説明

補助光源付き高圧放電灯用点灯装置の始動回路、該始動回路を用いた点灯装置並びに該点灯装置を用いた光源装置

【課題】点灯装置を小型化・低コスト化することのできる補助光源付き高圧放電灯用点灯装置の始動回路を提供する。
【解決手段】主点灯回路60と、高圧放電灯12および補助光源14とを電気的に接続する一方の出力ライン76においてダイオード80を順方向に取り付け、ダイオード80のカソード側にコンデンサ86の一端を接続し、昇圧トランス84の二次側巻線90の一端をダイオード80のアノード側に接続し、他端をコンデンサ86の他端に接続し、昇圧トランス84の一次側巻線88、89と協働して高周波電圧を発生させる高周波電圧発生回路82を設けて始動回路62を構成することにより、上記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助光源付き高圧放電灯を安定して始動点灯させることができる補助光源付き高圧放電灯用点灯装置の始動回路、および該始動回路を用いた点灯装置、並びに該点灯装置を用いた光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶プロジェクタや露光装置等の光学装置に用いられる光源装置には、主として高圧放電灯が使用されている。近年、高圧放電灯には、最初の点灯時間(コールドスタート)の短縮および再点灯時間(ホットスタート)の短縮、並びに点灯始動に要する電圧の低減といった要請に応えるために補助光源が設けられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の光源装置1に設けられた補助光源3は、図9に示すように、放電によって励起されたときに紫外線を発生する物質M2が封入された放電空間7aをその内部に有する放電容器7と、放電容器7を介して高圧放電灯2の一方の封止部5bに埋設された一方の金属箔6bに対向して配設された始動電極8とで構成されており、一方の金属箔6bおよび始動電極8の間に高周波の高電圧を印加するための導電ワイヤ9が始動電極8に電気的に接続されている。このように、両方の電極が放電空間7a外に配置されているものを無電極タイプという。
【0004】
この光源装置1では、高圧放電灯2の点灯始動に際し、一方の金属箔6bおよび始動電極8の間に「高周波の高電圧」を印加する。すると、一方の金属箔6bおよび始動電極8の間で放電容器7の放電空間7aを介して誘電体バリア放電が生じ、この誘電体バリア放電によって励起された放電空間7aの物質M2が紫外線UVを発生する。そして、この紫外線UVが高圧放電灯2の発光部5a内に封入された発光物質M1を照射することによって当該発光物質M1がイオン化される。これにより主放電用電極6a間の放電が促進され、より低い印加電圧で高圧放電灯2が点灯始動する。
【0005】
上述した「無電極タイプ」の補助光源を点灯するためには、補助光源に高周波で高い電圧を印加して容量結合で励起する必要があり、このような「高周波で高い電圧」を発生させる種々の高圧放電灯用点灯装置が開発されている(例えば、特許文献2)。
【0006】
特許文献2の高圧放電灯用点灯装置100は、図10に示すように、高圧放電灯102に安定化電力を供給する給電回路104およびインバータ106が、一方の出力ライン108および他方の出力ライン110を介して高圧放電灯102に接続されており、一方の出力ライン108には、トランス112の二次側巻線114が取り付けられている。また、トランス112の一次側巻線116は、コンデンサ118と互いに並列に接続されて並列共振回路が構成されており、一次側巻線116およびコンデンサ118には、周期電圧印加手段120から所定の周波数の電圧が印加される。つまり、トランス112と、コンデンサ118と、周期電圧印加手段120とで高圧放電灯102の始動回路122が構成されている。
【0007】
高圧放電灯102を始動する際には、周期電圧印加手段120から一次側巻線116およびコンデンサ118(すなわち、並列共振回路)に対して周期的な電圧が印加される。周期電圧印加手段120から印加される電圧の周波数に対し、当該並列共振回路の共振周波数が基本波共振もしくは高次共振の関係になるとき、並列共振回路に共振電流が流れ、一次側巻線116には高い電圧が発生する。一次側巻線116に生じた高い電圧により、二次側巻線114には、巻数比(一次側巻線116の巻数と二次側巻線114の巻数との比)に応じて昇圧されたより高い電圧が発生する。
【0008】
この二次側巻線114に発生した高い電圧が給電回路104およびインバータ106からの出力電圧に重畳された上で高圧放電灯102に印加されることにより、高圧放電灯102に「高周波で高い電圧」を印加することができる。
【特許文献1】特開2003−203605号公報
【特許文献2】特開2007−109510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、特許文献2の高圧放電灯用点灯装置100には、以下のような問題があった。すなわち、高圧放電灯用点灯装置100では、トランス112の二次側巻線114が出力ライン108に取り付けられており、この二次側巻線114には定常点灯時において高圧放電灯102の大きな定格電流が流れることになる。このため、トランス112には、大電流に耐えられるような二次側巻線114を有する大型で高価なものを使用しなければならず、その結果、高圧放電灯用点灯装置100が大型化、高コスト化するという問題があった。
【0010】
本発明は、このような従来技術の問題に鑑みて開発されたものであり、補助光源付き高圧放電灯を安定して始動点灯させることができるとともに、安価かつ小型のトランスを使用して点灯装置を小型化・低コスト化することのできる補助光源付き高圧放電灯用点灯装置の始動回路、該始動回路を用いた補助光源付き高圧放電灯用点灯装置並びに該補助光源付き高圧放電灯用点灯装置を用いた光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載した発明は、「直流電圧を発生させる主点灯回路60と、高圧放電灯12および補助光源14とを電気的に接続する一対の出力ライン76,78における一方の出力ライン76において順方向に取り付けられたダイオード80、
一端が前記ダイオード80のカソード側に接続されたコンデンサ86、
一次側巻線88,89と、一端が前記ダイオード80のアノード側あるいは他方の前記出力ライン78に接続され、他端が前記コンデンサ86の他端に接続された二次側巻線90とを有する昇圧トランス84、および
前記一次側巻線88,89と協働して連続的な高周波電圧を発生させる高周波電圧発生回路82を備えることを特徴とする補助光源付き高圧放電灯用点灯装置の始動回路62」である。
【0012】
この始動回路62によれば、図1に示すように、直流点灯型の高圧放電灯12の始動に際し、高周波電圧発生回路82が動作して一次側巻線88の両端に高周波電圧が発生し、当該高周波電圧は一次側巻線88と二次側巻線90との巻数比に応じて昇圧され、昇圧された高周波電圧v1が二次側巻線90の両端に生じる。この高周波電圧v1は、図2に示すように、「高周波の高電圧(交流)」である。
【0013】
二次側巻線90に高周波電圧v1が生じると、コンデンサ86の両端には、ダイオード80との整流作用により、高周波電圧v1の正の半サイクルの領域をコンデンサ86が充電して直流電圧v2が生じる。
【0014】
一方、昇圧トランス84の二次側巻線90は、その一端が、一方の出力ライン76において順方向(主点灯回路60から高圧放電灯12に向かう電流、あるいは高圧放電灯12から主点灯回路60に戻る電流を通過させる方向。以下同じ。)に取り付けられたダイオード80のアノード側に接続され、他端がコンデンサ86を介してダイオード80のカソード側に接続されている。このため、ダイオード80の両端には、図3に示すような、二次側巻線90に生じる高周波電圧v1とコンデンサ86に生じる直流電圧v2との合成電圧v3(直流+交流)が生じる。ここで、高周波電圧v1の正の半サイクルの電圧波高値と直流電圧v2の電圧値とはほぼ等しい(=600V)ことから、合成電圧v3は、正の領域内のみ(より厳密には、下限値=0Vとなる)で変動する高周波電圧となる。
【0015】
ダイオード80の両端に合成電圧v3が生じることにより、高圧放電灯12および補助光源14には、ダイオード80の両端に生じる合成電圧v3(=始動用電圧v3)と主点灯回路60からの出力電圧v0との合成電圧v4(直流+交流)が印加されることになる(図4参照)。
【0016】
この合成電圧v4は、直流である出力電圧v0に対して高周波の合成電圧v3を重畳させたものであるから、正の領域内で連続して変動する高周波成分を有する。このため、図5に示すような、片方の電極だけが封止容器40内に配設された片電極タイプの補助光源14(もちろん、上述した無電極タイプであってもよい)の内部電極42と外部電極44との間に容量結合を生じさせて補助光源14を発光させることができる。
【0017】
また、高圧放電灯12の主放電用電極34a,34b間には、上述した合成電圧v4の高周波成分のみならず、直流成分v4’も作用することになる。
【0018】
このように、高いピーク電圧を有する合成電圧v4の高周波成分とともに該合成電圧v4の直流成分v4’が高圧放電灯12の主放電用電極34a,34b間に印加され、さらに補助光源14から放出された光Lに含まれる紫外線が高圧放電灯12の発光管26に封入された発光物質30や主放電用電極34を照らすことにより、主放電用電極34a、b間における絶縁破壊が容易に発生する。したがって、始動回路62によれば、高圧放電灯12の始動点灯を容易かつ安定的に行うことができる。
【0019】
また、昇圧トランス84の二次側巻線90はコンデンサ86に対して直列に接続されている。このため、主点灯回路60からの直流電流は、定常点灯時において常にダイオード80を通って高圧放電灯12に供給され、昇圧トランス84の二次側巻線90やコンデンサ86を通過しない。このため、二次側巻線90を大電流に耐えられるようなものにする必要がなく、小型で安価な昇圧トランス84を使用することができる。
【0020】
加えて、上述した特許文献2の高圧放電灯用点灯装置100では、トランス112の二次側巻線114に生じた高周波電圧が、そのまま給電回路104およびインバータ106からの出力電圧に重畳された上で高圧放電灯102に印加されるのに対し、本発明では、主点灯回路60からの出力電圧v0に、昇圧トランス84の二次側巻線90に生じた高周波電圧v1と整流された直流電圧v2との合成電圧v3が重畳されて高圧放電灯12や補助光源14に印加されるので、高圧放電灯12や補助光源14に対する印加電圧が特許文献2の高圧放電灯用点灯装置100よりも高くなり、高圧放電灯12の始動特性をさらに改善することができる。
【0021】
請求項2に記載の発明は、交流点灯型の高圧放電灯12’用の始動回路62’に関するものであり、「交流電圧を発生させる主点灯回路60’と、高圧放電灯12’および補助光源14とを電気的に接続する一対の出力ライン76,78における一方の出力ライン76において順方向に取り付けられたダイオード80、
一端が前記ダイオード80のカソード側に接続されたコンデンサ86、
一次側巻線88,89と、一端が前記ダイオード80のアノード側あるいは他方の前記出力ライン78に接続され、他端が前記コンデンサ86の他端に接続された二次側巻線90とを有する昇圧トランス84、
前記一次側巻線88,89と協働して連続的な高周波電圧を発生させる高周波電圧発生回路82、および
前記高圧放電灯12’が始動点灯した後、前記ダイオード80の両端を短絡した状態を維持する短絡スイッチ98を備える」ことを特徴とする。
【0022】
この発明の構成は、請求項1とほぼ同じであるが、高圧放電灯12’が始動点灯した後は、該高圧放電灯12’に交流電流を供給するためにダイオード80の両端を短絡する必要があることから、この発明では、ダイオード80の両端を短絡した状態を維持する短絡スイッチ98を備えている点が請求項1の発明と異なる。
【0023】
請求項3に記載の発明は、「直流電圧を発生させる主点灯回路60と、
請求項1に記載の始動回路62とを備える補助光源付き高圧放電灯用点灯装置16」である。
【0024】
また、請求項4に記載の発明は、「交流電圧を発生させる主点灯回路60’と、
請求項2に記載の始動回路62’とを備える補助光源付き高圧放電灯用点灯装置16’」である。
【0025】
また、請求項5に記載の発明は、「高圧放電灯12(12’)と、補助光源14と、請求項3または4に記載の点灯装置16(16’)とを備える光源装置10(10’)」である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、昇圧トランスの二次側巻線に高圧放電灯の定格電流が流れないことから、小型で安価な昇圧トランスを使用して高圧放電灯用点灯装置を小型化、低コスト化することのできる補助光源付き高圧放電灯用点灯装置の始動回路、および該始動回路を用いた補助光源付き高圧放電灯用点灯装置、並びに該補助光源付き高圧放電灯用点灯装置を用いた光源装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を図示実施例に従い、まず、直流点灯型の高圧放電灯12を備える光源装置10(第1の実施例)について説明し、その後、交流点灯型の高圧放電灯12’を備える光源装置10’(第2の実施例)に関し、主として直流型の光源装置10との相違点について説明する。
【0028】
(第1の実施例)
本発明を適用した光源装置10は、図1に示すように、直流点灯型の高圧放電灯12と、補助光源14と、点灯装置16とで構成されている。
【0029】
高圧放電灯12は、図5に示すように、封体容器22と、一対の主放電用マウント24とで構成されている。封体容器22は、内部に空間を有する略球状の発光管26と、発光管26の両側から延びる封止部28とで構成されており、熱膨張および熱収縮がほとんど発生しない石英ガラスで形成されている。
【0030】
発光管26は、その内部空間に不活性ガス(例えばアルゴンやキセノンガス)や、水銀蒸気などの発光物質30、ハロゲンサイクルを生起させるハロゲン化物などが封入されており、当該空間において互いに離隔・対向して配設された主放電用電極34a,34b(後述)間に印加して絶縁破壊による放電を生じさせることにより発光物質30が励起されて発光する。
【0031】
主放電用マウント24は、モリブデンで形成された金属箔32と、一端が発光管26の空間内に配設され、他端が金属箔32の一端に溶接等の手段によって取り付けられたタングステン製の主放電用電極34a,34bと、金属箔32の他端にその一端が取り付けられ、他端が封止部28の外部へ突出する外部リード棒36とで構成されている。直流点灯型の高圧放電灯12の場合、図示したように、陽極側の主放電用電極34aが陰極側の主放電用電極34bに比べて大きく形成される。
【0032】
なお、本実施例では、ダブルエンドの高圧放電灯12を用いているが、シングルエンド型でもよい。また、後述する交流点灯型の高圧放電灯12’では、一対の主放電用電極34c,34dが互いに同じ大きさに形成されている。
【0033】
補助光源14は、封止容器40と、内部電極42と、外部電極44とで構成された片電極タイプのものである。
【0034】
封止容器40は、発光物質46が封入された内部空間48を有する発光部49と、発光部49の一端に設けられた封止部50とで構成されており、高圧放電灯12の封体容器22と同様に、熱膨張および熱収縮がほとんど発生しない石英ガラスで形成されている。
【0035】
内部電極42は、モリブデンで形成され、封止容器40の封止部50に埋設された金属箔52と、一端が封止容器40内に配設され、他端が金属箔52の一端に取り付けられたタングステン製の補助光源用の電極54と、補助光源用の金属箔52の他端にその一端が取り付けられ、他端が補助光源用の封止部50の外部へ突出する外部リード棒56とで構成されている。なお、内部電極42は、補助光源14の小型化のため、全てモリブデンの金属箔で構成してもよい。
【0036】
外部電極44は、封止容器40の発光部49の外面側に配設された金属製の板材である。もちろん、ニッケル線などの導体を封止容器40に巻き付けることによって外部電極44を形成してもよい。
【0037】
なお、高圧放電灯12は、必要に応じてリフレクターに取り付けて使用される。リフレクター58は、その中心に立設された高圧放電灯12の発光管26にて発生した光を前方へ反射させるために設けられる碗状部材である。
【0038】
点灯装置16は、図1に示すように、主点灯回路60と始動回路62とで構成されている。
【0039】
主点灯回路60は、交流電源64(直流電源でもよい)からの電圧を受けて、高圧放電灯12の電圧のばらつきや、経時的な電圧変化などを考慮し、高圧放電灯12の主放電用電極34a,34b間に安定な電力を供給するための回路であり、高圧放電灯12の電圧および点灯電流に応じたパルス幅制御信号を出力するパルス幅制御回路66と、パルス幅制御回路66から出力されたパルス幅制御信号に基づいてスイッチング動作を行うFETスイッチング部68と、FETスイッチング部68から出力されるスイッチングパルス電流を平滑化して安定的に高圧放電灯12に供給するリアクトル70および平滑コンデンサ72と、高圧放電灯12の点灯電流をセンス電圧として検出するセンス抵抗74と、高圧放電灯12および補助光源14に電圧を印加するための出力ライン(プラス側出力ライン)76および出力ライン(ゼロボルトライン)78とを備えている。
【0040】
始動回路62は、高圧放電灯12の点灯始動時において、主点灯回路60からの出力電圧に、補助光源14の内部電極42と外部電極44との間に容量結合を生じさせる「高周波で高い電圧」を重畳させ、これを高圧放電灯12の主放電用電極34a,34b間および補助光源14の内部電極42と外部電極44との間に印加する回路であり、ダイオード80と、高周波電圧発生回路82と、昇圧トランス84と、コンデンサ86とで構成されている。
【0041】
ダイオード80は、主点灯回路60のプラス側出力ライン76において順方向(主点灯回路60から高圧放電灯12や補助光源14に向かう電流を通過させる方向)に取り付けられている。
【0042】
高周波電圧発生回路82は、昇圧トランス84の一次側巻線88,89(後述)と協働し、一次側巻線88の両端に連続して高周波電圧を発生するための回路である。本実施例では、典型的なプッシュプルインバータ回路が用いられており、この高周波電圧発生回路82は、3つのトランジスタQ1〜Q3と、2つの抵抗R1,R2と、1つのコンデンサC1とで構成されている。なお、高周波電圧発生回路82は、このプッシュプルインバータ回路に限られることはなく、連続して高周波電圧を発生する回路であれば、他の回路を使用することもできる。
【0043】
昇圧トランス84は、一次側巻線88,89(一次側巻線89を特に帰還巻線89という)と、二次側巻線90とを有しており、昇圧の度合いは一次側巻線88と二次側巻線90との巻数比によって設定される。
【0044】
二次側巻線90は、その一端がプラス側出力ライン76におけるダイオード80のアノード側に接続され、他端がプラス側出力ライン76におけるダイオード80のカソード側にコンデンサ86を介して接続されている。
【0045】
このような光源装置10の高圧放電灯12を点灯始動する手順について説明する。点灯装置16のスイッチ(図示せず)をオンにすると、主点灯回路60のFETスイッチング部68にてパルス幅制御が行われる。FETスイッチング部68の出力は、リアクトル70および平滑コンデンサ72によって平滑化されてプラス側出力ライン76へ出力電圧v0が出力される。プラス側出力ライン76の出力電圧v0は、高圧放電灯12の始動時において300V程度であり、定常点灯時には、より低い電圧(例えば80V、実際には、電圧のばらつきや変動があるので50V〜120V)に低下し、ほぼ一定電圧となる。
【0046】
主点灯回路60からの出力は、高圧放電灯12の定常点灯時には、高圧放電灯12を通過してゼロボルトライン78を流れ、センス抵抗74に電圧を生成させる。パルス幅制御回路66は、このセンス抵抗74の電圧を検出して高圧放電灯12に流れている点灯電流を検出するとともにプラス側出力ライン76の電圧を検出し、高圧放電灯12に供給される主点灯電力が一定となるようにFETスイッチング部68を制御する。
【0047】
高圧放電灯12の定常点灯時は上述した通りであるが、高圧放電灯12の点灯始動時は、以下のようになる。すなわち、高圧放電灯12の始動に際しては、高周波電圧発生回路82の端子K1に図示しない補助電源から例えば+12Vの電源を供給し、さらに図示しない始動ON/OFF制御回路から端子K2にON信号を供給してトランジスタQ3を導通させると、トランジスタQ1,Q2は、抵抗R1を介して順方向にバイアスされ、導通を開始するが、トランジスタQ1とトランジスタQ2との間の電流増幅率の僅かな差によって、例えばトランジスタQ1が導通すると帰還巻線89の正帰還作用によりトランジスタQ1が完全に導通し、トランジスタQ2は逆バイアスになることから非導通となる。
【0048】
このとき、昇圧トランス84の一次側巻線88のインダクタンスとコンデンサC1とで並列共振が生じ、この並列共振による共振電圧が帰還巻線89に帰還されることにより、トランジスタQ1とトランジスタQ2とは交互に導通、非導通を繰り返す。
【0049】
この結果、一次側巻線88の両端に高周波電圧が発生する。なお、一次側巻線88の両端に発生する高周波電圧の発振周波数は一次側巻線88のインダクタンスとコンデンサC1とによって決められる。
【0050】
昇圧トランス84の一次側巻線88に高周波電圧が発生すると、当該高周波電圧は一次側巻線88と二次側巻線90との巻数比に応じて昇圧され、昇圧された高周波電圧v1が二次側巻線90に生じる。この高周波電圧v1は、図2に示すように、高い周波数(100kHz)の高電圧(波高値600V)である。
【0051】
二次側巻線90に高周波電圧v1が生じると、コンデンサ86の両端には、ダイオード80との整流作用により、高周波電圧v1の正の半サイクル領域を充電して直流電圧v2(=600V)が発生する。
【0052】
一方、昇圧トランス84の二次側巻線90は、その一端が、主点灯回路60のプラス側出力ライン76において順方向に取り付けられたダイオード80のアノード側に接続され、他端がコンデンサ86を介してダイオード80のカソード側に接続されている。このため、ダイオード80の両端には、図3に示すような、二次側巻線90に生じる高周波電圧v1とコンデンサ86に印加される直流電圧v2との合成電圧v3が印加される。高周波電圧v1の電圧波高値と直流電圧v2の電圧値とはほぼ等しい(=600V)ので、合成電圧v3は、正の領域内のみ(より厳密には、下限値=0Vとなる)で変動する波形となる。
【0053】
ダイオード80に合成電圧v3が印加されることにより、最終的に高圧放電灯12および補助光源14には、ダイオード80に印加される合成電圧v3と主点灯回路60からの出力電圧v0との合成電圧v4が印加されることになる(図4参照)。
【0054】
この合成電圧v4は、直流電圧である出力電圧v0に対してダイオード80に印加される合成電圧v3を重畳させたものであるから、正の領域内で連続して変動する高周波成分を有する。このため、図5に示すような、片電極タイプの補助光源14(もちろん、無電極タイプであってもよい)の内部電極42と外部電極44との間に容量結合を生じさせて補助光源14を発光させることができる。
【0055】
実験によれば、周波数が100kHzかつ波高値が600V程度の電圧で片電極タイプの補助光源14を容易に発光させることができた。このとき、ダイオード80の両端には、1200V(波高値=600V×2)が印加されることになるので、ダイオード80には、一般的な大電流用(10A)のダイオード(耐電圧1500V)を1つ用いるだけでよい。このため、始動回路62を小型化、低コスト化することができ、さらに、ダイオードの順方向電圧に起因する電力ロスを極小化することができる。
【0056】
また、高圧放電灯12の主放電用電極34a,34b間には、上述した合成電圧v4の高周波成分のみならず、直流成分v4’も作用することになる。
【0057】
このように、高いピーク電圧を有する合成電圧v4の高周波成分とともに該合成電圧v4の直流成分v4’が高圧放電灯12の主放電用電極34に印加され、さらに補助光源14から放出された光Lに含まれる紫外線が高圧放電灯12の発光管26に封入された発光物質30や主放電用電極34a,34bを照らすことにより、主放電用電極34間における絶縁破壊が容易に発生する。したがって、始動回路62によれば、高圧放電灯12の始動点灯を容易かつ安定的に行うことができる。
【0058】
このようにして高圧放電灯12が点灯始動した後、グロー放電を経てアーク放電に移行する。初期のアーク放電の電圧は低く20V程度である。そして、発光管26内の水銀が蒸発してさらに定常点灯に移行すると、ランプ電圧は次第に上昇して所定の電圧(例えば80V)まで回復し、その後ほぼ一定の電圧となると、図示しない始動ON/OFF制御回路から高周波電圧発生回路82の端子K2にOFF信号が入力され、始動回路62は、その動作を停止する。
【0059】
なお、上記実施例では、昇圧トランス84の二次側巻線90の一端がプラス側出力ライン76におけるダイオード80のアノード側に接続されているが、これに替えて、二次側巻線90の一端をもう一方の出力ラインであるゼロボルトライン78に接続してもよい(図6参照)。
【0060】
また、図7に示すように、ダイオード80をゼロボルトライン78において順方向に取り付け、そして、昇圧トランス84の二次側巻線90の一端をゼロボルトライン78におけるダイオード80のアノード側に接続し、該二次側巻線90の他端を、コンデンサ86を介してゼロボルトライン78におけるダイオード80のカソード側に接続してもよい。
【0061】
(第2の実施例)
第2の実施例の光源装置10’は、交流点灯型の高圧放電灯12’と、補助光源14と、交流点灯用の点灯装置16’とで構成されている。第1の実施例では、直流点灯型の高圧放電灯12が用いられているのに対し、第2の実施例では、交流点灯型の高圧放電灯12’が用いられている点で相違しており、この相違点に起因して点灯装置16と点灯装置16’との間に若干の相違が存在するだけである。そこで、以下では、共通部分は第1の実施例の説明を援用し、相違点に関する内容を中心に説明する。
【0062】
交流点灯型の高圧放電灯12’は、互いに同じ大きさに形成された一対の主放電用電極34c、34d(図示せず)が互いに同じ大きさに形成されている。
【0063】
点灯装置16’は、図8に示すように、主点灯回路60’と始動回路62’とで構成されている。
【0064】
主点灯回路60’は、パルス幅制御回路66と、FETスイッチング部68と、リアクトル70および平滑コンデンサ72と、これらリアクトル70および平滑コンデンサ72で平滑化された安定的な直流出力を受け、これを交流に変換するインバータ96と、センス抵抗74と、高圧放電灯12’および補助光源14に電圧を印加するための出力ライン76、78とを備えている。
【0065】
始動回路62’は、ダイオード80と、高周波電圧発生回路82と、昇圧トランス84と、コンデンサ86と、短絡スイッチ98とで構成されている。
【0066】
短絡スイッチ98は、その一端がダイオード80のアノード側に接続され、他端がダイオード80のカソード側に接続されており、高圧放電灯12’が始動点灯した後、図示しない始動ON/OFF制御回路からのOFF信号を受けてダイオード80の両端を短絡させるスイッチであり、高圧放電灯12’が定常点灯している間、この短絡した状態を維持する。
【0067】
主点灯回路60’からの出力電圧は交流電圧であるが、ダイオード80が存在することから高圧放電灯12’の点灯始動時における点灯装置16’の作用は第1の実施例と同じである。
【0068】
高圧放電灯12’が点灯始動すると、図示しない始動ON/OFF制御回路から高周波電圧発生回路82の端子K2にOFF信号が入力され、始動回路62は、その動作を停止する。また、短絡スイッチ98にもOFF信号が入力され、短絡スイッチ98がダイオード80の両端を短絡することにより、主点灯回路60からの交流出力が高圧放電灯12’に供給される。その後、ランプ電圧は次第に上昇して定常点灯に移行し、所定の電圧(例えば80V)で安定する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明にかかる光源装置を示す概略図である。
【図2】主点灯回路からの出力電圧、昇圧トランスの二次側巻線の両端に生じる高周波電圧、およびコンデンサの両端に生じる直流電圧を示すグラフである。
【図3】ダイオードの両端に生じる合成電圧を示すグラフである。
【図4】主放電回路からの出力電圧に、ダイオードの両端に生じた合成電圧が重畳された合成電圧を示すグラフである。
【図5】本発明にかかる光源装置を示す概略図である。
【図6】本発明にかかる始動回路の他の実施例を示す概略図である。
【図7】本発明にかかる始動回路の他の実施例を示す概略図である。
【図8】本発明にかかる交流点灯用の点灯装置を有する光源装置を示す概略図である。
【図9】公知技術を示す図である。
【図10】公知技術を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
10…光源装置
12…高圧放電灯
14…補助光源
16…点灯装置
22…封体容器
24…主放電用マウント
26…発光管
28…封止部
30…発光物質
32…金属箔
34a、34b、34c、34d…主放電用電極
36…外部リード棒
40…封止容器
42…内部電極
44…外部電極
46…発光物質
48…内部空間
49…発光部
50…封止部
52…金属箔
54…(内部電極用の)電極
56…外部リード棒
58…リフレクター
60…主点灯回路
62…始動回路
64…交流電源
66…パルス幅制御回路
68…FETスイッチング部
70…リアクトル
72…平滑コンデンサ
74…センス抵抗
76…出力ライン(プラス側出力ライン)
78…出力ライン(ゼロボルトライン)
80…ダイオード
82…高周波電圧発生回路
84…昇圧トランス
86…コンデンサ
88…一次側巻線
90…二次側巻線
96…インバータ
98…短絡スイッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧を発生させる主点灯回路と、高圧放電灯および補助光源とを電気的に接続する一対の出力ラインにおける一方の出力ラインにおいて順方向に取り付けられたダイオード、
一端が前記ダイオードのカソード側に接続されたコンデンサ、
一次側巻線と、一端が前記ダイオードのアノード側あるいは他方の前記出力ラインに接続され、他端が前記コンデンサの他端に接続された二次側巻線とを有する昇圧トランス、および
前記一次側巻線と協働して連続的な高周波電圧を発生させる高周波電圧発生回路を備えることを特徴とする補助光源付き高圧放電灯用点灯装置の始動回路。
【請求項2】
交流電圧を発生させる主点灯回路と、高圧放電灯および補助光源とを電気的に接続する一対の出力ラインにおける一方の出力ラインにおいて順方向に取り付けられたダイオード、
一端が前記ダイオードのカソード側に接続されたコンデンサ、
一次側巻線と、一端が前記ダイオードのアノード側あるいは他方の前記出力ラインに接続され、他端が前記コンデンサの他端に接続された二次側巻線とを有する昇圧トランス、
前記一次側巻線と協働して連続的な高周波電圧を発生させる高周波電圧発生回路、および
前記高圧放電灯が始動点灯した後、前記ダイオードの両端を短絡した状態を維持する短絡スイッチを備えることを特徴とする補助光源付き高圧放電灯用点灯装置の始動回路。
【請求項3】
直流電圧を発生させる主点灯回路と、
請求項1に記載の始動回路とを備える補助光源付き高圧放電灯用点灯装置。
【請求項4】
交流電圧を発生させる主点灯回路と、
請求項2に記載の始動回路とを備える補助光源付き高圧放電灯用点灯装置。
【請求項5】
高圧放電灯と、補助光源と、請求項3または4に記載の点灯装置とを備える光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−10088(P2010−10088A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171290(P2008−171290)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(395019281)フェニックス電機株式会社 (43)
【Fターム(参考)】