説明

補強枠付き組立貯水槽用天井パネル

【課題】組立貯水槽において、天井部の耐震構造の改良であり、薄肉の補強材で強度が期待でき、軽量化、コスト削減が図れる。そして、天井上面に補強材がなくなるので歩行に支障をきたすことも、ゴミがたまり易くなることも解消できる。更には、組立現場までへの梱包・輸送が天井パネルと補強粋が同じ梱包で出荷できるため荷数が削減でき、かつ、梱包時の緩衝材が削減できゴミを減らすことができるという更なる特徴をももたらす。
【解決手段】プレ−ト部とこの周囲に形成したフランジ部とからなる天井用パネルを使用し、隣合うパネルのフランジ部をボルト及びナットにて接続して天井とした組立貯水槽において、当該フランジ部の合わせ面全周に補強枠を組み込んだ組立貯水槽用天井パネル。1a‥プレ−ト部、1b‥フランジ部、2a、2b‥溝、3a、3b‥切欠部、4、11‥ボルト穴、10a、10b、10c、10d、10e、10f‥補強枠。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は組立貯水槽用天井パネルに関するものであり、更に詳しくは、補強枠付き貯水槽用天井パネルに係るものである。
【背景技術】
【0002】
集合住宅や高層ビル又は店舗や倉庫等の給水用、給湯用、空調用等に組立貯水槽が広く利用されている。かかる組立貯水槽はプレ−ト面とその周縁に形成されたフランジ部とからなるパネルを用い、主としてフランジ部をボルト及びナットにて連結して組立てられるものである。
【0003】
この組立貯水槽は耐震性が要求され、主として組立貯水槽の側壁と天井部の補強が行われている。耐震補強構造の第1として、側壁の外側のフランジに添って縦補強材が立てられ、対向する側壁における補強材の上端同士を引っ張り合う補強材を天井外側に格子状に配置させ、側壁の倒壊を防止する外部補強構造が行われている。又、第2として、接合した天井パネルの下部に防錆処置を施した補強梁を格子状に配置させ、側壁を通して縦補強材を接続し、補強材即ち貯水槽の倒壊の防止と、天井の下がりを防止する内部補強構造がある。更に、第3として、天井パネルを接合する際に、フランジ外面に補強板や梁を組み込み、天井の下がり及び地震時に天井が破壊するのを防止する内部補強構造も行われている。
【0004】
しかしながら、これらの各補強構造にあっても夫々課題があることも事実である。前記の第1の外部補強構造では天井外側に補強が配置されるため、点検時の歩行に支障をきたすおそれがあり、又、落ち葉等のごみが溜りやすいという問題点がある。第2の内部補強構造では貯水槽の内部に露出する補強材が多く、補強材には樹脂コ−トを施すのが一般的ではあるが、防錆処理性能によっては金属部が腐食してしまい、耐震性能が低下するおそれがある。第3の内部補強構造は、第1の補強構造と併用するため補強部材が多く、又、天井パネル接合時に一緒に組み込むので施工しずらいという問題点がある。
【0005】
そして、上記の各補強構造に共通することとして、補強部材がパネルと別々であり、施工現場への部材の梱包・出荷する荷数が多いという問題があり、一つでも欠品があれば組立がそれだけ遅れてしまうということが指摘されている。又、貯水槽内部に配置される部材には通常は樹脂コ−トがなされるが、このコ−ト層は傷が付きやすいので梱包の際に緩衝のための梱包材を多く用いるため、施工現場でのごみが多量に発生するという別の問題もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような従来の技術に鑑みてなされたものであり、隣合うパネルの周囲フランジ部をボルトで接続して天井とした組立貯水槽において、耐震補強材とフランジ部との取り合いを改善することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は、プレ−ト部とこの周囲に形成したフランジ部とからなる天井用パネルを使用し、隣合うパネルのフランジ部をボルト及びナットにて接続ボルトで接続して天井とした組立貯水槽において、当該フランジ部の合わせ面全周に好ましくは鋼製の補強枠を組み込んだことを特徴とする組立貯水槽用天井パネルにかかるものである。かかる補強枠は天井用パネルのフランジ部全周を囲うように組み込まれるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は以上の構造を有するものであり、薄肉の補強材で同等の強度が期待でき、軽量化、コスト削減が図れる。天井上面に補強材がなくなるので歩行に支障をきたすことも、ゴミがたまり易くなることも解消できる。又、補強金具の錆の発生が低減され、特別な防錆処理が不要となりコスト削減が図れるという特徴がある。更には、組立現場までへの梱包・輸送が天井パネルと補強粋が同じ梱包で出荷できるため荷数が削減でき、かつ、梱包時の緩衝材が削減できゴミを減らすことができるという更なる特徴をももたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の要旨は、組立貯水槽用天井パネルのフランジ部の改良に関するもので、従来の耐震構造は天井パネルの連結とは全く異なる部材をもって補強するものであるが、本発明はボルト及びナットにて連結される天井パネルのフランジ部に直接補強材を適用して、従来の天井パネルとは全く別の部材をもって補強する従来の構造を改めたものである。
【0010】
補強枠の構造側から言えば、断面がフラット形状、L型形状、C型形状、T型形状、H型形状、ロッド形状、パイプ形状等がある。これらの補強枠を天井パネルのフランジ部に適用し、ボルト及びナットにて連結したものである。
【0011】
一方、天井パネルに適用した際の補強枠の組立状態から言えば、平面視で言えば、天井パネルのフランジ部の配置と同様に口型形状、格子型形状をなしており、その一部或いは複数部位にて開いた状態であってもよい。
【0012】
組立貯水槽の天井パネルにあっては、ステンレス製のものであっても樹脂製のものであってもよいが、通常では硬質の樹脂、例えば不飽和ポリエステル樹脂製のものである。後者の場合には、天井パネルの外形を区画する金型を準備し、フランジ部を構成する金型の部分に補強枠をセットし、この状態で樹脂材料を充填してこれを架橋させて天井パネルを得ることも可能である。この場合には、フランジ部に補強枠が埋設されることとなる。従って、基本的には補強枠に錆処理が不要となりコスト削減が図れるという特徴がある。更には、組立現場までへの梱包・輸送が天井パネルと補強粋が同じ梱包で出荷できるため荷数が削減でき、かつ、梱包時の緩衝材が削減できゴミを減らすことができるという更なる特徴をももたらす。
【0013】
補強枠にはフランジ部のボルト穴に合わせてボルト穴が開けられ、パネル同士を接続するだけでパネルと一体化し、天井パネルの接続目地を全周補強できることとなったものであり、この構造を採用することで、従来では内部及び/又は外部に独立して取付ける補強材を省略でき、金属の露出、出っ張りを極力少なくできることとなったものである。
【0014】
本発明を実施することにより多くの特徴があるが、以下に利点をまとめて記載する。
(1)天井パネルと補強枠は全周がボルトで接合されることで一体化し、フランジ部の曲げ、引張強度、及びパネル全体の剛性に対し複合強度が得られるため、従来の補強にくらべ薄肉の補強で同等の強度が期待でき、軽量化、コスト削減が図れる。
(2)外部補強構造と対比し、側壁を維持するための引張補強が不要になり天井上部の金具の露出がなくなるため、歩行に支障をきたすことも、ゴミがたまり易くなることも解消できる。
(3)内部補強構造と対比し、天井内部に露出する補強金具が不要となり錆の発生がなくなるとともに補強材の腐食による側壁の倒壊のおそれがなくなる。
(4)補強枠は天井パネル接合後は内外とも露出がなくなるため、特別な防錆処理が不要となリコスト削減が図れる。
(5)天井パネルと補強粋が同梱包で出荷できるため、荷数が削減できる。
(6)樹脂コート品が削減できるため梱包材が削減できゴミを減らすことができる。
【0015】
本発明の天井パネルを更に言えば、組立貯水槽は基本的には100×100cmの正方形のパネルを使用し、フランジ部を連結して構成されるものであり、特別な寸法はほとんどあり得ない。従って、本発明の天井パネルも又通常は平面視で100×100cmの大きさである。従って、天井パネルの周囲フランジの合わせ面(外面)全周に補強を組み込むために補強枠の寸法分だけ小さくし、若しくは溝や切り欠きを設けた天井パネルとするものである。即ち、小さくした分若しくは溝や切欠き分の大きさの補強枠を製作し当該部位に嵌め込むもので、これによって天井パネルを100×100cmと同等の大きさとするものである。
【実施例】
【0016】
以下、実施例をもって本発明を更に説明する。図1は天井パネル1の上方からの平面図であり、図2はA−A線での断面図である。図中、1aはプレ−ト部であり、この周囲に内側に向けてフランジ部1bが形成されたものである。一般には天井パネル1は100×100cmの大きさであり、フランジ部1bの高さは7cmである。
【0017】
図3は本発明の天井パネル1のフランジ部1bのみを示す図であり、(a)はフランジ部1bを薄くした例、(b)フランジ部1bの外側に角形の溝2aを形成した例、(c)フランジ部1bの外側に半円形の溝2bを形成した例、(d)及び(e)はフランジ部1bの外側に切欠部3a、3bを形成した例である。
【0018】
図4(a)は図3(a)のフランジ部1bを薄くした天井パネル1を用いた連結構造の断面図である。そして、フランジ部1bには連結に使用するボルトが差し込まれる穴4が形成されている。用いられた補強枠10aは鋼製で断面フラット型のものであり、これにもボルトが差し込まれる穴11が開けられている。
【0019】
図4(b)は図3(b)のフランジ部1bの外側に角形の溝2aを形成した天井パネル1を用いた連結構造の断面図である。用いられた補強枠10aは鋼製で断面フラット型のものであり、対向するフランジ部1bに形成された角形の溝2a間に補強枠10aを挟まれた構造である。
【0020】
図4(c)は図3(c)のフランジ部1bの外側に半円形の溝2bを形成した天井パネル1を用いた連結構造の断面図である。用いられた補強枠10bは鋼製で断面円形状の棒状体である。対向するフランジ部1bに形成された半円形の溝2b間に補強枠10bを挟まれた構造である。
【0021】
図4(d)、(e)は図3(d)、(e)のフランジ部1bの外側に切欠部3a、3bを形成した天井パネル1を用いた連結構造の断面図である。用いられた補強枠10aは鋼製で断面フラット型のものであり、フランジ部1bに形成された切欠部3a、3b間に補強枠10aを挟まれた構造である。
【0022】
尚、図5は図4(b)の連結構造の詳細な断面図である。図中、20はパッキンであり、補強枠10aを挟み、ボルト30を差し込み、これをナット31にて螺着させてなるものである。かかる補強枠10aによって天井パネル1にて天井が構成されるものであり、これによって耐震補強がなされるものである。
【0023】
図6(a)〜(d)はL型の補強枠10cを用いた天井パネル1を用いた連結構造の断面図である。
【0024】
図7はC型の補強枠10dを用いた天井パネル1を用いた連結構造の断面図である。
【0025】
図8(a)〜(d)はT型の補強枠10eを用いた天井パネル1を用いた連結構造の断面図である。
【0026】
図9はH型の補強枠10fを用いた天井パネル1を用いた連結構造の断面図である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は以上の通りであり、従前のように耐震構造をを特に意識することなく施工されることともなり、組立貯水槽を構成する他の部位のパネルにも広く利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は天井パネル1の上方からの平面図である。
【図2】図2は図1のA−A線での断面図である。
【図3】図3は本発明の天井パネルのフランジ部のみを示す図である。
【図4】図4はフラット型の補強枠を用いた天井パネルの連結構造の図である。
【図5】図5は図4(b)の連結構造の詳細な断面図である。
【図6】図6はL型の補強枠を用いた天井パネルの連結構造の図である。
【図7】図7はC型の補強枠を用いた天井パネルの連結構造の図である。
【図8】図8はT型の補強枠を用いた天井パネルの連結構造の図である。
【図9】図9はH型の補強枠を用いた天井パネルの連結構造の図である。
【符号の説明】
【0029】
1‥天井パネル、
1a‥プレ−ト部、
1b‥フランジ部、
2a、2b‥溝、
3a、3b‥切欠部、
4、11‥ボルト穴、
10a、10b、10c、10d、10e、10f‥補強枠、
20‥パッキン、
30‥ボルト、
31‥ナット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレ−ト部とこの周囲に形成したフランジ部とからなる天井用パネルを使用し、隣合うパネルのフランジ部をボルト及びナットにて接続して天井とした組立貯水槽において、当該フランジ部の合わせ面全周に補強枠を組み込んだことを特徴とする組立貯水槽用天井パネル。
【請求項2】
補強枠は、天井用パネルのフランジ部全周を囲うように組み込まれる請求項1記載の組立貯水槽用天井パネル。
【請求項3】
天井用パネルのフランジ部に、補強枠が嵌り合う窪み部を形成した請求項1又は2記載の組立貯水槽用天井パネル。
【請求項4】
天井用パネルのフランジ部に、補強枠が埋設された請求項1又は2記載の組立貯水槽用天井パネル。
【請求項5】
補強枠を天井用パネル成形用の金型にセットし、フランジ部に一体化する請求項1記載の組立貯水槽用天井パネル。
【請求項6】
補強枠が、鋼製である請求項1乃至5いずれか1記載の組立貯水槽用天井パネル。
【請求項7】
天井用パネルが、樹脂製である請求項1乃至6いずれか1記載の組立貯水槽用天井パネル。
【請求項8】
天井用パネルが、熱硬化性樹脂である請求項7記載の組立貯水槽用天井パネル。
【請求項9】
熱硬化性樹脂が、不飽和ポリエステル樹脂である請求項8記載の組立貯水槽用天井パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−223610(P2007−223610A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43433(P2006−43433)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】