説明

補強用からみ織物および複合材料

【課題】
織物の形態安定・柔軟性に優れて容易に取り扱うことができ、樹脂含浸性・生産性にも優れ、かつ、力学特性に優れる複合材料を得ることができる、補強材として好適なからみ織物を提供すること。
【解決手段】
複数の強化繊維糸条がたて方向に配列したたて方向強化繊維糸条群と、繊度が前記強化繊維糸条の1/5以下である補助繊維とで構成される補強用からみ織物であって、前記補助繊維がたて糸およびよこ糸としてからみ組織され、前記からみ組織により前記強化繊維糸条群が一体化されていることを特徴とする補強用からみ織物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強材としてとして用いられる強化繊維糸条と補助繊維とから構成される補強用からみ織物およびそれを用いた複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
橋脚、トンネル、煙突や建物などのコンクリート構造物は、長年の使用により耐震基準の見直しなどによって、補修・補強や剥落防止の措置が必要となってきている。コンクリート構造物を補修・補強する代表的な工法として、繊維シート工法がある。この工法は、現場で繊維シートに樹脂を含浸させてながら固化させ、いわゆる繊維強化プラスチック(FRP)とした複合材料で補修・補強したり、剥落防止したりするものである。繊維シートでコンクリート構造物を補修・補強や剥落防止するに当たっては、FRPのマトリックス樹脂となる樹脂(例えばエポキシ、ウレタン、アクリルなど)などを塗布し、繊維シートを積層し、ローラなどで樹脂の分布が均一になるように樹脂を繊維シートに含浸させる。また、モルタル、コンクリート、アスファルトなどのマトリックスを繊維シートに含浸し固化させた複合材料が用いられる場合もある。
【0003】
このような場合に用いられる繊維シートとしては、例えば織物、編物、メッシュ状布帛などが挙げられる。強化繊維糸条同士の間隔が広く網状に配列されているメッシュ状布帛として代表的なものに、からみ織(紗織や絽織)が挙げられる。従来、強化繊維糸条を用いたからみ織物としては、強化繊維糸条それ自体でからみ組織を形成するものが知られている(例えば、特許文献1、2など)。かかるからみ織物では、強化繊維糸条がクリンプ(屈曲)するため、強化繊維糸条が本来発現すべき特性を十分に活用できないという問題があった。また、からみ織りはたて糸とよこ糸との交錯点が一般的には厚くなるため、複合材料とした補強材において、凹凸が表面に現れ外観を損なうという問題もあった。更に、強化繊維糸条同士の間隔が広く網状に配列されているため目ずれし易く、形態保持のために熱可塑性繊維や樹脂エマルジョンなどによる接着(目どめ)を行う必要があり、接着することにより、製造する際に接着工程が必要になることから強度低下やコスト高を招く原因になっていた。更に、複合材料としては本来不要な接着剤が補強材に含まれてしまうため強度低下を引き起こす場合があるだけでなく、接着により強化繊維糸条が必要以上に拘束されて織物の柔軟性を損なうため、被補強体への形状追従性や取扱性に劣るという問題もあった。
【0004】
これに対して、織糸のクリンプを最小限にするという観点から、従来から、平織、ノンクリンプ織物等を用いて補強材を得る努力がなされてきた(例えば特許文献3〜6)。しかしながら、これらの技術においても、織物形態を保持するためには、熱可塑性繊維や樹脂エマルジョンなどによる接着(目どめ)を行う必要があり、同様の問題があった。
【0005】
特に、特許文献5には、補助糸が平織組織を形成したメッシュ状の補強用織物が開示されている。しかしながら、強化繊維を一体化する補助糸が平織などの通常の織組織では、マトリックスとなる樹脂などを含浸させる際に、樹脂を織物全体に行き渡させる樹脂流路が必要となるが、補助糸の部分が密になり易い(嵩高くない)織組織であるため樹脂流路として機能せずに、織物全体に樹脂を十分に行き渡させることができないという問題があった。
【0006】
つまり、特許文献1〜6をはじめとした従来の技術では、織物の形態安定に優れるだけでなく、柔軟性・取扱性にも優れ、かつ、高い力学特性・生産性を発現する補強用織物は見出されておらず、かかる技術が渇望されていたのが実状である。
【特許文献1】実開平02−106477号公報
【特許文献2】特開平03−028155号公報
【特許文献3】特開昭64−040632号公報
【特許文献4】特開平10−102792号公報
【特許文献5】特開2001−226849号公報
【特許文献6】特開2001−329466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述した問題点を解決し、織物の形態安定に優れるだけでなく、柔軟性・取扱性・樹脂含浸性・生産性にも優れ、かつ、高い力学特性を発現する複合材料を得ることができる、補強材として好適なからみ織物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有する。
(1)複数の強化繊維糸条がたて方向に配列したたて方向強化繊維糸条群と、繊度が前記強化繊維糸条の1/5以下である補助繊維とで構成される補強用からみ織物であって、前記補助繊維がたて糸およびよこ糸としてからみ組織され、前記からみ組織により前記強化繊維糸条群が一体化されていることを特徴とする補強用からみ織物。
(2)前記強化繊維糸条群における強化繊維糸条同士の間隔が1〜100mmの範囲内にある(1)記載の補強用からみ織物。
(3)複数の強化繊維糸条がよこ方向に配列したよこ方向強化繊維糸条群を有し、前記よこ方向強化繊維糸条群と前記たて方向強化繊維糸条群とは交錯して一体化されている(1)または(2)記載の補強用からみ織物。
(4)前記たて方向強化繊維糸条群を構成する強化繊維糸条同士の間隔、および、前記よこ方向強化繊維糸条群を構成する強化繊維糸条同士の間隔が10〜100mmであり、かつ、それぞれの間隔が実質的に同一である(3)に記載の補強用からみ織物。
(5)強化繊維糸条が炭素繊維糸条であり、補助繊維がガラス繊維、ポリエステル繊維およびポリアミド繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種である(1)〜(4)のいずれかに記載の補強用からみ織物。
(6)織物目付が100〜350g/mであり、強化繊維目付が50〜300g/mである(1)〜(5)のいずれかに記載の補強用からみ織物。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の補強用からみ織物に、モルタル、コンクリート、アスファルトおよび樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種が含浸されて固化されてなることを特徴とする複合材料。
(8)コンクリート構造物または地盤の表面に貼り付けて補強するために用いる(7)に記載の複合材料。
【発明の効果】
【0009】
本発明の補強用からみ織物は、からみ組織された補助繊維により強化繊維糸条群が一体化されているため、従来の強化繊維糸条そのものをからみ組織させたネット状布帛のように接着剤がなくても形態安定性だけでなく柔軟性・取扱性・・樹脂含浸性・生産性にも優れ、被補強体の形状に容易に追従させることができる。
【0010】
また、強化繊維糸条群がクリンプを最小限に抑制されるように一体化されているため、力学特性に優れる複合材料とでき、高い補強効果を発現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の望ましい実施の形態をその一実施態様について図面を用いて説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施態様を示す補強用からみ織物の概略平面図である。
【0013】
本発明の補強用からみ織物1aは、複数の強化繊維糸条2a、2b、、、がたて方向に配列したたて方向強化繊維糸条群と、繊度が前記強化繊維糸条の1/5以下である補助繊維4a、4b、5a、5b、5c、、、とで構成される。そして、かかる補強用からみ織物1aは、たて糸である補助繊維4a、4b、、、とよこ糸である補助繊維5a、5b、5c、、、とがからみ組織されている。たて方向強化繊維糸条群は、からみ組織されたたて糸である補助繊維4a、4b、、、と、よこ糸である補助繊維5a、5b、5c、、、とにより一体化されている。つまり、補助繊維が形成したからみ組織(地織)において、たて糸である補助繊維4a、4b、、、に保持されたよこ糸である補助繊維5a、5b、5c、、、が、たて方向強化繊維糸条群2a、2b、、、に対してそれぞれの強化繊維糸条を浮き沈みすることにより、たて方向強化繊維糸条群2a、2b、、、が地織であるからみ組織に一体化されてシートを形成するよう保持されている。
【0014】
本発明の補強用からみ織物は、強化繊維糸条自体ではからみ組織を形成せずに、補助繊維がからみ組織して強化繊維糸条群を一体化しているため、強化繊維糸条においてクリンプが殆ど形成されずに、強化繊維糸条が本来発現すべき特性を十分に活用することができるのである。また、補助繊維として、強化繊維糸条の1/5以下の繊度の細いものを用いているため、からみ組織におけるたて糸とよこ糸との交錯点も厚くならず、織物が平滑になり複合材料に成形した際に外観を損なう問題も発生しない。更に、強化繊維糸条同士の間隔が広く網状に配列され、かつ、交錯点を固定するための接着剤を用いなくても目ずれし難く、優れた形態保持性や取扱性が実現できる。別の視点から言えば、接着剤を使用する必要がないため、低コストで織物を得ることができるだけでなく、強化繊維糸条を目ずれが殆ど無い程度に緩やかに拘束しているので、織物の柔軟性(被補強体への形状追従性)にも優れるのである。
【0015】
かかる補強用からみ織物において、たて方向強化繊維糸条群における強化繊維糸条同士の間隔Laが1〜100mm、好ましくは2〜80mm、より好ましくは5〜50mmの範囲内であるのが良い。間隔Laが1mm未満であると、優れた形態保持性や取扱性が実現する本発明の意義が薄れがちである一方、100mmを超えると、からみ織物として被補強材を補強する機能を果たせない場合がある。
【0016】
図2は、本発明の他の一実施態様を示す補強用からみ織物の概略平面図である。
【0017】
補強用からみ織物1bは、複数の強化繊維糸条2c、2d、、、がたて方向に配列したたて方向強化繊維糸条群と、複数の強化繊維糸条3a、3b、、、がよこ方向に配列したよこ方向強化繊維糸条群を有し、繊度が強化繊維糸条の1/5以下の補助繊維4c、4d、5d、5e、、、、群とで構成される。そして、かかる補強用からみ織物1bは、図1に示す補強用からみ織物1aと同様に、たて糸である補助繊維4c、4d、、、とよこ糸である補助繊維5d、5e、、、とがからみ組織されている。たて方向強化繊維糸条群は、からみ組織されたたて糸である補助繊維4c、4d、、、と、よこ糸である補助繊維5d、5e、、、とにより一体化されている。更に、よこ方向強化繊維糸条群3a、3b、、、は、たて方向強化繊維糸条群2c、2d、、、と交錯して一体化されている。すなわち、よこ方向強化繊維糸条群3a、3b、、、とたて方向強化繊維糸条群2c、2d、、、とは交錯して、地織であるからみ組織により、シートを形成するよう保持されている。つまり、補助繊維が形成したからみ組織(地織)において、たて糸である補助繊維4c、4d、、、に保持されたよこ糸である補助繊維5d、5e、、、が、たて方向強化繊維糸条群2c、2d、、、に対してそれぞれの強化繊維糸条を浮き沈みすることにより、たて方向強化繊維糸条群2c、2d、、、が地織であるからみ組織と一体化されてシート状を形成するよう保持され、かつ、かかるたて方向強化繊維糸条群2c、2d、、、とよこ方向強化繊維糸条群3a、3b、、、とが交錯または地織であるからみ組織とたて方向強化繊維糸条群2c、2d、、、との間に挟み込まれて、からみ組織と一体化されてシート状を形成するよう保持されている。
【0018】
かかる補強用からみ織物において、たて方向強化繊維糸条群における強化繊維糸条同士の間隔La、および、よこ方向強化繊維糸条群における強化繊維糸条同士の間隔Lbが10〜100mm、好ましくは2〜80mm、より好ましくは5〜50mmの範囲であって、前記間隔LaとLbとが実質的に同一であるのが良い。間隔LaおよびLbが1mm未満であると、優れた形態保持性や取扱性が実現する本発明の意義が薄れがちである一方、100mmを超えると、からみ織物として被補強材を補強する機能を果たせない場合がある。また、前記間隔LaとLbとが同一であると、補強用からみ織物がたて方向にもよこ方向にも対称となるため、方向による使い分けをする必要がない。
【0019】
本発明の補強用からみ織物において、その織物目付は、100〜350g/m、好ましくは150〜330g/m、より好ましくは200〜300g/mであるのが良い。織物目付が100g/m未満であると、からみ織物として被補強材を補強する機能を果たせないだけでなく、複合材料を成形する際に積層する枚数が多くなり過ぎて成形コストがかかってしまう場合がある一方、350g/mを超えると、強化繊維糸条同士の間隔が広くても優れた形態保持性や取扱性が実現する本発明の意義が薄れるだけでなく、マトリックス樹脂の含浸が困難となる場合がある。なお、織物目付とは、強化繊維糸条と補助繊維の合計の目付のことをいう。
【0020】
別の視点からは、本発明の補強用からみ織物の強化繊維目付は、50〜300g/m、好ましくは100〜280g/m、より好ましくは150〜250g/mであるのが良い。強化繊維目付が50g/m未満であると、からみ織物として被補強材を補強する機能を果たせない場合がある一方、300g/mを超えると、強化繊維糸条同士の間隔が広くても優れた形態保持性や取扱性が実現する本発明の意義が薄れるがちである。なお、強化繊維目付とは強化繊維糸条の目付のことをいう。
【0021】
本発明で用いる強化繊維糸条としては、例えば炭素繊維、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエチレン繊維、PBO繊維、ガラス繊維、SUSなどを用いた金属繊維、セラミック繊維などの糸条が挙げられる。具体的には、引張強度2GPa以上の繊維であるのが好ましい。引張強度が2GPa未満であると、本発明の課題である高強度の複合材料が得られにくくなってしまう。中でも、比強度・比弾性率に優れ、耐熱性、耐薬品性などに優れる炭素繊維を用いるのが好ましい。なお、本発明でいう炭素繊維には、通常黒鉛繊維と称されるものも包含する。
【0022】
かかる炭素繊維糸条としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、セルロース系炭素繊維、これらを2種類以上ブレンドして構成された糸条等が例として挙げられる。複合材料の強度や弾性率を更に重要視する場合は、これらの中でもPAN系炭素繊維を用いるのが好ましい。また、フィラメント数が5,000〜50,000本、好ましくは10,000〜30,000本の範囲内であり、繊度が300〜3,500TEX、好ましくは500〜2,500TEXの範囲内であるものは、生産性よく補強用からみ織物を製造できるだけでなく安価に入手できる。
【0023】
本発明で用いる補助繊維としては、強化繊維糸条の繊度の1/5以下の繊度を有するものであれば特に制約はなく強化繊維糸条と同じ種類のものを用いることもできるが、通常、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などが用いられる。強化繊維糸条のクリンプを小さくするためには補助繊維の繊度も細い方が好ましく、1/10以下、更には1/20以下であるのが好ましい。補助繊維の繊度に特に下限はないが、繊度が細すぎるとからみ組織の形成が困難になってくるため、強化繊維糸条の繊度の1/500以上であるのが好ましい。
【0024】
補助繊維としては、からみ組織させるため製織時に毛羽発生し難いものが好ましく用いられる。この特性はたて糸である補助繊維において特に重要となる。かかる観点から、たて糸の補助繊維としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維などの合成繊維を用いるのが好ましい。中でも特に安価で寸法安定性にも優れるポリエステル繊維が好ましい。一方、よこ糸に用いる補助繊維は、たて糸ほど擦過が厳しくないが、寸法安定性が極めて重要となる。よこ糸の寸法が変化すると、単位面積当たりの強化繊維糸条の重量(強化繊維糸条の目付)が変動し、複合材料において所望の補強効果が得られるよう設計することが困難となる。かかる観点からよこ糸である補助繊維としては、ガラス繊維またはポリエステル繊維を用いるのが好ましい。
【0025】
本発明の複合材料は、上述の補強用からみ織物にモルタル、コンクリート、アスファルトまたは樹脂が含浸されて固化されてなる。上述の補強からみ織物によると、織物の柔軟性(被補強材への形態追従性)・取扱性・生産性に優れ、力学特性に優れる複合材料が得ることができる。
【0026】
本発明の複合材料は、被補強材を補強するためのものであり、コンクリート構造物や地盤や盛土の補修・補強、コンクリートや岩盤の剥落防止や防水工事など、表面に貼り付ける補強材として用いられるほか、補強用からみ織物をモルタル、コンクリート、アスファルトまたは樹脂などに埋没させて補強材としての複合材料を形成することもできる。
【0027】
本発明の複合材料が用いられる態様として特に好ましいものは、強化繊維糸条同士の間隔が広く網状に配列されて用いられるものであり、具体的にはコンクリート構造物や地盤の表面に貼り付けられて補強している態様が挙げられる。かかる態様で用いられる場合、本発明の補強用からみ織物および複合材料を用いる意義が最も高いと云える。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本実施例では次の材料を用いた。
【0029】
強化繊維糸条:炭素繊維(引張強度4,900MPa、引張弾性率230GPa、フィラメント数12,000本、繊度800TEX)
補助繊維1:ガラス繊維(ECE225 1/0 1.0Z、繊度22.5TEX)
補助繊維2:ポリエステル繊維(フィラメント数36本、繊度7.8TEX)2糸条を用いた駒撚糸(それぞれに下撚をかけ、それを2本合わせて上撚をかけたもの)
常温硬化タイプのエポキシ樹脂:株式会社東邦アーステック製“トーホーダイトCF5PS”
(実施例1)
補助繊維2をたて糸(密度13本/25mm)、補助繊維1をよこ糸(密度15本/25mm)としてからみ組織を形成させながら、たて糸として炭素繊維糸条を6.6本/25mmで挿入して、からみ組織により炭素繊維糸条を一体化して製織した。この織物における繊維目付は232g/mであり、炭素繊維糸条目付は217g/mであった。得られた一方向性補強用からみ織物は、補助繊維1、2がからみ組織してたて糸である炭素繊維糸条を一体化しており、補助繊維同士を接着する接着剤を用いなくても目ずれし難く、形態保持性や取扱性だけでなく、柔軟性にも優れた。
【0030】
かかる一方向性補強用からみ織物と常温硬化タイプのエポキシ樹脂とを用いて、社団法人土木学会規準JSCE−E 541−2000鋼材・補強材「連続繊維シートの引張試験方法(案)」に従って複合材料を成形して試験片を作製し、引張強度を測定した(養生期間は25℃で28日間)。エポキシ樹脂を含浸する時、からみ組織部分から樹脂が簡単に厚み方向に浸透し、樹脂含浸性に優れた。なお、たて方向の引張強度は4227MPa、引張弾性率は252GPaであった。
(実施例2)
補助繊維2をたて糸(密度15本/25mm)、補助繊維1をよこ糸(密度29本/25mm)としてからみ組織を形成させながら、たて糸として炭素繊維糸条を1.8本/25mm、よこ糸として炭素繊維糸条を1.9本/25mmで挿入して、からみ組織により炭素繊維糸条を一体化して製織した。この織物における繊維目付は156g/mであり、炭素繊維糸条目付は123g/mであった。得られたメッシュ状二方向性補強用からみ織物は、補助繊維1、2がからみ組織してたて糸およびよこ糸であるメッシュ状に配置された炭素繊維糸条を一体化しており、補助繊維同士を接着する接着剤を用いなくても目ずれし難く、形態保持性や取扱性だけでなく、柔軟性にも優れた。
【0031】
かかる二方向性補強用からみ織物を、実施例1で用いたエポキシ樹脂を用いてハンドレイアップ法でコンクリート板表面に接着して複合材料を得た。得られた複合材料は、エポキシ樹脂が含浸することにより補助繊維1、2が透明化して、メッシュ状に配置された炭素繊維糸条以外の箇所から下地であるコンクリート板の視認が可能であった。
【0032】
また、かかる二方向性補強用からみ織物を用いて、実施例1と同様にして複合材料を成形して試験片を得、引張強度を測定した。たて方向の引張強度は4437MPa、引張弾性率は287GPaであった。
(比較例1)
実施例1での補助繊維2のたて糸を用いず、炭素繊維糸条のたて糸と補助繊維1のよこ糸とが構成する組織を平織組織にする以外は実施例1と同様にして炭素繊維織物を得た。得られた一方向性補強用織物は、補助繊維1、2がからみ組織していないだけでなく、炭素繊維糸条と平織組織している補助繊維1に接着剤を用いていないため、炭素繊維糸条が目ずれし易く、形態保持性や取扱性に劣った。
【0033】
かかる織物を用いて実施例1と同様にして複合材料を成形して試験片を得、引張強度を測定した。なお、エポキシ樹脂を含浸する時、補助繊維1、2がからみ織組織を形成していないため樹脂が厚み方向に浸透し難く、実施例1より樹脂含浸性に劣った。なお、たて方向の引張強度は4288MPa、引張弾性率は252GPaで、実施例1とほぼ同等であった。
(比較例2)
実施例2での補助繊維2のたて糸と補助繊維1のよこ糸とを用いず、炭素繊維糸条のたて糸とよこ糸とをそれぞれ3.3本/25mmで直接交錯させて平織組織にする以外は実施例2と同様にして炭素繊維糸条目付は210g/m2の炭素繊維織物を得た。得られた二方向性補強用織物は、補助繊維1、2を用いてからみ組織させず、直接に炭素繊維糸条を交錯させているため、炭素繊維糸条が目ずれし易く、炭素繊維糸条目付が約2倍にも関わらず形態保持性や取扱性に劣った。
【0034】
かかる織物を用いて実施例1と同様にして複合材料を成形して試験片を得、引張強度を測定した。なお、エポキシ樹脂を含浸する時、炭素繊維糸条目付が約2倍であるため樹脂が厚み方向に浸透し難く、実施例2より樹脂含浸性に劣った。なお、たて方向の引張強度は4247MPa、引張弾性率は244GPaで、実施例2より僅かに劣った。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の補強用からみ織物によると、織物の柔軟性・取扱性・樹脂含浸性・生産性に優れ、力学特性に優れる複合材料が得られるため、コンクリート構造物や地盤や盛土の補修・補強、コンクリートや岩盤の剥落防止や防水工事など、表面に貼り付ける補強材をはじめ、モルタル、コンクリート、アスファルトまたは樹脂などに埋没させる補強材として特に好適であり、土木分野の補強材として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施態様を示す補強用からみ織物の概略平面図である。
【図2】本発明の他の一実施態様を示す補強用からみ織物の概略平面図である。
【符号の説明】
【0037】
1a、1b 補強用からみ織物
2a、2b、2c、2d たて方向に配列したたて方向強化繊維糸条
3a、3b よこ方向に配列したよこ方向強化繊維糸条
4a、4b、4c、4d たて方向に配列した補助繊維
5a、5b、5c、5d、5e よこ方向に配列した補助繊維
La たて方向に配列したたて方向強化繊維糸条同士の間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の強化繊維糸条がたて方向に配列したたて方向強化繊維糸条群と、繊度が前記強化繊維糸条の1/5以下である補助繊維とで構成される補強用からみ織物であって、前記補助繊維がたて糸およびよこ糸としてからみ組織され、前記からみ組織により前記強化繊維糸条群が一体化されていることを特徴とする補強用からみ織物。
【請求項2】
前記強化繊維糸条群における強化繊維糸条同士の間隔が1〜100mmの範囲内にある請求項1記載の補強用からみ織物。
【請求項3】
複数の強化繊維糸条がよこ方向に配列したよこ方向強化繊維糸条群を有し、前記よこ方向強化繊維糸条群と前記たて方向強化繊維糸条群とは交錯して一体化されている請求項1または2記載の補強用からみ織物。
【請求項4】
前記たて方向強化繊維糸条群を構成する強化繊維糸条同士の間隔、および、前記よこ方向強化繊維糸条群を構成する強化繊維糸条同士の間隔が10〜100mmであり、かつ、それぞれの間隔が実質的に同一である請求項3に記載の補強用からみ織物。
【請求項5】
強化繊維糸条が炭素繊維糸条であり、補助繊維がガラス繊維、ポリエステル繊維およびポリアミド繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の補強用からみ織物。
【請求項6】
織物目付が100〜350g/mであり、強化繊維目付が50〜300g/mである請求項1〜5のいずれかに記載の補強用からみ織物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の補強用からみ織物に、モルタル、コンクリート、アスファルトおよび樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種が含浸されて固化されてなることを特徴とする複合材料。
【請求項8】
コンクリート構造物または地盤の表面に貼り付けて補強するために用いる請求項7に記載の複合材料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−150725(P2008−150725A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337885(P2006−337885)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】