説明

補強用棒状部材配置用補助具および該補助具を用いた中空柱の補強工法

【課題】 複数の補強用棒状部材の下端部を中空柱の側部開口の真横に位置させ得るように簡単かつ安全に保持することができる。
【解決手段】 中空柱100の側部開口100aに対向する中空柱100の奥側の内壁100bに取り付けられた補強用棒状部材配置用補助具81の複数の受止保持部82c、83bで複数のアラミドロッドおよびPC鋼線の下端部を受け止めて保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部が地中に埋設されて地上に立設された中空柱の補強工法を補助するために使用される補強用棒状部材配置用補助具および該補助具を用いた中空柱の補強工法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管柱やコンクリート製電柱等の中空柱は、通常、その基端部の所定長部分が地中に埋設されて地上に立設される。このような中空柱は、内部が空洞、すなわち中空の筒状体である。
【0003】
このような既設の中空柱の補強に際しては、例えば地中に埋設された地中部分と地上に立設された地上部分との境の地際から1m〜2m程上方の側面に形成された側部開口から中空柱の内部に補強用棒状部材を複数本挿入し、さらにモルタル等を注入することによって補強している。
【0004】
なお、このように複数の補強用棒状部材で中空柱を補強するには、この複数の補強用棒状部材を中空柱の側部開口から中空柱内に挿入した後、この挿入した複数の補強用棒状部材の下端部が側部開口のほぼ真横に位置するように各補強用棒状部材をワイヤで上方から吊り下げておき、このように複数の補強用棒状部材を上方から吊り下げた状態で補強用棒状部材の挿入のために必要な種々の事前作業、例えば中空柱の地際への補強リングの配置、ガイド棒へのスペーサ配置用補助具の取り付け、均等配置治具の配置などの事前作業を行う必要がある。
【0005】
そして、このように事前作業を行った後、ワイヤで上方から吊り下げられていた複数の補強用棒状部材を一本ずつワイヤを緩めながら引き下げるように取り出し、この取り出した補強用棒状部材を下方に位置する均等配置治具の所定の保持部に挿通するように配置して保持するという処理を複数の補強用棒状部材のすべてについて順次行い、これにより複数の補強用棒状部材で中空柱を補強するようにしている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−77613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、複数の補強用棒状部材で中空柱を補強するには、最初に補強用棒状部材を一本ずつ中空柱の側部開口または中空柱の最上部の開口部から中空柱内に挿入してから、この挿入された複数の補強用棒状部材をワイヤで上方から吊り下げ、この吊り下げた状態で上述した事前作業を行うが、この複数の補強用棒状部材をワイヤで一本ずつ吊り下げるには、中空柱の最上部の開口からクレーンでワイヤを吊り下げたり、または中空柱の上部の側壁に形成された孔からワイヤを吊り下げ、この上方から吊り下げられたワイヤの下端に補強用棒状部材を取り付けて吊り下げるように保持するという動作を複数の補強用棒状部材の一本ずつに行うとともに、更にワイヤで吊り下げられた各補強用棒状部材を上下動して、各補強用棒状部材の下端部が中空柱の側部開口のほぼ真横に位置するように位置調整するという比較的繁雑で労力と時間のかかる作業が必要であるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、複数の補強用棒状部材の下端部を中空柱の側部開口の真横に位置させ得るように簡単かつ安全に保持することができる補強用棒状部材配置用補助具および該補助具を用いた中空柱の補強方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するため、請求項1記載の補強用棒状部材配置用補助具は、下部が地中に埋設されて地上に立設された中空柱の補強工法を補助するために使用される補強用棒状部材配置用補助具であって、中空柱補強のために中空柱内に挿入される複数の補強用棒状部材の下端部を受け止めて保持する複数の受止保持部を有し、中空柱の側部開口に対向する中空柱の内壁に取り付けられることを要旨とする。
【0010】
請求項1記載の補強用棒状部材配置用補助具では、中空柱の側部開口に対向する中空柱の、例えば奥側の内壁面に着脱自在に取り付けられた補強用棒状部材配置用補助具の複数の受止保持部で複数の補強用棒状部材の下端部を受け止めて保持するため、複数の補強用棒状部材を従来のように上方からワイヤで吊るしたり、ワイヤから取り外すなどの作業が不要となり、作業の効率化、迅速化、安全性を向上することができるとともに、補強用棒状部材の下端部の受止め保持作業は比較的簡単であり、効率的に行うことができることに加えて、補強用棒状部材の挿入前の作業および補強用棒状部材の取り付け作業を円滑かつ安全に行うことができる。
【0011】
請求項2記載の補強用棒状部材配置用補助具は、下部が地中に埋設されて地上に立設された中空柱の補強工法を補助するために使用される補強用棒状部材配置用補助具であって、中心部に中心孔を有し、中空柱補強のために中空柱内に挿入される複数の補強用棒状部材の下端部を受け止めて保持する複数の受止保持部を前記中心孔の周囲に設けられている挿入補助部材と、中空柱の側部開口に対向する中空柱の内壁に固定部が取り付けられ、この固定部から中空柱の中心に向かって延伸する水平部の先端に前記挿入補助部材を載置する載置部が設けられ、この載置部に形成された開口部が中空柱の上方に向かって形成されている固定部材と、この固定部材の載置部に載置された前記挿入補助部材の中心孔を貫通してから固定部材の載置部の前記開口部に一端から挿入される棒状部材を有し、この棒状部材の他端に前記挿入補助部材を上から押さえつけて固定する押え部を有する挿入補助部材貫通押え部材とを有することを要旨とする。
【0012】
請求項2記載の補強用棒状部材配置用補助具では、中空柱の側部開口に対向する中空柱の奥側の内壁に固定部材を取り付け、この固定部材の載置部に挿入補助部材を載置し、この挿入補助部材の受止保持部で複数の補強用棒状部材の下端部を受け止めて保持しているため、複数の補強用棒状部材を従来のように上方からワイヤで吊るしたり、ワイヤから取り外すなどの作業が不要となり、作業の効率化、迅速化、安全性を向上することができるとともに、補強用棒状部材の下端部の受止め保持作業は比較的簡単であり、効率的に行うことができることに加えて、補強用棒状部材の挿入前の作業および補強用棒状部材の取り付け作業を円滑かつ安全に行うことができる。
【0013】
請求項3記載の補強用棒状部材配置用補助具を用いた中空柱の補強方法は、請求項1に記載された補強用棒状部材配置用補助具を用いて、下部が地中に埋設されて地上に立設された中空柱を補強する中空柱の補強方法であって、中空柱を補強する補強処理に先立ち、前記補強用棒状部材配置用補助具を中空柱の側部開口に対向する中空柱の内壁に取り付けることを要旨とする。
【0014】
請求項3記載の補強用棒状部材配置用補助具を用いた中空柱の補強方法では、中空柱を補強する補強処理に先立ち、補強用棒状部材配置用補助具を中空柱の側部開口に対向する中空柱の、例えば奥側の内壁面に着脱自在に取り付けるため、この内壁に取り付けられた補強用棒状部材配置用補助具の複数の受止保持部で複数の補強用棒状部材の下端部を受け止めて保持することにより、複数の補強用棒状部材を従来のように上方からワイヤで吊るしたり、ワイヤから取り外すなどの作業が不要となり、作業の効率化、迅速化、安全性を向上することができるとともに、補強用棒状部材の下端部の受止め保持作業は比較的簡単であり、効率的に行うことができることに加えて、補強用棒状部材の挿入前の作業および補強用棒状部材の取り付け作業を円滑かつ安全に行うことができる。
【0015】
請求項4記載の補強用棒状部材配置用補助具を用いた中空柱の補強方法は、請求項1に記載された補強用棒状部材配置用補助具を用いて、下部が地中に埋設されて地上に立設された中空柱を補強する中空柱の補強方法であって、中空柱の側部開口に対向する中空柱の内壁に前記補強用棒状部材配置用補助具の前記固定部を取り付け、この補強用棒状部材配置用補助具の固定部から中空柱の中心に向かって延伸する前記水平部の先端に設けられた前記載置部の上に前記挿入補助部材を載置し、この補強用棒状部材配置用補助具の載置部の上に載置された前記挿入補助部材の中心孔に対して前記挿入補助部材貫通押え部材の棒状部材を一端から貫通させ、この棒状部材の他端の押え部で挿入補助部材を上から押さえつけるように固定し、複数の補強用棒状部材を中空柱内に順次挿入し、この挿入された複数の補強用棒状部材の下端部を前記補強用棒状部材配置用補助具の挿入補助部材の受止保持部で順次受け止めて保持し、この複数の補強用棒状部材を補強用棒状部材配置用補助具の受止保持部で保持した後、中空柱を補強するための冶具および前記複数の補強用棒状部材を中空柱内の所定の位置に挿入するための均等配置治具を含む補強補助冶具を中空柱内に順次挿入して所定の位置に設定し、この補強補助冶具の挿入および所定の位置への設定後、前記受止保持部で保持されている複数の補強用棒状部材を受止保持部から順次取り外し、この順次取り外した補強用棒状部材を均等配置治具の所定の保持部を含む所定の位置に順次設定することを要旨とする。
【0016】
請求項4記載の補強用棒状部材配置用補助具を用いた中空柱の補強方法では、中空柱の側部開口に対向する中空柱の、例えば奥側の内壁面に着脱自在に補強用棒状部材配置用補助具を取り付け、この補強用棒状部材配置用補助具の載置部の上に挿入補助部材を載置し、この挿入補助部材の受止保持部で複数の補強用棒状部材の下端部を受け止めて保持するため、複数の補強用棒状部材を従来のように上方からワイヤで吊るしたり、ワイヤから取り外すなどの作業が不要となり、作業の効率化、迅速化、安全性を向上することができるとともに、補強用棒状部材の下端部の受止め保持作業は比較的簡単であり、効率的に行うことができることに加えて、補強用棒状部材の挿入前の作業および補強用棒状部材の取り付け作業を円滑かつ安全に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、中空柱の側部開口に対向する中空柱の奥側の内壁に取り付けられた補強用棒状部材配置用補助具の複数の受止保持部で複数の補強用棒状部材の下端部を受け止めて保持するので、複数の補強用棒状部材を従来のように上方からワイヤで吊るしたり、ワイヤから取り外すなどの作業が不要となり、作業の効率化、迅速化、安全性を向上することができるとともに、補強用棒状部材の下端部の受止め保持作業は比較的簡単であり、効率的に行うことができることに加えて、補強用棒状部材の挿入前の作業および補強用棒状部材の取り付け作業を円滑かつ安全に行うことができる。
【0018】
また、本発明によれば、中空柱を補強する補強処理に先立ち、補強用棒状部材配置用補助具を中空柱の側部開口に対向する中空柱の、例えば奥側の内壁面に着脱自在に取り付けるので、この内壁に取り付けられた補強用棒状部材配置用補助具の複数の受止保持部で複数の補強用棒状部材の下端部を受け止めて保持することにより、複数の補強用棒状部材を従来のように上方からワイヤで吊るしたり、ワイヤから取り外すなどの作業が不要となり、作業の効率化、迅速化、安全性を向上することができるとともに、補強用棒状部材の下端部の受止め保持作業は比較的簡単であり、効率的に行うことができることに加えて、補強用棒状部材の挿入前の作業および補強用棒状部材の取り付け作業を円滑かつ安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係わる補強用棒状部材配置用補助具を示す図である。
【図2】図1に示す補強用棒状部材配置用補助具の部分分解斜視図である。
【図3】図1に示す補強用棒状部材配置用補助具のPC挿入補助部材を示す斜視図である。
【図4】図1に示す補強用棒状部材配置用補助具のロッド挿入補助部材83を示す斜視図である。
【図5】図1に示す補強用棒状部材配置用補助具のPC挿入補助部材とロッド挿入補助部材とを重ねた状態の斜視図である。
【図6】図1に示す補強用棒状部材配置用補助具の固定部材を中空柱の内壁に取り付ける様子を示す図である。
【図7】図6に示すように取り付けられた補強用棒状部材配置用補助具の固定部材の側部開口側から見た図である。
【図8】図1に示す補強用棒状部材配置用補助具において挿入補助部材貫通押え部材を固定部材に挿入する状態を示す図である。
【図9】中空柱の側部開口からアラミドロッドやPC鋼線を挿入する状態を示す図である。
【図10】中空柱の側壁に取り付けられた図1の補強用棒状部材配置用補助具でPC鋼線を受け止めて保持している状態を示す図である。
【図11】図10に示す補強用棒状部材配置用補助具を拡大して示す図である。
【図12】中空柱の側壁に取り付けられた図1の補強用棒状部材配置用補助具でPC鋼線とアラミドロッドを受け止めて保持している状態を示す図である。
【図13】図12に示す補強用棒状部材配置用補助具を拡大して示す図である。
【図14】図12に示すようにPC鋼線とアラミドロッドを保持している補強用棒状部材配置用補助具のある中空柱内に補強リングを挿入した状態を示す図である。
【図15】図14に示した状態の中空柱内のガイド棒の上端にスペーサ配置用補助具を取り付ける状態を示す図である。
【図16】図15に示した状態の中空柱内に案内管を挿入した状態を示す図である。
【図17】図16に示した状態の中空柱内に第1のロッド配置用スペーサを挿入した状態を示す図である。
【図18】中空柱内に挿入される第1のロッド配置用スペーサを示す斜視図である。
【図19】中空柱内に挿入される第2のロッド配置用スペーサを示す斜視図である。
【図20】図17に示した状態の中空柱内にスペーサ固定用パイプを取り付ける状態を示す図である。
【図21】図20に示した状態の中空柱内に複数の第1のロッド配置用スペーサを挿入した状態を示す図である。
【図22】図21に示した状態の中空柱内に第2のロッド配置用スペーサを挿入した状態を示す図である。
【図23】図22に示した状態の中空柱内に更に2番目の第2のロッド配置用スペーサを挿入した状態を示す図である。
【図24】図23に示した状態の中空柱において補強用棒状部材配置用補助具から2本のアラミドロッドを取り出してロッド配置用スペーサの保持部に挿入した状態を示す図である。
【図25】図24に示した状態の中空柱においてロッド配置用スペーサから案内管を引き抜く状態を示す図である。
【図26】図25に示した状態の中空柱内のロッド配置用スペーサに複数のPC鋼線を挿入した状態を示す図である。
【図27】図26に示した状態の中空柱内のロッド配置用スペーサに残りの複数のアラミドロッドを挿入した状態を示す図である。
【図28】中空柱の側部開口から第1のロッド配置用スペーサを挿入する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて、本発明を実施するための形態(以下、実施形態と称する)を説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係わる補強用棒状部材配置用補助具を示す図である。なお、図1は、下部が地中に埋設されて地上に立設された鋼管柱やコンクリート製電柱等の中空柱100の地中に埋設された地中部分と地上に立設された地上部分との境の地際から1m〜2m程上方の側面に形成された側部開口100aの付近を示しているものであるが、同図に示す補強用棒状部材配置用補助具81は、この中空柱100の側部開口100aに対向する中空柱100の内壁100b、ここでは奥側の内壁面にネジにより着脱自在に取り付けられた状態で示されている。なお、図1において、23は、ガイド棒であり、中空柱100の中心軸を確定しているものである。
【0022】
この補強用棒状部材配置用補助具81は、中空柱100の補強のために中空柱100内に挿入されるアラミドロッドやPC鋼線などの複数の補強用棒状部材の下端部を受け止めて保持するものであるが、図2にも部分分解斜視図で示すように、補強用棒状部材である複数のPC鋼線の下端部を受け止めて保持するPC挿入補助部材82と、補強用棒状部材である複数のアラミドロッドの下端部を受け止めて保持するロッド挿入補助部材83と、中空柱100の奥側の内壁100bに固定的に取り付けられる固定部材84と、前記PC挿入補助部材82の上方からPC挿入補助部材82およびロッド挿入補助部材83を上から押さえつけて固定する挿入補助部材貫通押え部材85とから構成されている。
【0023】
更に詳しくは、補強用棒状部材配置用補助具81のPC挿入補助部材82は、図3に示すように、中心部に中心孔82aを有し、中空柱100の補強のために中空柱100内に挿入される複数のPC鋼線の下端部を受け止めて、ねじ82bで固定的に保持する複数の受止保持部82cを前記中心孔82aの周囲に有している。
【0024】
また、補強用棒状部材配置用補助具81のロッド挿入補助部材83は、図4に示すように、中心部に中心孔83aを有し、中空柱100の補強のために中空柱100内に挿入される複数のアラミドロッドの下端部を受け止めて保持する複数の受止保持部83bを前記中心孔83aの周囲に6個設けるようにする(本実施形態では6個であるが、3個〜12個〜24個であっても良い。通常は中空柱100の内径によって補強材としてのアラミドロッドの本数が設定され、この本数に対応して受止保持部83bの個数及び内径を設定する。)なお、受止保持部83bは、底のある短い筒状体であり、この底にアラミドロッドの下端部を受け止めるようになっている。また、複数の受止保持部83bは、中心孔83aを中心とした円形部材83cの外周面に着脱自在に取り付けられているが、これに限定されるものでなく、固定的に取り付けられてもよいものである。
【0025】
上述したように構成されるPC挿入補助部材82とロッド挿入補助部材83は、図5に示すように、ロッド挿入補助部材83の上にPC挿入補助部材82が載置され、重ねられて、次に説明する固定部材84の水平部の先端の載置部の上に載置され、上方から挿入補助部材貫通押え部材85で押えられる。
【0026】
すなわち、補強用棒状部材配置用補助具81の固定部材84は、図1および図2、更には図6および図7にも示すように、中空柱100の側部開口100aに対向する内壁面、ここでは作業性に配慮して奥側の内壁100bに縦長の固定部84aが図6に示すようにドライバー300によりねじ86で取り付けられる。さらに、この固定部84aの下部から中空柱100の中心に向かって延伸する水平部84bの先端に前記PC挿入補助部材82とロッド挿入補助部材83とを図1および図2に示すように載置する載置部84cが垂直に設けられている。なお、この載置部84cには、図では明確ではないが、その中央部に開口部が中空柱の上方に向かって形成されている。図8は、上述したように中空柱100の内壁100bに取り付けられた固定部材84を側部開口100aの側から見た状態を示しているものである。
【0027】
また、補強用棒状部材配置用補助具81の挿入補助部材貫通押え部材85は、図2および図7から分かるように、前記固定部材84の載置部84cに図1または図2に示すように載置された前記PC挿入補助部材82とロッド挿入補助部材83の中心孔82a、83aを貫通してから固定部材84の載置部84cの開口部に一端から挿入される棒状部材85aを有し、更に、この棒状部材85aの他端に前記PC挿入補助部材82とロッド挿入補助部材83を上から押さえつけて固定する押え部85bを有する。
【0028】
上述したように構成される補強用棒状部材配置用補助具81は、中空柱100内にガイド棒23を挿入した後、中空柱100を補強すべく中空柱100の内径(もしくは要求される強度、あるいは予算)によってそれぞれの本数や径が設定されるアラミドロッドおよびPC鋼線からなる複数の補強用棒状部材を中空柱100内に挿入する処理を行うに先立って、中空柱100の側部開口100aに対向する奥側の内壁100bに取り付けられる。
【0029】
この補強用棒状部材配置用補助具81の内壁100bへの取り付けは、まず図6に示すように、固定部材84の固定部84aが内壁100bにねじ86によって固定的に取り付けられる。このように固定部材84の固定部84aをねじ86で内壁100bに取り付けると、この固定部材84の水平部84bは、その先端が中空柱100の中心に向かって延伸し、先端の載置部84cは、中空柱100のほぼ中心に位置するようになる。
【0030】
このように、補強用棒状部材配置用補助具81の固定部材84を中空柱100の内壁100bに取り付けた後、図3および図4にそれぞれ示したPC挿入補助部材82およびロッド挿入補助部材83を図2に示すように固定部材84の載置部84cの上にロッド挿入補助部材83およびPC挿入補助部材82の順序で載置し、両者を図5に示すように重ねる。
【0031】
それから、このように固定部材84の載置部84cの上に重ねて載置されたロッド挿入補助部材83およびPC挿入補助部材82の上から図2に示すように挿入補助部材貫通押え部材85を取り付けて、両者を押さえつける。これは、詳しくは、挿入補助部材貫通押え部材85の棒状部材85aをロッド挿入補助部材83およびPC挿入補助部材82の中心孔82a、83aに貫通させ、更に載置部84cの開口部に挿入し、それから挿入補助部材貫通押え部材85の押え部85bをPC挿入補助部材82の上に載置して、PC挿入補助部材82およびロッド挿入補助部材83を挿入補助部材貫通押え部材85で上から押さえつけて固定することで、図1に示すように補強用棒状部材配置用補助具81が中空柱100の内壁100bに取り付けられる。
【0032】
なお、補強用棒状部材配置用補助具81の固定部84a、水平部84b、載置部84c、押え部85bは、例えば六角形の短筒状の高ナットで構成されているものであるが、これに限定されるものではない。
【0033】
以上のように構成される補強用棒状部材配置用補助具81を用いて、中空柱100を補強する補強工法について図9乃至図27を参照しながら作業順に説明する。
【0034】
まず最初に、まだ補強されてなく、内部に何も入っていない中空柱100の中に対しては、まずガイド棒23が側部開口100aから中空柱100内に挿入される。図14は、ガイド棒23以外にその他の部材も中空柱100内にある状態を示しているが、ガイド棒23は、この図14に示すように、中空柱100の底から側部開口100aの真横まで真っすぐ垂直に伸びているものであり、その上端は側部開口100aの真横に設定される。なお、このガイド棒23の下端には、ガイド棒固定用冶具27が取り付けられていて、このガイド棒固定用冶具27によりガイド棒23を中空柱100の中心軸に設定するようになっている。
【0035】
このようにガイド棒23が中空柱100内に挿入された状態において、次に図6に示すように、補強用棒状部材配置用補助具81の固定部材84を中空柱100の側部開口100aに対向する奥側の内壁100bにドライバー300によりねじ86で取り付ける。それから、この内壁100bに取り付けられた固定部材84の載置部84cに対して、図2に示すように、ロッド挿入補助部材83およびPC挿入補助部材82を重ねて載置し、その上から挿入補助部材貫通押え部材85の棒状部材85aをロッド挿入補助部材83およびPC挿入補助部材82のそれぞれの中心孔83a、82aおよび載置部84cの開口部に挿入し、その上に押え部85bを載せて、ロッド挿入補助部材83とPC挿入補助部材82を押え部85bで上から押さえつけ、図1に示すように、ロッド挿入補助部材83およびPC挿入補助部材82を固定部材84の載置部84cの上に載置する。
【0036】
上記説明では、図1および図5で示すように、ロッド挿入補助部材83の上にPC挿入補助部材82を重ねて載置しているが、これに限定されるものでなく、PC挿入補助部材82の上にロッド挿入補助部材83を重ねて載置してもよいが、この場合には、PC挿入補助部材82とロッド挿入補助部材83の大きさを逆にして、PC挿入補助部材82を大きく形成し、ロッド挿入補助部材83を小さく形成することになり、この場合には、以下に説明する補強用棒状部材配置用補助具81に対するPC鋼線とアラミドロッドの取り付け順序が逆になることになるが、いずれの構成および方法を用いてもよく、要は、補強用棒状部材配置用補助具81でアラミドロッドとPC鋼線を受け止めて保持し、この保持したアラミドロッドとPC鋼線を順次補強用棒状部材配置用補助具81から取り出し、ロッド配置用スペーサに対して順次挿入し得ればよいものである。
【0037】
図1に示すように、補強用棒状部材配置用補助具81を中空柱100の内壁100bに取り付けられた後、次に補強用棒状部材配置用補助具81のロッド挿入補助部材83およびPC挿入補助部材82のそれぞれの受止保持部82c、83bで補強用棒状部材であるPC鋼線およびアラミドロッドを受け止めて保持するために、まず図9に示すように、まずPC鋼線63を側部開口100aから中空柱100内に挿入する。
【0038】
なお、このPC鋼線63の中空柱内への挿入は、図9に実線で示すPC鋼線63のように側部開口100aに対して下方から斜め上方に向けて挿入する方法、図9で点線で示すPC鋼線63のように側部開口100aに対して上方から斜め下方に向けて下ろすように挿入する方法、また更には図示しないが、中空柱100の最上部の開口部からワイヤを使用しながらクレーンなどで吊り下げるように挿入することも可能であるが、いずれの方法で行ってもよいものである。なお、後述するように、アラミドロッド61も同様に挿入されるが、PC鋼線63とアラミドロッド61のいずれを先に挿入するかは特に規定するものでなく、上述したように、アラミドロッド61を先に挿入してから、PC鋼線63を挿入してもよい。
【0039】
図9に示すように、側部開口100aから挿入されたPC鋼線63は、側部開口100aよりも少し上方まで持ち上げられてから、その下端部をPC挿入補助部材82の受止保持部82cに挿入され、ねじ82bで固定的に保持される。なお、PC鋼線63が図9で点線で示すように上方から斜め下方に向けて下ろすように挿入される場合には、この下方に下ろされた状態から上方に持ち上げる場合に、PC鋼線63をPC挿入補助部材82の受止保持部82cに下方から挿入しながら持ち上げ、この下端部が受止保持部82cの直ぐ下に来た時に、この下端部をねじ82bで固定的に保持してもよいし、または下方に下ろされたPC鋼線63を全体的に側部開口100aの上方まで持ち上げてから、その下端部をPC挿入補助部材82の受止保持部82cに挿入し、ねじ82bで固定的に保持するようにしてもよい。
【0040】
上述したPC鋼線63の挿入および保持操作を複数(本実施形態では、6本)のPC鋼線63のすべてに対して同様に繰り返し行うと、複数のPC鋼線63は、図10に示すように、中空柱100内でPC挿入補助部材82の受止保持部82cの上に立つように保持される。なお、このようにPC鋼線63を受け止めて保持している受止保持部82cの状態が図11に拡大して示されている。
【0041】
それから、次に同様に複数(本実施形態では、6本)のアラミドロッド61のすべてに対しても同様に繰り返し行うが、このアラミドロッド61の場合には、図12に示すように、その下端部はロッド挿入補助部材83の受止保持部83bに挿入され、この受止保持部83cの底で受け止められて保持される。なお、図13は、上述したように挿入されたPC鋼線63およびアラミドロッド61を受け止めて保持している受止保持部83b、82cの状態を拡大して示している。
【0042】
すなわち、上述したように、複数のPC鋼線63およびアラミドロッド61のすべてが中空柱100に挿入され、その下端部がPC挿入補助部材82およびロッド挿入補助部材83のそれぞれの受止保持部82c、83bで受け止められて保持されると、複数のPC鋼線63およびアラミドロッド61は、図12に示すように、中空柱100内で受止保持部83b、82cの上に立つように保持され(なお、真っすぐに立つとは限らず、少し斜めになって、中空柱100の側壁にもたれかかって立つように保持される)、PC鋼線63およびアラミドロッド61は、図13に拡大して示すように、その下端部が受止保持部83b、82cで受け止められ保持された状態になる。
【0043】
図12に示すように、複数のPC鋼線63およびアラミドロッド61が受止保持部83b、82cで受け止められ保持された後は、これらのPC鋼線63およびアラミドロッド61を中空柱100の地際を中心とした補強部分に適切に配置するための事前作業、例えば中空柱の地際への補強リングの配置、ガイド棒へのスペーサ配置用補助具の取り付け、均等配置治具の配置などの事前作業を行うことになるが、上述したように、PC鋼線63およびアラミドロッド61を受止保持部83b、82cで受け止めて保持しておくことにより、これらの事前作業を従来に比べて円滑かつ安全に行うことができる。また、このようなPC鋼線63およびアラミドロッド61の受止保持部83b、82cでの受止め保持作業も、従来に比べて簡単であり、効率的に行うことができる。
【0044】
そこで、次に、図12に示すように、複数のPC鋼線63およびアラミドロッド61を受止保持部83b、82cで受け止めて保持した後に続く事前作業について、図14以降を参照して、作業順に説明する。
【0045】
まず、図14に示すように、中空柱100の地際の補強するために、複数(本実施形態では、6個)の補強リング21が側部開口100aから例えば図28に示すように垂直に立てながら挿入され、そして、挿入してから中空柱100内で水平にされ、図14に示すように、この複数の補強リング21を中空柱100の地際にまとめて配設する。なお、この複数の補強リング21は、側部開口100aから下方に通された3本のワイヤ25により吊り上げられるように保持され、中空柱100の地際に固定される。
【0046】
次に、短筒状のスペーサ配置用補助具31を側部開口100aから中空柱100内に挿入し、この短筒状のスペーサ配置用補助具31を図15および図16に示すようにガイド棒23の上端に挿入し、このスペーサ配置用補助具31をステンレスワイヤ33で側部開口100aから吊るすように保持する。すなわち、ステンレスワイヤ33を取り付けられたスペーサ配置用補助具31を側部開口100aから中空柱100内に挿入してから、ガイド棒23の上端に挿入し、このステンレスワイヤ33を側部開口100aを介して外部で保持する。
【0047】
次に、同様にして、図15および図16に示すように、別の短筒状のスペーサ配置用補助具35をガイド棒23の上端に挿入し、前記スペーサ配置用補助具31の上に取り付け、このスペーサ配置用補助具35を図15に示すようにドライバ300によりいもねじでガイド棒23に固定する。それから、更に同様に、図15および図16に示すように、別の短筒状のスペーサ配置用補助具37をガイド棒23の上端に挿入し、前記スペーサ配置用補助具35の上に取り付ける。
【0048】
次に、また図16に示すように、短い円筒形の案内管接続器10を長手方向に複数連結して細長く構成される案内管1を2本、中空柱100内に側部開口100aから挿入する。なお、この2本の案内管1は、中空柱100内において距離をあけて中空柱100の両端で対向するように挿入される。
【0049】
それから、図18に示す第1のロッド配置用スペーサ71を図28に示すように垂直に立てながら側部開口100aから中空柱100内に挿入し、中空柱100内で水平にする。なお、この第1のロッド配置用スペーサ71は、中空柱100内に挿入される複数の第1のロッド配置用スペーサ71のうちの最初、すなわち1番目の第1のロッド配置用スペーサ71である。
【0050】
なお、第1のロッド配置用スペーサ71は、図18に示すように補強用リング73が周囲に取り付けられているものであるが、この補強用リング73がないものが図19に示す第2のロッド配置用スペーサ75であり、両者の補強用リング73を除いた内部構造は、同じであり、アラミドロッドおよびPC鋼線からなる複数の補強用棒状部材を挿通して保持する保持部である複数のアラミドロッド保持部71cおよびPC鋼線保持部71eを有する。
【0051】
更に詳しくは、第1、第2のロッド配置用スペーサ71、75は、中心部にガイド棒23が挿通される中心孔71aが形成され、この中心孔71aから四方に放射状に等角度で均等に延出する複数の連結部71bの先端には、補強用棒状部材であるアラミドロッドが挿通されて保持されるリング状のアラミドロッド保持部71cが複数(本実施形態では6個)形成されている。また、この複数のアラミドロッド保持部71cは、隣接するもの同士がリンク71dで環状に連結され、このリンク71dの中間には別の補強用棒状部材であるPC鋼線が挿通されて保持されるリング状の小径のPC鋼線保持部71eが複数(本実施形態では6個)形成されている。
【0052】
なお、上述したように構成される第1、第2のロッド配置用スペーサ71、75の複数のアラミドロッド保持部71cおよびPC鋼線保持部71eは、補強用リング73の周方向において、ひいては中空柱100の周方向において等角度で均等に形成されているとともに、複数のアラミドロッド保持部71cとPC鋼線保持部71eは、中空柱の周方向に交互に配設されている。
【0053】
このように構成される第1、第2のロッド配置用スペーサ71、75は、上述したように、中空柱100内に水平に入れられ、それぞれの複数のアラミドロッド保持部71cおよびPC鋼線保持部71eに補強用棒状部材であるアラミドロッドおよびPC鋼線が複数挿通され、これらのアラミドロッドおよびPC鋼線を保持し、これによりアラミドロッドおよびPC鋼線を中空柱100の周方向において等角度で均等に配設するようになっている。
【0054】
すなわち、上述したように側部開口100aから挿入され中空柱100内で水平にされた第1のロッド配置用スペーサ71の中心孔71aにガイド棒23の上端が図17(a)に示すように挿入され、このガイド棒23の上端に設けられているスペーサ配置用補助具37の上に第1のロッド配置用スペーサ71を載せる。それから、この第1のロッド配置用スペーサ71の2箇所のアラミドロッド保持部71cに対して2本の案内管1の上端を挿入する。すなわち、図17(b)に示すように、第1のロッド配置用スペーサ71の複数のアラミドロッド保持部71cのうち、対角にある、すなわち距離をあけて対向する2箇所のアラミドロッド保持部71cに2本の案内管1の上端を挿入する。
【0055】
なお、前記第1のロッド配置用スペーサ71の中空柱100内への挿入においては、前記スペーサ配置用補助具31に取り付けられたステンレスワイヤ33を第1のロッド配置用スペーサ71の中心孔71aに近い開口部を貫通させてから第1のロッド配置用スペーサ71を中空柱100内に挿入する。このようにステンレスワイヤ33を設定することにより、ステンレスワイヤ33を中空柱100の外部で引き上げたり、引き下げたりした場合、このステンレスワイヤ33でスペーサ配置用補助具31を円滑に引き上げたり、引き下げたりでき、ひいてはスペーサ配置用補助具31上に載せられた第1のロッド配置用スペーサ71を同様に円滑に引き上げたり、引き下げることができる。
【0056】
また、前記2本の案内管1の挿入においては、図17(a)において矢印200で示すように、案内管1を上方に引き上げ、この引き上げられた案内管1の上端を第1のロッド配置用スペーサ71のアラミドロッド保持部71cに挿入し、この状態で案内管1が中空柱100の底から浮いていることを確認してから、案内管1をピンで第1のロッド配置用スペーサ71に固定する。
【0057】
次に、スペーサ配置用補助具35のいもねじを緩めて、フリーにしてから、スペーサ配置用補助具31のステンレスワイヤ33を緩め、図20において矢印201で示すように、例えば10cm程度、第1のロッド配置用スペーサ71をスペーサ配置用補助具31、スペーサ配置用補助具35、スペーサ配置用補助具37とともに下降させる。また、第1のロッド配置用スペーサ71を下降させたら、案内管1を固定していたピンを引き抜き、図20において矢印202で示すように下降させる。
【0058】
それから、スペーサ固定用パイプ39を側部開口100aから中空柱100内に挿入し、このスペーサ固定用パイプ39を図20に示すようにガイド棒23の上端に挿入し、第1のロッド配置用スペーサ71の上に配設する。なお、このスペーサ固定用パイプ39は、今回の1番目の第1のロッド配置用スペーサ71と次の2番目の第1のロッド配置用スペーサ71との間に間隔を設けるためのものであり、その長さは、例えば13cm程度である。
【0059】
このようにスペーサ固定用パイプ39をガイド棒23の上端に挿入したら、次に上述した1番目の第1のロッド配置用スペーサ71と同様に、2番目の第1のロッド配置用スペーサ71を側部開口100aから垂直に立てるようにして中空柱100内に挿入してから水平にし、この水平にされた2番目の第1のロッド配置用スペーサ71の中心孔71aにガイド棒23の上端を挿入し、このガイド棒23の上端に設けられているスペーサ固定用パイプ39の上に載せる。それから、この2番の第1のロッド配置用スペーサ71の2箇所のアラミドロッド保持部71cに対して2本の案内管1の上端を同様に、すなわち第1のロッド配置用スペーサ71の複数のアラミドロッド保持部71cのうち、対角にある2箇所のアラミドロッド保持部71cに案内管1の上端を挿入する。
【0060】
更に、同様に、2番目のスペーサ固定用パイプ39を側部開口100aから中空柱100内に挿入し、このスペーサ固定用パイプ39をガイド棒23の上端に挿入し、この上に更に3番目の第1のロッド配置用スペーサ71を挿入するという処理を13番目の第1のロッド配置用スペーサ71まで繰り返し行う。
【0061】
なお、上述した複数の第1のロッド配置用スペーサ71の挿入においては、各第1のロッド配置用スペーサ71を挿入する毎に、スペーサ配置用補助具31に取り付けられたステンレスワイヤ33を各第1のロッド配置用スペーサ71の中心孔71aに近い対応する開口部を貫通させてから第1のロッド配置用スペーサ71を中空柱100内に挿入する。このとき、ステンレスワイヤ33を貫通させる第1のロッド配置用スペーサ71の中心孔71aに近い開口部がすべての第1のロッド配置用スペーサ71において同じ位置となり、ステンレスワイヤ33がほぼ真っすぐになるように、すなわちジグザグになったり、曲がらないように各開口部を貫通することが必要である。
【0062】
そして、このようにステンレスワイヤ33を真っすぐ貫通させることにより、ステンレスワイヤ33を中空柱100の外部で引き上げたり、引き下げたりした場合、このステンレスワイヤ33でスペーサ配置用補助具31を介して第1のロッド配置用スペーサ71をすべて同様に円滑に引き上げたり、引き下げることができる。
【0063】
図21は、上述したように13個の第1のロッド配置用スペーサ71を挿入した状態を示している。このように13個の第1のロッド配置用スペーサ71のそれぞれの対角にある2箇所のアラミドロッド保持部71cに2本の案内管1を挿入することにより、この13個の第1のロッド配置用スペーサ71は、それぞれの各アラミドロッド保持部71cが中空柱100の周方向の同じ位置に整列することになる。
【0064】
このように13個の第1のロッド配置用スペーサ71を挿入した後は、次に上述したと同様に、図21で一番上にある13個目の第1のロッド配置用スペーサ71の上から、ガイド棒23の上端にスペーサ固定用パイプ39を挿入し、それから更に図19に示す補強用リング73のない第2のロッド配置用スペーサ75を側部開口100aから中空柱100内に挿入する。そして、この第2のロッド配置用スペーサ75に対して上述した第1のロッド配置用スペーサ71と同様に、その中心孔71aにガイド棒23の上端を挿入し、ガイド棒23の上端のスペーサ固定用パイプ39の上に配設するとともに、上述と同様に、第2のロッド配置用スペーサ75の対角にある2箇所のアラミドロッド保持部71cに前記2本の案内管1を挿入し固定する。この状態が図22(a)に示す状態であり、また2本の案内管1が第2のロッド配置用スペーサ75のアラミドロッド保持部71cに挿入された第2のロッド配置用スペーサ75の状態が図22(b)に示されている。なお、この挿入された第2のロッド配置用スペーサ75は、1番目の第2のロッド配置用スペーサ75である。
【0065】
この1番目の第2のロッド配置用スペーサ75の挿入においても、前記第1のロッド配置用スペーサ71の場合と同様に、スペーサ配置用補助具31に取り付けられたステンレスワイヤ33をこの1番目の第2のロッド配置用スペーサ75の中心孔71aに近い開口部を貫通させてから第2のロッド配置用スペーサ75を中空柱100内に挿入することは同じである。
【0066】
次に、前記スペーサ固定用パイプ39よりも短めの、例えば長さ10cm程度のガイド棒連結パイプ65を側部開口100aから挿入し、前記1番目の第2のロッド配置用スペーサ75の上の、ガイド棒23の上端に挿入し、高ナットで固定する。なお、このガイド棒連結パイプ65が挿入された状態は、図23に示されているが、この図23では、ガイド棒連結パイプ65の上には次に説明する2番目の第2のロッド配置用スペーサ75が既に挿入された状態で示されている。
【0067】
すなわち、次に、2番目の第2のロッド配置用スペーサ75を側部開口100aから中空柱100内に挿入し、この2番目の第2のロッド配置用スペーサ75の中心孔71aにガイド棒連結パイプ65の上に突出しているガイド棒23の上端を図23に示すように挿入するとともに、上述と同様に、この2番目の第2のロッド配置用スペーサ75の対角にある2箇所のアラミドロッド保持部71cに前記2本の案内管1を挿入し固定する。このように13個の第1のロッド配置用スペーサ71に続いて、2個の第2のロッド配置用スペーサ75を挿入し、この2個の第2のロッド配置用スペーサ75のアラミドロッド保持部71cにも2本の案内管1を挿入することにより、上述したように、13個の第1のロッド配置用スペーサ71のみならず、2個の第2のロッド配置用スペーサ75のそれぞれの各アラミドロッド保持部71cも第1のロッド配置用スペーサ71に続いて中空柱100の周方向の同じ位置に整列することになる。なお、この2番目の第2のロッド配置用スペーサ75には、前記スペーサ配置用補助具31に取り付けられているステンレスワイヤ33は通さない。
【0068】
次に、上述したように、13個の第1のロッド配置用スペーサ71に続いて、2個の第2のロッド配置用スペーサ75を挿入し、これらのアラミドロッド保持部71cにも2本の案内管1を挿入して固定し終わったら、側部開口100aの補強用棒状部材配置用補助具81に保持されているアラミドロッド61を図24(a)で矢印205で示すように補強用棒状部材配置用補助具81から2本取り出し、この取り出した2本のアラミドロッド61を上述したように整列した13個の第1のロッド配置用スペーサ71および2個の第2のロッド配置用スペーサ75のすべてのアラミドロッド保持部71cに図24(a)および(b)に示すように挿入する。
【0069】
そして、この挿入した2本のアラミドロッド61が下降して、下に着いたことを確認したら、5cm程度浮かせた状態で、上から2番目の第2のロッド配置用スペーサ75で仮止めする。この2本のアラミドロッド61の挿入は、図24(b)に示すように、対角にある2箇所のアラミドロッド保持部71cに対して行う。
【0070】
上述したように、2本のアラミドロッド61を挿入すると、図24(a)および(b)に示すように、第1のロッド配置用スペーサ71および第2のロッド配置用スペーサ75のアラミドロッド保持部71cには、この2本のアラミドロッド61と2本の案内管1が挿入されているので、次に、図25(a)に示すように、このうちの、2本の案内管1を第1のロッド配置用スペーサ71および第2のロッド配置用スペーサ75のアラミドロッド保持部71cから引き抜くために、まず1本目の案内管1を引き抜き、補強用棒状部材配置用補助具81の空きスペースに収容し、それから2本目の案内管1をアラミドロッド保持部71cから引き抜き、この案内管1を側部開口100aから外部に撤去する。それから、上述したように、補強用棒状部材配置用補助具81の空きスペースに収納した1本目の案内管1を空きスペースから取り出し、同様に側部開口100aから外部に撤去する。
【0071】
この結果、第1のロッド配置用スペーサ71および第2のロッド配置用スペーサ75には、図25(b)に示すように、アラミドロッド61のみが対角で挿入された状態になり、この状態でも13個の第1のロッド配置用スペーサ71および2個の第2のロッド配置用スペーサ75のすべてのアラミドロッド保持部71cは同じ位置に整列されていることになる。
【0072】
次に、図26に示すように、複数(本実施形態では、6本)のPC鋼線63を第1のロッド配置用スペーサ71および第2のロッド配置用スペーサ75のPC鋼線保持部71eに挿入するために、PC鋼線63を1本づつ順次、補強用棒状部材配置用補助具81の受止保持部82cから取り出し、この取り出したPC鋼線63を上述したように整列した13個の第1のロッド配置用スペーサ71および2個の第2のロッド配置用スペーサ75のすべてのPC鋼線保持部71eに図26に示すように挿入し固定する。
【0073】
それから、図27に示すように、残り(本実施形態では、4本)のアラミドロッド61を第1のロッド配置用スペーサ71および第2のロッド配置用スペーサ75のアラミドロッド保持部71cに挿入するために、アラミドロッド61を1本づつ順次、補強用棒状部材配置用補助具81の受止保持部83bから取り出し、この取り出したアラミドロッド61を順次、上述したように整列した13個の第1のロッド配置用スペーサ71および2個の第2のロッド配置用スペーサ75のすべてのアラミドロッド保持部71cに図27に示すように挿入し固定する。
【0074】
上述したアラミドロッド61およびPC鋼線63の挿入では、13個の第1のロッド配置用スペーサ71および2個の第2のロッド配置用スペーサ75のすべてのアラミドロッド保持部71cおよびアラミドロッド保持部71cが中空柱100の周方向の同じ位置に整列されているので、アラミドロッドおよびPC鋼線の挿入は、極めて容易となり、作業の効率化、作業時間の短縮化を図ることができることに加えて、アラミドロッド61およびPC鋼線63は、上述した作業の前に、すべて補強用棒状部材配置用補助具81の受止保持部82c、83bで保持されて、中空柱100の側部開口100aの上方に設けられているので、上方でワイヤで吊るしたり、ワイヤから取り外すなどの作業が不要となり、作業の効率化、迅速化、安全性を向上することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 案内管
10 案内管接続器
21 補強リング
23 ガイド棒
27 ガイド棒固定用冶具
31、35、37 スペーサ配置用補助具
33 ステンレスワイヤ
39 スペーサ固定用パイプ
61 アラミドロッド
63 PC鋼線
65 ガイド棒連結パイプ
71 第1のロッド配置用スペーサ
71a 中心孔
71c アラミドロッド保持部
71e PC鋼線保持部
75 第2のロッド配置用スペーサ
81 補強用棒状部材配置用補助具
82 PC挿入補助部材
82a 中心孔
82c 受止保持部
83 ロッド挿入補助部材
83a 中心孔
83b 受止保持部
84 固定部材
85 挿入補助部材貫通押え部材
100 中空柱
100a 側部開口
102 地中

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部が地中に埋設されて地上に立設された中空柱の補強工法を補助するために使用される補強用棒状部材配置用補助具であって、
中空柱補強のために中空柱内に挿入される複数の補強用棒状部材の下端部を受け止めて保持する複数の受止保持部を有し、中空柱の側部開口に対向する中空柱の内壁に取り付けられることを特徴とする補強用棒状部材配置用補助具。
【請求項2】
下部が地中に埋設されて地上に立設された中空柱の補強工法を補助するために使用される補強用棒状部材配置用補助具であって、
中心部に中心孔を有し、中空柱補強のために中空柱内に挿入される複数の補強用棒状部材の下端部を受け止めて保持する複数の受止保持部を前記中心孔の周囲に設けられている挿入補助部材と、
中空柱の側部開口に対向する中空柱の内壁に固定部が取り付けられ、この固定部から中空柱の中心に向かって延伸する水平部の先端に前記挿入補助部材を載置する載置部が設けられ、この載置部に形成された開口部が中空柱の上方に向かって形成されている固定部材と、
この固定部材の載置部に載置された前記挿入補助部材の中心孔を貫通してから固定部材の載置部の前記開口部に一端から挿入される棒状部材を有し、この棒状部材の他端に前記挿入補助部材を上から押さえつけて固定する押え部を有する挿入補助部材貫通押え部材と
を有することを特徴とする補強用棒状部材配置用補助具。
【請求項3】
請求項1に記載された補強用棒状部材配置用補助具を用いて、下部が地中に埋設されて地上に立設された中空柱を補強する中空柱の補強方法であって、
中空柱を補強する補強処理に先立ち、前記補強用棒状部材配置用補助具を中空柱の側部開口に対向する中空柱の内壁に取り付けることを特徴とする中空柱の補強方法。
【請求項4】
請求項1に記載された補強用棒状部材配置用補助具を用いて、下部が地中に埋設されて地上に立設された中空柱を補強する中空柱の補強方法であって、
中空柱の側部開口に対向する中空柱の奥側の内壁に前記補強用棒状部材配置用補助具の前記固定部を取り付け、
この補強用棒状部材配置用補助具の固定部から中空柱の中心に向かって延伸する前記水平部の先端に設けられた前記載置部の上に前記挿入補助部材を載置し、
この補強用棒状部材配置用補助具の載置部の上に載置された前記挿入補助部材の中心孔に対して前記挿入補助部材貫通押え部材の棒状部材を一端から貫通させ、この棒状部材の他端の押え部で挿入補助部材を上から押さえつけるように固定し、
複数の補強用棒状部材を中空柱内に順次挿入し、
この挿入された複数の補強用棒状部材の下端部を前記補強用棒状部材配置用補助具の挿入補助部材の受止保持部で順次受け止めて保持し、
この複数の補強用棒状部材を補強用棒状部材配置用補助具の受止保持部で保持した後、中空柱を補強するための冶具および前記複数の補強用棒状部材を中空柱内の所定の位置に挿入するための均等配置治具を含む補強補助冶具を中空柱内に順次挿入して所定の位置に設定し、
この補強補助冶具の挿入および所定の位置への設定後、前記受止保持部で保持されている複数の補強用棒状部材を受止保持部から順次取り外し、
この順次取り外した補強用棒状部材を均等配置治具の所定の保持部を含む所定の位置に順次設定する
ことを特徴とする案内管を用いた中空柱の補強補助方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−225018(P2012−225018A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92063(P2011−92063)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(504239984)
【Fターム(参考)】