説明

補強接着剤を設けた剥離可能な圧着シート

【課題】従来の通常では接着せず一定の圧力を与えると接着し、接着後も容易に剥がせるような接着剤をあらかじめ塗布してある圧着シートについては、プレス圧着力が弱いと接着面での剥がれが懸念され、強すぎると用紙破れが発生する恐れがあり、プレス圧着作業時に圧着力の調整をしなくてはならなかった。また剥がれ防止については周辺部に強接着剤部分を追加することによる剥がれ防止が実現されているが、プレス圧着力が弱い機械では剥がれ防止が十分ではなかった。
【解決手段】プレス圧着力が弱くても圧着されたシートが剥がれないようにするため、あらかじめ塗布されている弱接着剤の上で、且つシート周辺に近い部分の一部に補強接着剤を追加塗布し、接着後も剥がすことは可能であるが通常の弱接着面の接着力より強い接着力を得られるように工夫されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三つ折り、二つ折りなどシートの折畳みによる貼り合わせにて秘密情報を隠蔽するための部材に関し、特に、各種申込書、葉書、カードをはじめとする帳票類に印字または印刷され表示される、例えば暗証番号や預貯金残高等の他人には知られたくない秘密情報を、隠蔽するための部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からシートを折畳んで重ね合わせることにより秘密情報を隠蔽するための部材で、その隠蔽部に剥離可能な接着剤を設けて剥離可能にしてあるシート部材においては、加圧、加熱などによる接着後における不本意な剥がれ防止のために色々な対策がなされてきた。接着力を強くすることにより剥がれにくくしたもの、あるいは剥離可能な接着面の周囲にのみ強接着剤とその内側にミシン目を設けることにより秘密情報が印字または印刷された剥離可能な接着面の周囲を切り取ってから剥離するように工夫されたものがある。
【特許文献1】特開平5−169881
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
剥離可能としたシートにおいては剥離が容易にでき、且つ剥離可能な部分が不本意に剥がれないようにするという二つの課題がある。たとえば一定の圧力を与えると接着力を増す接着剤を全面に設けた圧着シートにおいてはこれまで、剥離を容易にし、且つ破れを防止するためには接着するための装置で与える圧力を下げ、逆に剥がれを防止するために接着力を上げるためには装置の圧力を上げなくてはならず、常に圧着をする装置の圧着力を適正な範囲に調整する必要があった。接着力は接着剤の特性より環境温・湿度や保湿量、紙の厚み、あるいは接着面への印字密度により大きく変化するので、この圧着力調整も非常に複雑で煩雑なものとなり装置が複雑で高価になるばかりでなく、専任のオペレターでないと調整が難しいという課題もある。
【0004】
一方、剥離可能な接着面の周囲にのみ強接着剤とその内側にミシン目を設けることにより秘密情報が印字または印刷された剥離可能な接着面の周囲を切り取ってから剥離する対策を施したシートがあるが、たとえば葉書の周囲三辺に強接着剤とミシン目を追加すると開封時の剥離が非常にしにくくなるという欠点がある。また、開封時の剥離をしやすくするために左辺(長辺)の一辺のみに強接着剤とミシン目を設けられた場合で、もし接着力が弱い場合は上下(短辺)の部分から剥離してしまい隠蔽情報が見えてしまうという懸念がある。
【0005】
本発明は、このように装置の圧着力を煩雑に調整しなくては最適な圧着シートが提供できないという課題を克服することにあり、もし接着力が弱くても不本意に剥がれが生じない圧着シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
Z字状、V字状、C字状などに折り畳まれるよう構成された圧着シートに関して、貼り合わされる向かい合うシート片の少なくともどちらか一方に剥離可能な接着剤が前面に塗布され、また見開きとなる向かい合うシート片の先端辺(折り目と反対側)に沿って剥がれ防止のための接着後には剥離不可能な強接着剤が帯状に塗布されており、さらにその内側には強接着剤に沿ってミシン目が設けられている圧着シートがあるが、開封する時はこのミシン目部分を折ってから剥がすことができるようになっている。本発明は、このような圧着シートの向かい合う弱接着剤が前面に塗布されているシート面で、折り部の辺以外の三辺の中で強接着剤が設けられていない辺(例えば上下の二辺)の剥がれや浮きを防止するため、前記辺の淵の近傍に接着後も開封時には容易に剥がせるような補強接着剤を塗布したものである。この補強接着剤は全面に塗布されている弱接着剤よりはその部分の接着力が強くなるように、前記強接着剤より弱く、前記弱接着剤より強い特性とするか、あるいは前記強接着剤と同一の接着剤であるが接着面の相対する領域に配置しないようにすることで、接着力を弱めて補強接着剤として使用するようにしたものである。補強接着剤の塗布形状を帯状、三角状、ドット状にし、さらに大きさを調整することで接着力を調整することもできる。また補強接着剤の開封方向下流側のシートにカットを施すことで、もし補強接着剤の塗布部分がシートの剥離時に破れた場合においても、その破れが広がらないようにすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、もし圧着シートの接着力が弱くなるような状態があったとしても不本意な剥がれを未然の防止できると共に開封時は容易にこれを剥離することができるようになるので、圧着後の不本意なこれまでシートの保管が悪く接着力が低下してしまった場合、シートの特性バラツキ、あるいは接着面への秘密情報の印刷密度によって接着力が低下してしまう場合など、様々な状況においても多少の圧着力低下があっても安心して使用することができ、また圧着時の圧着力調整も不要となるような圧着シートを低供できる。また、圧着シートを圧着する装置においてもこれまでの装置より与える圧着力が少なくて済むので、機械を小型、安価にすることができる。さらに接着力が多少弱くなっても剥がれの心配がなく頻繁な圧力調整が不要なため、これまで設置が難しかった一般事務所でも容易に使うことができるような小型装置の提供が可能になる。
【発明の実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を図示に示す実施例に基づいて説明するが、本発明がそれらの実施例に限定されるものではない。
図1は圧着シートを圧着した最終的な状態の表面と裏面を示し、図2は同じく圧着前のシートの状態を表面と裏面とに図示したものである。圧着されるシートは図3に示すような形態で折畳みメシン目3に沿って折畳まれ、向かい合うシート片が別途与えられる圧着力により接着することになる。図3中の基材7はいわゆる用紙で、図2(裏面)に図示されるように基材7の全面に弱接着剤6が塗布された状態となっている。この弱接着剤6は通常では接着せず所定の圧力等付与されると接着可能となり、さらに接着後も剥離可能なものである。図1に示すような形態に圧着されたシートを開封する場合は、ミシン目2に沿って最初に折り返すことで基材7がミシン目2に沿って割られるので、そこから剥離することになる。本発明ではさらに図2(裏面)に図示される補強接着剤5a,5b,5c,5dを弱接着剤6の面の上に部分的に塗布する。この補強接着剤は強接着剤と同一材料、同一工程で塗布される場合の効率が良いので、その場合は向かい合うシート片の相対する部分には補強接着剤を配置しないようにして、強接着剤より弱く、弱接着剤より強い補強接着剤部を容易に作り出すことができる。当然、この補強接着剤の濃度などによる接着力の調整や補強接着剤の塗布量、塗布面積、塗布形状などによっても「強接着剤>補強接着剤>弱接着剤」の関係を作り出すことができる。
また、図5及び図6に示すような前記補強接着剤の近傍で、且つ開封方向の下流側に補強接着剤より広く切り込みを入れることもできる。この切り込みはハーフカット状態でも構わない。この切り込みのより万が一シートの開封時に補強接着剤の接着部分から基材7の破れが発生しても、この切り込みによりせき止められることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す圧着シートで、圧着後の状態を図示してある
【図2】本発明の実施例を示す圧着シートで、圧着前の状態を図示してある
【図3】圧着シートのA−A断面図である
【図4】本発明の他の実施例である
【図5】補強接着剤の近傍に切り込みを入れた実施例である
【図6】補強接着剤の近傍に切り込みを入れた実施例のA−A断面図
【符号の説明】
1 宛名印刷部
2 切り離し用ミシン目
3 折畳み用メシン目
4a,4b,4c,4d,4e,4f,4g,4h 強接着剤
5a,5b,5c,5d,5e,5f,5g,5h 補強接着剤
6 弱接着剤
7 基材(用紙)
8a,8b,8c,8d,8e,8f,8g,8h 切り込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り部を介して二つ以上のシート片部が連結されたシートが、前記折り部でZ字状、V字状、C字状などに折り畳まれるよう構成され、折り畳まれた時に向かい合う前記シート片部の少なくともどちらか一方、又は両方に通常では接着せず所定の条件が付与されると接着可能となり、接着後も剥離可能な弱接着剤が全面に設けられるとともに、前記シート片の略周辺部の少なくとも一辺に通常では接着せず前記接着剤と略同一条件が付与されると接着可能となり、接着後に剥離不可能となる強接着剤が帯状に設けられてなるシート片において、前記強接着剤が設けられていない残りの辺の少なくとも一辺に、通常では接着せず所定の条件が付与されると接着可能となり、前記強接着剤より接着力が弱く、接着後も剥離可能な補強接着剤を前記弱接着剤面上に例えば帯状、三角形状、あるいはドット状に設けたことを特徴とするシート。
【請求項2】
請求項1のシートにおいて前記補強接着剤が前記強接着剤と同じ接着剤であり、且つ向かい合うシート辺の向かい合う領域のどちらか一方だけに設けることで、同じ接着剤であっても強接着力とならないようにして、接着後も剥離可能としたことを特徴とするシート。
【請求項3】
請求項1、請求項2のシートにおいて前記補強接着剤により接着される領域の近傍で、且つ前記シート片の剥離方向の下流側に切り込みを設けることにより剥離時に用紙破れが起きても破れが広がらないようにしたことを特徴とするシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−284859(P2008−284859A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154520(P2007−154520)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(507192792)ピーエスイーソリューションズ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】