説明

裸眼立体映像表示装置および裸眼立体映像表示方法

【課題】水平方向への映像の流れを意識させることなく、高い水平解像度で立体映像を知覚させる。
【解決手段】裸眼立体映像表示装置100は、マトリクス状に配列された複数の領域それぞれを透過領域150と遮光領域152とで切り換える透過部110と、透過領域を水平方向にシフトさせる透過制御部130と、透過部の背面側に設けられた表示部112と、透過領域のシフトに同期して、観察者が透過領域を通じて表示部を観察したとき、観察者の左右の眼それぞれで視認できる表示部の表示領域154に、水平視差を有する左眼用映像と右眼用映像とをそれぞれ表示させる表示制御部132とを備え、透過制御部は、透過領域のシフト方向またはシフト量のうち、少なくとも一方を、少なくとも隣接する水平ライン同士で異なるようにシフト制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示部の前面にパララックスバリアを配置し、特殊な眼鏡を利用することなく、観察者が裸眼で立体映像を観察することが可能なパララックス方式の裸眼立体映像表示装置および裸眼立体映像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示部(モニタ)上に、水平視差を有する2つの映像を表示し、観察者に対してあたかもオブジェクトが立体的に存在するように知覚させる立体映像表示装置が脚光を浴びている。立体映像表示装置のうちでも、例えば、表示部の前面にパララックスバリアを配置するパララックス方式の裸眼立体映像表示装置では、偏光眼鏡や電子シャッタ眼鏡等の特殊な眼鏡を用いずとも、観察者が裸眼で立体映像を知覚することが可能である。
【0003】
パララックス方式の裸眼立体映像表示装置では、パララックスバリアに設けられたスリット状の透過領域を通じて観察者の左右眼で視認できる映像を異ならせ、水平視差を有する2つの映像をそれぞれ観察者の左右眼に独立して視認させることで立体映像を知覚させる。しかし、透過領域が固定されていると、観察者の左右眼から視認できる映像も固定されるため、水平解像度が低いといった問題があった。
【0004】
そこで、パララックスバリアにおける、垂直方向に延びるスリット状の透過領域の水平方向の位置を所定のタイミングで切り換え、その切換と同期して左右眼用の映像の表示領域を切り換えることで、水平解像度を高めることが可能な技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2966781号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1の技術では、フレーム毎に、透過領域がスリット単位で水平右方向に1画素ずつシフトし、それに同期させて、そのスリット単位の透過領域に対応したスリット単位の表示領域を水平右方向にシフトしており、透過時間が時分割される代わりに高い水平解像度を得ることができる。しかし、透過領域や表示領域が、スリット単位といった、大きな表示面積で一括して水平方向にシフトするため、透過領域が水平方向に流れているのが目立ってしまうといった問題があった。観察者は、立体映像の視認とは別に垂直方向に連続する映像の水平方向への流れを意識してしまい、違和感を覚えていた。
【0007】
そこで、本発明は、このような課題に鑑み、水平方向への映像の流れを意識させることなく、高い水平解像度で立体映像を知覚させることが可能な裸眼立体映像表示装置および裸眼立体映像表示方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の裸眼立体映像表示装置は、マトリクス状に配列された複数の領域それぞれを透過領域と遮光領域とで切り換える透過部と、透過領域を水平方向にシフトさせる透過制御部と、透過部の背面側に設けられた表示部と、透過領域のシフトに同期して、観察者が透過領域を通じて表示部を観察したとき、観察者の左右の眼それぞれで視認できる表示部の表示領域に、水平視差を有する左眼用映像と右眼用映像とをそれぞれ表示させる表示制御部とを備え、透過制御部は、透過領域のシフト方向またはシフト量のうち、少なくとも一方を、少なくとも隣接する水平ライン同士で異なるようにシフト制御することを特徴とする。
【0009】
透過制御部は、3以上の整数nの水平画素×整数nの水平ラインからなるブロック単位で同一の制御を行い、ブロックにおいて同一のタイミングで2以上の透過領域を同一の水平画素位置および同一の水平ラインに配置しないよう、かつ、n回のシフトによってブロック内の全ての領域が1回透過領域に切り換わるようにシフト制御してもよい。
【0010】
上記課題を解決するために、マトリクス状に配列された複数の領域それぞれを透過領域と遮光領域とで切り換える透過部と、透過部の背面側に設けられた表示部と、を備える裸眼立体映像表示装置を用いた本発明の裸眼立体映像表示方法は、透過領域のシフト方向またはシフト量のうち、少なくとも一方を、少なくとも隣接する水平ライン同士で異なるようにシフトし、透過領域のシフトに同期して、観察者が透過領域を通じて表示部を観察したとき、観察者の左右の眼それぞれで視認できる表示部の表示領域に、水平視差を有する左眼用映像と右眼用映像とをそれぞれ表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の裸眼立体映像表示装置によれば、水平方向への映像の流れを意識させることなく、高い水平解像度で立体映像を知覚させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】裸眼立体映像表示装置の構成を説明するための上面視による説明図である。
【図2】透過領域と左右眼映像のシフト動作を説明するための説明図である。
【図3】実施例1における透過領域のシフト制御を説明するための説明図である。
【図4】実施例2における透過領域のシフト制御を説明するための説明図である。
【図5】実施例3における透過領域のシフト制御を説明するための説明図である。
【図6】実施例4における透過領域のシフト制御を説明するための説明図である。
【図7】実施例5における透過領域のシフト制御を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
立体映像表示装置は、その方式こそ異なるものの、水平視差を有する2つの映像(左眼用映像と右眼用映像)それぞれを観察者の左右眼それぞれ一方にのみ視認させることで、2つの映像を立体的に知覚させる処理を行う点で共通している。本実施形態では、透過領域が同一であっても、その透過領域を通じて視認できる映像が左右眼で異なることを利用したパララックス方式の裸眼立体映像表示装置を挙げ、水平解像度を高める構成を採用したことの副作用として生じ得る上述した立体映像の不都合な事象を回避するものである。
【0015】
(裸眼立体映像表示装置100)
図1は、裸眼立体映像表示装置100の構成を説明するための上面視による説明図である。図1に示すように、裸眼立体映像表示装置100は、透過部110と、表示部112と、バックライト114と、中央制御部116とを含んで構成される。
【0016】
透過部110は、平行に対向する2枚の透明ガラスと、その2枚の透明ガラスに封入された液晶とからなる液晶表示器等で構成され、光の透過度を制御可能な複数の画素がマトリクス状に配置されている。透過部110は、後述する透過制御部130の制御信号に基づき、その複数の画素(領域)それぞれを、光を透過する透過領域(透過度が最大の領域)150と光を遮断する遮光領域(透過度が最小の領域)152とで切り換える。本実施形態において、透過部110はパララックスバリアとして機能する。
【0017】
表示部112は、観察者102から見て、透過部110の背面側に設けられ、透過部110同様、液晶表示器等で構成されて、水平視差を有する左眼用映像および右眼用映像を表示するための複数の画素がマトリクス状に配置されている。表示部112は、後述する表示制御部132の制御信号に基づき、各画素の透過度を調整する。
【0018】
バックライト114は、例えば、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)、冷陰極管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)等の光源で構成され、観察者102から見て、表示部112の背面側から表示部112に向けて光を照射する。なお、表示部112として有機EL(Electro Luminescence)等の自発光の表示装置を用いることでバックライト114を省略することもできる。
【0019】
中央制御部116は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路により、裸眼立体映像表示装置100全体を管理および制御する。また、本実施形態において、中央制御部116は、透過制御部130と、表示制御部132としても機能する。
【0020】
透過制御部130は、透過部110における各画素の透過度を制御し、透過領域150を水平方向にシフト制御する。具体的に、透過制御部130は、透過領域150となっている画素を遮光領域152に切り換えると共に、水平方向にある遮光領域152となっている画素を透過領域150に切り換えることで、透過領域150が恰も水平方向にシフトしているかの如く制御する。観察者102は、かかる透過領域150を通じて表示部112に表示された映像を視認する。
【0021】
表示制御部132は、透過領域150のシフトに同期して、観察者102が透過領域150を通じて表示部112を観察したとき、観察者102の左右眼102a、102bそれぞれで視認できる表示部112の表示領域154に、水平視差を有する左眼用映像と右眼用映像とをそれぞれ表示させる。
【0022】
ここで透過制御部130と表示制御部132との処理を、図1を用いて説明する。透過制御部130は、透過部110の透過領域150と遮光領域152とを所定の比率で規則的に配置する。ここでは、透過領域150と遮光領域152とが1:3の比率で配され、隣り合う透過領域150間に3つの遮光領域152が含まれている。
【0023】
表示制御部132は、観察者102の左眼(正確には観察者102が所定の位置に存在すると仮定した場合の左眼に相当する位置)102aと透過領域150を結んだ直線が表示部112と交わる表示部112上の画素(表示領域154L)に左眼用映像を表示させ、観察者102の右眼(正確には観察者102が所定の位置に存在すると仮定した場合の右眼に相当する位置)102bと透過部110の透過領域150を結んだ直線が表示部112と交わる表示部112上の画素(表示領域154R)に右眼用映像を表示させる。
【0024】
こうすることで、観察者102は、上述した所定の位置から裸眼立体映像表示装置100を観察すると、透過領域150を通じて、左眼102aで左眼用映像を視認し、右眼102bで右眼用映像を視認するので、両映像に基づく立体映像を知覚することができる。
【0025】
図2は、透過領域150と左右眼映像のシフト動作を説明するための説明図である。透過制御部130は、フレーム毎に透過領域150を水平方向、即ち、図2における左右方向にシフトする。例えば、透過制御部130が透過部110の透過領域150と遮光領域152とを図2(a)のように設定しているとき、表示制御部132は、観察者102の左眼102aと透過領域150との直線上にある表示部112上の表示領域154Lに左眼用映像を表示させ、観察者102の右眼102bと透過領域150との直線上にある表示部112上の表示領域154Rに右眼用映像を表示させる。ここで、フレームは、動画を構成する個々の静止画である。
【0026】
続いて、透過制御部130は、図2(b)のように、透過領域150を遮光領域152に切り換え、水平方向に隣接する遮光領域152を透過領域150に切り換えることで、透過領域150を水平右方向に1画素分シフトする。これと同時に表示制御部132は、観察者102の左眼102aと新たな透過領域150との直線上にある表示部112上の表示領域154Lに左眼用映像を表示させ、観察者102の右眼102bと透過領域150との直線上にある表示部112上の表示領域154Rに右眼用映像を表示させる。
【0027】
同様に、透過制御部130は、図2(c)、図2(d)のように、順次、透過領域150を水平方向に1画素分シフトし、これと同期して表示制御部132は、左右眼それぞれで視認できる表示部112の表示領域154L、154Rに、左眼用映像と右眼用映像とをそれぞれ表示させる。その後は、図2(a)〜図2(d)の状態を周期的に繰り返す。このように、透過制御部130と表示制御部132とが連動してシフトする構成により、高い水平解像度を実現できる。
【0028】
ここでは、1の水平ラインを挙げて、透過制御部130と表示制御部132との処理を説明したが、他の水平ラインも同様に制御可能なのは言うまでもない。ただし、ここで説明した1の水平ラインと全く同じ動作を他の水平ラインでも単純に実行すると、透過領域150が垂直方向に延びるスリットを形成し、透過領域150がスリット単位といった、大きな表示面積で一括して同方向に規則的にシフトしてしまう。本実施形態において、透過制御部130および表示制御部132は、水平ライン毎に独立して、透過領域150およびそれに対応する表示領域154のシフト方向またはシフト量のうち、少なくとも一方を、少なくとも隣接する水平ライン同士で異なるようにシフト制御することとし、透過領域150の水平方向のシフトを観察者に意識させないようにしている。
【0029】
(実施例1)
具体的に、透過制御部130および表示制御部132は、水平ライン毎に、透過領域150およびそれに対応する表示領域154のシフト方向またはシフト量を異ならせる。
【0030】
図3は、実施例1における透過領域150のシフト制御を説明するための説明図である。例えば、実施例1において、透過制御部130は、水平ラインの奇数ラインと偶数ラインとでシフト制御を異ならせ、図3(a)〜図3(d)に示すように、奇数ラインはフレームに同期して水平右方向に1画素ずつシフトし、偶数ラインはフレームに同期して水平左方向に1画素ずつシフトする。そして、表示制御部132は、透過領域150のシフトに対応させて奇数ラインの表示領域154Rを水平右方向にシフトさせ、偶数ラインの表示領域154Rを水平左方向にシフトさせる。その後は、図3(a)〜図3(d)の状態を周期的に繰り返す。
【0031】
ここでは、理解を容易にするため、右眼102bで透過領域150を視認した場合を示しているので、透過領域150には、右眼用映像(図3中「R」で示す。)が表示されているが、当然、左眼102aで透過領域150を視認した場合、右眼102b同様に、透過領域150に左眼用映像が表示されることとなる。
【0032】
このような4視点のパララックス方式の裸眼立体映像表示装置100では、透過領域150を画素単位でシフトしているので、観察者は透過部110の全画素分に相当する分解能で左眼用映像と右眼用映像とを観察することができ、パララックスバリアを形成しない平面映像の表示時に近い水平解像度が得られるようになる。ここでは、任意のタイミングに着目すると、水平方向の4画素中1画素しか透過領域150が設けられていないが、4フレームの間には全ての画素に一通り透過領域150が設けられるので、輝度等は均一になる。また、パララックスバリアの水平方向の移動は、水平ライン毎に逆方向となり、移動する表示面積が小さくシフト方向が偏っていないため、パララックスバリアが流れているのが目立たなくなる。
【0033】
(実施例2)
図4は、実施例2における透過領域150の他のシフト制御を説明するための説明図である。実施例2において、透過制御部130は、水平ラインの奇数ラインと偶数ラインとで透過領域150の水平画素位置を、例えば2画素分異ならせ、図4(a)のように市松模様を形成させて、図4(a)〜図4(d)に示すように、奇数ラインおよび偶数ラインの透過領域150を水平右方向に1画素ずつシフトする。そして、表示制御部132は、透過領域150のシフトに対応させて奇数ラインおよび偶数ラインの表示領域154Rをいずれも水平右方向にシフトさせる。その後は、図4(a)〜図4(d)の状態を周期的に繰り返す。
【0034】
実施例2においても、透過領域150を画素単位でシフトしているので、観察者は透過部110の全画素分に相当する分解能で左眼用映像と右眼用映像とを観察することができ、パララックスバリアを形成しない平面映像の表示時に近い水平解像度が得られるようになる。ここでも、4フレームの間には全ての画素に一通り透過領域150が設けられるので、輝度等は均一になる。また、パララックスバリアの水平方向の移動は、市松模様のままでの移動となり、移動する表示面積が小さいため、パララックスバリアが流れているのが目立たなくなる。
【0035】
(実施例3)
実施例2では、パララックスバリアを市松模様とすることで、パララックスバリアの水平方向への流れを観察者に意識させないようにしている。しかし、実施例2ではフレーム毎に透過領域150を水平右方向に1画素ずつシフトしているので、観察者によっては、透過領域150のシフトを認識する場合がある。そこで、実施例3では水平方向のシフトを一方向に偏らせないようにしている。
【0036】
図5は、実施例3における透過領域150の他のシフト制御を説明するための説明図である。実施例3において、透過制御部130は、水平ラインの奇数ラインと偶数ラインとで透過領域150の水平画素位置を、実施例2同様、2画素分異ならせ、図5(a)のように市松模様を形成させる。透過制御部130は、このように形成された市松模様全体の透過領域150のシフト方向またはシフト量を異ならせる。
【0037】
例えば、透過制御部130は、図5(a)の状態から新たなフレームが取得されると、奇数ラインおよび偶数ラインの透過領域150を水平右方向に2画素ずつシフトし、透過部110を図5(b)の状態に移行させる。次に、透過制御部130は、フレームに同期して奇数ラインおよび偶数ラインの透過領域150を水平左方向に1画素ずつシフトし、透過部110を図5(c)の状態に移行させる。続いて、透過制御部130は、フレームに同期して奇数ラインおよび偶数ラインの透過領域150を水平右方向に2画素ずつシフトし、透過部110を図5(d)の状態に移行させる。最後に透過制御部130は、フレームに同期して奇数ラインおよび偶数ラインの透過領域150を水平左方向に3画素ずつシフトし、透過部110を図5(a)の状態に移行させる。その後、透過部110は図5(a)〜図5(d)の状態を周期的に繰り返す。したがって、透過制御部130は透過領域150を4画素間で、右2画素→左1画素→右2画素→左3画素とシフトすることとなる。表示制御部132は、透過領域150のシフトに対応させて奇数ラインおよび偶数ラインの表示領域154Rを適宜水平右方向または水平左方向にシフトさせる。
【0038】
実施例3においても、透過領域150を画素単位でシフトしているので、観察者は透過部110の全画素分に相当する分解能で左眼用映像と右眼用映像とを観察することができ、パララックスバリアを形成しない平面映像の表示時に近い水平解像度が得られるようになる。ここでも、4フレームの間には全ての画素に一通り透過領域150が設けられるので、輝度等は均一になる。また、パララックスバリアの水平方向の移動に関しては、シフト方向とシフト量が異なるため、実施例2と比較してパララックスバリアが流れているのがより目立たなくなる。
【0039】
(実施例4)
上述した実施例1〜3では、隣接する2つの水平ライン間でシフト制御が異なる例を挙げた。しかし、図3〜5に示すように、実施例1〜3の各フレームにおける透過領域150は、水平方向の奇数番目の画素または偶数番目の画素に偏っている。即ち、任意の時点に着目すると、水平方向の奇数番目の画素または偶数番目の画素は全て同時に遮光領域152となっており、実質的な解像度は本来の透過部110の解像度の1/2となる。そこで、実施例4においては、水平方向の奇数番目の画素または偶数番目の画素が全て遮光領域152とならないよう工夫する。
【0040】
透過制御部130は、3以上の整数nの水平画素×整数nの水平ラインからなるブロック単位、ここでは4水平画素×4水平ラインからなるブロック単位で同一の制御を行い、そのブロックにおいて同一のタイミングで2以上の透過領域を同一の水平画素位置および同一の水平ラインに配置しないよう、かつ、n回(ここでは4回)のシフトによってブロック内の全ての領域が1回透過領域に切り換わるようにシフト制御する。
【0041】
図6は、実施例4における透過領域150の他のシフト制御を説明するための説明図である。実施例4において、透過制御部130は、4水平画素×4水平ラインのブロック160に関し、水平ライン毎に独立してシフト制御する。
【0042】
第1ライン162に関し、透過制御部130は、図6(a)の状態から新たなフレームが取得されると透過領域を水平右方向に3画素シフトし、透過部110を図6(b)の状態に移行させる。次に、透過制御部130は、フレームに同期して透過領域150を水平左方向に2画素シフトし、透過部110を図6(c)の状態に移行させる。続いて、透過制御部130は、フレームに同期して透過領域150を水平右方向に1画素シフトし、透過部110を図6(d)の状態に移行させる。最後に透過制御部130は、フレームに同期して透過領域150を水平左方向に2画素シフトし、透過部110を図6(a)の状態に移行させる。その後、透過部110は図6(a)〜図6(d)の状態を周期的に繰り返す。したがって、透過制御部130は透過領域150を4画素間で、右3画素→左2画素→右1画素→左2画素とシフトすることとなる。
【0043】
同様に、第2ライン164に関して、透過制御部130は、透過領域150を4画素間で、左2画素→右3画素→左2画素→右1画素とシフトし、第3ライン166に関して、透過制御部130は、透過領域150を4画素間で、右1画素→左2画素→右3画素→左2画素とシフトし、第4ライン168に関して、透過制御部130は、透過領域150を4画素間で、左2画素→右1画素→左2画素→右3画素とシフトする。表示制御部132は、透過領域150のシフトに対応させて表示領域154Rを適宜水平右方向または水平左方向にシフトさせる。
【0044】
実施例4においても、透過領域150を画素単位でシフトしているので、観察者は透過部110の全画素分に相当する分解能で左眼用映像と右眼用映像とを観察することができ、パララックスバリアを形成しない平面映像の表示時に近い水平解像度が得られるようになる。ここでも、4フレームの間には全ての画素に一通り透過領域150が設けられるので、輝度等は均一になる。また、パララックスバリアの水平方向の移動に関しては、4本の水平ラインそれぞれが独立し、シフト方向とシフト量が異なるため、実施例1〜3と比較してパララックスバリアが流れているのがより目立たなくなる。
【0045】
さらに、実施例4では、実施例1〜3の如く、任意の時点において水平方向の奇数番目の画素または偶数番目の画素が全て同時に遮光領域152となることがないため、実質的な解像度も本来の透過部110の解像度と等しくなる。
【0046】
(実施例5)
上述した実施例4では、水平方向の透過領域150の流れを観察者に意識させることなく、実質的な解像度を上げることができる。しかし、図6を参照して理解できるように、透過領域150によって形成される透過部110全体の模様が垂直下方向に流れている。したがって、観察者によっては、透過領域150のシフトを認識してしまう場合がある。そこで、実施例5では垂直方向のシフトまでも一方向に偏らせないようにしている。
【0047】
透過制御部130は、実施例4同様、4水平画素×4水平ラインからなるブロック160単位で同一の制御を行い、そのブロック160において同一のタイミングで2以上の透過領域を同一の水平画素位置および同一の水平ラインに配置しないよう、かつ、4回のシフトによってブロック160内の全ての領域が1回透過領域に切り換わるようにシフト制御する。
【0048】
図7は、実施例5における透過領域150の他のシフト制御を説明するための説明図である。実施例5において、透過制御部130は、4水平画素×4水平ラインのブロック160に関し、水平ライン毎に独立してシフト制御する。
【0049】
第1ライン162に関し、透過制御部130は、図7(a)の状態から新たなフレームが取得されると、透過領域を水平右方向に1画素シフトし、透過部110を図7(b)の状態に移行させる。次に、透過制御部130は、フレームに同期して透過領域150を水平右方向に2画素シフトし、透過部110を図7(c)の状態に移行させる。続いて、透過制御部130は、フレームに同期して透過領域150を水平左方向に1画素シフトし、透過部110を図7(d)の状態に移行させる。最後に透過制御部130は、フレームに同期して透過領域150を水平左方向に2画素シフトし、透過部110を図7(a)の状態に移行させる。その後、透過部110は図7(a)〜図7(d)の状態を周期的に繰り返す。したがって、透過制御部130は透過領域150を4画素間で、右1画素→右2画素→左1画素→左2画素とシフトすることとなる。
【0050】
同様に、第2ライン164に関して、透過制御部130は、透過領域150を4画素間で、右1画素→左3画素→右1画素→右1画素とシフトし、第3ライン166に関して、透過制御部130は、透過領域150を4画素間で、左1画素→右2画素→右1画素→左2画素とシフトし、第4ライン168に関して、透過制御部130は、透過領域150を4画素間で、左1画素→左1画素→左1画素→右3画素とシフトする。表示制御部132は、透過領域150のシフトに対応させて表示領域154Rを適宜水平右方向または水平左方向にシフトさせる。
【0051】
実施例5においても、透過領域150を画素単位でシフトしているので、観察者は透過部110の全画素分に相当する分解能で左眼用映像と右眼用映像とを観察することができ、パララックスバリアを形成しない平面映像の表示時に近い水平解像度が得られるようになる。ここでも、4フレームの間には全ての画素に一通り透過領域150が設けられるので、輝度等は均一になる。
【0052】
さらに、実施例5では、実施例4同様、任意の時点において水平方向の奇数番目の画素または偶数番目の画素が全て同時に遮光領域152となることがないため、実質的な解像度も本来の透過部110の解像度と等しくなる。
【0053】
実施例4では、第1〜第4ラインのシフト制御が異なるものの、そのシフト制御の順番は、右3画素→左2画素→右1画素→左2画素の順番を入れ換えたものとなっていた。ここでは、実施例4と異なり、第1〜第4ラインでそのシフト制御に相関性を持たせないことで垂直方向のシフトまでも認識させないようにすることができる。
【0054】
例えば、裸眼立体映像表示装置100に入力される映像が60Hzである場合において、表示部112の表示領域154に240Hzで映像を表示することが可能であれば、裸眼立体映像表示装置100に入力される映像を透過部110の全画素によって60Hzで表示させることが可能となり、水平方向への映像の流れを意識させることなく、高い水平解像度で立体映像を知覚させることができる。
【0055】
また、コンピュータを、裸眼立体映像表示装置100として機能させるプログラムや当該プログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能なフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM、EEPROM、CD、DVD、BD等の記憶媒体も提供される。ここで、プログラムは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理手段をいう。
【0056】
(裸眼立体映像表示方法)
次に、上述した裸眼立体映像表示装置100を用いて裸眼で立体映像を知覚できるように表示部112に映像を表示する裸眼立体映像表示方法を説明する。
【0057】
透過制御部130は、実施例1〜実施例5のいずれかに従い、水平ライン毎に独立して、透過領域150のシフト方向またはシフト量のうち、少なくとも一方を、少なくとも隣接する水平ライン同士で異なるようにシフトする。表示制御部132は、透過制御部130の透過領域150のシフトに同期して、観察者102が透過領域150を通じて表示部112を観察したとき、観察者102の左右の眼それぞれで視認できる表示部112の表示領域に、水平視差を有する左眼用映像と右眼用映像とをそれぞれ表示する。
【0058】
かかる裸眼立体映像表示方法においても、水平方向への映像の流れを意識させることなく、高い水平解像度で立体映像を知覚させることが可能となる。
【0059】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0060】
例えば、上述した実施形態では、透過制御部130や表示制御部132の制御対象を水平画素単位や水平ライン単位として説明しているが、かかる場合に限られず、水平画素を複数組み合わせたものや、水平ラインを複数組み合わせたものを制御対象とすることができる。
【0061】
また、上述した実施形態では、同一の制御を行う単位を4水平画素×4水平ラインのブロック160としたが、かかる場合に限られず、8水平画素×8水平ライン、16水平画素×16水平ラインといったように、任意の数値を設定できる。
【0062】
また、実施例4や実施例5において、第1〜第4ラインのシフト方向およびシフト量は予め定められているが、ブロック160において同一のタイミングで2以上の透過領域を同一の水平画素位置および同一の水平ラインに配置しないよう、かつ、4回のシフトによってブロック160内の全ての領域が1回透過領域に切り換わりさえすれば、透過領域150をランダムに選択することもできる。この場合、最初のフレームでランダムに1の透過領域150が選択されたら、次のフレームでは、その1の透過領域150の水平画素および水平ラインを除いた1の透過領域150をランダムに選択することとなる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、表示部の前面にパララックスバリアを配置し、特殊な眼鏡を利用することなく、観察者が裸眼で立体映像を観察することが可能なパララックス方式の裸眼立体映像表示装置および裸眼立体映像表示方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
100 …裸眼立体映像表示装置
102a …左眼
102b …右眼
110 …透過部
112 …表示部
130 …透過制御部
132 …表示制御部
150 …透過領域
152 …遮光領域
154 …表示領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配列された複数の領域それぞれを透過領域と遮光領域とで切り換える透過部と、
前記透過領域を水平方向にシフトさせる透過制御部と、
前記透過部の背面側に設けられた表示部と、
前記透過領域のシフトに同期して、観察者が前記透過領域を通じて前記表示部を観察したとき、前記観察者の左右の眼それぞれで視認できる前記表示部の表示領域に、水平視差を有する左眼用映像と右眼用映像とをそれぞれ表示させる表示制御部と、
を備え、
前記透過制御部は、前記透過領域のシフト方向またはシフト量のうち、少なくとも一方を、少なくとも隣接する水平ライン同士で異なるようにシフト制御することを特徴とする裸眼立体映像表示装置。
【請求項2】
前記透過制御部は、3以上の整数nの水平画素×整数nの水平ラインからなるブロック単位で同一の制御を行い、前記ブロックにおいて同一のタイミングで2以上の透過領域を同一の水平画素位置および同一の水平ラインに配置しないよう、かつ、n回のシフトによって前記ブロック内の全ての領域が1回透過領域に切り換わるようにシフト制御することを特徴とする請求項1に記載の裸眼立体映像表示装置。
【請求項3】
マトリクス状に配列された複数の領域それぞれを透過領域と遮光領域とで切り換える透過部と、前記透過部の背面側に設けられた表示部と、を備える裸眼立体映像表示装置を用いた裸眼立体映像表示方法であって、
前記透過領域のシフト方向またはシフト量のうち、少なくとも一方を、少なくとも隣接する水平ライン同士で異なるようにシフトし、
前記透過領域のシフトに同期して、観察者が前記透過領域を通じて前記表示部を観察したとき、前記観察者の左右の眼それぞれで視認できる前記表示部の表示領域に、水平視差を有する左眼用映像と右眼用映像とをそれぞれ表示することを特徴とする裸眼立体映像表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−155162(P2012−155162A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14775(P2011−14775)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】