説明

補機駆動用ベルトの張力保持装置

【課題】車体振動及びこもり音を低減すべく、エンジンの振動がプーリアームを介して車両のボディへ伝達することを抑制する。
【解決手段】車両のボディに配設されたエンジン1のクランクシャフト1aに固定されたクランクプーリ4と、補機3に揺動可能に設けられたプーリアーム6に回転可能に支持されたアイドルプーリ7と、の間に掛け渡された補機駆動用ベルト8の張力を保持する装置であって、プーリアーム6と車両のボディとの間に介設され、バネを用いてプーリアーム6をクランクプーリ4から離間する方向に付勢することにより、補機駆動用ベルト8に張力を付与する張力付与機構11を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクプーリとアイドルプーリとの間に掛け渡された補機駆動用ベルトの張力を保持する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
補機駆動用ベルトの張力保持装置の一例を図3に基づいて説明する。
【0003】
なお、図3中、符号30は張力保持装置を示し、符号31は車両のボディ(図示せず)に配設されたエンジンを示し、符号32は車両のボディに配設されたラジエータを示し、符号33はラジエータ32に装着された冷却ファン(補機)を示す。
【0004】
図3に示すように、エンジン31のクランクシャフト31aに、クランクプーリ34が固定されており、冷却ファン33の回転軸33aには、ファンプーリ35が固定されている。また、冷却ファン33に、プーリアーム36が揺動可能に設けられており、プーリアーム36の先端には、アイドルプーリ37が回転可能に支持されている。そして、クランクプーリ34とアイドルプーリ37との間に、冷却ファン駆動用ベルト(補機駆動用ベルト)38が掛け渡されており、アイドルプーリ37とファンプーリ35との間には、別の冷却ファン駆動用ベルト(補機駆動用ベルト)39が掛け渡されている。
【0005】
エンジン31とプーリアーム36との間に、長手方向に伸縮可能なテンションロッド40が介設されている。即ち、テンションロッド40は、一端がエンジン31に回動可能に接続され、他端がプーリアーム36に回動可能に接続されている。図3に示す張力保持装置30では、テンションロッド40を伸ばすことにより、クランクプーリ34とアイドルプーリ37との間に掛け渡された冷却ファン駆動用ベルト38に張力を付与するようになっている。
【0006】
なお、特許文献1には、ベルトを押圧することでベルトの張力を調整する油圧式オートテンショナを備えた補機駆動用ベルトの張力調整装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−175258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図3に示す張力保持装置30では、エンジン31とアイドルプーリ37を支持するプーリアーム36とはテンションロッド40で連結されているため、エンジン31の振動がテンションロッド40を介してプーリアーム36に伝達し、プーリアーム36から冷却ファン33やラジエータ32等を介して車両のボディに伝達し得る。エンジン31の振動によって車両のボディが加振されると、車体振動及びこもり音が生じる虞がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、車体振動及びこもり音を低減すべく、エンジンの振動がプーリアームを介して車両のボディへ伝達することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するために、本発明は、車両のボディに配設されたエンジンのクランクシャフトに固定されたクランクプーリと、補機に揺動可能に設けられたプーリアームに回転可能に支持されたアイドルプーリと、の間に掛け渡された補機駆動用ベルトの張力を保持する装置であって、前記プーリアームと前記ボディとの間に介設され、バネを用いて前記プーリアームを前記クランクプーリから離間する方向に付勢することにより、前記補機駆動用ベルトに張力を付与する張力付与機構を備えたものである。
【0011】
前記張力付与機構は、前記プーリアームに回動可能に装着された張力フランジと、前記ボディに回動可能に装着された張力ロッドと、前記張力フランジと前記張力ロッドとの間に介設され、前記張力ロッドから反力をとって前記張力フランジを前記クランクプーリから離間する方向に引く張力バネとを有するものであっても良い。
【0012】
前記張力保持装置は、前記プーリアームと前記エンジンとの間に介設され、前記プーリアームの揺動を規制する揺動規制機構を更に備えるものであっても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車体振動及びこもり音を低減すべく、エンジンの振動がプーリアームを介して車両のボディへ伝達することを抑制することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る補機駆動用ベルトの張力保持装置の正面図である。
【図2】図1のX−X線矢視断面図である。
【図3】従来例に係る補機駆動用ベルトの張力保持装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0016】
図1中、符号1は車両のボディ(図示せず)に配設されたエンジンを示し、符号2は車両のボディに配設されたラジエータを示し、符号3はラジエータ2に装着された冷却ファン(補機)を示す。
【0017】
図1及び図2に示すように、エンジン1のクランクシャフト1aに、クランクプーリ4が固定されており、冷却ファン(補機)3の回転軸3aには、ファンプーリ5が固定されている。また、冷却ファン3に、プーリアーム6が揺動可能に設けられており、プーリアーム6の先端には、アイドルプーリ7が回転可能に支持されている。そして、クランクプーリ4とアイドルプーリ7との間に、冷却ファン駆動用ベルト(補機駆動用ベルト)8が掛け渡されており、アイドルプーリ7とファンプーリ5との間には、別の冷却ファン駆動用ベルト(補機駆動用ベルト)9が掛け渡されている。
【0018】
本実施形態に係る張力保持装置10は、プーリアーム6と車両のボディとの間に介設され、バネを用いてプーリアーム6をクランクプーリ4から離間する方向に付勢することにより、冷却ファン駆動用ベルト8に張力を付与する張力付与機構11を備えている。
【0019】
本実施形態の張力付与機構11は、プーリアーム6に回動可能に装着されたフランジ(以下、張力フランジともいう)12と、車両のボディに回動可能に装着されたロッド(以下、張力ロッドともいう)13と、フランジ12とロッド13との間に介設され、ロッド13から反力をとってフランジ12をクランクプーリ4から離間する方向に引くバネ(以下、張力バネともいう)14とを有している。
【0020】
プーリアーム6の先端部に、プレート15が取り付けられており、プレート15における張力付与機構11側の端部には、張力フランジ12の基端部が回動可能に取り付けられている。張力フランジ12は、側面視で略L字状に形成されている(図2参照)。張力フランジ12の先端部には、張力ロッド13が挿通される挿通穴12aが貫通形成されていると共に、張力フランジ12の先端部におけるアイドルプーリ7側の面には、張力バネ14を収容する筒状の収容部12bが設けられている。
【0021】
張力ロッド13の基端部は、車両のボディに設けられたフランジ16に回動可能に取り付けられている。張力ロッド13の先端部にはネジが切られており、張力ロッド13の先端部が張力フランジ12の挿通穴12aに挿通された状態で、張力ロッド13の先端部に環状の受け材17及びナット18が装着されている。張力ロッド13の先端部に装着された受け材17と張力フランジ12の先端部(収容部12b)との間に、張力バネ14が配置されている。
【0022】
係る張力付与機構11では、張力ロッド13の先端部に装着されたナット18を締め付け或いは緩めることで受け材17の位置を調整することにより、冷却ファン駆動用ベルト8に付与する張力を調整するようになっている。
【0023】
また、本実施形態に係る張力保持装置10は、プーリアーム6とエンジン1との間に介設され、プーリアーム6の揺動を規制する揺動規制機構19を更に備えている。
【0024】
本実施形態の揺動規制機構19は、プーリアーム6に装着されたフランジ(以下、ストッパフランジともいう)20と、エンジン1に回動可能に装着されたロッド(以下、ストッパロッドともいう)21と、フランジ20とロッド21との間に介設されたバネ(以下、ストッパバネともいう)22、23とを有している。
【0025】
プーリアーム6の先端部に取り付けられたプレート15におけるクランクプーリ4側の端部に、ストッパフランジ20の基端部がボルト及びナット24によって取り付けられている。プレート15及びストッパフランジ20の接続部には各々、互いに直交する方向に伸びる長穴15a、20aが設けられている(図1参照)。ストッパフランジ20は、側面視で略L字状に形成されている(図2参照)。ストッパフランジ20の先端部には、ストッパロッド21が挿通される挿通穴20bが貫通形成されていると共に、ストッパフランジ20の先端部におけるアイドルプーリ7側の面及びクランクプーリ4側の面には各々、ストッパバネ22、23を収容する筒状の収容部20c、20dが設けられている。
【0026】
ストッパロッド21の基端部は、エンジン1に回動可能に取り付けられている。ストッパロッド21の先端部にはネジが切られており、ストッパロッド21がストッパフランジ20の挿通穴20bに挿通された状態で、ストッパロッド21における挿通穴20bを挟んでアイドルプーリ7側の部分とクランクプーリ4側の部分に各々、環状の受け材26、27及びナット28、29が装着されている。ストッパロッド21に装着された各受け材26、27とストッパフランジ20の先端部(収容部20c、20d)との間に各々、ストッパバネ22、23が配置されている。
【0027】
係る揺動規制機構19では、ストッパフランジ20をプーリアーム6の先端部に取り付けられたプレート15から取り外した状態で、ストッパロッド21に装着された各ナット28、29を締め付け或いは緩めることで各受け材26、27の位置を調整することにより、ストッパロッド21に装着された受け材26、27とストッパフランジ20の先端部との間のクリアランス(つまり、ストッパ位置)を調整するようになっている。そして、係る揺動規制機構19では、ストッパフランジ20を上述のクリアランスを維持したままプーリアーム6の先端部に取り付けられたプレート15に取り付けるようになっている。
【0028】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0029】
本実施形態に係る張力保持装置10では、冷却ファン駆動用ベルト8に張力を付与する張力付与機構11が、プーリアーム6と車両のボディとの間に介設され、バネを用いてプーリアーム6をクランクプーリ4から離間する方向に付勢するものである。従って、本実施形態に係る張力保持装置10によれば、エンジン1の振動を張力付与機構11の張力バネ14によって遮断する(車両のボディに伝えないようにする)ことができ、車体振動及びこもり音を低減することができる。即ち、エンジン1の振動は冷却ファン駆動用ベルト8を介してアイドルプーリ7及びプーリアーム6に伝わるが、アイドルプーリ7及びプーリアーム6の振動は、張力付与機構11の張力バネ14によって吸収することができる。
【0030】
また、本実施形態に係る張力保持装置10では、冷却ファン駆動用ベルト8の伸びを張力付与機構11の張力バネ14によって吸収することができるため、冷却ファン駆動用ベルト8の張力の低下が少なく、冷却ファン駆動用ベルト8の張力調整の頻度を減らすことができる。
【0031】
また、本実施形態に係る張力保持装置10では、エンジン1の急激な動きがあった場合(悪路)、揺動規制機構19のストッパバネ22、23を底付けさせてプーリアーム6の揺動を規制することで、冷却ファン駆動用ベルト8の外れを防止することができる。
【0032】
さらに、本実施形態に係る張力保持装置10では、舗装路や、一般の砂利や工事等の段差を通過する際の振動は、揺動規制機構19のストッパバネ22、23によって吸収することが可能である。
【0033】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態には限定されず他の様々な実施形態を採ることが可能である。
【0034】
例えば、補機駆動用ベルト8は、冷却ファン駆動用ベルトには限定はされず、クーラコンプレッサ駆動用ベルト等であっても良い。即ち、エンジン1に配設される補機3は、冷却ファンには限定はされず、クーラコンプレッサ等であっても良い。
【符号の説明】
【0035】
1 エンジン
1a クランクシャフト
3 冷却ファン(補機)
4 クランクプーリ
6 プーリアーム
7 アイドルプーリ
8 冷却ファン駆動用ベルト(補機駆動用ベルト)
10 張力保持装置
11 張力付与機構
12 フランジ(張力フランジ)
13 ロッド(張力ロッド)
14 バネ(張力バネ)
19 揺動規制機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のボディに配設されたエンジンのクランクシャフトに固定されたクランクプーリと、補機に揺動可能に設けられたプーリアームに回転可能に支持されたアイドルプーリと、の間に掛け渡された補機駆動用ベルトの張力を保持する装置であって、
前記プーリアームと前記ボディとの間に介設され、バネを用いて前記プーリアームを前記クランクプーリから離間する方向に付勢することにより、前記補機駆動用ベルトに張力を付与する張力付与機構を備えたことを特徴とする補機駆動用ベルトの張力保持装置。
【請求項2】
前記張力付与機構は、前記プーリアームに回動可能に装着された張力フランジと、前記ボディに回動可能に装着された張力ロッドと、前記張力フランジと前記張力ロッドとの間に介設され、前記張力ロッドから反力をとって前記張力フランジを前記クランクプーリから離間する方向に引く張力バネとを有する請求項1に記載の補機駆動用ベルトの張力保持装置。
【請求項3】
前記プーリアームと前記エンジンとの間に介設され、前記プーリアームの揺動を規制する揺動規制機構を更に備える請求項1又は2に記載の補機駆動用ベルトの張力保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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