補助電極を有する透明電極、発光素子、太陽電池
【課題】補助電極の反射率を高めることで、光の利用効率を向上させた透明電極を提供することである。
【解決手段】透明基板14との間に補助電極16を有する透明電極13において、補助電極16の透明基板14側に透明基板14よりも屈折率の低い第1低屈折率層17を、補助電極16の透明電極13側に透明電極13よりも屈折率の低い第2低屈折率層18を設けた構成とする。
【解決手段】透明基板14との間に補助電極16を有する透明電極13において、補助電極16の透明基板14側に透明基板14よりも屈折率の低い第1低屈折率層17を、補助電極16の透明電極13側に透明電極13よりも屈折率の低い第2低屈折率層18を設けた構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助電極を有する透明電極と、それを備えた発光素子又はそれを備えた太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、薄型の発光材料として有機EL(Electro Luminescence)又は無機ELといった面状の発光素子が注目されている。この発光素子は、低電力で高い輝度を得ることができ、視認性、応答速度、寿命、消費電力の点で優れている。
【0003】
一般に面状の発光素子は不透明な金属電極と透明電極との間に、電圧をかけると発光する材料を挟んだ構成となっている。ここで、発光面積を大面積化すると、透明電極は材質上、抵抗値を十分低くできないので、給電点から遠くなるにつれ透明電極の抵抗により電圧降下が生じ、十分な発光が得られず均一な発光を得ることが難しいという問題がある。
【0004】
この問題の解決策としては、透明電極表面にストライプ状又はグリッド状の金属製の補助電極を設け、電圧降下を抑制するという技術がある(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−223374号公報
【特許文献2】特開2010−55752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、補助電極を用いる場合、光の利用効率を上げるために発光面の面積に対して補助電極が占有していない割合(開口率)を大きくする必要があるが、補助電極を用いる以上、開口率を100%にすることはできない。
【0007】
また、このような発光素子においては基板内で全反射する光があるため、光の取り出し効率(光の利用効率)が低いという問題もある。この問題の解決策としては、出射面にマイクロレンズや拡散板等の光取り出しシートを設けて全反射を抑制する技術がある。
【0008】
しかしながら、光取り出しシートでは全反射を完全には抑制できないため、全ての光を一度で取り出すことは困難である。したがって、光の一部は全反射により再び基板内部に戻され、補助電極又は金属電極で反射されて再び光取り出しシートに入射することで、外部へ出るチャンスが与えられる。よって、補助電極や金属電極の反射率によって光の利用効率が変わってくる。
【0009】
本発明は、補助電極の反射率を高めることで、光の利用効率を向上させた透明電極を提供することを目的とする。また、該透明電極を用いた発光素子又は太陽電池を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、透明基板との間に補助電極を有する透明電極において、前記補助電極の前記透明基板側に前記透明基板よりも屈折率の低い第1低屈折率層及び/又は前記補助電極の前記透明電極側に前記透明電極よりも屈折率の低い第2低屈折率層を設けたことを特徴とする。
【0011】
上記の透明電極において、前記第1低屈折率層が前記透明基板の全面に亘って形成されている構成としてもよい。
【0012】
また上記の透明電極において、前記第2低屈折率層が前記透明電極の全面に亘って形成されている構成としてもよい。
【0013】
また上記の透明電極において、前記第1及び/又は第2低屈折率層の光学厚みが使用波長の1/2以下であることが望ましい。
【0014】
また上記の透明電極において、前記第1及び/又は第2低屈折率層の光学厚みが使用波長の1/4以下であることが望ましい。
【0015】
また本発明は、上記の透明電極を用いた発光素子又は太陽電池とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、透明電極において補助電極の反射率を高めることで、補助電極に吸収される光を減らし、光の利用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の発光素子の概略断面図である。
【図2】本発明の他の形態の発光素子の概略断面図である。
【図3】本発明の受光素子の概略断面図である。
【図4】実施例1の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図5】実施例2の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図6】実施例3の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図7】実施例4の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図8】実施例5の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図9】実施例6の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図10】実施例7の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図11】実施例8の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図12】実施例9の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図13】実施例10の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図14】実施例11の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図15】比較例1の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図16】実施例12の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図17】実施例13の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図18】実施例14の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明において透明とは使用波長に対して透過性があるという意味で用いる。図1は、本発明の発光素子の概略断面図である。発光素子10は面状の有機発光素子であり、図中の下層から順に、裏面電極11、有機発光層12、透明電極13、透明基板14、光の角度を変える素子15が積層されて構成される。この発光素子10は、透明基板14の透明電極13とは反対面を光取り出し面とする、いわゆるボトムエミッション方式である。
【0019】
裏面電極11は、陽極又は陰極としての役割と光を透明基板14側に反射させるミラーとしての役割があり、例えば、アルミニウム、銀、ニッケル、チタン、ナトリウム、カルシウム等の高反射率(例えば60%以上)の金属材料又はそれらの何れかを含む合金などを用いることができる。
【0020】
有機発光層12は、発光層を含む有機化合物または錯体の単層または複数層であり、例えば、陽極と接する正孔輸送層、発光材料で形成された発光層、陰極と接する電子輸送層等からなり、数nmから数百nmの厚みである。屈折率は1.8前後である。また、フッ化リチウム層や無機金属塩の層或いはそれらを含有する層等が、任意の位置に形成されていてもよい。発光層は少なくとも一種の発光材からなるもので、蛍光発光性化合物又は燐光発光性化合物等を用いることができる。
【0021】
有機発光層12の構成としては、上述の構成も含めて例えば、以下の(i)〜(v)の構成などを採用できる。
(i)(陽極)/発光層/電子輸送層/(陰極)
(ii)(陽極)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/(陰極)
(iii)(陽極)/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/(陰極)
(iv)(陽極)/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/(陰極)
(v)(陽極)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/(陰極)
【0022】
正孔輸送層は正孔を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
【0023】
電子輸送層は電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
【0024】
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有し、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0025】
正孔注入層及び電子注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と発光層間に設けられる層のことである。
【0026】
透明電極13は、裏面電極11の反対電極であり、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の透過率が40%以上の導電性透明材料の層上に、補助電極16と、補助電極16の透明基板14側に積層された第1低屈折率層17と、補助電極16の透明電極13側(導電性透明材料側)に積層された第2低屈折率層18とを有するものである。導電性透明材料は有機発光層12と同じく1.8前後の屈折率のものを用いることが多い。
【0027】
補助電極16は導電性の高い、例えば、銀等の金属であり、グリッド状又はストライプ状などの形状とする。そして、第1低屈折率層17には透明基板14よりも屈折率の低い材料を用い、第2低屈折率層18には透明電極13の導電性透明材料よりも屈折率の低い材料を用いる。第1低屈折率層17、第2低屈折率層18の材料としては、例えば、フッ化マグネシウム、PEDOT−PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホン酸)などを用いることができる。なお、第1低屈折率層17又は第2低屈折率層18の一方だけ設けるようにしてもよい。
【0028】
透明基板14は、ガラスや樹脂であり、例えば、0.1〜1mmの厚みである。好ましくは、有機発光素子にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。透明基板14をフレキシブルなフィルム状の基材で形成することにより、面光源を湾曲させることができ、種々の方向に向かって発光させることができる。
【0029】
光の角度を変える素子15は、光取り出し側の表面が凹凸形状であればよく、例えば、マイクロレンズ、プリズム台、円錐、角錐、円錐台、角錐台、ランダムな凹凸などの形状を採用できる。
【0030】
そして、透明基板14上に、透明電極13と有機発光層12と裏面電極11とを積層し、一方の端部で透明電極13を露出させ、他方の端部で裏面電極11を露出させて電極部を形成し、この電極部を電源部(不図示)の各々の電源配線(不図示)に接続し、有機発光層12に所定の直流電圧を印加して発光させる。
【0031】
なお、発光素子10を構成する有機化合物は、水分や大気中の酸素により劣化するため、透湿防止層(ガスバリア層)で封止して外部雰囲気から遮断して使用される。この透湿防止層は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
【0032】
次に、有機発光素子10の作製方法の一例として、透明基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる素子の作製法を説明する。
【0033】
まず、透明基板14上に補助電極の形状の開口部を有するステンレス製のステンシルテンプレートを載せ、第1低屈折率層17としてフッ化マグネシウムを蒸着し、次に補助電極16として銀を蒸着し、次に第2低屈折率層18としてPEDOT−PSSを塗布し、次にステンシルテンプレートを外して導電性透明材料としてITOの薄膜を1μm以下、好ましくは10nm〜200nmの膜厚になるように、スパッタリングすることで陽極を作製する。
【0034】
そして、この上に有機発光層12である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等の有機化合物薄膜を形成させる。
【0035】
これら各層の形成方法としては、蒸着法、ウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法)等があり、均質な膜が得られやすく、且つピンホールが生成しにくい等の点からは、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等の塗布法による成膜が好ましい。
【0036】
有機発光層12を溶解または分散する液媒体としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、DMF、DMSO等の有機溶媒を用いることができる。また分散方法としては、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の分散方法により分散することができる。
【0037】
これらの層を形成後、その上に陰極用物質からなる裏面電極11の薄膜を1μm以下、好ましくは、50nm〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ陰極を作製する。このようにして発光素子10が得られる。
【0038】
次に、このような発光素子10で発生した光が取り出されるまでの経路を説明する。図1に示すように、有機発光層12で発生したある光20は、透明電極13、透明基板14、光の角度を変える素子15を透過して素子外に取り出される。またある光21は、透明電極13、透明基板14を透過し、光の角度を変える素子21に入射し、その凹凸形状の表面で反射し、透明基板14を透過し、第1低屈折率層17の表面で反射し、光の角度を変える素子15を透過して素子外に取り出される。またある光22は、透明電極13に入射し、第2低屈折率層18の表面で反射し、有機発光層12を透過し、裏面電極11の表面で反射し、透明電極13、透明基板14、光の角度を変える素子15を透過して素子外に取り出される。
【0039】
このように、光21は補助電極16で反射されるが、補助電極16の表面に第1低屈折率層17が設けられていることにより、光21は屈折率の相対的に高い透明基板から屈折率の相対的に低い第1低屈折率層17に入射することになるので、第1低屈折率層17を設けない場合よりも反射率が高く、すなわち吸収が少なくロスが少ないので、最終的により多くの光を取り出すことができる。
【0040】
同様に、光22も補助電極16で反射されるが、補助電極16の表面に第2低屈折率層18が設けられていることにより、光22は屈折率の相対的に高い透明電極13の導電性透明材料から屈折率の相対的に低い第2低屈折率層18に入射することになるので、第2低屈折率層18を設けない場合よりも反射率が高く、最終的により多くの光を取り出すことができる。つまり、補助電極16の表面に第1低屈折率層17や第2低屈折率層18を設けて反射率を高めることで、光の利用効率を向上させている。
【0041】
図2は、他の形態の発光素子25の概略断面図である。第1低屈折率層17が透明基板14の全面に亘って形成されており、第2低屈折率層18が省略されている点以外は図1の構成と同様である。当然、第1低屈折率層17には透明材料を用いる。
【0042】
この構成によれば、第1低屈折率層17を形成する際にステンシルテンプレートなどを使う必要がない。
【0043】
ここでは有機発光素子を例に説明したが、本発明は無機発光素子にも同様に適用できる。また、上記の実施形態ではボトムエミッション方式を例に説明したが、トップエミッション方式の場合も、透明電極の出射側に透明基板と同じような透明な封止層を設けるので、本明細書では透明基板という用語はトップエミッション方式では封止層のことを指すものとする。
【0044】
また、本発明は太陽電池などの受光素子にも適用できる。図3は、本発明の受光素子の概略断面図である。図1と同様の部材には同符号を付してその詳細な説明を省略する。受光素子30は面状であり、図中の下層から順に、裏面電極11、受光層32、透明電極13、透明基板14、光の角度を変える素子15が積層されて構成される。
【0045】
そして、透明基板14上に、透明電極13と受光層32と裏面電極11とを積層し、一方の端部で透明電極13を露出させ、他方の端部で裏面電極11を露出させて電極部を形成し、この電極部を蓄電池などに接続し、電力を取り出す。
【0046】
このような受光素子30の受光層32に光が取り込まれるまでの経路を説明する。図3に示すように、太陽光等の外部からの光40は、光の角度を変える素子15に入射し、透明基板14、透明電極13を透過して受光層32で吸収される。またある光41は、光の角度を変える素子15に入射し、透明基板14を透過し、第1低屈折率層17の表面で反射し、光の角度を変える素子21に入射し、その凹凸形状の表面で反射し、透明基板14、透明電極13を透過して受光層32で吸収される。またある光42は、光の角度を変える素子15に入射し、透明基板14、透明電極13、受光層32を透過し、裏面電極11の表面で反射し、透明電極13に入射し、第2低屈折率層18の表面で反射し、受光層32で吸収される。
【0047】
このように、光41は補助電極16で反射されるが、補助電極16の表面に第1低屈折率層17が設けられていることにより、光41は屈折率の相対的に高い透明基板から屈折率の相対的に低い第1低屈折率層17に入射することになるので、第1低屈折率層17を設けない場合よりも反射率が高く、最終的により多くの光を取り込むことができる。
【0048】
同様に、光42も補助電極16で反射されるが、補助電極16の表面に第2低屈折率層18が設けられていることにより、光42は屈折率の相対的に高い透明電極13の導電性透明材料から屈折率の相対的に低い第2低屈折率層18に入射することになるので、第2低屈折率層18を設けない場合よりも反射率が高く、最終的により多くの光を取り出すことができる。つまり、補助電極16の表面に第1低屈折率層17や第2低屈折率層18を設けて反射率を高めることで、光の利用効率を向上させている。なお、図2の構成は受光素子にも同様に適用することができる。
【0049】
以下、透明基板14から第1低屈折率層17へ入射する光の反射率、透明電極13の導電性透明材料から第2低屈折率層18へ入射する光の反射率を低屈折率層の層厚を変化させて計算した実施例を示す。
【0050】
(実施例1)
実施例1では、屈折率1.5のガラス(透明基板14)と、層厚5nmで屈折率1.35のフッ化マグネシウム(第1低屈折率層17)と、銀電極(補助電極16)とを用いた。そして、透明基板14から第1低屈折率層17へ入射する光の反射率を計算した。比較例として、第1低屈折率層17を省き、屈折率1.5のガラス(透明基板14)から銀電極(補助電極16)へ入射する光の反射率も計算した。
【0051】
図4は、実施例1の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例1であり、実線が比較例である。
【0052】
(実施例2)
実施例2では、屈折率1.35のフッ化マグネシウム(第1低屈折率層17)の層厚を10nmとした。それ以外は実施例1と同条件である。図5は、実施例2の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例2であり、実線が比較例である。
【0053】
(実施例3)
実施例3では、屈折率1.35のフッ化マグネシウム(第1低屈折率層17)の層厚を20nmとした。それ以外は実施例1と同条件である。図6は、実施例3の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例3であり、実線が比較例である。
【0054】
(実施例4)
実施例4では、屈折率1.35のフッ化マグネシウム(第1低屈折率層17)の層厚を50nmとした。それ以外は実施例1と同条件である。図7は、実施例4の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例4であり、実線が比較例である。
【0055】
(実施例5)
実施例5では、屈折率1.35のフッ化マグネシウム(第1低屈折率層17)の層厚を60nmとした。それ以外は実施例1と同条件である。図8は、実施例5の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例5であり、実線が比較例である。
【0056】
(実施例6)
実施例6では、屈折率1.35のフッ化マグネシウム(第1低屈折率層17)の層厚を100nmとした。それ以外は実施例1と同条件である。図9は、実施例6の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例6であり、実線が比較例である。
【0057】
(実施例7)
実施例7では、屈折率1.35のフッ化マグネシウム(第1低屈折率層17)の層厚を200nmとした。それ以外は実施例1と同条件である。図10は、実施例7の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例7であり、実線が比較例である。
【0058】
(実施例8)
実施例8では、屈折率1.35のフッ化マグネシウム(第1低屈折率層17)の層厚を300nmとした。それ以外は実施例1と同条件である。図11は、実施例8の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例8であり、実線が比較例である。
【0059】
(実施例9)
実施例9では、屈折率1.35のフッ化マグネシウム(第1低屈折率層17)の層厚を500nmとした。それ以外は実施例1と同条件である。図12は、実施例9の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例9であり、実線が比較例である。
【0060】
(実施例10)
実施例10では、屈折率1.35のフッ化マグネシウム(第1低屈折率層17)の層厚を700nmとした。それ以外は実施例1と同条件である。図13は、実施例10の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例10であり、実線が比較例である。
【0061】
(実施例11)
実施例11では、屈折率1.35のフッ化マグネシウム(第1低屈折率層17)の層厚を1000nmとした。それ以外は実施例1と同条件である。図14は、実施例11の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例11であり、実線が比較例である。
【0062】
(比較例1)
比較例1では、屈折率1.5のガラス(透明基板)と、層厚60nmで屈折率2.0の酸化チタンと、銀電極(補助電極)とを用いた。そして、透明基板から酸化チタンへ入射する光の反射率を計算した。
【0063】
図15は、比較例1の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が比較例1であり、実線が実施例1で計算した比較例である。
【0064】
(実施例12)
実施例12では、透明基板14として屈折率1.8のガラスを用い、屈折率1.35のフッ化マグネシウム(第1低屈折率層17)の層厚を60nmとした。それ以外は実施例1と同条件である。図16は、実施例12の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例12であり、実線が比較例である。
【0065】
(実施例13)
実施例13では、透明基板14として屈折率1.8のガラスを用い、第1低屈折率層17として層厚60nmで屈折率1.45の石英を用いた。それ以外は実施例1と同条件である。図17は、実施例13の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例13であり、実線が比較例である。
【0066】
(実施例14)
実施例14では、屈折率1.9のITO(透明電極13の導電性透明材料)と、層厚60nmで屈折率1.45のPEDOT−PSS(第2低屈折率層18)と、銀電極(補助電極16)とを用いた。そして、透明電極13の導電性透明材料から第2低屈折率層18へ入射する光の反射率を計算した。比較例として、第2低屈折率層18を省き、屈折率1.9のITO(透明電極13の導電性透明材料)から銀電極(補助電極16)へ入射する光の反射率も計算した。
【0067】
図18は、実施例14の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例14であり、実線が比較例である。
【0068】
実施例1〜11(図4〜14)は、第1低屈折率層17の層厚を順に厚くしたものである。グラフの全波長領域で比べると、実施例1〜6(図4〜9)で比較例の反射率を上回っていることがわかる。したがって、実施例1〜5の条件では400〜800nmを使用波長とすれば光の利用効率が向上するといえる。
【0069】
また、実施例7〜11(図10〜14)では、反射率は波長によって比較例よりも高い場合と低い場合とがある。一般に有機発光素子等の白色光は2又は3色の光を混合して作られているので、例えば、実施例9(図12)の条件では630nmの赤色光、520nmの緑色光、420nmの青色光を使用すればそれぞれの波長で反射率が向上しているので、光の利用効率が向上する。
【0070】
また、比較例1(図15)では酸化チタンを設けない場合に比べてほとんどの波長で反射率が低下している。このことから、透明基板よりも高屈折率の材料を補助電極の透明基板側へ設けると、光の利用効率が低下するといえる。
【0071】
また、実施例12〜14(図16〜18)でも実施例1〜6(図4〜9)と同様にグラフの全波長領域で比較例の反射率を上回っているので、400〜800nmを使用波長とすれば光の利用効率が向上するといえる。
【0072】
なお、400〜800nmを使用波長とすれば、第1、第2低屈折率層17、18の光学厚みが使用波長の1/2以下であることが好ましく、1/4以下であることがさらに好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、有機ELや無機ELなどの発光素子、液晶パネル、太陽電池など、補助電極を有する透明電極を用いる素子に利用することができる。
【符号の説明】
【0074】
10、25 発光素子
13 透明電極
14 透明基板
16 補助電極
17 第1低屈折率層
18 第2低屈折率層
30 太陽電池
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助電極を有する透明電極と、それを備えた発光素子又はそれを備えた太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、薄型の発光材料として有機EL(Electro Luminescence)又は無機ELといった面状の発光素子が注目されている。この発光素子は、低電力で高い輝度を得ることができ、視認性、応答速度、寿命、消費電力の点で優れている。
【0003】
一般に面状の発光素子は不透明な金属電極と透明電極との間に、電圧をかけると発光する材料を挟んだ構成となっている。ここで、発光面積を大面積化すると、透明電極は材質上、抵抗値を十分低くできないので、給電点から遠くなるにつれ透明電極の抵抗により電圧降下が生じ、十分な発光が得られず均一な発光を得ることが難しいという問題がある。
【0004】
この問題の解決策としては、透明電極表面にストライプ状又はグリッド状の金属製の補助電極を設け、電圧降下を抑制するという技術がある(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−223374号公報
【特許文献2】特開2010−55752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、補助電極を用いる場合、光の利用効率を上げるために発光面の面積に対して補助電極が占有していない割合(開口率)を大きくする必要があるが、補助電極を用いる以上、開口率を100%にすることはできない。
【0007】
また、このような発光素子においては基板内で全反射する光があるため、光の取り出し効率(光の利用効率)が低いという問題もある。この問題の解決策としては、出射面にマイクロレンズや拡散板等の光取り出しシートを設けて全反射を抑制する技術がある。
【0008】
しかしながら、光取り出しシートでは全反射を完全には抑制できないため、全ての光を一度で取り出すことは困難である。したがって、光の一部は全反射により再び基板内部に戻され、補助電極又は金属電極で反射されて再び光取り出しシートに入射することで、外部へ出るチャンスが与えられる。よって、補助電極や金属電極の反射率によって光の利用効率が変わってくる。
【0009】
本発明は、補助電極の反射率を高めることで、光の利用効率を向上させた透明電極を提供することを目的とする。また、該透明電極を用いた発光素子又は太陽電池を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、透明基板との間に補助電極を有する透明電極において、前記補助電極の前記透明基板側に前記透明基板よりも屈折率の低い第1低屈折率層及び/又は前記補助電極の前記透明電極側に前記透明電極よりも屈折率の低い第2低屈折率層を設けたことを特徴とする。
【0011】
上記の透明電極において、前記第1低屈折率層が前記透明基板の全面に亘って形成されている構成としてもよい。
【0012】
また上記の透明電極において、前記第2低屈折率層が前記透明電極の全面に亘って形成されている構成としてもよい。
【0013】
また上記の透明電極において、前記第1及び/又は第2低屈折率層の光学厚みが使用波長の1/2以下であることが望ましい。
【0014】
また上記の透明電極において、前記第1及び/又は第2低屈折率層の光学厚みが使用波長の1/4以下であることが望ましい。
【0015】
また本発明は、上記の透明電極を用いた発光素子又は太陽電池とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、透明電極において補助電極の反射率を高めることで、補助電極に吸収される光を減らし、光の利用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の発光素子の概略断面図である。
【図2】本発明の他の形態の発光素子の概略断面図である。
【図3】本発明の受光素子の概略断面図である。
【図4】実施例1の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図5】実施例2の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図6】実施例3の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図7】実施例4の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図8】実施例5の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図9】実施例6の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図10】実施例7の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図11】実施例8の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図12】実施例9の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図13】実施例10の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図14】実施例11の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図15】比較例1の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図16】実施例12の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図17】実施例13の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図18】実施例14の光の波長に対する反射率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明において透明とは使用波長に対して透過性があるという意味で用いる。図1は、本発明の発光素子の概略断面図である。発光素子10は面状の有機発光素子であり、図中の下層から順に、裏面電極11、有機発光層12、透明電極13、透明基板14、光の角度を変える素子15が積層されて構成される。この発光素子10は、透明基板14の透明電極13とは反対面を光取り出し面とする、いわゆるボトムエミッション方式である。
【0019】
裏面電極11は、陽極又は陰極としての役割と光を透明基板14側に反射させるミラーとしての役割があり、例えば、アルミニウム、銀、ニッケル、チタン、ナトリウム、カルシウム等の高反射率(例えば60%以上)の金属材料又はそれらの何れかを含む合金などを用いることができる。
【0020】
有機発光層12は、発光層を含む有機化合物または錯体の単層または複数層であり、例えば、陽極と接する正孔輸送層、発光材料で形成された発光層、陰極と接する電子輸送層等からなり、数nmから数百nmの厚みである。屈折率は1.8前後である。また、フッ化リチウム層や無機金属塩の層或いはそれらを含有する層等が、任意の位置に形成されていてもよい。発光層は少なくとも一種の発光材からなるもので、蛍光発光性化合物又は燐光発光性化合物等を用いることができる。
【0021】
有機発光層12の構成としては、上述の構成も含めて例えば、以下の(i)〜(v)の構成などを採用できる。
(i)(陽極)/発光層/電子輸送層/(陰極)
(ii)(陽極)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/(陰極)
(iii)(陽極)/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/(陰極)
(iv)(陽極)/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/(陰極)
(v)(陽極)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/(陰極)
【0022】
正孔輸送層は正孔を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
【0023】
電子輸送層は電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
【0024】
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有し、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0025】
正孔注入層及び電子注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と発光層間に設けられる層のことである。
【0026】
透明電極13は、裏面電極11の反対電極であり、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の透過率が40%以上の導電性透明材料の層上に、補助電極16と、補助電極16の透明基板14側に積層された第1低屈折率層17と、補助電極16の透明電極13側(導電性透明材料側)に積層された第2低屈折率層18とを有するものである。導電性透明材料は有機発光層12と同じく1.8前後の屈折率のものを用いることが多い。
【0027】
補助電極16は導電性の高い、例えば、銀等の金属であり、グリッド状又はストライプ状などの形状とする。そして、第1低屈折率層17には透明基板14よりも屈折率の低い材料を用い、第2低屈折率層18には透明電極13の導電性透明材料よりも屈折率の低い材料を用いる。第1低屈折率層17、第2低屈折率層18の材料としては、例えば、フッ化マグネシウム、PEDOT−PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホン酸)などを用いることができる。なお、第1低屈折率層17又は第2低屈折率層18の一方だけ設けるようにしてもよい。
【0028】
透明基板14は、ガラスや樹脂であり、例えば、0.1〜1mmの厚みである。好ましくは、有機発光素子にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。透明基板14をフレキシブルなフィルム状の基材で形成することにより、面光源を湾曲させることができ、種々の方向に向かって発光させることができる。
【0029】
光の角度を変える素子15は、光取り出し側の表面が凹凸形状であればよく、例えば、マイクロレンズ、プリズム台、円錐、角錐、円錐台、角錐台、ランダムな凹凸などの形状を採用できる。
【0030】
そして、透明基板14上に、透明電極13と有機発光層12と裏面電極11とを積層し、一方の端部で透明電極13を露出させ、他方の端部で裏面電極11を露出させて電極部を形成し、この電極部を電源部(不図示)の各々の電源配線(不図示)に接続し、有機発光層12に所定の直流電圧を印加して発光させる。
【0031】
なお、発光素子10を構成する有機化合物は、水分や大気中の酸素により劣化するため、透湿防止層(ガスバリア層)で封止して外部雰囲気から遮断して使用される。この透湿防止層は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
【0032】
次に、有機発光素子10の作製方法の一例として、透明基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる素子の作製法を説明する。
【0033】
まず、透明基板14上に補助電極の形状の開口部を有するステンレス製のステンシルテンプレートを載せ、第1低屈折率層17としてフッ化マグネシウムを蒸着し、次に補助電極16として銀を蒸着し、次に第2低屈折率層18としてPEDOT−PSSを塗布し、次にステンシルテンプレートを外して導電性透明材料としてITOの薄膜を1μm以下、好ましくは10nm〜200nmの膜厚になるように、スパッタリングすることで陽極を作製する。
【0034】
そして、この上に有機発光層12である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等の有機化合物薄膜を形成させる。
【0035】
これら各層の形成方法としては、蒸着法、ウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法)等があり、均質な膜が得られやすく、且つピンホールが生成しにくい等の点からは、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等の塗布法による成膜が好ましい。
【0036】
有機発光層12を溶解または分散する液媒体としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、DMF、DMSO等の有機溶媒を用いることができる。また分散方法としては、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の分散方法により分散することができる。
【0037】
これらの層を形成後、その上に陰極用物質からなる裏面電極11の薄膜を1μm以下、好ましくは、50nm〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ陰極を作製する。このようにして発光素子10が得られる。
【0038】
次に、このような発光素子10で発生した光が取り出されるまでの経路を説明する。図1に示すように、有機発光層12で発生したある光20は、透明電極13、透明基板14、光の角度を変える素子15を透過して素子外に取り出される。またある光21は、透明電極13、透明基板14を透過し、光の角度を変える素子21に入射し、その凹凸形状の表面で反射し、透明基板14を透過し、第1低屈折率層17の表面で反射し、光の角度を変える素子15を透過して素子外に取り出される。またある光22は、透明電極13に入射し、第2低屈折率層18の表面で反射し、有機発光層12を透過し、裏面電極11の表面で反射し、透明電極13、透明基板14、光の角度を変える素子15を透過して素子外に取り出される。
【0039】
このように、光21は補助電極16で反射されるが、補助電極16の表面に第1低屈折率層17が設けられていることにより、光21は屈折率の相対的に高い透明基板から屈折率の相対的に低い第1低屈折率層17に入射することになるので、第1低屈折率層17を設けない場合よりも反射率が高く、すなわち吸収が少なくロスが少ないので、最終的により多くの光を取り出すことができる。
【0040】
同様に、光22も補助電極16で反射されるが、補助電極16の表面に第2低屈折率層18が設けられていることにより、光22は屈折率の相対的に高い透明電極13の導電性透明材料から屈折率の相対的に低い第2低屈折率層18に入射することになるので、第2低屈折率層18を設けない場合よりも反射率が高く、最終的により多くの光を取り出すことができる。つまり、補助電極16の表面に第1低屈折率層17や第2低屈折率層18を設けて反射率を高めることで、光の利用効率を向上させている。
【0041】
図2は、他の形態の発光素子25の概略断面図である。第1低屈折率層17が透明基板14の全面に亘って形成されており、第2低屈折率層18が省略されている点以外は図1の構成と同様である。当然、第1低屈折率層17には透明材料を用いる。
【0042】
この構成によれば、第1低屈折率層17を形成する際にステンシルテンプレートなどを使う必要がない。
【0043】
ここでは有機発光素子を例に説明したが、本発明は無機発光素子にも同様に適用できる。また、上記の実施形態ではボトムエミッション方式を例に説明したが、トップエミッション方式の場合も、透明電極の出射側に透明基板と同じような透明な封止層を設けるので、本明細書では透明基板という用語はトップエミッション方式では封止層のことを指すものとする。
【0044】
また、本発明は太陽電池などの受光素子にも適用できる。図3は、本発明の受光素子の概略断面図である。図1と同様の部材には同符号を付してその詳細な説明を省略する。受光素子30は面状であり、図中の下層から順に、裏面電極11、受光層32、透明電極13、透明基板14、光の角度を変える素子15が積層されて構成される。
【0045】
そして、透明基板14上に、透明電極13と受光層32と裏面電極11とを積層し、一方の端部で透明電極13を露出させ、他方の端部で裏面電極11を露出させて電極部を形成し、この電極部を蓄電池などに接続し、電力を取り出す。
【0046】
このような受光素子30の受光層32に光が取り込まれるまでの経路を説明する。図3に示すように、太陽光等の外部からの光40は、光の角度を変える素子15に入射し、透明基板14、透明電極13を透過して受光層32で吸収される。またある光41は、光の角度を変える素子15に入射し、透明基板14を透過し、第1低屈折率層17の表面で反射し、光の角度を変える素子21に入射し、その凹凸形状の表面で反射し、透明基板14、透明電極13を透過して受光層32で吸収される。またある光42は、光の角度を変える素子15に入射し、透明基板14、透明電極13、受光層32を透過し、裏面電極11の表面で反射し、透明電極13に入射し、第2低屈折率層18の表面で反射し、受光層32で吸収される。
【0047】
このように、光41は補助電極16で反射されるが、補助電極16の表面に第1低屈折率層17が設けられていることにより、光41は屈折率の相対的に高い透明基板から屈折率の相対的に低い第1低屈折率層17に入射することになるので、第1低屈折率層17を設けない場合よりも反射率が高く、最終的により多くの光を取り込むことができる。
【0048】
同様に、光42も補助電極16で反射されるが、補助電極16の表面に第2低屈折率層18が設けられていることにより、光42は屈折率の相対的に高い透明電極13の導電性透明材料から屈折率の相対的に低い第2低屈折率層18に入射することになるので、第2低屈折率層18を設けない場合よりも反射率が高く、最終的により多くの光を取り出すことができる。つまり、補助電極16の表面に第1低屈折率層17や第2低屈折率層18を設けて反射率を高めることで、光の利用効率を向上させている。なお、図2の構成は受光素子にも同様に適用することができる。
【0049】
以下、透明基板14から第1低屈折率層17へ入射する光の反射率、透明電極13の導電性透明材料から第2低屈折率層18へ入射する光の反射率を低屈折率層の層厚を変化させて計算した実施例を示す。
【0050】
(実施例1)
実施例1では、屈折率1.5のガラス(透明基板14)と、層厚5nmで屈折率1.35のフッ化マグネシウム(第1低屈折率層17)と、銀電極(補助電極16)とを用いた。そして、透明基板14から第1低屈折率層17へ入射する光の反射率を計算した。比較例として、第1低屈折率層17を省き、屈折率1.5のガラス(透明基板14)から銀電極(補助電極16)へ入射する光の反射率も計算した。
【0051】
図4は、実施例1の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例1であり、実線が比較例である。
【0052】
(実施例2)
実施例2では、屈折率1.35のフッ化マグネシウム(第1低屈折率層17)の層厚を10nmとした。それ以外は実施例1と同条件である。図5は、実施例2の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例2であり、実線が比較例である。
【0053】
(実施例3)
実施例3では、屈折率1.35のフッ化マグネシウム(第1低屈折率層17)の層厚を20nmとした。それ以外は実施例1と同条件である。図6は、実施例3の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例3であり、実線が比較例である。
【0054】
(実施例4)
実施例4では、屈折率1.35のフッ化マグネシウム(第1低屈折率層17)の層厚を50nmとした。それ以外は実施例1と同条件である。図7は、実施例4の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例4であり、実線が比較例である。
【0055】
(実施例5)
実施例5では、屈折率1.35のフッ化マグネシウム(第1低屈折率層17)の層厚を60nmとした。それ以外は実施例1と同条件である。図8は、実施例5の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例5であり、実線が比較例である。
【0056】
(実施例6)
実施例6では、屈折率1.35のフッ化マグネシウム(第1低屈折率層17)の層厚を100nmとした。それ以外は実施例1と同条件である。図9は、実施例6の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例6であり、実線が比較例である。
【0057】
(実施例7)
実施例7では、屈折率1.35のフッ化マグネシウム(第1低屈折率層17)の層厚を200nmとした。それ以外は実施例1と同条件である。図10は、実施例7の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例7であり、実線が比較例である。
【0058】
(実施例8)
実施例8では、屈折率1.35のフッ化マグネシウム(第1低屈折率層17)の層厚を300nmとした。それ以外は実施例1と同条件である。図11は、実施例8の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例8であり、実線が比較例である。
【0059】
(実施例9)
実施例9では、屈折率1.35のフッ化マグネシウム(第1低屈折率層17)の層厚を500nmとした。それ以外は実施例1と同条件である。図12は、実施例9の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例9であり、実線が比較例である。
【0060】
(実施例10)
実施例10では、屈折率1.35のフッ化マグネシウム(第1低屈折率層17)の層厚を700nmとした。それ以外は実施例1と同条件である。図13は、実施例10の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例10であり、実線が比較例である。
【0061】
(実施例11)
実施例11では、屈折率1.35のフッ化マグネシウム(第1低屈折率層17)の層厚を1000nmとした。それ以外は実施例1と同条件である。図14は、実施例11の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例11であり、実線が比較例である。
【0062】
(比較例1)
比較例1では、屈折率1.5のガラス(透明基板)と、層厚60nmで屈折率2.0の酸化チタンと、銀電極(補助電極)とを用いた。そして、透明基板から酸化チタンへ入射する光の反射率を計算した。
【0063】
図15は、比較例1の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が比較例1であり、実線が実施例1で計算した比較例である。
【0064】
(実施例12)
実施例12では、透明基板14として屈折率1.8のガラスを用い、屈折率1.35のフッ化マグネシウム(第1低屈折率層17)の層厚を60nmとした。それ以外は実施例1と同条件である。図16は、実施例12の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例12であり、実線が比較例である。
【0065】
(実施例13)
実施例13では、透明基板14として屈折率1.8のガラスを用い、第1低屈折率層17として層厚60nmで屈折率1.45の石英を用いた。それ以外は実施例1と同条件である。図17は、実施例13の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例13であり、実線が比較例である。
【0066】
(実施例14)
実施例14では、屈折率1.9のITO(透明電極13の導電性透明材料)と、層厚60nmで屈折率1.45のPEDOT−PSS(第2低屈折率層18)と、銀電極(補助電極16)とを用いた。そして、透明電極13の導電性透明材料から第2低屈折率層18へ入射する光の反射率を計算した。比較例として、第2低屈折率層18を省き、屈折率1.9のITO(透明電極13の導電性透明材料)から銀電極(補助電極16)へ入射する光の反射率も計算した。
【0067】
図18は、実施例14の光の波長に対する反射率を示すグラフである。破線が実施例14であり、実線が比較例である。
【0068】
実施例1〜11(図4〜14)は、第1低屈折率層17の層厚を順に厚くしたものである。グラフの全波長領域で比べると、実施例1〜6(図4〜9)で比較例の反射率を上回っていることがわかる。したがって、実施例1〜5の条件では400〜800nmを使用波長とすれば光の利用効率が向上するといえる。
【0069】
また、実施例7〜11(図10〜14)では、反射率は波長によって比較例よりも高い場合と低い場合とがある。一般に有機発光素子等の白色光は2又は3色の光を混合して作られているので、例えば、実施例9(図12)の条件では630nmの赤色光、520nmの緑色光、420nmの青色光を使用すればそれぞれの波長で反射率が向上しているので、光の利用効率が向上する。
【0070】
また、比較例1(図15)では酸化チタンを設けない場合に比べてほとんどの波長で反射率が低下している。このことから、透明基板よりも高屈折率の材料を補助電極の透明基板側へ設けると、光の利用効率が低下するといえる。
【0071】
また、実施例12〜14(図16〜18)でも実施例1〜6(図4〜9)と同様にグラフの全波長領域で比較例の反射率を上回っているので、400〜800nmを使用波長とすれば光の利用効率が向上するといえる。
【0072】
なお、400〜800nmを使用波長とすれば、第1、第2低屈折率層17、18の光学厚みが使用波長の1/2以下であることが好ましく、1/4以下であることがさらに好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、有機ELや無機ELなどの発光素子、液晶パネル、太陽電池など、補助電極を有する透明電極を用いる素子に利用することができる。
【符号の説明】
【0074】
10、25 発光素子
13 透明電極
14 透明基板
16 補助電極
17 第1低屈折率層
18 第2低屈折率層
30 太陽電池
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板との間に補助電極を有する透明電極において、
前記補助電極の前記透明基板側に前記透明基板よりも屈折率の低い第1低屈折率層及び/又は前記補助電極の前記透明電極側に前記透明電極よりも屈折率の低い第2低屈折率層を設けたことを特徴とする透明電極。
【請求項2】
前記第1低屈折率層が前記透明基板の全面に亘って形成されていることを特徴とする請求項1記載の透明電極。
【請求項3】
前記第2低屈折率層が前記透明電極の全面に亘って形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の透明電極。
【請求項4】
前記第1及び/又は第2低屈折率層の光学厚みが使用波長の1/2以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の透明電極。
【請求項5】
前記第1及び/又は第2低屈折率層の光学厚みが使用波長の1/4以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の透明電極。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の透明電極を用いた発光素子。
【請求項7】
請求項1〜5の何れかに記載の透明電極を用いた太陽電池。
【請求項1】
透明基板との間に補助電極を有する透明電極において、
前記補助電極の前記透明基板側に前記透明基板よりも屈折率の低い第1低屈折率層及び/又は前記補助電極の前記透明電極側に前記透明電極よりも屈折率の低い第2低屈折率層を設けたことを特徴とする透明電極。
【請求項2】
前記第1低屈折率層が前記透明基板の全面に亘って形成されていることを特徴とする請求項1記載の透明電極。
【請求項3】
前記第2低屈折率層が前記透明電極の全面に亘って形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の透明電極。
【請求項4】
前記第1及び/又は第2低屈折率層の光学厚みが使用波長の1/2以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の透明電極。
【請求項5】
前記第1及び/又は第2低屈折率層の光学厚みが使用波長の1/4以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の透明電極。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の透明電極を用いた発光素子。
【請求項7】
請求項1〜5の何れかに記載の透明電極を用いた太陽電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−59609(P2012−59609A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203117(P2010−203117)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
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