説明

被験物質センシング方法、センシング装置、および、センシングセット

【課題】従来の化学・生化学反応を用いたセンシング装置では、感度、検出速度、安定性に課題があった。
【解決手段】被験物質107と結合する性能を有する第1の物質105、および、酸化剤110によりエッチングされる物質で構成されたモニタリング体103を有する基板の面上に、試料を供給した後、過酸化物109を還元し酸化剤110を生成する触媒108を担持し、被験物質107と結合する性能を有する第2の物質104を供給し、その後基板上を洗浄し、次いで、過酸化物109を供給し、その後、過酸化物109が触媒108により還元されることで生成した酸化剤110によりモニタリング体103がエッチングされることに起因する所定のデータ変化をモニタリングする被験物質センシング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験物質センシング方法、センシング装置、および、センシングセットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、爆発物や銃火器などの危険物を用いたテロ、覚醒剤、麻薬などの禁止薬物の流通、新型インフルエンザや未知の感染性病原体の発生、食品の汚染、大気汚染、水質汚染など、様々な脅威の存在が安全、安心な社会的生活を脅かしている。
【0003】
それらの脅威の根源となる物質・分子を対象とするセンシング技術は、安心・安全な社会形成のため不可欠なものである。特に、誰でも気軽に使えるような、安価で簡単な方式やセンシング装置の開発が希求されている。
【0004】
現在、微量な物質を検査、検出する方法には、蛍光X線分析、質量分析器(MS:Mass Spectrometry)、イオンモビリティスペクトロメトリ(IMS:Ion Mobility Spectrometry)、ガスクロマトグラフィ(GC:Gas Chromatography)、液体クロマトグラフィ(LC:Liquid Chromatography)、化学反応を用いた化学発光法、化学的染色法、抗体や酵素、アプタマーなどの生体反応物質を使った免疫クロマトグラフィ、酵素免疫測定(ELISA:Enzyme−Linked Immunosorbent Assay)法、水晶振動子マイクロバランス(QCM:Quartz Crystal Microbalance)法、表面弾性波(SAW:Surface Acoustic Wave)センサー、バイオ発光法などの方法、焼結半導体式、定電位電解式、ガルバニ式、赤外線吸収式、などの各種ガスセンサーなど、多種多様の方法が存在する。
【0005】
微量な物質・分子を検出する方法には様々な手法があるが、MSやGC、LCのような物理的な手法に比べ、化学・生物反応に基づく手法は、高い感度と分子種の選択性を備えている上に、比較的コンパクトで安価にセンシング系を構成できる特徴があり、様々な用途で利用されている。
【0006】
この化学・生物的なセンシング手法には、分子ラベリングを用いる「ラベリング法」と、用いない「ノンラベリング法」がある。
【0007】
ラベリング法は、ターゲットの物質を捕らえるための分子認識の機能を有する材料に、さらに物質の固定や、固定量の定量など他の機能を付け加えるためのラベリング材を組み合わせる方法で、化学発光法、化学的染色法、免疫クロマトグラフィ、酵素免疫測定などがあたる。
【0008】
ラベリング材としては、LATEX、貴金属コロイド、半導体ナノ粒子、蛍光分子、ラジオアイソトープ等が広く用いられる。特に高感度のアッセイを行う場合、酵素が用いられる。酵素以外のラベリング材では、ターゲット分子とラベリング剤(信号)が1対1でしか対応しないが、酵素を用いて基質を反応させ大量の反応生成物を生じせしめることで、信号増幅によるアッセイの高感度化が実現できるからである。
【0009】
酵素ラベリングの1例として、「酵素免疫測定」ではペルオキシダーゼ等の酵素からの生成物を用いて発色剤の酸化を行い、比色法により検量する(非特許文献1、p.46)。この場合、照射光光源、光学系、受光器等の装置が必要となる。
【0010】
これ以外に、酵素からの生成物自身を直接電気化学的に検出する、「酵素センサー」と呼ばれる方法も報告されている(非特許文献1、p.51)。アンペロメトリック手法とポテンシオメトリック手法の2種が利用できる。
【0011】
酵素以外のラベリングを用いる高感度測定の例として、「発光センサー」(非特許文献1、p.53)も上げられる。触媒反応の結果、ルミノール、シュウ酸ジエステル、アクリジニウム塩等の発色試薬が酸化され発光を呈す。基本的に信号増幅効果が無く、発光の寿命も酵素などと比較すると短いため、高感度化を図るには信号蓄積が必要である。この場合ペルチェ素子等で受光器を冷却し熱雑音の低減が必要である。
【0012】
化学・生物的なセンシング手法のもう一方、ノンラベリング法では、アンペロメトリック手法とポテンシオメトリック手法の2種が利用できる。
【0013】
アンペロメトリック手法は、ターゲット物質を電極上で直接酸化/還元反応させ、そのときに生じる電荷移動量でターゲット物質の濃度を直接測定する方法で、ポテンシオメトリック手法は、pHメータなどのように電極電位からターゲット物質の濃度を測定する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007−24742号公報
【特許文献2】特開2002−98631号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】軽部征夫監修、「バイオセンサー」、第1版、シーエムシー出版、2002年5月27日、p.46−55
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
化学・生化学反応を用いたセンサーは、比較的小型で安価にシステムを構成できる点で優位性がある。しかし実用性を検討した場合、従来手法では以下で述べるような感度、検出速度と安定性に課題が残されている。
【0017】
[ラベリング法]
「酵素免疫測定法」では、照射光光源、光学系、受光器等が必要であり、装置の小型化に限界がある。また測定のためのプロセス数が非常に多く、場合によっては数時間以上を要する。
【0018】
また、特許文献1には、「酵素免疫測定法」を微小な流路内で処理し、流路内に作製した過酸化水素測定電極として用いる金属の酸化ないしは還元に伴う電流を測定することで、電気的に検出する方法が開示されている。この方法は、ELISAで一般的に利用される化学発色の代わりに、アンペロメトリック手法を用いて検出を行うものである。
【0019】
この文献の実施例では、金電極に吸着させた酵素反応の生成物であるチオコリン量を還元脱離法によって測定している。従って、金電極表面積分のチオール分子を蓄積し、吸着反応が終了してから測定することで反応量の積分値を一括して測定できる利点がある。しかし、実際は再現性よく還元脱利を行うためには、溶媒を塩基性にし、さらに溶存酸素を除去する必要があるため実用上、問題がある。
【0020】
「酵素センサー」は、電気的検出手法を用いているためシステム小型化は容易であるが、ポテンシオメトリック手法では電極近傍に存在するおよそ一層分の被検出物量が信号量を制限することや、アンペロメトリック手法では被検出物量を連続的に検出するため信号の蓄積効果を利用できないこと等の理由より高感度化には限界がある。
【0021】
酵素以外のラベリングを用いる「発光センサー」では照射光光源は不要であるが、受光器冷却のためのペルチェ素子や、それに伴う排熱処理機構や大容量電源等が必要であり、システムの小型化には限界がある。
【0022】
酵素以外のラベリングを用いる高感度測定の他の例として、免疫クロマトグラフィと呼ばれる、簡易に抗原抗体反応による検査が行える手法がある。しかし、検査時間が通常約15分〜30分かかることと、ELISAなどと比較すると増幅効果を備えない分、検出感度が低いことなどの課題がある。たとえば、特許文献2では、レーザーを用いた光学的検出装置を備えた試料濃度測定装置が開示されている。しかし、レーザー光学系を備えることでセンサーの大きさと価格が増えてしまう、光学的検出により定量性は向上するが、目視によるチェックと比べて感度が大きく向上しない、などの課題は解決されていない。
【0023】
また、酵素を利用する場合に共通する課題として、活性を安定に保つため、保存期間やpHなどの測定環境が限られること、酵素自身を分子認識に用いる場合は、抗体や受容体に比べて選択性が低く、また目的のターゲットに合わせて酵素をカスタマイズすることも技術的に困難であるため汎用性が低いことなどの問題がある。
【0024】
[ノンラベリング法]
上記[ラベリング法]で述べたように、アンペロメトリック手法やポテンシオメトリック手法では、感度の点で限界がある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明によれば、第1の基板の第1の面上に、被験物質と結合する性能を有する第1の物質を有する第1のセンシング装置を準備するセンシング装置準備工程と、前記第1のセンシング装置準備工程の後に、前記第1の面上に、試料を供給する試料供給工程と、前記試料供給工程の後に、前記第1の面上に、過酸化物を還元し酸化剤を生成する触媒を担持し、前記被験物質と結合する性能を有する第2の物質を供給する第2の物質供給工程と、前記第2の物質供給工程の後に、前記第1の面を洗浄することで、前記第2の物質を洗い流す第2の物質洗い流し工程と、前記第2の物質洗い流し工程の後に、前記第1の面上に、過酸化物を供給する過酸化物供給工程と、前記過酸化物供給工程の後に、第2の基板の第2の面上に酸化剤によりエッチングされる物質で構成されたモニタリング体を有する第2のセンシング装置の前記第2の面上に、前記第1の面上の溶液を供給する試験溶液供給工程と、前記試験溶液供給工程の後に、前記モニタリング体のエッチングに起因する所定のデータ変化をモニタリングするモニタリング工程と、を有する被験物質センシング方法が提供される。
【0026】
また、本発明によれば、第1の基板の第1の面上に、被験物質と結合する性能を有する第1の物質を有する第1のセンシング装置を準備するセンシング装置準備工程と、過酸化物を還元し酸化剤を生成する触媒を担持し、前記被験物質と結合する性能を有する第2の物質と、試料とを混合した混合物を製造する混合物製造工程と、前記混合物製造工程の後に、前記第1の面上に、前記混合物を供給する混合物供給工程と、前記混合物供給工程の後に、前記第1の面を洗浄することで、前記混合物を洗い流す混合物洗い流し工程と、前記混合物洗い流し工程の後に、前記第1の面上に、過酸化物を供給する過酸化物供給工程と、前記過酸化物供給工程の後に、第2の基板の第2の面上に酸化剤によりエッチングされる物質で構成されたモニタリング体を有する第2のセンシング装置の前記第2の面上に、前記第1の面上の溶液を供給する試験溶液供給工程と、前記試験溶液供給工程の後に、前記モニタリング体のエッチングに起因する所定のデータ変化をモニタリングするモニタリング工程と、を有する被験物質センシング方法が提供される。
【0027】
また、本発明によれば、試料中に含まれている可能性がある被験物質をセンシングするための装置であって、基板と、前記基板の前記第1の面上に設けられた、酸化剤によりエッチングされる物質で構成されたモニタリング体、および、被験物質と結合する性能を有する第1の物質と、を有するセンシング装置が提供される。
【0028】
また、本発明によれば、試料中に含まれている可能性がある被験物質をセンシングするための装置であって、基板と、前記基板上に設けられた導電性の電極と、酸化剤によりエッチングされる物質であって、前記電極よりも導電性の劣る物質で構成され、前記電極の表面を覆うように設けられたモニタリング体と、を有するセンシング装置が提供される。
【0029】
また、本発明によれば、第1の基板の第1の面上に、過酸化物によりエッチングされる物質で構成されたモニタリング体を有するセンシング装置を準備するセンシング装置準備工程と、前記センシング装置準備工程の後に、前記第1の面上に、試料を供給する試料供給工程と、前記試料供給工程の後に、前記モニタリング体のエッチングに起因する所定のデータ変化をモニタリングするモニタリング工程と、を有する被験物質センシング方法が提供される。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、感度、検出速度、安定性に優れた被験物質のセンシングが行える。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態のセンシング装置の一例を模式的に示す図である。
【図2】本実施形態の被験物質のセンシング方法の一例を説明するための図である。
【図3】本実施形態の被験物質のセンシング方法の作用効果を説明するための図である。
【図4】本実施形態の被験物質のセンシング方法の作用効果を説明するための図である。
【図5】本実施形態の被験物質のセンシング方法の一例を説明するための図である。
【図6】本実施形態のセンシング装置の一例を模式的に示す図である。
【図7】本実施形態のセンシング装置の一例を模式的に示す図である。
【図8】本実施形態のセンシング装置の一例を模式的に示す図である。
【図9】本実施形態の被験物質のセンシング方法の作用効果を説明するための図である。
【図10】本実施形態の被験物質のセンシング方法の作用効果を説明するための図である。
【図11】本実施形態の被験物質のセンシング方法の一例を説明するための図である。
【図12】触媒をラベリングされた本実施形態の第2の抗体の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の構造図は全て本発明の実施の形態を模式的に示すものであり、特にことわりがない限り、構成要素の図面上の比率により、本発明による構造の寸法を規定するものではない。また、すべての図面において同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0033】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1(a)に本発明のセンシング装置の第1の実施の形態を示す。図1(b)は、図1(a)に示すA−A´線における断面図、図1(c)は図1(a)に示すB−B´線における断面図である。
【0034】
図示するように、基板(例:シリコン基板101)上に酸化膜(例:シリコン酸化膜102)が形成され、該シリコン酸化膜102上に、ゲルマニウム薄膜からなるモニタリング体103が形成される。また、シリコン酸化膜102上には、被験物質の一部をエピトープとして認識する第1の抗体105が固定されている。また、モニタリング体103両端には電極106によりコンタクトが取られている。
【0035】
モニタリング体103は、ゲルマニウム薄膜の他、ゲルマニウム合金の薄膜またはこれらに不純物を注入した薄膜とすることもできる。
【0036】
図2に、図1に示されたセンシング装置を用いた被験物質のセンシング方法の一例を示す。ここでは、被験物質としてPSA(Prostate−Specific Antigen)を用いているが、被験物質はこれに限定されない。図1で示されるセンシング装置に、PSA107を含有する溶液を滴下すると、溶液中のPSA107と第1の抗体(例:2次抗体)105との結合物が形成される(図2(a))。この後、必要に応じて、洗浄液で洗い流すことにより未結合のPSA107の除去を行ってもよい(図2(b))。次に、PSA107の他のエピトープを認識する第2の抗体(例:1次抗体)104を導入する。第2の抗体104には銀ナノ粒子108がラベリングされている。第2の抗体104はPSA107と結合物を形成し(図2(c))、未結合の第2の抗体104はその後の洗浄工程により除去される(図2(d))。次に、過酸化物(例:過酸化水素109)を含有する反応液を滴下すると、銀(銀ナノ粒子108)の触媒作用により過酸化水素109が還元され、酸化剤110が生成される。酸化剤110は溶液中を拡散しゲルマニウム薄膜からなるモニタリング体103に到達し、モニタリング体103をエッチングする(図2(e))。このエッチングにより、モニタリング体103の電気抵抗が増加したり、質量が減少したり、形状が変化したりする。
【0037】
なお、上記過酸化物は、過酸化水素の他、ハイドロぺルオキシド、ペルオキシカルボン酸などの有機過酸化物を1種類以上含んだものとすることができる。
【0038】
また、第2の抗体104にラベリングする触媒としては、銀、白金、パラジウム、鉄、銅、コバルト、マンガンからなる第1群の中のいずれか1つ以上、前記第1群の中のいずれか1つ以上を含む合金もしくは酸化物、カタラーゼ、および、ペルオキジダーゼのいずれか1つ以上とすることができる。
【0039】
さらに、図2(a)に示すようにモニタリング体103と第1の抗体105とを同一の基板の同一の面上に設けるのは一例であり、モニタリング体103と第1の抗体105とを別々の基板上または別々の面上に設けてもよい。かかる場合、例えば、第1の抗体105を設けた基板上に被験物質が含有している可能性のある試料を供給し、次いで、第2の抗体104および過酸化物を供給した後、基板上の溶液を、モニタリング体103が設けられている基板上に供給することで、上記と同様の効果を実現することができる。
【0040】
さらに、第1の抗体105および第2の抗体104は、抗体、レクチン、酵素、および、アプタマーの中のいずれか1つ以上とすることができる。
【0041】
ここで、モニタリング体103の抵抗変化量は酸化剤とゲルマニウムの反応総量に対応するため、信号の時間積分効果が組み込まれているため高感度である。例えば、反応量が少ない場合は、反応時間を長くとることで信号を蓄積し検出することが可能である。従来のアンペロメトリック手法やポテンシオメトリック手法でも酸化剤濃度に応じた信号が得られるが、時間積分効果は有しない。
【0042】
なお、銀、白金等の貴金属あるいは酸化チタン等の光触媒による過酸化水素分解の結果生じる反応生成物に関し、ゲルマニウムのエッチング作用の報告は無かったが、実験的に検証可能である。図3は、ガラス111上のゲルマニウム薄膜(膜厚50nm)112上に直径2mmの銀ボール114を置き、0.3%の過酸化水素を含有するPBS緩衝液113を滴下した様子である。この写真は、滴下後5分40秒経過した時のスナップショットであるが、銀の触媒作用により過酸化物が生成され、その結果銀ボール114近傍のゲルマニウムがエッチングされ、ガラス面が露出している様子がわかる。本発明者は、銀以外にも同様の効果を、白金、パラジウム、紫外線照射時の酸化チタン等を含む多くの材料で確認している。
【0043】
図1に示すセンシング装置は以下の手順にて作製可能である。
【0044】
市販のシリコン基板に、酸化あるいは化学気相成長法にて、10nm以上100nm以下程度の厚さのシリコン酸化膜102を成長させる。次に、シリコン酸化膜102上に、フォトレジストを塗布し、半導体リソグラフィー法によりフォトレジストのパターンニングを行う。次に、レジストパターンの上から、真空蒸着法あるいはスパッタ法にて、数nm以上数100nm以下の厚さのゲルマニウムを成長させる。この後、アセトン等の有機溶剤を用いてレジストパターンを溶解させ、該レジストパターン上のゲルマニウムのリフトオフにより、モニタリング体103を形成する。その後、シリコン酸化膜102およびモニタリング体103の上に、再度フォトレジストを塗布し、半導体リソグラフィー法によりパターンニングを行う。次に、レジストパターンの上から、真空蒸着法あるいはスパッタ法にて、金を10nm以上1000nm以下程度の厚さに成長させる。続いて、上記と同様にアセトン等でリフトオフすることで電極106を形成する。次に、3−aminopropyltriethoxysilane(APTES)を用いてシリコン酸化膜102表面にアミノ基を付加し、引き続きglutaraldehyde処理を行った後、第1の抗体(例:抗PSA抗体)105の固定を行う。
【0045】
<実施例>
次に、具体的実施例を用いて本発明の第1の実施の形態の構成及び動作を説明する。シリコン基板としてホウ素が135cm−3程度の濃度を含有する(100)基板を用い、その上に、LPCVD法によりシリコン酸化膜を100nmの厚さに成長させた。この後、シリコン酸化膜の上に2ミクロン膜厚のフォトレジストを塗布し、紫外線露光機にてフォトレジストのパターンニングを行った。引き続き、レジストパターンの上から、真空蒸着法にて50nmの膜厚のゲルマニウムの成長を行った。この後、アセトンでレジストパターンの除去を行い、ゲルマニウムをリフトオフすることでモニタリング体の形成を行った。この後、窒素雰囲気中で500℃、2時間の加熱処理を行った。引き続き、シリコン酸化膜およびモニタリング体の上に、2ミクロン膜厚のフォトレジストを塗布し、紫外線露光機にてフォトレジストのパターンニングを行った。その後、レジストパターンの上から、100nmの金の蒸着を行った後、アセトンによるリフトオフで電極形成を行った。このような方法により、幅1ミクロン、長さ(金電極間距離)100ミクロンのモニタリング体を得た。この時の抵抗値は約10MΩであった。次に、APTESを用いてシリコン酸化膜表面にアミノ基を付加し、引き続きglutaraldehyde処理を行った後、第1の抗体として、抗PSA抗体の固定を行った。
【0046】
次に、第2の抗体として、PSAの別のエピトープを認識するサンドイッチELISA向け抗PSA抗体を用意し、当該抗体を市販の銀ナノコロイド(50nm径)に固定し、抗PSA抗体(第2の抗体)−銀ナノコロイド複合体を形成した。なお、第2の抗体の種類は被験物質に応じて選択される。
【0047】
PSAの検出は以下のように行った。市販のPSAをPBS緩衝液(pH=7.4)で調整し1ng/mLのPSA溶液を得た。本溶液をモニタリング体上に滴下し、室温における約1時間のインキュベーションの後、PBS緩衝液で洗浄し、未反応PSAの除去を行った。引き続き、上述した抗PSA抗体(第2の抗体)−銀ナノコロイド複合体を含有する溶液を滴下し、室温において1時間のインキュベーションを行い、続いて再度PBS緩衝液にて洗浄を行い、未反応の抗PSA抗体(第2の抗体)−銀ナノコロイド複合体の除去を行った。この後、過酸化水素を0.3%含有するPBS緩衝液を滴下し、銀ナノコロイドによる触媒反応を喚起した。図4は反応前後のモニタリング体の抵抗値変化を示している。反応開始直後から抵抗値は上昇を始め、約1分で抵抗変化は5000倍を超え計測限界外まで大きくなり、モニタリング体の電気的切断が確認された。同様の実験を、上記PSA溶液を用いる代わりにPSAを含有しないPBS緩衝液を用いて行ったところ、抵抗値は40%程度の上昇を示すものの電気的切断には至らなかった。
【0048】
以上より、本実施形態のセンシング装置が有するモニタリング体103の形状変化に起因する特性変化(抵抗値の変化)を基に、PSAの検出が可能であることが確認された。
【0049】
ここで、モニタリング体のエッチングに起因する変化をモニタリングする対象は、モニタリング体の電気抵抗の他、静電容量、交流インピーダンス、質量または形状であってもよい。これらの特性変化からも、PSAの検出が可能である。なお、質量変化または形状変化をモニタリングする際は、図1に示す電極106は設けなくてもよい。これらの前提は、以下のすべての実施の形態において同様である。
【0050】
また、モニタリング体は、幅100μm以下、長さ100μm以下、かつ、厚さ1μm以下、とすることができる。モニタリング体をこのような大きさとしても、上述したモニタリングは十分に実現することができ、また、モニタリング体を小さくすることで、センシング装置の小型化、コストダウンなどを実現することができる。
【0051】
上記実施例ではPSAの検出例を示したが、他の物質についても同様の手順で検出できる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態のセンシング装置および被験物質のセンシング方法によれば、ELISAなどの従来手法と同様に、触媒を用いることによる信号増幅効果を有し、触媒反応の結果をモニタリング物質のエッチング量として蓄積することができるため、高い感度の測定が可能である。
【0053】
従来手法には無い利点としては、まず、Agなどの生体材料以外の触媒を用いることができるため、反応時の溶液のpHなど条件が大きく広がること、長期保存時でも触媒活性が低下する心配が少ないことが挙げられる。
【0054】
次に、電気的に検出を行うことができるために、測定装置自身をより小型で安価に製造できる利点がある。また、検出結果がモニタリング物質の形状変化として固定されるため、溶液中の発色剤の量として検出するELISAなどと比較すると、結果の保存性が高い、溶液フリーで測定できるなどの利点がある。
【0055】
さらに感度や精度の上でも利点がある。通常ELISAは、2次元アレイ状に配置したウェル(小型反応漕)内で反応を行う。実験室レベルでは、1サンプル辺り100〜300μL程度の液量を使って処理し、測定を行うが、より少量のサンプルについて検査を行う場合は、系の体積を小さくするか、希薄なサンプルでも測定できるように測定の感度を高める必要がある。
【0056】
しかし、光学的に検出する従来のELISA法では、系の体積やサンプル濃度に応じて、光学検出系の大きさや感度を大きく変更することが難しいため、何れの手段もS/N比の低下を招く。
【0057】
一方、モニタリング物質の形状変化として反応量を記録、蓄積する本実施の形態の場合、反応系の体積に合わせて、モニタリング物質の体積も用意にスケールダウンすることが可能で、測定に関しても精度を落とすことなく行うことができる。そのため、極少量、多サンプルの試験を行う場合に非常に有効である。
【0058】
ここで説明した本実施形態のセンシング装置および被験物質のセンシング方法の効果は、以下のすべての実施形態も同様に実現することができる。
【0059】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0060】
装置の構成は第1の実施の形態に準じるが、PSAの検出手順を以下のようにすることができる。即ち、第1の実施の形態と同様にして図2(c)に示す状態を得た後、本実施の形態では、過酸化物を含有する洗浄液を用いて未結合の第2の抗体104の除去を行う。そして、本実施の形態では、この過酸化物を含有する洗浄液により、酸化剤110の生成を行う。この場合、第1の実施の形態と同様の効果が得られる上、洗浄液と反応液の入れ替えが不要になるため手順の簡略化が図れる。
【0061】
なお、過酸化物による未結合の第2の抗体104の洗い流しを十分な速度で行うことで、未結合の第2の抗体104にラベリングされている触媒による過酸化物の還元、および、この還元により生成された酸化剤によるモニタリング体103のエッチングの影響を無視することが可能となる。すなわち、被験物質のセンシングを十分な精度で行うことができる。
【0062】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0063】
本実施の形態は、第1の実施の形態で第2の抗体104にラベリングした銀の全部または一部に代えて、光触媒、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、および、酸化チタンもしくは酸化亜鉛の合金の中のいずれか1つ以上を用いる。酸化チタンとしては、ルチル型よりも光触媒活性の強いアナターゼ型結晶が好ましい。PSA検出手順は第1の実施の形態に準じるが、酸化物生成のために390nm付近の紫外線を照射する。
【0064】
<実施例>
50nmの直径を有するアナターゼ型酸化チタンナノ粒子で第2の抗体104をラベリングした点以外は、第1の実施の形態で説明した実施例と同様にして図2(d)に示す状態を得た後、過酸化水素109を含有する反応液を滴下した。次いで、水銀ランプを用いてUV光を照射することにより、酸化剤の生成を行った。その結果、約1分40秒でモニタリング体103の電気的切断が確認された。
【0065】
以上より、本実施形態のセンシング装置が有するモニタリング体103の形状変化に起因する特性変化(抵抗値の変化)を基に、PSAの検出が可能であることが確認された。
【0066】
なお、本実施の形態では酸化チタンをラベリング材として用いたが、光触媒作用を有する他の材料でも同様の効果が得られる。また、材料によっては、UV光ではなく可視光照射によっても同様の効果を得ることができる。さらに、本実施の形態は、第2の実施の形態と組み合わせることもできる。
【0067】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態について図面を用いて説明する。装置の構成は第1の実施の形態に準じるが、被験物質の検出手順を図5のようにすることもできる。まず、被験物質の一例であるPSA107と、銀ナノ粒子108でラベリングされた第2の抗体104を用意する。第2の抗体104はPSA107よりも過剰に存在するようにその濃度を調整する。次に、PSA107と第2の抗体104との混合を行い、PSA107−第2の抗体104−銀ナノ粒子108複合体を形成する(図5(a))。その後、本複合体溶液を、図1で示すセンシング装置に滴下する。その結果、複合体と第1の抗体105に結合が生じる(図5(b))。その後、未結合複合体は、第1の実施の形態と同様の洗浄工程により除去される(図5(c))。次に、過酸化水素109を含有する反応液を滴下すると、銀(銀ナノ粒子108)の触媒作用により過酸化水素109が還元され酸化剤110が生成される。酸化剤110は溶液中を拡散しゲルマニウム薄膜からなるモニタリング体103に到達し、モニタリング体103をエッチングする(図5(d))。
【0068】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果が得られる上、第1の実施の形態に比べ、手順数が少なくなるという効果が得られる。なお、本実施の形態は、第2の実施の形態および/または第3の実施の形態と組み合わせることもできる。
【0069】
(第5の実施の形態)
図6(a)に本発明のセンシング装置の第5の実施の形態を示す。図6(b)は、図6(a)における1セルの拡大図(図6(a)中、破線の円で表示)である。シリコン基板101上にX選択回路115、および、Y選択回路116が存在する。両選択回路とも半導体メモリで用いられるセル選択回路と同等のものであり、公知の技術により容易に作製可能である。X選択回路115には1つ以上のX線117、Y選択回路116には1つ以上のY線118が接続される。また、図示するように、各モニタリング体103の両端には、X線117とY線118が接続される。このような回路構成をとることで、半導体メモリの場合と同様、個々のモニタリング体の抵抗値を読み取ることができる。
【0070】
図6(c)は、図6(b)のA−A´線断面図の一例である。シリコン基板101上に100nm以上1000nm以下程度の第1のシリコン酸化膜119が存在し、この上にアルミニウム等の導通部材からなるX線117が形成される。これらの上には、100nm以上1000nm以下程度の膜厚の第2のシリコン酸化膜121が存在し、X線117とモニタリング体103の交点部分に両者を接続するためのプラグ120が設けられる。第2のシリコン酸化膜121上にはY線118が形成され、プラグ120とY線118をブリッジするようにこれらと接続したモニタリング体103が配置される。本構造の作製にあたっては標準的IC製造法を利用できる。
【0071】
被験物質の検出手順は、第1〜4の実施の形態に準じるが、本実施の形態の場合、モニタリング体が複数ある点が異なる。X、Y選択回路115、116を用いてアドレス指定を行い個々の抵抗値を読み取ることができる。本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果が得られる上、複数の計測結果の統計処理を施すことで、より正確なPSAの検量が可能となる。
【0072】
本実施の形態は、第2の実施の形態から第4の実施の形態のいずれか1つ以上と組み合わせることもできる。
【0073】
(第6の実施の形態)
本発明のセンシング装置の第6の実施の形態では、同一の電気特性を有す2つのモニタリング体103を用いる点以外は、第1の実施の形態と同様である。2つのモニタリング体103の一つは、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜等の酸化剤に対して化学的に安定した材料で被覆され、他の一つは、前述のような被覆を施さない。かかる場合、一方のモニタリング体103は酸化剤110によりエッチングされないが、他方は酸化剤110によりエッチングされることとなる。
【0074】
そして、本実施の形態では、2つのモニタリング体103がオペアンプに接続され差動増幅回路が構成される。このような構成の本実施形態のセンシング装置によれば、第1の実施の形態と同様の効果が得られる上、2つのモニタリング体103の電気的特性を比較することで、モニタリング体103の抵抗変化を高精度に検出できる。
【0075】
なお、2つのモニタリング体103は、同一のセンシング装置に設けられるのが望ましい。このようにすれば、比較する2つのモニタリング体103各々の周囲の環境をほぼ同条件にすることができ、測定の精度が向上する。
【0076】
本実施の形態は、第2の実施の形態から第5の実施の形態のいずれか1つ以上と組み合わせることもできる。
【0077】
(第7の実施の形態)
図7(a)に本実施の形態のセンシング装置を示す。図7(b)は図7(a)におけるA−A´線断面図である。樹脂からなる支持基盤201上に、メンブレン膜からなる試料展開部202が配置され、該試料展開部202の一端側に試料調整部203が配置される。試料調整部203には、銀ナノ粒子でラベリングされた第2の抗体104が多量含まれる。また、試料展開部202の他端側には試料回収部204が配置される。試料調整部203と試料回収部204との間にある試料展開部202上には、第1〜6の実施の形態で記載されたセンシング装置が配置されセンシング部205を構成している。この場合、モニタリング体103と試料展開部202は対面するように配置される。
【0078】
モニタリング体103からの出力は電極206に接続され、該電極206は外部からアクセスしやすい位置に配置される。なお、モニタリング体103から出力された信号は、センシング部206上に形成される増幅器やA/D変換器による信号処理後、電極206に入力されてもよい。本実施例では、試料導入工程及び洗浄工程がワンステップで行え、操作の大幅な簡略化を図ることができる。
【0079】
次に、一例として、被験物質としてPSAを用いた本イムノクロマトグラムの使用法について述べる。血清等のPSAを含有する液体試料を試料調整部203上へ滴下する。試料中のPSAは、試料調整部203内に含まれる第2の抗体104と結合し、PSA−第2の抗体104−銀ナノ粒子複合体を形成する。第2の抗体104は過剰に存在するため、導入したほとんどのPSAは複合体を形成する。本複合体及び未結合の第2の抗体104は、浸透力により試料回収部204の方向に向かって試料展開部202中を移動し、やがてセンシング部205に到達する。すると、センシング部205表面に固定された第1の抗体105により複合体は捕捉されるが、捕捉されなかった複合体や未結合の第2の抗体104は、試料回収部204に向けメンブレン膜を移動、あるいは試料回収部204に吸収される。この後、過酸化水素をセンシング部205上の試料展開部202に滴下することで触媒反応を喚起し、上記実施形態と同様にしてPSAの検量を行う。
【0080】
<実施例>
以下のようにして動作の確認を行った。第1の実施の形態で作製したセンシング装置を樹脂板に形成された溝に装着後、5mm×50mm裁断した厚さ0.2mmのニトロセルロースメンブレンを樹脂基板上に接着剤で接着し試料展開部とした。この際、センシング装置上には接着剤が付着しないよう留意しながら組み立てを行った。次に、銀ナノ粒子をラベリングした第2の抗体(抗PSA抗体)を含ませたグラスファイバーパッドをメンブレン膜の一端に貼付け試料調整部とし、未処理のグラスファイバーパッドを他端に貼付け試料回収部とした。用いた試料はPSAを1ng/mL含有したPBS緩衝液であり、これを試料調整部上に滴下した。滴下後10分経過してから、0.3%の過酸化水素を含有するPBS緩衝液をセンシング部位置のメンブレン膜上に滴下した。滴下後、約5分でモニタリング体の抵抗上昇を観測した。
【0081】
以上より、本実施形態のセンシング装置が有するモニタリング体の形状変化に起因する特性変化(抵抗値の変化)を基に、PSAの検出が可能であることが確認された。
【0082】
上記の実施例では過酸化水素を別途添加したが、PSA含有PBS緩衝液に予め含有させておくこともできる。
【0083】
(第8の実施の形態)
本発明の第8の実施の形態について図8を参照して詳細に説明する。図8は第1の実施の形態と異なる測定データをモニタリングすることで、被験物質の検出を行う。以下、説明する。
【0084】
まず、センシング装置の構成について、図8を用いて説明する。基板301にはガラスやプラスチック、酸化シリコンなどの平坦で絶縁性の基板301を使用することが可能である。基板上にまず電極として利用する金属を蒸着する。電極材料としては、例えば金(Au)を使用する。パターニングは、例えば第1の実施の形態と同様のリフトオフ法を用いることができる。
【0085】
次に、測定装置とのコンタクトを取る側のパッド303をフォトレジストでマスクして、ノンドープのGe膜(モニタリング体)304を、例えば厚さ50nm程度に蒸着する。なお、金電極302のパターニング後にGeを全面に蒸着して、コンタクト側パッド303部分のGe膜だけをエッチングにより除去することも可能である。
【0086】
次に、測定時の安定性を考え、コンタクト側パッド303と測定用電極側の間の部分のGe膜304上にパシベーション(保護)膜306を作製する。保護膜にはシリコン酸化膜、シリコーン樹脂などを使用することができる。
【0087】
なお、図示しないが、図8に示すセンシング装置の適当な位置に、被験物質と結合する性能を有する第1の抗体(例:2次抗体)105が設けられる。
【0088】
続いて、測定原理を説明する。本実施形態では、高抵抗のGeを絶縁性の膜として利用し、測定用パッド部305のGe膜304がエッチングされた結果、膜厚の減少や、膜の一部の欠損する状況を、電極302を用いて電気的に検出するものである。そして、この検出結果を基に、被験物質を検出する。
【0089】
まず、図8に示すセンシング装置に対して、実施形態1と同様にして、PSA107を含有する溶液を滴下し、溶液中のPSA107と第1の抗体(例:2次抗体)105との結合物を形成した後、洗浄液で未結合のPSA107の除去を行う。次に、銀ナノ粒子108がラベリングされており、かつ、PSA107の他のエピトープを認識する第2の抗体(例:1次抗体)104を導入する。すると、第2の抗体104は、PSA107と結合物を形成する。その後、未結合の第2の抗体104を除去する。
【0090】
次に、本実施の形態では、図8に示すセンシング装置を測定用の電極とし、対極および参照電極とともに、電解質に浸漬する。次いで、この電解質の中に過酸化物を注入すると、この過酸化物が、測定用の電極(センシング装置)に、第2の抗体104を介して付着している銀ナノ粒子108による触媒作用により還元され、酸化剤を生成する。すると、この酸化剤により、Ge膜(モニタリング体)304がエッチングされ、電極302の電気的特性が変化する。
【0091】
なお、本実施形態では、電極302は計測に使用すると同時に、Ge膜のエッチング速度を調節するための制御用電極として使用することもできる。Geの酸化膜は水溶性であるため、測定には関係の無い酸化剤によっても、酸化、エッチング反応が進む。この反応により生じる電荷は電極302により計測することが可能であるため、実際にはこの電荷量が0になるように電極302に制御電圧Vcを印加する。その結果、バックグラウンドのエッチング反応を抑制し、実際の測定において、目的の反応を効率よく検出することができる。
【0092】
Ge膜のエッチング量の検出には、直流抵抗、容量、交流インピーダンス、電気化学反応など各種の測定方法を用いることができる。
【0093】
<実施例>
図9(a)は、交流インピーダンス測定によるGe膜の膜圧変化の様子を調べた結果である。
【0094】
まず、センシング装置に、試料および第2の抗体を供給することで、第1の抗体、被験物質および第2の抗体を介して、銀ナノ粒子を担持させた。
【0095】
次いで、20mM、pH7.5のHEPES緩衝液に、測定用の電極(上記センシング装置)、対極としてPt線、参照電極としてAg/AgCl電極を浸漬し、予め測定しておいた制御電圧Vcを測定用電極に印加した状態にしておく。さらに、Vcに加えて、周期1000Hz、振幅10mVの交流波を5秒置きに印加し、直流抵抗成分と容量成分の変化をモニターしておく。
【0096】
ここに、最終濃度が0.01%になるように過酸化水素を添加すると、添加直後から抵抗、容量とも変化し始め、およそ30分で変化が収束した。30分後にはGe膜はエッチングされてなくなっていた。一方、過酸化水素を添加しない場合は、30分を過ぎても抵抗、容量とも優位な変化は無かった。
【0097】
このように制御電圧Vcを印加することにより、エッチング反応の有無を、より精度よく評価することができた。
【0098】
以上より、本実施形態の抵抗変化検出方法によれば、センシング装置が有するGe膜の形状変化に起因する特性変化(Ge膜に覆われていた電極の電気的特性)を基に、PSAの検出が可能であることが確認された。
【0099】
本実施の形態は、第2の実施の形態から第7の実施の形態のいずれか1つ以上と組み合わせることもできる。
【0100】
(第9の実施の形態)
本発明のセンシング装置の第9の実施の形態は、第8の実施の形態で説明したセンシング装置に、さらに測定側パッド部305に触媒効果を有する銀微粒子を付加する点が異なる。
【0101】
<実施例>
図8の測定側パッド部305に電子ビーム蒸着装置を用いて膜圧2nmのAg膜を蒸着したものを作製した。このとき、Agは一様な膜とならずに、数nmの微粒子としてGe膜304上に点在する。図9(b)は、Ag微粒子を付加したセンサーを用いて過酸化水素の検出を行った結果である。
【0102】
第8の実施の形態と同様にして測定を行い、最終濃度0.01%の過酸化水素の添加後の抵抗、容量をモニターした結果、添加直後から抵抗、容量とも変化し始め、およそ10分で変化が収束した。10分後にはGe膜はエッチングされてなくなっていた。
【0103】
以上より、本実施形態によれば、第8の実施の形態と同様の効果が得られる上、Ag微粒子を触媒に用いることで、エッチング速度を効果的に促進できることが確認された。
【0104】
(第10の実施の形態)
本発明のセンシング装置の第10の実施の形態を、図10を用いて説明する。
【0105】
<実施例>
図10(a)および(b)は第8の実施の形態で説明したセンシング装置(図8参照)の測定用パッド部305の断面図に相当する。図10(a)は基板301上に金電極311と、それを覆うGe膜304とを作製したものを電解質310に浸漬している状態を模式的に示した図である。
【0106】
電解質310は20mM、pH7.5のHEPES緩衝液に、酸化還元反応物質として1mMのフェロシアン化カリウムを添加したものを用いた。電極311には、第8の実施形態と同様に制御電圧Vcを印加しておく。
【0107】
電解質310に浸漬直後の金電極311に対し、フェロシアンの酸化反応による電流測定を行うと、測定のための電圧を印加したことによるGe膜304のエッチング電流によるフラットなIV特性が得られた。
【0108】
次に、過酸化水素を基質とする触媒反応によりGe膜304が除去された領域313が現れた状態(図10(b)参照)で、同様の測定を行うと、フェロシアンの酸化によるピークが現われた。このピークの強度は、Ge膜304の被覆率に比例して大きくなった。
【0109】
実際の測定では、常時制御電圧Vcを印加し、フェロシアンの酸化ピークに対応する+0.2〜0.3V付近の測定電圧を10秒間隔で10msecのパルスとして印加した。このときの応答電流の変化量から、Ge膜304の被覆率を定量することができた。
【0110】
本実施の形態は、第8実施の形態および/または第9の実施の形態に適用することができる。
【0111】
(第11の実施の形態)
本発明のセンシング装置の第11の実施の形態を、図11を用いて説明する。
【0112】
<実施例>
図11は、過酸化水素の有無を光学的に簡単に検出する方法を開示するものである。基板320として、光(特に白光や日光)を透過するガラス基板やプラスチック基板を使う。ここでは、厚さ500μmのガラス基板を用いた。
【0113】
基板上には、所定のパターン(図の場合、ストライプ状のパターン)を形成したGeグレーティング膜321を成膜する。パターンの形成方法は、厚さ20nmのGe膜を成膜後、レーザー干渉露光法を用いて作製したレジストパターンを、ドライエッチングでGe膜に転写する方法を用いた。パターンの周期は200nm、線幅は50nmとし、基板中央の4×6mmの領域に作製した。この他にもパターンのデザイン、精度、設定コストに応じて、フォトマスクを使ったフォトリソグラフィ、E−beam(Electron−beam)やナノインプリントリソグラフィを使って作製することが可能である。作製したGeグレーティング膜321に、白色LED光を入射し、フォトダイオードで透過率を測定したところ、約90%の透過率を得ることができた。
【0114】
次に、Geグレーティング膜321を有する基板320を100ppmの過酸化水素に1分間浸漬した。浸漬後、上記と同様にして透過率を測定したところ、透過率は約60%であった。過酸化水素の濃度や、エッチング処理時間を変えると、それに応じて透過率が変化した。このように、予め濃度と時間を軸にした透過率変化マトリックスを作製しておくことで、正確に、基板320に付着している過酸化水素の濃度の定量を行うことができる。
【0115】
また、Geグレーティング膜321の一部を保護層で覆うことで、透過率測定の基準に用いることが可能であった。さらに、目視による評価の基準としても用いることができた。
【0116】
さらに、第9の実施の形態と同様に、Ag微粒子を基板上に作製することで、エッチング速度を促進することが可能であった。
【0117】
また、第1の実施の形態と同様に、基板上に第1の抗体を固定しておき、Ag微粒子を標識した第2の抗体と被検物質を含んだ溶液で処理することで、被検物質の定量を行うことが可能であった。
【0118】
本実施の形態は、第1の実施の形態から第10の実施の形態のいずれか1つ以上と組み合わせることができる。
【0119】
(第12の実施の形態)
次に、本発明の第12の実施の形態を、図12を参照して説明する。
【0120】
本実施の形態は、第1の実施の形態で第2の抗体104にラベリングした銀の一部または全部に代えて、酸化チタン、酸化亜鉛、および、これらの合金の中のいずれか1つ以上と、銀、白金、パラジウム、鉄、銅、コバルト、マンガンからなる第1群の中のいずれか1つ以上、前記第1群の中のいずれか1つ以上を含む合金もしくは酸化物、カタラーゼ、および、ペルオキジダーゼの中のいずれか1つ以上と、の複合体を用いる点以外は、第1の実施の形態と同様である。例えば、本実施形態では、銀と酸化チタンの複合体を用いることができる。
【0121】
<実施例>
まず、平均粒径10nm以上20nm以下の酸化チタンナノ粒子330を合成し、大気中450度で一昼夜焼成し、表面の有機物層を除去する。次に、1%のポリエチレングリコール(PEG300)、10%エタノールを含む水溶液に、酸化チタンナノ粒子を0.1重量%添加し、冷暗所に置き攪拌子で激しく攪拌する。ここに酸化チタンとモル等倍量になるように数mol/l程度の濃い硝酸銀水溶液を加え、弱い紫外線を照射しながら、一晩反応させることで、酸化チタンの一部に銀皮膜331が析出した複合ナノ微粒子を作製した。
【0122】
作製した複合ナノ微粒子は、遠心器を使い上澄み液を除去し、脱イオン水を使ってウォッシュする工程を1回、エタノールを使ってウォッシュする工程を2回行った後、1mMカルボキシヘキサンチオールのエタノール溶液で1時間、10mMのエチルジメチルアミノポロピルカルボジイミド(EDC)と10mMのN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)の混合水溶液で30分、かつ、1μg/mlの抗PSA抗体を含むHEPES緩衝溶液で30分処理することで、チオール膜332を介して、抗PSA抗体333を固定した複合ナノ微粒子標識を施した第2の抗体104を作製した(図12)。
【0123】
このようにして作製した第2の抗体104を用い、第1の実施の形態で示した手順(図2)に従いアッセイを進め反応液を滴下した。なお、水銀ランプによりUV光を照射することにより、酸化剤の生成を行った。その結果、約1分40秒でモニタリング体の切断が確認された。
【0124】
以上より、本実施形態のセンシング装置が有するモニタリング体の形状変化に起因する特性変化(抵抗値の変化)を基に、PSAの検出が可能であることが確認された。
【0125】
なお、本実施の形態では、銀をラベリング材と触媒の両方に用いるが、触媒としての効果を最大限に高めるため、検出時には酸化チタンの光触媒効果によって、チオール膜を分解脱離させて触媒活性の高い銀のベアな表面を露出させるものである。光触媒作用を有する他の材料でも同様の効果が得られる。また、材料によっては、UV光ではなく可視光照射によっても同様の効果を得ることができる。
【0126】
本実施の形態は、第2の実施の形態から第11の実施の形態のいずれか1つ以上と組み合わせることもできる。
【符号の説明】
【0127】
101 シリコン基板
102 シリコン酸化膜
103 モニタリング体
104 第2の抗体
105 第1の抗体
106 電極
107 PSA
108 銀ナノ粒子
109 過酸化水素
110 酸化剤
111 ガラス
112 ゲルマニウム薄膜
113 過酸化水素含有PBS緩衝液
114 銀ボール
115 X選択回路
116 Y選択回路
117 X線
118 Y線
119 第1のシリコン酸化膜
120 プラグ
121 第2のシリコン酸化膜
201 支持基盤
202 試料展開部
203 試料調整部
204 試料回収部
205 センシング部
206 電極
301 基板
302 電極
303 コンタクト側パッド
304 Ge(ゲルマニウム)膜
305 測定用パッド部
306 パシベーション膜
310 電解質
311 金電極
313 電極露出領域
320 ガラス基板
321 Geグレーティング膜
330 酸化チタンナノ微粒子
331 銀被膜
332 チオール膜
333 抗PSA抗体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板の第1の面上に、被験物質と結合する性能を有する第1の物質を有する第1のセンシング装置を準備するセンシング装置準備工程と、
前記第1のセンシング装置準備工程の後に、前記第1の面上に、試料を供給する試料供給工程と、
前記試料供給工程の後に、前記第1の面上に、過酸化物を還元し酸化剤を生成する触媒を担持し、前記被験物質と結合する性能を有する第2の物質を供給する第2の物質供給工程と、
前記第2の物質供給工程の後に、前記第1の面を洗浄することで、前記第2の物質を洗い流す第2の物質洗い流し工程と、
前記第2の物質洗い流し工程の後に、前記第1の面上に、過酸化物を供給する過酸化物供給工程と、
前記過酸化物供給工程の後に、第2の基板の第2の面上に酸化剤によりエッチングされる物質で構成されたモニタリング体を有する第2のセンシング装置の前記第2の面上に、前記第1の面上の溶液を供給する試験溶液供給工程と、
前記試験溶液供給工程の後に、前記モニタリング体のエッチングに起因する所定のデータ変化をモニタリングするモニタリング工程と、を有する被験物質センシング方法。
【請求項2】
請求項1に記載の被験物質センシング方法において、
前記試料中に前記被験物質が含まれている場合、
前記試料供給工程では、前記第1の物質と前記被験物質とが結合し、
前記第2の物質供給工程では、前記第1の物質に結合している前記被験物質と、前記第2の物質とが結合し、
前記第2の物質洗い流し工程では、前記第1の物質に結合している前記被験物質、および、この被験物質に結合している前記第2の物質は洗い流されず残存し、
前記過酸化物供給工程では、前記被験物質に結合している前記第2の物質が担持している前記触媒により前記過酸化物が還元されることで酸化剤が生成され、
前記試験溶液供給工程では、前記酸化剤により、前記モニタリング体がエッチングされる被験物質センシング方法。
【請求項3】
第1の基板の第1の面上に、被験物質と結合する性能を有する第1の物質を有する第1のセンシング装置を準備するセンシング装置準備工程と、
過酸化物を還元し酸化剤を生成する触媒を担持し、前記被験物質と結合する性能を有する第2の物質と、試料とを混合した混合物を製造する混合物製造工程と、
前記混合物製造工程の後に、前記第1の面上に、前記混合物を供給する混合物供給工程と、
前記混合物供給工程の後に、前記第1の面を洗浄することで、前記混合物を洗い流す混合物洗い流し工程と、
前記混合物洗い流し工程の後に、前記第1の面上に、過酸化物を供給する過酸化物供給工程と、
前記過酸化物供給工程の後に、第2の基板の第2の面上に酸化剤によりエッチングされる物質で構成されたモニタリング体を有する第2のセンシング装置の前記第2の面上に、前記第1の面上の溶液を供給する試験溶液供給工程と、
前記試験溶液供給工程の後に、前記モニタリング体のエッチングに起因する所定のデータ変化をモニタリングするモニタリング工程と、を有する被験物質センシング方法。
【請求項4】
請求項3に記載の被験物質センシング方法において、
前記試料中に前記被験物質が含まれている場合、
前記混合物製造工程では、前記第2の物質と前記被験物質とが結合し、
前記混合物供給工程では、前記第1の物質と前記被験物質とが結合し、
前記混合物洗い流し工程では、前記第1の物質に結合している前記被験物質、および、この被験物質に結合している前記第2の物質は洗い流されず残存し、
前記過酸化物供給工程では、前記被験物質に結合している前記第2の物質が担持している前記触媒により前記過酸化物が還元されることで酸化剤が生成され、
前記試験溶液供給工程では、前記酸化剤により、前記モニタリング体がエッチングされる被験物質センシング方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の被験物質センシング方法において、
前記第2のセンシング装置は前記第1のセンシング装置であり、前記第2の基板の前記第2の面は、前記第1の基板の前記第1の面である被験物質センシング方法。
【請求項6】
請求項3または4に従属する請求項5に記載の被験物質センシング方法において、
前記センシング装置準備工程では、
前記触媒を担持した前記第2の物質を保持し、前記試料が注入される試料調整部と、
前記試料調整部と接続し、液体の流路となる試料展開部と、
前記流路の途中に設けられ、前記第1の物質および前記モニタリング体が設けられている前記第1の基板の前記第1の面が、前記流路の内壁の一部を構成している試料検出部と、を有するセンシング装置を準備する被験物質センシング方法。
【請求項7】
請求項6に記載の被験物質センシング方法において、
前記混合物製造工程は、前記試料を前記試料調整部に注入することで行われ、
前記混合物供給工程は、前記混合物が、メンブレンで構成された前記試料展開部を浸透力により移動していくことで実現され、
前記混合物洗い流し工程は、前記混合物が、メンブレンで構成された前記試料展開部を浸透力により、前記試料検出部を超えて移動していくことで実現され、
前記過酸化物供給工程は、前記試料検出部に過酸化物を注入することで行われる被験物質センシング方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の被験物質センシング方法において、
前記第2の基板の前記第2の面上に、同等の特性を有する前記モニタリング体を2つ以上有し、
第1の前記モニタリング体は、表面が、酸化剤によりエッチングされない材料で被覆され、第2の前記モニタリング体は、表面が露出しており、
前記モニタリング工程では、前記第1のモニタリング体および前記第2のモニタリング体それぞれのエッチングに起因する所定のデータ変化の差異をセンシングする被験物質センシング方法。
【請求項9】
請求項8に記載の被験物質センシング方法において、
前記第2のセンシング装置は、
前記第1のモニタリング体および前記第2のモニタリング体の各々と接続し、前記2つのモニタリング体から出力された信号の差をセンシングする差動増幅回路をさらに有し、
前記モニタリング工程では、前記差動増幅回路を用いて、前記第1のモニタリング体および前記第2のモニタリング体から出力された信号の差をセンシングする被験物質センシング方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載の被験物質センシング方法において、
前記モニタリング工程では、前記モニタリング体の電気的特性の変化、質量の変化、または、形状の変化をモニタリングする被験物質センシング方法。
【請求項11】
請求項1から5のいずれか1項に記載の被験物質センシング方法において、
前記第2のセンシング装置は、
前記第2の基板の前記第2の面上に設けられた導電性の電極と、
酸化剤によりエッチングされる物質であって、前記電極よりも導電性の劣る物質で構成され、前記電極の表面を覆うように設けられた前記モニタリング体と、を有し、
前記モニタリング工程では、
前記モニタリング体を介してコンタクトし、測定される前記電極の電気的特性の変化をモニタリングする被験物質センシング方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の被験物質センシング方法において、
前記過酸化物供給工程、前記試験溶液供給工程、および、前記モニタリング工程の中のいずれか1つ以上の工程は、
前記モニタリング体に定電圧を印加した状態で行われる被験物質センシング方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の被験物質センシング方法において、
前記過酸化物は、過酸化水素、ハイドロぺルオキシド、および、ペルオキシカルボン酸の中のいずれか1つ以上を含む被験物質センシング方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の被験物質センシング方法において、
前記触媒は、銀、白金、パラジウム、鉄、銅、コバルト、マンガンからなる第1群の中のいずれか1つ以上、前記第1群の中のいずれか1つ以上を含む合金もしくは酸化物、カタラーゼ、および、ペルオキジダーゼのいずれか1つ以上を含む被験物質センシング方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の被験物質センシング方法において、
前記触媒は、光触媒を含む被験物質センシング方法。
【請求項16】
請求項15に記載の被験物質センシング方法において、
前記触媒は、酸化チタン、酸化亜鉛、および、酸化チタンもしくは酸化亜鉛の合金の中のいずれか1つ以上を含む被験物質センシング方法。
【請求項17】
請求項15または16に記載の被験物質センシング方法において、
前記触媒は、
酸化チタン、酸化亜鉛、および、これらの合金の中のいずれか1つ以上と、
銀、白金、パラジウム、鉄、銅、コバルト、マンガンからなる第1群の中のいずれか1つ以上、前記第1群の中のいずれか1つ以上を含む合金もしくは酸化物、カタラーゼ、および、ペルオキジダーゼの中のいずれか1つ以上と、を含む被験物質センシング方法。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1項に記載の被験物質センシング方法において、
前記モニタリング体を構成する物質は、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金、および、ゲルマニウムもしくはゲルマニウム合金に不純物を注入したものの中のいずれか1つ以上を含む被験物質センシング方法。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか1項に記載の被験物質センシング方法において、
前記第1の物質および前記第2の物質は、抗体、レクチン、酵素、および、アプタマーの中のいずれか1つ以上を含む被験物質センシング方法。
【請求項20】
試料中に含まれている可能性がある被験物質をセンシングするための装置であって、
基板と、
前記基板の前記第1の面上に設けられた、酸化剤によりエッチングされる物質で構成されたモニタリング体、および、被験物質と結合する性能を有する第1の物質と、を有するセンシング装置。
【請求項21】
請求項20に記載のセンシング装置において、
前記モニタリング体は、アレイ状に配置されているセンシング装置。
【請求項22】
請求項20または21に記載のセンシング装置において、
前記モニタリング体は、幅100μm以下、長さ100μm以下、かつ、厚さ1μm以下の形状であるセンシング装置。
【請求項23】
試料中に含まれている可能性がある被験物質をセンシングするための装置であって、
過酸化物を還元し酸化剤を生成する触媒を担持し、被験物質と結合する性能を有する第2の物質を保持するとともに、前記試料を注入される試料調整部と、
前記試料調整部と接続し、液体の流路となる試料展開部と、
前記流路の途中に請求項20から22のいずれか1項に記載のセンシング装置を備え、前記基板の前記第1の面が、前記流路の内壁の一部を構成している試料検出部と、を有するセンシング装置。
【請求項24】
請求項23に記載のセンシング装置において、
前記試料展開部は、メンブレンで構成されているセンシング装置。
【請求項25】
請求項20から24のいずれか1項に記載のセンシング装置において、
前記基板の前記第1の面上に、同等の特性を有する前記モニタリング体を2つ以上有し、
第1の前記モニタリング体は、表面が、酸化剤によりエッチングされない材料で被覆され、第2の前記モニタリング体は、表面が露出しているセンシング装置。
【請求項26】
請求項25に記載のセンシング装置において、
前記第1のモニタリング体および前記第2のモニタリング体の各々と接続し、前記2つのモニタリング体から出力された信号の差をセンシングする差動増幅回路をさらに有するセンシング装置。
【請求項27】
試料中に含まれている可能性がある被験物質をセンシングするための装置であって、
基板と、
前記基板上に設けられた導電性の電極と、
酸化剤によりエッチングされる物質であって、前記電極よりも導電性の劣る物質で構成され、前記電極の表面を覆うように設けられたモニタリング体と、
を有するセンシング装置。
【請求項28】
請求項27に記載のセンシング装置において、
前記基板上に、さらに、被験物質と結合する性能を有する第1の物質を有するセンシング装置。
【請求項29】
請求項20から28のいずれか1項に記載のセンシング装置において、
前記モニタリング体を構成する物質は、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金、および、ゲルマニウムもしくはゲルマニウム合金に不純物を注入したものの中のいずれか1つ以上を含むセンシング装置。
【請求項30】
請求項20から29のいずれか1項に記載のセンシング装置において、
前記第1の物質は、抗体、レクチン、酵素、および、アプタマーの中のいずれか1つ以上を含むセンシング装置。
【請求項31】
請求項20から30のいずれか1項に記載のセンシング装置と、
過酸化物を還元し酸化剤を生成する触媒を担持し、前記被験物質と結合する性能を有する第2の物質と、を有するセンシングセット。
【請求項32】
請求項31に記載のセンシングセットにおいて、
前記第2の物質は、抗体、レクチン、酵素、および、アプタマーの中のいずれか1つ以上を含むセンシングセット。
【請求項33】
請求項31または32に記載のセンシングセットにおいて、
前記触媒は、銀、白金、パラジウム、鉄、銅、コバルト、マンガンからなる第1群の中のいずれか1つ以上、前記第1群の中のいずれか1つ以上を含む合金もしくは酸化物、カタラーゼ、および、ペルオキジダーゼのいずれか1つ以上を含むセンシングセット。
【請求項34】
請求項31から33のいずれか1項に記載のセンシングセットにおいて、
前記触媒は、光触媒を含むセンシングセット。
【請求項35】
請求項34に記載のセンシングセットにおいて、
前記触媒は、酸化チタン、酸化亜鉛、および、酸化チタンもしくは酸化亜鉛の合金の中のいずれか1つ以上を含むセンシングセット。
【請求項36】
請求項34または35に記載のセンシングセットにおいて、
前記触媒は、
酸化チタン、酸化亜鉛、および、これらの合金の中のいずれか1つ以上と、
銀、白金、パラジウム、鉄、銅、コバルト、マンガンからなる第1群の中のいずれか1つ以上、前記第1群の中のいずれか1つ以上を含む合金もしくは酸化物、カタラーゼ、および、ペルオキジダーゼの中のいずれか1つ以上と、を含むセンシングセット。
【請求項37】
第1の基板の第1の面上に、過酸化物によりエッチングされる物質で構成されたモニタリング体を有するセンシング装置を準備するセンシング装置準備工程と、
前記センシング装置準備工程の後に、前記第1の面上に、試料を供給する試料供給工程と、
前記試料供給工程の後に、前記モニタリング体のエッチングに起因する所定のデータ変化をモニタリングするモニタリング工程と、を有する被験物質センシング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−214860(P2011−214860A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80600(P2010−80600)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】