説明

補綴関節突起関節及び核補強

本開示は改善された補綴関節突起関節(20)及び線維輪を侵害することのない椎間板のための核補強装置(50)を提供する。1つの例においては、補綴関節突起関節は、下位の椎骨の上位の関節突起に対して番い合うようになっており、上位の関節突起と上位の椎骨の下位の関節突起との間で少なくともスペーサとして作用する先端部(34)と;上位の椎骨の穴に対して嵌合するようになった本体(38)とを有し、本体はその全長にわたって不均一な表面を有する。補綴関節突起関節は関節被膜又は関節空間へ物質を送給するために使用される空洞(36)を有することができる。別の例においては、同じ構造ではあるが一層大きな本体を有する核補強装置(50)が提供される。核補強装置は、先端部がエンドプレートへ侵入するように、椎骨本体(V3)内へ挿入することができ、空洞内の物質(72)は椎間板(74)の髄核を再加圧するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に人工代替装置及び補強手段に関し、特に補綴関節及び核補強手段に関する。
【背景技術】
【0002】
関節突起関節は関節突起間関節とも呼ばれる。このような関節は脊椎の後柱内及び関節突起の先端部上に位置する。このような関節は隣接する椎骨の関節突起により形成され、椎骨の下位の関節突起は下方の椎骨の上位の関節突起と一緒に関節運動する。関節突起関節は滑膜滑翔間接である。その理由は、間接表面が互いに滑翔するからである。このような関節は脊椎を安定させるために重要であり、脊椎上の圧縮荷重のほぼ20%を支える。従って、その解剖学的な位置及び方位は各脊椎区域の運動性に影響を与える。例えば、頚部の区域においては、関節突起関節は前頭面に指向し、6つの自由度で大きな範囲の運動を行うことができる。腰部の領域においては、関節突起関節は矢状面即ちサジタル面に指向する。
【0003】
大外傷、反復小外傷又は多くの他の要因は関節突起関節を劣化させることがある。その結果、関節の一面を覆う硝子軟骨はその含水能力を失い、最終的には完全に摩滅する。次いで、関節被膜(関節カプセル)が伸びたときに、関節突起は互いにオーバーライドし、関節の不整合及び運動セグメントの異常な生物力学機能を生じさせる。
【0004】
関節突起関節は椎間板と一緒に脊椎荷重を支持するように働くので、負傷又は外傷した椎間板もまた関節を劣化させることがある。人間が年をとると、椎間板はしばしば解剖学的な変化を体験する。50歳を過ぎると、95%以上の人間は椎間板の劣化の兆しを現わす。椎間板に対する最も重大な変化はその髄核の水及びプロテオグリカンの含有量の減少である。その結果、椎間板はその正常な高さを失い始め、負荷力に対して抵抗性及び弾力性が少なくなる。特に、髄核は静圧を維持する能力を失う。本質的に、椎間板はもはや椎骨本体間のショックアブゾーバのようには完全に作用しなくなる。劣化した椎間板に対処するため、荷重は中央の核から周辺の核へ伝達され、椎骨の関節突起に対する負荷変化及び関節に対する損傷を生じさせる。例えば、劣化した椎間板の高さは関節突起のオーバーライドを招き、関節表面上で軟骨の消失及び肥大突起を生じさせる。時間が経つと、天然の適応性突起が関節突起関節の解剖学的構造を大幅に改作することがある。
【0005】
劣化した関節の従来の処置は多くの問題を抱える。例えば、多くの例においては、処置は脊椎の後柱ではなく前柱を強調している。また、損傷した椎間板を修理するために脊椎融着が幅広く使用されてきた。しかし、融着は、冒されたレベルでの撓み、伸び、回転及び横方向の曲げにおける運動範囲を制限することにより、関節機能を低下させる。融着されたレベルに隣接するレベルにおいては、椎間板は異常な応力及び過剰運動に曝される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
劣化した髄核の従来の処置はまた多数の問題を有する。例えば、劣化した髄核を処置するために核交換を使用してきた。しかし、このような交換は線維輪を侵害することにより椎間板に損傷を生じさせる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの実施の形態においては、補綴関節は、下位の椎骨の上位の関節突起に対して番い合うようになっており、上位の関節突起と上位の椎骨の下位の関節突起との間でスペーサとして作用する先端部と、上位の椎骨の穴に対して嵌合するようになっており、その長さに沿って不均一な表面を備えた細長い本体とを有する。
【0008】
別の実施の形態においては、関節の運動を回復させる方法は、補綴関節のための本体を提供する工程と、ネジ部が本体の全長を延びるように本体の表面をネジ切りする工程と、補綴関節内に内部空洞を形成する工程とを有する。
【0009】
第3の実施の形態においては、骨対骨の摩擦を阻止するために椎間関節突起を離間させる方法は下位の椎骨の上位の関節突起と上位の椎骨の下位の関節突起との間に材料を適用する工程を有し、材料は関節を提供する。
【0010】
第4の実施の形態においては、髄核を加圧する方法は椎間板空間内に物質を送給する工程を有し、物質は椎間板の線維輪を侵害することなく椎間板の髄核を加圧する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の原理の理解を促進させる目的のために、図面に示す実施の形態又は例をここで参照し、それを説明するために特定の用語を使用する。しかし、それによって本発明の要旨を限定する意図はないことを理解されたい。説明した実施の形態における任意の変形及び更なる修正、並びに、ここで説明するような本発明の原理の任意の更なる応用は本発明に関連する当業者にとって普通に行えるものと考えられる。
【0012】
本開示は動物のための改善された補綴関節を提供する。本開示は更にその線維輪を侵害することなく脊椎椎間板のための核補強装置を提供する。
【0013】
ここで、図1を参照すると、1つの実施の形態においては、補綴関節20は先端部22と、細長い本体24と、開口26とを有する。
【0014】
先端部22は部分的な又は不完全な円筒形状とすることができ、下位の椎骨の上位の関節突起に対して番い合う即ち嵌り合う又は組み合うようになっている。この先端部は上位の関節突起と上位の椎骨の下位の関節突起との間でスペーサとして作用する。上位及び下位の関節突起間にスペーサを提供することにより、骨摩擦が排除され、自然の空間関係が回復する。更に、この後方からの進入法の下では、椎間板上の負荷は椎骨の後柱により良好に分担される。その結果、椎間板の過剰負荷が少なくなり、その劣化は遅鈍になる。先端部22の部分18、28は椎骨の軟骨に対して関節運動するように先細りにするか又は他の変形形態とすることができ、その結果、運動中、先端部22はその適正な位置を維持する。先端部22は円筒状、球形、部分的な球形、部分的な円錐形又は部分的なピラミッド形のような種々の形状を有することができることが考えられている。また、先端部22は、これらには限定されないが、金属、プラスチック、セラミック、ポリマー、炭素繊維、形状記憶合金、複合体、アログラフト又は多孔性材料のような任意の適当な生物的適合性の材料で構成できることも考えられている。
【0015】
本体24は実質上円筒形とすることができる。その表面32は不規則であり、これは、ネジ切り、粗面化又は機械加工により達成することができ、そのため、本体24は上位の椎骨の穴に係合できるようになる。この例示においては、表面32はネジ切りされ、ネジは実質上均一である。ネジを不均一にできることも考えられている。更に、表面32は上位の椎骨と係合する他の形状をとるように修正できることも考えられている。
【0016】
本体24は、これらには限定されないが、金属、プラスチック、セラミック、ポリマー、炭素繊維、形状記憶合金、複合体、アログラフト又は多孔性材料のような任意の適当な生物的適合性の材料で構成できる。本体は上位の椎骨に対するその接着を容易にするために骨統合に適するようにすることができる。例えば、本体はヒドロキシアパタイト又はコラーゲンのコーティングを有することができる。別の例においては、本体は炭素繊維又は生体模倣科学骨で構成することができ、または、アノード化することができる。
【0017】
開口26は、補綴関節20を駆動するためにネジ回しとすることのできる任意の適当な工具又は器具(図示せず)を許容するように、六角形又は十字形のような任意の形状を有することができる。
【0018】
1つの実施の形態においては、補綴関節20は、ステンレス鋼、ポリマー、炭素繊維、形状記憶合金又は多孔性材料のような任意の適当な生物学的適合性の材料で構成された単一の物体から作られる。開口26は単一の物体の望まれない部分を切除することにより形成することができる。その結果、本体24に関する先端部22の運動を制約することができ、先端部22と本体24との間の接触表面の磨耗及び傷を制限することができる。先端部22及び本体24を別個の物体から作ることができることも考えられている。補綴関節20を形成するために脱塩先端部を備えたアログラフトプラグを使用できることが考えられている。
【0019】
ここで、本開示の利用可能性を簡単に説明する。関節突起関節空間へのアクセス及び椎骨の準備は当業界で既知であり、ここではほんの簡単に説明することを理解されたい。また、内側/背側進入法は当業界で既知であり、ここでは詳細に述べないことも理解されたい。ここで、図2Aを参照すると、1つの実施の形態においては、補綴関節20は内側/背側進入法で挿入される。作動において、関節20は送給チューブ又はスリーブ内に装填することができ、次いで、上位の椎骨V1の内部にドリル加工した穴62に隣接して位置させることができる。先端部22が下位の椎骨V2の上位の関節突起に対して番い合うまで、椎間板代替装置20を穴62内に強制押圧するために、開口26内でネジ回しを使用することができる。その時点で、関節20は下位の椎骨V2の上位の関節突起と上位の椎骨V1の下位の関節突起との間でスペーサとして作用する。
【0020】
補綴関節を挿入するために、横方向の進入法、両側進入法のような他の進入法、及び、随意には、可視の進入法も利用できることも考えられている。
【0021】
挿入準備は疾病した関節の状態に適合させることができる。例えば、すべての又は一部の軟骨を除去することができる。代わりに、補綴関節に対して番い合わせるように軟骨をそのまま残しておくことができる。1つの実施の形態においては、挿入準備は上位の椎骨V1に穴62をドリル加工する工程と、補綴関節20の先端部22に対して番い合わせるように椎骨V1、V2から材料を除去する工程とを有することができる。穴62の表面は補綴関節20の表面32と係合するようにネジ切り、粗面化又は機械加工することができる。また、下位の椎骨V2の準備を限定できるように、先端部22は下位の椎骨V2の既存の上位の関節突起に適合させることができることも考えられている。
【0022】
1つの実施の形態においては、下位の椎骨V2の上位の関節突起の一部は、先端部22が準備された下位の椎骨V2に実質上当接するように、部分的な円筒形の先端部22を受け入れるための部分的な円筒領域を形成するように準備されている。
【0023】
別の実施の形態においては、下位の椎骨V2の上位の関節突起の準備される部分は補綴関節20を受け入れるのに必要な領域に限定することができ、上位の関節突起の残りの部分は準備されないままである。上位の関節突起の準備されない部分は、その適正な位置からの補綴関節20の移動に抵抗するように先端部22と係合することができる。
【0024】
ここで図2Bを参照すると、動物の体内に配置されたこの開示の1つの実施の形態に係る補綴関節20を示す。この実施の形態においては、椎骨V1、V2間の距離S1は補綴関節20の配置により減少させることができ、従って、その領域で体験することのある動物の痛みを減少させることができる。しかし、また、補綴関節20の挿入により距離S1を減少させなくてもよいことも考えられている。
【0025】
ここで図3を参照すると、1つの実施の形態においては、補綴関節20のある構成要素は、先端部34と、本体38と、空洞36と、開口40とを有することのできる補綴関節30を生じさせるように修正することができる。
【0026】
先端部34は空洞36により中断されている点を除けば部分的にあるいは不完全な円筒形である。先端部は先細り部分44、46を有し、これらの部分は椎骨の軟骨に対して番い合うようにすることができる。先細り部分44、46はまた動物の体内への補綴関節30の挿入を容易にすることができる。
【0027】
空洞36は物質を関節被膜及び(又は)関節空間内に送給するために使用することができ、このような物質はヒドロゲル、シリコーン、ポリウレタン、コラーゲン又は骨形態発生タンパク質のような任意の適当な生物的適合性の物質とすることができる。空洞36は本体38の内部に位置することができ、本体38及び先端部34の全体の組合せ長さを延びることのできる長さL1を有する。補綴関節30を移植する前に、長さL2を延びることのできるロッド48を空洞36に装填することができる。長さL2は長さL1より小さいか又はこれと等しくすることができる。ロッド48はヒドロゲル、シリコーン、ポリウレタン、コラーゲン、同種移植軟骨又は他の天然又は合成材料のような任意の適当な生物的適合性の材料で構成することができる。止めネジとすることのできる普通のドライバ装置52を使用して、関節被膜及び(又は)関節空間内へヒドロゲルを強制送給するようにロッド48を前進させることができる。
【0028】
別の実施の形態においては、ロッド48の外表面はその全長L2に沿って粗面化、機械加工又はネジ切りすることができる。同様に、空洞36の表面はロッド48と係合するように粗面化、機械加工又はネジ切りすることができる。
【0029】
ここで、補綴関節30の利用可能性を簡単に説明する。1つの実施の形態においては、補綴関節30は送給チューブ又はスリーブ内に装填することができ、次いで、上位の椎骨の穴に隣接して位置させることができる。補綴関節は穴を通して挿入することができ、その先細り部分44、46が椎骨の軟骨に対して番い合うまで、前進させることができる。その時点で、ネジ回しとすることのできる普通の工具をドライバ装置52と一緒に使用して、先端部34の方へロッド48を前進させ、ロッド48の一部を関節被膜内へ強制的に押し込むことができる。ロッド48は、関節被膜に接触するまで前進することができ、または、接触地点を更に越えて前進することができ、この場合は、ロッド48は関節被膜を押圧する。ヒドロゲルが関節被膜内に定住した後、ヒドロゲルは寸法を増大させ、関節被膜を加圧する。その後、ネジ回し及びドライバ装置52を動物の体から取り外すことができる。代わりに、これらを動物の体内に残しておくこともできる。この場合、これらの各々は、ステンレス鋼又は炭素繊維とすることのできる適当な生物的適合性の材料で構成することができる。
【0030】
関節被膜及び(又は)関節空間内のヒドロゲルは上位の椎骨の下位の関節突起と下位の椎骨の上位の関節突起との間でスペーサとして機能することができる。ヒドロゲルは関節被膜を加圧することができ、関節を提供することができる。その結果、隣接する関節突起の骨対骨の摩擦を排除することができる。6ヶ月、1年のような、又は医療診断に基づいたある時間期間の後、ヒドロゲルは他の領域へクリープするか又は大幅に変形することがあり得る。その時点で、ドライバ装置52を先端部34の方へ更に前進させて、ロッド48の別の部分を関節被膜内へ押し込み、変形したヒドロゲルを交換することができる。必要なら、このような手順は複数回繰り返すことができ、それぞれの回毎に、ロッド48の付加的な部分を関節被膜内へ前進させる。
【0031】
挿入準備は、上位の椎骨に穴をドリル加工し、補綴関節30の先端部34に対して番い合わせるように即ちそれを勘合させるように椎骨から材料を除去することにより、行うことができる。更に、穴は補綴関節30の粗面化された表面と係合するようにその表面に沿ってネジ切りできる。下位の椎骨のための準備を限定できるように、先端部34は下位の椎骨の既存の上位の関節突起に適合するようにすることができることが考えられている。
【0032】
1つの実施の形態においては、先細り部分が準備された下位の椎骨に実質上当接できるように下位の椎骨の上位の関節突起の一部は先細り部分44、46を受け入れるための部分的な円筒状領域又は不完全円筒状領域を生じさせるように準備される。別の実施の形態では、下位の椎骨の上位の関節突起の準備される部分は補綴関節30を受け入れるのに必要な領域に限定され、上位の関節突起の残りの部分は準備されないままである。上位の関節突起の準備されない部分は、補綴関節30がその適正な位置から逸脱するのに抵抗するように、先端部34に係合できる。
【0033】
ロッド48は多くの手段により関節被膜及び(又は)関節空間内へ前進させることができる。例えば、生物的適合性のネジ回し(図示せず)を使用することのできる任意の普通の機械的な手段を介して、ロッドを前進させることができる。ネジ回しは処置と次の処置との間で動物の体内に残しておくことができる。代わりに、ネジ回しは関節被膜及び(又は)関節空間内へロッド48を更に前進させるためにその都度挿入することができる。
【0034】
別の実施の形態においては、侵入的でない方法を使用して、ロッド48を前進させることができる。1つの例においては、注入ポンプを利用する。無線周波数信号又は超音波励起とすることのできる外部信号を受け取ったとき、注入ポンプは電子モータ又は圧力装置のような普通の手段によりロッド48を前進させる。注入ポンプは当業界で既知であり、ここでは更に述べないことを理解されたい。
【0035】
全体的に図4を参照すると、1つの実施の形態においては、ロッド48を関節被膜内へ駆動するために浸透性の風船49を使用することができる。浸透性の風船は水の透過を許容するがより大きな物質は透過させない生物的適合性の膜で構成することができる。風船49は電解質リザーバとして使用することができ、塩又は塩水及び(又は)ヒアルロン酸のような浸透的に活性の電解質を収容することができる。その結果、活性電解液からの圧力が、風船49の両側間で圧力平衡が維持されるように、ロッド48を関節被膜内へ駆動する。その後、風船は動物の体内に留まることができる。例えば、風船は動物の体の背筋間に位置することができる。
【0036】
別の実施の形態においては、弁を介して浸透性風船に接続された注入ポンプを浸透性風船と組み合わせて、関節被膜内へロッド48を駆動することができる。注入ポンプが制御信号を受け取ったとき、注入ポンプは付加的な浸透的に活性の電解液を風船内に解放することができ、圧力を増大させる。増大した圧力は、浸透性風船の両側の圧力が等しくなるように、関節被膜内へロッド48を更に駆動することができる。注入ポンプは任意の生物的適合性の材料で作ることができ、ロッド48の繰り返しの前進の間、動物の体内に残しておくことができる。
【0037】
ここで図5を参照すると、1つの実施の形態においては、劣化した椎間板を処置するために、その髄核を加圧する前方進入法を採用することができる。この実施の形態においては、補綴関節30は同形であるが一層大きな補綴関節50を生じさせるように修正することができる。作動において、角度をなした進入法を使用して、動物の体の椎間板空間内に補綴装置50を挿入することができる。補綴装置50の挿入を許容するために、(そのエンドプレートを含む)上位の椎骨内に穴をドリル加工することができ、その表面は補綴装置50の粗面化された本体表面に係合するように粗面化することができる。補綴装置50の先端がエンドプレートに侵入し、椎間板空間68内に配置された後、ヒドロゲル、シリコーン、ポリウレタン又はコラーゲンのような任意の適当な生物的適合性の物質で構成することのできるロッド72は、その線維輪を侵害することなくその髄核を再加圧するように、ドライバ装置により椎間板74の方へ前進させることができる。ロッド72は椎間板74に接触するまで前進することができ、または、椎間板74を加圧するように更に前進することができる。その結果、髄核は再活性化され、その劣化が遅鈍になる。6ヶ月、1年のような、または、診断又は患者が体験している痛みに基づいたある期間の後、ロッド72の露出した部分は変形し、その加圧機能を失う。その時点で、ロッド72は椎間板74の髄核を再加圧するように更に前進させることができる。そして、必要なら、このような前進を数回繰り返すことができる。処置と次の処置との間で、補綴装置50は動物の体内に残しておくことができるか、または、各処置中に動物の体内に再挿入できる。ドライバ装置は生物的適合性のネジ回しとすることのできる任意の普通の工具とすることができる。ドライバ装置は補綴装置50と一緒に動物の体内に残しておくことができる。代わりに、ドライバ装置は各処置後に除去でき、次の処置中に再挿入できる。
【0038】
椎間板74のために十分な体積のヒドロゲルを提供するため、補綴装置50は複製することができ、椎間板74の髄核を再加圧するために複数の補綴装置50を使用できることが考えられている。
【0039】
ロッド48に関しての説明と同様に、ロッド72は多くの方法により椎間板空間68内に前進させることができる。1つの実施の形態においては、侵入的ではない方法を使用して、ロッド72を前進させることができる。例えば、注入ポンプを使用できる。無線周波数信号又は超音波励起のような外部信号を受け取ったとき、注入ポンプは電子モータ又は圧力装置のような任意の普通の手段によりロッド72を前進させることができる。別の例においては、ロッド72を前進させるために、注入ポンプと浸透性風船との組合せを使用することができる。
【0040】
ここで図6を参照すると、1つの実施の形態においては、図3の補綴関節30のある素子は補綴関節60を生じさせるように修正することができる。図示の例では、風船とすることのできる膜76をロッド48と交換できる。膜76はゴム、シリコンゴム、形状記憶合金、チタン、炭素繊維、ポリマー、ステンレス鋼又は多孔性材料のような任意の生物的適合性の材料で構成することができる。シリコンゲル、ヒドロゲル、ポリウレタン又はコラーゲンのような軟質で粘性の材料により膜を部分的又は全体的に満たすことができる。膜76はロッド48に関して上述した方法により関節被膜内へ前進させることができる。
【0041】
以上、本発明のほんのいくつかの例示的な実施の形態を説明したが、当業者なら、本発明の新規な教示及び利点から本質的に逸脱することなく、例示的な実施の形態において多くの修正が可能であることを容易に認識できよう。例えば、ここに開示した補綴関節は椎間板交換体(単数又は複数)と組み合わせて使用することができる。また、ある実施の形態に関して例示し、上述した特徴は他の実施の形態に関して例示し、上述した特徴と組み合わせることができる。従って、すべてのこのような修正は本発明の要旨内に含まれることを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本開示の1つの実施の形態に係る補綴関節の側面図である。
【図2A】、本開示の1つの実施の形態に係る補綴関節及び椎骨を示す図である。
【図2B】本発明の1つの実施の形態に係る補綴関節の代替物を示す図である。
【図3】本開示の1つの実施の形態に係る補綴関節の断面図である。
【図4】本開示の1つの実施の形態に係る補綴関節のために使用する浸透性の風船を実質的に示す図である。
【図5】本開示の1つの実施の形態に係る核補強装置及び椎骨を示す図である。
【図6】本開示の1つの実施の形態に係る補綴関節の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持表面を有する第1の椎骨と第2の椎骨との間で使用するようになった補綴関節において、
第1の椎骨の開口に対して嵌合するようになった本体と;
上記本体に接続され、第2の椎骨の支持表面に対して番い合うようになった先端部と;
を有し、上記先端部が第1及び第2の椎骨間の少なくとも部分的なスペーサとして作用することを特徴とする補綴関節。
【請求項2】
上記先端部が第2の椎骨の第1の関節突起に対して番い合うようになっており、当該先端部が第1の関節突起と第1の椎骨の関節突起との間のスペーサとして作用することを特徴とする請求項1に記載の補綴関節。
【請求項3】
上記本体が不規則な表面を有することを特徴とする請求項1に記載の補綴関節。
【請求項4】
上記不規則な表面がネジ切りにより形成されることを特徴とする請求項3に記載の補綴関節。
【請求項5】
上記先端部に対向する開口を更に有し、上記開口が器具により上記補綴関節を駆動するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の補綴関節。
【請求項6】
支持表面を有する第1の椎骨と第2の椎骨との間で使用するようになった補綴関節を製造する方法において、
第1の椎骨の開口に対して嵌合するようになった本体を供給する工程と;
第2の椎骨の支持表面に対して番い合うようになった先端部を適用する適用工程と;
を有し、上記先端部が第1及び第2の椎骨間のスペーサとして作用することを特徴とする方法。
【請求項7】
上記適用工程が第2の椎骨の関節突起に対して番い合うように上記先端部を形づける工程を有することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記本体に不規則な表面を形成する工程を更に有することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
上記先端部に対向する開口を形成する工程を更に有し、上記開口が器具により上記補綴関節を駆動するようになっていることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項10】
支持表面を有する第1の椎骨と第2の椎骨との間で使用するようになった補綴関節において、
第1の椎骨の開口に対して嵌合するようになった本体と;
上記本体に接続され、第2の椎骨の支持表面に対して番い合うようになった部分を備えた先端部と;
第2の椎骨へ物質を送給するための、上記先端部内の内部空洞と;
を有することを特徴とする補綴関節。
【請求項11】
上記内部空洞が上記本体から上記先端部へ延びることを特徴とする請求項10に記載の補綴関節。
【請求項12】
上記物質が天然材料であることを特徴とする請求項10に記載の補綴関節。
【請求項13】
上記物質が同種移植軟骨であることを特徴とする請求項10に記載の補綴関節。
【請求項14】
上記物質が合成材料であることを特徴とする請求項10に記載の補綴関節。
【請求項15】
上記物質がヒドロゲルであることを特徴とする請求項10に記載の補綴関節。
【請求項16】
上記物質がシリコーンであることを特徴とする請求項10に記載の補綴関節。
【請求項17】
上記物質がポリウレタンであることを特徴とする請求項10に記載の補綴関節。
【請求項18】
上記物質がコラーゲンであることを特徴とする請求項10に記載の補綴関節。
【請求項19】
上記物質が風船であり、同風船が膨張可能な材料で形成されることを特徴とする請求項10に記載の補綴関節。
【請求項20】
支持表面を有する第1の椎骨と第2の椎骨との間で使用するようになった補綴関節において、
第1の椎骨の開口に対して嵌合するようになった本体と;
第2の椎骨の支持表面に対して番い合う手段と;
を有することを特徴とする補綴関節。
【請求項21】
上記番い合う手段が上記補綴関節の末端に隣接して位置することを特徴とする請求項20に記載の補綴関節。
【請求項22】
上記本体が第1の材料で構成され、上記番い合う手段が第2の材料で構成されることを特徴とする請求項20に記載の補綴関節。
【請求項23】
第2の椎骨に物質を送給する手段を更に有することを特徴とする請求項20に記載の補綴関節。
【請求項24】
上記物質が天然材料であることを特徴とする請求項23に記載の補綴関節。
【請求項25】
上記物質が合成材料であることを特徴とする請求項23に記載の補綴関節。
【請求項26】
支持表面を有する第1の椎骨と第2の椎骨との間で使用するようになった補綴関節を挿入する方法において、
先端部の少なくとも一部が第2の椎骨の支持表面に対して番い合うようになるまで、第1の椎骨の開口を通して上記先端部を挿入する工程を有することを特徴とする方法。
【請求項27】
本体の少なくとも一部が上記開口に対して嵌合するように、当該開口を通して上記本体の少なくとも一部を挿入する工程を更に有することを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
上記先端部の開口を通して第2の椎骨へ物質を送給する送給工程を更に有することを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項29】
上記先端部の開口を通して第2の椎骨へ天然材料を送給する工程を更に有することを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項30】
上記先端部の開口を通して第2の椎骨へ合成材料を送給する工程を更に有することを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項31】
上記先端部の開口を通して第2の椎骨へヒドロゲルを送給する工程を更に有することを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項32】
上記先端部の開口を通して第2の椎骨へシリコーンを送給する工程を更に有することを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項33】
上記先端部の開口を通して第2の椎骨へポリウレタンを送給する工程を更に有することを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項34】
上記先端部の開口を通して第2の椎骨へコラーゲンを送給する工程を更に有することを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項35】
風船の少なくとも一部を第2の椎骨へ送給する工程を更に有することを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項36】
上記先端部の内部空洞内へ物質を装填する工程を更に有することを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項37】
第2の椎骨へ上記物質を前進させるために機械的な方法を使用する工程を更に有することを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項38】
第2の椎骨の関節被膜内へ上記物質を前進させるために機械的な方法を使用する工程を更に有することを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項39】
第2の椎骨へ上記物質を前進させるために浸透性の風船を使用する工程を更に有することを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項40】
第2の椎骨の関節被膜内へ上記物質を前進させるために浸透性の風船を使用する工程を更に有することを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項41】
第2の椎骨へ上記物質を前進させるために注入ポンプを使用する工程を更に有することを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項42】
第2の椎骨の関節被膜内へ上記物質を前進させるために注入ポンプを使用する工程を更に有することを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項43】
第2の椎骨へ上記物質を前進させるために浸透性の風船と注入ポンプとの組合せを使用する工程を更に有することを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項44】
第2の椎骨の関節被膜内へ上記物質を前進させるために浸透性の風船と注入ポンプとの組合せを使用する工程を更に有することを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項45】
骨対骨の摩擦を阻止するために椎間関節突起を離間させる方法において、
下位の椎骨の上位の関節突起と上位の椎骨の下位の関節突起との間に、関節を提供する材料を送給する送給工程を有することを特徴とする方法。
【請求項46】
上記送給工程が上位の関節突起と下位の関節突起との間に材料を流れさせる工程を有することを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項47】
上位の関節突起と下位の関節突起との間の空間内への、上位の椎骨を通る通路を形成する工程を更に有することを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項48】
実質上損なわれていない関節突起関節内へ装置を送給する工程を更に有することを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項49】
上記材料が天然物質であることを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項50】
上記材料が合成物質であることを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項51】
上記材料がヒドロゲルであることを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項52】
上記材料がシリコーンであることを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項53】
上記材料がポリウレタンであることを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項54】
上記材料がコラーゲンであることを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項55】
上記送給工程が風船を提供する工程を有し、上記風船が少なくとも部分的に膨張可能な材料で満たされることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項56】
髄核を加圧する方法において、
椎間板空間内へ物質を送給する工程を有し、上記物質が椎間板の線維輪を侵害することなく椎間板の髄核を加圧することを特徴とする方法。
【請求項57】
上記物質が天然物質であることを特徴とする請求項56に記載の方法。
【請求項58】
上記物質が合成物質であることを特徴とする請求項56に記載の方法。
【請求項59】
上記物質がヒドロゲルであることを特徴とする請求項56に記載の方法。
【請求項60】
上記物質がシリコーンであることを特徴とする請求項56に記載の方法。
【請求項61】
上記物質がシリコーンであることを特徴とする請求項56に記載の方法。
【請求項62】
上記物質がコラーゲンであることを特徴とする請求項56に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−500877(P2008−500877A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515222(P2007−515222)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2005/018021
【国際公開番号】WO2005/117765
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(506298792)ウォーソー・オーソペディック・インコーポレーテッド (366)
【Fターム(参考)】