説明

裸眼立体ディスプレイ装置

【課題】シリンドリカルレンズ12の境界線BLに平行な斜線状のノイズの発生を抑制する。
【解決手段】裸眼立体ディスプレイ装置は、水平方向及び垂直方向の各々に色画素が配列された二次元ディスプレイと、色画素がそれを通して観察され、且つ互いに平行に配列された複数のシリンドリカルレンズ12とを備える。色画素の水平画素ピッチpx、垂直画素ピッチpy、シリンドリカルレンズ12の水平レンズピッチLx、垂直方向に対する境界線BLの傾斜角θとする。Ax及びAyが互いに素な自然数であり、Axが2以上であり、Bxが(2)式に示す数値GFが整数となる最小の自然数である。px、py、Lx、及びθは、(1)式〜(3)式に示す関係式を満たす。θ=arctan{(Ax・px)/(Ay・py)}・・・(1) GF=Bx・Lx/px・・・(2) Ay≧Bx≧2かつAx≧2・・・(3)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1次元方向に視差を持つ裸眼立体ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レンチキュラーレンズ、スリット型のバリア、レンズアレイ等の特殊な光学部材を用いて、印刷面や液晶パネル等の表示装置の映像を複数の視点方向に分割させ、視聴位置によって表示映像を変化させる技術が知られている。特に、右目と左目に、同一のオブジェクトに対し特定の視差を持った異なる表示映像(視差映像)が入力されるように設定する。これにより、眼鏡をかけずに立体視が可能な立体映像表示装置(以後、「裸眼立体ディスプレイ装置」という)が実現可能である。なお、本出願において、視差映像を分割する方向は主に水平方向に1次元とする。
【0003】
裸眼立体ディスプレイ装置にて立体視を行う場合は、立体視可能な視聴範囲を拡大するため、また、長時間の視聴に耐えうる自然な立体感、滑らかな運動視差を得るために、視差映像をより多くの方向に細かく分割して、視点の数を増やす要求がある。
【0004】
また、最近では視差映像による立体視を、アイキャッチ、視認性向上を目的としてデジタルサイネージ、カーナビゲーション等に応用することが検討されている。これらの応用を考えた場合、低解像度の表示装置を用いた場合であっても、できるだけ細かく視差映像を分割して、自然な立体視を実現することが求められる。
【0005】
これに対しては、空間上に視聴者の目の位置を想定し視点を分割するのではなく、なるべく細かく視点を分割し、視聴者はその何れかを見る、という考え方(多眼式)が有効である。視差映像の分割数を増やすには、表示装置の画素ピッチに対してレンズピッチを大きくすることが有効である。しかし、レンズの拡大効果でレンズピッチに比例して色画素が大きく見えるため、レンズのピッチ方向の視差映像の解像感が著しく低下してしまう。これにより、水平方向と垂直方向で視差映像の解像度が異なるという課題が発生する。
【0006】
これに対し、特許文献1では、レンチキュラーレンズを画素配列に対して傾けることで、水平方向の画素のみではなく、垂直方向の画素も用いて一つの3次元画素を構成している。これにより、3次元表示の水平方向の解像度の低下を抑え、水平方向及び垂直方向の解像度のバランスを向上できることが報告されている。
【0007】
一方、二次元表示との共存やコストの面で、すでに広く普及しているR(赤)、G(緑)、B(青)の色画素からなり、同色の色画素が垂直方向に規則正しく配列している表示装置を用いた裸眼立体ディスプレイ装置が必要とされている。
【0008】
特許文献2及び特許文献3では、レンチキュラーレンズの表示装置に対する傾斜角を工夫し、全ての水平方向に対して3種類の色画素を均等に使用している。これにより、水平方向に異なる色画素、例えばR(赤)、G(緑)、B(青)がストライプ状に垂直配列された表示装置を利用する場合であっても、色ムラ、輝度ムラが低減できることが報告されている。また、特許文献2の第1図では、レンチキュラーレンズのピッチを画素ピッチの7/2倍とし、2本のレンズにまたがって水平方向に7つの視差映像を分割する構成が紹介されている。このように、レンズピッチを画素ピッチの整数倍からずらすと、レンズのピッチが小さくても、視差映像を多くの方向に細かく分割できるので、前述の課題や要求に応えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−236777号公報
【特許文献2】特開2005−309374号公報
【特許文献3】特開2006−48659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、水平方向のレンズピッチを画素ピッチの整数倍からずらすと、複数の視差映像が複数のレンズにまたがって分割され、以下に示すように、レンズ境界線に平行な斜線状のノイズが発生するという課題がある。
【0011】
図17(a)は、表示装置が備える色画素53の配置パターン(矩形)とレンチキュラーレンズ52a、52bとの対応位置関係を示しており、斜線は隣接するレンチキュラーレンズ52a、52bの境界線bl1〜bl3である。また、各画素53に付された数字(1〜7)は、視差映像の番号を示し、番号は、水平方向に分割して提示する際の方向に対応する。また、図17(b)は、裸眼立体ディスプレイ装置50と視差映像SP1〜SP7の方向、対応するレンチキュラーレンズ52a、52bを示している。
【0012】
水平レンズピッチは水平画素ピッチの7/2倍となっており、レンチキュラーレンズ52aは視差映像SP2、SP4、SP6に対応し、レンチキュラーレンズ52bは視差映像SP1、SP3、SP5、SP7に対応する。つまり、視差映像SP1〜SP7が2本のレンチキュラーレンズ52a、52bにまたがって分割されている。ここで、レンチキュラーレンズ52a、52bを通して見ると、各視差映像に対応する色画素53は、レンズピッチ方向に、レンズピッチいっぱいに広がって見える。よって、視差映像SP1を観察する場合、図17(c)のように、視差映像SP1に対応する色画素53は、レンチキュラーレンズ52bには存在するが、レンチキュラーレンズ52aには存在しない。このため、レンチキュラーレンズ52bを通して視差映像SP1を見ることができるが、レンチキュラーレンズ52aを通して視差映像SP1を見ることはできない。
したがって、視差画像全体として、レンチキュラーレンズ52a、52bの境界線bl1〜bl3に平行な斜線状のノイズが発生する。実際には、レンチキュラーレンズ52aには、視差映像SP7と、視差映像SP2の中間像が少しずつ見えることになる。しかし、視差映像SP1と視差映像SP2、SP7とで対応する色画素が異なる場合は、斜線状のノイズが発生してしまう。さらに、多くのレンチキュラーレンズにまたがって視差映像を分割する場合は、対応する色画素が存在せず、視差映像が見えないレンチキュラーレンズが増えるので、斜線状のノイズがさらに顕著に発生する。
【0013】
図18は、視差映像をある一点より観察した時をシミュレートした視差映像を示す。なお、画素ピッチ方向に対するレンチキュラーレンズの傾きを9.46°(≒arctan(1/6))とし、水平方向のレンズピッチを画素ピッチの61/8=7.625倍とする。なお、8本のレンズにまたがって61個の視差映像に分割されている。また、表示装置の垂直画素ピッチは水平画素ピッチの3倍とする。視差映像の切り替わり部分で、レンチキュラーレンズの境界線に沿って斜線状のノイズが発生していることがわかる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記課題に鑑みて成されたものである。すなわち、本発明は、その一態様として、水平方向(HL)及び垂直方向(VL)の各々に色画素(13)が配列された二次元ディスプレイ(11)と、二次元ディスプレイ(11)の上に配置され、色画素(13)がそれを通して観察され、且つ、互いに平行に配列された複数のシリンドリカルレンズ(12a、12b、12c、・・・)とを備える裸眼立体ディスプレイ装置であって、色画素(13)の水平方向(HL)の画素ピッチをpxとし、垂直方向(VL)の画素ピッチをpyとし、シリンドリカルレンズ(12a、12b、12c、・・・)の水平方向(HL)のレンズピッチをLxとし、垂直方向(VL)に対するシリンドリカルレンズ(12a、12b、12c、・・・)の境界線(BL1、BL2、BL3、・・・)の傾斜角をθとし、Ax及びAyが互いに素な自然数であり、Axが2以上であり、Bxが(2)式に示す数値GFが整数となる最小の自然数である場合、px、py、Lx、及びθは、(1)式〜(3)式に示す関係式を満たしている。
【0015】
θ=arctan{(Ax・px)/(Ay・py)} ・・・(1)
GF=Bx・Lx/px ・・・(2)
Ay≧Bx≧2 かつ Ax≧2 ・・・(3)
【0016】
本発明の一態様において、Ny、K、及びGyは自然数であり、Nx及びGxは2以上の自然数であり、Nx≧Nyである場合、px、py、Lx、及びθは、(4)式及び(5)式に示す関係式をさらに満たしていることが好ましい。
【0017】
【数1】

【0018】
Lx=(K±1/Nx)px ・・・(5)
【0019】
本発明の一態様の二次元ディスプレイ(11)において、D種類の異なる色の色画素(13)が水平方向に周期的に配列され、同じ色の色画素(13)が垂直方向に配列され、Dは3以上の自然数であり、(6)式を満たす自然数α及びβのうち、(7)式に示すGHが最小となるα、βをα及びβとした場合、αがDの倍数でないことが好ましい。
【0020】
α・px+β・py・tanθ=Lx ・・・(6)
GH=(α・px)+(β・py) ・・・(7)
【0021】
本発明の一態様の二次元ディスプレイにおいて、D種類の異なる色の色画素(13)が水平方向に周期的に配列され、同じ色の色画素(13)が垂直方向に配列され、Dは3以上の自然数である場合、GyがDに等しいことが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の裸眼立体ディスプレイ装置によれば、水平方向のレンズピッチが水平方向の画素ピッチの整数倍からずれていて、複数本のシリンドリカルレンズにまたがって視差映像を分割する場合であっても、視差画像全体として、シリンドリカルレンズの境界線に平行な斜線状のノイズの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に関わる裸眼立体ディスプレイ装置の全体構成を示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)の領域MEを拡大した平面図である。
【図2】図2は、シリンドリカルレンズの傾斜角θを、θ=arctan(px/(2・py))=9.46°とし、水平レンズピッチLxを、Lx=7・pxとした第1の比較例を示す平面図である。
【図3】図3は、θ=9.46°とし、水平レンズピッチLx=L/cosθを、13・px/4=3.25・pxとした第2の比較例を示す平面図である。
【図4】図4は、θ=10.23°とし、Lx=3.25・pxとした本発明の第1の実施の形態を示す平面図である。
【図5】図5は、色むらを抑制するために各パラメータが満たすべき条件を説明するための模式図である。
【図6】図6は、実施例1に係わる裸眼立体ディスプレイ装置の構成を示す平面図である。
【図7】図7は、図6の裸眼立体ディスプレイ装置の各パラメータの緒言を示すテーブルである。
【図8】図8は、図18と同様に、61個に分割された視差映像を、シリンドリカルレンズを通して1点から観測した時の様子を示したシミュレート画像であって、図8(a)はレンズピッチが設計どおり(膨張していない場合)の視差映像示し、図8(b)は、レンズピッチが膨張した場合に、レンズに合わせて再構築した視差映像を示す。
【図9】図9は、本発明の第3の実施の形態に関わる裸眼立体ディスプレイ装置の構成を示す断面図である。
【図10】図10は、Ny=2の場合における色画素とシリンドリカルレンズ12の境界線BL1との位置関係を示す平面図である。
【図11】図11は、Ny=1、Nx=2、M=7の場合の色画素の配置を、図10と同様に示した平面図である。
【図12】図12は、Ny=2、Nx=4、M=15の場合の色画素の配置を示した平面図である。
【図13】図13は、第3の実施の形態による作用効果を説明するための模式図である。
【図14】図14(a)は、同じ視差映像の番号に対応する色画素が、およそR、G、Bを1組として境界線BL1〜BL3に沿って配列される様子を示す平面図であり、図14(b)は、R、G、Bのうちの2種類の色画素が1組として斜めに配列される様子を示す平面図である。
【図15】図15(a)は、実施例2に係わる裸眼立体ディスプレイ装置の各パラメータの緒言を示すテーブルであり、図15(b)は、図15(a)の各パラメータにしたがって構成された実施例2に係わる裸眼立体ディスプレイ装置の一部を示す平面図である。
【図16】図16(a)は、実施例3の各パラメータの緒言を示すテーブルであり、図16(b)は、図16(a)の各パラメータにしたがって構成された実施例3に係わる裸眼立体ディスプレイ装置の一部を示す平面図である。
【図17】図17(a)〜図17(c)は、レンチキュラーレンズ52a、52bの境界線bl1〜bl3に平行な斜線状のノイズが発生することを説明するための図である。
【図18】図18は、レンチキュラーレンズの境界線に平行に発生する斜線状のノイズの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付している。
【0025】
(第1の実施の形態)
図1(a)及び図1(b)を参照して、本発明の第1の実施の形態に関わる裸眼立体ディスプレイ装置の構成を説明する。本発明の第1の実施の形態に関わる裸眼立体ディスプレイ装置は、垂直方向及び水平方向の各々に所定のピッチで色画素13が配列された二次元ディスプレイ11と、二次元ディスプレイ11の表示面上に配置されたレンチキュラーシート14とを備える。レンチキュラーシート14は、互いに平行に一次元方向に配列された複数のシリンドリカルレンズ12a、12b、12c、・・・からなる。色画素13は、複数のシリンドリカルレンズ12を通して視認される。シリンドリカルレンズ12の境界線BL1〜BL4は、互いに平行な直線を成し、二次元ディスプレイ11の垂直方向VLに対して傾斜している。その傾斜角を「θ」とする。
【0026】
図1(b)の垂直方向及び水平方向に配列された複数の矩形は、それぞれ二次元ディスプレイ11の色画素13を示している。二次元ディスプレイ11において、R(赤)、G(緑)及びB(青)の3(=D)種類の異なる色の色画素13が水平方向に周期的に配列され、同じ色の色画素が垂直方向に配列されている。なお、シリンドリカルレンズ12の境界線BL1〜BL4に垂直な方向のレンズピッチ(以後、単に「レンズピッチ」という)を「L」とし、シリンドリカルレンズ12の水平方向のレンズピッチ(以後、単に「水平レンズピッチ」という)を「Lx」とする。また、色画素13の水平方向の画素ピッチ(以後、「水平画素ピッチ」という)を「px」とし、色画素13の垂直方向の画素ピッチ(以後、「垂直画素ピッチ」という)を「py」とする。以後の説明において、py/px=3とするが、py/pxは3以外の数値であってもよい。シリンドリカルレンズ12a、12b、12c、・・・は、境界線BL1〜BL4に垂直な方向にのみ光を屈折させる。
【0027】
次に、二次元ディスプレイ11の解像度を上げずに視差映像をより細かく分割する方法について説明する。
【0028】
図2は、シリンドリカルレンズの傾斜角θを、θ=arctan(px/(2・py))=9.46°とし、水平レンズピッチLxを、Lx=7・pxとした第1の比較例を示す。ある方向から、シリンドリカルレンズを通して二次元ディスプレイ11の色画素を見ると、シリンドリカルレンズの境界線bl1、bl2から等距離にある色画素のみが見える。見ることができる色画素の境界線bl1、bl2からの距離は、見る方向に応じて変化する。境界線bl1に沿ってR、G及びBの3種類の色画素が周期的に現れ、結果的に二次元ディスプレイ11の表示面内で各色画素が均一に使用される。
【0029】
しかし、図2の第1の比較例では水平レンズピッチLxが水平画素ピッチpxの整数倍であるため、境界線bl1、bl2と二次元ディスプレイ11の色画素との相対位置を水平画素ピッチpx以下に分割することができない。
【0030】
そこで、前述したように、水平レンズピッチLxを水平画素ピッチpxの整数倍からずらすことにより、二次元ディスプレイ11の色画素との相対位置を水平画素ピッチpx以下に分割する。これにより、複数の視差映像が複数のシリンドリカルレンズにまたがって分割され、二次元ディスプレイ11の解像度を上げずに、多数の視差映像に分割することができる。
【0031】
図3は、θ=9.46°とし、水平レンズピッチLx=L/cosθを、13・px/4=3.25・pxとした第2の比較例を示す。各色画素に記載された数字は、13分割された視差映像の番号を示している。13個の視差映像が、4本のシリンドリカルレンズ52a〜52bにまたがって分割されている。
【0032】
しかし、第2の比較例では、シリンドリカルレンズ52a〜52dの境界線bl1〜bl5に平行な斜線状のノイズが発生するという課題がある。
【0033】
図3を見ると、シリンドリカルレンズ52a、52cは奇数番号の視差映像のみに対応し、シリンドリカルレンズ52b、52dは偶数番号の視差映像のみに対応している。よって、シリンドリカルレンズ52b、52dには奇数番号の視差映像は表示されず、シリンドリカルレンズ52a、52cには偶数番号の視差映像は表示されない。よって、水平方向に視差を持つ視差画像SP1〜SP13を順次対応させた場合に、シリンドリカルレンズ52a〜52dの境界線bl1〜bl5に平行な斜線状のノイズが発生する。また、水平レンズピッチLxを調整し、さらに細かく視差映像を分割すると、シリンドリカルレンズ1本を見たときに、表示されない視点の割合が増えるため、斜線状のノイズは顕著となる。
【0034】
これに対して、本発明の第1の実施の形態では、シリンドリカルレンズ52a〜52dの傾斜角θを適切に設定することにより、総ての視差画像SP1〜SP13を1本のシリンドリカルレンズ52a〜52dに必ず1度は表示させることができる。これにより、水平レンズピッチLxが水平画素ピッチpxの整数倍からずれていて、複数本のレンチキュラーレンズ52a〜52dにまたがって視差映像の提示方向を分割する場合であっても、視差画像全体として、シリンドリカルレンズ52a〜52dの境界線bl1〜bl5に平行な斜線状のノイズの発生を抑制することができる。
【0035】
図4は、θ=10.23°とし、Lx=3.25・pxとした本発明の第1の実施の形態を示す。図3の第2の比較例に比べて、θを9.46°から10.23°へ変更している。これにより、シリンドリカルレンズの境界線が、境界線bl1から境界線BL1へ変更している。他の境界線についても同様である。図4に示す例では、総てのシリンドリカルレンズ12a〜12dに総ての視差映像1〜13が現れている。これにより、図3に示した第2の比較例における斜線状のノイズを抑制することができる。
【0036】
具体的には、水平画素ピッチpx、垂直画素ピッチpy、シリンドリカルレンズ12a〜12dの水平レンズピッチLx、シリンドリカルレンズ12a〜12dの境界線BL1〜BL5の傾斜角θが、(1)式、(2)式及び(3)式に示す関係式を総て満たしていればよい。ここで、Ax及びAyは互いに素な自然数であり、Bxは(2)式に示す数値GFが整数となる最小の自然数である。
【0037】
θ=arctan{(Ax・px)/(Ay・py)} ・・・(1)
GF=Bx・Lx/px ・・・(2)
Ay≧Bx≧2 かつ Ax≧2 ・・・(3)
【0038】
また、px、py、Lx、θが(1)式〜(3)式に示す関係式を満たす場合、分割される視差映像の数Vは、(8)式により表される。ここで、{Bx,Ay}は、BxとAyの最小公倍数を示す。
【0039】
V={Bx,Ay}・Lx/py ・・・(8)
【0040】
(3)式におけるBx≧2の条件を満たすことにより、水平レンズピッチLxを水平画素ピッチpxの整数倍からずらすことができる。これにより、複数のシリンドリカルレンズ12a〜12dにまたがって視差映像に分割できるので、水平画素ピッチpxに対して水平レンズピッチLxを大きくすることなく、視差映像の分割数が増加する。さらに、Ay≧Bxの条件を満たせば、総てのシリンドリカルレンズ12a〜12dに総ての視差映像が必ず1度は表示されることになる。これにより、水平レンズピッチLxが水平画素ピッチpxの整数倍からずれていて、複数本のシリンドリカルレンズ12a〜12dにまたがって視差映像を分割する場合であっても、視差画像全体として、シリンドリカルレンズ12a〜12dの境界線BL1〜BL5に平行な斜線状のノイズの発生を抑制することができる。但し、二次元ディスプレイ11の表示面の大きさが無限である裸眼立体ディスプレイ装置を仮定している。
【0041】
また、シリンドリカルレンズ12a〜12dを通して二次元ディスプレイ11の色画素を観察すると、色画素が拡大されて視差映像の解像感を損ねる。拡大された色画素の大きさは、レンズピッチLと1/tanθに比例する。θが小さくなると色画素の大きさが大きくなり、視差映像の解像度が低下する。Ax≧2とすることで、Bx、Ayが大きくなった場合であっても、θが小さくなりすぎることはない。よって、解像度の低下を抑制することができる。
【0042】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態によれば、斜線状のノイズは解決できるが、レンズピッチL及び傾斜角θの値によって、色むらが発生してしまう場合がある。具体的には、水平レンズピッチLxが水平画素ピッチpxの整数倍からずれ、且つAxが2以上である場合、シリンドリカルレンズ12a〜12dの傾斜角θがθ=arctan(px/(C*py))(Cは自然数)からずれる。これにより、シリンドリカルレンズ12a〜12dと色画素との相対位置によって、同一の視差映像を表示する色画素が、二次元ディスプレイ11の表示面内で色分布を持ち、この色分布による色むらが発生してしまう可能性がある。
【0043】
そこで、第2の実施の形態では、シリンドリカルレンズ12の境界線BLに垂直な方向に発生する色むらを抑制する裸眼立体ディスプレイ装置について説明する。
【0044】
第2の実施の形態に係わる裸眼立体ディスプレイ装置において、同一の視差映像を表示する色画素のうち、隣り合う2本のシリンドリカルレンズ12を通してそれぞれ観察され、かつ最も相対距離の小さい2つの色画素は、互いに異なる色の色画素である。二次元ディスプレイ11の表示面の略全域にわたって、上記した2つの色画素が互いに異なる色の色画素となるように、傾斜角θを設定する。これにより、同色の画素が偏って分布することを抑制することができるので、この色分布による色むらを抑制することができる。
【0045】
具体的には、(6)式を満たす自然数α及びβのうち、(7)式のGHが最小となるα、βをα及びβとした場合、αがDの倍数ではないように、px、py、Lx、θの各数値を設定する。ここで、Dは、二次元ディスプレイ11が備える色画素の色の種類である。ここでは、R、G、Bの3色の色画素が周期的に配列した構成を有するので、αが3の倍数ではなければよい。
【0046】
α・px+β・py・tanθ=Lx ・・・(6)
GH=(α・px)+(β・py) ・・・(7)
【0047】
(6)式及び(7)式について、図5を用いて説明する。図5は、ある2つの色画素13f及び色画素13gと、シリンドリカルレンズ12の境界線BL1、BL2を示す。境界線BL1は色画素13fの中心Aを、境界線BL2は色画素13gの中心Bを通る。三角形BAC、BCDに着目すると、自然数α、βに対して(6)式を満たす必要があることがわかる。さらに、色画素13fと色画素13gの色が異なるためには、αが3の倍数でなければよいことがわかる。
【0048】
シリンドリカルレンズ12を通して二次元ディスプレイ11の表示面を見ると、直線LABに沿って、常にR、G、B、R、・・・もしくはR、B、G、R、・・・と異なる色が順に並んで見えることになる。中心A及び中心Bを結ぶ線分の長さ(GH1/2)は、色画素13f、13gの相対距離である。α及びβはこの相対距離を最小にするように選ばれている。よって、直線ABの方向に、小さい周期(3×GH1/2)でR、G、Bの色画素が順に配列する。よって、色ムラを抑制することができる。
【0049】
なお、本発明の第1及び第2の実施の形態では、R、G、Bの3色の色画素が水平方向に周期的に配列された二次元ディスプレイ11を用いた場合を説明した。しかし、さらにY(黄)を加えた4色、或いはそれ以上の異なる種類の色画素を、水平方向に周期的に配列した場合においても、上記のαの数値を色の数(D)の倍数でなければ、色むらを抑制することができる。
【0050】
(実施例1)
以上を踏まえて、第1及び第2の実施の形態に関わる実施例1を以下に説明する。図6は、実施例1に係わる裸眼立体ディスプレイ装置の構成を示す平面図である。また、図7は、図6の裸眼立体ディスプレイ装置の各パラメータの緒言を示すテーブルである。図1の裸眼立体ディスプレイ装置と同様に、垂直方向及び水平方向の各々に所定のピッチで色画素が配列されている。さらに、垂直方向に同色の色画素が配列され、水平方向にはR(赤)、G(緑)、B(青)の色画素が周期的に配列されている。複数のシリンドリカルレンズ12a、12b、12c、・・・は、互いに平行に一次元方向に配列されている。各色画素は複数のシリンドリカルレンズ12a、12b、12c・・・を通して観察される。シリンドリカルレンズ12a〜12cの境界線BL1〜BL4は、二次元ディスプレイ11の垂直方向VLに対して傾斜角θで傾斜している。なお、水平画素ピッチは、px=0.1mmであり、垂直画素ピッチは、py=0.3mmである。
【0051】
ここで、傾斜角θ、レンズピッチLは、図7に示すように、θ=11.77°、L=0.779mmに設定する。(1)式において、Ax=5、Ay=8を満たし、また、レンズピッチに関する定数Bxは、Bx=8を満たす。つまり、Bx=Ay=8を満たす。また、α=7、β=1で、(6)式を満たす。よって、隣り合うシリンドリカルレンズの間において、異なる色の色画素が、同色の色画素よりも近くに配列され、色ムラのない均一な画質が実現できる。
【0052】
図8は、図18と同様に、61個に分割された視差映像を、シリンドリカルレンズ12を通して1点から観測した時の様子を示したシミュレート画像である。図8(a)は、レンズピッチが図9のL=0.779mmに対する視差映像をシリンドリカルレンズ12を通して観測した場合を示しており、色むら、斜線状のノイズが表れていないことがわかる。また、図8(b)は、レンズピッチLが0.5%膨張したことを考慮して、シリンドリカルレンズ12と色画素との相対位置に従って再構築した視差映像を、シリンドリカルレンズ12を通して観測した場合を示す。視差映像を再構築したにもかかわらず、図18に現れた斜線状のノイズが図8(b)には発生していないことがわかる。
【0053】
以上説明したように、実施例1によれば、シリンドリカルレンズ12の水平レンズピッチLxを水平画素ピッチpxの整数倍からずらし、レンズピッチLを大きくすることなく視差映像の分割数を多くした場合であっても、斜線状のノイズや色ムラの発生を抑えることができる。さらに、レンズピッチLの変化に合わせて視差映像を再構築した場合であっても、斜線状のノイズの発生を抑制することができる。
【0054】
(第3の実施の形態)
図9を参照して、本発明の第3の実施の形態に関わる裸眼立体ディスプレイ装置の構成を説明する。裸眼立体ディスプレイ装置は、液晶表示装置(LCD)などの二次元ディスプレイ11と、図示しない厚さの無視できる接着層を介して二次元ディスプレイ11の表示面に隙間なく接着されたレンチキュラーシート14とを備える。
【0055】
レンチキュラーシート14は、複数のシリンドリカルレンズ12からなる。シリンドリカルレンズ12の焦点効果によって、水平方向HLにV個の視差映像SP〜SPv−1を分割して提示する。隣り合う視差映像SP0〜SPV-1の角度ピッチを、視差映像SP〜SPv−1の分割の細かさを示す指標として「視差角ピッチΔφ」と定義する。
【0056】
次に、視差角ピッチΔφと、各種パラメータとの関係を示す。シリンドリカルレンズ12の焦点距離をfとする。シリンドリカルレンズ12のレンズ焦点が二次元ディスプレイ11の表示面に一致している場合、視差角ピッチΔφは(9)式により表される。
【0057】
Δφ=Lx/(cosθ・f・V) ・・・(9)
【0058】
次に、二次元ディスプレイ11の解像度を上げずに視差映像をより細かく分割する方法について説明する。先ず、シリンドリカルレンズ12の傾斜角θから、px/(py・tanθ)を計算し、最も近い自然数をNyとする。但し、θ=0のときは、Ny=1とする。図10は、Ny=2の場合における色画素とシリンドリカルレンズ12の境界線BL1との位置関係を示す。シリンドリカルレンズ12の境界線BL1及び境界線BL1に平行な複数の点線で区切られる領域0〜V-1は、各視差映像SPn(n=0〜V-1)に対応する色画素を決めるための指標となる。色画素の中心が領域0〜V-1のどこに一致するかを基準として、対応する視差映像SP、SP、・・・SPV-1が決まる。
【0059】
図10に示すように、シリンドリカルレンズ12の傾斜角θが水平方向1画素に対し、垂直方向におよそNy=2画素分に設定されている。このため、垂直方向に隣接する上段の色画素と下段の色画素で、シリンドリカルレンズ12に対する水平座標位置が1/2画素分(px/2)シフトする。よって、上段の色画素が偶数番目の視差映像SP、SP、SPに対応し、下段の色画素が奇数番目の視差映像SP、SPに対応している。このように、視差映像の分割分解能をNy倍細かくすることができる。なお、図10において、傾斜角θは、二次元ディスプレイ11の水平方向HLとシリンドリカルレンズの境界線BL1の垂直方向AGとが成す角度として示している。
【0060】
次に、水平レンズピッチLxを水平方向の画素ピッチpxの整数倍からずらす条件式を(5−1)式及び(5−2)式に示す。ここで、M、Kは自然数であり、Nxは2以上の自然数である。
【0061】
Lx=L/cosθ=(M/Nx)・px ・・・(5−1)
M=K・Nx±1 ・・・(5−2)
【0062】
(5−1)式に(5−2)式を代入すると(5)式が得られる。
【0063】
Lx=(K±1/Nx)px ・・・(5)
【0064】
Lx及びpxが(5−1)式に(5−2)式の条件式を満たすことにより、Nx本のレンズにまたがり、水平方向に並んだM画素のからの映像をM方向に分割することになる。図11は、Ny=1、Nx=2、M=7の場合の色画素の配置を、図10と同様に示す。図11に示すように、シリンドリカルレンズ12aとシリンドリカルレンズ12bで、表示可能な視差映像が分かれていることがわかる。シリンドリカルレンズ12aには、偶数番目の視差映像SP、SP、SP、SPが表示され、シリンドリカルレンズ12bには、奇数番目の視差映像SP、SP、SPが表示される。
【0065】
図12は、Ny=2、Nx=4、M=15の場合の色画素の配置を、図10と同様に示す。この場合、垂直方向に1色画素分移動したときのシリンドリカルレンズ12a〜12dの境界線BL1と色画素との水平方向のずれ量(図12中のa)と、水平方向に2つのシリンドリカルレンズ12a、12b分移動したときの境界線BL3と色画素との水平方向のずれ量(図12中のb)とが一致する。シリンドリカルレンズ12bとシリンドリカルレンズ12dについても同様である。このため、Ny=2にしたことで水平方向の分割分解能が増える効果は、Nx=4にしたことによる効果に含まれる。しかし、シリンドリカルレンズ12a、12cと、シリンドリカルレンズ12b、12dとでは、視差映像の番号が共通していない。つまり、図11及び図12で例示したように、Nx>Nyの場合に、1本のシリンドリカルレンズ12a〜12dに、総ての視差映像SP〜SP14を表すことができないため、斜線状のノイズが発生する。
【0066】
水平方向への視差映像の分割数Vは、前述した(8)式の他に、(10)式により表すことができる。ここで、{Nx,Ny}は、自然数NxとNyの最小公約数を示す。
【0067】
V=(M/Nx)・{Nx,Ny} ・・・(10)
【0068】
(9)式、(5)式、(10)式より、視差角ピッチΔφは、(11)式により表される。(11)式によれば、視差角ピッチΔφは、画素ピッチpx、焦点距離f、定数Nx、Nyによって決まる。Nx、Nyを調整することにより、pxを変更することなく、視差角ピッチΔφを小さくして、視差映像の分割数を増やすことができる。
【0069】
【数2】

【0070】
次に、傾斜角θの設定方法について述べる。本発明の第3の実施の形態では、水平レンズピッチLxが(5)式で表される場合、傾斜角θを(4)式によって設定する。なお、Gyは自然数であり、Gxは2以上の自然数であり、Nx≧Nyである。
【0071】
【数3】

【0072】
(4)式に従って傾斜角θが設定されると、境界線BL1は、図13に示すように、垂直方向のGy・Ny色画素分に対して、水平方向にGx±1/Nx画素分だけ傾斜する。つまり、水平画素ピッチpxの整数倍(Gx倍)から±1/Nx画素分のずれが発生する。一方、(5)式より、水平レンズピッチLxは、水平画素ピッチpxの整数倍から±1/Nx画素分だけずれている。これらにより、図13のように、垂直方向にGy・Ny画素の周期で、隣接するシリンドリカルレンズ12で、それぞれが対応していた視差映像の番号が入れ替わる。色画素に対してシリンドリカルレンズ12が垂直方向に十分長いとすると、総ての視差映像が1本のシリンドリカルレンズに必ず1度は表示されることになる。よって、視差画像全体として、シリンドリカルレンズ12の境界線BL1、BL2に平行な斜線状のノイズの発生を抑制することができる。また、Gx≧2とすることで、拡大された色画素が大きくなりすぎることを抑制できる。シリンドリカルレンズ12越しに二次元ディスプレイ11の色画素を観察すると、色画素が拡大されて解像感を損ねる。拡大された色画素の大きさは、レンズピッチLと1/tanθに比例するため、傾斜角θをある程度大きくしたい。そこで、Gx≧2とすることで、Nx、Ny、Gyが大きくなった場合であっても、θが小さくなりすぎないという効果がある。
【0073】
(第3の実施の形態の変形例)
斜線状のノイズを抑制するためであれば、シリンドリカルレンズ12の傾き角θを、(5)式のGyの値によらず、1本のシリンドリカルレンズ12で総ての視差映像が対応付ければよい。しかし、二次元ディスプレイ11が、水平方向にR(赤)、G(緑)、B(青)の異なる色の3(=D)種類の色画素が周期的に配列されたカラー表示装置である場合、シリンドリカルレンズ12の境界線BLに沿って、色ムラが発生する場合がある。
【0074】
図14(a)に示すように、Gy≒3であれば同じ視差映像の番号に対応する色画素が、およそR、G、Bを1組として境界線BL1〜BL3に沿って配列される。これに対して、図14(b)に示すように、Gy=2の場合は、R、G、Bのうちの2種類の色画素を1組として斜めに配列される。よって、領域によって色むらが発生する場合がある。一方で、Gyが4以上である場合には、視差映像の番号がシフトする垂直方向の周期が大きくなるため、斜線状のノイズを抑制する効果が低減する。そのため、Gy=3(=D)であることが好ましい。
【0075】
また、Nx、Nyが大きくなるようにシリンドリカルレンズ12のレンズピッチLや傾斜角θを設定すれば、Δφをいくらでも小さくできる。しかし、視差映像を作成する際の処理量やデータ量が増加する一方で、人間が感じる見え方は一定のNx、Nyで飽和する。これに対し、本発明の第3の実施の形態ではNx、Nyを有限値に設定し、視差映像を各色画素に配置する際の規則性を保ちながら、視差角ピッチΔφを細かく、分割数Vを大きくすることができる。このため、コンテンツ製作、画像変換の点で、周知の多視点映像、多視差映像の作り方の技術をそのまま応用可能であり、煩雑にならないメリットがある。その点が、光線再生の考え方を用いた技術と異なる。
【0076】
なお、本発明の第3の実施の形態の変形例では、R、G、Bの3色の色画素が水平方向に周期的に配列された二次元ディスプレイ11を用いた場合を説明している。しかし、さらにY(黄)を加えた4色、或いはそれ以上の異なる種類の色画素を、水平方向に周期的に配列した場合においても、上記のGyを色の数(D)に応じて変化させることで、応用可能である。
【0077】
(実施例2)
以下、上記のパラメータ及び関係式を用い、第3の実施の形態に関わる実施例2及び3を説明する。実施例2における裸眼立体ディスプレイ装置の基本的な構成は、図9に示したとおりである。二次元ディスプレイ11としてのLCDパネルは、水平方向にR(赤)、G(緑)、B(青)の色画素がストライプ状に周期的に配置されたカラーLCD表示装置である。
【0078】
図15(a)は、実施例2の各パラメータの緒言を示しており、水平画素ピッチpx=0.1mm、垂直画素ピッチpy=0.3mm、レンズ焦点距離f=1mm、各種定数M=7、Nx=2、Ny=1、Gx=3、Gy=3である。(4)式に従い、シリンドリカルレンズ12の傾斜角θを算出すると、θ=15.5°となる。なお、(4)式中の±は−を選択した。これより、視差角ピッチΔφを計算すると、Δφ=2.9°となる。もちろん、+を選択して計算してもよい。
【0079】
図15(b)は、図15(a)にしたがって構成される実施例2のシリンドリカルレンズ12a、12bと各色画素の対応する視差映像の番号を、図10と同様にして示す。実施例2に対する比較例は、図11に示した構成に相当する。図11に示す比較例では、シリンドリカルレンズ12aを通して、視差映像SP、SP、SP、SPに対応する色画素のみが表示され、シリンドリカルレンズ12bを通して、視差映像SP、SP、SPに対応する色画素のみが表示される。
【0080】
これに対して、図15(b)に示した実施例2では、シリンドリカルレンズ12a、12bの各々に、総ての視差映像SP〜SPに対応する色画素が表示される。より詳しくは、前述したように、垂直方向へGy・Ny=3画素毎に、シリンドリカルレンズ12a、12bに表示される視差映像SP〜SPが入れ替わる。具体的には、奇数番号の視差映像SP、SP、SPと、偶数番号の視差映像SP、SP、SP、SPとが、垂直方向へGy・Ny=3画素毎に、隣接するシリンドリカルレンズ12a、12bの間で入れ替わる。図15(b)中で点線で示したひし形を一まとめとして、視差映像の番号が入れ替わっていることがわかる。よって、実施例2によれば、各シリンドリカルレンズ12a、12bに総ての視差映像SP〜SPを対応付けることができるので、シリンドリカルレンズ12a、12bの境界線BL1、BL2に沿った斜線状のノイズを抑制することができる。また、Gy=3とすることにより、境界線BL1、BL2に沿って色の異なる3種類の色画素を周期的に配列させることができるので、色むらが発生しない。
【0081】
(実施例3)
第3の実施の形態に関わる実施例3を説明する。実施例3に係わる裸眼立体ディスプレイ装置の全体構成は、実施例2と同じであり、説明を省略する。
【0082】
図16(a)は、実施例3の各パラメータの緒言を示しており、水平画素ピッチpx=0.1mm、垂直画素ピッチpy=0.3mm、レンズ焦点距離f=1mm、各種定数M=15、Nx=4、Ny=2、Gx=3、Gy=3である。(4)式に従い、シリンドリカルレンズ12の傾斜角θを算出すると、θ=8.7°となる。なお、(4)式中の±は−を選択した。これより、視差角ピッチΔφを計算すると、Δφ=1.4°となる。もちろん、+を選択して計算してもよい。
【0083】
図16(b)は、図16(a)にしたがって構成される実施例3のシリンドリカルレンズ12a、12bと各色画素の対応する視差映像の番号を、図10と同様にして示す。実施例3に対する比較例は図12に示した構成に相当する。図12に示す比較例では、シリンドリカルレンズ12a、12cを通して、偶数番号の視差映像SP、SP、SP、SP、SP、SP10、SP12、SP14に対応する色画素のみが表示され、シリンドリカルレンズ12b、12dを通して、奇数番号の視差映像SP、SP、SP、SP、SP、SP11、SP13に対応する色画素のみが表示される。
【0084】
これに対して、図16(b)に示した実施例3では、シリンドリカルレンズ12a〜12dの各々に、総ての視差映像SP〜SP14に対応する色画素が表示される。より詳しくは、前述したように、垂直方向へGy・Ny=6画素毎に、シリンドリカルレンズ12a〜12dに表示される視差映像SP〜SP14が入れ替わる。具体的には、奇数番号の視差映像SP〜SP13と、偶数番号の視差映像SP〜SP14とが、垂直方向へGy・Ny=6画素毎に、隣接するシリンドリカルレンズ12a、12cと、シリンドリカルレンズ12b、12dとの間で入れ替わる。図16(b)中で点線で示したひし形を一まとめとして、視差映像の番号が入れ替わっていることがわかる。よって、実施例3によれば、各シリンドリカルレンズ12a〜12dに総ての視差映像SP〜SP14を対応付けることができるので、シリンドリカルレンズ12a〜12dの境界線に沿った斜線状のノイズを抑制することができる。また、Gy=3とすることにより、シリンドリカルレンズ12a〜12dの境界線に沿って色の異なる3種類の色画素を周期的に配列させることができるので、色むらが発生しない。
【0085】
上記のように、本発明は、3つの実施の形態及び3つの実施例によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0086】
二次元ディスプレイ11として、液晶ディスプレイ(LCD)パネル及びカラーLCD表示装置を例示したが、これ以外の二次元ディスプレイ、例えば、ブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイ、電子ペーパー、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイなどを用いても構わない。
【符号の説明】
【0087】
11 二次元ディスプレイ
12、12a〜12d シリンドリカルレンズ
13 色画素
BL、BL1〜BL5 境界線
HL 水平方向
Lx 水平レンズピッチ(水平方向のレンズピッチ)
px 水平画素ピッチ(水平方向の画素ピッチ)
py 垂直画素ピッチ(垂直方向の画素ピッチ)
VL 垂直方向
θ 傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向及び垂直方向の各々に色画素が配列された二次元ディスプレイと、
前記二次元ディスプレイの上に配置され、前記色画素がそれを通して観察され、且つ、互いに平行に配列された複数のシリンドリカルレンズと、を備え、
前記色画素の水平方向の画素ピッチをpxとし、垂直方向の画素ピッチをpyとし、前記シリンドリカルレンズの水平方向のレンズピッチをLxとし、前記垂直方向に対する前記シリンドリカルレンズの境界線の傾斜角をθとし、Ax及びAyが互いに素な自然数であり、Axが2以上であり、Bxが(2)式に示す数値GFが整数となる最小の自然数である場合、
θ=arctan{(Ax・px)/(Ay・py)} ・・・(1)
GF=Bx・Lx/px ・・・(2)
Ay≧Bx≧2 かつ Ax≧2 ・・・(3)
前記px、py、Lx、及びθは、前記(1)式〜(3)式に示す関係式を満たしていることを特徴とする裸眼立体ディスプレイ装置。
【請求項2】
Ny、K、及びGyは自然数であり、Nx及びGxは2以上の自然数であり、Nx≧Nyである場合、
【数1】

Lx=(K±1/Nx)px ・・・(5)
前記px、py、Lx、及びθは、前記(4)式及び(5)式に示す関係式をさらに満たしていることを特徴とする請求項1に記載の裸眼立体ディスプレイ装置。
【請求項3】
前記二次元ディスプレイにおいて、D種類の異なる色の色画素が水平方向に周期的に配列され、同じ色の色画素が垂直方向に配列され、Dは3以上の自然数であり、
(6)式を満たす自然数α及びβのうち、(7)式に示すGHが最小となるα、βをα及びβとした場合、
α・px+β・py・tanθ=Lx ・・・(6)
GH=(α・px)+(β・py) ・・・(7)
前記αが前記Dの倍数でないことを特徴とする請求項1又は2に記載の裸眼立体ディスプレイ装置。
【請求項4】
前記二次元ディスプレイにおいて、D種類の異なる色の色画素が水平方向に周期的に配列され、同じ色の色画素が垂直方向に配列され、Dは3以上の自然数である場合、前記GyがDに等しいことを特徴とする請求項2に記載の裸眼立体ディスプレイ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図8】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2012−78696(P2012−78696A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225678(P2010−225678)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】