補綴弁移植部位の調製技術
【課題】補綴弁移植部位の調製技術の提供。
【解決手段】補綴弁移植の方法およびシステムが、記述され、特に、補綴交換弁の受け取りのために、狭窄または機能不全の元々の大動脈弁の元々の部位を調製することに関して記述される。主題のツールと、関連部位の調製技術とが、経皮的な大動脈弁の交換処置において利用され得る。化学的手法、機械的手法、およびエネルギーの印加を介した組織の改変または除去のためのデバイスが、開示される。治療区域を作成するデバイス、および他のデバイスがまた、開示される。
【解決手段】補綴弁移植の方法およびシステムが、記述され、特に、補綴交換弁の受け取りのために、狭窄または機能不全の元々の大動脈弁の元々の部位を調製することに関して記述される。主題のツールと、関連部位の調製技術とが、経皮的な大動脈弁の交換処置において利用され得る。化学的手法、機械的手法、およびエネルギーの印加を介した組織の改変または除去のためのデバイスが、開示される。治療区域を作成するデバイス、および他のデバイスがまた、開示される。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
心臓弁の疾患および他の障害は、心臓からの血液の適切な流れに影響を与える。心臓弁疾患の2つのカテゴリーは、狭窄症および機能不全である。狭窄症は、弁組織の硬直によって弁が完全に開くことの不全を指す。機能不全は、心臓内の血液の逆流を許すことによって非効率的な血液の循環をもたらす弁を指す。
【0002】
薬物療法が、一部の心臓弁障害を治療するために使用され得るが、多くの場合が、補綴心臓弁と元々の弁の交換を必要とする。補綴心臓弁は、元々の心臓弁(大動脈弁、僧帽弁、三尖弁、または肺動脈弁)のうちの任意のものを交換するために使用され得るが、大動脈弁または僧帽弁の修復または交換が、最も一般的である。なぜならば、それらは、圧力が最も大きい、心臓の左側にあるからである。
【0003】
従来の心臓弁の交換手術は、胸部の長手方向の切開を通って、患者の胸腔内の心臓にアクセスすることを含む。例えば、正中の胸骨切開術は、胸骨を通って切断することと、胸郭の2つの対向する半部分を少し離れさせ、胸腔と、胸腔の中の心臓とにアクセスすることを可能にすることとを必要とする。次に、患者は、心肺バイパスの支援下に置かれ、該心肺バイパスの支援は、心臓を止めることにより、内部の心室へのアクセスを可能にすることを伴う。かかる開心術は、特に侵襲的であり、そして、長く困難な回復期間を伴う。
【0004】
補綴弁の経皮的移植は、好適な処置である。なぜならば、手術は、局部麻酔の下で行われ、心肺バイパスを必要としないことがあり得、そして、あまり外傷性がないからである。様々なタイプの補綴物が、かかる用途に適合されている。1つの種類は、ステント状の外側本体と、一方向の血流を提供するように、そこに取り付けられた内部の弁尖とを利用する。これらのステント構造は、意図した部位への送達のために半径方向に収縮され、そして、次に、弁輪において管状構造を達成するために拡張/配備される。別のさらに有利な種類は、本明細書の譲受人によって提供される。特許文献1(この出願は、その全体が本明細書において参考として援用される)は、様々なパネルが、弁尖を担持しているインプラント本体を画定するシステムを記述している。これらの補綴弁構造は、収縮された状態で送達され、そして、次に、治療の場所において拡張した状態に広げられ、および/または開かれる。
【0005】
いずれかのタイプの構造を用いた、患者の体の組織と補綴物本体との間の充分な係合が、インプラントの位置を固定し、そして、周囲のシールを形成するために望ましい。しかしながら、元々の弁の被膜の部位/元々の弁に包まれた部位の中の部位に補綴デバイスを移植するときに、元々の弁の状態が、適合を妨げ得る。言い換えると、移植部位の形状の不規則性、表面の特徴、きめ、および構成が、全てのかかる変動性に適応することができる一定のサイズのインプラントを開発することに対する課題を提起する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005−0203614号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の局面は、石灰化した弁尖および/または不規則な弁尖ならびに輪状の幾何形状と補綴部材との界面によってもたらされる課題に、必要に応じて対処する。さらに、本発明の別の利点が、本開示の検討の際に、当業者に明らかとなり得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
補綴物の移植に備えた標的組織の調製のためのシステムおよび方法が、本明細書に記述されている。化学的手法、機械的手法、およびエネルギーの印加を介した組織の改変または除去のためのデバイスが、開示される。治療区域を作成するデバイス、および他のデバイスがまた、開示される。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
患者の組織の改変のための装置であって、
細長いシャフトと、
該細長いシャフトと結合された組織改変デバイスであって、該組織改変デバイスは、標的組織を機械的に改変するように構成されている、組織改変デバイスと
を備えている、装置。
(項目2)
前記組織改変デバイスは、
第1の硬い要素と、
第2の硬い要素と
を備え、
該第1の硬い要素と該第2の硬い要素とは、該硬い要素が、互いに対して間隔を置かれた第1の状態と、該硬い要素が、互いに向かって付勢された第2の状態との間で遷移するように構成されている、項目1に記載の装置。
(項目3)
前記第1の硬い要素は、電磁場を放出するように構成されている、項目2に記載の装置。
(項目4)
前記第2の硬い要素は、強磁性材料で構成されている、項目3に記載の装置。
(項目5)
前記第2の硬い要素は、磁石である、項目3に記載の装置。
(項目6)
前記第1の硬い要素と前記第2の硬い要素とのうちの少なくとも1つが、偏向可能なアーム部材に結合されている、項目2に記載の装置。
(項目7)
前記第1の硬い要素と前記第2の硬い要素とは、前記第1の状態において互いから離れるように機械的に付勢されている、項目6に記載の装置。
(項目8)
前記第1の硬い要素と前記第2の硬い要素とは、前記第1の状態において互いから離れるように磁気的に付勢されている、項目6に記載の装置。
(項目9)
前記第1の硬い要素は、前記第2の硬い要素と対向する側の表面に、テクスチャード加工の特徴を備えている、項目2に記載の装置。
(項目10)
前記組織改変デバイスは、前記シャフトから半径方向の距離で該細長いシャフトの周りを回転するように構成された少なくとも1つの重りを備えている、項目1に記載の装置。
(項目11)
前記重りは、第1の重りであり、前記半径方向の距離は、第1の半径方向の距離であり、そして、前記組織改変デバイスは、該第1の重りと反対側に位置を定められた第2の重りを備え、該第2の重りは、前記シャフトから第2の半径方向の距離で該細長いシャフトの周りを回転するように構成されている、項目10に記載の装置。
(項目12)
前記第1の重りと前記第2の重りとはそれぞれ、別々のアーム部材によって前記細長いシャフトに結合されている、項目11に記載の装置。
(項目13)
前記アーム部材は、回転可能なハブに結合されている、項目12に記載の装置。
(項目14)
前記シャフトから前記第1の重りを離す前記第1の半径方向の距離と、該シャフトから前記第2の重りを離す前記第2の半径方向の距離とは、可変である、項目11に記載の装置。
(項目15)
前記組織改変デバイスは、前記第1の重りおよび前記第2の重りを覆う拡張可能なシースをさらに備えている、項目11に記載の装置。
(項目16)
前記組織改変デバイスは、前記拡張可能なシースにテクスチャード加工の表面をさらに備えている、項目15に記載の装置。
(項目17)
前記組織改変デバイスは、前記拡張可能なシースを覆う補強材をさらに備えている、項目15に記載の装置。
(項目18)
前記組織改変デバイスは、前記重りを覆う拡張可能なシースをさらに備えている、項目10に記載の装置。
(項目19)
前記組織改変デバイスは、前記拡張可能なシースにテクスチャード加工の表面をさらに備えている、項目18に記載の装置。
(項目20)
前記組織改変デバイスは、前記拡張可能なシースを覆う補強材をさらに備えている、項目18に記載の装置。
(項目21)
前記組織改変デバイスは、前記シャフトから半径方向にずれた重心を有する重りを備えている、項目1に記載の装置。
(項目22)
前記シャフトは、回転可能である、項目21に記載の装置。
(項目23)
前記重りは、回転可能である、項目21に記載の装置。
(項目24)
前記組織改変デバイスは、前記標的組織を機械的に改変するために充分な力を加えるように構成されている、項目1に記載の装置。
(項目25)
前記標的組織は、弁尖である、項目1に記載の装置。
(項目26)
前記組織改変デバイスは、超音波エネルギーを放出するように構成されている、項目1に記載の装置。
(項目27)
患者の組織の改変のための装置であって、
細長いシャフトと、
該細長いシャフトと結合された切断デバイスであって、該切断デバイスは、標的組織を切断するように構成されている、切断デバイスと
を備えている、装置。
(項目28)
前記切断デバイスは、前記標的組織を機械的に切断するように構成されている、項目27に記載の装置。
(項目29)
前記切断デバイスは、第1のブレード部材と第2のブレード部材とを備え、それぞれが、鋭利な外側縁を有する、項目28に記載の装置。
(項目30)
前記第1のブレード部材と前記第2のブレード部材とは、矢状の切断要素を形成するように構成されている、項目29に記載の装置。
(項目31)
前記第1のブレード部材と前記第2のブレード部材とは、第1の拡張された構成において矢状の切断要素を形成するように構成され、そして、該第1の拡張された構成と第2の圧縮された構成との間で動くように構成されている、項目30に記載の装置。
(項目32)
前記第1のブレード部材と前記第2のブレード部材とは、前記第1の拡張された構成において鋭利な遠位先端を有する、項目31に記載の装置。
(項目33)
前記第1のブレード部材と前記第2のブレード部材とは、前記細長いシャフトに対して動くことができる支持シャフトに旋回可能に結合されている、項目32に記載の装置。
(項目34)
前記切断デバイスは、前記支持シャフトに対して動くことができる二次シャフトを備え、該二次シャフトは、前記第1のブレード部材と前記第2のブレード部材とを、前記拡張された構成から前記圧縮された構成に遷移させるように構成されている、項目33に記載の装置。
(項目35)
前記切断デバイスは、前記圧縮された構成のときに、前記細長いシャフトの中に収容可能である、項目31に記載の装置。
(項目36)
前記切断デバイスは、弁尖の少なくとも一部を切断するように構成されている、項目31に記載の装置。
(項目37)
前記切断デバイスは、弁尖の実質的に全てを切断するように構成されている、項目に28記載の装置。
(項目38)
前記切断デバイスは、前記標的組織の少なくとも一部を把持するように構成された把持デバイスをさらに備えている、項目27に記載の装置。
(項目39)
前記切断デバイスは、第1の切断顎と第2の切断顎とを含み、該第1の切断顎と該第2の切断顎とは、互いに向かって動くように構成されている、項目38に記載の装置。
(項目40)
前記切断デバイスは、引っ張りワイヤによって作動可能である、項目39に記載の装置。
(項目41)
前記把持デバイスは、鉗子状のデバイスとして構成されている、項目39に記載の装置。
(項目42)
前記把持デバイスは、スネア状のデバイスとして構成されている、項目41に記載の装置。
(項目43)
前記把持デバイスは、前記切断デバイスに対して動くことができる、項目42に記載の装置。
(項目44)
前記把持デバイスは、前記細長いシャフトの中に位置を定められた支持シャフトに結合されている、項目43に記載の装置。
(項目45)
前記切断デバイスの上を摺動するように構成された外側シースをさらに備えている、項目27に記載の装置。
(項目46)
前記切断デバイスは、
可撓性のワイヤ状の要素と、
該ワイヤ状の要素の上に摺動可能に配置された切断要素と
を備えている、項目27に記載の装置。
(項目47)
前記可撓性のワイヤ状の要素は、前記標的組織に適合するように構成されている、項目46に記載の装置。
(項目48)
前記可撓性のワイヤ状の要素は、所定の形状を有する、項目47に記載の装置。
(項目49)
前記切断要素は、鋭利な外側縁を備えている、項目46に記載の装置。
(項目50)
前記可撓性のワイヤ状の要素と前記切断要素とは、前記細長いシャフトの中に収容可能である、項目46に記載の装置。
(項目51)
ワイヤバンド状の要素をさらに備えている、項目46に記載の装置。
(項目52)
前記可撓性のワイヤ状の要素と前記ワイヤバンド状の要素とのうちの1つが、前記標的組織に適合するように構成されている、項目51に記載の装置。
(項目53)
前記可撓性のワイヤ状の要素と前記ワイヤバンド状の要素とは、所定の形状を有する、項目52に記載の装置。
(項目54)
前記切断要素は、鋭利な外側縁を有する、項目53に記載の装置。
(項目55)
前記可撓性のワイヤ状の要素と前記切断要素とは、前記細長いシャフトの中に収容可能である、項目54に記載の装置。
(項目56)
前記ワイヤバンド状の要素と前記ワイヤ状の要素とは、その間に組織を挟むように構成されている、項目55に記載の装置。
(項目57)
前記バンド状の要素の形状は、前記ワイヤ状の要素の形状に適合するように構成されている、項目55に記載の装置。
(項目58)
前記ワイヤ状の要素は、第1のワイヤ状の要素であり、前記切断要素は、第1の切断要素であり、前記切断デバイスは、第2のワイヤ状の要素と、該第2のワイヤ状の要素の上に摺動可能に配置された第2の切断要素とを備えている、項目46に記載の装置。
(項目59)
患者の中に治療区域を作成する装置であって、
細長いシャフトと、
該細長いシャフトと結合された治療区域作成デバイスであって、該治療区域作成デバイスは、治療の適用を容易にするために組織の領域を隔離するように構成されている、治療区域作成デバイスと
を備えている、装置。
(項目60)
前記治療区域作成デバイスは、
前記細長いシャフトと結合された第1の膨張可能なトロイド状のバルーンと、
該細長いシャフトと結合された第2の膨張可能なトロイド状のバルーンと、
第3の膨張可能なトロイド状のバルーンであって、該第3の膨張可能なトロイド状のバルーンは、該細長いシャフトと結合され、そして、該第1のバルーンと、該第2のバルーンと、該第3のバルーンとが、膨張させられたときに、該第1のトロイド状のバルーンと該第2のトロイド状のバルーンとに隣接し、かつ、その間に位置を定められるように構成されている、第3の膨張可能なトロイド状のバルーンと、
を備えている、項目59に記載の装置。
(項目61)
前記第1のトロイド状のバルーンと、前記第2のトロイド状のバルーンとは、前記第3のトロイド状のバルーンから独立して膨張可能である、項目60に記載の装置。
(項目62)
前記第1のトロイド状のバルーンと、前記第2のトロイド状のバルーンとは、血管壁の周囲に接触するように構成されている、項目61に記載の装置。
(項目63)
前記第3のトロイド状のバルーンは、体腔の中の空間領域から流体を排出するように構成されている、項目62に記載の装置。
(項目64)
前記第1のバルーンと前記第2のバルーンとは、前記第3のバルーンが収縮されたときに、該第3のバルーンに隣接した治療空間の中への外部の領域からの流体の通行に抵抗するように構成されている、項目63に記載の装置。
(項目65)
前記第3のバルーンと向かい合う場所で血管壁にエネルギーを印加するように構成された治療デバイスをさらに備えている、項目62に記載の装置。
(項目66)
前記第1のバルーンと前記第2のバルーンとは、該第1のバルーンと該第2のバルーンと前記第3のバルーンとが、膨張させられたときに、該第3のバルーンに接触するように構成されている、項目60に記載の装置。
(項目67)
前記第3のバルーンは、弁尖を覆って膨張するように構成されている、項目60に記載の装置。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】図1A〜図1Bは、切断デバイスの例示的な実施形態を描いている端面図である。
【図1B】図1A〜図1Bは、切断デバイスの例示的な実施形態を描いている端面図である。
【図1C】図1C〜図1Dは、切断デバイスの追加の例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図1D】図1C〜図1Dは、切断デバイスの追加の例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図2A】図2A〜図3Cは、組織改変デバイスの追加の例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図2B】図2A〜図3Cは、組織改変デバイスの追加の例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図3A】図2A〜図3Cは、組織改変デバイスの追加の例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図3B】図2A〜図3Cは、組織改変デバイスの追加の例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図3C】図2A〜図3Cは、組織改変デバイスの追加の例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図4A】図4Aは、治療区域作成デバイスの例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図4B】図4Bは、治療区域作成デバイスの別の例示的な実施形態を描いている断面図である。
【図5A】図5A〜図5Dは、切断デバイスの例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図5B】図5A〜図5Dは、切断デバイスの例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図5C】図5A〜図5Dは、切断デバイスの例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図5D】図5A〜図5Dは、切断デバイスの例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図5E】図5E〜図5Gは、切断デバイスの例示的な実施形態を描いている、頂上部を下にした図である。
【図5F】図5E〜図5Gは、切断デバイスの例示的な実施形態を描いている、頂上部を下にした図である。
【図5G】図5E〜図5Gは、切断デバイスの例示的な実施形態を描いている、頂上部を下にした図である。
【図6A】図6A〜図6Eは、切断デバイスの追加の例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図6B】図6A〜図6Eは、切断デバイスの追加の例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図6C】図6A〜図6Eは、切断デバイスの追加の例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図6D】図6A〜図6Eは、切断デバイスの追加の例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図6E】図6A〜図6Eは、切断デバイスの追加の例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図7A】図7A〜図7Bは、切断デバイスの別の例示的な実施形態を描いている側面図である。
【図7B】図7A〜図7Bは、切断デバイスの別の例示的な実施形態を描いている側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において記述される図面は、必ずしもサイズを合わせて描かれておらず、一部のコンポーネントおよび一部の特徴は、明確にするために誇張されている。図面のそれぞれは、本明細書において記述されるシステムおよび方法の局面を概略的に例示している。描かれた実施形態からの変化形が、充分に想定されている。
【0011】
本発明の様々な例示的な実施形態が、以下で記述される。参照が、限定されない意味で、これらの例に対して行われる。これらの例は、本発明のより広範囲に適用可能な局面を例示するために提供される。様々な変更が、記述されたシステムおよび方法に対して行われ得、そして、均等物が、本発明の真の精神および範囲を逸脱することなく置換され得る。さらに、様々な改変が、特定の状況、特定の材料、特定の物体の構成、特定のプロセス、特定のプロセスの行為もしくは特定のステップを本発明の目的物、精神または範囲に適合するように行われ得る。さらに、本明細書において記述および例示された個々の変化形のそれぞれが、本発明の範囲および精神を逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のうちの任意のものの特徴から容易に分離され得るか、他のいくつかの実施形態のうちの任意のものの特徴と組み合わされ得る別個のコンポーネントおよび別個の特徴を有するということが、当業者によって理解される。全てのかかる改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることを意図されている。
【0012】
したがって、本明細書に記述された方法は、補綴弁の部位を均質化し、平滑化し、および/またはより規則的にするための、補綴弁の部位の調製の方法を含む。これらの方法は、一般的に(必ずではないが、最も有利なことに)経皮的に行われる。記述される多数の手法、またはそれらの一部の組み合わせが、移植される補綴物との組織−弁本体との界面を改善するために組織(弁部分自体および/または周囲の組織)を改変するために利用される。
【0013】
あらゆるかかる単独の除去および/または組織の操作の前に、選択された弁にバルーン弁形成術を行うことが、望ましいことがあり得る。大動脈弁の場合において、弁尖が、誘導ワイヤで弁を越え、治療部位までワイヤの上にバルーンを通した後に、バルーンを膨張させることによって少なくとも部分的に開かれる。弁形成処置は、弁尖がより容易に開くように、弁尖を切断するように適合された従来のバルーンまたは切断バルーンを使用して行われ得る。
【0014】
図1A〜図1Dは、細長いシャフト101に位置を定められた切断バルーン102の例示的な実施形態を描いている。図1A〜図1Bは、長手方向に並べられた複数の切断要素103の様々な構成を有する、膨張させられた状態のバルーン102の端面図である。図1C〜図1Dは、切断要素103の代替の配置を描いている斜視図である。図1Cにおいて、複数の切断要素103が、存在し、そして、バルーン102の周りに放射状に並べられている。図1Dにおいて、1つの切断要素が、バルーン102の表面に沿って長手方向かつ放射状に配置されて示されている。
【0015】
米国特許出願公開第2006/0116700号(その全体が本明細書において参考として援用される)が、本明細書において記述されるシステムおよび方法と共に使用され得るような切断バルーンの別の例を提供する。かかる用途に適合され得る他の切断バルーンは、Flextome Cutting Balloon(登録商標)(Boston Scientific)と、米国特許第5,196,024号、同第6,632,231号、同第6,951,566号、および米国特許出願公開第2005/002107号(これらの参考文献のそれぞれもまた、その全体が参考として援用される)に記述された切断バルーンとを含む。
【0016】
かかる治療前の選択肢とは別に、一例示的な実施形態において、組織の物理的な操作に対する経皮的アプローチが、提供される。別の例示的な実施形態において、部位の化学的性質が、改変される。他の実施形態において、エネルギーが印加されることにより、組織を改変する。
【0017】
かかる操作の意図した結果は、単に、補綴物の移植のために、よりコンプライアンスのある部位またはより順応性のある部位を提供することであり得、該よりコンプライアンスのある部位または該より順応性のある部位は、(組織が後に再構築する場合であっても)保持、配置の精度、シーリングなどの目的のためにインプラントの幾何形状により良く適合(例えば、順応)することができる。または、組織の軟化が、組織の少なくとも一部の除去を補助する目的のために達成され得る。かかる除去は、組織改変アプローチを単独で用いて可能なかかる進捗をさらに改善するために望ましいものであり得る。
【0018】
組織改変のための機械的な方法に関して、1つ以上のツールが、狭窄した弁尖組織を均質化および粉砕するなどのために提供される。組織内の、カルシウムの小節またはカルシウムの堆積物は、物理的な作用で粉砕されるか、取り除かれる。意味することは、かかる物理的な作用または機械的な作用によって、作用される組織は、かかる用途に適合された本体によって、またはその間で衝突させられるか、打撃されるということである。ハンマーおよびアンビルのタイプのアプローチを使用する一例示的な実施形態において、硬化した組織は、硬化した組織の(一般的に)石灰化した構造を粉砕することによってよりコンプライアンスがあるようにされる。
【0019】
図2Aおよび図2Bは、対向する本体112と本体114とを有するかかる用途に適したデバイス110の例示的な実施形態を描いている斜視図であり、該本体112と該本体114とは、問題のある組織を改変するために充分な運動エネルギーを有する速度で接触させられる。ここで示されるような一変化形において、対向するハンマー本体112およびハンマー本体114(またはハンマーおよびアンビルの質量要素)が、支柱またはアーム113および115に据え付けられ、該支柱またはアーム113および115は、次に、細長いシャフト101に結合される。別の変化形において、ブレード、またはスパイク状の特徴が、(図2Aに示されているように)本体に据え付けられるか、(図2Bに示されているように)単独で使用されるかであり得る。アームは、図2A〜図2Bに示されているように、離れるように付勢され得る。好適には、本体のうちの一方が、永久磁石(例えば、希土類磁石)を備えるか、強磁性体であるかである。両方の場合において、対向する電磁気的本体の動作が、方向121に沿って他方を引き寄せる。
【0020】
図2A〜図2Bにおいて、ハンマー本体112は、強磁性体であり、ハンマー本体114は、強磁性の中心部分117の周りに巻かれた強磁性の巻き116を有する電磁石として構成される。巻き116は、アーム115に沿って配置された電気リード118と結合される。リード118は、次に、適切な電流が、巻き116に印加されることにより、ハンマー114から電磁場を生成し得るように電源と結合される。磁石が、電磁石の向かい側で使用される場合には、電磁石の極性を切り替えることがまた、方向121に沿って離れるように本体を駆動し得る。または、バネの力が、部材が繰り返し互いに打撃することができるように、電源が電磁石に対して切られた後に、ある程度の距離に離して部材を維持するか、押しやるようにたよりにされる。図2Bは、弁尖122における石灰化した病変123に適用する前のデバイス110を描いている。
【0021】
打撃作用は、完全にユーザに指示されるか、ユーザの入力によって開始されると、周期的であるかであり得る。打撃作用は、ユーザによって終了させられるまで継続的であるか、医療従事者によって駆動させられると、ある程度の数の周期が自動的に進行するかであり得る。例えば、ハンマリングメカニズムが、1つの「殴打」を10回、20回、50回、または100回繰り返し得る。あらゆるかかる周期的な動きまたは繰り返しの動きに関して、1つの殴打は、1Hzと1000Hzとの間の速度で進む。さらに一般的には、速度は、約10Hzと約100Hzと範囲にある。かかる作用は、(例えば、バネで付勢されるアプローチの例において)DC電圧を切り替えることによって制御されるか、(例えば、永久磁石が使用される例において)AC電圧を印加することによって制御されるかであり得る。
【0022】
有利なことに、本体間の開閉(すなわち、デバイスの「顎」が、充分に広く、かつ、かなり長い期間開く)は、デバイスが、動作の間に、接触する組織の部位の間に通過し得るか、動き得るようなものである。あるいは、方法は、1つの部位を治療し、標的の組織を改変するためにデバイスの作用を開始し、デバイスの作用の終了を待ち、そして、かかる作用を連続して繰り返すことによって進み得る。打撃本体は、一般的に、送達の間、引き寄せられ一緒にされている。
【0023】
石灰化した病変を粉砕または改変する別のアプローチは、一組の拡張可能な回転重りで石灰化した病変を打撃することを含む。重りは、例えば、図3Aの斜視図に示されたデバイス110の例示的な実施形態に描かれたもののように、可撓性の連結アームまたは関節運動する連結アームに担持されるか、別な方法で配置されるかであり得る。ここでは、重り130が、連結アーム131に旋回可能に結合され、次に、該連結アーム131は、ハブ133に旋回可能に結合されている。次に、ハブ133は、細長いシャフト101に回転可能に結合され、そして、ハブ133のうちの1つ以上がまた、シャフト101と摺動可能に結合されている。デバイス110は、軸132の周りで重り130を回転させるように構成されている。軸の周りでの本体の回転は、重りが移動する弧の半径を拡張するために使用され得る。図3Aに例示された実施形態において、重り130の回転速度が、連結アーム131を、ハブ133に対して旋回させ、そして、重り130がまた、ハブ133のうちの一方または両方を、重り130に向かって摺動させ、重り130が移動する弧を拡張させる。重り130は、拡張可能なシースまたはバルーン134によって取り囲まれるか、囲まれるかであり得る(該拡張可能なシースまたはバルーン134の概略が、その中のコンポーネントを見ることを可能にするように、図3Aに示されている)。
【0024】
いずれにしても、かかるカバー134は、重りが、標的組織を汚すことを防止するか、重りが、もつれさせられることと、ゆるんだ物質をはがすこと、または剥ぎ取ることとを防止するかであり得る。バルーン134の使用は、(膨張させられたときに)大動脈腔または弁輪の中に、デバイス110の作用の中心を定めるために望ましいものであり得る。重り131が回転する速度は、幅広く変化し得、重り131が回転する速度の最適化は、選択された設計に依存する。
【0025】
図3Bは、デバイス110の別の例示的な実施形態を描いている斜視図である。ここでは、バルーン134の中のコンポーネントは、明瞭性のために示されていない。この実施形態において、バルーン134は、追加の研磨カバー135で覆われて示されている。ここで、研磨カバー135は、重り130の回転の間に標的組織を研磨することと、バルーン134が重り130によって破裂しやすい場合にバルーン134に対する補強を提供することとの両方のために構成されたメッシュ状の構成を有する。
【0026】
図3Cは、デバイス110の別の例示的な実施形態を描いている斜視図である。この実施形態において、デバイス110は、シャフト101の周りに偏心した円筒形の構成で配置された複数の重り130を有する遠位部分137を含む。遠位部分137は、細長いシャフト101からずらされた重心を有する。シャフト101の回転が、部分137を振動および打撃させ、そして、好適には、まわりの標的組織を改変する。
【0027】
機械的な組織改変方法において使用され得るこれらの機械システムのうちの任意のものが、一般的には、デバイスの動作端または作業端と、そこに導かれる医療シャフトまたはカテーテル本体(曲がりくねった解剖学的構造を通過するときにデバイスを覆うか、固定するように提供される任意の引き込み可能なシース部分を含む)と、一体型のまたは別個/再利用可能な電源および/または電子制御装置とを含む。
【0028】
上で言及されたように、別の例示的な実施形態において、組織は、化学的な手段で改変される。弁尖を含む大動脈弁の化学的な改変は、Constantzらによる様々な特許(例えば、米国特許第6,712,798号、同第6,622,732号、同第6,533,767号、同第6,394,096号、同第6,387,071号、同第6,379,345号、それぞれは、その全体が本明細書において参考として援用される)によって教示されている。それらの特許は、一定期間の間の低pHの溶液の塗布による弁および/または弁輪の鉱物質消失を様々に教示している。
【0029】
特許において言及された治療は、弁形成術または弁輪形成術における鉱物質消失を含む。記述されたように、弁または構造が、その上に存在する石灰化した病変を有する弁/弁輪構造の鉱物質消失の際に、その部位が、一般的に、溶解溶液で洗浄される。留意されるべき特に関心のある、鉱物質を消失させる2つの酸性溶液は、塩化水素溶液と炭酸溶液とである。利用される溶解溶液は、言及された特許において教示されたような様々な目的にかなう1つ以上の追加の成分も含み得る。かかる教示は、本明細書に記述されたシステムおよび方法を実行することに充分に適用可能であるが、弁形成術または弁輪形成術に対する使用以外の鉱物質消失技術に対する様々な用途もまた、想定されている。
【0030】
特に、別の例示的な方法において、鉱物質消失技術は、経皮的に送達され、そして、鉱物質消失領域に、またはそれに隣接して置かれた管腔のインプラントに対する界面を改善するように、弁に隣接し、かつ、弁を含む広い範囲とのコンプライアンスを変えるために利用される。管腔の壁および/または元々の弁(弁尖および/または弁輪)によって得られた追加のコンプライアンスは、インプラントと開放性のシールを形成することを劇的に補助し得、そして、デバイスの移動を妨げることに劇的に役立ち得る。
【0031】
したがって、本明細書に記述されたシステムおよび方法は、Constantzの特許のいずれかに記述された特定の解決策と、その技術のうちの一部とを利用し得るが、本明細書の方法は、少なくとも、かかる作用が他の行為を伴うという点で異なる。すなわち、化学的組織改変は、組織の除去に先立ち得る。あるいは(または追加的に)、化学的組織改変は、特に経皮的に送達されるインプラントに対する適切なレベルの組織の順応性、またはそれとの適切なレベルの組織の適合性を提供する観点から、移植部位の決定的な調製を提供し得る。
【0032】
さらにまた、独特なデバイスが、酸性の溶解媒体の塗布のために提供される。1つのかかるデバイスは、血液が通過するための管腔と、大動脈壁を含む溶液チャンバを画定するために使用される一対の環状バルーンとを含む。形成されるチャンバ(故に、デバイス自体)の長さは、選択された大動脈弁のインプラントとの使用のために調節される。コンプライアンスを増加させるために改変される管腔部分の長さは、実質的に、壁と接触する補綴物の長さに対応する。あるいは、より長い部分またはより短い部分が、改変され得る。より長い部分は、インプラントが、周囲の組織により良く埋まることを可能にし、端が捕捉されることを可能にする。より短い部分は、血管の損傷を最小にするために、または、単に、補綴物本体だけに提供されるあらゆる係合特徴を標的にするために望ましくなり得る。
【0033】
インプラント−組織の界面を改善するために、またはインプラントの受け取りを補助するための切除の容易さのために、石灰化した組織を改変するさらに別の例示的な方法において、熱エネルギーが印加されることにより、石灰化した病変、特に、弁尖における石灰化した病変を軟化させる。かかるエネルギーを印加する1つのアプローチは、バルーンの本体に担持されたステント状の本体または、バルーン本体に刻み込まれたコイルのパターンによるものである。治療部位(例えば、大動脈弁輪)にくると、バルーンが、組織と接触している金属の構造を保持するために膨張させられる。無線周波数(RF)またはマイクロ波のエネルギーが、デバイスによって送達され得る。あるいは、オーム加熱/抵抗加熱が、金属の本体を直接的に加熱するために利用され得る。バルーンは、単一チャンバのデバイスまたは複数チャンバのデバイスであり得る。デバイスは、単一チャンバのトロイドの形態で構成されるか、複数の半径方向に向けられたチャンバを使用して中央管腔を提供するように構成されるかであり得る。
【0034】
別のエネルギー送達アプローチにおいて、治療区域が、血液を抜かれた血管壁に沿って作業領域を形成するように、1つ以上のバルーンおよび/またはバッフル壁を使用することによって作成される。このように調製されて、1つ以上のダイオードによって局所的に送達されるか、1つ以上の光ファイバに沿って伝達されるレーザエネルギーが、石灰化した組織を改造/改変するために、またはより積極的な部位の改変を所望されるような組織を選択的に切除するために印加される。
【0035】
図4A〜図4Bは、治療区域を生成するように構成されたデバイス140の例示的な実施形態を描いている。図4Aは、拡張された状態で細長いシャフト101に位置を定められた3つの拡張可能な膜またはバルーン141〜143を有するデバイス140を描いている斜視図である。各バルーン141〜バルーン143は、トロイド状の構成を有する。区域作成バルーン143は、周囲の血管壁または組織と接触するように拡張し、そして、あらゆる干渉する流体を血管壁/組織から排出するように構成されている。
【0036】
図4Bは、治療区域145の作成後のこの実施形態を描いている断面図である。ここで、区域145は、好適には、血管壁144における標的組織、例えば、石灰化した組織の存在に対応する。区域作成バルーン143の膨張の後に、エンドキャップバルーン141およびエンドキャップバルーン142が、周囲の流体146の侵入に対するバリアを作成するために膨張させられる。区域作成バルーン143は、次に、エネルギー印加装置(例えば、レーザ)などの治療法の使用につながる治療空間147を作成するために収縮させられる。エンドキャップバルーン141およびエンドキャップバルーン142は、治療空間の中への流体の通行に抵抗するように充分に強いことが好ましい。吸引−灌注ポート(図示せず)がまた、切除された組織、または治療の副産物(例えば、煙)などを除去するために含まれ得る。バルーンに対する膨張管腔と、全ての血液シャント管腔は、明確にするために示されていない。
【0037】
さらに別の例示的なエネルギー送達アプローチにおいて、衝撃波を含む砕石技術が利用される。かかる技術は、一般的に、腎臓、膀胱、尿管、または胆嚢において形成する「結石」を粉砕するために使用される。利用され得る複数のアプローチが存在するが、最も一般的なアプローチは、体外衝撃波砕石術である。衝撃波は、石灰化体を細片に破砕するために治療部位に集中させられる。腎臓結石の場合において、患者は、それらを「通過」させる。本発明に従った、石灰化した弁尖の病変に関する技術を実施するときには、小塊の通過は、必要としないし、かかる作用のための通路も存在しない。したがって、本発明に従った、石灰化した弁尖の病変に関する技術は、大動脈弁の鉱化作用の被包性の性質に起因して、塞栓の保護などを必要とすることなく実施され得る。
【0038】
最も好適には、これら全ての方法と、それらの入れ替えの組み合わせが、鼓動する心臓の処置に関連して実施される。言い換えると、患者は、処置の間に心肺バイパスの支援に置かれる必要はない。しかしながら、本明細書に記述される本方法と本ツールとの局面は、かかる条件の下で利用され得る。
【0039】
本明細書において記述されるシステムと方法との別の想定される変形例は、特定の組織の除去に関する。さらに、記述される組織改変は、組織の除去に先駆けるものとして働き得る。このように改変されると、従来の技術および/または改変された技術を使用した組織の除去は、単純化され得る。かかる目的のために、以下のデバイスおよび/または技術(ならびに、さらに他のデバイスおよび/または技術)のうちの任意のものが、利用され得る。
【0040】
(無線周波(RF)切除)
概して、限定ではない例として、単極の無線周波数熱切除が、弁尖に挿入されたプローブを通って弁尖の組織に無線周波エネルギーを伝える。エネルギーは、組織の温度を上昇させることができ、それにしたがって、熱損傷を使用することにより、周囲の組織を離断する。二次的な特徴が、自由な組織を除去するために使用される。
【0041】
(双極の無線周波切除(コブレーション))
概して、限定ではない例として、この処置は、熱を使用することなく分子結合を崩壊させるイオン化塩水層を生成する。エネルギーが、組織に伝えられたときに、イオン解離が生じる。このメカニズムは、弁尖の全て、または一部だけを除去するために使用され得る。これが、45℃〜85℃の熱効果を用いた組織の除去をもたらす。この技術の利点が、隣接する組織に対する外傷を少なくさせる。二次的な特徴が、溶解された組織と残余の塩水プラスマを除去するために使用される。
【0042】
(レーザ)
概して、限定ではない例として、この技術は、弁尖の組織を気化および除去するために、カテーテルの端においてレーザを利用する。二次的な特徴(例えば、グラスパまたは下流のフィルタ)が、切られた組織を除去するために使用される。
【0043】
(超音波)
概して、限定ではない例として、メカニズムが、超音波エネルギーを弁尖の組織に伝えるために使用される。エネルギーは、組織の温度を上昇させることができ、それにしたがって、熱損傷を使用することにより、周囲の組織を離断する。メカニズムは、組織の非常に近くにあるプローブであり得る。他のデバイスの特徴が、組織と密に接触してプローブを位置決めし、その結果、効率を改善し得る。それらの特徴は、うまく並置するために、カテーテルステアリング、または1つ以上のトロイド状のバルーンを含み得る。
【0044】
(スネアワイヤ)
概して、限定ではない例として、この技術は、自由端がカテーテルシャフトに延びるように向けられた「締めなわ形状」のスネアワイヤを利用する。グラスパメカニズムが、大きな石灰化した組織を寄せるために、スネアと共に組み込まれ得る。組織が寄せられた後に、スネアワイヤは、張力状態で引っ張られ、ループの半径空間の中の近位の組織においてループを閉じさせる。つぶされた組織は、切断される。二次的な特徴が、切られた組織を除去するために使用される。様々な、ループに基づいたカッターのアプローチおよび選択肢が、図に開示されている。
【0045】
(振動メス)
概して、限定ではない例として、このデバイスは、毎秒55,000サイクルでデバイスのブレードを振動させるために超音波エネルギーを使用する。裸眼では見えないが、振動が、エネルギーを組織に伝え、切断と凝固とを同時に提供する。周囲の組織の温度は、摂氏80度に到達する。最終的な結果は、最小の熱損傷を有する正確な切断である。ブレードは、(湾曲した、直線、鏃などの)単一のブレード、2つのブレードのはさみ、ギロチンタイプの設計、または他の実施形態として構成され得る。二次的な特徴が、切られた組織を除去するために使用される。
【0046】
(窓カッター)
概して、限定ではない例として、これらのデバイスは、多くの場合に、サイドホールを有するカニューレタイプの本体または延長部を利用する。管腔の減圧、または組織を突く圧力が、物質をサイドホールの中に押す。物質は、サイドポートを塞ぐように作動させられる(任意的に鋭利な)内側スリーブまたは外側スリーブによって切断される。米国特許出願公開第2004/0049215号は、超音波トランスデューサ視覚システムを含むかかるデバイスを開示している。
【0047】
(アテレクトミーデバイス)
概して、限定ではない例として、多種多様なカッターのタイプが、この種類において提案されている。回転カッターの例は、Rotoblator(商標)ツール(Boston Scientific)と、米国特許第6,503,261号において提案されているバー(burr)とを含む。他の例は、米国特許出願公開第2005/0222663号に記述されているようなSilverHawk(商標)システム(Fox Hollow)と、米国特許第5,507,760号、同第5,624,457号、同第5,669,920号および同第6,120,515号において提案されたカッターとを含む。米国特許第5,429,136号に記述された同様な構成の別のカッターは、視覚システムを含む。視覚システム(例えば、超音波トランスデューサのアレイ)を含む傾斜タイプまたはドリルタイプのカッターが、米国特許第6,027,450号に開示されている。米国特許第5,312,425号は、回転するらせん状のブレードを利用する、さらに別のタイプのアテレクトミーデバイスを開示しているが、米国特許第5,181,920号は、回転するシャベルタイプのカッターを開示している。この最後のデバイスと、他のデバイスのうちのいくつかのものが、デバイスを位置決めすること、および/または切断手段と接触するように物質を促すことを補助するためにバルーンを含む。
【0048】
(カスタムカッター)
本明細書において記述されたシステムおよび方法と使用するために特に製造された様々な他のタイプの独自のカッターが、利用され得る。図面においては、矢形のカッターが、その使用方法と共に示されている。また、(配置/移動のための非外傷性の外側スリーブによって保護され得る)丸いブレード面または楕円のブレード面と接触するように、組織の吸引を利用する同軸カッターが、利用され得る。前者のデバイスは、拡大される切断ブレードの関節運動および送達の点で利点を提供し、後者のデバイスは、設計の精密さおよび簡潔さと、中央管腔を通って組織の吸引/引き込みをする能力との点で望ましい。さらに、グラスパと鉗子とが、作業される組織を捕捉または操作のいずれかのためにカッターと関連付けられて使用され得る。グラスパ/カッターの組み合わされた顎の組織除去がまた、示される。
【0049】
図5A〜図5Gは、矢形のカッターと、その使用方法との例示的な実施形態を描いている斜視図、および頂上部を下にした図である。図5A〜図5Dは、細長いシャフト101から開いた遠位端151を通るカッター150の一連の前進を示す。カッター150は、圧縮された構成または畳まれた構成でシャフト101の中に収容され、そして、図5Dの切断する構成になるように拡張可能であるように構成されることが好ましい。カッター150は、鋭利な外側縁154を有する2つのブレード部材153を含む。ブレード部材153は、細長い支持シャフト152に結合され、該細長い支持シャフト152は、例えば、支持シャフト152の内側管腔の中に、細長い支持シャフト152と摺動可能に結合された二次シャフト159を有する。連結部材156が、各ブレード部材を支持シャフト152と旋回可能に結合する。ここで、連結部材156は、ピボット157においてブレード部材153と旋回可能に結合され、そして、ピボット158において支持シャフト152と旋回可能に結合される。1つ以上の付勢部材(図示せず)が、図5C〜図5Dに示されているように、ブレード部材153が拡張された構成に自動的になるように使用され得る。拡張された構成になると、ブレード部材153は、図5Dに示されているように、鋭利な遠位先端155を形成するように整列することが好ましい。
【0050】
図5Eは、標的組織に近いカッター150を描いており、この実施形態においては、該標的組織は、弁形成処置の一部分として取り除かれる弁尖161である。カッター150は、弁尖161と血管壁162との間で前進させられることにより、図5Fに示されているように、鋭利な遠位先端155に弁尖161を貫通させる。鋭利な外側縁154が、カッター150の遠位方向への継続的な移動が、図5Gに示されているように、弁尖161の実質的に全てを切断することを可能にする。次に、切断された組織は、本明細書において記述されているように、塞栓フィルタ(図示せず)を使用して収集され得る。処置が完了すると、アバットメント160に対する二次シャフト159の前進が、圧縮された構成に戻るように、ブレード部材153を偏向させることにより、シャフト101の中に戻るようなカッター150の引き抜きを可能にする。
【0051】
図6A〜図6Eは、本明細書に記述されたシステムおよび方法と共に使用するためのカッター170の追加の例示的な実施形態を描いている斜視図である。図6Aは、開いた遠位端151を通ったシャフト101の中からの前進の後の、可撓性のワイヤ状のループ要素171を有するデバイス170を描いている。要素171は、標的組織に適合するように構成されることが好ましく、この実施形態において、該標的組織は、弁尖174である。あるいは、要素171は、標的組織との適合のために所定の形状を有し得る。ここでは、要素171は、弁尖174と血管組織175との間に作成されたポケットに位置を定められて示されている。切断要素172、すなわち、鋭利な外側縁173が、要素172の移動が、ワイヤ要素171によって標的組織に沿って誘導されるように、ワイヤ状の要素171の上に摺動可能に配置されている。これが、鋭利な外側縁173が、組織を切開することを可能にし、弁尖174が切断されることを可能にする。
【0052】
図6Bは、処置を促進するために複数の切断要素172(図示せず)が同時に使用されることを可能にする、3つの、ワイヤ状の要素を有する別の例示的な実施形態を描いている。
【0053】
図6C〜図6Dは、カッター170のさらに別の例示的な実施形態を描いている。ここでは、可撓性のワイヤバンド状の要素176が、ワイヤ状の要素171と共に含まれ、そして、両者が、シャフト101の中から延長可能である。ワイヤ状の要素171と、バンド状の要素176とは、図6Dの側面図に描かれているように、互いに向かって締まるように構成されることが好ましい。弁形成処置などの例示的な処置の間に、要素171および要素176のうちの一方または他方が、弁尖174と血管壁175(両者とも示されていない)の間のポケットに挿入される。他方は、ポケットの外に残される。次に、切断要素172は、ワイヤ状の要素171の上を前進させられ、そして、要素172と要素176との間にある弁尖174を切断するために使用され得る。このようにして、要素171と要素176とは、その間に標的組織を挟み、そして、切断処置における制御を改善する。
【0054】
図7Aおよび図7Bは、標的組織192を把持し、よりうまく分離するための把持デバイス191を有する切断デバイス190の例示的な実施形態を描いている。把持デバイス191は、支持シャフト199に結合され、そして、ここで示されているもののように鉗子のように構成されるか、スネア状の構成を有するかであり得る。把持デバイス191と、切断顎デバイス193とは、図7Bに示されているように、互いに対して動くことができ、そして、把持デバイス191は、標的組織192に対する切断顎デバイス173の適切な位置定めを容易にし得る。ここで、切断顎デバイス193が、所望のように、標的組織に対して位置決めされると、ブレード状の顎194は、標的組織192を切断するために、好適には、プルワイヤ196の引き込みによって、作動させられ、そして、方向198に沿って閉じられる。非外傷性のシース197が、デバイス191およびデバイス193の上を摺動し、そして、送達の間に、損傷の可能性のあるあらゆる表面を覆うために使用され得る。切断顎デバイス193はまた、あらゆる残骸および切断された組織を回収するための減圧または吸引の能力を含み得る。
【0055】
公知のデバイスに関して、デバイスの本体は、大動脈弁の部位に到達するために解剖学的構造を移動することを容易にするために、長くされ得、および/またはより曲がりやすく、あるいはよりねじれやすくされるかであり得る。当業者によって理解されるような上で言及されたツールの他の適応が、本方法における効率を改善するために、追加的または代替的に望ましいことがあり得る。1つのかかる改変は、デバイスに組み込まれた視覚システムを含むことである。「視覚」システムは、超音波イメージングのための設備、光学的なコヒーレンスのトモグラフィーに対する光ファイバ、または別の手段を備え得る。さらに、経皮的な処置において通常使用されるような(例えば、内視鏡、IVUSカテーテルなどにおけるような)補助的スコープまたは補助的な視覚システムが、利用され得る。当然、他の変形例も可能である。
【0056】
組織の除去の目的のためにかかるデバイスを利用するために、米国特許出願公開第2005/01071472号に記述されているような技術を利用することにより、手術される弁を分離することがさらに望ましいことがあり得る。あるいは、または追加的に、弁尖の除去は、米国特許第5,295,958号および/または米国特許出願公開第2001/0044591号ならびに同第2004/0225354号における教示を利用して達成され得る。さらにまた、様々な塞栓フィルタ技術が、組織を除去するときに、選択された方法が、必要性を示唆する場合に、塞栓の生成に対して保護するために、当該分野において公知であるように利用され得る。
【0057】
いずれにしても、本明細書において記述されたシステムおよび方法は、単独の組織の改変の後、または切除/除去と組み合わせた改変の後に、インプラントが送達される方法をさらに含む。最も基本的な場合(すなわち、元々の弁尖の組織が改変されるが、完全なまま残されているとき)において、補綴弁は、最初に、誘導ワイヤを脈管系に導入し、そして、任意の従来の方法によって、好適には、大腿動脈を経由して治療の場所に導かれることによって送達される。
【0058】
同一人に譲渡された米国特許出願公開第2005/0203614号に記述されているような補綴弁アセンブリを送達する際に、治療の場所まで誘導ワイヤの上で本送達システムを前進させた後に、外側シースが引き込まれることにより、送達チューブを露出させる。次に、提供されたグリッパが、送達チューブに対して回転させられる(または送達チューブが、グリッパに対して回転させられる)ことにより、送達チューブの長手方向スロットを通過して半径方向外側に向かって、補綴弁の畳まれた部分をまっすぐにし、かつ、拡張させる。次に、送達チューブが、引き込まれる(またはグリッパが前進させられる)ことにより、誘導チューブから遠位方向に(指によって拘束された)補綴弁を前進させ、治療の場所に補綴弁を解放する。好適には、次に、反転した部分が、拡張した状態に戻り、体腔の内側表面(例えば、大動脈弁の付け根、または別の生物学的に許容可能な大動脈の位置)に対して弁をもたれさせる。必要な場合には、補綴弁のさらなる拡張が、送達カテーテルまたは他の担体に担持された(本明細書の別の箇所に記述された)拡張バルーンまたは拡張するメッシュ部材などの適切な拡張部材によって提供され得る。
【0059】
他の方法において、異なるタイプの補綴弁が、送達され、配備される。しかしながら、特定の利点は、上記のタイプの弁本体を使用してのみ実現され得る。記述された技術と、拡張されたときのインプラントの構造の性質とによって提供される組織のコンプライアンスの改善によって、本体の間での堅実な適合が達成され得る。経皮的な、鼓動する心臓の処置においてかかる結果を達成する能力は、甚大なものであり、かつ、先例のないものである。
【0060】
本方法を行うために記述されたデバイスのうちの任意のものが、方法を実行する際の使用のために、ひとまとめの組み合わせで提供され得る。これらの供給「キット」は、さらに、使用のための使用説明を含み、そして、かかる目的のために一般的に利用されるような殺菌トレイまたは殺菌容器にパッケージされ得る。
【0061】
本発明は、本デバイスを使用して行われ得る方法を含む。方法は全て、かかる適切なデバイスを提供する行為を含み得る。かかる提供は、エンドユーザによって行われ得る。言い換えると、「提供する」行為は、単に、エンドユーザが、本方法における必要なデバイスを提供することを達成すること、本方法における必要なデバイスを提供ことに到達すること、本方法における必要なデバイスを提供することに取り掛かること、本方法における必要なデバイスを提供するように位置決めすること、本方法における必要なデバイスを提供するように設定すること、本方法における必要なデバイスを提供するように作動させること、本方法における必要なデバイスを提供するように電源を入れること、または本方法における必要なデバイスを提供するように行動することを必要とするだけである。本明細書において記述された方法は、イベントの記載された順序で行われ得ることに加えて、理論的に可能である、記述されたイベントの任意の順序で行われ得る。
【0062】
材料の選択および製造に関する詳細と共に例示的な実施形態が、上で述べられてきた。本発明の他の詳細に関して、これらは、上で言及された特許および刊行物と関連付けて理解され得、そして、当業者には概ね公知であるか、理解されるかであり得る。例えば、当業者は、滑らかなコーティング(例えば、ポリビニルピロリドンベースの組成物などの親水性ポリマー、テトラフルオロエチレンなどのフルオロポリマー、親水性ゲル、またはシリコーン)が、所望される場合には、治療の場所への低摩擦の操作または前進を容易にするために、デバイスと共に使用され得るということを理解する。一般的または理論的に利用されるような追加の行為の点で、方法ベースの局面に関しても同様であり得る。
【0063】
さらに、複数の例示的な実施形態が、必要に応じて様々な特徴を組み込んで記述されてきたが、本発明は、各変化形に関して想定されているので、記述または暗示されてきたものに限定されない。様々な変更が行われ得、そして、均等物(本明細書に記述されたものであっても、簡潔さのために含まれなかったものであっても)が、本発明の真の精神および範囲を逸脱することなく置換され得る。さらに、値の範囲が提供されている場合に、その範囲の上限と下限との間にある全ての値と、その述べられた範囲内の、その他任意の述べられた値、または間にある値が、本発明に含まれるということが、理解される。
【0064】
また、記述された本発明の変化形のあらゆる任意の特徴が、独立して、または本明細書において記述された特徴のうちの任意の1つ以上のものと組み合わせて示され、かつ、請求され得るということが、想定される。単数形の品目に対する言及は、複数の同じ品目の存在の可能性を含む。さらに詳細には、本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つ」、「1つの」、「該」、および「その」は、特に断りがない場合には、複数形の参照を含む。言い換えると、冠詞の使用は、上の記述または添付の特許請求の範囲において、「少なくとも1つ」の主題の品目を許容する。特許請求の範囲は、あらゆる任意的要素を除外するように起案され得るということがさらに留意されるべきである。したがって、この声明は、特許請求の範囲の要素の記載または「不利な」限定の使用と関連付けられる、「単に」、「唯一」などの排他的な用語の使用に優先する基礎として働くことを意図されている。
【0065】
かかる排他的な用語を使用しなければ、特許請求の範囲における用語「備える」は、所与の数の要素が、特許請求の範囲に列挙されているということ、または特徴の追加が、特許請求の範囲において示された要素の性質を変えるとみなされ得るということに関わらず、あらゆる追加の要素の包含を許容する。本明細書において明確に定義されている場合を除いて、本明細書において使用されている技術的な用語および科学的な用語は、特許請求の範囲の有効性を維持しながら、できる限り広い一般的に理解される意味として与えられる。
【0066】
本発明の範囲は、提供された例および/または本明細書に限定されないが、特許請求の範囲の言葉によってのみ限定される。
【背景技術】
【0001】
心臓弁の疾患および他の障害は、心臓からの血液の適切な流れに影響を与える。心臓弁疾患の2つのカテゴリーは、狭窄症および機能不全である。狭窄症は、弁組織の硬直によって弁が完全に開くことの不全を指す。機能不全は、心臓内の血液の逆流を許すことによって非効率的な血液の循環をもたらす弁を指す。
【0002】
薬物療法が、一部の心臓弁障害を治療するために使用され得るが、多くの場合が、補綴心臓弁と元々の弁の交換を必要とする。補綴心臓弁は、元々の心臓弁(大動脈弁、僧帽弁、三尖弁、または肺動脈弁)のうちの任意のものを交換するために使用され得るが、大動脈弁または僧帽弁の修復または交換が、最も一般的である。なぜならば、それらは、圧力が最も大きい、心臓の左側にあるからである。
【0003】
従来の心臓弁の交換手術は、胸部の長手方向の切開を通って、患者の胸腔内の心臓にアクセスすることを含む。例えば、正中の胸骨切開術は、胸骨を通って切断することと、胸郭の2つの対向する半部分を少し離れさせ、胸腔と、胸腔の中の心臓とにアクセスすることを可能にすることとを必要とする。次に、患者は、心肺バイパスの支援下に置かれ、該心肺バイパスの支援は、心臓を止めることにより、内部の心室へのアクセスを可能にすることを伴う。かかる開心術は、特に侵襲的であり、そして、長く困難な回復期間を伴う。
【0004】
補綴弁の経皮的移植は、好適な処置である。なぜならば、手術は、局部麻酔の下で行われ、心肺バイパスを必要としないことがあり得、そして、あまり外傷性がないからである。様々なタイプの補綴物が、かかる用途に適合されている。1つの種類は、ステント状の外側本体と、一方向の血流を提供するように、そこに取り付けられた内部の弁尖とを利用する。これらのステント構造は、意図した部位への送達のために半径方向に収縮され、そして、次に、弁輪において管状構造を達成するために拡張/配備される。別のさらに有利な種類は、本明細書の譲受人によって提供される。特許文献1(この出願は、その全体が本明細書において参考として援用される)は、様々なパネルが、弁尖を担持しているインプラント本体を画定するシステムを記述している。これらの補綴弁構造は、収縮された状態で送達され、そして、次に、治療の場所において拡張した状態に広げられ、および/または開かれる。
【0005】
いずれかのタイプの構造を用いた、患者の体の組織と補綴物本体との間の充分な係合が、インプラントの位置を固定し、そして、周囲のシールを形成するために望ましい。しかしながら、元々の弁の被膜の部位/元々の弁に包まれた部位の中の部位に補綴デバイスを移植するときに、元々の弁の状態が、適合を妨げ得る。言い換えると、移植部位の形状の不規則性、表面の特徴、きめ、および構成が、全てのかかる変動性に適応することができる一定のサイズのインプラントを開発することに対する課題を提起する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005−0203614号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の局面は、石灰化した弁尖および/または不規則な弁尖ならびに輪状の幾何形状と補綴部材との界面によってもたらされる課題に、必要に応じて対処する。さらに、本発明の別の利点が、本開示の検討の際に、当業者に明らかとなり得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
補綴物の移植に備えた標的組織の調製のためのシステムおよび方法が、本明細書に記述されている。化学的手法、機械的手法、およびエネルギーの印加を介した組織の改変または除去のためのデバイスが、開示される。治療区域を作成するデバイス、および他のデバイスがまた、開示される。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
患者の組織の改変のための装置であって、
細長いシャフトと、
該細長いシャフトと結合された組織改変デバイスであって、該組織改変デバイスは、標的組織を機械的に改変するように構成されている、組織改変デバイスと
を備えている、装置。
(項目2)
前記組織改変デバイスは、
第1の硬い要素と、
第2の硬い要素と
を備え、
該第1の硬い要素と該第2の硬い要素とは、該硬い要素が、互いに対して間隔を置かれた第1の状態と、該硬い要素が、互いに向かって付勢された第2の状態との間で遷移するように構成されている、項目1に記載の装置。
(項目3)
前記第1の硬い要素は、電磁場を放出するように構成されている、項目2に記載の装置。
(項目4)
前記第2の硬い要素は、強磁性材料で構成されている、項目3に記載の装置。
(項目5)
前記第2の硬い要素は、磁石である、項目3に記載の装置。
(項目6)
前記第1の硬い要素と前記第2の硬い要素とのうちの少なくとも1つが、偏向可能なアーム部材に結合されている、項目2に記載の装置。
(項目7)
前記第1の硬い要素と前記第2の硬い要素とは、前記第1の状態において互いから離れるように機械的に付勢されている、項目6に記載の装置。
(項目8)
前記第1の硬い要素と前記第2の硬い要素とは、前記第1の状態において互いから離れるように磁気的に付勢されている、項目6に記載の装置。
(項目9)
前記第1の硬い要素は、前記第2の硬い要素と対向する側の表面に、テクスチャード加工の特徴を備えている、項目2に記載の装置。
(項目10)
前記組織改変デバイスは、前記シャフトから半径方向の距離で該細長いシャフトの周りを回転するように構成された少なくとも1つの重りを備えている、項目1に記載の装置。
(項目11)
前記重りは、第1の重りであり、前記半径方向の距離は、第1の半径方向の距離であり、そして、前記組織改変デバイスは、該第1の重りと反対側に位置を定められた第2の重りを備え、該第2の重りは、前記シャフトから第2の半径方向の距離で該細長いシャフトの周りを回転するように構成されている、項目10に記載の装置。
(項目12)
前記第1の重りと前記第2の重りとはそれぞれ、別々のアーム部材によって前記細長いシャフトに結合されている、項目11に記載の装置。
(項目13)
前記アーム部材は、回転可能なハブに結合されている、項目12に記載の装置。
(項目14)
前記シャフトから前記第1の重りを離す前記第1の半径方向の距離と、該シャフトから前記第2の重りを離す前記第2の半径方向の距離とは、可変である、項目11に記載の装置。
(項目15)
前記組織改変デバイスは、前記第1の重りおよび前記第2の重りを覆う拡張可能なシースをさらに備えている、項目11に記載の装置。
(項目16)
前記組織改変デバイスは、前記拡張可能なシースにテクスチャード加工の表面をさらに備えている、項目15に記載の装置。
(項目17)
前記組織改変デバイスは、前記拡張可能なシースを覆う補強材をさらに備えている、項目15に記載の装置。
(項目18)
前記組織改変デバイスは、前記重りを覆う拡張可能なシースをさらに備えている、項目10に記載の装置。
(項目19)
前記組織改変デバイスは、前記拡張可能なシースにテクスチャード加工の表面をさらに備えている、項目18に記載の装置。
(項目20)
前記組織改変デバイスは、前記拡張可能なシースを覆う補強材をさらに備えている、項目18に記載の装置。
(項目21)
前記組織改変デバイスは、前記シャフトから半径方向にずれた重心を有する重りを備えている、項目1に記載の装置。
(項目22)
前記シャフトは、回転可能である、項目21に記載の装置。
(項目23)
前記重りは、回転可能である、項目21に記載の装置。
(項目24)
前記組織改変デバイスは、前記標的組織を機械的に改変するために充分な力を加えるように構成されている、項目1に記載の装置。
(項目25)
前記標的組織は、弁尖である、項目1に記載の装置。
(項目26)
前記組織改変デバイスは、超音波エネルギーを放出するように構成されている、項目1に記載の装置。
(項目27)
患者の組織の改変のための装置であって、
細長いシャフトと、
該細長いシャフトと結合された切断デバイスであって、該切断デバイスは、標的組織を切断するように構成されている、切断デバイスと
を備えている、装置。
(項目28)
前記切断デバイスは、前記標的組織を機械的に切断するように構成されている、項目27に記載の装置。
(項目29)
前記切断デバイスは、第1のブレード部材と第2のブレード部材とを備え、それぞれが、鋭利な外側縁を有する、項目28に記載の装置。
(項目30)
前記第1のブレード部材と前記第2のブレード部材とは、矢状の切断要素を形成するように構成されている、項目29に記載の装置。
(項目31)
前記第1のブレード部材と前記第2のブレード部材とは、第1の拡張された構成において矢状の切断要素を形成するように構成され、そして、該第1の拡張された構成と第2の圧縮された構成との間で動くように構成されている、項目30に記載の装置。
(項目32)
前記第1のブレード部材と前記第2のブレード部材とは、前記第1の拡張された構成において鋭利な遠位先端を有する、項目31に記載の装置。
(項目33)
前記第1のブレード部材と前記第2のブレード部材とは、前記細長いシャフトに対して動くことができる支持シャフトに旋回可能に結合されている、項目32に記載の装置。
(項目34)
前記切断デバイスは、前記支持シャフトに対して動くことができる二次シャフトを備え、該二次シャフトは、前記第1のブレード部材と前記第2のブレード部材とを、前記拡張された構成から前記圧縮された構成に遷移させるように構成されている、項目33に記載の装置。
(項目35)
前記切断デバイスは、前記圧縮された構成のときに、前記細長いシャフトの中に収容可能である、項目31に記載の装置。
(項目36)
前記切断デバイスは、弁尖の少なくとも一部を切断するように構成されている、項目31に記載の装置。
(項目37)
前記切断デバイスは、弁尖の実質的に全てを切断するように構成されている、項目に28記載の装置。
(項目38)
前記切断デバイスは、前記標的組織の少なくとも一部を把持するように構成された把持デバイスをさらに備えている、項目27に記載の装置。
(項目39)
前記切断デバイスは、第1の切断顎と第2の切断顎とを含み、該第1の切断顎と該第2の切断顎とは、互いに向かって動くように構成されている、項目38に記載の装置。
(項目40)
前記切断デバイスは、引っ張りワイヤによって作動可能である、項目39に記載の装置。
(項目41)
前記把持デバイスは、鉗子状のデバイスとして構成されている、項目39に記載の装置。
(項目42)
前記把持デバイスは、スネア状のデバイスとして構成されている、項目41に記載の装置。
(項目43)
前記把持デバイスは、前記切断デバイスに対して動くことができる、項目42に記載の装置。
(項目44)
前記把持デバイスは、前記細長いシャフトの中に位置を定められた支持シャフトに結合されている、項目43に記載の装置。
(項目45)
前記切断デバイスの上を摺動するように構成された外側シースをさらに備えている、項目27に記載の装置。
(項目46)
前記切断デバイスは、
可撓性のワイヤ状の要素と、
該ワイヤ状の要素の上に摺動可能に配置された切断要素と
を備えている、項目27に記載の装置。
(項目47)
前記可撓性のワイヤ状の要素は、前記標的組織に適合するように構成されている、項目46に記載の装置。
(項目48)
前記可撓性のワイヤ状の要素は、所定の形状を有する、項目47に記載の装置。
(項目49)
前記切断要素は、鋭利な外側縁を備えている、項目46に記載の装置。
(項目50)
前記可撓性のワイヤ状の要素と前記切断要素とは、前記細長いシャフトの中に収容可能である、項目46に記載の装置。
(項目51)
ワイヤバンド状の要素をさらに備えている、項目46に記載の装置。
(項目52)
前記可撓性のワイヤ状の要素と前記ワイヤバンド状の要素とのうちの1つが、前記標的組織に適合するように構成されている、項目51に記載の装置。
(項目53)
前記可撓性のワイヤ状の要素と前記ワイヤバンド状の要素とは、所定の形状を有する、項目52に記載の装置。
(項目54)
前記切断要素は、鋭利な外側縁を有する、項目53に記載の装置。
(項目55)
前記可撓性のワイヤ状の要素と前記切断要素とは、前記細長いシャフトの中に収容可能である、項目54に記載の装置。
(項目56)
前記ワイヤバンド状の要素と前記ワイヤ状の要素とは、その間に組織を挟むように構成されている、項目55に記載の装置。
(項目57)
前記バンド状の要素の形状は、前記ワイヤ状の要素の形状に適合するように構成されている、項目55に記載の装置。
(項目58)
前記ワイヤ状の要素は、第1のワイヤ状の要素であり、前記切断要素は、第1の切断要素であり、前記切断デバイスは、第2のワイヤ状の要素と、該第2のワイヤ状の要素の上に摺動可能に配置された第2の切断要素とを備えている、項目46に記載の装置。
(項目59)
患者の中に治療区域を作成する装置であって、
細長いシャフトと、
該細長いシャフトと結合された治療区域作成デバイスであって、該治療区域作成デバイスは、治療の適用を容易にするために組織の領域を隔離するように構成されている、治療区域作成デバイスと
を備えている、装置。
(項目60)
前記治療区域作成デバイスは、
前記細長いシャフトと結合された第1の膨張可能なトロイド状のバルーンと、
該細長いシャフトと結合された第2の膨張可能なトロイド状のバルーンと、
第3の膨張可能なトロイド状のバルーンであって、該第3の膨張可能なトロイド状のバルーンは、該細長いシャフトと結合され、そして、該第1のバルーンと、該第2のバルーンと、該第3のバルーンとが、膨張させられたときに、該第1のトロイド状のバルーンと該第2のトロイド状のバルーンとに隣接し、かつ、その間に位置を定められるように構成されている、第3の膨張可能なトロイド状のバルーンと、
を備えている、項目59に記載の装置。
(項目61)
前記第1のトロイド状のバルーンと、前記第2のトロイド状のバルーンとは、前記第3のトロイド状のバルーンから独立して膨張可能である、項目60に記載の装置。
(項目62)
前記第1のトロイド状のバルーンと、前記第2のトロイド状のバルーンとは、血管壁の周囲に接触するように構成されている、項目61に記載の装置。
(項目63)
前記第3のトロイド状のバルーンは、体腔の中の空間領域から流体を排出するように構成されている、項目62に記載の装置。
(項目64)
前記第1のバルーンと前記第2のバルーンとは、前記第3のバルーンが収縮されたときに、該第3のバルーンに隣接した治療空間の中への外部の領域からの流体の通行に抵抗するように構成されている、項目63に記載の装置。
(項目65)
前記第3のバルーンと向かい合う場所で血管壁にエネルギーを印加するように構成された治療デバイスをさらに備えている、項目62に記載の装置。
(項目66)
前記第1のバルーンと前記第2のバルーンとは、該第1のバルーンと該第2のバルーンと前記第3のバルーンとが、膨張させられたときに、該第3のバルーンに接触するように構成されている、項目60に記載の装置。
(項目67)
前記第3のバルーンは、弁尖を覆って膨張するように構成されている、項目60に記載の装置。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】図1A〜図1Bは、切断デバイスの例示的な実施形態を描いている端面図である。
【図1B】図1A〜図1Bは、切断デバイスの例示的な実施形態を描いている端面図である。
【図1C】図1C〜図1Dは、切断デバイスの追加の例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図1D】図1C〜図1Dは、切断デバイスの追加の例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図2A】図2A〜図3Cは、組織改変デバイスの追加の例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図2B】図2A〜図3Cは、組織改変デバイスの追加の例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図3A】図2A〜図3Cは、組織改変デバイスの追加の例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図3B】図2A〜図3Cは、組織改変デバイスの追加の例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図3C】図2A〜図3Cは、組織改変デバイスの追加の例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図4A】図4Aは、治療区域作成デバイスの例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図4B】図4Bは、治療区域作成デバイスの別の例示的な実施形態を描いている断面図である。
【図5A】図5A〜図5Dは、切断デバイスの例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図5B】図5A〜図5Dは、切断デバイスの例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図5C】図5A〜図5Dは、切断デバイスの例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図5D】図5A〜図5Dは、切断デバイスの例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図5E】図5E〜図5Gは、切断デバイスの例示的な実施形態を描いている、頂上部を下にした図である。
【図5F】図5E〜図5Gは、切断デバイスの例示的な実施形態を描いている、頂上部を下にした図である。
【図5G】図5E〜図5Gは、切断デバイスの例示的な実施形態を描いている、頂上部を下にした図である。
【図6A】図6A〜図6Eは、切断デバイスの追加の例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図6B】図6A〜図6Eは、切断デバイスの追加の例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図6C】図6A〜図6Eは、切断デバイスの追加の例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図6D】図6A〜図6Eは、切断デバイスの追加の例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図6E】図6A〜図6Eは、切断デバイスの追加の例示的な実施形態を描いている斜視図である。
【図7A】図7A〜図7Bは、切断デバイスの別の例示的な実施形態を描いている側面図である。
【図7B】図7A〜図7Bは、切断デバイスの別の例示的な実施形態を描いている側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において記述される図面は、必ずしもサイズを合わせて描かれておらず、一部のコンポーネントおよび一部の特徴は、明確にするために誇張されている。図面のそれぞれは、本明細書において記述されるシステムおよび方法の局面を概略的に例示している。描かれた実施形態からの変化形が、充分に想定されている。
【0011】
本発明の様々な例示的な実施形態が、以下で記述される。参照が、限定されない意味で、これらの例に対して行われる。これらの例は、本発明のより広範囲に適用可能な局面を例示するために提供される。様々な変更が、記述されたシステムおよび方法に対して行われ得、そして、均等物が、本発明の真の精神および範囲を逸脱することなく置換され得る。さらに、様々な改変が、特定の状況、特定の材料、特定の物体の構成、特定のプロセス、特定のプロセスの行為もしくは特定のステップを本発明の目的物、精神または範囲に適合するように行われ得る。さらに、本明細書において記述および例示された個々の変化形のそれぞれが、本発明の範囲および精神を逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のうちの任意のものの特徴から容易に分離され得るか、他のいくつかの実施形態のうちの任意のものの特徴と組み合わされ得る別個のコンポーネントおよび別個の特徴を有するということが、当業者によって理解される。全てのかかる改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることを意図されている。
【0012】
したがって、本明細書に記述された方法は、補綴弁の部位を均質化し、平滑化し、および/またはより規則的にするための、補綴弁の部位の調製の方法を含む。これらの方法は、一般的に(必ずではないが、最も有利なことに)経皮的に行われる。記述される多数の手法、またはそれらの一部の組み合わせが、移植される補綴物との組織−弁本体との界面を改善するために組織(弁部分自体および/または周囲の組織)を改変するために利用される。
【0013】
あらゆるかかる単独の除去および/または組織の操作の前に、選択された弁にバルーン弁形成術を行うことが、望ましいことがあり得る。大動脈弁の場合において、弁尖が、誘導ワイヤで弁を越え、治療部位までワイヤの上にバルーンを通した後に、バルーンを膨張させることによって少なくとも部分的に開かれる。弁形成処置は、弁尖がより容易に開くように、弁尖を切断するように適合された従来のバルーンまたは切断バルーンを使用して行われ得る。
【0014】
図1A〜図1Dは、細長いシャフト101に位置を定められた切断バルーン102の例示的な実施形態を描いている。図1A〜図1Bは、長手方向に並べられた複数の切断要素103の様々な構成を有する、膨張させられた状態のバルーン102の端面図である。図1C〜図1Dは、切断要素103の代替の配置を描いている斜視図である。図1Cにおいて、複数の切断要素103が、存在し、そして、バルーン102の周りに放射状に並べられている。図1Dにおいて、1つの切断要素が、バルーン102の表面に沿って長手方向かつ放射状に配置されて示されている。
【0015】
米国特許出願公開第2006/0116700号(その全体が本明細書において参考として援用される)が、本明細書において記述されるシステムおよび方法と共に使用され得るような切断バルーンの別の例を提供する。かかる用途に適合され得る他の切断バルーンは、Flextome Cutting Balloon(登録商標)(Boston Scientific)と、米国特許第5,196,024号、同第6,632,231号、同第6,951,566号、および米国特許出願公開第2005/002107号(これらの参考文献のそれぞれもまた、その全体が参考として援用される)に記述された切断バルーンとを含む。
【0016】
かかる治療前の選択肢とは別に、一例示的な実施形態において、組織の物理的な操作に対する経皮的アプローチが、提供される。別の例示的な実施形態において、部位の化学的性質が、改変される。他の実施形態において、エネルギーが印加されることにより、組織を改変する。
【0017】
かかる操作の意図した結果は、単に、補綴物の移植のために、よりコンプライアンスのある部位またはより順応性のある部位を提供することであり得、該よりコンプライアンスのある部位または該より順応性のある部位は、(組織が後に再構築する場合であっても)保持、配置の精度、シーリングなどの目的のためにインプラントの幾何形状により良く適合(例えば、順応)することができる。または、組織の軟化が、組織の少なくとも一部の除去を補助する目的のために達成され得る。かかる除去は、組織改変アプローチを単独で用いて可能なかかる進捗をさらに改善するために望ましいものであり得る。
【0018】
組織改変のための機械的な方法に関して、1つ以上のツールが、狭窄した弁尖組織を均質化および粉砕するなどのために提供される。組織内の、カルシウムの小節またはカルシウムの堆積物は、物理的な作用で粉砕されるか、取り除かれる。意味することは、かかる物理的な作用または機械的な作用によって、作用される組織は、かかる用途に適合された本体によって、またはその間で衝突させられるか、打撃されるということである。ハンマーおよびアンビルのタイプのアプローチを使用する一例示的な実施形態において、硬化した組織は、硬化した組織の(一般的に)石灰化した構造を粉砕することによってよりコンプライアンスがあるようにされる。
【0019】
図2Aおよび図2Bは、対向する本体112と本体114とを有するかかる用途に適したデバイス110の例示的な実施形態を描いている斜視図であり、該本体112と該本体114とは、問題のある組織を改変するために充分な運動エネルギーを有する速度で接触させられる。ここで示されるような一変化形において、対向するハンマー本体112およびハンマー本体114(またはハンマーおよびアンビルの質量要素)が、支柱またはアーム113および115に据え付けられ、該支柱またはアーム113および115は、次に、細長いシャフト101に結合される。別の変化形において、ブレード、またはスパイク状の特徴が、(図2Aに示されているように)本体に据え付けられるか、(図2Bに示されているように)単独で使用されるかであり得る。アームは、図2A〜図2Bに示されているように、離れるように付勢され得る。好適には、本体のうちの一方が、永久磁石(例えば、希土類磁石)を備えるか、強磁性体であるかである。両方の場合において、対向する電磁気的本体の動作が、方向121に沿って他方を引き寄せる。
【0020】
図2A〜図2Bにおいて、ハンマー本体112は、強磁性体であり、ハンマー本体114は、強磁性の中心部分117の周りに巻かれた強磁性の巻き116を有する電磁石として構成される。巻き116は、アーム115に沿って配置された電気リード118と結合される。リード118は、次に、適切な電流が、巻き116に印加されることにより、ハンマー114から電磁場を生成し得るように電源と結合される。磁石が、電磁石の向かい側で使用される場合には、電磁石の極性を切り替えることがまた、方向121に沿って離れるように本体を駆動し得る。または、バネの力が、部材が繰り返し互いに打撃することができるように、電源が電磁石に対して切られた後に、ある程度の距離に離して部材を維持するか、押しやるようにたよりにされる。図2Bは、弁尖122における石灰化した病変123に適用する前のデバイス110を描いている。
【0021】
打撃作用は、完全にユーザに指示されるか、ユーザの入力によって開始されると、周期的であるかであり得る。打撃作用は、ユーザによって終了させられるまで継続的であるか、医療従事者によって駆動させられると、ある程度の数の周期が自動的に進行するかであり得る。例えば、ハンマリングメカニズムが、1つの「殴打」を10回、20回、50回、または100回繰り返し得る。あらゆるかかる周期的な動きまたは繰り返しの動きに関して、1つの殴打は、1Hzと1000Hzとの間の速度で進む。さらに一般的には、速度は、約10Hzと約100Hzと範囲にある。かかる作用は、(例えば、バネで付勢されるアプローチの例において)DC電圧を切り替えることによって制御されるか、(例えば、永久磁石が使用される例において)AC電圧を印加することによって制御されるかであり得る。
【0022】
有利なことに、本体間の開閉(すなわち、デバイスの「顎」が、充分に広く、かつ、かなり長い期間開く)は、デバイスが、動作の間に、接触する組織の部位の間に通過し得るか、動き得るようなものである。あるいは、方法は、1つの部位を治療し、標的の組織を改変するためにデバイスの作用を開始し、デバイスの作用の終了を待ち、そして、かかる作用を連続して繰り返すことによって進み得る。打撃本体は、一般的に、送達の間、引き寄せられ一緒にされている。
【0023】
石灰化した病変を粉砕または改変する別のアプローチは、一組の拡張可能な回転重りで石灰化した病変を打撃することを含む。重りは、例えば、図3Aの斜視図に示されたデバイス110の例示的な実施形態に描かれたもののように、可撓性の連結アームまたは関節運動する連結アームに担持されるか、別な方法で配置されるかであり得る。ここでは、重り130が、連結アーム131に旋回可能に結合され、次に、該連結アーム131は、ハブ133に旋回可能に結合されている。次に、ハブ133は、細長いシャフト101に回転可能に結合され、そして、ハブ133のうちの1つ以上がまた、シャフト101と摺動可能に結合されている。デバイス110は、軸132の周りで重り130を回転させるように構成されている。軸の周りでの本体の回転は、重りが移動する弧の半径を拡張するために使用され得る。図3Aに例示された実施形態において、重り130の回転速度が、連結アーム131を、ハブ133に対して旋回させ、そして、重り130がまた、ハブ133のうちの一方または両方を、重り130に向かって摺動させ、重り130が移動する弧を拡張させる。重り130は、拡張可能なシースまたはバルーン134によって取り囲まれるか、囲まれるかであり得る(該拡張可能なシースまたはバルーン134の概略が、その中のコンポーネントを見ることを可能にするように、図3Aに示されている)。
【0024】
いずれにしても、かかるカバー134は、重りが、標的組織を汚すことを防止するか、重りが、もつれさせられることと、ゆるんだ物質をはがすこと、または剥ぎ取ることとを防止するかであり得る。バルーン134の使用は、(膨張させられたときに)大動脈腔または弁輪の中に、デバイス110の作用の中心を定めるために望ましいものであり得る。重り131が回転する速度は、幅広く変化し得、重り131が回転する速度の最適化は、選択された設計に依存する。
【0025】
図3Bは、デバイス110の別の例示的な実施形態を描いている斜視図である。ここでは、バルーン134の中のコンポーネントは、明瞭性のために示されていない。この実施形態において、バルーン134は、追加の研磨カバー135で覆われて示されている。ここで、研磨カバー135は、重り130の回転の間に標的組織を研磨することと、バルーン134が重り130によって破裂しやすい場合にバルーン134に対する補強を提供することとの両方のために構成されたメッシュ状の構成を有する。
【0026】
図3Cは、デバイス110の別の例示的な実施形態を描いている斜視図である。この実施形態において、デバイス110は、シャフト101の周りに偏心した円筒形の構成で配置された複数の重り130を有する遠位部分137を含む。遠位部分137は、細長いシャフト101からずらされた重心を有する。シャフト101の回転が、部分137を振動および打撃させ、そして、好適には、まわりの標的組織を改変する。
【0027】
機械的な組織改変方法において使用され得るこれらの機械システムのうちの任意のものが、一般的には、デバイスの動作端または作業端と、そこに導かれる医療シャフトまたはカテーテル本体(曲がりくねった解剖学的構造を通過するときにデバイスを覆うか、固定するように提供される任意の引き込み可能なシース部分を含む)と、一体型のまたは別個/再利用可能な電源および/または電子制御装置とを含む。
【0028】
上で言及されたように、別の例示的な実施形態において、組織は、化学的な手段で改変される。弁尖を含む大動脈弁の化学的な改変は、Constantzらによる様々な特許(例えば、米国特許第6,712,798号、同第6,622,732号、同第6,533,767号、同第6,394,096号、同第6,387,071号、同第6,379,345号、それぞれは、その全体が本明細書において参考として援用される)によって教示されている。それらの特許は、一定期間の間の低pHの溶液の塗布による弁および/または弁輪の鉱物質消失を様々に教示している。
【0029】
特許において言及された治療は、弁形成術または弁輪形成術における鉱物質消失を含む。記述されたように、弁または構造が、その上に存在する石灰化した病変を有する弁/弁輪構造の鉱物質消失の際に、その部位が、一般的に、溶解溶液で洗浄される。留意されるべき特に関心のある、鉱物質を消失させる2つの酸性溶液は、塩化水素溶液と炭酸溶液とである。利用される溶解溶液は、言及された特許において教示されたような様々な目的にかなう1つ以上の追加の成分も含み得る。かかる教示は、本明細書に記述されたシステムおよび方法を実行することに充分に適用可能であるが、弁形成術または弁輪形成術に対する使用以外の鉱物質消失技術に対する様々な用途もまた、想定されている。
【0030】
特に、別の例示的な方法において、鉱物質消失技術は、経皮的に送達され、そして、鉱物質消失領域に、またはそれに隣接して置かれた管腔のインプラントに対する界面を改善するように、弁に隣接し、かつ、弁を含む広い範囲とのコンプライアンスを変えるために利用される。管腔の壁および/または元々の弁(弁尖および/または弁輪)によって得られた追加のコンプライアンスは、インプラントと開放性のシールを形成することを劇的に補助し得、そして、デバイスの移動を妨げることに劇的に役立ち得る。
【0031】
したがって、本明細書に記述されたシステムおよび方法は、Constantzの特許のいずれかに記述された特定の解決策と、その技術のうちの一部とを利用し得るが、本明細書の方法は、少なくとも、かかる作用が他の行為を伴うという点で異なる。すなわち、化学的組織改変は、組織の除去に先立ち得る。あるいは(または追加的に)、化学的組織改変は、特に経皮的に送達されるインプラントに対する適切なレベルの組織の順応性、またはそれとの適切なレベルの組織の適合性を提供する観点から、移植部位の決定的な調製を提供し得る。
【0032】
さらにまた、独特なデバイスが、酸性の溶解媒体の塗布のために提供される。1つのかかるデバイスは、血液が通過するための管腔と、大動脈壁を含む溶液チャンバを画定するために使用される一対の環状バルーンとを含む。形成されるチャンバ(故に、デバイス自体)の長さは、選択された大動脈弁のインプラントとの使用のために調節される。コンプライアンスを増加させるために改変される管腔部分の長さは、実質的に、壁と接触する補綴物の長さに対応する。あるいは、より長い部分またはより短い部分が、改変され得る。より長い部分は、インプラントが、周囲の組織により良く埋まることを可能にし、端が捕捉されることを可能にする。より短い部分は、血管の損傷を最小にするために、または、単に、補綴物本体だけに提供されるあらゆる係合特徴を標的にするために望ましくなり得る。
【0033】
インプラント−組織の界面を改善するために、またはインプラントの受け取りを補助するための切除の容易さのために、石灰化した組織を改変するさらに別の例示的な方法において、熱エネルギーが印加されることにより、石灰化した病変、特に、弁尖における石灰化した病変を軟化させる。かかるエネルギーを印加する1つのアプローチは、バルーンの本体に担持されたステント状の本体または、バルーン本体に刻み込まれたコイルのパターンによるものである。治療部位(例えば、大動脈弁輪)にくると、バルーンが、組織と接触している金属の構造を保持するために膨張させられる。無線周波数(RF)またはマイクロ波のエネルギーが、デバイスによって送達され得る。あるいは、オーム加熱/抵抗加熱が、金属の本体を直接的に加熱するために利用され得る。バルーンは、単一チャンバのデバイスまたは複数チャンバのデバイスであり得る。デバイスは、単一チャンバのトロイドの形態で構成されるか、複数の半径方向に向けられたチャンバを使用して中央管腔を提供するように構成されるかであり得る。
【0034】
別のエネルギー送達アプローチにおいて、治療区域が、血液を抜かれた血管壁に沿って作業領域を形成するように、1つ以上のバルーンおよび/またはバッフル壁を使用することによって作成される。このように調製されて、1つ以上のダイオードによって局所的に送達されるか、1つ以上の光ファイバに沿って伝達されるレーザエネルギーが、石灰化した組織を改造/改変するために、またはより積極的な部位の改変を所望されるような組織を選択的に切除するために印加される。
【0035】
図4A〜図4Bは、治療区域を生成するように構成されたデバイス140の例示的な実施形態を描いている。図4Aは、拡張された状態で細長いシャフト101に位置を定められた3つの拡張可能な膜またはバルーン141〜143を有するデバイス140を描いている斜視図である。各バルーン141〜バルーン143は、トロイド状の構成を有する。区域作成バルーン143は、周囲の血管壁または組織と接触するように拡張し、そして、あらゆる干渉する流体を血管壁/組織から排出するように構成されている。
【0036】
図4Bは、治療区域145の作成後のこの実施形態を描いている断面図である。ここで、区域145は、好適には、血管壁144における標的組織、例えば、石灰化した組織の存在に対応する。区域作成バルーン143の膨張の後に、エンドキャップバルーン141およびエンドキャップバルーン142が、周囲の流体146の侵入に対するバリアを作成するために膨張させられる。区域作成バルーン143は、次に、エネルギー印加装置(例えば、レーザ)などの治療法の使用につながる治療空間147を作成するために収縮させられる。エンドキャップバルーン141およびエンドキャップバルーン142は、治療空間の中への流体の通行に抵抗するように充分に強いことが好ましい。吸引−灌注ポート(図示せず)がまた、切除された組織、または治療の副産物(例えば、煙)などを除去するために含まれ得る。バルーンに対する膨張管腔と、全ての血液シャント管腔は、明確にするために示されていない。
【0037】
さらに別の例示的なエネルギー送達アプローチにおいて、衝撃波を含む砕石技術が利用される。かかる技術は、一般的に、腎臓、膀胱、尿管、または胆嚢において形成する「結石」を粉砕するために使用される。利用され得る複数のアプローチが存在するが、最も一般的なアプローチは、体外衝撃波砕石術である。衝撃波は、石灰化体を細片に破砕するために治療部位に集中させられる。腎臓結石の場合において、患者は、それらを「通過」させる。本発明に従った、石灰化した弁尖の病変に関する技術を実施するときには、小塊の通過は、必要としないし、かかる作用のための通路も存在しない。したがって、本発明に従った、石灰化した弁尖の病変に関する技術は、大動脈弁の鉱化作用の被包性の性質に起因して、塞栓の保護などを必要とすることなく実施され得る。
【0038】
最も好適には、これら全ての方法と、それらの入れ替えの組み合わせが、鼓動する心臓の処置に関連して実施される。言い換えると、患者は、処置の間に心肺バイパスの支援に置かれる必要はない。しかしながら、本明細書に記述される本方法と本ツールとの局面は、かかる条件の下で利用され得る。
【0039】
本明細書において記述されるシステムと方法との別の想定される変形例は、特定の組織の除去に関する。さらに、記述される組織改変は、組織の除去に先駆けるものとして働き得る。このように改変されると、従来の技術および/または改変された技術を使用した組織の除去は、単純化され得る。かかる目的のために、以下のデバイスおよび/または技術(ならびに、さらに他のデバイスおよび/または技術)のうちの任意のものが、利用され得る。
【0040】
(無線周波(RF)切除)
概して、限定ではない例として、単極の無線周波数熱切除が、弁尖に挿入されたプローブを通って弁尖の組織に無線周波エネルギーを伝える。エネルギーは、組織の温度を上昇させることができ、それにしたがって、熱損傷を使用することにより、周囲の組織を離断する。二次的な特徴が、自由な組織を除去するために使用される。
【0041】
(双極の無線周波切除(コブレーション))
概して、限定ではない例として、この処置は、熱を使用することなく分子結合を崩壊させるイオン化塩水層を生成する。エネルギーが、組織に伝えられたときに、イオン解離が生じる。このメカニズムは、弁尖の全て、または一部だけを除去するために使用され得る。これが、45℃〜85℃の熱効果を用いた組織の除去をもたらす。この技術の利点が、隣接する組織に対する外傷を少なくさせる。二次的な特徴が、溶解された組織と残余の塩水プラスマを除去するために使用される。
【0042】
(レーザ)
概して、限定ではない例として、この技術は、弁尖の組織を気化および除去するために、カテーテルの端においてレーザを利用する。二次的な特徴(例えば、グラスパまたは下流のフィルタ)が、切られた組織を除去するために使用される。
【0043】
(超音波)
概して、限定ではない例として、メカニズムが、超音波エネルギーを弁尖の組織に伝えるために使用される。エネルギーは、組織の温度を上昇させることができ、それにしたがって、熱損傷を使用することにより、周囲の組織を離断する。メカニズムは、組織の非常に近くにあるプローブであり得る。他のデバイスの特徴が、組織と密に接触してプローブを位置決めし、その結果、効率を改善し得る。それらの特徴は、うまく並置するために、カテーテルステアリング、または1つ以上のトロイド状のバルーンを含み得る。
【0044】
(スネアワイヤ)
概して、限定ではない例として、この技術は、自由端がカテーテルシャフトに延びるように向けられた「締めなわ形状」のスネアワイヤを利用する。グラスパメカニズムが、大きな石灰化した組織を寄せるために、スネアと共に組み込まれ得る。組織が寄せられた後に、スネアワイヤは、張力状態で引っ張られ、ループの半径空間の中の近位の組織においてループを閉じさせる。つぶされた組織は、切断される。二次的な特徴が、切られた組織を除去するために使用される。様々な、ループに基づいたカッターのアプローチおよび選択肢が、図に開示されている。
【0045】
(振動メス)
概して、限定ではない例として、このデバイスは、毎秒55,000サイクルでデバイスのブレードを振動させるために超音波エネルギーを使用する。裸眼では見えないが、振動が、エネルギーを組織に伝え、切断と凝固とを同時に提供する。周囲の組織の温度は、摂氏80度に到達する。最終的な結果は、最小の熱損傷を有する正確な切断である。ブレードは、(湾曲した、直線、鏃などの)単一のブレード、2つのブレードのはさみ、ギロチンタイプの設計、または他の実施形態として構成され得る。二次的な特徴が、切られた組織を除去するために使用される。
【0046】
(窓カッター)
概して、限定ではない例として、これらのデバイスは、多くの場合に、サイドホールを有するカニューレタイプの本体または延長部を利用する。管腔の減圧、または組織を突く圧力が、物質をサイドホールの中に押す。物質は、サイドポートを塞ぐように作動させられる(任意的に鋭利な)内側スリーブまたは外側スリーブによって切断される。米国特許出願公開第2004/0049215号は、超音波トランスデューサ視覚システムを含むかかるデバイスを開示している。
【0047】
(アテレクトミーデバイス)
概して、限定ではない例として、多種多様なカッターのタイプが、この種類において提案されている。回転カッターの例は、Rotoblator(商標)ツール(Boston Scientific)と、米国特許第6,503,261号において提案されているバー(burr)とを含む。他の例は、米国特許出願公開第2005/0222663号に記述されているようなSilverHawk(商標)システム(Fox Hollow)と、米国特許第5,507,760号、同第5,624,457号、同第5,669,920号および同第6,120,515号において提案されたカッターとを含む。米国特許第5,429,136号に記述された同様な構成の別のカッターは、視覚システムを含む。視覚システム(例えば、超音波トランスデューサのアレイ)を含む傾斜タイプまたはドリルタイプのカッターが、米国特許第6,027,450号に開示されている。米国特許第5,312,425号は、回転するらせん状のブレードを利用する、さらに別のタイプのアテレクトミーデバイスを開示しているが、米国特許第5,181,920号は、回転するシャベルタイプのカッターを開示している。この最後のデバイスと、他のデバイスのうちのいくつかのものが、デバイスを位置決めすること、および/または切断手段と接触するように物質を促すことを補助するためにバルーンを含む。
【0048】
(カスタムカッター)
本明細書において記述されたシステムおよび方法と使用するために特に製造された様々な他のタイプの独自のカッターが、利用され得る。図面においては、矢形のカッターが、その使用方法と共に示されている。また、(配置/移動のための非外傷性の外側スリーブによって保護され得る)丸いブレード面または楕円のブレード面と接触するように、組織の吸引を利用する同軸カッターが、利用され得る。前者のデバイスは、拡大される切断ブレードの関節運動および送達の点で利点を提供し、後者のデバイスは、設計の精密さおよび簡潔さと、中央管腔を通って組織の吸引/引き込みをする能力との点で望ましい。さらに、グラスパと鉗子とが、作業される組織を捕捉または操作のいずれかのためにカッターと関連付けられて使用され得る。グラスパ/カッターの組み合わされた顎の組織除去がまた、示される。
【0049】
図5A〜図5Gは、矢形のカッターと、その使用方法との例示的な実施形態を描いている斜視図、および頂上部を下にした図である。図5A〜図5Dは、細長いシャフト101から開いた遠位端151を通るカッター150の一連の前進を示す。カッター150は、圧縮された構成または畳まれた構成でシャフト101の中に収容され、そして、図5Dの切断する構成になるように拡張可能であるように構成されることが好ましい。カッター150は、鋭利な外側縁154を有する2つのブレード部材153を含む。ブレード部材153は、細長い支持シャフト152に結合され、該細長い支持シャフト152は、例えば、支持シャフト152の内側管腔の中に、細長い支持シャフト152と摺動可能に結合された二次シャフト159を有する。連結部材156が、各ブレード部材を支持シャフト152と旋回可能に結合する。ここで、連結部材156は、ピボット157においてブレード部材153と旋回可能に結合され、そして、ピボット158において支持シャフト152と旋回可能に結合される。1つ以上の付勢部材(図示せず)が、図5C〜図5Dに示されているように、ブレード部材153が拡張された構成に自動的になるように使用され得る。拡張された構成になると、ブレード部材153は、図5Dに示されているように、鋭利な遠位先端155を形成するように整列することが好ましい。
【0050】
図5Eは、標的組織に近いカッター150を描いており、この実施形態においては、該標的組織は、弁形成処置の一部分として取り除かれる弁尖161である。カッター150は、弁尖161と血管壁162との間で前進させられることにより、図5Fに示されているように、鋭利な遠位先端155に弁尖161を貫通させる。鋭利な外側縁154が、カッター150の遠位方向への継続的な移動が、図5Gに示されているように、弁尖161の実質的に全てを切断することを可能にする。次に、切断された組織は、本明細書において記述されているように、塞栓フィルタ(図示せず)を使用して収集され得る。処置が完了すると、アバットメント160に対する二次シャフト159の前進が、圧縮された構成に戻るように、ブレード部材153を偏向させることにより、シャフト101の中に戻るようなカッター150の引き抜きを可能にする。
【0051】
図6A〜図6Eは、本明細書に記述されたシステムおよび方法と共に使用するためのカッター170の追加の例示的な実施形態を描いている斜視図である。図6Aは、開いた遠位端151を通ったシャフト101の中からの前進の後の、可撓性のワイヤ状のループ要素171を有するデバイス170を描いている。要素171は、標的組織に適合するように構成されることが好ましく、この実施形態において、該標的組織は、弁尖174である。あるいは、要素171は、標的組織との適合のために所定の形状を有し得る。ここでは、要素171は、弁尖174と血管組織175との間に作成されたポケットに位置を定められて示されている。切断要素172、すなわち、鋭利な外側縁173が、要素172の移動が、ワイヤ要素171によって標的組織に沿って誘導されるように、ワイヤ状の要素171の上に摺動可能に配置されている。これが、鋭利な外側縁173が、組織を切開することを可能にし、弁尖174が切断されることを可能にする。
【0052】
図6Bは、処置を促進するために複数の切断要素172(図示せず)が同時に使用されることを可能にする、3つの、ワイヤ状の要素を有する別の例示的な実施形態を描いている。
【0053】
図6C〜図6Dは、カッター170のさらに別の例示的な実施形態を描いている。ここでは、可撓性のワイヤバンド状の要素176が、ワイヤ状の要素171と共に含まれ、そして、両者が、シャフト101の中から延長可能である。ワイヤ状の要素171と、バンド状の要素176とは、図6Dの側面図に描かれているように、互いに向かって締まるように構成されることが好ましい。弁形成処置などの例示的な処置の間に、要素171および要素176のうちの一方または他方が、弁尖174と血管壁175(両者とも示されていない)の間のポケットに挿入される。他方は、ポケットの外に残される。次に、切断要素172は、ワイヤ状の要素171の上を前進させられ、そして、要素172と要素176との間にある弁尖174を切断するために使用され得る。このようにして、要素171と要素176とは、その間に標的組織を挟み、そして、切断処置における制御を改善する。
【0054】
図7Aおよび図7Bは、標的組織192を把持し、よりうまく分離するための把持デバイス191を有する切断デバイス190の例示的な実施形態を描いている。把持デバイス191は、支持シャフト199に結合され、そして、ここで示されているもののように鉗子のように構成されるか、スネア状の構成を有するかであり得る。把持デバイス191と、切断顎デバイス193とは、図7Bに示されているように、互いに対して動くことができ、そして、把持デバイス191は、標的組織192に対する切断顎デバイス173の適切な位置定めを容易にし得る。ここで、切断顎デバイス193が、所望のように、標的組織に対して位置決めされると、ブレード状の顎194は、標的組織192を切断するために、好適には、プルワイヤ196の引き込みによって、作動させられ、そして、方向198に沿って閉じられる。非外傷性のシース197が、デバイス191およびデバイス193の上を摺動し、そして、送達の間に、損傷の可能性のあるあらゆる表面を覆うために使用され得る。切断顎デバイス193はまた、あらゆる残骸および切断された組織を回収するための減圧または吸引の能力を含み得る。
【0055】
公知のデバイスに関して、デバイスの本体は、大動脈弁の部位に到達するために解剖学的構造を移動することを容易にするために、長くされ得、および/またはより曲がりやすく、あるいはよりねじれやすくされるかであり得る。当業者によって理解されるような上で言及されたツールの他の適応が、本方法における効率を改善するために、追加的または代替的に望ましいことがあり得る。1つのかかる改変は、デバイスに組み込まれた視覚システムを含むことである。「視覚」システムは、超音波イメージングのための設備、光学的なコヒーレンスのトモグラフィーに対する光ファイバ、または別の手段を備え得る。さらに、経皮的な処置において通常使用されるような(例えば、内視鏡、IVUSカテーテルなどにおけるような)補助的スコープまたは補助的な視覚システムが、利用され得る。当然、他の変形例も可能である。
【0056】
組織の除去の目的のためにかかるデバイスを利用するために、米国特許出願公開第2005/01071472号に記述されているような技術を利用することにより、手術される弁を分離することがさらに望ましいことがあり得る。あるいは、または追加的に、弁尖の除去は、米国特許第5,295,958号および/または米国特許出願公開第2001/0044591号ならびに同第2004/0225354号における教示を利用して達成され得る。さらにまた、様々な塞栓フィルタ技術が、組織を除去するときに、選択された方法が、必要性を示唆する場合に、塞栓の生成に対して保護するために、当該分野において公知であるように利用され得る。
【0057】
いずれにしても、本明細書において記述されたシステムおよび方法は、単独の組織の改変の後、または切除/除去と組み合わせた改変の後に、インプラントが送達される方法をさらに含む。最も基本的な場合(すなわち、元々の弁尖の組織が改変されるが、完全なまま残されているとき)において、補綴弁は、最初に、誘導ワイヤを脈管系に導入し、そして、任意の従来の方法によって、好適には、大腿動脈を経由して治療の場所に導かれることによって送達される。
【0058】
同一人に譲渡された米国特許出願公開第2005/0203614号に記述されているような補綴弁アセンブリを送達する際に、治療の場所まで誘導ワイヤの上で本送達システムを前進させた後に、外側シースが引き込まれることにより、送達チューブを露出させる。次に、提供されたグリッパが、送達チューブに対して回転させられる(または送達チューブが、グリッパに対して回転させられる)ことにより、送達チューブの長手方向スロットを通過して半径方向外側に向かって、補綴弁の畳まれた部分をまっすぐにし、かつ、拡張させる。次に、送達チューブが、引き込まれる(またはグリッパが前進させられる)ことにより、誘導チューブから遠位方向に(指によって拘束された)補綴弁を前進させ、治療の場所に補綴弁を解放する。好適には、次に、反転した部分が、拡張した状態に戻り、体腔の内側表面(例えば、大動脈弁の付け根、または別の生物学的に許容可能な大動脈の位置)に対して弁をもたれさせる。必要な場合には、補綴弁のさらなる拡張が、送達カテーテルまたは他の担体に担持された(本明細書の別の箇所に記述された)拡張バルーンまたは拡張するメッシュ部材などの適切な拡張部材によって提供され得る。
【0059】
他の方法において、異なるタイプの補綴弁が、送達され、配備される。しかしながら、特定の利点は、上記のタイプの弁本体を使用してのみ実現され得る。記述された技術と、拡張されたときのインプラントの構造の性質とによって提供される組織のコンプライアンスの改善によって、本体の間での堅実な適合が達成され得る。経皮的な、鼓動する心臓の処置においてかかる結果を達成する能力は、甚大なものであり、かつ、先例のないものである。
【0060】
本方法を行うために記述されたデバイスのうちの任意のものが、方法を実行する際の使用のために、ひとまとめの組み合わせで提供され得る。これらの供給「キット」は、さらに、使用のための使用説明を含み、そして、かかる目的のために一般的に利用されるような殺菌トレイまたは殺菌容器にパッケージされ得る。
【0061】
本発明は、本デバイスを使用して行われ得る方法を含む。方法は全て、かかる適切なデバイスを提供する行為を含み得る。かかる提供は、エンドユーザによって行われ得る。言い換えると、「提供する」行為は、単に、エンドユーザが、本方法における必要なデバイスを提供することを達成すること、本方法における必要なデバイスを提供ことに到達すること、本方法における必要なデバイスを提供することに取り掛かること、本方法における必要なデバイスを提供するように位置決めすること、本方法における必要なデバイスを提供するように設定すること、本方法における必要なデバイスを提供するように作動させること、本方法における必要なデバイスを提供するように電源を入れること、または本方法における必要なデバイスを提供するように行動することを必要とするだけである。本明細書において記述された方法は、イベントの記載された順序で行われ得ることに加えて、理論的に可能である、記述されたイベントの任意の順序で行われ得る。
【0062】
材料の選択および製造に関する詳細と共に例示的な実施形態が、上で述べられてきた。本発明の他の詳細に関して、これらは、上で言及された特許および刊行物と関連付けて理解され得、そして、当業者には概ね公知であるか、理解されるかであり得る。例えば、当業者は、滑らかなコーティング(例えば、ポリビニルピロリドンベースの組成物などの親水性ポリマー、テトラフルオロエチレンなどのフルオロポリマー、親水性ゲル、またはシリコーン)が、所望される場合には、治療の場所への低摩擦の操作または前進を容易にするために、デバイスと共に使用され得るということを理解する。一般的または理論的に利用されるような追加の行為の点で、方法ベースの局面に関しても同様であり得る。
【0063】
さらに、複数の例示的な実施形態が、必要に応じて様々な特徴を組み込んで記述されてきたが、本発明は、各変化形に関して想定されているので、記述または暗示されてきたものに限定されない。様々な変更が行われ得、そして、均等物(本明細書に記述されたものであっても、簡潔さのために含まれなかったものであっても)が、本発明の真の精神および範囲を逸脱することなく置換され得る。さらに、値の範囲が提供されている場合に、その範囲の上限と下限との間にある全ての値と、その述べられた範囲内の、その他任意の述べられた値、または間にある値が、本発明に含まれるということが、理解される。
【0064】
また、記述された本発明の変化形のあらゆる任意の特徴が、独立して、または本明細書において記述された特徴のうちの任意の1つ以上のものと組み合わせて示され、かつ、請求され得るということが、想定される。単数形の品目に対する言及は、複数の同じ品目の存在の可能性を含む。さらに詳細には、本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つ」、「1つの」、「該」、および「その」は、特に断りがない場合には、複数形の参照を含む。言い換えると、冠詞の使用は、上の記述または添付の特許請求の範囲において、「少なくとも1つ」の主題の品目を許容する。特許請求の範囲は、あらゆる任意的要素を除外するように起案され得るということがさらに留意されるべきである。したがって、この声明は、特許請求の範囲の要素の記載または「不利な」限定の使用と関連付けられる、「単に」、「唯一」などの排他的な用語の使用に優先する基礎として働くことを意図されている。
【0065】
かかる排他的な用語を使用しなければ、特許請求の範囲における用語「備える」は、所与の数の要素が、特許請求の範囲に列挙されているということ、または特徴の追加が、特許請求の範囲において示された要素の性質を変えるとみなされ得るということに関わらず、あらゆる追加の要素の包含を許容する。本明細書において明確に定義されている場合を除いて、本明細書において使用されている技術的な用語および科学的な用語は、特許請求の範囲の有効性を維持しながら、できる限り広い一般的に理解される意味として与えられる。
【0066】
本発明の範囲は、提供された例および/または本明細書に限定されないが、特許請求の範囲の言葉によってのみ限定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7A】
【図7B】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7A】
【図7B】
【公開番号】特開2012−245390(P2012−245390A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−204707(P2012−204707)
【出願日】平成24年9月18日(2012.9.18)
【分割の表示】特願2009−516696(P2009−516696)の分割
【原出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(508258460)エーオーテックス, インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−204707(P2012−204707)
【出願日】平成24年9月18日(2012.9.18)
【分割の表示】特願2009−516696(P2009−516696)の分割
【原出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(508258460)エーオーテックス, インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]