説明

製紙スラッジを脱水する方法

【課題】 脱水工程中に強シェアを受ける脱水機にもフロックが破壊せず脱水効率が低下せず、またケーキ含水率が低下する処方を提供する。
【解決手段】 アクリルアミドを主体とする構成単位からなる非イオン性水溶性高分子を添加、混合した後、カチオン性及び/または両性高分子凝集剤を添加、混合した後、脱水機により脱水する場合、前記非イオン性水溶性高分子、カチオン性高分子凝集剤あるいは両性高分子凝集剤を溶解した水溶液の製紙スラッジ添加時粘度が100〜2000mPa・s(25℃、B型粘度計により測定)である溶解液を使用することによって達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製紙スラッジの脱水方法に関するものであり、詳しくは
製紙スラッジに対し、製紙スラッジに対し、アクリルアミドを主体とする構成単位からなる非イオン性水溶性高分子を添加、混合した後、カチオン性及び/または両性高分子凝集剤を添加、混合した後、脱水機により脱水する場合、前記非イオン性水溶性高分子、カチオン性高分子凝集剤あるいは両性高分子凝集剤を溶解した水溶液の製紙スラッジ添加時粘度が25℃、B型粘度計により測定した場合、100〜2000mPa・sであることを特徴とする製紙スラッジを脱水する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥を脱水する場合、従来、カチオン性凝集剤が使用されていたが、難脱水性汚泥の場合は、無機凝集剤を添加した後、カチオン性有機高分子凝集剤を併用する処方(特許文献1)あるいは同様な処方で両性有機高分子凝集剤併用(特許文献2)、無機凝集剤、アニオン性凝集剤およびカチオン性凝集剤の三種を併用する処方(特許文献3)、また、非イオン性ポリビニルアルコ−ルとカチオン性及び/または両性凝集剤を併用する処方などが開示されている。しかし、汚泥の変動に対して十分対応でき、安定的処理が可能で、脱水ケ−キの含水率が十分低下し、脱水後の工程を効率よく行えるかなど考慮した場合、まだまだ完全な処方というのは、提案されていないのが現状である。また塩水溶液中でイオン性高分子分散剤を共存下させる分散重合法により製造した高分子分散液からなる非イオン性水溶性高分子を添加、混合した後、カチオン性及び/または両性高分子凝集剤添加する方法が開示されている(特許文献4)。しかしこの方法は、塩水溶液中で分散重合したため高分子が特殊な構造を有するため水溶液粘度が低い。そのためスラッジへの高分子の分散が良いためフロックが早く生成するかわりに、フロックが先に壊れてしまうという問題がある。特にスクリュープレスなどの脱水機を使用する場合、スラッジが「煉られる」ためフロックの壊れが激しい。
【特許文献1】特開平7−214100号公報
【特許文献2】特開平4−322800号公報
【特許文献3】特開平8−52477号公報
【特許文献4】特開2001−286899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、スクリュープレスなどのような製紙スラッジが「煉られ」、フロックに強いシェアのかかる状態が発現する脱水機に対しても効率よく脱水処理が行え、かつ脱水ケ−キの含水率が従来の処方よりも低下させることができる製紙スラッジの脱水方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は上記課題を解決するため、詳細な検討を行った結果、以下に述べるような発明に達した。すなわち本発明の請求項1の発明は、製紙スラッジに対し、アクリルアミドを主体とする構成単位からなる非イオン性水溶性高分子を添加、混合した後、カチオン性及び/または両性高分子凝集剤を添加、混合した後、脱水機により脱水する場合、前記非イオン性水溶性高分子、カチオン性高分子凝集剤あるいは両性高分子凝集剤を溶解した水溶液の製紙スラッジ添加時粘度が100〜2000mPa・s(25℃、B型粘度計により測定)であることを特徴とする製紙スラッジを脱水する方法である。
【0005】
請求項2の発明は、前記非イオン性水溶性高分子の製品形態が粉末あるいは油中水型エマルジョンであることを特徴とする請求項1に記載の製紙スラッジを脱水する方法である。
【0006】
請求項3の発明は、前記非イオン性水溶性高分子の製品形態が塩水溶液中デイスパージョンであることを特徴とする請求項1に記載の製紙スラッジを脱水する方法である。
【0007】
請求項4の発明は、カチオン性及び/または両性高分子凝集剤中のカチオン性基、アニオン性基及び非イオン性基を有する繰り返し単位のモル%をそれぞれa、b、cとするとき、10≦a≦60、0≦b≦30、10≦c≦90、ただしa+b+c=100であることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の製紙スラッジを脱水する方法である。
【0008】
請求項5の発明は、脱水機がベスクリュープレスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製紙スラッジを脱水する方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製紙スラッジを脱水する方法は、製紙スラッジに対し、製品形態が粉末あるいは油中水型エマルジョンであるアクリルアミドを主体とする構成単位からなる非イオン性水溶性高分子を添加、混合した後、カチオン性及び/または両性高分子凝集剤を添加、混合した後、脱水機により脱水する場合、前記非イオン性水溶性高分子溶解液を溶解した水溶液の製紙スラッジ添加時粘度が100〜2000mPa・s(25℃、B型粘度計により測定)であることを特徴とする。また前記非イオン性水溶性高分子の分子量は、500万以上、2000万以下であることが好ましい。また前記カチオン性及び/または両性高分子凝集剤中のカチオン性基、アニオン性基及び非イオン性基を有する繰り返し単位のモル%をそれぞれa、b、cとするとき、10≦a≦60、0≦b≦30、10≦c≦90、ただしa+b+c=100であることが好ましい。そして脱水機はベスクリュープレスであることが最も適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
初めに油中水型エマルジョンであるアクリルアミドを主体とする構成単位からなる非イオン性水溶性高分子に関して説明する。油中水型水溶性高分子エマルジョンの合成方法は以下のように行う。(A)アクリルアミドを主体とし、その他非イオン性水溶性ビニル単量体、(B)水、(C)少なくとも一種類の炭化水素からなる油状物質、(D)油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤を混合し、強攪拌し油中水型エマルジョンを形成させた後、重合することにより合成する。(A)のその他共重合する非イオン性水溶性ビニル単量体としては以下のようなものが上げられる。すなわちN,N−ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどである。その他共重合する非イオン性水溶性ビニル単量体の比率としては、5〜
30モル%であり、好ましくは5〜20モル%である。
【0011】
(C)の炭化水素からなる油状物質の例としては、パラフィン類あるいは灯油、軽油、中油などの鉱油、またはこれらと実質的に同じ範囲の沸点や粘度などの特性を有する炭化水素系合成油、あるいはこれらの混合物があげられる。
【0012】
(D)の油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤の例としては、HLB3〜6のノニオン性油溶性界面活性剤があり、その具体例としては、ソルビタンモノオレ−ト、ソルビタンモノステアレ−ト、ソルビタンモノパルミテ−トなどがあげられる。またノニオン性水溶性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル系、ポリオキシエチレンアルコールエ−テル系、ポリオキシエチレンアルキルエステル系などである。具体的には、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレートなどである。これら界面活性剤の添加量としては、油中水型エマルジョン全量に対して0.5〜10重量%であり、好ましくは1〜5重量%である。
【0013】
(A)〜(D)を混合し、乳化機などにより油中水型エマルジョンを形成させた後、窒素置換を行い、一定の重合温度に油中水型エマルジョンを設定した後、ラジカル重合開始剤によって重合を開始させる。開始剤としては、アゾ系,過酸化物系、レドックス系いずれでも重合することが可能である。油溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、1、1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2、2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオネ−ト)、4、4’−アゾビス(4−メトキシル2、4−ジメチル)バレロニトリルなどがあげられる。
【0014】
水溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物、4、4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)などがあげられる。またレドックス系の例としては、ペルオクソ二硫酸アンモニウムあるいはカリウムと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどとの組み合わせがあげられる。さらに過酸化物の例としては、ペルオクソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、ベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t-ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエ−トなどをあげることができる。
【0015】
重合温度としては、0〜80℃で可能であるが、好ましくは20〜60℃である。重合濃度は、一般的に10〜60重量%であるが、好ましくは20〜50重量%が重合反応を制御し易く、また製造の効率も良い。
【0016】
非イオン性水溶性単量体の他、架橋性の単量体、例えばメチレンビスアクリルアミドやエチレングルコ−ルジ(メタ)アクリレ−トなどの多官能性単量体、あるいはN、N−ジメチルアクリルアミドのような熱架橋性単量体などを適宜共重合し、共重合体を改質し、いろいろな排水に対応するよう性能の改良を行うことも可能である。
【0017】
本発明の油中水型エマルジョンは重合後、転相剤と呼ばれる親水性界面活性剤を添加して油の膜で被われたエマルジョン粒子が水になじみ易くし、中の水溶性高分子が溶解しやすくする処理を行い、水で希釈しそれぞれの用途に用いる。親水性界面化成剤の例としては、カチオン性界面化成剤やHLB9〜15のノニオン性界面化成剤であり、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル系などである。ただし水溶性界面活性剤を使用し、乳化後重合し得た油中水型エマルジョンでは、上記親水性界面活性剤は必要ない場合があり、また必要でも少量で済む。
【0018】
油中水型エマルジョンを構成する高分子の分子量としては、500万〜2000万であり、好ましくは、800万〜2000万である。500万以下では凝集力が不足し脱水効果が低下し、2000万以上では、フロックが巨大化し、返って脱水スラッジの含水率が低下しない。また、溶液粘度も高くなり過ぎ分散性も悪くなるほか、水溶液の取り扱いも悪くなる。
【0019】
次に製品形態が粉末であるアクリルアミドを主体とする構成単位からなる非イオン性水溶性高分子に関して説明する。化学組成、分子量などは、上記油中水型エマルジョンと同様である。重合方法は、高濃度の水溶液を重合し、ミートチョッパーなどで粉砕後、乾燥し再度細粒化し粉末とする、あるいは油中水型分散重合し、高分子からなる粒状物を乾燥する、または油中水型エマルジョンを重合後、スプレードライヤーなどにより噴霧乾燥し粉末状物を得るなど重合法、製造法は任意である。
【0020】
次に塩水溶液中デイスパージョンに関して説明する。本発明で使用する分散重合法により製造された高分子デイスパージョンからなる非イオン性水溶性高分子は、非イオン性単量体を含有する水溶性単量体を、塩水溶液中で該塩水溶液に可溶なイオン性高分子からなる分散剤共存下で分散重合法により製造された高分子分散液である。本発明で使用する高分子分散液からなる非イオン性水溶性高分子を製造する際、分散剤としてはアニオン性、カチオン性のいずれの高分子でも使用することができる。カチオン性高分子としては、カチオン性単量体の単独重合体あるいは共重合体、あるいは非イオン性単量体との共重合体が使用可能である。カチオン性単量体の例としては、ジアリルアミン系単量体あるいは(メタ)アクリル系単量体である。すなわち、ジメチルジアリルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物などがあげられ、これら単量体の一種または二種以上を含む(共)重合体である。非イオン性単量体の例としては、アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N、N−ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−トのなどである。一方、アニオン性高分子としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸などの単独重合体やこれら単量体を組み合わせた共重合体である。また前記の非イオン性単量体との共重合体も使用可能である。
【0021】
これら高分子デイスパージョンは、単独のイオン性高分子でも使用可能であるが、複数のカチオン性高分子あるいはアニオン性高分子をそれぞれ二種以上組み合わせても使用可能である。また、これら高分子分散剤の単量体に対する添加量としては、100:1〜10:1であり、好ましくは50:1〜20:1である。100:1以下では、分散剤としての効果がなく、10:1以上では、コスト的に不利になるし、生成した高分子デイスパージョンの性質が異なったものになり、本発明の目的から外れる。
【0022】
重合時使用する塩類としては、ナトリウムやカリウムのようなアルカリ金属イオンやアンモニウムイオンとハロゲン化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオンなどとの塩であるが、多価陰イオンとの塩がより好ましい。塩類溶液の濃度としては、5重量%以上、飽和濃度以下である。
【0023】
次に非イオン性水溶性高分子と組み合わせて使用するカチオン性及び/または両性高分子凝集剤に関して説明する。すなわちアクリル系カチオン性単量体、たとえば、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルやジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの無機酸や有機酸の塩、あるいは塩化メチルや塩化ベンジルによる四級アンモニウム塩の単独重合体、あるいはアクリルアミドとの共重合体である。例えば単量体として、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物などがあげられ、これら単量体と非イオン性単量体との共重合体である。共重合する単量体としてはアクリルアミドが好ましい。また(メタ)アクリル酸などアニオン性単量体を共重合することにより両性高分子を合成し使用することもできる。また、これらアクリル系高分子に限らず、ジメチルジアリルアンモニウム塩化物(共)重合体、ポリビニルアミン系高分子、ポリアミジン系高分子も使用可能である。
【0024】
カチオン性及び/または両性高分子凝集剤中のイオン性基のモル%は、以下のようになる。すなわち製紙スラッジは繊維分が多く、非イオン性の水溶性高分子でも凝集は発生する。第一段階の非イオン性水溶性高分子の添加により処理できなかったアニオン性成分を凝集させるため、あるいは第一段階で生成したフロックを強化させるため第二段階のカチオン性及び/または両性高分子凝集剤の添加が必要である。そのためカチオン性としては、高くなくとも十分である。従ってカチオン性基、アニオン性基及び非イオン性基を有する繰り返し単位のモル%をa,b,cとするとき(ただしa+b+c=100)、10≦a≦60であり、好ましくは10≦a≦40である。またbは0≦b≦30であり好ましくは0≦b≦20である。さらにcは、10≦c≦90であり、好ましくは、30≦c≦90である。aが10以下では、カチオン性が低く脱水効率が低下する。またbが30以上では、アニオン性が強すぎ、カチオン性基の効果が発現せず使用できない。
【0025】
これらカチオン性あるいは両性高分子凝集剤の分子量は、500万〜2000万であるが、好ましくは500万〜1500万である。500万以下では凝集力が不足し、2000万以上では、凝集力が高すぎ、フロックが巨大化してかえって脱水性が低下する。また、溶液粘度も高くなり過ぎ分散性も悪くなるほか、水溶液の取り扱いも悪くなる。
【0026】
これらカチオン性及び/または両性高分子凝集剤は、粉末品、油中水型エマルジョン重合法による製品、水溶液品など特に限定はされず、適宜使用する。
【0027】
非イオン性高分子の製紙スラッジに対する添加量としては、製紙スラッジ中の全ssに対し0.05重量パ−セント〜0.5重量パ−セント、好ましくは0.05重量パ−セント〜0.2重量パ−セントである。また、カチオン性及び/または両性高分子凝集剤の添加量としては、0.05重量パ−セント〜0.5重量パ−セント、好ましくは0.05重量パ−セント〜0.2重量である。添加順序としては、非イオン性水溶性高分子を最初に加え、その後、カチオン性及び/または両性高分子凝集剤を加える。
【0028】
本発明の非イオン性水溶性高分子を使用した製紙スラッジに対する脱水法は、アニオン性高分子凝集剤とカチオン性高分子凝集剤とを組み合わせて処理する場合のアニオン性高分子凝集剤の添加量に較べ、減少させることが出きる。アニオンとカチオンとの電気的な相互作用とは異なった作用で凝集が起きているものと推定される。詳細はまだ解明されていないが、製紙スラッジを主体とした汚泥であるため、アニオン性のコロイド性物質の含有量が少なく、パルプのような不安定な懸濁物質が多く存在する結果、非イオン性水溶性高分子中のポリアクリルアミド構成単位が水素結合作用を発現させ、パルプ繊維を架橋吸着的に凝集させる。その後、更にカチオン性あるいは両性凝集剤によって更に大きくかつ強力なフロックに成長させるものと推定される。
【0029】
脱水機は、デカンタ−、フィルタ−プレス、ベルトプレスあるいはスクリュウ−プレスなど従来からの機種を用いて脱水処理が行えるが、スクリュ−プレスなどのようなフロックが「煉られる」脱水機に適している。そのため本発明では、溶液粘度が高く、製紙スラッジへの分散が遅い処方を検討した。そのためフロックの生成がゆっくりと起こり、その結果生成したフロックの崩壊も遅くなる。スクリュープレスなどの脱水機は、スクリューによってスラッジを押し出していくため、その過程でスラッジが「煉られる」ためフロックの壊れが激しい。従って本発明の製紙スラッジの脱水法は、スクリュープレスなどの脱水機に適していると考えられる。以上のような理由により高分子凝集剤を溶解した水溶液の添加時の粘度は、25℃、B型粘度計により測定した場合100〜2000mPa・sであり、好ましくは100〜1200mPa・sである。
【0030】
汚泥としては、製紙工業におけるパルプスラッジ、総合排水汚泥などがあげられる。したがって、上記理由により、本発明の製紙スラッジの脱水方法は従来のアニオン性高分子凝集剤/カチオン性高分子凝集剤処方に較べ、汚泥の処理量のアップ、ケ−キ含水率の低下、それに伴う焼却時の燃料費の低減、廃棄物投棄量の削減、コンポスト等への好影響など利点がある。
【0031】
(実施例)以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
【実施例1】
【0032】
製紙工場より発生する製紙スラッジ汚泥(pH;6.65、SS;19,250mg/L、TS;22,000mg/L)についてスクリュープレス脱水機を対象にした凝集試験及び圧搾試験を実施した。この汚泥200mlをポリビ−カ−に取り、下記表−1に示す非イオン性高分子凝集剤 N−1〜N−3を表1に記載した質量%濃度において、B型粘度計により溶液粘度を測定し(25℃)、各15ppm対液添加し、ビーカー移し替え攪拌を40回行った後、更に両性高分子凝集剤C−1〜C−3を0.1質量%濃度により60ppm/液添加してビーカー移し変え攪拌を20回行ない、生成した凝集フロックの大きさを観察後、40メッシュのナイロン濾布により濾過速度を測定した。また濾過した凝集物をプレス圧4kgf/cm2で脱水してそのケーキ径を測定した後、脱水ケーキを105℃の乾燥機により15時間乾燥することによりケーキ含水率を求めた。
【0033】
(表1)非イオン性、カチオン性あるいは両性高分子凝集剤の組成

DMQ:アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、
AAC:アクリル酸、AAM:アクリルアミド、単位mPa・s
1)溶液粘度:0.05質量%濃度、2)溶液粘度: 0.1質量%濃度、
3)溶液粘度: 0.2質量%濃度、4)溶液粘度: 0.3質量%濃度、
【0034】
その結果、非常に強固な凝集フロック生成及び濾過速度の向上が確認されると共に、脱水ケーキに関する水切れの良さの指標であるプレス脱水後のケーキ径が小さくなると共に良好なケーキ含水率が得られた。これらの結果を表2に示す。






【0035】
(表2)実施例1の結果

【0036】
(比較例1)比較試験として同様な試験操作により、下記表3に示す質量%濃度において、B型粘度計により溶液粘度を測定し(25℃)、各薬品を0.05〜0.1質量%に希釈し溶液粘度を下げ添加した場合、0.05質量%でアニオン性高分子凝集剤A−1及びA−2を添加した場合に関し脱水試験を行なった。これらの結果を表4に示す。
【0037】
(表3)比較試験用溶解液の粘度

DMQ:アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、
AAC:アクリル酸、AAM:アクリルアミド、単位mPa・s
1)溶液粘度:0.05質量%濃度、
2)溶液粘度: 0.1質量%濃度、
【0038】
(表4)比較例1の結果

ケーキ支持性 ○>△>×の順に効果の良いことを表す
【実施例2】
【0039】
製紙工場より発生する製紙スラッジ汚泥(pH;6.73、SS;43,500mg/L、TS;46,000mg/L)についてスクリュウプレス脱水機を対象にした凝集試験及び圧搾試験を実施した。この汚泥200mlをポリビ−カ−に取り、上記表−1に示す非イオン性高分子凝集剤 N−1及びN−2を30ppm/液添加し、ビーカー移し替え攪拌を20回行った後、更に両性高分子凝集剤AM−1及びAM−2を60ppm/液添加してビーカー移し変え攪拌を20回行ない、生成した凝集フロックの大きさを観察後、40メッシュのナイロン濾布により濾過速度を測定した。また濾過した凝集物をプレス圧4kgf/cm2で脱水してそのケーキ径を測定した後、脱水ケーキを105℃の乾燥機により15時間乾燥することによりケーキ含水率を求めた。
【0040】
その結果、非常に強固な凝集フロック生成及び濾過速度の向上が確認されると共に、脱水ケーキに関する水切れの良さの指標であるプレス脱水後のケーキ径が小さくなると共に良好なケーキ含水率が得られた。これらの結果を表5に示す。
【0041】
(表5)実施例2の結果

【0042】
(比較例2)比較試験として同様な試験操作により、上記表3に示すアニオン性高分子凝集剤A−1及びA−2を用いた場合、また0.05質量%に希釈し粘性を下げた場合に関し脱水試験を行なった。これらの結果を表6に示す。
【0043】
(表6)比較例2の結果

ケーキ支持性 ○>△>×の順に効果の良いことを表す







【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙スラッジに対し、アクリルアミドを主体とする構成単位からなる非イオン性水溶性高分子を添加、混合した後、カチオン性及び/または両性高分子凝集剤を添加、混合した後、脱水機により脱水する場合、前記非イオン性水溶性高分子、カチオン性高分子凝集剤あるいは両性高分子凝集剤を溶解した水溶液の製紙スラッジ添加時粘度が100〜2000mPa・s(25℃、B型粘度計により測定)であることを特徴とする製紙スラッジを脱水する方法。
【請求項2】
前記非イオン性水溶性高分子の製品形態が粉末あるいは油中水型エマルジョンであることを特徴とする請求項1に記載の製紙スラッジを脱水する方法。
【請求項3】
前記非イオン性水溶性高分子の製品形態が塩水溶液中デイスパージョンであることを特徴とする請求項1に記載の製紙スラッジを脱水する方法。
【請求項4】
カチオン性及び/または両性高分子凝集剤中のカチオン性基、アニオン性基及び非イオン性基を有する繰り返し単位のモル%をそれぞれa、b、cとするとき、10≦a≦60、0≦b≦30、10≦c≦90、ただしa+b+c=100であることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の製紙スラッジを脱水する方法。
【請求項5】
脱水機がスクリュープレスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製紙スラッジを脱水する方法。











【公開番号】特開2008−194677(P2008−194677A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316556(P2007−316556)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000142148)ハイモ株式会社 (151)
【Fターム(参考)】