説明

装置情報判別装置

【課題】状態通知や操作要求等のために通知内容を音色の違いで区別して発する機能を持つ装置において、その装置が発する音を検知してその音色から装置の通知内容を判別可能な装置情報判別装置を提供する。
【解決手段】装置の発する音の信号成分のスペクトラムを抽出する。予め装置状態に対応させた照合用の基準スペクトラムを登録する。両者のスペクトラム分布の特徴を照合する方法で、装置の発するアラーム情報や装置が要求する内容の判別をする。環境から受けるノイズを除去するため、バンドパスフィルターを設ける。判別対象の装置毎に異なる音を容易に設定可能とするため、メンテ機能も併せて設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
身の回りには多くの電気装置や機械装置(以下、装置という)がある。これらの装置はその使用者に向けて、装置の異常発生や特定の操作を要求するために音を発する機能を持つものがある。
本発明は、これらの装置が本来は操作員向けに簡単な情報を通知のために発する鳴動音を用いて、その装置が通知しようとする情報をデジタルデータの様式で抽出し、他の装置向けに装置情報を通知する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気や機械などの動作で一定の機能を遂行する装置は、現在社会の多くの場面で使用されている。家庭の日常生活をはじめとして、産業の分野なども含む多くの分野で、日常生活や事業活動を支える不可欠な道具として活用されている。これらの装置は、多くの場合その使用者に向けて状態などを通知するために特定の音色の音を鳴動させる方法がとられる。すなわち、予めこれらの電気や機械などの動作で一定の機能を遂行する装置には伝達したい内容に対応する音色が複数種類準備されており、これらの音色のひとつを特定して鳴動することにより、使用者むけに通知するようになっている。
【0003】
例えば、使用者に、軽微な故障を通知するためには軽やかな音を鳴動させるが、重大な故障発生を通知するためには重大故障を想起する様なけたたましい音を鳴動させるなどの方法がとられる。
一方、これらの装置は、本来はそれぞれの装置が単独で通知情報を発信するもので、近くの使用者にそれぞれの装置が音で通知することを目的とするものであるが、利用する環境によっては複数の多種の装置を統合して集中監視したい場合がある。例えば、複数の装置が混在する現場で統合管理する専用装置を設ける場合や、IPネットワークと呼ばれる広範囲に情報配信を行う通信網を介して遠隔地に統合管理する装置を設ける場合も考えられる。
【0004】
しかしながら、既に使用中の装置は使用者向けに音で状態を通知する機能はあっても、他の専用管理装置向けやIPネットワークに接続される装置向けに通知機能を持たないものが多い。
既存の鳴動装置の有効活用を図りながら、簡易な仕組みで他の装置やIPネットワークに接続される装置との接続を行うことのできる方法が求められている。一方、装置状態を示す情報は、装置の利用者向けに耳で聞くことのできる音色の鳴動音で通報される。このため、ここでは装置の発する鳴動音の音色からその装置の状態を特定して他の装置に向けてデータを通知する仕組みが求められている。また、鳴動音を発する装置には、既に多種のものが存在することから、手軽な方法で特定の装置状態とその鳴動音との対応付けが容易に可能な仕組みも求められている。
【0005】
【特許文献1】特願2006−242176号広報
【特許文献2】特願2005−350032号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鳴動音を判別する方法は、特願2006−242176号広報および特願2005−350032号広報に開示されており、これは、鳴動音の中に、特定の1種類または2種類の周波数成分の有無を判別する方法である。しかしながら、本方式には次の問題がある。
その1は、周波数を判別する方法は、予定する特定の周波の有無を判別するもので、判別する装置が対象としない周波数成分で構成される音を持つ不特定多数の装置が発する音を判別対象とすることができないということである。
その2は、開示の発明では、判別対象の周波数を検出する機能を予め製作しておくため、汎用性が乏しく利便性に著しく欠ける。不特定多数の鳴動音を簡便な方法で判別する仕組みを実用化する目的には適さないといえる。
【0007】
その3は、開示の発明は、2種の周波数を検出して判別処理する方法であり、通常は3種類以上の周波数成分よりなる装置の鳴動音が多くあるが、ここでは、これらの音の判別を行うことができない。判別回路を増設して対策する方法も考えられるが、回路がより複雑化するため、実用的ではなくなるということである。
汎用性のある方法で、不特定多数の装置が鳴動する音を判別する仕組みを設けるための方法が望まれている。
このためには以下の課題がある。
第1の課題は、鳴動音の特徴から速やかに装置が通知しようとする装置状態を特定することである。すなわち、装置が発する特定の鳴動音信号を照合処理可能な,例えばデジタルデータに変換して、このデータに現れる特徴から装置状態を速やかに特定するための方法を示すことである。
【0008】
第2の課題は、装置が発する鳴動音データを峻別して判別するための方法を示すことである。すなわち、装置が設置される環境には、しばしば他の装置も併設され、ここでは他の装置が発する音も同時に取込まれる。装置自身の電源部から誘導される音信号も存在する。いわゆるノイズと呼ばれるものである。このため対象装置の鳴動音の特徴をノイズ音と峻別して取出すための実現方法が課題となる。
第3の課題は、判別装置には、汎用性のある方法で多くの種類の鳴動音を対象に簡便に判別可能な仕組みを設けることである。

【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の第1の課題を解決するために、取込む鳴動音を照合処理の可能なデータに変換するために通常の信号解析のために行われるフーリエ変換による演算処理手法(以下FFT演算という)を利用して、鳴動音信号を構成する周波数成分を抽出する方法をとる。装置が発する鳴動音の特徴を示す成分は、通常は0Hzから2KHz程度の正弦波から構成されるが、本発明ではこの周波数を限定するものではない。ここでは便宜上0Hzから2KHzを例に、一定の周波数ごとに各々の周波数成分値を算出する。例えば20Hz毎にとれば100の周波数成分が得られる。横軸に周波数成分を表し縦軸に鳴動音を構成する周波数成分値として表し、各周波数成分をグラフ状で示すものをスペクトラムと呼ぶ。
【0010】
図4に、装置の鳴動音をFFT演算して得られたスペクトラムの例を示す。この例では、1種類の音が連続して鳴動する場合や、断続的に繰返し鳴動する場合の音信号にFFT演算を施して得られる結果を示す。ピーと連続して鳴動する場合やピーッ、ピーッの如く鳴動する場合の例である。
装置の鳴動音の中には、異なる音色を持つ複数の種類の音を順次鳴動を繰り返すことにより、装置の操作員の注意をより強く引きつけるようとするものがある。複数の異なる音をピーポーの如く連続して鳴動または断続的に鳴動する場合などである。図5には2種類の音信号を対象に、各々にFFT演算処理を施して得られる結果例を示す。
【0011】
本発明では、予め基準となる鳴動音の種類とスペクトラムを、複数組記憶しておく(以下、基準データという)。この状態で装置から取込む鳴動音にFFT処理を施してその種類数と種類毎のスペクトラム成分分布状態の特徴を、予め記憶する基準データと照合することにより、照合対象とする音がいずれかの基準データに類似するかどうかの判別を行う。
上記の第2の課題を解決するために、装置の発する鳴動音のスペクトラムを構成する帯域データに制限を付ける方法をとる。すなわち、装置の発する鳴動音の特徴を強く表す帯域の値を大きくし、その他の帯域の値を小さくする処理を施すことにより鳴動音の特徴を判別しやすくする。例えば、鳴動音の特徴と異なる周波数帯域で構成されるノイズの周波数帯域の係数をゼロパーセントとし、鳴動音の特徴を表す周波数帯域は100パーセントとすれば、ノイズの影響を受けずに鳴動音の特徴の判別処理を正しく行うことができる。
ここでは、周波数成分毎に個別のフィルタリング係数を設け、高速FFTの算出結果の各周波数成分値に積算する方法で新たなスペクトラムを生成しこれを使用して判別処理を行う。
【0012】
上記の第3の課題を解決するために、判別の基準となるスペクトラムデータを記憶させる仕組みを設ける。ここでは、運搬の容易なパソコンで例えばノートパソコンなどにメンテナンス機能を組込み、これを装置音判別装置に接続して、装置音判別装置に入力される音信号にFFT演算を施して得られる音の種類数とそのスペクトラムを、判別のために設ける基準データ数とその基準データとして登録する機能、および任意の周波数成分にフィルタリングを容易に施すための設定登録ができる機能を設ける。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、請求項1の発明により装置状態を操作員に伝えるために設けられる音の鳴動機能を用いて、鳴動音の音色から装置状態をデータの様式に変換して情報処理装置等に通知することが可能となる。
本発明の第2の態様によれば、請求項2の発明により、装置状態を操作員に伝えるために設けられる音信号に設置環境に設けられる他の装置から受けるノイズが混入する場合にあっても、装置状態を伝えるために発する音の音色から装置状態をデータの様式で正しく取出すことが可能となる。
本発明の第3の態様によれば、請求項3の発明により任意の装置に係る音を対象として、容易な操作で、装置状態を伝えるために発する音の音色から装置状態をデータの様式で取出すことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の装置状態判別装置および装置状態判別の方法の実施例を説明する。但し、本発明の範囲は以下の実施例に示す具体的な用途、形状、個数などには限定されない。
【実施例1】
【0015】
本発明の第1の態様に係る装置状態判別装置は、請求項1に対応するものである。請求項1は、上記の第1の課題を解決するために、図1に示す装置状態判別装置の構成図を用いて説明する。
図1に示す構成例では、設備状態判別装置(10)は音信号入力部(11)、FFT処理部(12)スペクトラム(13)、判別部(14)、出力部(15)、および基準データ記憶部(16)を備えている。
音信号入力部(11)には、音を鳴動する装置から通知される音信号を入力する。通知される音は、マイクロフォンなどから通知される信号でも良い。
【0016】
入力された音信号は、アナログデジタル変換が施されてFFT処理部(12)に通知されフーリエ変換処理が行われる。この結果入力された音信号を構成する周波数の成分値が計算され、構成周波数要素の分布を示すスペクトラム(13)が生成される。判定部では、予め識別情報とペアでスペクトラムデータが記憶される基準データ記憶部(16)に登録されるデータの中から生成されたスペクトラム(13)と類似するスペクトラムデータを照合し、一致するデータを抽出して、その識別情報を出力部(15)に通知する。出力部(15)では通知され識別情報を他の情報処理装置等に通知するため、イーサーネット様式のパケットや、接点の開閉を利用した接点出力動作で通知する方式などの方法で出力する。RS232CやRS485通信方式と呼ばれるいわゆるシリアル通信を利用する方法もなど考えられるがここでは特に方式を限定するものではない。
【実施例2】
【0017】
本発明の第2の態様に係る装置状態判別装置は、請求項2に対応するものである。請求項2は、上記の第2の課題を解決するために、図2に示す装置状態判別装置の構成図を用いて説明する。図2は、図1を基にフィルタリング係数データ記憶部(21)を新たに追加する。
図2に示す構成は、図1における構成を基に、フィルタリングデータ記憶部(21)を追加する構成である。
【0018】
音信号入力部(11)に入力された音信号は、アナログデジタル変換が施されてFFT処理部(12)に通知されフーリエ変換処理が行われる。この結果入力音信号を構成する周波数の成分値が計算され、構成周波数要素の分布を示すスペクトラム(13)が生成される。判定部では、はじめに周波数成分毎に設定されたフィルタリングデータ記憶部(21)の係数を、該当する生成されたスペクトラムを示す各周波数成分に積算して、フィルタリング処理後のスペクトラムを生成し、予め識別情報とペアでスペクトラムデータが記憶される基準データ記憶部(16)に登録されるデータの中から生成されたスペクトラム(13)と類似するスペクトラムデータを照合し、一致するデータを抽出して、その識別情報を出力部(15)に通知する。
【0019】
出力部(15)では通知され識別コードを他の情報処理装置に通知するため、イーサーネット様式のパケットや、接点の開閉を利用した接点出力方式などの方法で出力する。RS232CやRS485通信方式と呼ばれるいわゆるシリアル通信を利用する方法もなど考えられるがここでは特に方式を限定するものではない。
【実施例3】
【0020】
本発明の第3の態様に係る装置状態判別装置は、請求項3に対応するものである。請求項3は、上記の第3の課題を解決するために、図3に示す装置状態判別装置の構成図を用いて説明する。図3は、図2を基に装置状態判別装置(20)にデータ登録機能(31)を新たに追加し、メンテナンス部(33)を持つメンテナンス装置(32)を併せて設けるものである。メンテナンス部(33)は、設定操作員と対話する機能のほかスペクトラムデータとフィルタリングデータをデータ登録機能(31)に通知する機能を持つ。
【0021】
はじめに、スペクトラムデータ記憶部に照合の基準とする音データを登録する機能について説明する。照合の基準として設定登録する音信号が信号入力部(11)に入力されれば、アナログデジタル変換が施されてFFT処理部(12)に通知されフーリエ変換処理が行われる。この結果入力音信号を構成する周波数毎の成分値が計算され、構成周波数要素の分布を示すスペクトラム(13)が生成される。この結果はメンテナンス装置(32)のメンテナンス部(33)に通知され設定員との対話を介して識別コードの付与と登録指示を得てデータ登録機能(31)に通知され、スペクトラムデータ記憶部に記憶される。
【0022】
次に、フィルタリングデータ記憶部に、フィルタリングデータを登録する機能について説明する。ここでもメンテナンス部(33)が設定員との対話を介して、任意の周波数成分の減衰係数決定し、データ登録機能に通知してフィルタリング係数データ記憶部(21)に記憶する。
フィルタリングデータ記憶部(21)のデータに沿って、予め識別コードと共にスペクトラムデータ記憶部(16)に登録されるデータにフィルタリング処理を施してノイズ成分を除去した後に、生成されたスペクトラム(13)の中で登録と類似するデータを抽出する。その識別コードを出力部(15)に通知する。出力部(15)では通知され識別コードを他の装置に通知するため、イーサーネット様式のパケットや、接点の開閉を利用した接点出力方式などの方法で出力する。RS232CやRS485通信方式と呼ばれるいわゆるシリアル通信方式を利用する方法等も考えられるが、ここでは特に限定するものではない。
なお、図3に示す構成の中で、フィルタリングデータ記憶部を持たない構成も容易に考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
音を鳴動してアラーム通知や操作の要求を行う各種装置を対象に、装置が発する通知情報をデータ化してインターネットやイントラネット等の通信手段を介して、装置の発する鳴動音の届かない場所に設ける監視装置に通知する方法により、装置の状態管理のために利用する方法が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の態様1の構成を示す図
【図2】本発明の態様2の構成を示す図
【図3】本発明の態様3の構成を示す図
【図4】鳴動音信号例1のスペクトラム
【図5】鳴動音信号例2のスペクトラム
【図6】ノイズが重畳する鳴動音信号例1のスペクトラム例
【図7】ノイズが重畳する鳴動音信号例2のスペクトラム例
【図8】フィルタリン値の設定例
【符号の説明】
【0025】
10 装置状態判別装置
11 音信号入力部
12 FFT処理部
13 スペクトラム算出データ
14 判別部
15 出力部
16 スペクトラムデータ記憶部
20 態様2における装置状態判別装置
21 フィルタリングデータ記憶部
30 態様3における装置状態判別装置
31 データ登録機能
32 メンテナンス装置
33 メンテナンス部
41 周波数表記軸
42 入力値表記軸
43 鳴動音信号例1のスペクトラム分布
51 鳴動音信号例2のスペクトラム分布
61 ノイズが重畳する鳴動音信号例1のスペクトラム分布例
71 ノイズが重畳する鳴動音信号例2のスペクトラム分布例
81 フィルタリン値の設定例表示

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音信号の入力機能と音信号スペクトラム算出機能、複数の音信号の特徴を示すスペクトラムデータを音信号の識別情報と共に記憶する機能、および他の装置に通知する機能を持つ音信号判別装置において、入力音信号のスペクトラム算出結果を、記憶する複数のスペクトラムデータと照合する方法で、該音信号スペクトラムデータの一の特徴と類似することを条件に、該音信号の識別情報を他の装置に通知する機能を有することを特徴とする装置情報判別方法。
【請求項2】
音信号の入力機能と音信号スペクトラム算出機能、複数の音信号の特徴を示すスペクトラムデータを音信号の識別情報と共に記憶する機能、他の装置に通知する機能およびスペクトラムのフィルタリング機能を持つ音信号判別装置において、入力音信号のスペクトラム算出結果にフィルタリング処理を施して記憶する複数のスペクトラムデータと照合する方法で、該音信号スペクトラムデータの一の特徴と類似することを条件に、該音信号の識別情報を他の装置に通知する機能を有することを特徴とする装置情報判別方法。

【請求項3】
音信号の入力機能と音信号スペクトラム算出機能、複数の音信号の特徴を示すスペクトラムデータを音信号の識別情報と共に記憶する機能、他の装置に通知する機能およびスペクトラムのフィルタリング機能を持つ音信号判別装置と、メンテナンス部を持つメンテナンス装置より構成される装置において、入力音信号のスペクトラム算出結果に、データ登録機能により記憶させたフィルタリングデータを用いてフィルタリング処理を施し、データ登録機能により記憶させた複数のスペクトラムデータと照合する方法で、該音信号スペクトラムデータの一の特徴と類似することを条件に、該音信号の識別情報を他の装置に通知する機能を有することを特徴とする装置情報判別方法。

【請求項4】
前記の請求項1から請求項3に記載する方法を用いた装置情報判別装置


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−244508(P2012−244508A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114333(P2011−114333)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(709000239)株式会社エネサイバー (2)
【Fターム(参考)】