説明

製パン改良用懸濁液

【課題】 パン生地中にリン脂質を均一に分散することができ、パンのボリュームを増大させ、ソフトで歯切れが良く、風味良好なパンを提供することができる製パン改良剤を提供すること。
【解決手段】 製パン改良剤を、乳固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料が分散した懸濁液とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンのボリュームを増大させ、ソフトで歯切れの良く、風味良好なパンを提供することができる製パン改良用懸濁液に関する。
【背景技術】
【0002】
乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を含むことを特徴とする水中油型乳化脂として、特許文献1があげられる。この特許文献1のような水中油型乳化脂をパンに添加しても製パン改良効果を十分に得ることはできなかった。
この理由としては、特許文献1では、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料もしくは乳由来のリン脂質が油脂側に配向するため、パン生地中に乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料もしくは乳由来のリン脂質を均一に分散しにくく、製パン改良効果を十分に得ることができなかったのではないかと思われる。
【特許文献1】特開2003−299450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、パン生地中に乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料もしくは乳由来のリン脂質を均一に分散することができ、パンのボリュームを増大させ、ソフトで歯切れが良く、風味良好なパンを提供することができる製パン改良用懸濁液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、種々検討した結果、水に乳固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を分散させ懸濁液とすることにより、上記目的を達成する製パン改良剤(製パン改良用懸濁液)が得られることを知見した。
また、この本発明の製パン改良用懸濁液を用いることにより、パンを製造する際に乳化剤やイーストフードを使用しなくとも、パンのボリュームを増大させ、ソフトで歯切れが良く、風味良好なパンを提供することができることも知見した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、乳固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を含有することを特徴とする製パン改良用懸濁液を提供するものである。
また、本発明は、上記の本発明の製パン改良用懸濁液を含有したパン生地並びに該パン生地を加熱処理したパンを提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の製パン改良用懸濁液を用いることにより、パンのボリュームを増大させ、ソフトで歯切れが良く、風味良好なパンを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の製パン改良用懸濁液について詳述する。
本発明の製パン改良用懸濁液は、乳固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料(以下単に乳原料という)を含有する。乳原料の乳固形分中のリン脂質の含有量は、好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上、最も好ましくは5〜40質量%である。製パン改良用懸濁液において上記の乳原料を用いないと、パンのボリュームの増大、ソフト性や歯切れの向上、風味改良の効果が得られない。
本発明の製パン改良用懸濁液には、上記の乳原料を好ましくは0.01〜99質量%、さらに好ましくは0.1〜90質量%、最も好ましくは0.2〜80質量%となるように含有させる。
【0007】
また、上記の乳原料は、牛乳、ヤギ乳、ヒツジ乳、人乳などの乳から製造されたものであるのが好ましく、特に牛乳から製造されたものであるのが好ましい。
上記の乳原料としては、乳固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料であればどのようなものでも構わないが、具体的な例としてクリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分があげられる。
【0008】
上記のクリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の製造方法は、例えば以下の通りである。まず、牛乳を遠心分離して得られる脂肪濃度30〜40質量%のクリームをプレートで加温し、遠心分離機によってクリームの脂肪濃度を70〜95質量%まで高める。次いで、乳化破壊機で乳化を破壊し、再び遠心分離機で処理することによってバターオイルが得られる。本発明で用いられる上記水相成分は、最後の遠心分離の工程でバターオイルの副産物として発生するものである。
【0009】
上記のバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の製造方法は、例えば以下の通りである。まず、バターを溶解機で溶解し熱交換機で加温する。これを遠心分離機で分離することによってバターオイルが得られる。本発明で用いられる上記水相成分は、最後の遠心分離の工程でバターオイルの副産物として発生するものである。該バターオイルの製造に用いられるバターとしては、通常のものが用いられる。
【0010】
本発明では上記の乳原料をさらに濃縮したものや乾燥したもの、冷凍処理をしたものなどを用いることも可能である。溶剤を用いて濃縮したものは風味上の問題から用いないのが好ましい。
【0011】
また、本発明で用いる上記の乳原料は、均質化処理を行っても良い。均質化処理は1回でも良く、2回以上行っても良い。該均質化処理に用いられる均質化機としては、例えば、ケトル型チーズ乳化釜、ステファンミキサーの様な高速せん断乳化釜、スタティックミキサー、インラインミキサー、バブル式ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル、ディスパーミルなどがあげられる。均質化圧力は特に制限はないが、好ましくは0〜100MPaである。2段式ホモゲナイザーを用いて均質化処理をする場合は、例えば、1段目3〜100MPa、2段目0〜5MPaの均質化圧力にて行っても良い。
【0012】
さらに本発明で用いる上記の乳原料は、UHT加熱処理を行っても良い。UHT加熱処理の条件としては特に制限はないが、温度条件は好ましくは120〜150℃であり、処理時間は好ましくは1〜6秒である。
【0013】
また、本発明では、上記の乳原料中のリン脂質の一部または全部がリゾ化されたリゾ化物を使用することもできる。該リゾ化物は、乳原料をそのままリゾ化したものであっても良く、また乳原料を濃縮した後にリゾ化したものであっても良い。また、得られたリゾ化物に、さらに濃縮あるいは噴霧乾燥処理などを施しても良い。これらのリゾ化物は本発明におけるリン脂質の含有量に含めるものとする。
【0014】
上記の乳原料中のリン脂質をリゾ化するには、ホスホリパーゼAで処理すれば良い。ホスホリパーゼAは、リン脂質分子のグリセロール部分と脂肪酸残基とを結びつけている結合を切断し、この脂肪酸残基を水酸基で置換する作用を有する酵素である。ホスホリパーゼAは、作用する部位の違いによってホスホリパーゼA1とホスホリパーゼA2とに分かれるが、ホスホリパーゼA2が好ましい。ホスホリパーゼA2の場合、リン脂質分子のグリセロール部分の2位の脂肪酸残基が選択的に切り離される。
【0015】
本発明で用いる上記の乳原料における乳固形分中のリン脂質の定量方法は、例えば以下のような方法にて測定することができる。但し、抽出方法などについては乳原料の形態などによって適正な方法が異なるため、以下の定量方法に限定されるものではない。
まず、乳原料の脂質をFolch法を用いて抽出する。図1にFolch法のフローを示す。次いで、抽出した脂質溶液を湿式分解法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000 2.1食品成分試験法に記載の湿式分解法に準じる)にて分解した後、モリブデンブルー吸光度法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000 2.1食品成分試験法に記載のリンのモリブデン酸による定量に準じる)によりリン量を求める。求められたリン量から以下の計算式を用いて乳原料の乳固形分100g中のリン脂質の含有量(g)を求める。
リン脂質(g/100g)=〔リン量(μg)/(乳原料−乳原料の水分(g))×25.4×(0.1/1000)
【0016】
また、本発明で用いる上記の乳原料は、乳原料に必要により水や乳糖など資化性糖を添加し、乳酸菌を接種して乳酸発酵物としても良い。この場合、乳酸菌を接種し乳酸発酵物とした乳原料を殺菌後、製パン改良用懸濁液の原料として添加しても良く、殺菌をせずに製パン改良用懸濁液の原料として添加しても良い。
【0017】
このようにして得られる本発明で用いる上記の乳原料や乳原料加工品は、液状、ペースト状、粉末状、固形状などの状態のものとすることができ、本発明の製パン改良用懸濁液ではいずれの状態のものでも使用できる。
【0018】
本発明の製パン改良用懸濁液には、必要により以下のその他の原料を添加することができる。
上記のその他の原料としては、油脂、水、糖類・甘味料、上記の乳原料以外の乳蛋白質、乳清ミネラル、酵素、セルロースやセルロース誘導体、金属イオン封鎖剤、澱粉類、穀類、無機塩、有機酸塩、ジグリセライド、植物ステロール、植物ステロールエステル、食塩、岩塩、海塩、直鎖デキストリン・分枝デキストン・環状デキストンなどのデキストリン類、卵製品、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、臭素酸カリウム、過硫酸アンモニウム、ヨウ素酸カリウムなどの酸化剤、システイン、グルタチオンなどの還元剤、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム、グリシン、しらこたん白抽出物、ポリリジン、エタノールなどの保存料、着香料、苦味料、調味料などの呈味成分、着色料、酸化防止剤、pH調整剤、強化剤などがあげられる。
【0019】
本発明の製パン改良用懸濁液に油脂を添加する場合、油脂の添加量は、好ましくは0質量%以上3質量%未満、さらに好ましくは0質量%以上1.5質量%以下、最も好ましくは0質量%以上0.5質量%以下である。本発明の製パン改良用懸濁液において、油脂の添加量が3質量%以上であると、乳原料中のリン脂質が油脂に配向しやすくなるため、製パン改良効果が得られにくくなる。
【0020】
上記の添加油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、カカオ脂、サル脂、牛脂、豚脂、乳脂、魚油、鯨油などの各種の植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択された一または二以上の処理を施した加工油脂や、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)などがあげられ、これらの油脂の中から選ばれた1種または2種以上の油脂を用いることができる。
【0021】
本発明の製パン改良用懸濁液に添加する水の量は、好ましくは1〜99質量%、さらに好ましくは10〜99質量%、最も好ましくは20〜99質量%である。なお、ここでいう水とは水道水や天然水などの水や、牛乳、液糖などの水分も含めたものとする。
【0022】
上記糖類としては、特に制限されるものではなく、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、乳糖、麦芽糖、還元澱粉糖化物、酵素糖化水飴、酸糖化水飴、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、デキストリンなどがあげられる。また、上記甘味料としては、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア、アスパルテームなどがあげられる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
上記糖類や上記甘味料の添加量は、固形分として好ましくは0〜70質量%、さらに好ましくは0〜60質量%、最も好ましくは0〜50質量%とすると良い。
【0023】
上記の乳原料以外の乳蛋白質としては、特に制限されるものではなく、例えば、ホエイ蛋白質、カゼイン蛋白質の中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。特にホエイ蛋白質を用いるのが好ましい。
上記カゼイン蛋白質としては、αs1−カゼイン、αs2−カゼイン、β−カゼイン、γ−カゼイン、κ−カゼインの各単体や、これらの混合物、若しくはこれらを含有する食品素材であるアルカリカゼイン(カゼイネート)、酸カゼインなどがあげられる。
上記ホエイ蛋白質としては、ラクトアルブミン、βラクトグロブリン、血清アルブミン、免疫グロブリン、プロテオースペプトンの各単体や、これらの混合物、若しくはこれらを含有する食品素材として、乳清蛋白質、ホエイ、ホエイパウダー、脱乳糖ホエイ、脱乳糖ホエイパウダー、ホエイ蛋白質濃縮物(WPC及び/またはWPI)などがあげられる。
上記カゼイン蛋白質及び上記ホエイ蛋白質の両方を含有する食品素材として、例えば、生乳、牛乳、加糖練乳、加糖脱脂れん乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、脱脂乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、バターミルク、バターミルクパウダー、トータルミルクプロテイン(TMP)、脱脂粉乳、全粉乳、ミルクプロテインコンセントレート(MPC)、クリーム、クリームチーズ、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、ヨーグルト、乳酸菌飲料、サワークリ―ム、発酵乳などをあげることができる。
上記の乳原料以外の乳蛋白質の添加量は、好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜5質量%、最も好ましくは0〜2質量%とすると良い。
【0024】
本発明の製パン改良用懸濁液には、乳清ミネラルを添加するのが好ましい。乳清ミネラルを添加した本発明の製パン改良用懸濁液をパンに用いることにより、風味がさらに良好なパンとすることができる。
上記の乳清ミネラルとは、ホエイから乳糖とホエイ蛋白質を除去したもので、乳固形分中の灰分の含有量が大凡10〜90質量%であり、多量の灰分を含有するものである。本発明の製パン改良用懸濁液には、この乳清ミネラルを好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.2〜8質量%、最も好ましくは0.2〜5質量%添加するのが望ましい。
【0025】
上記の酵素としては、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼなどの細胞壁分解酵素類、グルコースオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、パーオキシダーゼなどの酸化酵素、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、イソアミラーゼなどの澱粉分解酵素、プロテアーゼ、リパーゼ、リポキシゲナーゼ、トランスグルタミナーゼなどをあげることができ、市販の酵素製剤を用いることもできる。
【0026】
酵素としてα―アミラーゼを用いる場合、本発明の製パン改良用懸濁液1g中のα―アミラーゼの添加量が、好ましくは0.1〜24FAU、さらに好ましくは0.2〜12FAU、最も好ましくは0.3〜8.5FAUとなるように添加する。
また、パンに本発明の製パン用懸濁液を添加したとき、パンで用いる小麦粉1gに対してα−アミラーゼの添加量が、好ましくは0.01〜0.5FAU、さらに好ましくは0.02〜0.4FAU、最も好ましくは0.04〜0.3FAUとなるように添加する。
酵素としてヘミセルラーゼを用いる場合、本発明の製パン改良用懸濁液1g中のヘミセルラーゼの添加量が、好ましくは1〜300GPU、さらに好ましくは3〜150GPU、最も好ましくは5〜120GPUとなるように添加する。
また、パンに本発明の製パン用懸濁液を添加したとき、パンで用いる小麦粉1gに対してヘミセルラーゼの添加量が、好ましくは0.01〜10.0GPU、さらに好ましくは0.1〜5.0GPU、最も好ましくは1.0〜3.0GPUとなるように添加する。
【0027】
なお、α−アミラーゼ力価(FAU)の測定方法及びヘミセルラーゼ力価(GPU)の測定方法は、それぞれ下記の通りである。
・αアミラーゼ力価の測定方法:
下記(1) 〜(7)の操作により測定する。
(1) 澱粉溶液(※1)5.00mlを試験管に計量する。
(2) 上記試験管を40℃±0.1℃の水浴上に静置する。
(3) サンプル液(※2)1.00mlを上記澱粉溶液に加え混合する。
(4) 正確に12分、14分、16分、18分、20分反応後、各々1mlを量り取り、ヨウ素希釈溶液(※3)5.00mlに加える。
(5) 得られた溶液について、波長620nm、光路長10mmで吸光度を測定する。
(6) 片対数グラフに吸光度とt(時間)をプロットし、吸光度が0.48に相当する時間Tを読み取る。
(7) 次式によりFAU/gを計算する。
FAU/g=0.1×60/A×T
A:サンプル液中に含まれるサンプル量(g)
T:吸光度0.48に相当する時間(分)
※1澱粉溶液
可溶性澱粉5.00gに蒸留水200mlを加えて撹拌しながら3分間沸騰させた後、約25℃まで冷却し、酢酸緩衝液(※4)13mlを加えpH4.8に調整し、さらに蒸留水を加えて250mlとしたもの。
※2サンプル液
15分で吸光度が約0.5となるような濃度になるように調製されたもの。
※3ヨウ素希釈液
「ヨウ化カリウム20.0gを蒸留水300mlに溶解したもの」に、「ヨウ素5.50g及びヨウ化カリウム11.0gを蒸留水100mlに溶解し、蒸留水を加えて250mlとしたもの」を2.00ml加え、さらに蒸留水を加えて500mlとしたもの。
※4酢酸緩衝液
無水酢酸ナトリウム164gを蒸留水500mlに溶解し、これに氷酢酸120gを加えpH4.8になるように調整し、蒸留水を加えて1Lとした酢酸緩衝液。なお、得られた酢酸緩衝液のpHが4.8よりも高い場合は氷酢酸を加えて、pHが4.8となるように調整する。
【0028】
・ヘミセルラーゼ(endo-(1 、4)- β- D-xylanase)力価の測定方法:
下記(1) 〜(9)の操作により測定する。
(1) 3本の試験管に抽出バッファー(※5)1.0mlをそれぞれ採り、サンプル液(※6)50μl、75μl、100μlをそれぞれ加え、40.0℃の水浴上で5分間静置して加温する。
(2) それぞれの試験管にAzurine-crosslinked xylan錠剤(Megazyme社製)を加える(この時撹拌しない)。
(3) 40.0℃にて正確に10分間静置した後、停止液10ml(※7)を加えて、激しく撹拌し、反応を停止する。
(4) この液をWhatman・1ろ紙でろ過する。
(5) それぞれのろ液について、以下のようにして作製したブランクに対して、波長590nmにおける吸光度を測定する。
(6) 試験管に抽出バッファー(※5)1.0mlを採り、40.0℃の水浴上で5分間静置して加温した後Azurine-crosslinked xylan錠剤を加え、正確に10分間静置し、次いで、停止液(※7)10.0mlを加え、撹拌した後、Whatman・1ろ紙でろ過したものをブランクとする。
(7) 標準酵素溶液(※8)について、同様に操作して吸光度を測定する。
(8) 横軸に加えた標準酵素溶液量(μl)、縦軸に吸光度をとり、標準曲線を引く。同様にして、サンプル液ついて曲線を引く。サンプル液についての曲線のほぼ中央の吸光度に相当するサンプル液量を読み取る。さらに、この吸光度に相当する標準酵素溶液量を読み取る。
(9) 標準酵素の力価を100GPU/gとして、次式によりヘミセルラーゼ力価を計算する。
GPU/g =標準酵素の力価×Vstd ×Dt ×Astd / VL ×Dstd ×AL
標準酵素の力価:100
std :標準曲線より読み取った標準酵素溶液量(μl)
t :サンプルの希釈量(ml)
std :標準酵素の質量(g)
L :曲線より読み取ったサンプル液量(ml)
std :標準酵素の希釈量(ml)
L :サンプルの質量(g)
※5抽出バッファー
クエン酸一水和物15.03g及びリン酸水素二ナトリウム・二水和物10.15gを採り、これに蒸留水を加え1000mlにし、pHを必要に応じて3.40に調整したもの。
※6サンプル液
適当量のサンプルに約60mlの蒸留水を加え、約10分間マグネットスターラーで撹拌して酵素を抽出した後、蒸留水を加えて100.00mlとする。この液をWhatmanGF/Aフィルターでろ過し、必要に応じて希釈量を調節して、上記の操作に従って測定したろ液の吸光度が0.2〜1.0の範囲に入るようにしたもの。
※7停止液
1%(W/V)トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン(C4H11NO3
※8標準酵素溶液
ダニスコ社製GRINDAMYLTMS100を標準酵素として、その力価を10000GPU/gとする。標準酵素を上記サンプル液と同様に計量、希釈、ろ過し、必要に応じて希釈量を調節して、上記の操作に従って測定したろ液の吸光度が0.2〜1.0の範囲に入るようにしたもの。
【0029】
上記金属イオン封鎖剤は、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオンなどを封鎖するものであり、その具体例としては、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、ウルトラポリリン酸ナトリウム、第三リン酸カリウムなどの各種リン酸塩、クエン酸、酒石酸などの有機酸塩類、炭酸塩などの無機塩類があげられる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
上記金属イオン封鎖剤の添加量は、好ましくは1質量%以下である。
【0030】
本発明の製パン改良用懸濁液には、レシチン、酵素処理レシチンなどの天然乳化剤、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの合成乳化剤を用いてもよいが、風味や、消費者の間に広まっている天然志向に応える観点から、上記の合成乳化剤を添加しないのが好ましく、さらに好ましくは上記の天然乳化剤や合成乳化剤を用いないのが望ましい。
【0031】
次に、本発明の製パン改良用懸濁液の製造方法について説明する。
本発明の製パン改良用懸濁液は、上記の乳原料と必要によりその他の原料を混合するだけでも構わないが、以下のような工程を行うことが望ましい。
本発明で用いる上記の乳原料とその他の原料を混合した後、加温するのが好ましい。加温温度は好ましくは40〜60℃である。加温する際、酵素は失活するおそれがあるため、加温する場合は酵素をこの時点では添加しないほうが好ましい。
【0032】
上記加温後、均質化機にて均質化するのが好ましい。均質化処理は1回でも良く、2回以上行っても良い。該均質化処理に用いられる均質化機としては、例えば、ケトル型チーズ乳化釜、ステファンミキサーの様な高速せん断乳化釜、スタティックミキサー、インラインミキサー、バブル式ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル、ディスパーミルなどがあげられる。均質化圧力は好ましくは0〜100MPaである。2段式ホモゲナイザーを用いて均質化処理をする場合は、例えば、1段目3〜100MPa、2段目0〜5MPaの均質化圧力にて行なっても良い。
【0033】
さらに必要に応じてUHT加熱処理を行っても良い。UHT加熱処理の条件としては特に制限はないが、温度条件は好ましくは120〜160℃、さらに好ましくは130〜150℃、最も好ましくは139〜146℃であり、処理時間は好ましくは1〜6秒、さらに好ましくは2〜6秒、最も好ましくは4〜6秒である。
【0034】
上記の均質化処理とUHT加熱処理は、乳原料とその他の原料を混合後、均質化処理のみを行っても良く、UHT加熱処理のみを行って良く、UHT加熱処理の前及び/または後に均質化処理を行っても良い。
そして急速冷却、徐冷却などの冷却操作を行っても良い。
本発明の製パン改良用懸濁液に酵素を用いる場合は、冷却後、酵素を添加するのが好ましい。この際、酵素は滅菌ろ過処理などを行い、無菌的に添加するのが望ましい。
【0035】
このようにして得られる本発明の製パン改良用懸濁液は、製パン改良用懸濁液1質量部中、未変性ホエイ蛋白含有量が好ましくは0.003質量部以下、さらに好ましくは0.001質量部以下、最も好ましくは0.0005質量部以下とするのが望ましい。製パン改良用懸濁液1質量部中の未変性ホエイ蛋白含有量が0.003質量部を超えると、発酵阻害のため、パンのボリュームがでにくくなる。なお、上記の未変性ホエイ蛋白含有量は「乳製品試験法・注解(日本薬学会/編)ホエイタンパク指数」に準じて測定されたものである。
【0036】
本発明の製パン改良用懸濁液のpHは特に制限はないが、好ましくは3〜7、さらに好ましくは3.5〜6、最も好ましくは4〜5である。
また、本発明の製パン改良用懸濁液は、ペースト状、液状などの状態のものであるのが好ましい。
【0037】
次に、本発明の製パン改良用懸濁液を含有したパン生地について説明する。
本発明の製パン改良用懸濁液をパン生地に含有させることにより、パン生地に酸化剤、還元剤、酵素、イーストフード、乳化剤、保存料、日持ち向上剤などの添加物を用いないでも、良好なパンを得ることが可能である。
【0038】
本発明のパン生地には、穀粉類、イースト、糖類、甘味料、油脂類、卵類、乳製品、水、食塩、澱粉類、調味料、香辛料、着香料、着色料、ココア、チョコレート、ナッツ類、ヨーグルト、チーズ、抹茶、紅茶、コーヒー、豆腐、黄な粉、豆類、野菜類、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、果物、ハーブ、肉類、魚介類、酸化剤、還元剤、酵素、イーストフード、乳化剤、保存料、日持ち向上剤などを適宜用いることができる。
【0039】
上記穀粉類としては、小麦、薄力粉、中力粉、強力粉、小麦胚芽、全粒粉、小麦ふすま、デュラム粉、大麦粉、米粉、ライ麦粉、ライ麦全粒粉、大豆粉、ハトムギ粉などをあげることができ、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。また、上記穀粉類は国内産のもの、外国産のもののいずれを用いても構わない。
上記糖類としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、乳糖、麦芽糖、還元澱粉糖化物、酵素糖化水飴、酸糖化水飴、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、デキストリンなどがあげられる。また、上記甘味料としては、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア、アスパルテームなどがあげられる。本発明でこれらの糖類や甘味料の中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
【0040】
上記油脂類としては、マーガリン、ショートニング、バター、粉末油脂、液状油などを用いることができる。本発明では、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
上記卵類としては、全卵、卵黄、加糖全卵、加糖卵黄、乾燥全卵、乾燥卵黄、凍結全卵、凍結卵黄、凍結加糖全卵、凍結加糖卵黄、酵素処理全卵、酵素処理卵黄などがあげられる。本発明では、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
【0041】
本発明の製パン改良用懸濁液は、本発明のパン生地で用いる穀粉類100質量部に対し、好ましくは0.1〜30質量部、さらに好ましくは0.1〜20質量部、最も好ましくは0.1〜15質量部含有させるのが良い。
【0042】
次に、本発明のパン生地の製造方法について説明する。
本発明のパン生地は、本発明の製パン改良用懸濁液を生地に練り込むことにより、製造することができる。
本発明のパン生地は、中種法でも、直捏法でも、液種法でも製造することができる。
本発明のパン生地を中種法で製造する場合は、本発明の製パン改良用懸濁液を中種生地及び/または本捏生地に練り込むことにより製造することができる。
本発明のパン生地を直捏法で製造する場合は、本発明の製パン改良用懸濁液を生地に練り込むことにより製造することができる。
本発明のパン生地を液種法で製造する場合は、本発明の製パン改良用懸濁液を液種生地及び/または本捏生地に練り込むことにより製造することができる。
得られた本発明のパン生地は、冷蔵、冷凍保存することが可能である。
【0043】
本発明のパン生地を加熱処理することによりパンが得られる。該加熱処理としては、パン生地を焼成したり、フライしたり、蒸したり、電子レンジ処理したりすることがあげられる。また、得られた本発明のパンを、冷蔵、冷凍保存したり、該保存後に電子レンジ加熱することも可能である。

本発明のパンの種類としては、特に制限はないが、例えば食パン、菓子パン、バラエティーブレッド、バターロール、ソフトロール、ハードロール、スイートロール、デニッシュ、ペストリー、フランスパンなどがあげられる。
【実施例】
【0044】
次に、実施例及び比較例をあげ、本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明を何ら制限するものではない。
【0045】
実施例1(製パン改良用懸濁液1の製造)
クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮乾燥物(リン脂質含有量8.3質量%、蛋白質含有量33質量%、乳固形分96質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量8.6質量%)45質量%を、水55質量%に加え、混合し、55〜60℃に加温した。さらにこれをホモゲナイザーにて均質化圧力3MPaにて均質化後、UHT加熱処理(142℃、4秒)を行った。そして、再度、ホモゲナイザーにて均質化圧力12MPaにて均質化を行った。これを15〜20℃に冷却し、pHが5.9の製パン改良用懸濁液1を得た。
得られた製パン改良用懸濁液1は、該製パン改良用懸濁液1質量部中の未変性ホエイ蛋白含有量が0.0005質量部であった。
【0046】
実施例2(製パン改良用懸濁液2の製造)
クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(リン脂質含有量3.7質量%、蛋白質含有量12質量%、乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)2質量%を、水98質量%に加え、混合し、55〜60℃に加温した。さらにこれをホモゲナイザーにて均質化圧力3MPaにて均質化後、UHT加熱処理(142℃、4秒)を行った。そして、再度、ホモゲナイザーにて均質化圧力12MPaにて均質化を行った。これを5〜10℃に冷却し、pHが6.4の製パン改良用懸濁液2を得た。
得られた製パン改良用懸濁液2は、該製パン改良用懸濁液1質量部中の未変性ホエイ蛋白含有量が0.0001質量部であった。
【0047】
実施例3(製パン改良用懸濁液3の製造)
クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(リン脂質含有量3.7質量%、蛋白質含有量12質量%、乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)2質量%及び乳清ミネラル1質量%を、水96.82質量%に加え、混合し、55〜60℃に加温した。これに発酵乳酸0.18質量%を加えてpHを4.7に調整した。さらにこれをホモゲナイザーにて均質化圧力3MPaにて均質化後、UHT加熱処理(142℃、4秒)を行った。そして、再度、ホモゲナイザーにて均質化圧力12MPaにて均質化を行った。これを5〜10℃に冷却し、製パン改良用懸濁液3を得た。
得られた製パン改良用懸濁液3は、該製パン改良用懸濁液1質量部中の未変性ホエイ蛋白含有量が0.0002質量部であった。
【0048】
実施例4(製パン改良用懸濁液4の製造)
クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(リン脂質含有量3.7質量%、蛋白質含有量12質量%、乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)2質量%、塩化ナトリウム0.05質量%及び塩化カリウム0.15質量%を、水97.8質量%に加え、混合し、55〜60℃に加温した。さらにこれをホモゲナイザーにて均質化圧力3MPaにて均質化後、UHT加熱処理(142℃、4秒)を行った。そして、再度、ホモゲナイザーにて均質化圧力12MPaにて均質化を行った。これを5〜10℃に冷却し、pHが6.4の製パン改良用懸濁液4を得た。
得られた製パン改良用懸濁液4は、該製パン改良用懸濁液1質量部中の未変性ホエイ蛋白含有量は0.0001質量部であった。
【0049】
実施例5(製パン改良用懸濁液5の製造)
クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(リン脂質含有量3.7質量%、蛋白質含有量12質量%、乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)2質量%、水飴46質量%及び蛋白質濃縮ホエイパウダー1.2質量%を、水50.8質量%に加え、混合し、55〜60℃に加温した。さらにこれをホモゲナイザーにて均質化圧力3MPaにて均質化後、UHT加熱処理(142℃、4秒)を行った。そして、再度、ホモゲナイザーにて均質化圧力12MPaにて均質化を行った。これを5〜10℃に冷却し、pHが6.2の製パン改良用懸濁液5を得た。
得られた製パン改良用懸濁液5は、該製パン改良用懸濁液1質量部中の未変性ホエイ蛋白含有量が0.0001質量部であった。
【0050】
実施例6(製パン改良用懸濁液6の製造)
「クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(リン脂質含有量3.7質量%、蛋白質含有量12質量%、乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)75質量%に、水25質量%を加え、混合し、55〜60℃に加温した後、ホモゲナイザーにて均質化圧力12MPaにて均質化したもの」2.7質量%、水飴46質量%及び蛋白質濃縮ホエイパウダー1.2質量%を、水49.92質量%に加え、混合し、55〜60℃に加温した。これに発酵乳酸0.18質量%を加えて、pHを4.7に調整した。さらにこれをホモゲナイザーにて均質化圧力3MPaにて均質化後、UHT加熱処理(142℃、4秒)を行った。そして、再度、ホモゲナイザーにて均質化圧力12MPaにて均質化を行った。これを5〜10℃に冷却し、製パン改良用懸濁液6を得た。
得られた製パン改良用懸濁液6は、該製パン改良用懸濁液1質量部中の未変性ホエイ蛋白含有量は0.0002質量部であった。
【0051】
実施例7(製パン改良用懸濁液7の製造)
クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(リン脂質含有量3.7質量%、蛋白質含有量12質量%、乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)2質量%、水飴46質量%、蛋白質濃縮ホエイパウダー1.2質量%及び乳清ミネラル0.6質量%を、水50.02質量%に加え、混合し、55〜60℃に加温した。これに発酵乳酸0.18質量%を加えて、pHを4.7に調整した。さらにこれをホモゲナイザーにて均質化圧力3MPaにて均質化後、UHT加熱処理(142℃、4秒)を行った。そして、再度、ホモゲナイザーにて均質化圧力12MPaにて均質化を行った。これを5〜10℃に冷却し、製パン改良用懸濁液7を得た。
得られた製パン改良用懸濁液7は、該製パン改良用懸濁液1質量部中の未変性ホエイ蛋白含有量が0.0002質量部であった。
【0052】
実施例8(製パン改良用懸濁液8の製造)
クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(リン脂質含有量3.7質量%、蛋白質含有量12質量%、乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)2質量%、水飴46質量%、蛋白質濃縮ホエイパウダー1.2質量%及び乳清ミネラル0.6質量%を、水49.73質量%に加え、混合し、55〜60℃に加温した。これに発酵乳酸0.18質量%を加えて、pHを4.7に調整した。さらにこれをホモゲナイザーにて均質化圧力3MPaにて均質化後、UHT加熱処理(142℃、4秒)を行った。そして、再度、ホモゲナイザーにて均質化圧力12MPaにて均質化を行った。これを5〜10℃に冷却した後、α−アミラーゼを含有する酵素製剤0.16質量%を滅菌ろ過したものと、α−アミラーゼ及びヘミセルラーゼを含有する酵素製剤0.13質量%を滅菌ろ過したものとを無菌的に添加し、製パン改良用懸濁液8を得た。
得られた製パン改良用懸濁液8は、該製パン改良用懸濁液1質量部中の未変性ホエイ蛋白含有量が0.0002質量部であり、またα―アミラーゼを1.08FAU及びヘミセルラーゼを17.3GPU含有していた。
【0053】
実施例9(製パン改良用懸濁液9の製造)
クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(リン脂質含有量3.7質量%、蛋白質含有量12質量%、乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)2質量%及び蛋白質濃縮ホエイパウダー1.2質量%を、水96.8質量%に加え、混合し、55〜60℃に加温した。さらにこれをホモゲナイザーにて均質化圧力3MPaにて均質化後、低温殺菌(65℃、30分)を行った。そして、再度、ホモゲナイザーにて均質化圧力12MPaにて均質化を行った。これを5〜10℃に冷却し、pHが6.2の製パン改良用懸濁液9を得た。
得られた製パン改良用懸濁液9は、該製パン改良用懸濁液1質量部中の未変性ホエイ蛋白含有量が0.0035質量部であった。
【0054】
実施例10〜18及び比較例1(パン生地及びパンの製造)
実施例1〜9で得られた製パン改良用懸濁液1〜9を用い、表1に示す配合と下記の製法(直捏法)により、実施例10〜18の食パン生地をそれぞれ製造した。また、製パン改良用懸濁液を全く用いず、水の配合量を66.2質量部にしたほかは実施例10〜18と同様の配合と製法により比較例1の食パン生地を製造した。これらの食パン生地を焼成し、食パンをそれぞれ得た。
得られた食パンの比容積、硬さ、歯切れ、風味の評価を表1に示した。
なお、上記の硬さの評価は、得られた食パンを常温で1日保存した後、3cmの厚さにスライスし、半分に圧縮した際の応力を、レオメーター(不動工業株式会社製)にて、直径3cmプランジャーを用い、テーブルスピード6cm/分にて測定した値で示した。
・製法(直捏法)
ミキシング :L3M2H1の後、ショートニングを加え、L2M3H2
捏上温度 :28℃
醗酵条件 :28℃ 90分 (醗酵開始後60分でパンチ)
分割 :330g(ワンローフ)、210g(プルマン)
ベンチタイム:20分
成形 :モルダー成形
ワンローフ
2斤型(プルマン型4ケ詰め)
ホイロ条件 :38℃ 80% 60分
焼成条件 :200℃、30分
【0055】
【表1】

【0056】
実施例19〜22及び比較例2(パン生地及びパンの製造)
実施例5〜8で得られた製パン改良用懸濁液5〜8を用い、表2に示す配合と下記の製法(中種法)により、実施例19〜22の食パン生地をそれぞれ製造した。また、製パン改良用懸濁液を全く用いず、本捏配合の水の配合量を21.2質量部にしたほかは実施例19〜22と同様の配合と製法により比較例2の食パン生地を製造した。これらの食パン生地を焼成し、食パンをそれぞれ得た。
得られた食パンの比容積、硬さ、歯切れ、風味を、実施例10〜18の場合と同様に評価し、その結果を表2に示した。
・製法(中種法)
中種:
ミキシング :L2M2
捏上温度 :24℃
醗酵条件 :28℃ 4時間
本捏:
ミキシング :L3M3の後、ショートニングを加え、L3M4
捏上温度 :28℃
フロアタイム:20分
分割 :380g(ワンローフ)、230g(プルマン)
ベンチタイム:20分
成形 :ワンローフ
3斤型(プルマン型6ケ詰め)
ホイロ条件 :38℃ 80% 50分
焼成条件 :170℃リールオーブン40分
【0057】
実施例23〜26(パン生地及びパンの製造)
実施例5〜8で得られた製パン改良用懸濁液5〜8を用い、実施例19〜22の食パン生地の配合において中種のイーストフード及び乳化剤を全く用いず、本捏のショートニングを乳化剤を含有していない油脂のみからなるショートニングとしたほかは、実施例19〜22と同様の配合と製法により、実施例23〜26の食パン生地をそれぞれ製造した。これらの食パン生地を焼成し、食パンをそれぞれ得た。
得られた食パンの比容積、硬さ、歯切れ、風味を、実施例10〜18の場合と同様に評価し、その結果を表2に示した。
【0058】
【表2】

【0059】
実施例27(製パン改良用懸濁液10の製造)
クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(リン脂質含有量3.7質量%、蛋白質含有量12質量%、乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)8質量%、グラニュー糖34.5質量%及び蛋白質濃縮ホエイパウダー1.2質量%を、水56.3質量%に加え、混合し、55〜60℃に加温した。さらにこれをホモゲナイザーにて均質化圧力3MPaにて均質化後、UHT加熱処理(142℃、4秒)を行った。そして、再度、ホモゲナイザーにて均質化圧力12MPaにて均質化を行った。これを5〜10℃に冷却し、pHが6.2の製パン改良用懸濁液10を得た。
得られた製パン改良用懸濁液10は、該製パン改良用懸濁液1質量部中の未変性ホエイ蛋白含有量が0.0005質量部であった。
【0060】
実施例28(製パン改良用懸濁液11の製造)
クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(リン脂質含有量3.7質量%、蛋白質含有量12質量%、乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)8質量%、グラニュー糖34.5質量%、蛋白質濃縮ホエイパウダー1.2質量%及び乳清ミネラル1質量%を、水55.12質量%に加え、混合し、55〜60℃に加温した。これに乳酸0.18質量%を加えてpHを4.7に調整した。さらにこれをホモゲナイザーにて均質化圧力3MPaにて均質化後、UHT加熱処理(142℃、4秒)を行った。そして、再度、ホモゲナイザーにて均質化圧力12MPaにて均質化を行った。これを5〜10℃に冷却し、製パン改良用懸濁液11を得た。
得られた製パン改良用懸濁液11は、該製パン改良用懸濁液1質量部中の未変性ホエイ蛋白含有量が0.0002質量部であった。
【0061】
実施例29〜31及び比較例3(パン生地及びパンの製造)
実施例27及び28で得られた製パン改良用懸濁液10及び11を用い、表3に示す配合と下記の製法(液種法)により、実施例29〜31の食パン生地をそれぞれ製造した。また、製パン改良用懸濁液を全く用いず、液種配合の水の配合量を122質量部にしたほかは実施例29〜31と同様の配合と製法により比較例3の食パン生地を製造した。これらの食パン生地を焼成し、食パンをそれぞれ得た。
得られた食パンの比容積、硬さ、歯切れ、風味を、実施例10〜18の場合と同様に評価し、その結果を表3に示した。
・製法(液種法)
液種:
ミキシング :ホイッパーにて混合
捏上温度 :25℃
醗酵条件 :25℃で2時間醗酵→15℃で6時間醗酵→3℃で20時間醗酵
本捏:
ミキシング :L3M2H1の後、ショートニングを加え、L3M3H3
捏上温度 :28℃
フロアタイム:90分(60分後パンチ)
分割 :330g(ワンローフ)、210g(プルマン)
ベンチタイム:20分
成形 :モールダー成形
ワンローフ
2斤型(プルマン4ケ詰め)
ホイロ条件 :ワンローフ 38℃ 80% 60分
2斤型プルマン 38℃ 80% 45分
焼成条件 :ワンローフ 200℃ 30分
2斤型プルマン 200℃ 40分
【0062】
【表3】

【0063】
実施例32〜34(製パン改良用懸濁液12〜14の製造)
実施例5の製パン改良用懸濁液5の製造において、水の配合量を表4に示す量とし、加温後に、表4に示す量の発酵乳酸を加えてpHを3.7(実施例32)、4.7(実施例33)、5.7(実施例34)に調整したほかは実施例5の製パン改良用懸濁液5と同様の製法にて、製パン改良用懸濁液12〜14をそれぞれ得た。
得られた製パン改良用懸濁液12〜14は、該製パン改良用懸濁液1質量部中の未変性ホエイ蛋白含有量が0.0001質量部であった。
【0064】
【表4】

【0065】
実施例35〜37(パン生地及びパンの製造)
製パン改良用懸濁液として実施例32〜34で得られた製パン改良用懸濁液12〜14を用いたほかは実施例14と同様の配合と製法により、実施例35〜37の食パン生地をそれぞれ製造した。これらの食パン生地を焼成し、食パンをそれぞれ得た。
得られた食パンの比容積、硬さ、歯切れ、風味を、実施例14の場合と同様に評価し、その結果を表5に示した。なお、表5には、実施例14の食パンの評価結果も併記した。
【0066】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】乳原料の脂質を抽出するためのFolch法のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を含有することを特徴とする製パン改良用懸濁液。
【請求項2】
乳清ミネラルを含有する請求項1記載の製パン改良用懸濁液。
【請求項3】
製パン改良用懸濁液1質量部中の未変性ホエイ蛋白含有量が0.003質量部以下である請求項1または2記載の製パン改良用懸濁液。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の製パン改良用懸濁液を含有したパン生地。
【請求項5】
請求項4記載のパン生地を加熱処理したパン。

【図1】
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【公開番号】特開2006−204130(P2006−204130A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−17733(P2005−17733)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】