説明

装飾タイル壁

【課題】簡単な構成で装飾効果の高い装飾タイル壁を提供する。
【解決手段】複数のタイル11A、11B、11Cを有してなるタイルユニット10をもって壁面を構成する。個々のタイルは、その表面に、凹凸溝15で構成されるパターン模様を有している。パターン模様が凹凸溝15で構成されているので、そこに当たった光は複雑に反射する。このパターン模様をタイル毎に異なったものとしているので、光の反射具合も異なったものとなり、これに起因して色合いの変化が現れる。すなわち、たとえ各タイルが同一色であっても、人間の目には、色目あるいは濃淡が変化したものとして知覚される。また、各タイルに色合いの相違がある場合には、その相違が実際以上に強調される。なお、個々のタイルを直接壁面に固定してタイル壁を構成したり、表面に各タイルおよびその間の目地を模した凹凸を有する装飾ボードによっても、同様の装飾効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、代表的には建造物の外壁として使用され、その意匠性を高める装飾タイル壁に関する。
【背景技術】
【0002】
マンションその他の建造物の外壁は、その意匠性を向上させるために、従来より種々の装飾的工夫が為されている。例えば、タイル貼りの外壁では、隣接する個々のタイルの色合いを変化させて、全体として見た場合に、独特の風合いを醸し出すものが提案されている。
【0003】
このような外壁を構成するには、色合いや濃淡の異なる複数種類のタイルを用意することが必要となり、生産性において必ずしも効率的であるとは言えない。
【0004】
また、特許文献1では、セラミックス材料で作っても、自然石を貼ったかの如く視覚されるタイルユニットが開示されている。
このタイルユニットを構成する各タイルは、(1)タイルの前面を非平坦状とし、(2)角縁部を不規則な曲線で構成し、(3)矩形のタイルの4辺全てにおける傾斜角度を異ならせている。そして、ユニット内で隣接する各タイルの厚みを異ならせている。
上記構成の結果、人間の目には、各タイル間の目地幅が不規則に変化し、目地がゆらいでいるかのように見え、その結果、自然石を貼ったかの如く視覚される。
【0005】
特許文献1では、各タイルの製法については説明されていないが、個々のタイルの形状は非常に複雑である。
【0006】
なお、特許文献1の技術は、タイルユニット内の隣接する各タイルの形状を異ならせることで、目地の幅や形状に関して視覚的効果を与えているが、各タイル毎の色合いの変化を与えるものではない。
【0007】
【特許文献1】特開2002−97774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、簡単な構成で装飾効果の高いタイル壁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を有効に解決するために創案されたものであって、以下の特徴を備えたタイルユニットを提供する。
本発明のタイルユニットは、複数のタイルを有してなり、個々のタイルは、その表面に、凹凸溝で構成されるパターン模様を有している。そして、タイルのパターン模様の相違に起因して、視覚的な色合いの変化を与えている。
【0010】
ここでいう「視覚的な色合いの変化」とは、実際には同じ色でありながら、色目あるいは濃淡に変化があるように見える、あるいは、色目や濃淡の変化が実際よりも強調されて見える、という意味である。
【0011】
本発明において、タイルユニット内の全てのタイルについて互いにパターン模様が異なっている必要はない。すなわち、同じパターン模様のタイルが何枚か含まれていても、全体としてみた場合に、異なる何種類かのパターン模様のタイルが含まれていれば、当該パターン模様の相違によって、視覚的な色合いの変化を与えることができる。
【0012】
本発明においては、タイルユニット内の個々のタイルが、凹凸溝で構成されるパターン模様を有していて、タイル毎のパターン模様を異ならせている点に特徴がある。
凹凸溝で構成されたパターン模様であれば、その具体的な形態は、特定のものに限定されない。直線、曲線、蛇行線、屈曲線、あるいは規則性のない模様、その他の任意の模様を採用できる。ただ、すべてのタイルのパターン模様を、一定間隔で平行に延在する複数の直線溝で構成すると、各タイルの構成が単純となり、低コストで簡単に製造することが可能となる。
【0013】
また、本発明においては、タイルユニットを介することなく、壁面に対して個々のタイルを直接固定して、タイル壁を構成することも可能であり、その場合でも、上記と同様にして、タイルのパターン模様を異ならせることで、視覚的な色合いの変化を与えることができる。
【0014】
さらには、セメントや石膏を利用して、上記と同じ装飾効果を与える装飾ボートとすることも可能である。
すなわち、装飾ボードは、「タイル間の目地を模した区画凹部」と「区画凹部で区分けされたタイル調区画」とを表面に有していて、各タイル調区画は、その表面に凹凸溝で構成されるパターン模様を有している。タイル調区画のパターン模様の相違に起因して、視覚的な色合いの変化を与えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、個々のタイル(あるいは、タイル調区画)が凹凸溝で構成されるパターン模様をその表面に備えている。パターン模様が凹凸溝で構成されているので、そこに当たった光は複雑に反射する。そして、このパターン模様をタイル毎に異ならせているので、光の反射具合も異なったものとなり、これに起因して色合いの変化が現れる。すなわち、たとえ各タイルが同一色であっても、人間の目には、濃淡や色目が変化したものとして知覚される。
あるいは、各タイルやタイル調区画に濃淡や色目の相違がある場合には、その相違が実際以上に強調される。
【0016】
したがって、本発明によれば、異なる色のタイルを作り出すための異なる原材料を用意しなくても、一種類の原材料を用いるだけで、各タイルの濃淡に差がある意匠性の高い建物外壁を構成することができる。またそれ故、当然一種類の原材料(セメントや石膏)から作られる装飾ボードによっても、上記と同様に意匠性の高い建物外壁を構成できる。
すなわち、工業生産性が高く、コストを抑えて意匠性の高い建造物を建設できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態を添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。図1は、本発明のタイルユニット10の一例を示す正面図で、図2は、その部分拡大斜視図である。
【0018】
≪タイルユニットの全体構成≫
タイルユニット10は、一定間隔で配置された複数のタイル11を含んでいる。各タイルは、接着剤等を用いて基板20上に固定され、必要に応じてタイル間の目地をコーキングする。
【0019】
タイルユニット10は、千鳥状に配置された28枚のタイル11を有している(図1中右上コーナ部に存在するタイルは、1/2枚として数える)。図示の例では、タイルユニット10には3種類のタイルが含まれており、これらを、11A、11B、11Cとして区別する。
タイルユニット10を壁面に順次固定していくことによって、装飾タイル壁を構成することができる。
【0020】
≪各タイルの構成≫
各タイル11A、11B、11Cは、表面に設けたパターン模様において相違するだけであって、全てのタイルが同一の原材料から作られており、その色も同一である。
なお、同一の原材料から作ったタイルであっても、炉内での位置による焼きムラに起因して、厳密には濃淡のバラツキがあるが、実質的には同一色といえる。
【0021】
図3(A)、(B)、(C)は、それぞれ、図1、2中の3種類のタイル11A、11B、11Cの正面図であって、表面に付されたパターン模様を示している。また、図4は、図3(A)中の4−4に沿う部分拡大断面図である。
【0022】
図3(A)のタイル11Aでは、パターン模様は、四角形のタイルの短辺12と平行に延在する複数の直線溝15で構成されている。各溝11は、幅が2mm、深さが1mmである。また、溝間の間隔は2mmである。
【0023】
図3(B)、(C)に示したタイル11B、11Cも、パターン模様を構成する溝15の構成はタイル11Aと同じである。ただし、直線溝の延在方向が異なっており、タイル11Bでは、四角形タイルの左側短辺12から斜め下方45°の方向に各溝が平行に延在している。タイル11Cでは、四角形タイルの左側短辺12から斜め上方45°の方向に各溝が平行に延在している。
【0024】
≪色合いの変化が現れる原理≫
本発明のタイルユニットにおいては、各タイル表面のパターン模様が凹凸溝で構成されているため、そこに当たった光は複雑な反射を行う。そして、各タイルが異なるパターン模様を有しているため、光の当たり具合や、見る角度等によって、微妙な色合いの変化(色目や濃淡の変化)が現れる。
【0025】
したがって、同一の原材料から作ったタイルで、その色が同一であったとしても、タイルのパターン模様の相違に起因して、人間の目には、色合いが異なるものとして知覚される。また、各タイルに色合いの相違がある場合には、その相違が実際以上に強調される。
【0026】
各タイルに色合いの相違がある場合としては、原材料が全く同一でありながら、炉内での位置によって焼きムラが生じた場合、あるいは、意図的に異なる原材料を用いた場合が考えられる。
【0027】
つまり、本発明によれば、異なる原材料を用意しなくても、色合いに変化のある意匠性の高い壁面を構成できる。また、異なる原材料を用いた場合には、凹凸模様の相違に起因した上記効果との相乗により、さらに意匠性を高めることができる。
【0028】
≪個々のタイルの作り方≫
次に個々のタイルの作り方の一例を説明する。
タイルを構成する原材料として、珪酸塩含有物として流紋岩(平均粒径200μm)87重量%および混合粘土質原料(カオリン分10重量%)13重量%からなるセラミックス原料100重量部を用いる。
これを、コージェライトとムライトの混合物からなる耐火物製の縦250mm×横60mm×深さ10mm(内寸)のプレス金型に入れる。
その後、表面に突起を有するプレス機(上型)によりプレスを行い、金型内の原材料に溝付けを行う。突起は、原材料表面に形成される溝が、溝幅2mm、溝深さ1mmで、溝間ピッチ2mmとなるように、その形状を定めている。溝付けした原材料を金型から取り出して電気炉に入れ、3時間かけて1200℃まで昇温し、この温度で3時間保持する。その後、平均55℃/Hrの速度で徐冷すると、溝幅2mm、溝深さ1mmで溝ピッチ2mmの形状の溝を有するタイルが得られる。
【0029】
以上の製法は、各タイル11A、11B、11Cの全てについて同じである。ただし、各タイルは凹凸溝の延在方向が異なるので、溝付けするためのプレス機(上型)については、異なるものを用いるか、あるいは、プレス時における上型の向き(姿勢)を異ならせる。
【0030】
また、溝幅、溝深さ、溝間ピッチについては、上述のものに限られず、適宜の値を採用することができる。ただし、光の反射具合によって、微妙な濃淡あるいは色合いの変化を生じさせるためには、溝幅、溝深さ、溝間ピッチのそれぞれについて、あまりに大きすぎる値は好ましくないと考えられる。
【0031】
例えば、溝幅については0.5〜10mm、溝深さについては0.5〜10mm、溝間ピッチについては0.5〜10mm、程度の値を採用するのが好ましい。
【0032】
≪凹凸溝から構成されるパターン模様の変形例≫
本発明においては、タイル表面のパターン模様が凹凸溝で構成されている点、およびタイル毎のパターン模様を異ならせることで色合いの変化を生じさせている(あるいは強調している)点に特徴がある。
つまり、パターン模様自体の具体的構成は、図示したものに限らず、種々のものを任意に採用することができる。例えば、次のようなものを例示することができる(すべてを書き尽くすことはできないので、あくまでも例示である)。
(1)平行に並ぶ複数の直線溝において、溝幅、溝深さ、溝間ピッチが不規則に変化するもの。
(2)平行に並ぶ溝のそれぞれが、規則的または不規則な蛇行溝、あるいは屈曲溝で構成されているもの。
(3)同心状の円または楕円、あるいは螺旋で構成されたもの。
(4)まったく不規則なパターンの凹凸溝。
(5)上記の組み合わせ。
【0033】
≪タイルユニット以外の実施形態≫
タイルユニットの実施形態を以上に説明したが、本発明では、タイルユニットを介して壁面を構成する以外にも、壁面に対して個々のタイルを直接固定することで、装飾タイル壁を構成することも可能である。
その場合に使用する個々のタイルの構成は、既に説明したタイルユニットに使用するものと同じである。この場合にも、上記と同様の原理により、各タイルのパターン模様を異ならせることで、視覚的な色合いの変化を与えることができる。
【0034】
≪装飾ボードとしての実施形態≫
タイル壁やタイルユニットの他に、上記と同様の装飾的効果を与えるものとして、装飾ボードの実施形態を説明する。図5は、装飾ボードの一例を示す正面図である。
【0035】
装飾ボード30は、セメントや石膏等の原材料から型成形された単一部材であるが、その表面には凹凸の造形が施されていて、図1および図2に示したタイルユニット10とほぼ同一の外観を有する。
すなわち、装飾ボード30は、上述のタイル壁あるいはタイルユニットを模したものであって、区画凹部32がタイル間の目地に相当し、区画凹部32で仕切られた各タイル調区画31A、31B、31Cが各タイル11A、11B、11Cに相当する。
【0036】
この装飾ボード30は、以下のようにして作る。
(1)セメントや石膏等の原材料をボード状の型枠に流し込む。
(2)流し込んだ原材料が完全に固まる前に、その表面に型板を押し当てて、「区画凹部32」および「タイル調区画31A、31B、31C」を有する無垢を構成する。
(3)必要に応じて、無垢の表面に、更にプリント塗装やデザインスプレーを施す。
無垢のままでもパターン模様の相違に起因して、視覚的な色合いの変化を与えることができるが、プリント塗装やデザインスプレーを施した場合には、各タイル調区画自体に濃淡や色目の相違が生じ、相乗的効果により更に装飾性を高めることができる。
【0037】
各タイル調区画31A、31B、31Cは、その表面に凹凸溝で構成されるパターン模様を有する。タイル調区画31A、31B、31Cは、それぞれ、図1のタイルユニットにおける各タイル11A、11B、11Cに対応するものであり、その表面に形成されるパターン模様も、既に説明したものと同じである。
【0038】
したがって、装飾ボード30により得られる装飾的効果は、既に説明したタイル壁あるいはタイルユニットの場合と同じであり、パターン模様を構成する凹凸溝の寸法や変形例についても、全く同様に考えることができる。
また、区画凹部32の幾何学的構成や、各タイル調区画31A、31B、31Cの配列についても、図示のものに限定されず、適宜変更を加えることができる。
【0039】
≪その他≫
本発明のタイルユニット、タイル、装飾ボードは、代表的には建造物の外壁に使用されるが、それ以外の用途に使用することが可能である。例えば、台所のコンロ回りを煉瓦風にアレンジする場合など、内装に使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係るタイルユニットを説明する正面図。
【図2】図1の部分拡大斜視図。
【図3】図1中の各タイルを示す正面図。
【図4】図3(A)中の4−4線断面図。
【図5】本発明の他の実施形態に係る装飾ボードを説明する正面図。
【符号の説明】
【0041】
10 タイルユニット
11A、11B、11C タイル
12 四角形タイルの短辺
15 溝
20 基板
30 装飾ボード
31A、31B、31C タイル調区画
32 区画凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のタイル(11A、11B、11C)を有してなるタイルユニット(10)であって、
個々のタイルは、その表面に凹凸溝(15)で構成されるパターン模様を有しており、
タイルのパターン模様の相違に起因して、視覚的な色合いの変化を与えていることを特徴とする、タイルユニット。
【請求項2】
上記パターン模様は、一定間隔で平行に延在する複数の直線溝(15)で構成されていることを特徴とする、請求項1記載のタイルユニット。
【請求項3】
凹凸溝(15)で構成されるパターン模様を表面に有していて、請求項1または2記載のタイルユニット(10)に使用されるタイル。
【請求項4】
複数のタイル(11A、11B、11C)を表面に備えたタイル貼りの壁面であって、
個々のタイルは、その表面に凹凸溝(15)で構成されるパターン模様を有しており、
タイルのパターン模様の相違に起因して、視覚的な色合いの変化を与えていることを特徴とする、壁面。
【請求項5】
上記パターン模様は、一定間隔で平行に延在する複数の直線溝(15)で構成されていることを特徴とする、請求項4記載の壁面。
【請求項6】
凹凸溝(15)で構成されるパターン模様を表面に有していて、請求項4または5記載の壁面に使用されるタイル。
【請求項7】
複数のタイル(11A、11B、11C)を用いてタイル貼りの壁面を構成するにあたり、
表面に凹凸溝(15)で構成されるパターン模様を有するタイルを使用し、
タイルのパターン模様を異ならせることで、視覚的な色合いの変化を与えることを特徴とする、壁面の構成方法。
【請求項8】
上記タイルのパターン模様は、一定間隔で平行に延在する複数の直線溝(15)で構成されていることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
凹凸溝(15)で構成されるパターン模様を表面に有していて、請求項7または8記載の方法に使用されるタイル。
【請求項10】
タイル間の目地を模した区画凹部(32)と、区画凹部(32)で区分けされたタイル調区画(31A、31B、31C)と、を表面に有する装飾ボードであって、
各タイル調区画(31A、31B、31C)は、その表面に凹凸溝(15)で構成されるパターン模様を有しており、
タイル調区画のパターン模様の相違に起因して、視覚的な色合いの変化を与えていることを特徴とする、装飾ボード。
【請求項11】
上記パターン模様は、一定間隔で平行に延在する複数の直線溝(15)で構成されていることを特徴とする、請求項10記載の装飾ボード。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−332635(P2007−332635A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164847(P2006−164847)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【Fターム(参考)】