説明

装飾体、及び、その装飾体の製造方法

【課題】セラミックスを筆記具等の軸や装飾部品の一部に使用した場合、落下や衝撃が加わったときに素材そのものが割れ製品形態を維持できなくなることを防止する。
【解決手段】セラミックス1の少なくとも表面に塗膜2を形成し、基材4にセラミックスと相似形の溝を形成し、溝の深さはセラミックスがちょうど表面から出ない様に溝にセラミックスを固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体にセラミックスが埋め込まれた状態で装着された装飾体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
筆記具や化粧具などの筒状のボディーに用いられる天然素材は、象牙や木材、べっ甲などがある。これらの素材を装飾的に用いる場合、素材を棒状にくり抜き、その後貫通穴を開け筒状にする方法やシートを作成しこれを筒状に丸めるなどの方法が取られている。しかしながら象牙やべっ甲は、生物保護の観点から輸入禁止素材となっており材料の入手も困難である。また、木材は気温や湿度により寸法変化が生じ、また加工上も精度が出ないという問題があった。
一方、陶磁器や天然の石を筆記具や化粧具などの本体に応用しようとした場合、工業的には製作が可能であるが、素材そのものの特性(セラミックスである)から落下したときに素材が割れてしまうという問題があった。
また、素材の質感を重要視した製品が特に高級品に求められる様になり、貴石やセラミックス(陶磁器やガラス)を一部装飾的に用いられてきている。しかしながら、貴石は素材自体が希少価値があり高価であることから、実用品と言うよりは芸術品という分類される様になる。一方、セラミックスは人工物であり素材感、重量感があり筆記具等の本体の装飾には値段的にも好適であるが、割れやすいことからクリップの一部分に固定されるなどして部分装飾の用途にしか使用できないという欠点があった。
【0003】
【特許文献1】特開2001−026194号公報
【非特許文献1】イ・カストーニ(スティピュラ製)趣味の文具箱vol.4,p10,株式会社えい出版社 2005年11月30日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セラミックスを筆記具等の軸等に使用した場合、落下や衝撃が加わったときに素材そのものが割れ製品形態を維持できなくなる。また、装飾用途に部品の一部に装着使用した場合においても、落下時にセラミックスが割れてしまい、装飾性が著しく低下すると同時に欠片によるけがのおそれがあるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この改善策として、セラミックスの少なくとも表面に塗膜を形成し、塗膜を形成したセラミックスを軸等の本体に装着固定する方法によりセラミックスの割れによる破片の飛散防止および割れの抑制効果があることを見いだし、本発明に至ったものである。よって基体に、セラミックスを装着した装飾体において、セラミックスの表面が塗膜で被覆されていることを特徴とする装飾体を第1の要旨とし、筒状の基体に凹部を形成し、その後その凹部と相似形のセラミックスの表面に塗料を塗布・乾燥することにより塗膜を形成し、次に塗膜を形成したセラミックスを基体の凹部に装着する装飾体の製造方法を第2の要旨とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によりセラミックス(陶磁器やガラス)を装飾目的で筆記具の軸等に応用しようとした場合、割れや破片の飛散防止が図れることから、部品のある一部に装着するだけでなく、適用範囲が広くなりデザインの自由度も大きくなるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、本発明装置の1実施例の断面図であって、1は、セラミックス。2は塗膜。3は、接着層。4は、基材である。1〜4は、図2と同様である。
【0008】
符号1は、セラミックスであり陶磁器、パワーストーン、鉱物等が利用できる。セラミックスは、基材の凹部と相似形に加工される。
【0009】
符号2は、塗膜である。塗膜はセラミックスの少なくとも表面に公知の方法で形成されれていれば良く、形成方法は特に限定されるものでない。塗膜の材質は、特に限定されるものでは無いが、セラミックスに形成することからセラミックスと線膨張係数が近いものおよびセラミックスと密着力が強いものが好ましい。
【0010】
符号3は、接着層である。接着層は、塗膜を形成したセラミックスと基材を装着固定するために使用する。接着層は、特に限定されるものではないが、施工のし易さ製造コストの観点から、市販の接着剤や両面テープが好ましい。接着層は、セラミックスと基材を固定するためのものであるが、基材からの衝撃をセラミックスに伝えない衝撃吸収機能も必要である。よって市販の接着剤においては、硬化膜が柔軟性を有するタイプが好ましい。また両面テープにおいては熱により軟化しにくくまた低温により粘着力が低下しないタイプが好ましい。
【0011】
符号4は、基材である。基材材質は、セラミックス(陶磁器、ガラス等)を除く金属、樹脂などが用いられる。基材は、装飾用のセラミックスを装着する凹部が形成されている。
凹部は、装飾用のセラミックスがちょうど収まる大きさと形状であり、よってセラミックスの断面形状と相似形である。凹部の深さは、セラミックスがちょうど面位置で収まる深さ以上であることが必要である。これはせっかく飛散防止の塗膜を形成してもセラミックスが基材表面より出ている場合、落下時にセラミックスが真っ先に床等にぶつかり衝撃を受けるからである。
【産業上の利用可能性】
【0012】
このようなセラミックスの装着形態を採用したので、使用者が不用意に筆記具等を落下させた場合にも簡単に割れて装飾効果が維持できなくなったり、セラミックスを部品の一部に装着した場合においてセラミックスがもし割れても破片の飛散が最小限に抑えられることから破片によるけがの恐れも少なくなる。
一方落下試験の結果、セラミックスは、落下による衝撃で割れるが本研究によれば、落下による衝撃が和らげられ、割れが発生するまでの落下回数が増えることが確認されている。よって落下における割れに関する耐久性も向上する効果がある。
【0013】
(実施例1)
円筒形の真鍮基材の側面に深さ2ミリ、幅2ミリ、長さ50ミリの溝を形成した。次にヘマタイトの石を切り出し、研磨後幅1.97ミリ、長さ49.97ミリ、厚さ1.97ミリに成形した。その後ヘマタイトプレートの表面に出る部分を除いた5面にシリコーン系のワニス(ES−1004,信越化学工業(株)製)を塗布・乾燥した。次にヘマタイトプレートの表面の反対側の裏面と真鍮基材の溝の底面を両面テープ(778P,(株)寺岡製作所製)で固定・接着した。
【0014】
(実施例2)
円筒形の真鍮基材の側面に深さ2ミリ、幅2ミリ、長さ50ミリの溝を形成した。次にヘマタイトの石を切り出し、研磨後幅1.97ミリ、長さ49.97ミリ、厚さ1.97ミリに成形した。その後ヘマタイトプレートの表面に出る部分を除いた5面にシリコーン系のワニス(KR−255,信越化学工業(株)製)を塗布・乾燥した。次にヘマタイトプレートの表面の反対側の裏面と真鍮基材の溝の底面をエポキシ系接着剤(EP001,セメダイン(株)製)で固定・接着した。
【0015】
(実施例3)
円筒形のABS基材の側面に深さ2ミリ、幅2ミリ、長さ50ミリの溝を形成した。次にヘマタイトの石を切り出し、研磨後幅1.97ミリ、長さ49.97ミリ、厚さ1.97ミリに成形した。その後ヘマタイトプレートの表面に出る部分を除いた5面にシリコーン系のワニス(KR−255,信越化学工業(株)製)を塗布・乾燥した。次にヘマタイトプレートの表面の反対側の裏面と真鍮基材の溝の底面をエポキシ系接着剤(EP001,セメダイン(株)製)で固定・接着した。
【0016】
(実施例4)
真鍮基材の頭冠の中心に円筒形溝(深さ2ミリ直径5ミリ)を形成した。次にソーダライトの石を切り出し、研磨後直径4.97ミリ、厚さ1.97ミリに円盤状に成形した。その後ソーダライト円形プレートの表面に出る部分を除いた面にシリコーン系のワニス(es−1004,信越化学工業(株)製)を塗布・乾燥した。次にソーダライト円形プレートの表面の反対側の裏面と真鍮基材の溝の底面を両面テープ(778P,(株)寺岡製作所製)で固定・接着した。
【0017】
(実施例5)
真鍮基材の頭冠の中心に円筒形溝(深さ2ミリ直径5ミリ)を形成した。次にソーダライトの石を切り出し、研磨後直径4.97ミリ、厚さ1.97ミリに円盤状に成形した。その後ソーダライト円形プレートの表面に出る部分を除いた面にウレタン系の塗料(s−5005s,長島特殊塗料(株)製)を塗布・乾燥した。次にソーダライト円形プレートの表面の反対側の裏面と真鍮基材の溝の底面を両面テープ(778P,(株)寺岡製作所製)で固定・接着した。
【0018】
(実施例6)
真鍮基材の頭冠の中心に円筒形溝(深さ2ミリ直径5ミリ)を形成した。次にソーダライトの石を切り出し、研磨後直径4.97ミリ、厚さ1.97ミリに円盤状に成形した。その後ソーダライト円形プレートの表面に出る部分を除いた面にエポキシ系の塗料(プラザフ,関西ペイント(株)製)を塗布・乾燥した。次にソーダライト円形プレートの表面の反対側の裏面と真鍮基材の溝の底面を両面テープ(778P,(株)寺岡製作所製)で固定・接着した。
【0019】
(実施例7)
円筒形のABS基材の側面に深さ2ミリ、幅2ミリ、長さ50ミリの溝を形成した。次にアルミナを焼成し、研磨後幅1.97ミリ、長さ49.97ミリ、厚さ1.97ミリに成形した。その後アルミナの表面に出る部分を除いた5面にシリコーン系のワニス(KR−255,信越化学工業(株)製)を塗布・乾燥した。次にアルミナプレートの表面の反対側の裏面と真鍮基材の溝の底面をエポキシ系接着剤(EP001,セメダイン(株)製)で固定・接着した。
【0020】
(実施例8)
円筒形のABS基材の側面に深さ2ミリ、幅2ミリ、長さ50ミリの溝を形成した。次にソーダガラスを、研磨後幅1.97ミリ、長さ49.97ミリ、厚さ1.97ミリに成形した。その後ソーダガラスの表面に出る部分を除いた5面にシリコーン系のワニス(KR−255,信越化学工業(株)製)を塗布・乾燥した。次にソーダガラスプレートの表面の反対側の裏面と真鍮基材の溝の底面を両面テープ(778P,(株)寺岡製作所製)で固定・接着した。
【0021】
(比較例1)
円筒形の真鍮基材の側面に深さ2ミリ、幅2ミリ、長さ50ミリの溝を形成した。次にヘマタイトの石を切り出し、研磨後幅1.97ミリ、長さ49.97ミリ、厚さ1.97ミリに成形した。その後ヘマタイトプレートの表面の反対側の裏面と真鍮基材の溝の底面を両面テープ(778P,(株)寺岡製作所製)で固定・接着した。
【0022】
(比較例2)
真鍮基材の頭冠の中心に円筒形溝(深さ2ミリ直径5ミリ)を形成した。次にソーダライトの石を切り出し、研磨後直径4.97ミリ、厚さ1.97ミリに円盤状に成形した。次にソーダライト円形プレートの表面の反対側の裏面と真鍮基材の溝の底面をエポキシ系接着剤(EP001,セメダイン(株)製)で固定・接着した。
【0023】
(比較例3)
円筒形の真鍮基材の側面を、幅2ミリ、長さ50ミリにカットしセラミックスを貼り付ける面を形成した。次にヘマタイトの石を切り出し、研磨後幅1.97ミリ、長さ49.97ミリ、厚さ1.97ミリに成形した。その後ヘマタイトプレートの表面に出る部分を除いた5面にシリコーン系のワニス(ES−1004,信越化学工業(株)製)を塗布・乾燥した。次にヘマタイトプレートの表面の反対側の裏面と真鍮基材の溝の底面を両面テープ(778P,(株)寺岡製作所製)で固定・接着した。
【0024】
(比較例4)
円筒形の真鍮基材の側面に深さ1.5ミリ、幅2ミリ、長さ50ミリの溝を形成した。次にヘマタイトの石を切り出し、研磨後幅1.97ミリ、長さ49.97ミリ、厚さ1.97ミリに成形した。その後ヘマタイトプレートの表面に出る部分を除いた5面に釉薬クリヤホワイトS(bf−1,(有)美装製)を用いて700℃で焼成し、上薬をかけた。次にヘマタイトプレートの表面の反対側の裏面と真鍮基材の溝の底面を両面テープ(778P,(株)寺岡製作所製)で固定・接着した。
以下、落下試験および破片の飛散状況の結果を表1に示す。
【0025】
【表1】


落下試験方法:1メートルの高さからコンクリート状に落下。1回ごとに割れの有無を確認。割れが発生した回数を記録した。
破片の確認 :チャック付ポリ袋にサンプルを入れ、落下試験を行い、割れが発生したサンプルの飛び散った破片を回収した。顕微鏡によりかけらの大きさ個数を計測した。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例1の断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 セラミックス
2 塗膜
3 接着層
4 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体に、セラミックスを装着した装飾体において、セラミックスの表面が塗膜で被覆されていることを特徴とする装飾体。
【請求項2】
基体にセラミックスを埋め込む凹部を形成したことを特徴とする請求項1記載の装飾体。
【請求項3】
基体に形成した凹部が、セラミックスと相似形のであることを特徴とする請求項1記載の装飾体。
【請求項4】
セラミックスに形成する塗膜が、合成樹脂であることを特徴とする請求項1記載の装飾体。
【請求項5】
筒状の基体に凹部を形成し、その後その凹部と相似形のセラミックスの表面に塗料を塗布・乾燥することにより塗膜を形成し、次に塗膜を形成したセラミックスを基体の凹部に装着する装飾体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−55741(P2008−55741A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234784(P2006−234784)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】