説明

装飾用フィルム、前面板、ディスプレイ装置、および前面板の製造方法

【課題】色むらをより抑制することが可能な装飾用フィルムを提供する。
【解決手段】ディスプレイ装置の前面板に使用される装飾用フィルムであって、第1および第2の側を有し、前記第1の側に金属層が設置された基材層と、第1および第2の表面を有する粘着層であって、前記第2の表面が前記基材層に近い側となるようにして、前記基材層の上方に配置された粘着層と、を有し、前記粘着層は、透明または半透明なマトリクス材料中に、着色剤が分散されて構成され、前記粘着層は、10μm〜200μmの範囲の厚さを有し、当該装飾用フィルムを、前記粘着層の第1の表面側から見たとき、前記金属層からの光の反射により、所望の色合いが発現することを特徴とする装飾用フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ装置に使用される装飾用フィルム、および前面板に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型テレビジョン等に適用される液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)および有機EL(Electroluminescent)ディスプレイ(OELD)等のFPD(Flat Panel Display)装置では、表示パネルの前面に、「前面フィルタ」とも呼ばれるガラス製の前面板が設置されている。この前面板は、主として、周囲光の反射防止、FPD装置の強度向上、およびFPD装置の衝撃破損防止等を目的として設置される。
【0003】
最近の前面板には、上記機能の他、例えば、FPD装置の外観をすっきりしたシックな印象にしたり、高級感のある印象を発現させるなど、デザイン性や装飾性も要求されるようになってきた。このため、例えば、黒色のセラミック層をガラス基板の周囲に焼き付けて、黒色の装飾枠を有する前面板を製造する技術が開発されている(例えば特許文献1)。
【0004】
しかしながら、このようなセラミック層を使用する方法では、装飾枠として発現できる色の種類に限界がある。また、装飾枠を設置する際には、高温の熱処理が必要となり、このため製造方法が煩雑となり、コストが上昇するという問題が生じ得る。
【0005】
そのため、より簡便な方法で、ガラス基板の周囲に各種色の装飾枠を形成する技術が要望されるようになってきている。
【0006】
これに関して、特許文献2には、特にFPD装置分野での適用を目的としたものではないが、過剰なメタリック感を抑えた深みのある色合いを発現することが可能な装飾用シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−91326号公報
【特許文献2】登録実用新案3153410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように、特許文献2には、過剰なメタリック感を抑えた深みのある色合いを発現することが可能な装飾用シート(以下、従来の「装飾用シート」と称する)が開示されている。従って、この装飾用シートをガラス基板の周囲に貼り付けることにより、セラミック層を焼き付ける方法では発現することのできなかった装飾性を有する前面板を製造することができる可能性がある。
【0009】
しかしながら、従来の装飾用シートは、表層(すなわち視認側)から順に、透明ラミネート層、着色層、金属光沢層、基材層、粘着層、および剥離層を積層して構成される。このような層構成では、着色層は、極めて高い均一性を有する必要がある。例えば、着色層の膜厚は、極めて狭い範囲(例えば、サブミクロンオーダー)内に収まっていないと、色むらを抑えることが難しいという問題がある。
【0010】
例えば、着色層の均一性が高精度に制御されず、膜厚が上記範囲から逸脱した場合、装飾用シートを視認した際に、金属光沢層からの反射光が意図しない状態で遮断されたり、強く反射し過ぎたりしてしまう。このため、従来の装飾用シートでは、色むらが目立ったり、目的とする色が発現できなくなったりして、見栄えが悪くなってしまうという問題が生じ得る。特に、着色層は、厚さ自体が比較的薄いため、着色層の膜厚を高精度に制御することは、極めて難しい。
【0011】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、本発明では、従来の装飾用シートに比べて、色むらをより抑制することが可能な装飾用フィルム、そのような装飾用フィルムを有するディスプレイ装置用の前面板、およびそのような前面板を有するディスプレイ装置を提供することを目的とする。また、本発明では、従来の装飾用シートに比べて、色むらをより抑制することが可能な装飾用フィルムを有する前面板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、
ディスプレイ装置の前面板に使用される装飾用フィルムであって、
第1および第2の側を有し、前記第1の側に金属層が設置された基材層と、
第1および第2の表面を有する粘着層であって、前記第2の表面が前記基材層に近い側となるようにして、前記基材層の上方に配置された粘着層と、
を有し、
前記粘着層は、透明または半透明なマトリクス材料中に、着色剤が分散されて構成され、
前記粘着層は、10μm〜200μmの範囲の厚さを有し、
当該装飾用フィルムを、前記粘着層の第1の表面側から見たとき、前記金属層からの光の反射により、所望の色合いが発現することを特徴とする装飾用フィルムが提供される。
【0013】
ここで、本発明による装飾用フィルムにおいて、前記金属層は、前記基材層と前記粘着層の間に配置されても良い。
【0014】
また、本発明による装飾用フィルムにおいて、さらに、前記粘着層の前記第1の表面側に、剥離層が設置されていても良い。
【0015】
さらに、本発明による装飾用フィルムの前記粘着層から遠い方の最表面に、保護層が設置されていても良い。
【0016】
また、本発明による装飾用フィルムにおいて、前記粘着層のマトリクス材料は、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ブタジエン系粘着剤、およびウレタン系粘着剤からなる群から選定された少なくとも一つを含んでも良い。
【0017】
また、本発明による装飾用フィルムにおいて、前記着色剤は、グレー色、茶色、赤色、緑色、紫色、黄色、オレンジ色、黒色、および青色から選ばれる1種以上の着色剤であっても良い。
【0018】
また、本発明による装飾用フィルムにおいて、前記金属層は、金、銀、クロム、アルミニウム、ニッケル、スズ、チタン、およびこれらの少なくとも一つを含む合金からなる群から選定された材料を含んでも良い。
【0019】
また、本発明では、
おもて面および裏面を有する透明基板を含む、ディスプレイ装置用の前面板であって、
前記透明基板の前記おもて面は、当該前面板の前側となり、前記透明基板の前記裏面は、当該前面板の後側となり、
前記透明基板の裏面の少なくとも一部には、装飾用フィルムが設置され、
前記装飾用フィルムは、
第1および第2の側を有し、前記第1の側に金属層が設置された基材層と、
第1および第2の表面を有する粘着層であって、前記第2の表面が前記基材層に近い側となるようにして、前記基材層の上方に配置され、前記透明基板の裏面と密着した粘着層と、
を有し、
前記粘着層は、透明または半透明なマトリクス材料中に、着色剤が分散されて構成され、
前記粘着層は、10μm〜200μmの範囲の厚さを有し、
当該前面板を前側から見たとき、前記装飾用フィルムには、前記金属層からの光の反射により、所望の色合いが発現することを特徴とする前面板が提供される。
【0020】
ここで、本発明による前面板において、前記装飾用フィルムは、前記透明基板の裏面の外周部分に設置されていても良い。
【0021】
また、本発明による前面板において、さらに、前記透明基板のおもて面の少なくとも一部には、追加機能膜が設置されていても良い。
【0022】
さらに、本発明では、
表示パネルと、該表示パネルの前方に設置された前面板とを有するディスプレイ装置であって、
前記前面板は、前述の特徴を有する前面板であり、
前記前面板は、該前面板の後側が前記表示パネルと対面するように設置されることを特徴とするディスプレイ装置が提供される。
【0023】
ここで、本発明によるディスプレイ装置において、前記表示パネルは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、および有機ELディスプレイのうちのいずれか一つを有しても良い。
【0024】
さらに、本発明では、
ディスプレイ装置用の前面板の製造方法であって、
(a)おもて面および裏面を有する透明基板を準備するステップと、
(b)装飾用フィルムを準備するステップであって、
前記装飾用フィルムは、
第1および第2の側を有し、前記第1の側に金属層が設置された基材層と、
第1および第2の表面を有する粘着層であって、前記第2の表面が前記基材層に近い側となるようにして、前記基材層の上方に配置された粘着層と、
を有し、
前記粘着層は、透明または半透明なマトリクス材料中に、着色剤が分散されて構成され、
前記粘着層は、10μm〜200μmの範囲の厚さを有する、
ステップと、
(c)前記透明基板の裏面の少なくとも一部に、前記透明基板と前記粘着層とが密着するようにして、前記装飾用フィルムを貼り付けるステップと、
を有し、
前記透明基板の前記おもて面側から見たとき、前記装飾用フィルムには、前記金属層からの光の反射により、所望の色合いが発現することを特徴とする製造方法が提供される。
【0025】
ここで、本発明による製造方法において、前記金属層は、前記基材層と前記粘着層の間に配置されても良い。
【0026】
また、本発明による製造方法において、前記装飾用フィルムは、前記粘着層から遠い方の最表面に、保護層を有しても良い。
【0027】
また、本発明による製造方法において、前記(c)のステップは、
(C1)前記透明基板の裏面の外周全体を覆うようにして、前記装飾用フィルムを貼り付けるステップを有しても良い。
【0028】
また、本発明による製造方法において、
前記装飾用フィルムは、前記粘着層上に配置された剥離層を有し、
前記装飾用フィルムは、前記透明基板の裏面とほぼ等しい縦横寸法を有し、
前記(C1)のステップは、
(C2)前記装飾用フィルムの厚さ方向に、前記装飾用フィルムの、前記透明基板の裏面に貼り付けられる領域に相当する外周部分に沿って、切り込み線を入れるステップであって、前記切り込み線は、前記基材層は貫通するが、前記保護層は貫通しないステップと、
(C3)前記剥離層を取り外すステップであって、前記剥離層は、前記切り込み線で囲まれた中央部分を残したまま、外周部分のみが取り外されるステップと、
(C4)前記透明基板と前記粘着層の露出部分とが密着するようにして、前記装飾用フィルムを、前記透明基板の裏面の外周全体に貼り付けるステップと、
(C5)前記保護層を取り外すステップであって、これにより、前記透明基板と、前記粘着層とが密着した部分にのみ、前記保護層および剥離層を除く前記装飾用フィルムが残存するステップと、
を有しても良い。
【発明の効果】
【0029】
本発明では、従来の装飾用シートに比べて、色むらをより抑制することが可能な装飾用フィルム、そのような装飾用フィルムを有するディスプレイ装置用の前面板、およびそのような前面板を有するディスプレイ装置を提供することができる。また、本発明では、従来の装飾用シートに比べて、色むらをより抑制することが可能な装飾用フィルムを有する前面板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】従来の装飾用シートの概略的な断面図である。
【図2】本発明による装飾用フィルムの概略的な構成を模式的に示した断面図である。
【図3】本発明による前面板の概略的な断面の一例を示した図である。
【図4】図3に示した前面板の概略的な裏面図である。
【図5】本発明による別の装飾用フィルムの概略的な構成を模式的に示した断面図である。
【図6】本発明によるディスプレイ装置の一例を概略的に示した断面図である。
【図7】本発明による前面板の製造方法の一例を概略的に示したフロー図である。
【図8】透明基板の裏面の外周部分に、枠状に装飾用フィルムを貼り付ける際の工程を模式的に示した図である。
【図9】透明基板の裏面の外周部分に、枠状に装飾用フィルムを貼り付ける際の工程を模式的に示した図である。
【図10】実施例1に係るサンプルの表面写真である。
【図11】比較例1に係るサンプルの表面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明について説明する。
【0032】
(従来の装飾用シート)
まず、本発明をより良く理解するため、図1を参照して、従来の装飾用シートの構成について、簡単に説明する。
【0033】
図1には、従来の装飾用シートの概略的な断面図を示す。
【0034】
図1に示すように、従来の装飾用シート10は、表層から順に、透明ラミネート層12、着色層14、金属光沢層16、基材層18、粘着層20、および剥離層22を積層して構成される。なお、剥離層22は、実際に、装飾用シート10が被設置対象物(図示されていない)に貼り付けられる際には、剥離され、これにより露出した粘着層20が被設置対象物と密着される。
【0035】
この装飾用シート10の視認方向は、図1において、矢印Sで示されている。すなわち、装飾用シート10を矢印Sの方向から視認した場合、金属光沢層16からの反射光が着色層14に含まれる顔料によって遮光されたり、強く反射し過ぎたりする。これにより、メタリック特有のギラツキ感が有意に抑制され、ある程度の光沢感を持つ深みのある色合いが発現され得る。
【0036】
しかしながら、この装飾用シート10は、FPD装置(以下、「ディスプレイ装置」と称する)への適用を考慮して考案されたものではない。このため、この装飾用シート10をガラス基板に貼り付けて、ディスプレイ装置用の前面板を構成しようとした場合、以下に示すようないくつかの問題が生じ得る。
【0037】
(1)この装飾用シート10を使用して、色むらのない均一な色合いを発現させようとした場合、着色層14は、極めて高い均一性を有する必要があり、特に、膜厚を極めて狭い範囲(例えばサブミクロンオーダ)で制御する必要がある。
【0038】
例えば、着色層14の均一性が高精度に制御されず、膜厚が適正範囲から逸脱した場合、装飾用シート10を矢印Sの方向から視認した際に、金属光沢層16からの反射光が意図しない状態で遮光されたり、散乱されたりしてしまう。このため、装飾用シート10では、色むらが目立ったり、目的とする色が発現できなくなったりして、見栄えが悪くなってしまう場合がある。また、この場合、前面板の装飾性やデザイン性が損なわれてしまう。特に、着色層14は、厚さ自体が比較的薄いため、着色層14の膜厚を均一に制御することは、極めて難しい。
【0039】
(2)前述のような装飾用シート10による色合い効果を発現するためには、装飾用シート10は、前面板を構成するガラス基板の「おもて面」(視認側に近い表面)上に貼り付ける必要がある。
【0040】
しかしながら、この場合、装飾用シート10は、ガラス基板から視認者の側に突出した状態となり、すなわち段差が形成されてしまう。このような状態では、装飾用シート10が人または物と当接しやすくなり、装飾用シート10は、容易に剥離したり、傷ついたりするようになる。また、このような段差は、ディスプレイ装置の美観を損ねる原因となってしまう。
【0041】
このように、装飾用シート10を使用して、ディスプレイ装置用の前面板を構成しようとした場合、各種問題が生じる。
【0042】
(本発明による装飾用フィルムの特徴)
次に、図2を参照して、本発明による装飾用フィルムの特徴について説明する。図2には、本発明による装飾用フィルムの概略的な構成の一例を模式的に示す。
【0043】
図2に示すように、本発明による装飾用フィルム100は、表層側から、剥離層110、粘着層130、金属層150、基材層170、および保護層190を有する。本発明による装飾用フィルム100の視認方向は、図2において、矢印Sで示されている。
【0044】
剥離層110は、実際に、装飾用フィルム100が被設置対象物(図示されていない)に貼り付けられる際には、剥離され、これにより露出した粘着層130が被設置対象物と密着される。
【0045】
粘着層130は、透明または半透明な材料で構成されたマトリクス部と、該マトリクス部に分散された着色剤とを有する。金属層150は、視認方向(図2の矢印S方向)からの光を反射する反射層としての役割を有する。基材層170は、装飾用フィルム100の基礎部分を構成する層である。保護層190は、本発明による装飾用フィルム100を外部環境から保護するために設置される。ただし、保護層190は、必要に応じて設置される層であり、必ずしも設置する必要はない。
【0046】
本発明による装飾用フィルム100を矢印Sの方向から視認した場合、金属層150からの反射光は、粘着層130に含まれる着色剤によって遮光されたり、拡散されたりする。これにより、視認者に対して、所望の色の色合いが提供される。
【0047】
ここで、本発明による装飾用フィルム100では、従来の着色層14に相当する独立した層は存在せず、着色剤を有する粘着層130が、従来の着色層14と粘着層20の役割を兼ねているという特徴を有する。
【0048】
粘着層130は、通常10ミクロン以上の厚さを有する。従って、粘着層130は、従来の着色層14(通常、厚さが5ミクロン以下)とは異なり、例えば、バーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ロールコート法などのような一般的な塗膜形成方法により、均一な膜厚のものを比較的簡単に形成することができる。このため、本発明による装飾用フィルム100では、膜厚が一定の粘着層130を容易に形成することが可能となり、これにより、装飾用フィルム100の色むらの発生を有意に抑制することが可能になる。さらに、本発明による装飾用フィルム100を使用することにより、色むらが抑制され、高いデザイン性および/または装飾性を有する装飾部分を有するディスプレイ装置用の前面板を製造することが可能となる。
【0049】
また、本発明による装飾用フィルム100では、粘着層130が、従来の着色層14と粘着層20の役割を兼ねるため、成膜工程の数が減り、より低コストで装飾用フィルム100を製造することが可能になる。
【0050】
図3および図4には、そのような装飾用フィルム100を備える本発明による前面板の一例を示す。図3には、本発明による前面板の概略的な断面図が示されており、図4には、図3に示された前面板を裏面からみたときの裏面図が示されている。
【0051】
図3および図4に示すように、本発明による前面板200は、おもて面212Aおよび裏面212Bを有する透明基板210と、前述のような構成を有する装飾用フィルム220と、追加機能膜230とで構成される。ただし、追加機能膜230は、必要に応じて設置されるものであり、前面板200に必ずしも必要な部材ではない。
【0052】
装飾用フィルム220は、透明基板210の裏面212Bの少なくとも一部に設置される。例えば、図3および図4の例では、装飾用フィルム220は、透明基板210の裏面212Bの外周部全体を覆う「枠状」に設置されている。ただし、これは一例であって、装飾用フィルム220の設置場所は、透明基板210の裏面212Bの一部である限り特に限られない。装飾用フィルム220は、例えば、透明基板210の裏面212Bの一つの辺の外周部分にのみ設置されても良い。
【0053】
なお、この装飾用フィルム220は、前述の図2に示した装飾用フィルム100とは異なり、剥離層110が存在しないこと、すなわち装飾用フィルム220は、粘着層130が透明基板210と直接接するようにして、ガラス基板210に貼り付けられていることに留意する必要がある。
【0054】
追加機能膜230は、例えば、前面板200の衝撃破損防止、周囲光の反射防止、電磁波遮蔽、近赤外線遮蔽、色調補正、コントラスト向上、アンチニュートリング、および/または耐擦傷性向上等の機能を得るために設置される。
【0055】
なお、図3の例では、追加機能膜230は、透明基板210のおもて面212Aに配置されている。しかしながら、追加機能膜230は、裏面212Bに設置されても良く、あるいは透明基板210のおもて面212Aおよび裏面212Bの双方に設置されても良い。特に、追加機能膜230を、透明基板210の裏面212Bに設置する場合、装飾用フィルム220と重ねて設置しても良い。また、複数の追加機能膜を積層して設置しても良い。
【0056】
ここで、本発明による前面板200は、実際のディスプレイ装置環境では、透明基板210のおもて面212Aの側が視認者側(前側)となり、透明基板210の裏面212Bの側がパネル側(後側)となるようにして使用される。
【0057】
この場合、前面板200を視認者側(前側)から見たとき、装飾用フィルム100が露出したり、突出したりすることはない。このため、このような使用態様では、従来の装飾用シート10を使用した際に問題となる、視認者側への装飾用シート10の露出による剥離および/または傷発生等の問題、ならびに段差の発生による前面板の美感低下の問題が解消される。
【0058】
なお、このような効果が得られるのは、本発明による装飾用フィルム100では、着色効果のある粘着層130が金属層150よりも視認方向Sからより近い側にあるためである。ここで、もし仮に従来の装飾用シート10を透明基板の裏面に貼り付けて、段差が視認できない前面板を構成しようとしても、この場合、着色層14は、金属光沢層16よりも視認方向Sから遠い側に配置されることになる。従って、この構成では、装飾用シート10から所望の色合いを発現させることは不可能である(単なる反射ミラー調の視覚感が得られる)。
【0059】
(本発明による装飾用フィルムの別の構成)
次に、図5を参照して、本発明による装飾用フィルムの別の構成について説明する。
【0060】
図5は、本発明による装飾用フィルムの別の構成を模式的に示した断面図である。図5に示すように、この装飾用フィルム101は、表層側から、剥離層111、粘着層131、基材層171、金属層151、および保護層191を有する。ただし、保護層191は、必要に応じて設置される層であり、必ずしも設置する必要はない。この装飾用フィルム101の視認方向は、図5において、矢印Sで示されている。
【0061】
この装飾用フィルム101は、図2に示した装飾用フィルム100に比べて、基材層と金属層の順番が逆転した構成となっている。このように構成された装飾用フィルム101においても、前述のような本発明による効果が得られることは、当業者には明らかであろう。
【0062】
(装飾用フィルムを構成する各層について)
次に、図2および図5に示した装飾用フィルムを構成する各層の仕様等について説明する。なお、ここでは、図2に示した装飾用フィルムの構成を例に、各層について説明する。
【0063】
(剥離層110)
剥離層110は、前述のように、装飾用フィルム100の使用の際には、粘着層130を露出させるために剥がされる層である。
【0064】
剥離層110は、例えば、高分子等の有機材料で構成されても良い。剥離層110は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)等で構成され、剥離剤がコーティングされる。剥離層110の厚さは、例えば、6μm〜100μmの範囲であっても良い。
【0065】
(粘着層130)
粘着層130は、前述のように、透明または半透明なマトリクス材料(粘着剤)中に、着色剤が分散されて構成される。この他、粘着層130は、紫外線吸収剤を含んでも良い。
【0066】
マトリクス材料としては、これに限られるものではないが、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ブタジエン系粘着剤、およびウレタン系粘着剤等が使用される。アクリル系粘着剤は、アクリル系単量体単位を主成分として含む重合体である。アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(無水)マレイン酸、(無水)フマル酸、クロトン酸、およびこれらのアルキルエステルが挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸を総称するものとして使用する。(メタ)アクリレートも同様である。
【0067】
着色剤としては、例えば、各色の色素および/または顔料等が使用される。そのような色素および顔料は、市販のものを広く使用することができる。
【0068】
着色剤によって発現される色は、特に限られず、例えば、グレー、紫、茶、赤、緑、黄、オレンジまたは青等である。グレー色、茶色、赤色、緑色、紫色、黄色、オレンジ色、黒色および青色から選ばれる1種以上の着色剤を任意に配合して使用することにより、所望の色合いを発現させることができる。
【0069】
紫外線吸収剤は、装飾用フィルムに照射される紫外線を吸収する役割を有する。紫外線による長期間の照射は、装飾用フィルムの劣化を促進させる要因となる。しかしながら、粘着層130に紫外線吸収剤を添加しておくことにより、このような劣化の問題を有意に抑制することができる。
【0070】
粘着層130の厚さは、10μm〜200μmの範囲であり、15μm〜50μmの範囲であることが好ましい。
【0071】
(金属層150)
金属層150は、反射膜としての役割を有する。金属層150を構成する金属材料は、特に限られない。金属層150は、例えば、金、銀、クロム、アルミニウム、ニッケル、スズ、チタン、またはこれらの合金等であっても良い。
【0072】
金属層150の厚さは、これに限られるものではないが、例えば5nm〜2000nmの範囲であり、30nm〜200nmの範囲であることが好ましい。2000nmを超えると、金属層の強度が低下する可能性があり、逆に、5nm未満の場合、反射効果が低下する可能性がある。
【0073】
金属層150の形成方法おとしては、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。また、金属インキを使用したグラビア印刷やスクリーン印刷などの印刷方法も利用して形成しても良い。
【0074】
(基材層170)
基材層170は、装飾用フィルム100の基礎部分を構成する層である。基材層170を構成する材料は、透明である限り特に限られない。基材層170には、熱硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂等を使用しても良い。例えば、基材層170は、PETまたはTAC(トリアセチルセルロース)等で構成されても良い。
【0075】
基材層170の厚さは、これに限られるものではないが、例えば1μm〜350μmの範囲であり、6μm〜188μmの範囲であることが好ましい。
【0076】
(保護層190)
保護層190は、装飾用フィルム100を外部環境から保護するため、必要に応じて設置される。保護層190は、これに限られるものではないが、例えば、PET、PP(ポリプロピレン)およびPE(ポリエチレン)等で構成される。
【0077】
保護層190の厚さは、これに限られるものではないが、例えば12μm〜375μmの範囲であり、30μm〜110μmの範囲であることが好ましい。
【0078】
(前面板の構成部材について)
次に、図3および図4に示した本発明による前面板200に含まれる各部材について、簡単に説明する。
【0079】
(透明基板210)
透明基板210の材質は、特に限られないが、透明基板210は、例えば、ガラス基板またはポリカーボネート基板であっても良い。透明基板210としては、透過率が高く、着色が少ないものが望ましい。
【0080】
透明基板210としてガラス基板を使用する場合、例えば、2.5mmの厚さで、可視光透過率Tvが90.2%、可視光反射率Rvが8.2%、ヘイズ(濁度)が0.06%、xy色度座標における色度値がx=0.307、y=0.314のものが使用される。
【0081】
例えば、ガラス基板は、ソーダライムガラス基板または化学強化ガラス基板であっても良い。
【0082】
透明基板210の外周部は、所定の形状に切断されており、通常の場合、この外周部は、面取り加工されている。なお、透明基板210の板厚は、特に限られないが、例えば、0.3mm〜20mmの範囲であっても良い。
【0083】
(追加機能膜230)
追加機能膜230は、必要に応じて設置される。追加機能膜230は、前述のように、衝撃破損防止、周囲光あるいは表示パネルからの光の反射防止、電磁波遮蔽、近赤外線遮蔽、色調補正、および/または耐擦傷性向上等の機能を得るために設置される。
【0084】
追加機能膜230は、例えば樹脂製の膜を、透明基板210のおもて面212Aおよび/または裏面212Bに貼り付けることにより形成されても良い。あるいは、追加機能膜230は、蒸着法、スパッタ法、またはCVD法等の薄膜形成法を適用して形成しても良い。
【0085】
追加機能膜230の構成材料は、所望の機能を発揮することができる限り、特に限られず、また厚さおよび形状等は、用途に応じて適宜選択される。
【0086】
(本発明によるディスプレイ装置)
前述のような本発明による前面板200は、各種FPD装置、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、および有機エレクトロルミネッセントディスプレイ(OELD)等のディスプレイ装置に適用することができる。
【0087】
図6には、そのようなディスプレイ装置の構成の一例を概略的に示す。
【0088】
図6に示すように、ディスプレイ装置300は、本発明による前面板201を備え、さらに、この前面板200に隣接して、または直接接するように設置された表示パネル350を有する。
【0089】
前面板201は、透明基板211のおもて面に設置された追加機能膜231と、透明基板211の裏面の少なくとも一部に設置された装飾用フィルム221とを有する。前面板201は、第1の表面240Aおよび第2の表面240Bを有し、第1の表面240Aの側が前側となり、第2の表面240Bの側が後側となるように使用される。
【0090】
表示パネル350は、例えば、LCD、PDP、およびOELD用のものであっても良い。表示パネル350の構成は、特に限られるものではなく、従来の構造のものを広く提供することができる。なお、表示パネル350は、前面板200の第2の表面240Bの側(すなわち前面板200の後側)と対面するようにして、配置される。
【0091】
前述のように、装飾用フィルム221に含まれる粘着層は、従来の着色層と粘着層の役割を兼ねている。また、この粘着層は、一定の範囲内の均一な膜厚を有し、このため、装飾用フィルム221において、色むらの発生は有意に抑制されている。従って、ディスプレイ装置300では、装飾用フィルム221の存在部分に、所望の色合いを発現させることができる。
【0092】
また、このように構成されたディスプレイ装置300では、前面板201の前側である第1の表面240A側に、装飾用フィルム221が露出されていない。また、ディスプレイ装置300では、視認者側に向かって、装飾用フィルム221が突出していない。このため、装飾用フィルム221が剥離したり、傷ついたりする問題が有意に抑制されるとともに、装飾用フィルム221の段差によって、ディスプレイ装置300の美感が損なわれるという問題が解消される。従って、高いデザイン性および/または装飾性を有するディスプレイ装置300を得ることができる。
【0093】
(本発明による前面板の製造方法)
次に、図7を参照して、図3に示したような本発明による前面板200を製造する方法の一例について、説明する。
【0094】
図7に示すように、本発明による前面板の製造方法は、
(a)おもて面および裏面を有する透明基板を準備するステップ(ステップS110)と、
(b)装飾用フィルムを準備するステップであって、
前記装飾用フィルムは、
第1および第2の側を有し、前記第1の側に金属層が設置された基材層と、
第1および第2の表面を有する粘着層であって、前記第2の表面が前記基材層に近い側となるようにして、前記基材層の上方に配置された粘着層と、
を有し、
前記粘着層は、透明または半透明なマトリクス材料中に、着色剤が分散されて構成され、
前記粘着層は、10μm〜200μmの範囲の厚さを有するステップ(ステップS120)と、
(c)前記透明基板の裏面の少なくとも一部に、前記透明基板と前記粘着層とが密着するようにして、前記装飾用フィルムを貼り付けるステップ(ステップS130)と、
を有する。以下、各ステップについて説明する。
【0095】
(ステップS110)
まず、透明基板210が準備される。透明基板210は、透明な材料である限り特に限られず、例えば、ガラス基板およびポリカーボネート基板等を使用しても良い。
【0096】
ガラス基板を使用する場合、ガラスの組成は、特に限られず、ガラス基板は、例えばソーダライムガラス製または化学強化ガラス製の基板であっても良い。
【0097】
なお、透明基板210の端部は、面取りされても良い。
【0098】
(ステップS120)
次に、装飾用フィルム220が準備される。装飾用フィルム220は、前述の図2および図5に示したような構成であっても良い。
【0099】
ここでは、一例として、図2に示した構成の装飾用フィルム100を製造する方法について説明する。ただし、図5に示した構成の装飾用フィルム101を製造する場合も、以下に示した方法が同様に適用され得ることは、当業者には明らかである。
【0100】
まず、一つの表面(以下、「第1の側」と称する)に金属層150が設置された基材層170が準備される。基材層170は、例えば、前述の(基材層170)の欄で示した材料で構成されても良い。
【0101】
金属層150は、いかなる方法で、基材層170の第1の側に設置しても良い。通常の場合、金属層150は、真空蒸着法、PVD(物理気相成膜)法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の、従来の成膜方法の一つを利用して成膜される。
【0102】
次に、剥離層110と一体化された粘着層130が形成される。
【0103】
粘着層130は、例えば、以下の方法で形成しても良い。
【0104】
まず、所望の色の発色が可能な着色剤を含む溶剤を調製する。溶剤としては、通常の場合、MEK(メチルエチルケトン)、酢酸エチル、またはトルエン等の有機溶剤が使用される。また、着色剤としては、市販の色素および/または顔料等を使用しても良い。発色の色としては、特に限られないが、例えば、グレー色、茶色、赤色、緑色、および青色等がある。通常、着色剤は、溶剤中に添加した後、十分に撹拌、混合される。
【0105】
一方、粘着層130のマトリクス材料としては、例えば、アクリル系粘着剤等が使用される。
【0106】
前述の溶剤中に、このアクリル系粘着剤を溶解させて溶液を調製する。次に、この溶液を、例えば、バーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ロールコート法などのような従来の塗膜形成装置で、被塗布シート上に均一に塗布し、これを乾燥させることにより、粘着層130を得ることができる。ここで、被塗布シートとして、後に剥離層130となる部材を使用しておけば、剥離層110と一体化された粘着層130を作製することができる。
【0107】
前述のように、本発明では、粘着層130は、最小でも数ミクロンオーダの厚さを有する。このレベルの厚さ範囲では、従来の一般的な塗膜形成装置を使用した場合であっても、均一な層を形成することができる。なお、通常の場合、粘着層130の厚さは、5μm〜200μmの範囲である。
【0108】
次に、金属層150が設置された基材層170と、剥離層110を上部に有する粘着層130とが積層される。金属層150の上部に粘着層130が接するようにして、基材層170と粘着層130を重ね合わせることにより、基材層170〜剥離層110までが図2に示す順番で構成された積層体を得ることができる。
【0109】
さらに、基材層170の露出表面(以下、「第2の側」と称する)に、保護層190を設置することにより、図2に示した構成の装飾用フィルム100を作製することができる。保護層190は、例えば、積層体の基材層170の露出表面に、樹脂膜等をラミネート処理することにより設置されても良い。
【0110】
ただし、保護層190は、予め(金属層150を設置する前、あるいは粘着層130と積層する前に)基材層170の第2の側に設置しておいても良い。
【0111】
なお、以上の説明は、単なる一例であって、装飾用フィルム100は、その他の方法で作製しても良い。
【0112】
(ステップS130)
次に、前記ステップS110で準備した透明基板210の裏面212Bの少なくとも一部に、前記ステップS120で作製した装飾用フィルム220が貼り付けられる。
【0113】
透明基板210に装飾用フィルム220を貼り付ける際には、剥離層110、111が取り外され、粘着層130、131が露出した状態にされる。その後、粘着層130、131を、透明基板210の裏面212Bの所定の位置に密着させることにより、透明基板210の裏面212Bの所定の一位に、装飾用フィルム220が設置された前面板100を製造することができる。
【0114】
なお、必要な場合、透明基板210のおもて面212Aおよび/または裏面212Bに、追加機能層230を設置しても良い。
【0115】
ここで、装飾用フィルムを透明基板の裏面の外周部分全体に、枠状に貼り付ける場合、図8および図9に示すような方法を採用することが好ましい。
【0116】
図8および図9には、装飾用フィルム700を、透明基板810の裏面813Bの外周部分815に枠状に貼り付ける際の工程を概略的に示す。特に、図8には、装飾用フィルム700の斜視図(左欄)および断面図(右欄)が示されており、図9には、裏面813Bに装飾用フィルムが設置された透明基板810の断面が示されている。
【0117】
なお、ここでは、装飾用フィルム700は、図2に示した構成を有すると仮定する。また、図8および図9では、明確化のため、いくつかの部材の厚さが誇張して記載されていることに留意する必要がある。
【0118】
まず、表層から順に、剥離層115、粘着層135、金属層155、基材層175、および保護層195が積層された装飾用フィルム700を準備する。この装飾用フィルム700は、被設置対象である透明基板810の裏面813Bと略同等の寸法(縦および横の寸法)を有する。
【0119】
次に、この装飾用フィルム700に対して、厚さ方向に沿って切り込み線715を形成する(図8(A))。ここで、切り込み線715は、後に透明基板810の裏面813Bに貼り付けられることになる装飾用フィルム700の形状が得られるように形成される。すなわち、切り込み線715は、装飾用フィルム700の各外端面から、これと平行な最近接の切り欠き線715までのそれぞれの幅L1〜L4(図8(A)参照)が、透明基板810の外周領域に貼り付けられる装飾用フィルム700のそれぞれの幅(例えば、図9(B)のL1'およびL2'参照)と等しくなるようにして形成される。また、切り込み線715の深さは、図8(A)の右側に示すように、基材層175までは貫通するものの、保護層195は貫通しないように調整される。図8では便宜上、カッター刃としてナイフ状に描いているが、トムソン刃が好適に用いられる。
【0120】
次に、図8(B)に示すように、切り込み線715を有する装飾用フィルム700において、最上層の剥離層115の外周部分115Sが、中央部分115Cを残した状態で剥離される。
【0121】
これにより、図8(C)に示すように、外周部分にだけ粘着層135が露出した組立体705が得られる。
【0122】
次に、この組立体705は、透明基板810の裏面813Bに配置される。その際には、組立体705は、図9(A)に示すように、組立体705の粘着層135の露出した周囲部分が、丁度、透明基板810の裏面813Bの外周部分に密着するようにして配置される。
【0123】
次に、図9(B)に示すように、組立体705の下側の保護層195が、透明基板810から遠ざかる方向(矢印Pの方向)に引っ張られる。
【0124】
ここで、前述のように、組立体705において、切り込み線715は、基材層175までは貫通するものの、保護層195は貫通しないように形成されている。このため、この操作により、剥離層の中央部分115Cを含む組立体705の中心部分707が透明基板810から剥がされる。一方、組立体705の残りの外周部分709は、粘着層135の粘着性により、透明基板810の裏面813Bに密着した状態が維持される。従って、最終的に、透明基板810の裏面813Bの外周部分にのみ、組立体の外周部分709、すなわち装飾用フィルムが配置された前面板を製造することができる。このとき、仮に透明基板810と組立体の外周部分709の間に気泡が残った場合には、加圧処理を行うことで気泡を除去することができる。
【0125】
このような方法では、透明基板に装飾用フィルムを貼り付ける段階では、装飾用フィルムの強度を維持する骨格部分が十分に残存しているため、透明基板の外周部分に装飾用フィルムを貼り付ける際に、装飾用フィルムが折れ曲がったり、装飾用フィルムにシワやたるみが発生したりして、適正な貼り付け状態が得られなくなるという問題が抑制される。
【実施例】
【0126】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0127】
(実施例1)
以下の方法により、ガラス基板の一方の表面に装飾用フィルムを貼り付けて、前面板の外周部分を模擬したサンプルを作製した。
【0128】
(装飾用フィルムの作製)
まず、粘着層(および剥離層)を調製した。
【0129】
メチルエチルケトン14質量部に、色素Aを0.04質量部、色素Bを0.05質量部、色素Cを0.02質量部添加し、さらに紫外線吸収剤(TINUVIN479:チバジャパン製)を2.63質量部添加し、この溶剤をミキサーで10分間撹拌した。得られた溶液に、アクリル系粘着剤(固形分濃度30%)を70質量部と、架橋剤(イソシアネート系)0.56質量部とを加え、得られた混合溶液をさらにミキサーで10分間撹拌した。
【0130】
なお、色素Aとしては、緑色色素(日本化薬製:GREEN A−B)を使用し、色素Bとしては、赤色色素(日本化薬製:Red R20)を使用し、色素Cとしては、青色色素(日本化薬製:Blue B20)を使用した。
【0131】
次に、ダイコート法により、この混合溶液を、剥離層用のPETシート(厚さ75μm)上に塗布し、これを100℃で5分間乾燥させた。これにより、一方の表面に剥離層が設置された粘着層を得た。
【0132】
一方、これとは別に、真空蒸着法を用いて、PET基材(厚さ100μm)上に、約70nmの厚さのアルミニウム金属層を蒸着した。
【0133】
このアルミニウム金属層付きPET基材と、前述の剥離層付き粘着層を連続的に貼り合わせた。この際には、粘着層の表面が、アルミニウム金属層と接するようにして、PET基材と粘着層とを積層した。これにより、幅1000mmの連続したロール状装飾用フィルムを得た。粘着層の厚さは、約25μmであった。前述のロール状装飾用フィルムをトムソン刃を用いて、縦590mm×横990mmの寸法に切り取った。さらに、前述の切り取った装飾用フィルムの中心部をトムソン刃を用いて、縦530×横930mmに打ち抜き、これを除去することにより、幅30mmの額縁状の装飾フィルムを作製した。
【0134】
(サンプルの作製)
次に、縦600mm×横1000mm×厚さ2.5mmのガラス基板を準備した。また、前述の額縁状の装飾用フィルムの剥離層を剥がし、このガラス基板の一方の表面に、装飾用フィルムを貼り付けた。これにより、ガラス基板の周辺部に幅30mmの額縁状装飾が施された実施例1に係るサンプルが得られた。
【0135】
(評価)
このようにして得られた実施例1に係るサンプルを、装飾用フィルムが貼り付けられていない側から、室内(蛍光灯照明環境下)で観察した。
【0136】
その結果、サンプルは、ミラー感が適度に抑えられた青みのある光沢グレー色を呈した。
【0137】
図10には、実施例1に係るサンプルの表面写真を示す。この図からわかるように、実施例1に係るサンプルにおいて、色むらは観察されなかった。
【0138】
(実施例2)
実施例1と同様の方法により、実施例2に係るサンプルを作製し、実施例1と同様の方法で評価した。ただし、この実施例2では、粘着層は、以下の方法で作製した。
【0139】
メチルエチルケトン19質量部に、色素Aを0.04質量部、色素Bを0.11質量部、色素Cを0.005質量部添加し、さらに紫外線吸収剤(TINUVIN479:チバジャパン製)を2.63質量部添加し、この溶剤をミキサーで10分間撹拌した。得られた溶液に、アクリル系粘着剤を30質量部と、架橋剤(イソシアネート系)0.56質量部とを加え、得られた混合溶液をさらにミキサーで10分間撹拌した。
【0140】
次に、ダイコート法により、この混合溶液を、剥離層用のPETシート(厚さ75μm)上に塗布し、これを100℃で5分間乾燥させた。これにより、剥離層付きの粘着層を得た。
【0141】
その他の作製条件は、実施例1の場合と同様である。
【0142】
観察の結果、実施例2に係るサンプルは、メタリック感が抑えられた光沢のある紫色を呈した。また、色むらは観察されなかった。
【0143】
(実施例3)
実施例1と同様の方法により、実施例3に係るサンプルを作製し、実施例1と同様の方法で評価した。ただし、この実施例3では、装飾用フィルムを構成する際に、アルミニウム金属層付きPET基材の露出面側に、粘着層が接するようにして、PET基材と剥離層付き粘着層とを積層した。
【0144】
その他の作製条件は、実施例1の場合と同様である。
【0145】
観察の結果、実施例3に係るサンプルは、実施例1の場合と同様の、メタリック感が抑えられた青みのある光沢グレー色を呈した。また、色むらは観察されなかった。
【0146】
(比較例1)
以下の方法により、比較例1に係るサンプルを作製した。
【0147】
まず、真空蒸着法を用いて、PET基材(厚さ100μm)上に、厚さ約70nmのアルミニウム金属層を蒸着した。
【0148】
次に、このPET基材のアルミニウム金属層上に、着色層を設置した。
【0149】
着色層の原料には、ポリウレタン樹脂を含むMEK、酢酸エチル、トルエン、およびIPA(イソプロピルアルコール)の混合溶液を使用し、これに色素Aを0.25質量部、色素Bを0.71質量部、色素Cを0.03質量部添加したものを用いた。
【0150】
バーコート法により、この混合溶液を、PET基材のアルミニウム金属層上に塗布した後、これを110℃で20秒間乾燥させた。これにより、幅1000mm×厚さ104μmの連続したロール状装飾用フィルムを得た。なお、着色層の厚さは、3μmを目標とした。一方で、色素を含有させなかったこと以外は実施例1と同様の手法で、一方の表面に剥離層が設置された色素を含まない透明粘着層(厚さ約25μm)を作製し、前述のロール状装飾用フィルムに、連続的に貼り合わせた。この際には、粘着層の表面が、着色層と接するようにして、ロール状装飾用フィルムと粘着層とを積層した。これを用いて、実施例1と同様の手法にて、幅30mmの額縁状装飾フィルムを作製した。
【0151】
次に、縦600mm×横1000mm×厚さ2.5mmのガラス基板を準備した。また、前述の装飾用フィルムの剥離層を剥がし、このガラス基板の一方の表面に、装飾用フィルムを貼り付けた。この際には、粘着層の側が、ガラス基板と対面するようにして、装飾用フィルムをガラス基板に貼り付けた。
【0152】
このような方法で、ガラス基板の周辺部に幅30mmの額縁状装飾が施された比較例1に係るサンプルを作製した。
【0153】
次に、この比較例1に係るサンプルを、装飾用フィルム側から、室内(蛍光灯照明環境下)で観察した。
【0154】
観察の結果、比較例1に係るサンプルは、メタリック感の抑えられた紫色を呈した。しかしながら、比較例1に係るサンプルには、線状の色むらが観察された。
【0155】
図11には、比較例1に係るサンプルの表面写真を示す。この図からも、比較例1に係るサンプルには、図の左右方向に伸びる線状の色むらが認められることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明は、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、およびモバイルディスプレイ等のFPD装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0157】
10 従来の装飾用シート
12 透明ラミネート層
14 着色層
16 金属光沢層
18 基材層
20 粘着層
22 剥離層
100、101 本発明による装飾用フィルム
110、111、115 剥離層
115C 中央部分
115S 外周部分
130、131、135 粘着層
150、151、155 金属層
170、171、175 基材層
190、191、195 保護層
200、201 本発明による前面板
210、211 透明基板
212A おもて面
212B 裏面
220、221 装飾用フィルム
230、231 追加機能膜
240A 前面板の第1の表面
240B 前面板の第2の表面
300 ディスプレイ装置
350 表示パネル
700 装飾用フィルム
705 組立体
707 組立体の中心部分
709 組立体の外周部分
715 切り込み線
810 透明基板
813B 裏面
815 外周部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ装置の前面板に使用される装飾用フィルムであって、
第1および第2の側を有し、前記第1の側に金属層が設置された基材層と、
第1および第2の表面を有する粘着層であって、前記第2の表面が前記基材層に近い側となるようにして、前記基材層の上方に配置された粘着層と、
を有し、
前記粘着層は、透明または半透明なマトリクス材料中に、着色剤が分散されて構成され、
前記粘着層は、10μm〜200μmの範囲の厚さを有し、
当該装飾用フィルムを、前記粘着層の第1の表面側から見たとき、前記金属層からの光の反射により、所望の色合いが発現することを特徴とする装飾用フィルム。
【請求項2】
前記金属層は、前記基材層と前記粘着層の間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の装飾用フィルム。
【請求項3】
さらに、前記粘着層の前記第1の表面側に、剥離層が設置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の装飾用フィルム。
【請求項4】
さらに、当該装飾用フィルムの前記粘着層から遠い方の最表面に、保護層が設置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の装飾用フィルム。
【請求項5】
前記粘着層のマトリクス材料は、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ブタジエン系粘着剤、およびウレタン系粘着剤からなる群から選定された少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の装飾用フィルム。
【請求項6】
前記着色剤は、グレー色、茶色、赤色、緑色、紫色、黄色、オレンジ色、黒色、および青色から選ばれる1種以上の着色剤であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の装飾用フィルム。
【請求項7】
前記金属層は、金、銀、クロム、アルミニウム、ニッケル、スズ、チタン、およびこれらの少なくとも一つを含む合金からなる群から選定された材料を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の装飾用フィルム。
【請求項8】
おもて面および裏面を有する透明基板を含む、ディスプレイ装置用の前面板であって、
前記透明基板の前記おもて面は、当該前面板の前側となり、前記透明基板の前記裏面は、当該前面板の後側となり、
前記透明基板の裏面の少なくとも一部には、装飾用フィルムが設置され、
前記装飾用フィルムは、
第1および第2の側を有し、前記第1の側に金属層が設置された基材層と、
第1および第2の表面を有する粘着層であって、前記第2の表面が前記基材層に近い側となるようにして、前記基材層の上方に配置され、前記透明基板の裏面と密着した粘着層と、
を有し、
前記粘着層は、透明または半透明なマトリクス材料中に、着色剤が分散されて構成され、
前記粘着層は、10μm〜200μmの範囲の厚さを有し、
当該前面板を前側から見たとき、前記装飾用フィルムには、前記金属層からの光の反射により、所望の色合いが発現することを特徴とする前面板。
【請求項9】
前記装飾用フィルムは、前記透明基板の裏面の外周部分に設置されていることを特徴とする請求項8に記載の前面板。
【請求項10】
さらに、前記透明基板のおもて面の少なくとも一部には、追加機能膜が設置されていることを特徴とする請求項8または9に記載の前面板。
【請求項11】
表示パネルと、該表示パネルの前方に設置された前面板とを有するディスプレイ装置であって、
前記前面板は、請求項8乃至10のいずれか一つに記載の前面板であり、
前記前面板は、該前面板の後側が前記表示パネルと対面するように設置されることを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項12】
前記表示パネルは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、および有機ELディスプレイのうちのいずれか一つを有することを特徴とする請求項11に記載のディスプレイ装置。
【請求項13】
ディスプレイ装置用の前面板の製造方法であって、
(a)おもて面および裏面を有する透明基板を準備するステップと、
(b)装飾用フィルムを準備するステップであって、
前記装飾用フィルムは、
第1および第2の側を有し、前記第1の側に金属層が設置された基材層と、
第1および第2の表面を有する粘着層であって、前記第2の表面が前記基材層に近い側となるようにして、前記基材層の上方に配置された粘着層と、
を有し、
前記粘着層は、透明または半透明なマトリクス材料中に、着色剤が分散されて構成され、
前記粘着層は、10μm〜200μmの範囲の厚さを有する、
ステップと、
(c)前記透明基板の裏面の少なくとも一部に、前記透明基板と前記粘着層とが密着するようにして、前記装飾用フィルムを貼り付けるステップと、
を有し、
前記透明基板の前記おもて面側から見たとき、前記装飾用フィルムには、前記金属層からの光の反射により、所望の色合いが発現することを特徴とする製造方法。
【請求項14】
前記金属層は、前記基材層と前記粘着層の間に配置されることを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記装飾用フィルムは、前記粘着層から遠い方の最表面に、保護層を有することを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記(c)のステップは、
(C1)前記透明基板の裏面の外周全体を覆うようにして、前記装飾用フィルムを貼り付けるステップを有することを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記装飾用フィルムは、前記粘着層上に配置された剥離層を有し、
前記装飾用フィルムは、前記透明基板の裏面とほぼ等しい縦横寸法を有し、
前記(C1)のステップは、
(C2)前記装飾用フィルムの厚さ方向に、前記装飾用フィルムの、前記透明基板の裏面に貼り付けられる領域に相当する外周部分に沿って、切り込み線を入れるステップであって、前記切り込み線は、前記基材層は貫通するが、前記保護層は貫通しないステップと、
(C3)前記剥離層を取り外すステップであって、前記剥離層は、前記切り込み線で囲まれた中央部分を残したまま、外周部分のみが取り外されるステップと、
(C4)前記透明基板と前記粘着層の露出部分とが密着するようにして、前記装飾用フィルムを、前記透明基板の裏面の外周全体に貼り付けるステップと、
(C5)前記保護層を取り外すステップであって、これにより、前記透明基板と、前記粘着層とが密着した部分にのみ、前記保護層および剥離層を除く前記装飾用フィルムが残存するステップと、
を有することを特徴とする請求項16に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−226163(P2012−226163A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94334(P2011−94334)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】