表面に塗布された複数のマイクロカプセルとを備え、マイクロカプセルは、その内部に活性エネルギー線硬化型の液体が充填されている構成とすること、およびこの構成の被記録媒体に、マイクロカプセル破壊手段、画像形成手段および活性エネルギー線照射手段によって、画像を形成することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像が記録される被記録媒体、及び、この被記録媒体を用い、インクジェットヘッドからインク液滴を吐出させ、被記録媒体上に画像を記録するインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被記録媒体上に画像を形成する方法としては、インクジェットヘッドからインク液滴を吐出させ、画像を形成する方法がある。
インクジェットヘッドを用いた画像記録装置としては、例えば、特許文献1に、活性光線により硬化する化合物を有するインクをインクジェット法により被記録媒体に印字し、硬化させるインクジェット記録方法において、2色以上のインクにより画像形成を行い、かつ画像形成に要するインクの全てを吐出した後、10秒以内に該活性光線を照射するインクジェット記録方法を用いるインクジェット記録装置が記載されている。
また、特許文献1には、1色ずつラインヘッドによりインクを射出した後、10秒以内に搬送方向の下流部で活性光線を照射するインクジェット記録装置も記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、活性光線の照射により硬化可能なインクを被記録媒体に吐出するインクジェットヘッドと、活性光線の照射により硬化可能な白インクを前記被記録媒体上にインクジェット以外の方法で塗布する手段と、を備え、前記白インク塗布及び前記インクジェットヘッドによるプリントを連続的に行うようにしたインクジェットプリンタが記載されている。
さらに、白インクを塗布した後に白インクを硬化させるための活性光線を照射する第1の照射手段と、前記インクを吐出した後にインクを硬化させるための活性光線を照射する第2の照射手段とを備えるインクジェットプリンタも記載されている。
また、白インクを塗布する方法としては、スプレー塗布、ロール塗布、グラビア塗布、エアナイフ塗布、押し出し塗布、カーテン塗布、ワイヤーバー塗布、またはフェルト塗布を用いて塗布することが記載されている。
【0004】
さらに、特許文献3には、撥水性物質を内包するマイクロカプセルと該マイクロカプセルを分散する親水性溶液とを少なくとも備えてなるインクジェット受理層形成用インクを用いて形成されたインクジェット受理層が、シートの片面又は両面の一部若しくは全面に配されていることを特徴とする情報担持用シートが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−11341号公報
【特許文献2】特開2004−42525号公報
【特許文献3】特開2005−59418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
引用文献1に記載されているように、多色のインクジェットヘッドにより画像を形成することで、カラー画像を形成することができる。
また、引用文献2に記載されているように、被記録媒体の表面に白インクを塗布、つまり予め被記録媒体の表面に表面層を形成した後、表面層が形成された被記録媒体にインクを吐出させて画像を形成することで、透光性の被記録媒体や明度の低い被記録媒体及び金属表面に対しても良好な視認性を有する画像を形成することができる。
また、引用文献2に記載されているように、インクジェットヘッドを用いる方法以外の方法によって白インクを塗布することで、インクジェットヘッドを用いた場合よりも短時間に走査スジが目立つことのない表面層を形成することができる。
【0007】
このように、被記録媒体上に白インク等により予め表面層を形成することで、透光性の被記録媒体や明度の低い被記録媒体及び金属表面に対しても良好な視認性を有する画像を形成することが可能となる。
【0008】
しかしながら、引用文献1及び引用文献2に記載の画像記録装置で被記録媒体に画像を記録すると、被記録媒体上に着弾したインク液滴の位置ずれ、画像のにじみ等が生じることがあり、高画質な画像を記録することが困難であるという問題がある。
また、引用文献3に記載の情報担持用シート、つまり被記録媒体は、親水性のインクジェット受理層を設けることで、水性インクに対して、安定したインク吸収性を有するとともに、画像記録後に内包されたマイクロカプセルを破壊し、撥水性を高くすることにより耐水性を向上させることができる。しかしながら、活性光線(活性エネルギー線)により硬化するインクを用いて、インク吸収性受理層を有する被記録媒体に印字すると、活性光線を照射しても、インク吸収性受理層に吸収されたインクに活性光線が到達することができないため、硬化不良が発生し、耐擦過性が劣る画像が形成されてしまうという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、インクジェット記録方式により高画質な画像を形成することができる被記録媒体を提供することにある。
本発明の目的は、上記従来技術に基づく問題点を解消し、高画質、高品質な印刷物を高速で作製することができるインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、基材と、前記基材の表面に塗布された複数のマイクロカプセルを含む塗布層とを備え、前記マイクロカプセルは、その内部に活性エネルギー線硬化型の液体が充填されている被記録媒体を提供することにある。
【0011】
ここで、前記マイクロカプセルの内部に充填されている液体は、ラジカル重合性組成物を含有する液体であることが好ましい。
また、前記塗布層の前記複数のマイクロカプセルは、破裂された後、充填された液体が前記基材上に厚さが、好ましくは、1μm以上20μm以下の液膜、より好ましくは、1μm以上3μm以下の液膜を形成する液量を含有することが良い。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第2の態様は、上記第1の態様のいずれかの被記録媒体に画像を形成するインクジェット記録装置であって、前記被記録媒体の前記複数のマイクロカプセルを破裂させて、前記基材上に前記複数のマイクロカプセルに含有された液体で液膜を形成するマイクロカプセル破壊手段と、前記基材上に前記液膜が形成された前記被記録媒体上に、少なくとも色材を含み、活性エネルギー線が照射されることで硬化されるインクを吐出して画像を形成する画像形成手段と、前記画像が形成された被記録媒体上に活性エネルギー線を照射し、前記画像を硬化させる活性エネルギー線照射手段とを有するインクジェット記録装置を提供するものである。
【0013】
ここで、インクジェット記録装置は、さらに、前記被記録媒体の前記液膜に活性エネルギー線を照射し、前記液膜を半硬化させる半硬化手段を有することが好ましい。
また、前記画像形成手段は、前記被記録媒体の搬送方向に配列された複数のインクジェットヘッドを備え、さらに、前記搬送方向において前記インクジェットヘッドの間に配置され、前記搬送方向の上流側の前記インクジェットヘッドから吐出され、前記被記録媒体上に前記画像を形成する前記インクに活性エネルギー線を照射して、前記インクを半硬化させるインク半硬化手段を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、マイクロカプセルを破裂させることで画像記録前に液膜を形成することができ、インクジェット記録方式で、高画質な画像を記録することが可能となる。
また、液膜の塗布手段を設けることなく、液膜を形成することができるため、画像記録に用いるインクジェット記録装置の構成を簡単にすることができ、さらに、装置のメンテナンスの回数も減らすまたは無くすことができる。
【0015】
また、本発明の第2の態様によれば、カプセル破壊手段を設け、被記録媒体のマイクロカプセルを破裂させることで、被記録媒体の画像が記録される面に液膜を形成することができ、高画質な画像が形成された印刷物を簡単な構成で作製することが可能となる。さらに、装置のメンテナンス回数を減らすまたは無くすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の第1の態様に係る被記録媒体及び本発明の第2の態様に係るインクジェット記録装置について、添付の図面に示す実施形態を基に詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の被記録媒体の一例の概略構成を示す側面図である。
図1に示すように、被記録媒体Pは、基材2と、基材2の表面に塗布されたマイクロカプセル塗布層(以下、カプセル層という)6とを有する。ここで、カプセル層6は、その層内においてマイクロカプセル4が接着層となるバインダー内に分散されている。
【0018】
基材2は、シート状の部材であり、上質紙、合成紙などの紙類、PET、PP等のプラスチックフィルム等の種々の材料を用いることができる。
【0019】
マイクロカプセル4は、マイクロカプセル壁の内部に活性エネルギー線硬化型の液体が充填されており、基材2の表面にバインダー内に分散した状態で塗布され、図1中ではバインダー内で積層されて、カプセル層6を形成している。
マイクロカプセル4としては、圧力を加えられることにより破裂するカプセル、熱を加えられることにより破裂するカプセル等の種々の方式のカプセルを用いることができる。
【0020】
ここで、マイクロカプセル壁としては、3次元架橋し、溶剤によって膨潤する性質を有するものを用いることが好ましい。具体的には、マイクロカプセル壁は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、およびこれらの混合物で形成することが好ましく、特に、ポリウレアおよびポリウレタンで形成することが好ましい。また、マイクロカプセル壁には、バインダーポリマー導入可能なエチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を有する化合物を導入しても良い。
【0021】
また、マイクロカプセル壁の内部には、活性エネルギー線硬化型の液体が充填されている。すなわち、マイクロカプセル4に充填させる液体、より正確には、マイクロカプセル壁の内部に充填させる液体(以下「内包液」ともいう。)として、活性エネルギー線硬化型の液体を用いる必要がある。ここで、本発明では、マイクロカプセル4に充填させる内包液としての活性エネルギー線硬化型の液体は、ラジカル重合性組成物を含有する液体であるのが好ましい。なお、詳細は、後述するが、ラジカル重合性組成物を含有する液体としては、例えば、重合性化合物としてDPGDA(ジプロピレングリコールジアクリレート;ダイセル・サイテック(株)製、多官能モノマー)を85.9質量%、及びA−DPH(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;新中村化学工業社製、多官能モノマー))を3.0質量%、界面活性剤としてBYK―307(ビックケミー社製))を1.0質量%、重合禁止剤としてFIRSTCURE ST−1(Albemarle社製)を0.1質量%、光重合開始剤としてDAROCUR TPO(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を9.0質量%、増感剤としてSpeedcure DETX(2,4ジエチルチオキサントン、Lambson社製)を1.0質量%の割合で混合した液体を用いることができる。
本発明に好適に用いることができる内包液については、後ほど後述する。
【0022】
このようなマイクロカプセルは、種々の製造方法で製造することができる。例えばマイクロカプセルの製造方法としては、米国特許第2800457号明細書、同第2800458号明細書にみられるコアセルベーションを利用した方法、米国特許第3287154号明細書、特公昭38−19574号公報、同42−446号公報にみられる界面重合法による方法、米国特許第3418250号明細書、同第3660304号明細書にみられるポリマーの析出による方法、米国特許第3796669号明細書に見られるイソシアナートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3914511号明細書に見られるイソシアナート壁材料を用いる方法、米国特許第4001140号明細書、同第4087376号明細書、同第4089802号明細書にみられる尿素―ホルムアルデヒド系または尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4025445号明細書にみられるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセルロース等の壁材を用いる方法、特公昭36−9163号公報、同51−9079号公報にみられるモノマー重合によるin situ法、英国特許第930422号明細書、米国特許第3111407号明細書にみられるスプレードライング法、英国特許第952807号明細書、同第967074号明細書にみられる電解分散冷却法などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
以下、マクロカプセルの製造方法の具体的な一例を示す。
まず、マイクロカプセルの油性成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアネート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N、75質量%酢酸エチル溶液)10.0gと、上述したマイクロカプセルの内包液6.0gを酢酸エチル16.67gに溶解した。さらに、マイクロカプセルの水相成分としてPVA−205の4質量%、水溶液37.5gを調整した。
この様にして作製した油相成分と水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。
その後、得られた乳化物を蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌した後、40℃で2時間攪拌した。このようにしてマイクロカプセルを作製した。
さらに、このようにして得られたマイクロカプセル液の固形分濃度を、21質量%になるように蒸留水を用いて希釈し、マイクロカプセル分散液を作製した。
作製したマイクロカプセルの平均粒径は0.53μmであった。
このような方法でも、マイクロカプセルを製造することができる。また、上記製造方法によれば、マイクロカプセルを分散させたマイクロカプセル分散液も製造することができる。
【0024】
ここで、マイクロカプセルの平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましく、0.05〜2.0μmがさらに好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。マイクロカプセルの平均粒径を上記範囲内とすることで良好な解像度と経時安定性を得ることができる。
【0025】
カプセル層6は、マイクロカプセル4およびマイクロカプセル4を基材2上に塗布する際のバインダーで構成され、接着層として機能するバインダーによって基材2の表面に塗布されているマイクロカプセル4を基材2に接着させている。ここで、接着層として用いられるバインダー樹脂としては、ポリビニアルコールおよびシラノール基等で変性された誘導体、酸化澱粉、および、エーテル化、エステル化、グラフト化等の変性澱粉、ゼラチン、カゼイン、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ポリアクリル酸エステル樹脂、水溶性ポリカーボネート樹脂、水溶性ポリ酢酸ビニル樹脂、水溶性スチレンアクリート樹脂、水溶性ビニルトルエンアクリレート樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性ポリアミド樹脂、水溶性尿素樹脂、水溶性ポリカプロラクトン樹脂、水溶性ポリスチレン樹脂、水溶性ポリ塩化ビニル樹脂、水溶性ポリアクリレート樹脂、水溶性ポリアクリロニトリル樹脂等の水溶性樹脂およびスチレン・ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0026】
なお、被記録媒体Pの製造方法は、特に限定されず、接着層となる上述のバインダーにマイクロカプセル4を分散させて基材2上に塗布、乾燥させて、カプセル層6を形成することにより、被記録媒体Pを製造する方法等が例示され、製造条件、印字品質、要求性能に応じて適宜バインダー種が選択される。
【0027】
ここで、被記録媒体Pは、所定の固形分濃度でマイクロカプセルをバインダー内に分散させたマイクロカプセル分散液を基材上に塗布することで製造することができる。
具体的な一例としては、基材として、坪量70g/mの中性紙を用い、基材上に上述したマイクロカプセル分散液を固形分8g/mとなるようにエアーナイフコータで塗布してマイクロカプセル塗布層を形成することで、被記録媒体を製造することができた。
なお、塗布方法は、特に限定されず、スプレーコータ、ロールコータ等の種々の塗布方法を用いることができる。
【0028】
被記録媒体Pは、基本的に以上のような構成である。
図2は、マイクロカプセルを破裂させた後の被記録媒体の一例の概略構成を示す側面図である。
被記録媒体Pでは、マイクロカプセル4が破裂させられると、図2に示すように、基材2上にマイクロカプセル4に充填された活性エネルギー線硬化型の液体の膜(以下単に「液膜」ともいう。)が形成される。
したがって、被記録媒体P上にインク液滴を吐出させ画像を記録する前に、マイクロカプセルを破裂させることで、基材2上に液膜8を形成することができる。
このように液膜8が形成された被記録媒体上にインク液滴を着弾させることで、近接した位置に着弾したインク液滴が移動して合一することや、インク液滴が濡れ拡がることを抑制し、画像が滲むことを防止できる。
これにより、被記録媒体P上に高画質な画像を形成することが可能となる。
【0029】
また、画像記録時にマイクロカプセルを破裂させるのみで、被記録媒体上に液膜が形成することができる。これにより、インクジェット記録装置で液膜の塗布を行う必要がなくなるため、インクジェット記録装置の構成を簡単にすることができる。また、塗布手段を設けた場合には、安定して液膜を形成するために必要となる塗布手段のメンテナンスを行う必要がなくなる。
このように本発明の被記録媒体を用いることでインクジェット記録装置の構成を簡単にすることができ、インクジェット記録装置のメンテナンス性も良好にすることができる。
さらに、マクロカプセルにより安定した厚みの液膜が形成できるため、安定して高画質な印刷物を作成することができる。
【0030】
また、マイクロカプセルに充填させる液体として活性エネルギー線硬化型の液体を用いることにより、画像形成後、紫外線等の活性エネルギー線を照射することなどにより重合させることで、液膜を硬化させることができる。ここで、「活性エネルギー線」とは、その照射により活性エネルギー線硬化型の液体に開始種を発生させうるエネルギーを付与することができるものであれば特に制限はなく、例えば、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などである。
これにより画像と液膜を同時に硬化することが可能となり、装置構成を簡単にすることができ、より簡単に印刷物を作製することができる。
【0031】
また、マイクロカプセルに充填させる液体として活性エネルギー線硬化型の液体を用いることで、基材上に形成される液膜に活性エネルギー線を照射することで、液膜を半硬化させることができる。
ここで、マイクロカプセルに充填させる活性エネルギー線硬化型の液体としては、ラジカル重合性組成物を含有する液体を用いることが好ましい。このように、活性エネルギー線硬化型の液体としてラジカル重合性組成物を含有する液体を用いることで、液膜の硬化及び半硬化をより簡単に制御することができる。
【0032】
なお、本発明において、「半硬化」とは、部分的な硬化(partially cured; partial curing)を意味し、液膜8が部分的に硬化しているが完全に硬化していない状態をいう。なお、基材2上に形成された液膜8が半硬化している場合、硬化の程度は不均一であってもよく、液膜は深さ方向に硬化が進んでいることが好ましい。
【0033】
例えば、空気中又は部分的に不活性ガスで置換した空気中で、ラジカル型重合性組成物を有する液膜8を硬化させると、酸素による重合抑制作用のために、液膜8の表面においてラジカル重合反応が阻害される傾向がある。この結果、半硬化は不均一となり、液膜8の内部でより硬化が進行し、表面の硬化が遅れる傾向となる。
【0034】
本発明において、ラジカル型重合性組成物を有する液膜8を、重合抑制的な酸素の共存下で使用して、部分的に光硬化することで、液膜8の硬化度は外部よりも内部の方が高くすることができる。
【0035】
このように、被記録媒体Pの基材2上の液膜8を半硬化させ、半硬化の状態の液膜8上にインク液を打滴させると、得られる印刷物の品質に好ましい技術的効果を得ることができる。また、その作用機構を印刷物の断面観察により確認できる。
【0036】
以下、液膜(つまり、活性エネルギー線硬化型の液体、例えばラジカル重合性組成物を有する液体などからなる内包液で被記録媒体上に形成された液膜)8の半硬化について、詳細に説明する。なお、以下では、基材2上に設けられた、厚さが約5μmの厚さの半硬化状態の液膜8上に約12pLのインク液(つまり、インク液滴)を打滴した場合の高濃度部分を一例として説明する。
図3は、半硬化された液膜8上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図であり、図4(A)及び(B)は、それぞれ未硬化状態の液膜8上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図であり、図4(C)は、完全に硬化させた状態の液膜8上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図である。
【0037】
本発明によれば、液膜8は半硬化されることで、基材2側の硬化度が表面層の硬化度よりも高くなる。この場合には、3つの特徴が観察される。すなわち、図3に示すように半硬化された液膜8にインク液dを打滴すると、(1)インク液dの一部は、液膜8の表面に出ている、(2)インク液dの一部は液膜8に潜り込んでいる、かつ、(3)インク液dの下側と基材2の間には液膜8が存在する。
このように、液膜にインク液を打滴した時、液膜とインク液とが上記の(1)、(2)及び(3)の状態を満たす場合には、液膜が半硬化状態であると言える。
液膜を半硬化させること、つまり、上記の(1)、(2)及び(3)を満たすように液膜を硬化させることで、高密度に打液されたインク液の液滴(つまり、インク液滴)が相互に繋がってインク液の膜層(つまり、インク液膜、インク層)を形成し、均一で高い色濃度を与える。
【0038】
これに対して、未硬化状態の液膜8にインク液を打滴した場合は、図4(A)に示すようにインク液dの全部が液膜8に潜り込むか、および/または、図4(B)に示すようにインク液dの下層には液膜8が存在しない状態となる。
この場合は、高密度にインク液を付与しても、液滴同士が独立するため、色濃度が低下する原因となる。
【0039】
また、完全に硬化した液膜8にインク液を打滴した場合は、図4(C)に示すように、インク液dは液膜8に潜り込まない状態となる。
この場合は、打滴干渉が発生し、均一なインク液の膜層が形成できず、色再現性を高くすることができない(つまり色再現性の低下を招く)。
【0040】
ここで、高密度にインク液の液滴を付与した場合に液滴同士が独立することなく、均一なインク液の膜層を形成する観点、および、打滴干渉の発生を抑制する観点から、単位面積当たりの液膜(つまり、液膜を構成する内包液)の未硬化部の量は、単位面積当たりに付与するインク液の最大液滴量よりも少ないことが好ましく、十分に少ないことがより好ましい。すなわち、液膜の未硬化部の単位面積当たりの重量M(M(液膜)ともいう。)と単位面積当たりに吐出するインク液の最大重量m(m(インク液)ともいう。)との関係は、(m/30)<M<mを満たすことが好ましく、(m/20)<M<(m/3)を満たすことがさらに好ましく、(m/10)<M<(m/5)を満たすことが特に好ましい。ここで、単位面積当たりに吐出するインク液の最大重量とは、1色当たりの最大重量である。
(m/30)<Mとすることで打滴干渉の発生を防止でき、さらに、ドットサイズ再現性を高くすることができる。また、M<mとすることで、インク液の液層を均一に形成でき、濃度の低下を防止できる。
【0041】
ここで、単位面積当たりの液膜の未硬化部の重量Mは、転写試験により求めるものである。具体的には、半硬化過程の終了後(例えば、活性エネルギー線の照射後)であってインク液滴を打滴する前に、普通紙などの浸透媒体を半硬化状態の液膜に押し当てて、浸透媒体に転写した液膜の量を重量測定によって測定し、測定した値を液膜の未硬化部の重量と定義するものである。
例えば、インク液の最大吐出量を、600×600dpiの打滴密度で、1画素当たり、12ピコリットルとすると、単位面積当たりに吐出するインク液の最大重量mは、0.74mg/cmとなる(なお、インク液の密度は、約1.1g/cmとする。)。従って、この場合は、液膜の単位面積当たりの未硬化部の重量Mを、0.025mg/cm以上0.74mg/cm以下とすることが好ましく、0.037mg/cm以上0.25mg/cm以下とすることがさらに好ましく、0.074mg/cm以上0.148mg/cm以下とすることが特に好ましい。
【0042】
このように、本発明の被記録媒体Pは、ラジカル重合性組成物を含有する液体で液膜を形成することで、液膜を半硬化状態にさせることができる。
このように、液膜を半硬化できることで、高画質な画像を形成することができる。
具体的には、インク液滴が互いに重なり部分を有して被記録媒体上に着弾しても、半硬化されたインク層とインク液滴の相互作用により、これら隣接したインク液滴間の合一を抑えることができる。
つまり、被記録媒体の画像が形成される面に液膜を形成することにより、記録ヘッドから吐出されたインク液滴が被記録媒体上に近接して着弾した場合、例えば、単一色のインク液滴が重なり部分を有して被記録媒体上に着弾した場合や、色違いのインク液滴が重なり部分を有して被記録媒体上に着弾した場合もインク液滴が移動することを防止できる。
これにより、画像の滲み、画像中の細線などの線幅の不均一、及び着色面の色ムラの発生を効果的に防止することができ、均一幅で先鋭なライン形成が可能であり、反転文字など打滴密度の高いインクジェット画像の記録を細線等の微細像を再現よく行うことができる。
【0043】
ここで、半硬化した液膜の内部層の粘度(25℃)は、5000mPa・s以上であることが好ましい。
また、半硬化した液膜の表面層の粘度(25℃)は、100mPa・s以上5000mPa・s以下であることが好ましい。
また、半硬化した液膜の内部層の粘度(25℃)は、半硬化した液膜の表面層の粘度(25℃)の1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上とすることがより好ましく、3倍以上であることがさらに好ましい。
液膜、つまり、マイクロカプセルに充填させる液体が、上記範囲を満たすことで、より確実に高画質な画像を形成することが可能となる。つまり、マイクロカプセルに充填させる液体として、硬化されることで上記範囲の値に変化する液体を用いることが好ましい。
【0044】
また、半硬化した液膜の表面における重合性化合物の重合度は、1%以上70%以下となることが好ましく、5%以上60%以下となることがより好ましく、10%以上50%以下となることが特に好ましい。ここで、重合度はIRなどによって測定できる。
液膜、つまり、マイクロカプセルに充填させる液体が、より確実に高画質な画像を形成することが可能となる。つまり、マイクロカプセルに充填させる液体として、硬化されることで上記範囲の値に変化する液体を用いることが好ましい。
【0045】
また、被記録媒体Pは、基材2上に形成される液膜8の厚みが1μm以上20μm以下となる液量をマイクロカプセル4に充填させることが好ましい。
【0046】
さらに、被記録媒体Pは、基材2上に形成される液膜8の厚みが1μm以上3μm以下となる液量をマイクロカプセル4に充填させることが好ましい。
基材2上に形成される液膜を1μm以上3μm以下とすることで、液膜を半硬化させなくとも、半硬化させた場合と同様に着弾したインク液滴同士の干渉やにじみを抑制することができ、より高画質な画像を形成することができる。また、液量を少なくすることができ、被記録媒体を薄くすることも可能となる。
【0047】
以下、本発明の被記録媒体のマイクロカプセルに充填させる活性エネルギー線硬化型の液体として好適に用いることができる内包液について詳細に説明する。
【0048】
(内包液の物性)
ここで、内包液の内部硬化前の粘度(25℃)は、10〜500mPa・sであることが好ましく、50〜300mPa・s以内であることがより好ましい。
【0049】
本発明においては、被記録媒体(正確には、内包液で形成された液膜)上に目的の大きさのドットを形成する観点から、内包液は、界面活性剤を含有することが好ましく、下記の条件(A)、(B)及び(C)の全てを満たすことがさらに好ましい。
(A)内包液の表面張力は、被記録媒体上に吐出されるいずれかのインクの表面張力よりも小さい。
(B)内包液に含まれる界面活性剤のうち少なくとも1種類は、
γs(0)−γs(飽和)>0(mN/m)
の関係を満たす。
(C)内包液の表面張力は、
γs<(γs(0)+γs(飽和)max)/2
の関係を満たす。
【0050】
ここで、γsは、内包液の表面張力の値である。γs(0)は、内包液の組成のうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力の値である。γs(飽和)は、内包液に含まれる界面活性剤のうち1種類の界面活性剤を前記「全ての界面活性剤を除いた液」に添加し、該界面活性剤の濃度を増加させたときに表面張力が飽和した該液の表面張力の値である。γs(飽和)maxは、内包液に含まれる界面活性剤のうち、前記条件(B)を満たす全ての界面活性剤に対して求めたγs(飽和)のうちの最大値である。
【0051】
〈条件(A)〉
本発明において、前述の通り、被記録媒体上に目的の大きさのインクドットを形成するためには、内包液の表面張力γsを、いずれかのインクの表面張力γkよりも小さくすることが好ましい。
さらに、着滴から露光までの間のインクドットの拡大をより効果的に防ぐ観点から、γs<γk−3(mN/m)であることがより好ましく、γs<γk−5(mN/m)であることが特に好ましい。
また、フルカラーの画像を形成(印字、描画)する場合は、画像の鮮鋭性を向上させる観点から、内包液の表面張力γsは、少なくとも視感度の高い着色剤を含有するインクの表面張力よりも小さくすることが好ましく、全てのインクの表面張力より小さくすることがより好ましい。なお、視感度の高い着色剤としては、マゼンタ、ブラック及びシアンの色を呈する着色剤が挙げられる。
【0052】
また、吐出適正の観点から、インクの表面張力γkと内包液の表面張力γsとは、インクの表面張力γkと内包液の表面張力γsの値が上記の関係を満たし、かつ、それぞれ15mN/m以上50mN/m以下の範囲内であることが好ましく、18mN/m以上40mN/m以下の範囲内であることがより好ましく、20mN/m以上38mN/m以下の範囲内であることが特に好ましい。
両者の値を15mN/m以上とすることで、インクジェットヘッドによる打滴時に液滴を好適に形成することができ、不吐出が生じることを防止できる。つまり、インク液滴を好適に吐出させることができる。また、50mN/m以下とすることで、インクジェットヘッドとの濡れ性を高くすることができ、インク液滴を好適に吐出させることができる。つまり、液滴の不吐出が生じることを防止できる。両者の値を、18mN/m以上40mN/m以下の範囲内、さらには、20mN/m以上38mN/m以下の範囲内とすることにより、上記効果をより好適に得ることができ、インク液滴を確実に吐出させることができる。
ここで、本実施形態において、表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP−Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温20℃、60%RHにて測定した値である。
【0053】
〈条件(B)と条件(C)〉
本発明において、内包液は、少なくとも1種類以上の界面活性剤を含有することが好ましい。内包液に少なくとも一種類以上の界面活性剤を含有させることで、被記録媒体上に目的の大きさのインクドットをより確実に形成させることができる。なお、この場合は、内包液に含まれる界面活性剤のうち少なくとも1種類は、下記の条件(B)を満たすことが好ましい。
γs(0)−γs(飽和)>0(mN/m) …条件(B)
さらに、内包液の表面張力は、下記の条件(C)の関係を満たすことが好ましい。
γs<(γs(0)+γs(飽和)max)/2 …条件(C)
【0054】
既述のように、γsは、内包液の表面張力の値である。また、γs(0)は、内包液の組成のうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力の値である。γs(飽和)は、内包液に含まれる界面活性剤のうち1種類の界面活性剤を前記「全ての界面活性剤を除いた液」に添加し、該界面活性剤の濃度を増加させたときに表面張力が飽和した該液の表面張力の値である。γs(飽和)maxは、内包液に含有する界面活性剤のうち、前記条件(B)を満たす全ての界面活性剤に対して求めたγs(飽和)のうちの最大値である。
【0055】
なお、前記γs(0)は、内包液の組成のうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力値を測定することによって得られる。また、前記γs(飽和)は、内包液に含まれる界面活性剤のうち1種類の界面活性剤を前記「全ての界面活性剤を除いた液」に添加し、該界面活性剤の含有濃度を0.01質量%ずつ増加させた場合に、界面活性剤濃度の変化に対する表面張力の変化量が0.01mN/m以下になったときの該液の表面張力を測定することによって得られる。
【0056】
以下、前記γs(0)、γs(飽和)、γs(飽和)maxについて具体的に説明する。
例えば、内包液として、上述した重合性化合物としてDPGDA(ジプロピレングリコールジアクリレート;ダイセル・サイテック(株)製、多官能モノマー)を85.9%、及びA−DPH(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;新中村化学工業社製、多官能モノマー))を3.0%、界面活性剤としてBYK―307(ビックケミー社製))を1.0%、重合禁止剤としてFIRSTCURE ST−1(Albemarle社製)を0.1%、光重合開始剤としてDAROCUR TPO(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、下記の開始剤−1)を9.0%、増感剤としてSpeedcure DETX(2,4ジエチルチオキサントン、Lambson社製)を1.0%の割合で混合した液体を用いた場合、γs(0)、γs(飽和)、及び、γs(飽和)maxは、下記の通りとなる。
【0057】
【化1】

【0058】
即ち、γs(0)は、内包液のうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力値であり、36.7mN/mとなる。また、該液に前記界面活性剤を添加し、濃度を増加させた時の該液の表面張力の飽和値をγs(飽和)としたとき、その値は20.2mN/mとなる。
【0059】
ここで、本実施例では、界面活性剤が1種類であるので、γs(飽和)maxは、γs(飽和)の値となる。
以上より、それらを纏めると下記のようになる。
γs(0)=36.7mN/m
γs(飽和)max=20.2mN/m
【0060】
以上の結果から、上記具体例の場合内包液の表面張力γsは、
γs<(γs(0)+γs(飽和)max)/2=33.6mN/m
の関係を満たすことが好ましい。
ここで、上記実施例の内包液の表面張力γsは、21.4mN/mであるので、上記関係を満たしている。
なお、前記条件(C)については、着滴から露光までの間のインク滴の拡大をより効果的に防ぐ観点から、内包液の表面張力としては、
γs<γs(0)−3×{γs(0)−γs(飽和)max}/4
の関係を満たすことがより好ましく、
γs≦γs(飽和)max
の関係を満たすことが特に好ましい。
【0061】
内包液は、所望の表面張力が得られるように組成を選択すればよいが、これらの液体は界面活性剤を含有することが好ましい。既述のように、被記録媒体上(つまり、液膜上)に目的の大きさのインクドットを形成するためには、内包液は少なくとも1種の界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤について以下に説明する。
【0062】
(界面活性剤)
本発明において、界面活性剤としては、ヘキサン、シクロヘキサン、p−キシレン、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ブチルカルビトール、シクロヘキサノン、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソプロパノール、メタノール、水、イソボニルアクリレート、1,6−へキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質、好ましくはヘキサン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソボニルアクリレート、1,6−へキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質であり、さらに好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソボニルアクリレート、1,6−へキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質、特に好ましくは、イソボニルアクリレート、1,6−へキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質を用いることが好ましい。
【0063】
上記に列挙した溶媒に対して、ある化合物が強い表面活性を有する物質か否かは、下記の手順によって判断することができる。
(手順)
上記に列挙した溶媒から1種類の溶媒を選択し、該溶媒の表面張力γ溶媒(0)を測定する。前記γ溶媒(0)を求めた溶媒と同じ液に該化合物を添加し、該化合物の濃度を0.01質量%ずつ増加させ、該化合物濃度の変化に対する表面張力の変化が0.01mN/m以下になったときの溶液の表面張力γ溶媒(飽和)を測定する。前記γ溶媒(0)と前記γ溶媒(飽和)の関係が、
γ溶媒(0) − γ溶媒(飽和) > 1 (mN/m)
であれば、該化合物は該溶媒に対して強い表面活性を有する物質であると判断することができる。
【0064】
内包液に含有する界面活性剤の具体例としては、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。その他、界面活性剤としては、例えば、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。
【0065】
以下に、本発明に好適に用いることができるマイクロカプセルに充填させる液体(つまり、内包液)について詳細に説明する。
【0066】
内包液は、活性エネルギー線硬化型の液体であり、好ましくは、ラジカル重合性組成物を含有する液体である。すなわち、内包液は、例えば、ラジカル重合性組成物を少なくとも1種含み、さらに、必要に応じて重合開始剤、親油性溶剤、着色剤及び他の成分を用いて構成されることが好ましい。なお、内包液は、着色剤を含有しないもしくは着色剤の含有量が1質量%未満の構成、又は、内包液が着色剤として白色顔料を含む構成のいずれかであることが好ましい。
【0067】
本発明において、ラジカル重合性組成物とは、少なくとも1種のラジカル重合性化合物と少なくとも1種のラジカル重合開始剤とを含む組成物である。内包液がラジカル重合性組成物を含むことで、内包液の硬化反応を高感度に短時間で行うことができる。
また、重合開始剤は、活性エネルギー線によって重合反応又は架橋反応を開始させ得るものであることが好ましい。これにより、内包液により基体上に形成される液膜を活性エネルギー線の照射によって硬化させることができる。
以下、内包液を構成する各成分について詳述する。
【0068】
(ラジカル重合性化合物)
ラジカル重合性化合物は、後述する重合開始剤などから発生するラジカルなどの開始種によりラジカル重合を生起し、これらを含有する組成物を硬化させる機能を有するものである。
【0069】
本発明におけるラジカル重合性化合物としては、ラジカル開始剤から発生する開始種により重合反応を起こさせる各種公知のラジカル重合性のモノマーを用いる。
ラジカル重合性モノマーとしては、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル類、ビニルエーテル類及び内部二重結合を有する化合物(マレイン酸など)等が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」、「メタクリレート」の双方又はいずれかをさし、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」、「メタクリル」の双方又はいずれかをさす。
【0070】
(メタ)アクリレート類としては、例えば以下のものが挙げられる。
単官能の(メタ)アクリレート類の具体例としては、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトシキメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキシメチル(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、
【0071】
2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシチルコハク酸、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0072】
二官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0073】
三官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリス((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート等が挙げられる。
【0074】
四官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0075】
五官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0076】
六官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0077】
また、(メタ)アクリルアミド類の例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。
【0078】
芳香族ビニル類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレン、4−ヘキシルスチレン、3―オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2−エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン等が挙げられる。
【0079】
ビニルエーテル類の具体例としては、単官能ビニルエーテルの例として、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0080】
また、多官能ビニルエーテルの例としては、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
なお、ビニルエーテル化合物としては、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点からジ又はトリビニルエーテル化合物を用いることが好ましく、特にジビニルエーテル化合物を用いることがより好ましい。
【0081】
また、上記以外に、ラジカル重合性モノマーとしては、更に、ビニルエステル類[酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなど]、アリルエステル類[酢酸アリルなど]、ハロゲン含有単量体[塩化ビニリデン、塩化ビニルなど]、シアン化ビニル[(メタ)アクリロニトリルなど]、オレフィン類[エチレン、プロピレンなど]などが挙げられる。
【0082】
上記のうち、ラジカル重合性モノマーとしては、硬化速度の点から、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類を用いることが好ましく、特に硬化速度の点から、4官能以上の(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。更には、インク組成物の粘度の観点から、多官能(メタ)アクリレートと、単官能もしくは2官能の(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドとを併用することが好ましい。
【0083】
重合性又は架橋性材料の内包液中における含有量としては、各液滴の全固形分(質量)に対して、50〜99.6質量%の範囲とすることが好ましく、70〜99.0質量%の範囲とすることがより好ましく、80〜99.0質量%の範囲とすることがさらに好ましい。
また、液滴中における含有量としては、各液滴の全質量に対して、20〜98質量%の範囲とすることが好ましく、40〜95質量%の範囲がより好ましく、50〜90質量%の範囲とすることが特に好ましい。
【0084】
(重合開始剤)
また、内包液は、少なくとも1種の重合開始剤を含有することが好ましい。この重合開始剤は、活性光、熱、あるいはその両方のエネルギーの付与によりラジカルなどの開始種を発生し、既述の重合性又は架橋性材料の重合又は架橋反応を開始、促進させ、硬化する化合物である。
【0085】
重合性の態様において、ラジカル重合を起こさせる重合開始剤を含有することが好ましく、さらに、光重合開始剤であることが特に好ましい。
光重合開始剤は、光の作用、増感色素の電子励起状態との相互作用によって化学変化を生じ、ラジカル、酸及び塩基のうちの少なくともいずれか1種を生成する化合物であり、中でも、露光という簡便な手段で重合開始させることができるという観点から光ラジカル発生剤であることが好ましい。
【0086】
本発明における光重合開始剤としては、照射される活性光線、例えば、400〜200nmの紫外線、遠紫外線、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどに感度を有するものを適宜選択して使用することができる。
【0087】
具体的な光重合開始剤は、当業者間で公知のものを制限なく使用できる。例えば、Bruce M. Monroeら著、Chemical Revue,93,435(1993).や、R.S.Davidson著、Journal of Photochemistry and biology A :Chemistry,73.81(1993).や、J.P.Faussier“Photoinitiated Polymerization−Theory and Applications”:Rapra Review vol.9,Report,Rapra Technology(1998).や、M.Tsunooka et al.,Prog.Polym.Sci.,21,1(1996).に多く、記載されている。さらには、F.D.Saeva,Topics in Current Chemistry,156,59(1990).、G.G.Maslak,Topics in Current Chemistry,168,1(1993).、H.B.Shuster et al,JACS,112,6329(1990).、I.D.F.Eaton et al,JACS,102,3298(1980).等に記載の、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、酸化的もしくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も使用することができる。
【0088】
好ましい光重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)ボレート化合物、(g)アジニウム化合物、(h)メタロセン化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物、等が挙げられる。
【0089】
前記(a)芳香族ケトン類の好ましい例としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」J.P.FOUASSIER J.F.RABEK (1993)、p77〜117記載のベンゾフェノン骨格或いはチオキサントン骨格を有する化合物等が挙げられる。より好ましい(a)芳香族ケトン類の例としては、特公昭47−6416号公報記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326号公報記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664号公報記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報記載のジアルコキシベンゾフェノン、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報記載のベンゾインエーテル類、特公平1−34242号公報、米国特許第4,318,791号、ヨーロッパ特許0284561A1号記載のα−アミノベンゾフェノン類、特開平2−211452号公報記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2−9596号公報記載のアシルホスフィン、特公昭63−61950号公報記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報記載のクマリン類等が挙げられる。
【0090】
ここで、(b)芳香族オニウム塩化合物としては、周期律表の第V、VI及びVII族の元素、具体的にはN、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、又はIの芳香族オニウム塩が含まれる。例えば、欧州特許104143号明細書、米国特許4837124号明細書、特開平2−150848号公報、特開平2−96514号公報に記載されるヨードニウム塩類、欧州特許370693号、同233567号、同297443号、同297442号、同279210号、及び同422570号各明細書、米国特許3902144号、同4933377号、同4760013号、同4734444号、及び同2833827号各明細書に記載されるスルホニウム塩類、ジアゾニウム塩類(置換基を有してもよいベンゼンジアゾニウム等)、ジアゾニウム塩樹脂類(ジアゾジフェニルアミンのホルムアルデヒド樹脂等)、N−アルコキシピリジニウム塩類等(例えば、米国特許4,743,528号明細書、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、及び特公昭46−42363号各公報等に記載されるもので、具体的には1−メトキシ−4−フェニルピリジニウム テトラフルオロボレート等)、さらには特公昭52−147277号、同52−14278号、及び同52−14279号各公報記載の化合物を好適に使用することができる。活性種としてラジカルや酸を生成する。
【0091】
また、(c)「有機過酸化物」としては、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、例えば、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラキス(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラキス(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラキス(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラキス(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラキス(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系を用いることが好ましい。
【0092】
また、(d)ヘキサアリールビイミダゾールとしては、特公昭45−37377号公報、特公昭44−86516号公報記載のロフィンダイマー類、例えば2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0093】
また、(e)ケトオキシムエステルとしては、例えば、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0094】
また、(f)ボレート化合物の例としては、米国特許3,567,453号、同4,343,891号、ヨーロッパ特許109,772号、同109,773号に記載されている化合物が挙げられる。
また、(g)アジニウム塩化合物の例としては、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号、並びに特公昭46−42363号の各公報に記載のN−O結合を有する化合物群が上げられる。
【0095】
また、(h)メタロセン化合物の例としては、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41484号、特開平2−249号、特開平2−4705号各公報記載のチタノセン化合物ならびに、特開平1−304453号、特開平1−152109号各公報記載の鉄−アレーン錯体が挙げられる
【0096】
チタノセン化合物の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(メチルスルホンアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチルビアロイル−アミノ)フェニル〕チタン等が挙げられる。
【0097】
また、(i)活性エステル化合物の例としては、欧州特許0290750号、同046083号、同156153号、同271851号、及び同0388343号各明細書、米国特許3901710号、及び同4181531号各明細書、特開昭60−198538号、及び特開昭53−133022号各公報に記載されるニトロベンジルエステル化合物、欧州特許0199672号、同84515号、同199672号、同044115号、及び同0101122号各明細書、米国特許4618564号、同4371605号、及び同4431774号各明細書、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、及び特開平4−365048号各公報記載のイミノスルホネート化合物、特公昭62−6223号、特公昭63−14340号、及び特開昭59−174831号各公報に記載される化合物等が挙げられる。
【0098】
また、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物の好ましい例としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報記載の化合物、独国特許3337024号明細書記載の化合物等が挙げられる。
【0099】
また、F.C.Schaefer等によるJ.Org.Chem.29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報記載の化合物、特開平5−281728号公報記載の化合物等も挙げられる。さらに、ドイツ特許第2641100号に記載されているような化合物、ドイツ特許第3333450号に記載されている化合物、ドイツ特許第3021590号に記載の化合物群、あるいはドイツ特許第3021599号に記載の化合物群、等も挙げられる。
【0100】
本発明における光重合開始剤としては、例えば、以下に例示する化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0101】
【化2】

【0102】
【化3】

【0103】
【化4】

【0104】
【化5】

【0105】
【化6】

【0106】
【化7】

【0107】
【化8】

【0108】
【化9】

【0109】
なお、重合開始剤としては、感度に優れるものが好ましいが、保存安定性の観点から、80℃までの温度では熱分解を起こさない重合開始剤を用いることが好ましい。
【0110】
重合開始剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、感度向上の目的で公知の増感剤を併用することもできる。
【0111】
重合開始剤の内包液中における含有量としては、経時安定性と硬化性及び硬化速度との観点から、内包液中の重合性材料に対して0.5〜20質量%の範囲内とすることが好ましく、1〜15質量%とすることがさらに好ましく、3〜10質量%とすることが特に好ましい。含有量を上記範囲内とすることで、経時による析出や分離が生じたり、硬化後のインクの強度や擦り耐性などの性能が悪化したりすることを抑制できる。
【0112】
(増感色素)
また、内包液には、光重合開始剤の感度を向上させる目的で、増感色素を添加することが好ましい。好ましい増感色素の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げられる。
【0113】
具体的には、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)が挙げられる。
【0114】
また、より好ましい増感色素の例としては、下記一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物が挙げられる。
【0115】
【化10】

【0116】
式(IX)中、A1は硫黄原子又は−NR50−を表し、R50はアルキル基又はアリール基を表し、L2は隣接するA1及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R51、R52はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R51、R52は互いに結合して、色素の酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子又は硫黄原子を表す。
式(X)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立にアリール基を表し、−L3−による結合を介して連結している。ここでL3は−O−又は−S−を表す。また、Wは一般式(IX)に示したものと同義である。
式(XI)中、Aは硫黄原子又は−NR59−を表し、Lは隣接するA及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基又はアリール基を表す。
【0117】
式(XII)中、A、Aは、それぞれ独立に−S−又は−NR62−又は−NR63−を表し、R62、R63はそれぞれ独立に置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L、Lはそれぞれ独立に、隣接するA、A及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R60、R61はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団であるか又は互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成することができる。
式(XIII)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環を表し、Aは酸素原子、硫黄原子又は−NR67−を表す。R64、R65及びR67はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R67とR64、及びR65とR67はそれぞれ互いに脂肪族性又は芳香族性の環を形成するため結合することができる。
【0118】
また、一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示す例示化合物(A−1)〜(A−20)などが挙げられる。
【0119】
【化11】

【0120】
【化12】

【0121】
(共増感剤)
さらに、内包液には、感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を共増感剤として加えることが好ましい。
共増感剤の例としては、アミン類、例えばM.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0122】
別の例としては、チオール及びスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4−(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
また別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特開平8−65779号公報記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
【0123】
また、着色剤として内包液に白色顔料を含有させる場合には、内包液中の着色剤の含有量を2〜45質量%とすることが好ましく、4〜35質量%とすることがより好ましい。
【0124】
(その他成分)
また、内包液には、上記した成分以外に、公知の添加剤などを目的に応じて併用することができる。
【0125】
〈貯蔵安定剤〉
内包液には、保存中における好ましくない重合を抑制する目的で、貯蔵安定剤を添加することが好ましい。貯蔵安定剤は、重合性又は架橋性材料と共存させて用いることが好ましく、また、含有する液滴又は液体あるいは共存の他成分に可溶性のものを用いることが好ましい。
【0126】
貯蔵安定剤としては、4級アンモニウム塩、ヒドロキシルアミン類、環状アミド類、ニトリル類、置換尿素類、複素環化合物、有機酸、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノエーテル類、有機ホスフィン類、銅化合物などが挙げられ、具体的にはベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ジエチルヒドロキシルアミン、ベンゾチアゾール、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、クエン酸、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノブチルエーテル、ナフテン酸銅などが挙げられる。
【0127】
貯蔵安定剤の添加量は、重合開始剤の活性や重合性又は架橋性材料の重合性、貯蔵安定剤の種類に基づいて適宜調整するのが好ましいが、保存安定性と硬化性とのバランスの点で、液中における固形分換算を、0.005〜1質量%とすることが好ましく、0.01〜0.5質量%とすることがより好ましく、0.01〜0.2質量%とすることがさらに好ましい。
【0128】
〈導電性塩類〉
導電性塩類は、導電性を向上させる固体の化合物である。本発明においては、保存時に析出する懸念が大きいために実質的に使用しないことが好ましいが、導電性塩類の溶解性を上げたり、液体成分に溶解性の高いものを用いたりすることで溶解性がよい場合には、適当量添加してもよい。
前記導電性塩類の例としては、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などが挙げられる。
【0129】
〈溶剤〉
本発明においては、必要に応じて公知の溶剤を用いることができる。溶剤としては、内包液の極性や粘度、表面張力、導電性の調整、及び印字性能の調整などの目的で使用できる。
なお、溶剤は、非水溶性の液体であって水性溶媒を含有しないことが、速乾性及び線幅の均一な高画質画像を記録する点で好ましいことから、高沸点有機溶媒を用いた構成とするのが望ましい。
高沸点有機溶媒としては、構成素材、特にモノマーとの相溶性に優れる性質を有するものが好ましい。
具体的には、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテルを用いることが好ましい。
【0130】
公知の溶剤としては、100℃以下の有機溶剤である低沸点有機溶媒も挙げられるが、硬化性に影響を与える懸念があり、また、低沸点有機溶媒は環境汚染を考慮すると使用しないことが望ましい。使用する場合には、安全性の高いものを用いることが好ましく、安全性が高い溶媒とは、管理濃度(作業環境評価基準で示される指標)が高い溶媒であり、100ppm以上のものが好ましく、200ppm以上が更に好ましい。具体的には、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、炭化水素などが挙げられ、具体的には、メタノール、2−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0131】
溶剤は、1種単独で用いる以外に複数組み合わせて使用することができるが、水及び/又は低沸点有機溶媒を用いる場合には、両者の使用量を各液中0〜20質量%とすることが好ましく、0〜10質量%とすることが更に好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。本発明に係る内包液に水を実質的に含まないことで、経時による不均一化、染料の析出等に起因する液体の濁りが生じる等の経時安定性を向上させ、非浸透性ないし緩浸透性の記録媒体を用いたときの乾燥性も高くすることができる。なお、実質的に含まないとは、不可避不純物の存在を容認することを意味する。
【0132】
〈その他添加剤〉
さらに、ポリマー、表面張力調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、pH調整剤等の公知の添加剤を併用することができる。
表面張力調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、pH調整剤に関しては、公知の化合物を適宜選択して用いればよいが、具体的には例えば、特開2001−181549号公報に記載されている添加剤などを用いることができる。
【0133】
次に、本発明の第1の態様の被記録媒体に画像を記録し、印刷物を作製する本発明の第2の態様のインクジェット記録装置について詳細に説明する。
図5は、本発明のインクジェット記録装置の一例の概略構成を示す正面図であり、図6は、図5に示したインクジェット記録装置10の記録ヘッドユニット46と紫外線照射ユニット52を示す上面図である。
なお、以下の各実施形態においては、活性光線(以下「活性エネルギー線」ともいう。)の照射によって硬化する活性光線硬化型インク(以下「活性エネルギー線硬化型インク」ともいう。)のうち紫外線硬化型インクを使用する活性光線硬化型インクジェット記録装置を例に説明するが、本発明はこれに限定されることはなく、各種活性光線硬化型インクを用いるインクジェット記録装置に適用することができる。
【0134】
図5に示すように、インクジェット記録装置10は、被記録媒体Pを搬送する搬送部12と、被記録媒体Pのマイクロカプセルを破裂させるカプセル破裂部13と、搬送部12により搬送される被記録媒体Pの搬送経路に対向して配置されている支持部15と、支持部15に支持され被記録媒体P上に画像を記録する画像記録部16と、支持部15に支持され被記録媒体P上に記録された画像を定着させる画像定着部18と、画像が記録された被記録媒体Pを加熱する硬化促進部19と、画像記録部16のインク液滴の吐出を制御する制御部20とを有する。
また、インクジェット記録装置10の制御部20には、入力装置22が接続されている。入力装置22としては、スキャナ等の画像読取装置や、パーソナルコンピュータ等の画像処理装置等の画像データを送信する種々の装置を用いることができる。また、入力装置22と制御部20との接続方法は、有線、無線を問わず種々の接続方法を用いることができる。
【0135】
搬送部12は、供給ロール30と、搬送ロール対34と、回収ロール36とを有し、被記録媒体Pを供給し、搬送し、回収する。
供給ロール30は、ロール状に巻きつけられている連続紙状の被記録媒体Pを有し、被記録媒体Pを供給する。なお、被記録媒体Pは、上述したように基材2の表面にマイクロカプセル4を含有するカプセル層6が塗布(もしくは形成)されている構成である。ここで、本実施形態では、被記録媒体Pのマイクロカプセル4として所定圧力を加えられることにより破裂するカプセルを用いた。
搬送ロール対34は、一対のロール対であり、被記録媒体Pの搬送経路において、供給ロール30の下流側に配置され、供給ロールから供給された被記録媒体Pを挟持して、搬送方向下流側に搬送する。
回収ロール36は、被記録媒体Pの搬送経路の最下流に配置されている。回収ロール36は、供給ロール30から供給され、さらに搬送ロール対34により搬送されて後述するカプセル破壊部13、画像記録部16、画像定着部18、硬化促進部19に対向する位置を通過した被記録媒体Pを巻き取る。
ここで、搬送ロール対34及び回収ロール36は、図示しない駆動部と接続され、駆動部により回転される。
【0136】
ここで、供給ロール30、搬送ロール対34、回収ロール36は、直線状に配置されている。これにより、被記録媒体Pは、供給ロール30から引き出された後、画像が記録される面を上向きにして一方向、本実施形態では、水平方向に移動される。
【0137】
カプセル破壊部13は、被記録媒体Pの搬送方向において、供給ロール30の下流側に配置されている。
カプセル破壊部13は、加圧ロール対60を有する。
加圧ロール対60は、被記録媒体Pの搬送経路において、供給ローラ30の下流側の被記録媒体Pを挟持する位置に配置されている。加圧ロール対60は、被記録媒体Pの幅よりも長いロール対である。
なお、加圧ロール対60は、被記録媒体Pの移動に同期して連れまわる従動ローラとしても、駆動により回転される駆動ローラ対としてもよい。
加圧ロール対60は、供給ローラ30から供給された被記録媒体Pを挟持して、被記録媒体Pに所定の圧力を加え、基材上のマイクロカプセル4を破裂させる。
つまり、被記録媒体Pは、カプセル破壊部13の加圧ロール対60により挟持されることで、マイクロカプセル4が破裂し、基材2の表面に所定厚みの液膜8が形成される。基材2上に所定厚みの液膜8が形成された被記録媒体Pは、搬送部12により画像記録部16及び画像定着部18に対向する位置に搬送される。
【0138】
次に、支持部15、画像記録部16及び画像定着部18について説明する。
支持部15は、本体定盤38と、ヘッド定盤40とを有し、画像記録部16及び画像定着部18を支持している。
本体定盤38は、板状部材であり、カプセル破壊部13と搬送ロール対34との間に、被記録媒体Pの搬送経路と平行に所定間隔離間して配置される。言い換えれば、本体定盤38は、搬送部12により搬送される被記録媒体Pの画像が記録される面(以下「画像記録面」ともいう。)に対向する位置に配置されている。
本体定盤38には、後述する画像記録部16の各記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kに対向した位置に開口38aが、後述する画像定着部18の各紫外線照射部54、54aに対向した位置に開口38bが形成されている。
【0139】
ヘッド定盤40は、板部40aと足部40bとを有し、本体定盤38の被記録媒体P側とは反対側に配置され、本体定盤38と連結されている。
板部40aは、本体定盤38の被記録媒体P側とは反対側に所定間隔離間して配置され、後述する画像記録部16の記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kを保持している。また、足部40bは、板部40aの4隅に配置され、本体定盤38と連結している。
【0140】
画像記録部16は、記録ヘッドユニット46と、インクタンク50とを有する。
記録ヘッドユニット46は、記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kを有する。
記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kは、被記録媒体Pの搬送方向の上流から下流に向かって、記録ヘッド48W、記録ヘッド48C、記録ヘッド48M、記録ヘッド48Y、記録ヘッド48Kの順に配置されている。また、記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kは、ヘッド定盤40に保持され、かつ、それぞれのインク吐出部の先端が被記録媒体Pの搬送経路に対向して、つまり、搬送部12により搬送経路上を搬送される被記録媒体Pに対向して(以下単に「被記録媒体Pに対向して」ともいう。)配置されている。
【0141】
記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kは、被記録媒体Pの搬送方向に対して直交する方向、つまり、被記録媒体Pの幅方向の全域に一定間隔で多数の吐出口(ノズル、インク吐出部)が配置されたフルライン型であり、かつ、ピエゾ型のインクジェットヘッドであり、後述する制御部20及びインクタンク50に接続されている。記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kは、制御部20によりインク液滴の吐出量、吐出タイミングが制御される。
搬送部12により被記録媒体Pを搬送しつつ、各記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kから白(W)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のそれぞれの色インクを被記録媒体Pに向けて吐出することにより被記録媒体P上にカラー画像を形成することができる。
【0142】
本実施形態では、記録ヘッドをピエゾ素子(圧電素子)方式としたが、これに限定されず、ピエゾ方式に代えて、ヒーターなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式の記録ヘッドを用いることも適用できる。
なお、本実施形態の記録ヘッドから吐出されるインクは、紫外線硬化型インクである。
【0143】
インクタンク50は、記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kに対応して設けられている。各インクタンク50は、記録ヘッドに対応して各色のインクが貯蔵しており、貯蔵しているインクを対応している記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kに供給する。
【0144】
また、被記録媒体の画像が形成されない面側の記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kに対向する位置には、板状のプラテン56が配置されている。
プラテン56は、各記録ヘッドに対向する位置を搬送される被記録媒体Pを、画像が形成されない面側、つまり、被記録媒体Pの記録ヘッドユニット46が配置されている面とは反対側の面から支持する。これにより被記録媒体Pと各記録ヘッドとの距離を一定にすることができ、被記録媒体P上に高画質な画像を形成することができる。
なお、プラテン56の形状は、平板に限定されず、記録ヘッド側に凸の曲面形状としてもよい。この場合、記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kは、プラテンとの距離が一定となるように配置される。
【0145】
画像定着部18は、複数の紫外線照射ユニット52と、最終硬化用紫外線照射ユニット52aとで構成され、記録ヘッドユニット46により被記録媒体P上に形成された画像に紫外線を照射し、画像(つまりインク層)を半硬化または硬化させ、画像を定着させる。
【0146】
本発明において、インク(つまりインク液)の半硬化とは、液膜の場合と同様であり、部分的な硬化(partially cured; partial curing)を意味し、インク液(つまり、着色液)が部分的に硬化しているが完全に硬化していない状態をいう。なお、液膜上に吐出されたインク液が半硬化している場合、硬化の程度は不均一であってもよく、インク液は深さ方向に硬化が進んでいることが好ましい。ここで、本実施形態において、半硬化させるインク液は、被記録媒体Pの液膜8に着弾しインク層を形成するインク液滴である。
【0147】
インク液を半硬化させ、半硬化の状態のインク液上にこれとは色相の異なるインク液を打滴させると、得られる印刷物の品質に好ましい技術的効果を得ることができる。また、その作用機構を印刷物の断面観察により確認できる。
【0148】
以下、インク液(つまり、液膜上に着弾させたインク液滴、着弾させたインク液滴により形成したインク層)の半硬化について説明する。
図7は、半硬化されたインク液d上にインク液dを打滴した被記録媒体を示す模式的断面図であり、図8(A)及び(B)は、それぞれ未硬化状態のインク液d上にインク液dを打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図であり、図8(C)は、完全に硬化させた状態のインク液上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図である。
インク液dを打滴した後に、インク液dの上にインク液dを打滴して2次色を形成する時は、半硬化状態のインク液d上にインク液dを付与することが好ましい。
ここで、インク液dの半硬化状態とは、上述した液膜の半硬化状態と同様であり、図7に示すように、インク液d上にインク液dを打滴した場合に、(1)インク液dの一部がインク液dの表面に出ており、(2)インク液dの一部がインク液dに潜り込み、かつ、(3)インク液dの下層にはインク液dが存在する状態である。
このようにインク液を半硬化させることで、インク液dの硬化膜(着色膜A)及びインク液dの硬化膜(着色膜B)を好適に積層させることができ、良好な色再現が可能となる。
【0149】
これに対して、未硬化状態のインク液d上にインク液dを打滴した場合は、図8(A)に示すようにインク液dの全部がインク液dに潜り込むか、および/または、図8(B)に示すようにインク液dの下層にはインク液dが存在しない状態となる。この場合は、高密度にインク液d液滴を付与しても、液滴同士が独立するため、2次色の彩度低下の原因となる。
【0150】
また、完全に硬化したインク液d上にインク液dを打滴した場合は、図8(C)で示すようにインク液dはインク液dに潜り込まない状態となる。この場合は、打滴干渉の発生の原因となり、均一なインク液の膜層が形成できず、色再現性の低下を招く。
【0151】
ここで、高密度にインク液dの液滴を付与した場合に液滴同士が独立することなく、均一なインク液dの膜層を形成する観点、および、打滴干渉の発生を抑制する観点から、単位面積当たりのインク液dの未硬化部の量は、単位面積当たりに付与するインク液dの最大液滴量よりも少ないことが好ましく、十分に少ないことがより好ましい。すなわち、インク液d層の未硬化部の単位面積当たりの重量Mda(M(インク液A)ともいう。)と単位面積当たりに吐出するインク液の最大重量mdb(m(インク液B)ともいう。)との関係は、(mdb/30)<Mda<mdbを満たすことが好ましく、(m(db/20)<Mda<(mdb/3)を満たすことがさらに好ましく、(mdb/10)<Mda<(mdb/5)を満たすことが特に好ましい。
(mdb/30)<Mdaとすることで打滴干渉の発生を防止でき、さらに、ドットサイズ再現性を高くすることができる。また、Mda<mdbとすることで、インク液dの膜層を均一に形成ができ、濃度の低下を防止できる。
【0152】
ここで、単位面積当たりのインク液dの未硬化部の重量は、上述した液膜の場合と同様に、転写試験により求めるものである。具体的には、半硬化過程の終了後(例えば、活性エネルギー線の照射後)であってインク液dの液滴を打滴する前に、普通紙などの浸透媒体を半硬化状態のインク液d層に押し当てて、浸透媒体に転写したインク液dの量を重量測定によって測定し、測定した値をインク液の未硬化部の重量と定義するものである。
例えば、インク液dの最大吐出量を、600×600dpiの打滴密度で、1画素当たり12ピコリットルとすると、単位面積当たりに吐出するインク液dの最大重量mdbは、0.74mg/cmとなる(なお、インク液dの密度は、約1.1g/cm3とする。)。従って、この場合は、インク液d層の単位面積当たりの未硬化部の重量Mdaを、0.025mg/cm以上0.74mg/cm以下とすることが好ましく、0.037mg/cm以上0.25mg/cm以下とすることがさらに好ましく、0.074mg/cm以上0.148mg/cm以下とすることが特に好ましい。
【0153】
なお、本発明では、液膜および/またはインク液に活性エネルギー線を与えて硬化反応を起こさせて、液膜および/またはインク液を半硬化させる。ここで、活性エネルギー線を与えて半硬化反応を起こさせる方法とは、被記録媒体に形成された液膜及び/またはインク液の表面における重合性化合物の重合反応を不充分に行なう方法である。前記液膜及び/またはインク液の表面においてはその内部と比べて空気中の酸素の影響で重合反応が阻害され易い。したがって活性エネルギー線の付与条件を制御することにより、液膜及び/またはインク液の半硬化反応を起こさせることができる。
【0154】
液膜および/またはインク液の半硬化に必要なエネルギー量は、重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、活性エネルギー線によりエネルギーを付与する場合には、一般には1〜500mJ/cm程度が好ましい。
【0155】
活性光や加熱などの活性エネルギー線の付与により、重合開始剤の分解による活性種の発生が促進されると共に、活性種の増加や温度上昇により、活性種に起因する重合性材料の重合による硬化反応が促進される。
また、増粘(粘度上昇)も、活性光の照射、又は加熱によって好適に行なうことができる。
【0156】
複数の紫外線照射ユニット52は、本体定盤38の被記録媒体Pとは反対側の面に配置され、被記録媒体Pの搬送経路において、それぞれ記録ヘッド48W、48C、48M、48Yの下流側に配置されている。すなわち、複数の紫外線照射ユニット52は、被記録媒体Pの搬送方向に沿って、記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kの間に配置されている。さらに、最終露光用紫外線照射ユニット52aは、本体定盤38の被記録媒体Pとは反対側の面に配置され、被記録媒体Pの搬送経路において、記録ヘッド48Kの下流側に配置されている。つまり最終露光用紫外線照射ユニット52aは、被記録媒体Pの搬送経路において、最も下流側に配置されている記録ヘッドの下流側に配置されている。
【0157】
つまり、各記録ヘッドと各紫外線照射ユニット52、最終露光用紫外線照射ユニット52aとは、図6に示すように、搬送経路の上流から下流に向けて、記録ヘッド48W、紫外線照射ユニット52、記録ヘッド48C、紫外線照射ユニット52、記録ヘッド48M、紫外線照射ユニット52、記録ヘッド48Y、紫外線照射ユニット52、記録ヘッド48K、最終硬化用紫外線照射ユニット52aの順に配置されている。
【0158】
ここで、紫外線照射ユニット52と、最終硬化用紫外線照射ユニット52aとは、装置の大きさ、紫外線を照射する対象が異なるのみで、具体的には、紫外線照射ユニット52は、各記録ヘッドにより形成された画像の各色のインク層(つまり、各色インクに形成される画像)を半硬化させ、最終露光用紫外線ユニット52aは、他の紫外線照射ユニットよりも強度の強い光を照射し、被記録媒体Pの液膜8及び被記録媒体P上に形成された各インク層の画像を確実に硬化させる点が異なるのみで、装置構成は、紫外線照射ユニット52と同様であるので、代表して紫外線照射ユニット52を用いて説明する。
また、各紫外線照射ユニット52は、同様の構成であるので、以下、1つの紫外線照射ユニット52について説明する。
紫外線照射ユニット52は、2つの紫外線照射部54を有し、紫外線照射部54は、被記録媒体Pの幅方向の直線上に直列に配置されている。紫外線照射ユニット52は、2つの紫外線照射部54で被記録媒体Pの幅方向の全域に紫外線を照射させる。
【0159】
紫外線照射部54は、UVランプを有し、被記録媒体Pの搬送経路に対向して、本体定盤38の被記録媒体P側とは反対側の面に配置されている。
UVランプは、紫外線を射出する光源であり、被記録媒体P側に向けて、紫外線を照射する。UVランプとしては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ等、種々の紫外線光源を用いることができる。
また、本体定盤38のUVランプに対向する位置には、開口38bが形成されている。これにより、UVランプから射出された紫外線は、開口38bを通過して被記録媒体Pに到達する。
【0160】
硬化促進部19は、被記録媒体Pを挟んで、最終硬化用紫外線照射ユニット52aに対向する位置に配置されている。つまり、硬化促進部19は、被記録媒体Pの画像が形成される面とは反対の面側、言い換えると被記録媒体Pの裏面側の、最終硬化用紫外線照射ユニット52aに対向して配置されている。硬化促進部19は、被記録媒体を加熱する手段であり、対向する位置の被記録媒体P、被記録媒体P上に形成されたインク層を加熱する。
硬化促進部19としては、赤外LED、赤外LD、温風加熱機等の非接触で被記録媒体を加熱する加熱手段、パネルヒータ等の接触して被記録媒体を加熱する加熱手段等、種々の加熱手段を用いることができる。
ここで、硬化促進部として接触しつつ被記録媒体を加熱する加熱手段を用いる場合は、硬化促進部をプラテンとして用いてもよい。
なお、本実施形態では、硬化促進部として、被記録媒体P及びインク層を加熱する加熱手段を用いた例について説明するが、本発明はこれに限定されず、被記録媒体Pの液膜、及びインク層の硬化を促進させる種々の手段を用いることができ、例えば、最終硬化用露光ユニット52aに被記録媒体が露光される領域に窒素を封入するなどして、酸素濃度を低減させる手段を用いることができる。
【0161】
また、制御部20は、記録ヘッドユニット46の各記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kと接続しており、入力装置22から送られた画像データを描画信号とし、各記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kのインク吐出/非吐出を制御し、被記録媒体P上が画像を形成させる。
【0162】
次に、インクジェット記録装置10の作用、つまり、被記録媒体Pへの記録動作を説明することで、本発明のインクジェット記録装置についてより詳細に説明する。
図9(A)〜(C)は、それぞれ被記録媒体上に画像を形成する工程を模式的に示す工程図である。
【0163】
まず、供給ロール30から送り出された被記録媒体Pは、搬送ロール対34の回転により所定方向(図5中Y方向)に搬送される。ここで、本実施形態の被記録媒体Pは、上述したように、一定以上の長さの連続紙であり、被記録媒体Pが切れ目なく搬送される。
【0164】
供給ロール30から引き出された被記録媒体Pは、図9(A)に示すように、カプセル破壊部13の加圧ロール対60により挟持され、所定圧力に加圧され、基材2表面のマイクロカプセル4が破裂する。
これにより、被記録媒体Pの基材2表面には、所定厚みの液膜8が形成される。
【0165】
基材2上に液膜8が形成された被記録媒体Pは、搬送部12の搬送ロール対34によりさらに搬送され、記録ヘッド48Wに対向する位置を通過する。
記録ヘッド48Wは、制御部20による制御に応じて、吐出口から複数のインク液滴を吐出させ、搬送部12により搬送され対向する位置を通過する被記録媒体P上に画像を形成する。
具体的には、記録ヘッド48Wは、被記録媒体P上に第1のインク液滴d1を吐出させる。記録ヘッド48Wから吐出された第1のインク液滴d1は、図9(B)に示すように、被記録媒体Pの液膜8の表面に着弾する。このように、被記録媒体Pの表面が液膜8であり、表面が硬化していないため、インク液滴d1と被記録媒体Pの表面とがなじみやすい。
また、図9(C)に示すように、先に打滴した第1のインク液滴d1の着弾位置近傍に、第2のインク液滴d2を打滴する。この時も、被記録媒体の表面は液膜8であり、表面が硬化していないため、インク液滴d2となじみやすい。
また、インク液滴d1とインク液滴d2とを被記録媒体P上の近傍に着弾された場合は、インク液滴d1とインク液滴d2とを合一しようとする力が働くが、液膜8がインク液滴間の合一に対する抵抗力となり、被記録媒体Pに着弾したインク液滴同士の干渉が抑制される。
【0166】
このように記録ヘッド48Wから複数のインク液滴を吐出させ、被記録媒体P上に着弾させることにより画像を形成する。
【0167】
記録ヘッド48Wにより画像が形成された被記録媒体Pは、搬送部12によりさらに搬送され、記録ヘッド48Wの下流に配置された紫外線照射ユニット52に対向する位置を通過する。
紫外線照射ユニット52は、対向する位置を通過する被記録媒体Pに紫外線を照射し、記録ヘッド48Wにより被記録媒体P上に形成された画像を半硬化、つまり、被記録媒体上に着弾したインク液滴の内部のみを硬化させる。
【0168】
その後、被記録媒体Pは、さらに搬送され、記録ヘッド48C、紫外線照射ユニット52、記録ヘッド48M、紫外線照射ユニット52、記録ヘッド48Y、紫外線照射ユニット52、記録ヘッド48Kの順に対向する位置を通過する。被記録媒体Pは、各色の記録ヘッド及び紫外線照射ユニットに対向する位置を通過する毎に、記録ヘッド48W及び紫外線照射ユニット52に対向する位置を通過した場合と同様にして、画像が形成され、形成された画像が半硬化される。
このように画像、つまりインク層を半硬化することで、形成された画像のうえにインク液滴が着弾した場合も、上述したインク液滴と液膜との関係と同様に、インク液滴とインク層がなじみやすくなり、各インク液滴同士の干渉が抑制される。
【0169】
被記録媒体Pは、記録ヘッド48Kにより画像が形成された後に、最終硬化用紫外線照射ユニット52aに対向する位置を通過する。
最終硬化用紫外線照射ユニット52aは、他の紫外線照射ユニットよりも強度の強い紫外線を被記録媒体P上に照射し、記録ヘッド48Kにより記録された画像を含む各種ヘッドで形成された被記録媒体P上の画像及び被記録媒体Pの液膜8を硬化させる。
また、硬化促進部19は、最終硬化用紫外線照射ユニット52aに対向する位置を通過する被記録媒体Pと被記録媒体P上の画像、つまり各記録ヘッドで形成されたインク層及び被記録媒体Pの液膜8とを加熱し、硬化を促進させる。
このようにして被記録媒体P上にカラー画像が形成される。
【0170】
カラー画像が形成された被記録媒体Pは、搬送ロール対34によりさらに搬送され、回収ロール36により巻き取られる。
インクジェット記録装置10は、このようにして被記録媒体P上に画像を形成する。
【0171】
このように、基材上にマイクロカプセルが塗布された被記録媒体を用い、画像を記録する前にカプセル破壊部により基材上のマイクロカプセルを破裂させ、基材上に液膜を形成させた後に、画像を記録することにより、インク液滴が移動して近接する位置に着弾したインク液滴が合一することを防止できる。
また、被記録媒体の表面に液膜を形成することで、この液膜とインク液滴との表面張力の差により液滴が濡れ拡がることを抑制でき、画像ににじみが生じることを防止でき、また、インク液滴との密着性を高くすることができる。これにより、高画質な画像を形成することが可能となり、高画質な印刷物を作製することができる。
【0172】
また、マイクロカプセルを破裂させることで、液膜が形成できるため、インクジェット記録装置で、液体の塗布をすることなく、液膜を形成することができる。これにより、装置構成を簡単にすることができる。さらに、メンテナンスが煩雑な塗布機構を設ける必要がなくなり、メンテナンスが簡単、または必要のないカプセル破壊機構を配置するのみであるので、装置のメンテナンス性を良好にすること、つまり、装置のメンテナンス回数を減らすことができる。これにより、システムコストを低減させることができる。
【0173】
また、マイクロカプセルに充填する液体、つまり、液膜を形成する液体として、インクと同様に活性エネルギー線硬化型の液体、本実施形態では、紫外線硬化型の液体を用いることで、画像の硬化、つまりインク層(つまり被記録媒体上のインク)の硬化と同時に硬化させることができる。このため、装置構成を簡単にすることができる。
【0174】
さらに、マイクロカプセルを破裂させることで形成される液膜の厚みが1μm以上3μm以下となる被記録媒体を用いることで、インク液滴同士の干渉をより確実に防止することができ、より高画質な印刷物を作成することができる。
【0175】
また、硬化促進部19により、最終硬化用紫外線照射ユニット52aから紫外線が照射されている被記録媒体P及び被記録媒体P上のインク層を加熱し、硬化を促進させることで、被記録媒体Pの液膜と、白及びCMYKの各色のインク層とが積層された画像を好適に硬化することができる。つまり、硬化促進部で加熱することにより、複数層のインク層が積層された画像部のうち、紫外線が届きにくく硬化しにくい被記録媒体側の層、本実施形態では、白インク層等及び被記録媒体の液膜も良好に硬化させることができる。つまり、加熱することにより、紫外線が照射され、硬化を開始している液膜及びインク層の硬化を促進させることができる。
また、被記録媒体の液膜及び被記録媒体上に形成されたインク層(つまり画像)に、強度の高い紫外線を照射することなく、液膜及びインク層を硬化させることができる。これにより、画像の表面のインク層(つまり、本実施形態では、黒(K)インク層)が収縮することを防止でき、硬化時に画像にひび、乱れが生じることを防止できる。また、最終硬化用紫外線照射ユニットとして安価な紫外線照射装置を用いることができる。
また、硬化促進部により、加熱することで、短時間で液膜及びインク層を硬化することができ、かつ、搬送経路を短くすることができる。これにより、印刷物をより高速で作成することができ、かつ、装置をコンパクトにすることができる。
このように液膜及びインク層を確実に硬化させることができることで、液膜及びインク層が完全に硬化されていない状態の被記録媒体が巻き取られ、画像部が、接触する被記録媒体の裏面に転写されること及び接着することを防止でき、高画質な画像が形成された印刷物を好適に作製することが可能となる。
【0176】
また、本実施形態のように、各色のインクを半硬化状態とし完全に硬化させることなく画像を形成する場合も、最終硬化用紫外線照射ユニット52aで紫外線を照射する際に、硬化促進部で液膜及びインク層を加熱することにより、液膜、及び半硬化状態の各色のインク層の硬化を促進させることができ、下塗り層及び各色のインク層を硬化させることができる。また、インク層を半硬化させることにより、高画質な画像を形成することができる。
【0177】
また、本実施形態のように白インクを用いる場合でも、加熱することで白インク層及び白インク層よりも紫外線照射部から離れている液膜を好適に硬化することができる。
つまり、本発明によれば、白インク層を含む複数のインク層を形成した場合でも、被記録媒体上に形成された画像及び被記録媒体の液膜を好適に、かつ確実に硬化させることができ、高画質な印刷物を作製することができる。
【0178】
また、硬化促進部は、本実施形態のように、被記録媒体の裏面側に対向して配置することが好ましい。被記録媒体の裏面側から加熱することで、被記録媒体側の画像部、つまり、紫外線が届きにくい部分を効率よく加熱することができる。これにより、被記録媒体の液膜及び被記録媒体上に形成されたインク層を好適に硬化することができる。
なお、上述したように硬化促進部は、被記録媒体の裏面側に対向して配置することが好ましいが、表面側、つまり被記録媒体の画像が形成される側の面に対向して配置してもよい。硬化促進部を被記録媒体の表面側に配置する場合は、赤外LED、赤外LD、温風加熱機等の被記録媒体及びインク層を非接触で加熱する加熱手段を用いることが好ましい。硬化促進部として非接触型の加熱手段を用いることで、被記録媒体上に形成された画像に乱れ、スジ、ムラ等を生じさせることなく、被記録媒体及びインク層を加熱することができる。つまり、被記録媒体及びインク層の硬化を促進することができる。
【0179】
ここで、硬化促進部として加熱手段を用いる場合、硬化促進部は、被記録媒体を40度以上100度以下に加熱することが好ましく、50度以上90度以下に加熱することがより好ましい。
硬化促進部により被記録媒体を加熱する温度を40度以上より好ましくは50度以上とすることで、インク層及び下塗り層の硬化を促進させ、より確実に硬化させることができる。また、硬化促進部により被記録媒体を加熱する温度を、100度以下より好ましくは90度以下とすることで、被記録媒体の水分が過剰に蒸発することを防止でき、被記録媒体のたわみ及び波打ちが生じることを防止できる。
【0180】
なお、本実施形態では、硬化促進部を最終露光用紫外線照射ユニットに対向する位置に配置し、液膜及びインク層を完全に硬化させるための紫外線が照射される位置の被記録媒体を加熱したが、本発明はこれに限定されず、被記録媒体の搬送方向において、硬化促進部を最終露光用紫外線照射ユニットよりも下流側に配置してもよい。つまり、画像記録装置を、液膜及びインク層を完全に硬化させるための紫外線が照射された後に、硬化促進部により被記録媒体及びインク層が加熱される構成としてもよい。
このように、硬化促進部により、最終露光用紫外線照射ユニットにより紫外線が照射された後の液膜及びインク層を加熱することによっても液膜および被記録媒体側インク層を硬化させることができる。
【0181】
ここで、被記録媒体としては、透明な部材を用いることが好ましい。透明な被記録媒体を用いることで、裏面から好適に液膜及び/またはインク層を加熱することができる。
また、記録ヘッド48Wは、被記録媒体の画像記録領域の全域にインク層を形成することが好ましい。白インクのインク層を画像記録領域の全域に形成することにより、透明の部材や、金属等を被記録媒体として用いた場合でも、視認性の高い画像を形成することができる。
【0182】
ここで、搬送部12による被記録媒体Pの搬送速度は、200mm/s以上600mm/s以下とすることが好ましい。これにより、被記録媒体に効率よく高画質な画像を形成することができる。また、高速で印刷物を作成することができる。つまり短時間で大量の記録媒体を印刷することが可能となる。
【0183】
なお、本実施形態では、カプセル破壊部として、被記録媒体に所定圧力を加える加圧ロール対を用いたが、本発明は、圧力によりマイクロカプセルを破裂させる方法に限定されず、被記録媒体に用いるマイクロカプセルの種類に併せて、熱、光等のエネルギーを与えて、マイクロカプセルを破裂させる方法も用いることができる。具体的には、LD、LED、サーマルヘッド等により被記録媒体にエネルギー及び熱エネルギーを印加することで、マイクロカプセルを破裂させる手段も用いることができる。
また、カプセル破壊部として複数の方法でマイクロカプセルを破裂させることができる手段を用いてもよい。
【0184】
また、各記録ヘッド間に、紫外線照射ユニットを配置し、各記録ヘッドにより被記録媒体上に着弾させたインク液滴つまり画像を半硬化させることで、近接した位置に着弾したインク液滴が移動して合一することや、インク液滴が濡れ拡がることを抑制し、画像が滲むことを防止することができる。また、異なる色の液膜を好適に積層させることができ、良好な色再現が可能となる。
なお、紫外線照射ユニットは、記録ヘッドにより被記録媒体上にインク液滴が着弾された後、数百ミリ秒から5秒の間に紫外線を照射し、被記録媒体に着弾したインク液滴、つまり、インク層を半硬化させることが好ましい。
インク液滴の着弾後、数百ミリ秒から5秒の間にインク液滴を半硬化させることで、被記録媒体上のインク液滴の形状が崩れることを防止でき、高画質な画像を形成することができる。
【0185】
また、本実施形態のように、紫外線照射ユニットを直線上に配置した複数の紫外線照射部で構成することで、つまり、複数の紫外線照射部で被記録媒体の幅方向の全域に紫外線を照射させる構成とすることで、各紫外線照射部の紫外線照射領域を小さくすることができ、UVランプとして安価な光源を用いることができ、駆動機構としても安価な駆動機構を用いることができる。これにより装置コストを低減させることができる。なお、装置コストは高くなるが、紫外線照射ユニットを1つの紫外線照射部で構成してもよいのはもちろんである。
また、本実施形態では、紫外線照射部を被記録媒体の搬送方向に直交する直線上に一直線に配置したが、紫外線照射部を被記録媒体の搬送方向において異なる位置、つまり、搬送方向に直交する方向に平行な複数の直線上に千鳥状に配置してもよい。
【0186】
また、本実施形態では、紫外線照射部のUVランプは、被記録媒体の搬送方向に直交する直線上に一直線に配置しても、UVランプを被記録媒体の搬送方向において異なる位置、つまり、搬送方向に直交する方向に平行な複数の直線上に千鳥状に配置してもよい。
【0187】
また、被記録媒体の搬送経路において、最下流側に配置された記録ヘッドに対応する紫外線照射ユニットを最終硬化用紫外線照射ユニットとし、他の紫外線照射ユニットよりも強い強度の紫外線を射出させることで、被記録媒体上に形成された画像を確実に硬化させることができる。
【0188】
また、紫外線照射ユニットには、被記録媒体P側に照射する紫外線を遮断することができる開閉可能なシャッタを設けてもよい。
シャッタを設けて、照射される紫外線を遮断することで、被記録媒体P側に紫外線が必要以上に漏れることを防止でき、被記録媒体Pで反射した紫外線が記録ヘッドに照射され、記録ヘッドのインクが硬化されることを防止できる。また、シャッタを設けることで、UVランプ等の光源をON/OFFすることなく、紫外線の照射/非照射を切り替えることができる。
【0189】
また、紫外線照射部54近傍の各部には、光反射防止の処置(例えば、つや消しの黒色処理)を施すことが好ましい。
【0190】
次に、本発明のインクジェット記録装置の他の一例について説明する。
図10は、本発明の他の一例のインクジェット記録装置の概略構成を示す正面図である。
インクジェット記録装置80は、カプセル破壊部13と画像記録部16との間に液膜半硬化部14を設けた点を除いて他の構成は、インクジェット記録装置10と同様の構成であるので、同様の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略し、インクジェット記録装置80に特有の点について説明する。
【0191】
インクジェット記録装置80は、被記録媒体Pを搬送する搬送部12と、被記録媒体Pのマイクロカプセルを破裂させるカプセル破壊部13と、被記録媒体Pのマイクロカプセルが破裂させることで基材表面に形成される液膜に紫外線を照射し、液膜を半硬化させる液膜半硬化部14と、支持部15に支持され被記録媒体P上に画像を記録する画像記録部16と、支持部15に支持され被記録媒体P上に記録された画像を定着させる画像定着部18と、画像記録された被記録媒体Pの硬化を促進させる硬化促進部19と、画像記録部16のインク液滴の吐出を制御する制御部20とを有する。
ここで、搬送部12、カプセル破壊部13、支持部15、画像記録部16、画像定着部18、硬化促進部19、制御部20は、インクジェット記録装置10の各部と同様の構成であるので、その詳細な説明は省略する。
【0192】
液膜半硬化部14は、UVランプを有し、被記録媒体Pの搬送経路に対向して配置されている。ここで、UVランプは、紫外線を射出する光源であり、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ等、種々の紫外線光源を用いることができる。
液膜半硬化部14は、対向する位置を通過する被記録媒体Pの幅方向の全域に紫外線を照射する。
【0193】
液膜半硬化部14は、対向する位置を通過する被記録媒体Pの基材2上の液膜8に紫外線を照射し、被記録媒体Pの表面の液膜を半硬化状態にする。つまり、液膜半硬化部14は、被記録媒体Pの液膜を、半硬化した状態とする。
このように、被記録媒体Pの液膜を半硬化させることで、より高画質な画像を形成することができる。
具体的には、上述したように、インク液滴の移動による近接するインク液滴の合一、およびインク液滴が濡れ拡がることを防止でき、画像の滲み、画像中の細線などの線幅の不均一及び着色面の色ムラの発生を効果的に防止することができ、均一幅で先鋭なライン形成が可能であり、反転文字など打滴密度の高いインクジェット画像の記録を細線等の微細像を再現よく行うことができる。さらに、異なる色の液膜を好適に積層させることができ、良好な色再現が可能となる。
【0194】
また、液膜半硬化部を設け、被記録媒体の液膜を半硬化させることで、マイクロカプセルを破裂させることにより形成される液膜の膜厚によらず、高画質な画像を形成することができる。つまり、マイクロカプセルを破裂させることで形成される液膜の厚みが3μm以上となる被記録媒体を用いた場合でも高画質な画像を形成することができ、高画質な印刷物を作成することができる。
【0195】
ここで、本実施形態では、上述したように、異なる色のインクが混ざることを防止でき、より高画質な画像を形成できるため、各色の記録ヘッド間に紫外線照射部を配置し、各記録ヘッドで画像が記録される毎に被記録媒体上の画像部、つまりインク層を半硬化させたが、本発明はこれに限定されず、複数の記録ヘッドに対して1つの紫外線照射ユニットを配置した構成としてもよい。
例えば、図11に示すように、画像定着部91を最終硬化用紫外線照射ユニット52aのみとしたインクジェット記録装置90も好適に用いることができる。
なお、インクジェット記録装置90は、画像定着部91の構成を除いて、他の構成要素は、図5に示したインクジェット記録装置10と同様の構成である。
インクジェット記録装置90は、カプセル破壊部13により被記録媒体Pの基材表面上のマイクロカプセルを破裂させ、基材上に液膜を形成した後、記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kにより被記録媒体P上に画像を形成し、その後、最終硬化用紫外線照射ユニット52aにより被記録媒体P上に紫外線を照射して各インク層及び被記録媒体の液膜を硬化させる。
また、最終硬化用紫外線照射ユニット52aから紫外線が照射されている被記録媒体Pは、硬化促進部19により加熱されることで、各インク層及び被記録媒体の液膜の硬化が促進される。
【0196】
このように、各記録ヘッドに対応して紫外線照射部を配置していない構成でも、画像記録部によりインク液滴が吐出される前にカプセル破壊部によりマイクロカプセルを破裂させ、基材上に液膜を形成することで、被記録媒体P上に好適に画像を記録することができる。
また、複数の記録ヘッドにより形成された画像(つまり複数のインク層)及び被記録媒体の液膜を1つの紫外線照射ユニットからの紫外線の照射により硬化させる場合も、硬化促進部により加熱し、効果を促進させることで、被記録媒体側のインク層及び被記録媒体の液膜まで確実に硬化させることができる。
【0197】
また、本実施形態では、記録ヘッドユニットを、白(W)と、CMYKの5色としたが、単にCMYKの4色、さらに他の特色のヘッドを有する6色以上の構成等の種々の組み合わせのヘッドとすることもできる。また、各色の記録ヘッドの配置順も特に限定されず、任意の順番とすることができる。
また、記録ヘッドを複数配置することに限定されず、1つの記録ヘッドを用いて被記録媒体上に画像を形成する単色の画像を形成するインクジェット記録装置としてもよい。
【0198】
次に、本発明のインクジェット記録装置を用いたデジタルラベル印刷装置について説明する。
図12は、本発明のインクジェット記録装置を用いたデジタルラベル印刷装置の一例の概略構成を示す正面図であり、図13は、図12に示すデジタルラベル印刷装置を制御する制御部を示すブロック図であり、図14は、図12に示すデジタルラベル印刷装置に用いるラベル印刷用被記録媒体P’の縦断面図である。
【0199】
本実施形態のデジタルラベル印刷装置は、連続紙状のラベル印刷用被記録媒体P’に描画部により画像を記録した後、後処理部のダイカッタによってラベル形状の切込みを入れ、更に、不要部分の粘着シートを台紙(剥離紙)から剥離して除去するカス取り作業を後工程として行う実施形態である。
尚、以下の各実施形態においても、活性光線照射によって硬化する活性光線硬化型インクのうち紫外線硬化型インクを使用する活性光線硬化型デジタルラベル印刷装置を例に説明するが、これに限定されることはなく、各種活性光線硬化型インクを用いるデジタルラベル印刷装置、さらに、他の任意の形式のデジタルラベル印刷装置に適用することができる。
また、本実施形態の被記録媒体P’は、図14に示すように、基材179が、裏面に粘着剤180aが塗布された粘着シート180を、台紙である剥離紙182上に重ね合わせた2枚構造であり、その基材179の粘着シート180の表面にマイクロカプセル4を含有するカプセル層6が形成されている。
つまり、本実施形態の被記録媒体P’は、基材179を、剥離可能な、粘着シート180と剥離紙182とで構成した点を除いて、他の構成は図1に示した被記録媒体Pと同様の構成である。
【0200】
図12に示すようにデジタルラベル印刷装置100は、搬送部110と、カプセル破壊部13と、支持部15、画像記録部16、画像定着部18及び硬化促進部19を備える描画部112と、後処理部114と、制御部116とを有する。
ここで、搬送部110は、連続紙状のラベル印刷用被記録媒体P’(以下「被記録媒体P’」という。)を、一定方向(図12中左から右方向)に搬送するものであり、描画部112、後処理部114は、被記録媒体P’の搬送方向順、つまり上流から下流方向に、カプセル破壊部13、描画部112、後処理部114の順に配置されている。また、図12では一部の図示を省略しているが、制御部116は、カプセル破壊部13、搬送部110、描画部112、後処理部114と接続しており、各部の動作を制御する。
【0201】
搬送部110は、供給ロール30と、搬送ロール対126、128、130、132と、製品巻取部134と、搬送モータ128a、134aとを有する。
供給ロール30には、連続紙状のラベル印刷用被記録媒体P’がロール状に巻き取られている。
搬送ロール対126、128、130、132は、被記録媒体P’の搬送経路の上流から下流にこの順に配置されている。搬送ロール対126、128、130、132は、被記録媒体P’を供給ロール30から繰り出して、被記録媒体P’を所定方向(本実施形態では、図12中左から右)に搬送する。
製品巻取部134は、被記録媒体P’の搬送経路、つまり搬送方向の最下流に配置され、搬送ロール対126、128、130、132により搬送経路上を搬送され、カプセル破壊部13、描画部112、後処理部114を通過した被記録媒体P’を巻き取る。
搬送モータ128a、134aは、それぞれ搬送ロール対128、製品巻取部134に接続しており、搬送ロール対128、製品巻取部134を回転駆動させる。
【0202】
つまり、本実施形態では、搬送モータ128a、134aに接続された搬送ロール対128と製品巻取部134が回転駆動し、被記録媒体P’を搬送する駆動ローラとなり、それ以外の搬送ロール対126、130、132は、被記録媒体P’の移動に応じて回転し、被記録媒体P’を搬送経路上に規制する従動ローラとなる。
搬送部110は、搬送モータ128a、134aを駆動させ、搬送ロール対128及び製品巻取部134を回転駆動させる。これにより、被記録媒体P’は、供給ロール30から繰り出され、カプセル破壊部13、描画部112、後処理部114を通過し、製品巻取部134に巻き取られる。
【0203】
また、本実施形態では、描画部112と後処理部114との間に、搬送バッファが設けられている。
搬送バッファを設けることで、描画部112と後処理部114との搬送速度の差によって生じる連続紙状のラベル印刷用被記録媒体P’の弛みを吸収することができ、効率よくラベルを製造することができる。
【0204】
また、搬送モータ128a、134aは、後述する搬送モータ制御部195に接続されて回転速度が制御されており、搬送部110による連続紙状のラベル印刷用被記録媒体P’の搬送速度が制御される。
なお、駆動ロール対とする搬送ロール対は、特に限定されず、例えば、全ての搬送ロール対に搬送モータを設け、全ての搬送ロール対を駆動ロール対としてもよい。
【0205】
カプセル破壊部13は、上述したように加圧ロール対60を有する。カプセル破壊部13の各部の構成、機能は、上述したインクジェット記録装置10のカプセル破壊部13と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
カプセル破壊部13の加圧ロール対60は、供給ロール30から引き出され搬送される被記録媒体P’を挟持して、所定圧力で加圧し、粘着シート180上のマイクロカプセル4を破裂させる。
これにより被記録媒体P’の粘着シート180の表面には、液膜が形成される。
【0206】
描画部112は、支持部15と、画像記録部16と、画像定着部18と、硬化促進部19とを有する。
支持部15と、画像記録部16と、画像定着部18と、硬化促進部19との各種構成は、図5に示したインクジェット記録装置の支持部15と、画像記録部16と、画像定着部18と、硬化促進部19と同様であるのでその詳細な説明は省略する。
描画部112も被記録媒体P’の搬送経路に対向して配置された支持体15の本体定盤38に支持されたヘッド定盤40上に画像記録部16の記録ヘッドユニット46の記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kは配置され、本体定盤38上に、照明部支持体42より個別に支持された紫外線照射ユニット52、最終露光用紫外線照射ユニット52a、の紫外線照射部54、54aが配置されている。
また、記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kと紫外線照射ユニット52は、搬送経路の上流から下流に向けて、記録ヘッド48W、紫外線照射ユニット52、記録ヘッド48Y、紫外線照射ユニット52、記録ヘッド48M、紫外線照射ユニット52、記録ヘッド48C、紫外線照射ユニット52、記録ヘッド48K、最終硬化用紫外線照射ユニット52aの順に配置されているのも同様である。
さらに、硬化促進部19は、被記録媒体P’の裏面側の最終硬化用紫外線照射ユニット52aに対向する位置に配置されている。
描画部112は、各記録ヘッドからインク液滴を吐出させ、その後、各紫外線照射ユニット52により紫外線を照射し、被記録媒体P’上の各インク層を半硬化させる。さらに、描画部112は、最終硬化用紫外線照射ユニット52aにより紫外線を照射し、かつ硬化促進部19により被記録媒体P’上のインク層及び被記録媒体P’の液膜を加熱して、被記録媒体P’上のインク層及び被記録媒体の液膜を硬化させる。描画部112は、このようにして被記録媒体P’上に画像を形成する。
【0207】
後処理部114は、被記録媒体P’の搬送方向において、記録ヘッド48Kに対応する紫外線照射ユニット52aの下流側に配置されており、活性光線硬化型透明液(本実施形態では、紫外線硬化型透明液)を画像面に塗布して光沢を改善するためのニスコータ162及び紫外線照射部164と、連続紙状の被記録媒体P’にラベル形状の切れ目を入れるダイカッタ166と、不要部剥離部であるカス取り部172とを有する。
なお、記録ヘッド48Kに対応する紫外線照射ユニット52aとニスコータ162との間には、上述したように搬送バッファが設けられている。
【0208】
ニスコータ162は、被記録媒体P’表面に透明な活性光線(本実施形態では紫外線)硬化型液(以下「活性光線硬化型透明液」または、単に「透明液」ともいう。)を供給する透明液供給手段であり、被記録媒体P’の搬送方向において、記録ヘッド48Kに対応する紫外線照射ユニット52aの下流側に配置されている。
ニスコータ162は、その表面に紫外線硬化型透明液が付着した(含浸された)一対の塗布ロールを有し、被記録媒体P’を挟持しつつ、被記録媒体P’の移動に対応して(同期して)回転することで、箔押しされた被記録媒体P’の表面(画像が形成されている面)に紫外線硬化型透明液を塗布する。
【0209】
ここで、ニスコータ162によって塗布される透明液は、紫外線照射により硬化可能な活性光線硬化型透明液であり、主成分として、少なくとも重合性化合物と光開始剤を含む、例えば、カチオン重合系組成物、ラジカル重合系組成物、水性組成物などである。詳しくは後述する。
【0210】
紫外線照射部164は、被記録媒体P’の搬送方向において、ニスコータ162の下流側に配置されている。紫外線照射部164は、活性光線(本実施形態では、紫外線)を被記録媒体P’に照射して、被記録媒体P’の表面に塗布された紫外線硬化型透明液を硬化させる。なお、紫外線照射部164は、上述の紫外線照射ユニットと同様に複数の紫外線照射部をライン状に配置した構成とすることもできる。また、紫外線照射部164としては、上述の紫外線照射部54で示した各種構成を用いることができる。
被記録媒体P’の表面に紫外線硬化型透明液を塗布し、硬化することで、被記録媒体P’の画像面に光沢を付与することができ、画像品質を向上することができる。
【0211】
ダイカッタ166は、図15に示すように、印刷された連続紙状のラベル印刷用被記録媒体P’の粘着シート180のみ(正確には、画像部、液膜8及び粘着シート180)に、所望のラベル形状の切れ目180bを入れるものであり、被記録媒体P’の搬送方向において、紫外線照射部164の下流側に配置され、被記録媒体P’の画像面側に配置されたシリンダカッタ168と、被記録媒体P’を挟んでシリンダカッタ168の反対側に配置された受けローラ170とを有する。
シリンダカッタ168は、円筒形状のシリンダ168aと、シリンダ168aの円筒面上に巻き付けられ、ラベル状に形成された複数の切抜き刃168bとで構成される。
【0212】
ダイカッタ166は、シリンダカッタ168と受けローラ170とで被記録媒体P’を挟持しつつ、被記録媒体P’の搬送速度に同期して間欠的に揺動回転することにより、切抜き刃168bが被記録媒体P’の粘着シート180のみにラベル形状の切れ目を入れる(図15参照)。
【0213】
ここで、図16に示すように、シリンダ168aの円筒面の円周方向長さCLと、ラベルLの長さLLの整数倍とならない場合、換言すれば、シリンダ168aの円筒面の円周方向長さCLと切抜き刃168bの長さCL1が一致しない場合は、シリンダ168aの円筒面には切抜き刃168bが設けられない空白部分Bが生じる。
【0214】
この場合、ダイカッタ166を連続回転させてラベル形状の切れ目180bを入れると、前回切れ目180bを入れたラベル群LBと今回切れ目180bを入れたラベル群LAとの間には、空白部分Bに相当する大きな不要部分P1が形成されてしまい、連続紙状のラベル印刷用被記録媒体P’が無駄となる。
【0215】
これに対して、本実施形態では、無駄な不要部分P1の形成をなくすため、ダイカッタ166を間欠的に揺動させる。これにより、図17に示すように、前回切れ目180bを入れたラベル群LBの後端に連続させて次の切れ目180bを入れることができる。これにより、シリンダ168aの円筒面の円周方向長さCLと、ラベルLの長さLLの整数倍とならない場合も、ラベルL群LB、LA間の不要部分P1の発生をなくして、連続紙状のラベル印刷用被記録媒体P’を効率的に使用することができる。
【0216】
カス取り部172は、ラベル(製品)Lとならない粘着シート180の不要部分(ラベルLの周辺部)を、剥離紙182から剥離させて巻き取る。
不要部分が巻き取られた被記録媒体P’、つまり、ラベルLのみが剥離紙182に貼付された状態の被記録媒体P’は、製品巻取部134に巻き取られて製品とされる。
【0217】
次に、搬送部110、描画部112及び後処理部114を制御する制御部116について説明する。
図13に示すように、制御部116は、記録ヘッドユニット46の記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kによるインク吐出のための記録用画像データを保存するメモリ191と、記録用画像データに基づいて記録ヘッドユニット46の記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kを駆動制御するヘッド駆動制御部192と、メモリ191に記憶された画像データに基づいてラベルLの形状を解析する画像データ解析部193と、画像データ解析部193により解析されたラベルLの形状に基づいて連続紙状のラベル印刷用被記録媒体P’の搬送速度を変更する搬送速度変更部194と、搬送速度変更部194が変更した搬送速度に基づいて搬送モータ128a、134aの回転速度を制御する搬送モータ制御部195と、搬送速度変更部194が変更した搬送速度に基づいてダイカッタ166の回転速度を制御するダイカッタ制御部196とを備える。
【0218】
また、制御部116のメモリ191には、コンピュータ等の入力部199が接続されている。メモリ191は、入力部199から入力された記録用画像データを記憶する。
また、ヘッド駆動制御部192は、メモリ191に記憶された画像データに基づいて、記録ヘッドユニット46の記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kのインク液滴を吐出する吐出口の選択、吐出するインク液滴の量、吐出させるタイミング等を算出し、算出結果に基づいて記録ヘッドユニット46を制御する。一例としては、本実施形態のように、ピエゾ型のインクジェットヘッドの場合は、画像データに応じて、複数の吐出部(吐出口)のうち、電圧を印加する圧電素子の選択、印加する電圧値、印加時間、印加タイミング等を算出し、算出結果に基づいて、記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kに吐出信号を送る。
【0219】
画像データ解析部193は、メモリ191に記憶された画像データのラベル縁部データからラベルLの形状を解析し、解析した結果を、搬送速度変更部194に送る。
搬送速度変更部194は、ラベルLの形状ごとに後処理に最適な搬送速度を予め記憶しており、画像データ解析部193で解析され、送られてきたラベル縁部データから算出したラベルLの形状と、記憶されている搬送速度とから、被記録媒体P’の最適な搬送速度を算出し、算出結果を搬送モータ制御部195及びダイカッタ制御部196に送る。
搬送モータ制御部195は、搬送速度変更部194で算出された最適な搬送速度に基づいて、搬送モータ128a、134aの回転速度を制御する。これにより、連続紙状のラベル印刷用被記録媒体P’は、最適速度で搬送される。
【0220】
ダイカッタ制御部196は、搬送速度変更部194が算出した最適な搬送速度に基づいてダイカッタ166の回転速度を制御する。具体的には、被記録媒体P’の搬送速度と、ダイカッタ166の切抜き刃168bの周速度とが、同一速度となるようにダイカッタ166の回転速度を制御する。
このように制御部116は、ラベル縁部データから算出したラベルの形状データに基づいて、後処理部114を搬送される被記録媒体P’の搬送速度を変更もしくは調整する。
【0221】
さらに、搬送速度変更部194は、ラベルLの形状データに基づいて、不要部剥離に弱いラベル部分位置で被記録媒体P’の搬送速度を遅くするように制御することが好ましい。これにより、カス取り時における千切れや破損を防止してラベル部分以外の不要部を確実に除去することができる。
【0222】
具体的には、不要部剥離で千切れや破損が生じ易い条件としては、粘着紙の材質によっても異なるが、不要部の幅が5mm以下である場合、30°以下の鋭角部がある場合、などであり、夫々の条件で予め試験により決められた最適な剥離速度を搬送速度変更部194に設定し、これらの最適な剥離速度もさらに加味して、被記録媒体P’の最適な搬送速度を算出することが好ましい。
【0223】
次に、デジタルラベル印刷装置100によりラベルを作成する方法を説明する。
図12に示すように、ロール状に巻かれた供給ロール30から送り出された被記録媒体P’は、搬送部110により搬送され、カプセル破壊部13の加圧ロール対60に所定圧力で加圧されて、マイクロカプセルが破裂し、被記録媒体Pの基材179の粘着シート180の表面に液膜が形成される。被記録媒体Pは、液膜が形成された後、描画部112に搬送される。
【0224】
描画部112に搬送された被記録媒体P’は、記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kに対向する位置を通過する。
【0225】
記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kは、制御部116による制御に基づいて、対向する位置を通過する被記録媒体P’に紫外線硬化型インクのインク液滴を吐出する。インクが吐出された被記録媒体P’は、さらに搬送され、紫外線照射部52に対向する位置を通過し、紫外線が照射され、インクが半硬化される。
つまり、被記録媒体P’は、記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kに対向する位置の通過時に、記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kから被記録媒体P’に向け、インク液滴が吐出される。記録ヘッド48W、48C、48M、48Yに対向する位置を通過した被記録媒体は、紫外線照射ユニット52から紫外線が照射され、被記録媒体上に形成された各インク層が半硬化される。また、記録ヘッド48Kにより画像が形成された被記録媒体は、最終硬化用紫外線照射ユニット52aから紫外線が照射され、さらに、硬化促進部19により加熱され、被記録媒体上の各インク層及び被記録媒体の液膜が硬化される。このようにして、被記録媒体P’の表面に画像が形成される。
【0226】
画像が形成された被記録媒体P’は、搬送バッファを経由して、後処理部114に搬送され、ニスコータ162により、被記録媒体P’の表面に紫外線硬化型透明液が塗布され、その後紫外線照射部164により硬化される。
紫外線硬化型透明液がコーティングされた被記録媒体P’は、ダイカッタ166に搬送され、シリンダカッタ168と、受けローラ170によって粘着シート180にのみラベルLの形状に切れ目180bが入れられる。
このとき、ダイカッタ166は、上述したように、間欠的に揺動しながらラベルLの形状の切れ目180bを入れるので、切れ目180bを連続して形成することができ、被記録媒体P’に無駄になる部分が発生することはない。
【0227】
その後、被記録媒体P’の粘着シート180のラベルL以外の不要部分は、剥離紙182から剥離されてカス取り部172によって巻き取られる。ラベルLのみが剥離紙182上に貼付された状態の被記録媒体P’は、製品巻取部134に巻き取られて製品となる。
以上のようにして、ラベルが作成される。
【0228】
このように、基体の粘着シートの表面にマイクロカプセルを塗布した被記録媒体を用い、カプセル破壊部13の加圧ロール対60により被記録媒体P’のマイクロカプセルを破裂させ、液膜を形成することで、画像ムラのない画像を被記録媒体に形成することができ、高画質で高品質なラベルを製造することができる。
【0229】
また、本実施形態のデジタルラベル印刷装置100によれば、搬送速度変更部194がラベル形状データに基づいて、不要部剥離に弱いラベル部分位置で被記録媒体P’の搬送速度を遅くして剥離処理することで、後処理時(カス取り時)におけるラベルLの千切れや破損を防止してラベル部分以外の不要部を確実に除去することができる。これにより、ラベルLの千切れや破損に起因する装置停止をなくして生産性を向上させ、ラベルLを安価に提供することができる。
【0230】
次に、デジタルラベル印刷装置の他の一例を図18及び図19に基づいて説明する。
ここで、図18は、本発明のインクジェット記録装置を用いたデジタルラベル印刷装置の他の一例の概略構成を示す正面図であり、図19は、図18に示すデジタルラベル印刷装置を制御する制御部を示すブロック図である。
図18に示すデジタルラベル印刷装置200は、後処理部214を除いて他の構成は、図12に示すデジタルラベル印刷装置100と同じ構成のものである。従って、両者で同一の構成要素には、同一の符号を付してその詳細な説明を省略し、以下に、デジタルラベル印刷装置200に特有の点を重点的に説明する。
【0231】
図18に示すように、デジタルラベル印刷装置200の後処理部214は、ニスコータ162と、紫外線照射部164と、レーザーカッタ220と、カス取り部172とを有する。ニスコータ162、紫外線照射部164及びカス取り部172は、図12のデジタルラベル印刷装置100に示した後処理部114のニスコータ162、紫外線照射部164及びカス取り部172と同様であるのでその詳細な説明は省略する。
【0232】
レーザーカッタ220は、図12のデジタルラベル印刷装置100のダイカッタ166と同様に印刷された連続紙状のラベル印刷用被記録媒体P’の粘着シート180のみに、所望のラベル形状の切れ目180bを入れるものであり、紫外線照射部164とカス取り部172との間に配置されている。
レーザーカッタ220は、搬送される連続紙状のラベル印刷用被記録媒体P’にレーザーを照射し、粘着シート180にのみラベル形状の切れ目180bを入れる。
【0233】
制御部216は、記録ヘッドユニット46の記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kによるインク吐出のための記録用画像データを保存するメモリ191と、記録用画像データを記録ヘッドユニット46の記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48Kに送出するヘッド駆動制御部192と、ラベルLの形状を解析する画像データ解析部193と、画像データ解析部193により解析されたラベルLの形状に基づいて連続紙状のラベル印刷用被記録媒体P’の搬送速度を変更する搬送速度変更部194と、搬送速度変更部194が変更した搬送速度に基づいて搬送モータ128a、134aの回転速度を制御する搬送モータ制御部195とを備える。つまり、本実施形態の制御部216は、ダイカッタ制御部196を備えないことを除いて図13に示した制御部116と同様の構成である。
【0234】
画像データ解析部193は、メモリ191に記憶された画像データから、ラベル縁部の画像濃度が解析し、解析した結果を、搬送速度変更部194に送る。
本実施形態の制御部216の搬送速度変更部194は、レーザーカッタ220により切断するラベル縁部の画像濃度データの濃度に応じて、被記録媒体P’の搬送速度を算出する。
つまり、搬送速度変更部194は、画像濃度に対応した最適な後処理の搬送速度を予め記憶しており、画像データ解析部193で解析され、送られてきたラベル縁部の画像濃度と、記憶されている搬送速度とから、最適な搬送速度を算出し、算出結果を搬送モータ制御部195に送る。
具体的には、ラベル縁部の画像濃度が濃い部分位置で被記録媒体P’の搬送速度を遅くするように制御する。これにより、画像濃度が濃い、即ち、ラベルLの厚さが厚く、レーザーによって切り抜き難い部分は、搬送速度を遅くすることにより多くのエネルギーを照射して粘着シート180にラベル形状の切れ目180bを入れる。
【0235】
ここで、搬送速度変更部において、搬送速度を決定する条件は、画像濃度つまりインク膜厚の厚さに限定されず、例えば、インクのレーザー光を吸収性等の材質などの夫々の条件であり、予め試験により各種条件に応じて最適な搬送速度が決められ、搬送速度変更部194に設定することができる。
【0236】
搬送モータ制御部195は、搬送速度変更部194が変更した搬送速度に基づいて搬送モータ128a、134aの回転速度を制御する。これにより、連続紙状のラベル印刷用被記録媒体P’は、最適速度で搬送される。
【0237】
次に、デジタルラベル印刷装置200によりラベルを作成する方法を説明する。
供給ロール30から繰り出された被記録媒体P’に描画部112により被記録媒体P’上に画像を形成することは、上述のデジタルラベル印刷装置100と同様である。
【0238】
画像が形成された被記録媒体P’は、搬送バッファを経由して、後処理部214に搬送され、ニスコータ162により、被記録媒体P’の表面に紫外線硬化型透明液が塗布され、その後紫外線照射部164により硬化される。
紫外線硬化型透明液がコーティングされた被記録媒体P’は、レーザーカッタ220に搬送され、レーザーが照射されて粘着シート180のみにラベルLの形状に切れ目180bが入れられる。
【0239】
その後、被記録媒体P’の粘着シート180のラベルL以外の不要部分は、剥離紙182から剥離されてカス取り部172によって巻き取られる。ラベルLのみが剥離紙182上に貼付された状態の被記録媒体P’は、製品巻取部134に巻き取られて製品となる。
以上のようにして、ラベルが作成される。
【0240】
ここで、レーザー加工においては、ラベルLの厚さに応じたエネルギーを加える必要があり、ラベルLの厚さが厚い程、多くのエネルギーを要する。
また、インクとして活性光線硬化型インクを使用した場合、硬化したインクは粘着シート180上に盛り上がって形成される。硬化したインクの盛上り高さは、例えば、12μm程度であり、複数(W、C、M、Y、K)のインクが重ねられて付着するカラー印刷部は、更に高くなる。活性光線硬化型インクを使用する場合、インク吸収性の全くない被記録媒体P’がしばしば利用され、この盛り上がり高さは、そのまま高さを増すことになる。また、画像濃度が濃い部分は、多くのインクが付着するため、盛り上がり高さも高くなり、厚くなる。また、ラベル印刷用被記録媒体P’の最も薄い厚さの場合12μm程度であり、インク厚よりも薄くなり、更に影響が大きくなる。
【0241】
これに対して、本実施形態のデジタルラベル印刷装置200は、後処理工程の搬送速度変更部194でラベル縁部の画像濃度データの濃度に応じて、具体的には、濃い部分でをレーザーにより切断することきは、被記録媒体P’の搬送速度を遅く調整し、画像濃度が濃く、活性光線硬化型インクなどのインク厚さが厚い部分は、レーザーカッタ220により遅い速度で切ることで、確実に粘着シートのみに切れ目を入れることができ、部分的な切残りの発生を防止することができる。
また、被記録媒体上に空白部分を作ることなく効率よくラベルを作成することができる。
【0242】
次に、デジタルラベル印刷装置の他の一例を図20に基づいて説明する。
ここで、図20は、本発明のインクジェット記録装置を用いたデジタルラベル印刷装置の他の一例の概略構成を示す正面図である。
図20に示すデジタルラベル印刷装置500は、カプセル破壊部13及び描画部112と、後処理部214とを、夫々独立した個別の装置としたことを除いて、各部分の構成は、基本的に図18に示すデジタルラベル印刷装置200と同じ構成のものである。従って、両者で同一の構成要素には、同一の符号を付してその詳細な説明を省略し、以下に、デジタルラベル印刷装置500に特有の点を重点的に説明する。
【0243】
図20に示すように、デジタルラベル印刷装置500は、カプセル破壊部13と、描画部112を有する前処理装置(インクジェット記録装置)501と、後処理部214を有する後処理装置502とを備える。
【0244】
次に、デジタルラベル印刷装置500によりラベルを作成する方法とともに、デジタルラベル印刷装置500に特徴的な部分を説明する。
被記録媒体P’は、前処理装置501の第1供給ロール30に設置され、搬送ロール対126により搬送され、カプセル破壊部13により液膜が形成された後、さらに、描画部112に搬送される。描画部112に搬送された被記録媒体P’は、記録ヘッド48W、48C、48M、48Y、48K及び紫外線照射ユニット52、最終露光用紫外線照射ユニット52a及び硬化促進部19により表面上に画像が形成される。画像が形成された被記録媒体P’は、回収ロール512に巻き取られる。ここで、本実施形態では、回収ロール512に駆動モータ512aを設け、回収ロール512を駆動ローラとした。
【0245】
画像が形成された被記録媒体P’、つまり、回収ロール512に巻き取られた被記録媒体P’は、後処理装置502の第2供給ロール514に設置される。第2供給ロール514に設置された被記録媒体P’は、搬送ロール130、132により後処理部214に搬送される。
【0246】
画像が形成された被記録媒体P’は、ニスコータ162により紫外線硬化型透明液が塗布され、その後、紫外線照射部164から紫外線が照射されて塗布された紫外線硬化型透明液が硬化される。
その後、被記録媒体P’は、レーザーカッタ220により粘着シートにのみラベルLの形状に対応した切れ目が入れられ、さらに、カス取り部172により被記録媒体P’の粘着シートのうち不要部分が剥離紙から剥離されて巻き取られる。一方、不要部分が巻き取られ、粘着シートのラベル部分と剥離紙のみとなった被記録媒体P’は、製品巻取部134に巻き取られ製品となる。
【0247】
なお、本実施形態においても、画像データ解析部193により解析されたラベル縁部の画像濃度に基づいて、搬送速度変更部194が最適搬送速度を算出する。搬送モータ制御部195は、算出された最適搬送速度となるように搬送モータ134aの回転速度を制御して、被記録媒体P’を搬送する。具体的には、ラベル縁部の画像濃度が濃い部分をレーザーカッタ220により切断するときは、被記録媒体P’の搬送速度を遅くするように制御する。
【0248】
このように、デジタルラベル印刷装置を、前処理装置と後処置装置として夫々別々の装置とすることで、ラベルLの印刷および画像面平滑化の前処理工程と、箔押し、透明液塗布(光沢面形成)、切れ目入れ、およびカス取りなどの後処理工程とを別作業として行うことができ、多種類のラベルLの後処理を纏めて行うことができる。
また、一般的に、印刷に要する時間は、カス取りなどの後処理に要する時間よりも遅い場合が多く、1台の後処理装置502で複数台の前処理装置501に対応することができ、効率的な処理が可能となる。
【0249】
また、このように装置を分離した場合も画像データに基づいて算出した値に応じて、搬送速度を制御することで、粘着シートのみを正確に切断することができる。
【0250】
以下、本発明のインクジェット記録装置に好適に用いることができるインクについて詳細に説明する。
【0251】
(インクの物性)
ここで、被記録媒体上に吐出されるインク(液滴)の物性としては、装置により異なるが一般には25℃での粘度が、5〜100mPa・sであることが好ましく、10〜80mPa・sであることがより好ましい。
【0252】
インクは、所望の表面張力が得られるように組成を選択すればよいが、界面活性剤を含有することも好ましい。
【0253】
(インク及び内包液の硬化感度)
また、本発明において、インクの硬化感度は、内包液の硬化感度と同等又はそれ以上とすることが好ましい。また、インクの硬化感度は、内包液の硬化感度以上かつ内包液の硬化感度の4倍以下とすることがより好ましく、内包液の硬化感度以上かつ内包液の硬化感度の2倍以下とすることが更に好ましい。
ここで硬化感度とは、水銀灯(超高圧、高圧、中圧等、好ましくは超高圧水銀灯)を使用してインク及び/又は内包液を硬化する場合において、完全に硬化するために必要なエネルギー量をいい、エネルギー量が小さいほど高感度である。したがって硬化感度が2倍であるとは、完全に硬化するために必要なエネルギー量が1/2であることを意味する。
また、硬化感度が同等であるとは、比較する両者の硬化感度の差が2倍以下であり、より好ましくは1.5倍以下であることをいう。
【0254】
(インク)
以下、本発明に好適に用いることができるインクについて詳細に説明する。
インクは、少なくとも画像を形成するための組成となる構成であり、重合性又は架橋性材料を少なくとも1種と、着色剤とを含み必要に応じて重合開始剤、親油性溶剤及び他の成分を用いて構成される。
ここで、インクに用いる、重合性又は架橋性材料、重合開始剤、親油性溶剤及び他の成分としては、上述した内包液と同様の材料を用いることができる。
【0255】
重合開始剤は、活性エネルギー線によって重合反応又は架橋反応を開始させ得るものであることが好ましい。これにより、被記録媒体に付与された下塗り液を活性エネルギー線の照射によって硬化させることができる。
また、インクは、上述したラジカル重合性組成物を含むことが好ましい。インクがラジカル重合性組成物を含むことで、インクの硬化反応を高感度に短時間で行うことができる。
また、インクは、着色剤を含有するものであることが好ましい。また、このインクと組合わせて用いられる
以下、インクを構成する各成分について詳述する。なお、内包液と同様の成分については、その詳細な説明は省略する。
【0256】
(重合性又は架橋性材料)
重合性又は架橋性材料は、後述する重合開始剤などから発生するラジカルなどの開始種により重合又は架橋反応を生起し、これらを含有する組成物を硬化させる機能を有するものである。
【0257】
重合性又は架橋性材料としては、ラジカル重合反応、二量化反応など公知の重合又は架橋反応を生起する重合性又は架橋性材料を適用することができる。例えば、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物、マレイミド基を側鎖に有する高分子化合物、芳香核に隣接した光二量化可能な不飽和二重結合を有するシンナミル基、シンナミリデン基やカルコン基等を側鎖に有する高分子化合物などが挙げられる。中でも、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物がより好ましく、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、より好ましくは2個以上有する化合物(単官能又は多官能化合物)から選択されるものであることが特に好ましい。具体的には、本発明に係る産業分野において広く知られるものの中から適宜選択することができ、例えば、モノマー、プレポリマー(すなわち2量体、3量体及びオリゴマー)及びそれらの混合物、並びにそれらの共重合体などの化学的形態を持つものが含まれる。
重合性又は架橋性材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0258】
本発明における重合性又は架橋性材料としては、内包液と同様に、特に、ラジカル開始剤から発生する開始種により重合反応を起こさせる各種公知のラジカル重合性のモノマーを用いることが好ましい。
【0259】
重合性又は架橋性材料のインク中における含有量としては、各液滴の全固形分(質量)に対して、50〜99.6質量%の範囲とすることが好ましく、70〜99.0質量%の範囲とすることがより好ましく、80〜99.0質量%の範囲とすることがさらに好ましい。
また、液滴中における含有量としては、各液滴の全質量に対して、20〜98質量%の範囲とすることが好ましく、40〜95質量%の範囲がより好ましく、50〜90質量%の範囲とすることが特に好ましい。
【0260】
(重合開始剤)
また、インクも、内包液と同様に、少なくとも1種の重合開始剤を含有することが好ましい。この重合開始剤は、活性光、熱、あるいはその両方のエネルギーの付与によりラジカルなどの開始種を発生し、既述の重合性又は架橋性材料の重合又は架橋反応を開始、促進させ、硬化する化合物である。
【0261】
なお、重合開始剤は、インクの保存安定性を所望の程度に保持できる範囲で適宜選択して含有させることが好ましく、具体的には、インク液滴中の含有量は、インク中の重合性又は架橋性化合物に対して、0.5〜20質量%とすることが好ましく、1〜15質量%とすることがより好ましい。
【0262】
また、インクは、さらに内包液と同様に、増感色素、共増感剤を加えることが好ましい。
【0263】
(着色剤)
着色剤としては、特に制限はなく、公知の水溶性染料、油溶性染料、及び顔料等から適宜選択して用いることができる。中でも、本発明の効果を好適に得ることができる非水溶性の有機溶剤系でインクを構成する場合は、着色剤としては、非水溶性媒体に均一に分散、溶解しやすい油溶性染料、顔料を用いることが好ましい。
【0264】
着色剤は、インク中の含有量を1〜30質量%とすることが好ましく、1.5〜25質量%とすることがさらに好ましく、2〜15質量%とすることが特に好ましい。
【0265】
以下、本発明に好適な顔料を中心に説明する。
〈顔料〉
着色剤として、顔料を用いる態様が好ましい。
顔料としては、有機顔料、無機顔料のいずれも使用できるが、黒色顔料としては、カーボンブラック顔料等が好ましく挙げられる。また、一般には黒色、並びにシアン、マゼンタ、及びイエローの3原色の顔料が用いられるが、その他の色相、例えば、赤、緑、青、茶、白等の色相を有する顔料や金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料なども目的に応じて用いることができる。
【0266】
有機顔料としては、色相的に限定されるものではなく、例えば、ペリレン、ペリノン、キナクリドン、キナクリドンキノン、アントラキノン、アントアントロン、ベンズイミダゾロン、ジスアゾ縮合、ジスアゾ、アゾ、インダントロン、フタロシアニン、トリアリールカルボニウム、ジオキサジン、アミノアントラキノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、イソインドリン、イソインドリノン、ピラントロン、イソビオラントロン系顔料及びそれらの混合物などが挙げられる。
【0267】
更に詳しくは、例えば、C.I.ピグメント・レッド190(C.I.番号71140)、C.I.ピグメント・レッド224(C.I.番号71127)、C.I.ピグメント・バイオレット29(C.I.番号71129)等のペリレン系顔料、C.I.ピグメント・オレンジ43(C.I.番号71105)、もしくはC.I.ピグメント・レッド194(C.I.番号71100)等のペリノン系顔料、C.I.ピグメント・バイオレット19(C.I.番号73900)、C.I.ピグメント・バイオレット42、C.I.ピグメント・レッド122(C.I.番号73915)、C.I.ピグメント・レッド192、C.I.ピグメント・レッド202(C.I.番号73907)、C.I.ピグメント・レッド207(C.I.番号73900、73906)、もしくはC.I.ピグメント・レッド209(C.I.番号73905)のキナクリドン系顔料、C.I.ピグメント・レッド206(C.I.番号73900/73920)、C.I.ピグメント・オレンジ48(C.I.番号73900/73920)、もしくはC.I.ピグメント・オレンジ49(C.I.番号73900/73920)等のキナクリドンキノン系顔料、C.I.ピグメント・イエロー147(C.I.番号60645)等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメント・レッド168(C.I.番号59300)等のアントアントロン系顔料、C.I.ピグメント・ブラウン25(C.I.番号12510)、C.I.ピグメント・バイオレット32(C.I.番号12517)、C.I.ピグメント・イエロー180(C.I.番号21290)、C.I.ピグメント・イエロー181(C.I.番号11777)、C.I.ピグメント・オレンジ62(C.I.番号11775)、もしくはC.I.ピグメント・レッド185(C.I.番号12516)等のベンズイミダゾロン系顔料、C.I.ピグメント・イエロー93(C.I.番号20710)、C.I.ピグメント・イエロー94(C.I.番号20038)、C.I.ピグメント・イエロー95(C.I.番号20034)、C.I.ピグメント・イエロー128(C.I.番号20037)、C.I.ピグメント・イエロー166(C.I.番号20035)、C.I.ピグメント・オレンジ34(C.I.番号21115)、C.I.ピグメント・オレンジ13(C.I.番号21110)、C.I.ピグメント・オレンジ31(C.I.番号20050)、C.I.ピグメント・レッド144(C.I.番号20735)、C.I.ピグメント・レッド166(C.I.番号20730)、C.I.ピグメント・レッド220(C.I.番号20055)、C.I.ピグメント・レッド221(C.I.番号20065)、C.I.ピグメント・レッド242(C.I.番号20067)、C.I.ピグメント・レッド248M.I.ピグメント・レッド262、もしくはC.I.ピグメント・ブラウン23(C.I.番号20060)等のジスアゾ縮合系顔料、
【0268】
C.I.ピグメント・イエロー13(C.I.番号21100)、C.I.ピグメント・イエロー83(C.I.番号21108)、もしくはC.I.ピグメント・イエロー188(C.I.番号21094)等のジスアゾ系顔料、C.I.ピグメント・レッド187(C.I.番号12486)、C.I.ピグメント・レッド170(C.I.番号12475)、C.I.ピグメント・イエロー74(C.I.番号11714)、C.I.ピグメント・イエロー150(C.I.番号48545)、C.I.ピグメント・レッド48(C.I.番号15865)、C.I.ピグメント・レッド53(C.I.番号15585)、C.I.ピグメント・オレンジ64(C.I.番号12760)、もしくはC.I.ピグメント・レッド247(C.I.番号15915)等のアゾ系顔料、C.I.ピグメント・ブルー60(C.I.番号69800)等のインダントロン系顔料、C.I.ピグメント・グリーン7(C.I.番号74260)、C.I.ピグメント・グリーン36(C.I.番号74265)、ピグメント・グリーン37(C.I.番号74255)、ピグメント・ブルー16(C.I.番号74100)、C.I.ピグメント・ブルー75(C.I.番号74160:2)、もしくは15(C.I.番号74160)等のフタロシアニン系顔料、C.I.ピグメント・ブルー56(C.I.番号42800)、もしくはC.I.ピグメント・ブルー61(C.I.番号42765:1)等のトリアリールカルボニウム系顔料、C.I.ピグメント・バイオレット23(C.I.番号51319)、もしくはC.I.ピグメント・バイオレット37(C.I.番号51345)等のジオキサジン系顔料、C.I.ピグメント・レッド177(C.I.番号65300)等のアミノアントラキノン系顔料、C.I.ピグメント・レッド254(C.I.番号56110)、C.I.ピグメント・レッド255(C.I.番号561050)、C.I.ピグメント・レッド264、C.I.ピグメント・レッド272(C.I.番号561150)、C.I.ピグメント・オレンジ71、もしくはC.I.ピグメント・オレンジ73等のジケトピロロピロール系顔料、C.I.ピグメント・レッド88(C.I.番号73312)等のチオインジゴ系顔料、C.I.ピグメント・イエロー139(C.I.番号56298)、C.I.ピグメント・オレンジ66(C.I.番号48210)等のイソインドリン系顔料、C.I.ピグメント・イエロー109(C.I.番号56284)、もしくはC.I.ピグメント・オレンジ61(C.I.番号11295)等のイソインドリノ
ン系顔料、C.I.ピグメント・オレンジ40(C.I.番号59700)、もしくはC.I.ピグメント・レッド216(C.I.番号59710)等のピラントロン系顔料、又はC.I.ピグメント・バイオレット31(60010)等のイソビオラントロン系顔料が挙げられる。
また着色剤としては、2種類以上の有機顔料又は有機顔料の固溶体を組み合わせて用いることもできる。
【0269】
また、シリカ、アルミナ、樹脂などの粒子を芯材とし、表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等も顔料として使用することができる。さらに、樹脂被覆された顔料も使用することもできる。これは、マイクロカプセル顔料と呼ばれ、大日本インキ化学工業社製、東洋インキ社製などの市販品が入手可能である。
【0270】
液中に含有される顔料粒子の体積平均粒子径は、光学濃度と保存安定性とのバランスといった観点からは、10〜250nmの範囲であることが好ましく、50〜200nmであることがより好ましい。ここで、顔料粒子の体積平均粒子径は、例えば、LB−500(HORIBA(株)製)などの粒径分布測定装置により測定することができる。
【0271】
着色剤は、1種単独のみならず、2種以上を混合して使用してもよい。また、打滴する液滴及び液体ごとに異なる着色剤を用いてもよいし、同一の着色剤を用いてもよい。
【0272】
(その他成分)
また、インクには、上記した成分以外に、貯蔵安定剤、導電性塩類、着色材料の溶解性・分散性を調整できる溶剤、その他の添加剤などを目的に応じて併用することができる。
【0273】
また、上記のほか、混合により反応して凝集物を生成するか、増粘する1組の化合物をそれぞれ、本発明に係るインクと内包液とに分けて含有することができる。前記1組の化合物は、凝集体を急速に形成させるか、あるいは液を急速に増粘させる特徴を有するものであり、これにより互いに隣接する液滴間の合一をより効果的に抑制することができる。
ここで、1組の化合物の反応例としては、酸/塩基反応、カルボン酸/アミド基含有化合物による水素結合反応、ボロン酸/ジオールに代表される架橋反応、カチオン/アニオンによる静電的相互作用による反応等が挙げられる。
【0274】
以上、本発明に係る被記録媒体及びインクジェット記録装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0275】
【図1】本発明の被記録媒体の一例の概略構成を示す側面図である。
【図2】図1に示した被記録媒体のマイクロカプセルを破裂させた後の状態の概略構成を示す側面図である。
【図3】半硬化された液膜上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図である。
【図4】(A)及び(B)は、それぞれ未硬化状態の液膜上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図であり、(C)は、完全に硬化させた状態の液膜上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図である。
【図5】本発明のインクジェット記録装置の一例の概略構成を示す正面図である。
【図6】図5に示したインクジェット記録装置の記録ヘッドユニットと紫外線照射部を示す上面図である。
【図7】半硬化されたインク液上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図である。
【図8】(A)及び(B)は、それぞれ未硬化状態のインク液上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図であり、(C)は、完全に硬化させた状態のインク液上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図である。
【図9】(A)〜(C)は、被記録媒体上に画像を形成する工程を模式的に示す工程図である。
【図10】本発明のインクジェット記録装置の他の一例の概略構成を示す正面図である。
【図11】本発明のインクジェット記録装置の他の一例の概略構成を示す正面図である。
【図12】本発明のインクジェット記録装置を用いたデジタルラベル印刷装置の一例の概略構成を示す正面図である。
【図13】図12に示すデジタルラベル印刷装置を制御する制御部を示すブロック図である。
【図14】図12に示すデジタルラベル印刷装置に用いるラベル印刷用被記録媒体の縦断面図である。
【図15】図14に示したラベル印刷用被記録媒体の切れ目を示す概略断面図である。
【図16】円筒面上に切抜き刃が配設されたダイカッタの断面図、およびこのダイカッタを連続回転させて切れ目が入れられた粘着シートの切れ目の状態を示す斜視図である。
【図17】ダイカッタにより切れ目が入れられた粘着シートの切れ目の状態を示す斜視図である。
【図18】本発明のインクジェット記録装置を用いたデジタルラベル印刷装置の他の一例の概略構成を示す正面図である。
【図19】図18に示すデジタルラベル印刷装置を制御する制御部を示すブロック図である。
【図20】本発明のインクジェット記録装置を用いたデジタルラベル印刷装置の他の一例の概略構成を示す正面図である。
【符号の説明】
【0276】
2 基材
4 マイクロカプセル
6 マイクロカプセル塗布層(カプセル層)
8 液膜
10、80、90 インクジェット記録装置
12 搬送部
13 カプセル破壊部
15 支持部
16 画像記録部
18,91 画像定着部
19 硬化促進部
20 制御部
22 入力装置
30 供給ロール
34 搬送ロール対
36 回収ロール
38 本体定盤
38a、38b、42c 開口
40 ヘッド定盤
40a、42a 板部
40b、42b 足部
42 照射部支持体
44 緩衝部材
46 記録ヘッドユニット
48W、48C、48M、48Y、48K 記録ヘッド
50 インクタンク
52 紫外線照射ユニット
54 紫外線照射部
56 プラテン
60、84 塗布ローラ
62 駆動部
64 貯留皿
66、86 ブレード
68 位置決め部
70、72 位置決めローラ
74a、74b、74c 軸受け
88 貯留部
100 ラベル印刷機
P 被記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の表面に塗布された複数のマイクロカプセルとを備え、
前記マイクロカプセルは、その内部に活性エネルギー線硬化型の液体が充填されている被記録媒体。
【請求項2】
前記マイクロカプセルの内部に充填されている液体は、ラジカル重合性組成物を含有する液体である請求項1に記載の被記録媒体。
【請求項3】
前記複数のマイクロカプセルは、破裂された後、充填された液体が前記基材上に厚さが1μm以上20μm以下の液膜を形成する液量を含有する請求項1または2に記載の被記録媒体。
【請求項4】
前記複数のマイクロカプセルは、破裂された後、充填された液体が前記基材上に厚さが1μm以上3μm以下の液膜を形成する液量を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の被記録媒体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の被記録媒体に画像を形成するインクジェット記録装置であって、
前記被記録媒体の前記複数のマイクロカプセルを破裂させて、前記基材上に前記複数のマイクロカプセルに含有された液体で液膜を形成するマイクロカプセル破壊手段と、
前記基材上に前記液膜が形成された前記被記録媒体上に、少なくとも色材を含み、活性エネルギー線が照射されることで硬化されるインクを吐出して画像を形成する画像形成手段と、
前記画像が形成された被記録媒体上に活性エネルギー線を照射し、前記画像を硬化させる活性エネルギー線照射手段とを有するインクジェット記録装置。
【請求項6】
さらに、前記被記録媒体の前記液膜に活性エネルギー線を照射し、前記液膜を半硬化させる半硬化手段を有する請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記画像形成手段は、前記被記録媒体の搬送方向に配列された複数のインクジェットヘッドを備え、
さらに、前記搬送方向において前記インクジェットヘッドの間に配置され、前記搬送方向の上流側の前記インクジェットヘッドから吐出され、前記被記録媒体上に前記画像を形成する前記インクに活性エネルギー線を照射して、前記インクを半硬化させるインク半硬化手段を有する請求項5または6に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−6544(P2009−6544A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168651(P2007−168651)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】