説明

製紙用のポリマー−顔料−ハイブリッド

少なくとも1の無機顔料の水性懸濁液を少なくとも1のバインダーの存在下で粉砕し、かつ場合によりこうして得られた水性懸濁液を乾燥させ、かつ乾燥させたポリマー−顔料−ハイブリッドを水中に再分散させることにより得られるポリマー−顔料−ハイブリッドを填料として使用することを特徴とする、少なくとも1のポリマー−顔料−ハイブリッドの水性懸濁液を、紙料に添加し、かつ該紙料を脱水して枚葉紙を形成することにより、填料を含有する紙および填料を含有する紙製品の製造方法、ならびに填料を含有する紙または填料を含有する紙製品を製造するための、上記方法で得られたポリマー−顔料−ハイブリッドの填料としての使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1のバインダーにより処理されている少なくとも1の微粒子状填料の水性懸濁液を紙料に添加し、かつ該紙料を脱水して枚葉紙を形成することにより、填料を含有する紙および填料を含有する紙製品を製造する方法に関する。
【0002】
DE−A2516097から、正のゼータ電位を有する無機粒子の水性懸濁液を樹脂のアニオン性ラテックスと混合し、混合の際の懸濁液中の無機物質の粒子およびラテックス中の樹脂の負電荷および正電荷の平衡を、ほぼ全ての樹脂粒子が無機物質の粒子の表面に結合し、かつこうして得られた被覆後の粒子は、実質的に0のゼータ電位を有するように調整する方法が公知である。しかしラテックス中での無機粒子の処理は、該無機粒子をカチオン性の処理剤、たとえばカチオン性のデンプンにより前処理することが前提となっているため、該粒子は正のゼータ電位を有している。該水性懸濁液は、填料を含有する紙を製造する際に紙料に添加される。
【0003】
WO92/14881から、填料を含有する紙を製造するために、少なくとも部分的にポリマーで被覆されている微粒子状填料の水性懸濁液を製造する方法が公知である。この方法の場合、まず填料の水性懸濁液に紙のためのカチオン性補強剤を添加し、かつその後、紙のための非イオン性および/またはアニオン性の補強剤、あるいはまた紙のための非イオン性またはアニオン性サイズ剤を添加する。しかしカチオン性使用材料は常に、微粒子状填料がカチオン性の電荷を有するような量で使用される。
【0004】
DE−A10209448から、少なくとも部分的にポリマーで被覆されている微粒子状填料の水性懸濁液が公知である。これらの生成物は、無機粒子の水性懸濁液を、紙用塗料のための少なくとも1のバインダーで処理し、たとえばこれらの成分を攪拌することにより混合するか、またはウルトラツラックス装置中で剪断力を作用させることにより得られる。こうして得られたポリマー−顔料懸濁液は、填料を含有する紙を製造するために使用される。
【0005】
少なくとも部分的にポリマーで被覆されている微粒子状填料の別の水性懸濁液は、DE−A10315363に記載されている。これは、微粒子状の填料の水性懸濁液を、(i)少なくとも1のN−ビニルカルボン酸アミドと少なくとも1のモノエチレン性不飽和カルボン酸ならびに場合によりその他のモノマーを共重合し、かつ(ii)引き続き部分的に、または完全にカルボキシアルキル基をポリマーのビニルカルボン酸アミド単位から分離することによりアミノ基の形成下に得られる、少なくとも1の水溶性両性コポリマーで処理することにより得られる。該填料粒子の電気泳動易動度はたとえば、pH7でネガティブであるか、または最大で0となるように調整される。該ポリマーで変性された微粒子状填料の水性懸濁液は、製紙の際に紙料に添加される。填料を含有する紙製品、たとえば紙、板紙または厚紙が得られる。
【0006】
先の出願であるDE102004054913.3から、少なくとも1の無機顔料と、該無機顔料100質量部に対して、40質量部よりも少ない量の少なくとも1の有機ポリマーおよび25質量部より少ない量の水またはその他の溶剤を含有する紙塗工材料が公知である。該紙塗工材料は、乾式被覆法により紙または板紙の上に施与される。これは填料として、たとえば顔料とバインダーとからなる混合物を乾燥することにより、または顔料をバインダーの存在下に粉砕することにより得られる顔料−ポリマーハイブリッドを含有する。
【0007】
先の出願であるDE102004054912.5の対象は、バインダーとしての有機ポリマーと、無機顔料とを含有する水性紙塗工材料であり、この場合、バインダーは少なくとも部分的に顔料−ポリマーハイブリッドの形で存在している。顔料−ポリマーハイブリッドは、無機顔料をバインダーの存在下に粉砕することにより得られる。
【0008】
先の出願であるFR0407806から、少なくとも1の顔料と、少なくとも1のバインダーとを含有し、かつ粉末として、懸濁液または水性分散液として存在する微粒子状のポリマー−顔料−ハイブリッドの製造方法が公知である。該ポリマー−顔料−ハイブリッド粒子は、粉砕装置中で少なくとも1の無機顔料の少なくとも1の水性懸濁液と、少なくとも1のバインダーの少なくとも1の溶液、懸濁液または水性分散液とを一緒に粉砕し、こうして得られた水性懸濁液を場合により乾燥することによって得られる。ポリマー−顔料−ハイブリッドの水性懸濁液は、たとえば少なくとも1の無機顔料を5〜80質量%、少なくとも1のバインダーを1〜30質量%および水を19〜94質量%含有している。
【0009】
本発明の根底には、公知の方法に対して、抄紙機の運転性は同一であるか、または改善され、改善された強度および/または印刷性を有する填料を含有する紙製品が得られる、填料を含有する紙および紙製品の製造方法を提供するという課題が存在していた。
【0010】
前記課題は本発明により、少なくとも1のバインダーにより処理されている少なくとも1の微粒子状填料の水性懸濁液を紙料に添加し、かつ該紙料を脱水して枚葉紙を形成する、填料を含有する紙および填料を含有する紙製品の製造方法において、填料として、少なくとも1の無機顔料の水性懸濁液を、少なくとも1のバインダーの存在下に粉砕し、かつ場合によりこうして得られた水性懸濁液を乾燥させ、かつ乾燥させたポリマー−顔料−ハイブリッドを水中に再分散させることにより得られるポリマー−顔料ハイブリッドを使用する場合に解決される。
【0011】
こうして得られた少なくとも1のポリマー−顔料−ハイブリッドの水性懸濁液は、そのつど乾燥した紙料に対して、5〜60質量%、有利には15〜40質量%の填料含有率を有する紙または紙製品が得られるような量で紙料に添加される。填料の水性懸濁液は、製紙の際に、高粘度パルプとしても、低粘度パルプとしても添加することができる。これらは製紙の際に慣用の添加剤、たとえば内添サイズ剤、定着剤、脱水剤、補強剤、歩留まり向上剤および/または着色剤の存在下で使用することができる。
【0012】
水性の微粒子状顔料−ハイブリッド−懸濁液は、全ての品質の填料含有の紙、たとえば新聞印刷用紙、SC紙(スーパーカレンダー仕上げ紙)、木材不含もしくは木材含有の筆記用紙および印刷用紙を製造するために使用することができる。このような紙を製造するために、たとえば主成分として、砕木、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミカルサーモメカニカルパルプ(CTMP)、生物学的ケミカルサーモメカニカルパルプ(BCTMP)、加圧式砕木パルプ(PGW)ならびに亜硫酸セルロースおよび硫酸セルロースを使用する。填料を含有する紙の面積あたりの質量は、たとえば16〜600g/m2、有利には50〜120g/m2である。紙製品とは、たとえば板紙および厚紙であると理解すべきであり、これらは同様に填料を含有する紙料を脱水することにより製造することができるが、しかし紙に対してより高い面積あたりの質量および異なった構造を有している。
【0013】
高い填料歩留まり率を達成するために、紙料に歩留まり向上剤を添加することが推奨される。歩留まり向上剤はたとえば高粘度パルプにも、低粘度パルプにも添加することができる。歩留まり向上剤として、たとえば高分子のポリアクリルアミド(ポリマーの分子量は、2百万を上回る)、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン単位を有するポリマー、特にポリビニルアミンを使用するか、またはいわゆる超微粒子系を使用し、この場合、まずポリマーのカチオン性歩留まり向上剤を紙料に添加し、次いで紙料を剪断し、かつ引き続きベントナイトまたは微粒子状のケイ酸を、乾燥したセルロースに対して2質量%までの量で添加する。別の超微粒子法によれば、カチオン性ポリマーと、微粒子状の無機成分とからなる超微粒子系を、ヘッドボックス前方の紙料の最後の剪断工程の後で初めて紙料に添加する。
【0014】
木材不含の紙を製造する場合、紙料にさらに、少なくとも1の蛍光増白剤を添加することができる。蛍光増白剤の量は、乾燥した紙料に対してたとえば0.3〜3.0質量%、有利には0.6〜1.5質量%である。
【0015】
製紙の際のポリマー−顔料−ハイブリッドの使用は、高い強度、特に高い表面強度を有する紙が得られるという利点を有する。このような紙を印刷または複写過程で使用する場合、公知の方法で製造された填料を含有する紙と比較して、ダストが低減され、かつロール上での堆積物が低減することが観察される。顔料−ハイブリッドを用いると、その他の顔料を用いて製造した紙に対して、より高い強度に基づいて、顕著に高い填料の含有率を有する填料を含有する紙を製造することが可能である。この利点は、木材を含有しない紙でも、木材を含有する紙でも観察される。ポリマー−顔料−ハイブリッドを使用して製造した填料を含有する紙は、高い表面強度および良好なトナー付着に基づいて、通常はサイズプレス中で行われる、それ以上の表面仕上げを必要としない。ポリマー−顔料−ハイブリッドの使用により、紙の多孔度を制御することができるので、製紙の際に、粉砕度の小さい繊維もまた通常どおりに使用することも可能である。多層紙を製造する際にポリマー−顔料−ハイブリッドを適切に使用することにより、こうして得られた紙の剛性を更に最適化することが可能である。
【0016】
ポリマー−顔料−ハイブリッドを製造するために、たとえば金属酸化物、珪酸塩および/または炭酸塩、特に二酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、たとえば特に三水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、カオリン、タルク、ドロマイト、クレー、ベントナイト、サテンホワイト、炭酸カルシウム、天然由来の硫酸カルシウム(石こう)、化学プロセスからの硫酸カルシウム、および/または硫酸バリウムからなる群からの顔料をベースとする少なくとも1の無機顔料の1〜80質量%の水性懸濁液を、天然および/または合成のバインダーの存在下に粉砕して実施することができる。これらは、通常填料として製紙の際に使用される無機材料である。多くの填料は天然由来の鉱物質または、製造工程での技術において生じる製品、たとえば硫酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムである。製紙の際に使用される顔料もしくは填料は通常、粗大な鉱物質を粉砕することにより得られる。製紙のための顔料を得るために、鉱物材料をたとえば乾式および/または湿式粉砕することが考えられる。ポリマー−顔料−ハイブリッドを製造するために、有利にはすでに予め粉砕された、たとえば1μm〜2mm、有利には1μm〜100μmの範囲の平均粒径を有していてもよい材料から出発する。まず顔料の水性懸濁液を製造する。温度は成分を粉砕する間に広い範囲で変動してもよく、たとえば0〜95℃であってよい。多くの場合、この温度は15〜80℃、特に20〜55℃である。
【0017】
水性懸濁液中の顔料濃度は、有利には15〜60質量%である。この懸濁液に、次いで少なくとも1の天然および/または合成のバインダーを添加し、かつ混合物を引き続き粉砕工程、たとえばボールミル中での粉砕工程に供する。有利であるのは両方の成分の湿式粉砕である。次いでたとえば湿った状態の、0.01〜50μm、たとえば0.1〜30μmの平均粒径を有する微粒子状のポリマー−顔料−ハイブリッドが得られる。
【0018】
しかし両方の成分を乾燥した状態で粉砕することもできる。ポリマー−顔料−ハイブリッドの水性懸濁液は、たとえば噴霧乾燥により乾燥させることができる。
【0019】
ポリマー−顔料−ハイブリッドは、FR−A0407806の例1に記載されているように、自己接着性の特性を有している。
【0020】
ポリマー−顔料−ハイブリッドの製造の際に、たとえばバインダーに対する無機顔料の質量比は、99.9〜1、有利には70〜30の間で選択される。ポリマー−顔料−ハイブリッドの水性懸濁液は、少なくとも1種の無機顔料を、多くの場合5〜80質量%、有利には20〜40質量%、少なくとも1種のバインダーを0.1〜30質量%、有利には5〜20質量%、および水を19〜94質量%、有利には40〜75質量%含有している。
【0021】
特に有利であるのは、その製造のために無機顔料として、石灰、白亜、方解石、大理石および/または沈降炭酸カルシウムの形の炭酸カルシウムを使用するポリマー−顔料−ハイブリッドである。
【0022】
ポリマー−顔料−ハイブリッドを製造するために、天然および/または合成のバインダーを使用することができる。天然のバインダーのための例は、デンプン、カゼイン、タンパク質、カルボキシメチルセルロースおよび/またはエチルヒドロキシエチルセルロースである。
【0023】
合成バインダーとして、たとえば少なくとも40質量%までが、C1〜C20−アルキル(メタ)アクリレート、20個までの炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステル、20個までの炭素原子を有するビニル芳香族化合物、エチレン性不飽和ニトリル、ビニルハロゲン化物、1〜10個の炭素原子を有するアルコールのビニルエーテル、2〜8個の炭素原子および1もしくは2の二重結合を有する脂肪族炭化水素から選択されるいわゆる主モノマーからなるか、またはこれらのモノマーの混合物から構成されているポリマーが考えられる。
【0024】
合成ポリマーとして、特に、エチレン性不飽和化合物(モノマー)のラジカル重合により得られるポリマーが考えられる。
【0025】
有利にはバインダーは、数なくとも40質量%まで、有利には少なくとも60質量%まで、特に有利には少なくとも80質量%までが、いわゆる主モノマーからなるポリマーである。
【0026】
主モノマーは、C1〜C20−アルキル(メタ)アクリレート、20個までの炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステル、20個までの炭素原子を有するビニル芳香族化合物、エチレン性不飽和ニトリル、ビニルハロゲン化物、1〜10個の炭素原子を有するアルコールのビニルエーテル、2〜8個の炭素原子および1もしくは2の二重結合を有する脂肪族炭化水素から選択されるか、またはこれらのモノマーの混合物である。
【0027】
たとえばC1〜C10−アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、たとえばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、エチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。
【0028】
特に(メタ)アクリル酸アルキルエステルの混合物も適切である。
【0029】
1〜20個の炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステルは、たとえばビニルラウレート、ビニルステアレート、ビニルプロピオネート、吉草酸ビニルエステルおよびビニルアセテートである。
【0030】
ビニル芳香族化合物として、ビニルトルエン、α−およびp−メチルスチレン、α−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレンおよび有利にはスチレンが考えられる。ニトリルのための例は、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルである。
【0031】
ビニルハロゲン化物は、塩素、フッ素および臭素により置換されたエチレン性不飽和化合物、有利には塩化ビニルおよび塩化ビニリデンである。
【0032】
ビニルエーテルとして、たとえばビニルメチルエーテルまたはビニルイソブチルエーテルが挙げられる。有利であるのは、1〜4個の炭素原子を有するアルコールのビニルエーテルである。
【0033】
2〜8個の炭素原子および1もしくは2のオレフィン性二重結合を有する炭化水素として、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレンおよびクロロプレンが挙げられる。
【0034】
有利な主モノマーは、C1〜C10−アルキル(メタ)アクリレートおよびアルキル(メタ)アクリレートとビニル芳香族化合物、特にスチレンとのC1〜C10−アルキル(メタ)アクリレート(これらの主モノマーとのポリマーをまとめて略してポリアクリレートとよぶ)、または代替的に、2の二重結合を有する炭化水素、特にブタジエン、またはこのような炭化水素とビニル芳香族、特にスチレンとの混合物(これらの主モノマーとのポリマーをまとめて略してポリブタジエンとよぶ)。
【0035】
脂肪族炭化水素(特にブタジエン)と、ビニル芳香族化合物(特にスチレン)との混合物の場合、比率はたとえば10:90〜90:10、特に20:80〜80:20であってよい。
【0036】
該ポリマーは、主モノマー以外に、少なくとも1の酸基を有するモノマー(略して酸モノマー)、たとえばカルボン酸基、スルホン酸基またはホスホン酸基を有するモノマーを含有していてもよい。有利であるのは、カルボン酸基である。たとえばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸またはフマル酸が挙げられる。
【0037】
別のモノマーはさらに、たとえばヒドロキシ基を有するモノマー、特にC1〜C10−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドである。
【0038】
従って特に有利なポリマーは、ポリブタジエンの場合には、
2の二重結合を有する脂肪族炭化水素、特にブタジエン 10〜90質量%、
ビニル芳香族化合物、特にスチレン 10〜90質量%、有利には30〜80質量%、
酸モノマー 0〜20質量%、有利には0〜10質量%、
別のモノマー 0〜20質量%、有利には0〜10質量%
から構成されているか、または代替的に、ポリアクリレートの場合には
1〜C10−アルキル(メタ)アクリレート 10〜95質量%、有利には30〜95質量%、
ビニル芳香族化合物、特にスチレン 0〜60質量%、有利には0〜50質量%、および
酸モノマー 0〜20質量%、有利には0〜10質量%ならびに
別のモノマー 0〜20質量%、有利には0〜10質量%
から構成されている。
【0039】
ポリブタジエンも、ポリアクリレートも、有利には酸モノマーをコモノマーとして、有利には1〜5質量%の量で含有している。ポリブタジエンの場合の上記の脂肪族炭化水素、もしくはポリアクリレートの場合にはアルキル(メタ)アクリレートの最大量は、相応して酸モノマーの最小量の分だけ低減する。
【0040】
ポリマーの製造は、有利な実施態様では、乳化重合により行われるので、このポリマーはエマルションポリマーである。しかし該ポリマーは溶液重合および引き続き水中でのポリマーの分散により製造することもできる。
【0041】
乳化重合の場合、通常のイオン性および/または非イオン性の乳化剤および/または保護コロイドもしくは安定剤を界面活性化合物として使用する。
【0042】
界面活性物質はたとえば重合性モノマーに対して0.1〜10質量%の量で使用する。
【0043】
乳化重合のための水溶性開始剤はたとえばペルオキシ二硫酸のアンモニウム塩またはアルカリ金属塩、たとえばペルオキソ二硫酸ナトリウム、過酸化水素または有機過酸化物、たとえばt−ブチルヒドロペルオキシドである。
【0044】
いわゆる還元酸化(レドックス)開始剤系もまた適切である。
【0045】
開始剤の量は一般に、重合すべきモノマーに対して0.1〜10質量%、有利には0.5〜5質量%である。複数の、異なった開始剤を乳化重合の際に使用することもできる。
【0046】
重合の際に調節剤を、たとえば重合すべきモノマー100質量部に対して0〜0.8質量部の量で使用することができ、これによりモル質量が低減される。たとえばチオール基を有する化合物、たとえばt−ブチルメルカプタン、チオグリコール酸エチルアクリルエステル、メルカプトエチノール、メルカプトプロピルトリメトキシシランまたはt−ドデシルメルカプタンが適切である。
【0047】
乳化重合は通常、30〜130℃、有利には50〜90℃で行う。重合媒体は、水のみからなっていても、水および水と混和可能な液体、たとえばメタノールからなる混合物からなっていてもよい。有利には水のみを使用する。乳化重合は、回分法としても、段階的な方法もしくは勾配法を含む供給法の形でも実施することができる。有利であるのは、重合バッチの一部を装入し、重合温度に加熱し、重合を開始し、かつ引き続き残りの重合バッチを、通常は、その1もしくは複数がモノマーを純粋な形で、または乳化された形で含んでいる、複数の空間的に分離された供給部を介して連続的に、段階的に、または濃度勾配を重ねて、重合を維持しながら重合帯域に供給する。重合の際に、たとえば粒径をより良好に調整するために、ポリマーシードを装入することもできる。
【0048】
開始剤がラジカル水性乳化重合の過程で重合容器に添加される種類および方法は、平均的な当業者に公知である。これは完全に重合容器に装入しても、あるいはまたラジカル水性乳化重合の過程でのその消費の程度に応じて連続的に、もしくは段階的に使用することもできる。個別的にはこれは開始剤系の化学的性質にも、重合温度にも依存する。有利には一部を装入し、かつ残りを重合帯域の消費の程度に応じて供給する。
【0049】
残留モノマーを除去するために、通常は本来の乳化重合の終了後にも、つまり少なくとも95%のモノマーが反応した後に開始剤を添加する。
【0050】
個々の成分は、供給法の場合には上部から、側方から、または下部から反応器の底部を介して反応器に添加することができる。
【0051】
乳化重合の際に、通常15〜75質量%、有利には40〜75質量%の固体含有率を有するポリマーの水性分散液が得られる。
【0052】
バインダーとして特に種々のバインダーの混合物、たとえば合成および天然のポリマーの混合物も適切である。有利には、少なくとも60質量%までがブタジエンまたはブタジエンとスチレンとの混合物から構成されている水性ポリマー分散液、または少なくとも60質量%までがC1〜C20−アルキル(メタ)アクリレートまたはC1〜C20−アルキル(メタ)アクリレートとスチレンとの混合物を共重合して含有しているポリマーの水性分散液をバインダーとして使用する。
【0053】
その他の適切なバインダーは、少なくとも10000の平均モル質量Mwを有するビニルホルムアミド単位および/またはビニルアミン単位を有するポリマーである。これらのポリマーは、水性分散液として、または水中の溶液として存在していてよい。これらはたとえばN−ビニルホルムアミドを単独で、または少なくとも1のその他の非イオン性、カチオン性および/またはアニオン性モノマーの存在下で重合することにより製造される。こうして製造されたN−ビニルホルムアミドのホモポリマーおよびコポリマーは、重合類似の反応下で、共重合されるビニルホルムアミド単位からホルミル基を分離しながらアミノ基の形成下に加水分解することができる。加水分解は有利には水性媒体中、少なくとも1の酸、たとえば塩酸または硫酸の存在下に、酵素により、または塩基、たとえば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの存在下に行う。ビニルホルムアミド単位は、完全に加水分解されていても、部分的に加水分解されているのみであってもよい。従ってたとえばN−ビニルホルムアミドのホモポリマーが完全に加水分解される場合にはポリビニルアミンが得られる。
【0054】
アニオン性モノマーとしてたとえば酸基を有するモノマーが考えられる。このための例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ビニルホスホン酸、アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリル酢酸、クロトン酸およびエタクリル酸である。アニオン性モノマーは重合の際に遊離酸の形で、または部分的に、もしくは完全にアルカリ金属、アルカリ土類金属および/またはアンモニウム塩基で中和された形で使用することができる。有利には酸のナトリウム塩またはカリウム塩が考えられる。加水分解されていないN−ビニルホルムアミドとアニオン性モノマーとのコポリマーも、たとえば従来技術で挙げたDE−A10315363(特に第5頁第39行目〜第12頁、第39行目を参照のこと)に記載されているような、部分的に、もしくは完全に加水分解されたN−ビニルホルムアミドとアニオン性モノマーとのコポリマーも、無機顔料を変性するためのバインダーとして使用することができる。
【0055】
N−ビニルホルムアミドは、カチオン性モノマー、たとえばジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートおよび/またはジアリルジメチルアンモニウムクロリドと共重合することもできる。この場合、塩基性モノマーは、鉱酸との塩の形で、または部分的に、もしくは完全にアルキルハロゲン化物により、またはジメチル硫酸により四級化された形で使用される。N−ビニルホルムアミドとアニオン性および/またはカチオン性のモノマーとの共重合の際に、場合により付加的に非イオン性モノマー、たとえばメチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、ビニルアセテート、アクリルアミドおよび/またはメタクリルアミドを使用することができる。加水分解されたカチオン性コポリマーも、加水分解されていないカチオン性コポリマーも、無機顔料を変性するためのバインダーとして使用することができる。同様に、たとえばN−ビニルホルムアミド、ジメチルアミノエチルアクリレートメトクロリドとアクリル酸との共重合により得られるか、またはこれらのコポリマーのビニルホルムアミド単位の完全な、もしくは部分的な加水分解により生じる両性ポリマーを使用することができる。ビニルホルムアミド単位および/またはビニルアミン単位を有する、顔料の変性のために使用されるポリマーは、有利には少なくとも20000の平均モル質量Mwを有する。
【0056】
多くの場合、コポリマーの平均モル質量は、30000〜5百万の範囲、特に50000〜2百万の範囲である。モル質量は、たとえば統計学的な光散乱を用いて、10ミリモルの水性食塩溶液中、pH7.6で測定される。
【0057】
ポリマー−顔料−ハイブリッドは、DE−A10209448およびDE−A10315363から公知の、少なくとも部分的にポリマーで被覆され、かつ、少なくとも1のポリマーのバインダーと、または少なくとも1の水溶性の両性の、加水分解されたN−ビニルホルムアミドと、3〜8個の炭素原子を有する少なくとも1のエチレン性不飽和カルボン酸および/またはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアンモニウム塩とのコポリマー水性懸濁液とを混合することにより得られる微粒子状の填料の水性懸濁液を、たとえば>95℃〜140℃、有利には100〜120℃の温度で乾燥させ、かつ乾燥した生成物を場合により粉砕し、かつ分級し、かつこうして得られた、約1〜10μmの平均粒径を有する粉末を水中に分散させることによっても得られる。
【0058】
本発明により使用されるポリマー−顔料−ハイブリッドを製造するための少なくとも1のバインダーの存在下での水性媒体中での無機顔料の粉砕は、有利にはさらに、ポリエチレンワックスおよび場合により少なくとも1の分散剤の存在下に実施することもできる。分散剤として特に、アクリル酸をイソプロパノール中で、高い圧力と、140℃までの温度で重合することにより得られるポリアクリル酸が適切である。分散剤として考慮されるポリアクリル酸は、たとえば1000〜50000、有利には2000〜30000の平均モル質量Mwを有する。顔料を粉砕する際にさらにポリエチレンワックスを使用する場合、たとえば無機顔料に対して、0.1〜10質量%、有利には1〜5質量%の量で使用される。ポリエチレンワックスは公知である。これらはたとえばエチレンと、少なくとも1のエチレン性不飽和カルボン酸との重合により製造される。特に
(A)少なくとも1のエチレン性不飽和カルボン酸26.1〜39質量%、有利には26.3〜35質量%、特に有利には26.5〜38.9質量%、および
(B)エチレン61〜73.9質量%、有利には65〜73.7質量%、特に有利には70〜73.5質量%
の共重合により得られるポリエチレンワックスが適切である。
【0059】
さらに、
(A′)少なくとも1のエチレン性不飽和カルボン酸20.5〜38.9質量%、有利には21〜28質量%、
(B′)エチレン60〜79.4質量%、有利には70〜78.5質量%および
(C′)少なくとも1のエチレン性不飽和カルボン酸0.1〜15質量%、有利には0.5〜10質量%
を共重合して含有するエチレンコポリマーワックスが適切である。
【0060】
上記のエチレンコポリマーワックスは、160℃および325gの負荷でEN ISO1133により測定して、たとえば1〜50g/10分、好ましくは5〜20g/10分、特に有利には7〜15g/10分の範囲の溶融液流量(MFR)を有する。これらの酸価は、DIN53402により測定して、通常100〜300mgKOH/gワックス、有利には115〜230mgKOH/gワックスである。
【0061】
これらは少なくとも45000mm2/s、有利には少なくとも50000mm2/sの溶融液動粘度を有する。エチレンコポリマーワックスの融点範囲は、DIN51007によりDSCによって測定して、たとえば60〜110℃の範囲、有利には65〜90℃の範囲である。
【0062】
エチレンコポリマーワックスの融点範囲は広くてもよく、かつ少なくとも7℃から最高で20℃、有利には少なくとも10℃から最高で15℃の温度範囲を有していてよい。
【0063】
しかしエチレンコポリマーワックスの融点は、狭い変動範囲を有していてもよく、かつ温度範囲はDIN51007により測定して、2℃未満、有利には1℃未満であってもよい。
【0064】
ワックスの密度は、DIN53479により測定して、通常0.89〜1.10g/cm3、有利には0.92〜0.99g/cm3である。本発明により使用される分散液中で使用されるエチレンコポリマーワックスは、交互のコポリマーであっても、ブロックコポリマーであっても、または有利にランダムコポリマーであってもよい。
【0065】
エチレンと、エチレン性不飽和カルボン酸および場合によりエチレン性不飽和カルボン酸エステルとからなるエチレンコポリマーワックスは、有利にはラジカルにより開始される共重合により、高圧条件下で、たとえば攪拌される高圧オートクレーブ中で、または高圧管型反応器中で製造することができる。攪拌される高圧オートクレーブ中での製造が有利である。攪拌される高圧オートクレーブは自体公知であり、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版、キーワード:ワックス、第A28巻、第146頁以降、Verlag Chemie、Weinheim、Basel、Cambridge、New York、Tokio、1996年に記載されている。長さ/直径の比率は主として5:1〜30:1、有利には10:1〜20:1の範囲である。同様に適用可能な高圧管型反応器は、同様にUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版、キーワード:ワックス、第A28巻、第146頁以降、Verlag Chemie、Weinheim、Basel、Cambridge、New York、Tokio、1996年に記載されている。
【0066】
重合のために適切な圧力条件は、500〜4000バール、有利には1500〜2500バールである。この種の条件を以下では高圧とよぶ。反応温度は170〜300℃の範囲、有利には195〜280℃の範囲である。重合は、調節剤の存在下に実施することもできる。上記のワックスはたとえばWO04/108601、第2頁、第38行目〜第12頁第10行目に詳細に記載されている。
【0067】
本発明の対象はさらに、填料を含有する紙、填料を含有する板紙または填料を含有する厚紙を、紙料を脱水して枚葉紙を形成することにより紙料を製造するための、紙料への添加剤としての、
(i)少なくとも1の無機顔料の水性懸濁液を少なくとも1のバインダーの存在下に粉砕することにより、または
(ii)(i)で得られた水性懸濁液を乾燥させ、かつ乾燥したポリマー−顔料−ハイブリッドを水中に再分散させることにより
得られる、ポリマー−顔料−ハイブリッドの水性懸濁液の使用である。
【0068】
紙または紙製品を製造するための本発明による方法では、場合によりポリマー−顔料−ハイブリッド以外に、有機顔料、たとえばWO01/00712およびWO01/00713に記載されているような有機顔料を併用することもできる。有機顔料の割合は、ポリマー−顔料−ハイブリッド100質量部に対して、有利には20質量部未満、特に10質量部未満、特に有利には5質量部未満である。
【0069】
バインダーおよび無機顔料は、少なくとも部分的に顔料−ポリマー−ハイブリッドの形で存在している。これらのハイブリッド中で、有機ポリマーもしくはバインダーは化学的に、または物理的に無機顔料に結合している。特にバインダーは顔料表面に吸着されている。
【0070】
顔料−ポリマー−ハイブリッドは、均一な密度を有する独立した粒子の種類である。統計学的な密度勾配の方法による超遠心分離を用いて顔料−ポリマー−ハイブリッドの密度を測定する際(21℃および1バールで)に、1の密度のみ、つまり1種類の粒子のみが確認される。統計学的な密度勾配を測定するための測定法は、たとえばW.Maechtle、M.D.Lechner、Progr.Colloid Polym.Sci.(2002年)、119、1に記載されている。
【0071】
試料を静的密度勾配(Stat.DG)法で試験するために、比重の低い溶剤と、比重の高い溶剤とからなる混合物(一般にR.メトリザミド(Metrizamid)/H2O、メトリザミド/D2O)を、中程度のローター回転数で少なくとも22時間、遠心分離する。比重の低い溶剤と比重の高い溶剤との異なった沈殿挙動および拡散挙動は、セル中での濃度勾配ひいては密度勾配の形成につながる。従って測定セルのそれぞれの半径方向での位置は、別の異なった溶剤密度を有する。試料もしくは試料の化学的に異なった成分は、これらの密度勾配内で、その粒子密度に相応する軽いか、または重い物質の混合比が存在する半径方向の位置において正確に沈殿するか、または浮遊する。従って密度ひいては化学的な組成による試料の精度の高い分画が可能である。
【0072】
試験されるポリマー(約1g/cm3)、炭酸カルシウム(2.6〜2.95g/cm3、それぞれ変性に応じる)およびポリマー/炭酸塩−ハイブリッド系において、粒子の密度は決定的に異なるので、適切な統計学的密度勾配でハイブリッドを測定することにより、遊離のポリマーの検出もしくは遊離のポリマーの排除を行うことができる。
【0073】
顔料−ポリマー−ハイブリッドは、バインダーおよび無機顔料以外に、別の成分、たとえば分散助剤、たとえば少なくとも1のポリカルボン酸またはこれらの塩、特にポリアクリル酸、またはポリリン酸を含有していることができる。ポリマー−顔料−ハイブリッドの水性懸濁液は、場合により0.01〜2質量%の少なくとも1の分散剤を含有していてよい。
【0074】
実施例
実施例中のパーセンテージの記載は、前後関係からその他の記載が明らかでない限り、質量%を表す。
【0075】
懸濁液1によるポリマー−顔料−ハイブリッドは、Omya社のFR−A0407806の教示により製造した。
【0076】
懸濁液1および懸濁液2で製造した填料の水性懸濁液を、例1ならびに比較例1および2において、それぞれ填料を含有する紙を製造するためのこれらの特性に関して試験した。その際に得られる結果は、第2表にまとめられている。
【0077】
ポリマー−顔料−ハイブリッドの特性決定は、上記の統計学的な密度勾配の方法により行った。
【0078】
顔料もしくはポリマー−顔料−ハイブリッドの平均粒径を、BeckmanのLS230型のCoulter Counter装置を用いてフラウエンホーファーの回折に基づいて測定した。
【0079】
粒径分布測定の試料を、以下に記載されているとおりに調製した:
− 高分子塩S(ポリアクリル酸をベースとする分散剤)0.4gを、0.1質量%のピロリン酸ナトリウム溶液90mlに添加した。
【0080】
− 顔料もしくはポリマー−顔料−ハイブリッド4gを、0.1質量%のピロリン酸ナトリウム90mlに添加した。
【0081】
− 残りの体積を、0.2質量%のピロリン酸ナトリウム溶液で100mlになるまで満たした。
【0082】
− 試料を、3分間攪拌し、かつ引き続き超音波で10分間処理し、かつその後、BeckmanのCoulter Counter装置で測定した。
【0083】
懸濁液1
7.0μmの平均粒径D50を有する炭酸カルシウムの粉末200kgを、羽根型攪拌機でゆっくり攪拌導入して、水1000リットル中に懸濁させた。引き続き、50%の市販の水性スチレン−アクリレート−分散液(Acronal(登録商標)S728)38kgを、攪拌を続けながら炭酸カルシウムスラリーに混合した。さらに、ポリエチレンワックス(Poligen(登録商標)WE4)の25%の市販の水性分散液4kgを、攪拌を続けながら炭酸カルシウムスラリーに混合導入した。その後、該スラリーを飲料水で固体含有率が20%になるまで希釈した。該懸濁液は8.5のpH値を有していた。
【0084】
次いでこの20%顔料懸濁液を、ボールミル中で2.5μmの平均粒径になるまで粉砕した。こうして得られたポリマー−顔料−ハイブリッドの水性懸濁液を試験したが、超遠心分離により遊離したバインダーは見られなかった。
【0085】
懸濁液2(DE−A10209448の教示による)
2.4μmの平均粒径D50を有する炭酸カルシウム粉末(Omyacarb(登録商標)2AV)200kgを、羽根型攪拌機でゆっくり攪拌導入して、水1000リットル中に懸濁させた。引き続き、50%の市販の水性スチレン−アクリレート−分散液(Acronal(登録商標)S728)38kgを、攪拌を続けながら炭酸カルシウムスラリーに混合した。さらに、ポリエチレンワックス(Poligen(登録商標)WE4)の25%の市販の水性分散液4kgを、攪拌を続けながら炭酸カルシウムスラリーに混合導入した。その後、該スラリーに飲料水を添加して固体含有率が20%になるまで希釈した。該懸濁液は8.5のpH値を有していた。
【0086】
こうして超遠心分離を用いて得られた水性懸濁液を試験すると、ポリマー−顔料−混合物中に遊離のポリマー(Acronal(登録商標)S 728およびPoligen(登録商標)WE4が100%見られた。
【0087】
懸濁液3(DE−A10315363の教示による)
1.0μmの平均粒径D50を有する炭酸カルシウムの50%のスラリー(Omyacarb(登録商標)HO)2000kgに、市販の両性コポリマー(Catiofast(登録商標)PR8236)の11%溶液227kgを、攪拌を続けながら混合した。その後、該スラリーを飲料水の添加により、固体含有率が20%になるまで希釈した。該懸濁液は8.5のpH値を有していた。
【0088】
填料を含有する紙を製造するための一般的な規定
漂白したシラカバおよびマツからなる混合物をそれぞれ70/30の質量比で、パルパー中、8%の固体濃度で繊維の束がなくなるまで叩解した。30度のショッパー・リーグラーの粉砕度を設定した。その際、紙料のpH値は7〜8の範囲であった。粉砕した紙料を引き続き、飲料水で固体濃度が約1%になるまで希釈した。
【0089】
カチオン性デンプンとして、Hicat(登録商標)5163Aを、乾燥した紙1トンあたり、8kgの供給量で使用した。
【0090】
蛍光増白剤として、Blankophor(登録商標)PSGを、紙1トンあたり、3kgの供給量で使用した。
【0091】
歩留まり向上剤として、カチオン性歩留まり向上剤(Polymin(登録商標)KE2020)を使用し、その際、歩留まり向上剤の供給量はそれぞれの試験において一定であった(乾燥した紙1トンあたり、0.02kg)。填料の供給量は、該紙料を用いて製造した紙の灰分が30%になるまで変更した。
【0092】
サイズ剤として、AKD(アルキルケテンダイマー)分散液(Basoplast(登録商標)2009LC)を使用し、その際、サイズ剤の供給量は、それぞれの試験において、コブ(Cobb)(60)値が、30g/m2となるように設定した。
【0093】
次いで上記の紙料をそのつど試験抄紙機中で、80g/m2の面積あたりの質量を有する紙へと加工した。この規定に従って、そのつど使用される填料の種類においてのみ相違する、3つの紙を製造した。
【0094】
紙1:填料として、市販の炭酸カルシウム(Omyacarb(登録商標)2AV)を水性懸濁液中で使用した(比較例1)。
【0095】
紙2:例1に従って、ポリマー−顔料−ハイブリッドの懸濁液1を使用した。
【0096】
紙3:填料として、比較例2に従って、懸濁液2に記載の混合物を使用した(DE−A10209448の教示に従って製造)。
【0097】
紙4:填料として、比較例3に従って、懸濁液3に記載の混合物を使用した(DE−A10315363の教示に従って製造)。
【0098】
第1表は、それぞれ30%の填料含有率を有する紙1〜3の製造の概要を記載している。
【0099】
【表1】

【0100】
紙を製造する間の運転特性は、抄紙機の湿潤部分と乾燥部分とにおける堆積物に基づいて、ならびに濾水容器中の起泡傾向および試験の間の引裂頻度に基づいて定性的に評価した。これらの結果は第3表に記載されている。
【0101】
枚葉紙の試験
恒温恒湿槽中、23℃および50%の空気湿度で一定した24時間の貯蔵時間後に、以下の紙試験を実施した:
ISO 5626による折り目の破損抵抗
DIN53115による引裂強さ
ISO TC6/SC2による構造強さ
DIN 20187によるスコット・ボンド(Scott Bond)
DIN53863/1によるテーバー試験
ISO5636−3によるBendtsenの多孔度
DIN53146による不透明度
DIN V EN V12283によるトナー付着
その際に得られた結果は第2表にまとめられている。
【0102】
【表2】

【0103】
【表3】

【0104】
紙1〜4は、比較可能な面積あたりの質量および灰分を有していた。これらはこの点に関して相互に比較可能である。
【0105】
紙試験から明らかであるように、ポリマー−顔料−ハイブリッドを含有する紙(例1もしくは紙2)は、比較例2および3(第3表の紙3および4)による紙と比較して、強度(たとえばスコット・ボンド、引裂強さおよび折り目の破損抵抗)、表面特性(たとえばテーバー)および外観(たとえば不透明性)に関して、比較例により製造された紙の明らかに改善された運転特性において、明らかに改善された特性を有している。
【0106】
ポリマー−顔料−ハイブリッドは、水性の顔料懸濁液の形で、抄紙機の良好な運転特性で紙へと加工することができ、その際、強度の特性、外観および表面特性は、従来の紙に比べて改善されている。さらに、本発明による方法により製造された紙は、複写の過程で、未処理の填料を含有する紙ほどのダストを生じない。
【0107】
填料を含有する紙1の製造
典型的なSCパルプ(組成:砕木70%、繊維の束がなくなるまで叩解、損紙10%、繊維の束がなくなるまで叩解、および硫酸セルロース20%、粉砕度35°SR)を、飲料水で固体濃度0.4%に調整した。記載の懸濁液1の特性を、クレーおよびGCCと比較して填料を含有する紙の製造の際に確認するために、そのつど500mlの紙料懸濁液を装入し、かつこのパルプに前記の填料ならびにカチオン性歩留まり向上剤(Polymin(登録商標)SKおよびPolymin(登録商標)KE2020)からなる組み合わせを供給した。歩留まり向上剤および顔料スラリーの量を、複数の前試験で、以下に記載する填料含有率が達成されるように調整した。
【0108】
枚葉紙をそのつど、ISO5269/2によるラピッド・ケーテン枚葉紙製造装置(Rapid-Koethen-Blattbildner)で、52g/m2の枚葉紙質量で製造し、かつ引き続き、湿分が10%になるまで乾燥させ、かつその後、90daN/cm3の線圧力で90℃で3回、カレンダリングした。
【0109】
恒温恒湿槽中、23℃および50%の空気湿度で一定した24時間の貯蔵時間後、以下の紙試験を実施した。
【0110】
引張強さ:DIN54540
粗さ:ISO8791/2−90
空気透過率:DIN53120TOI−98、ISO5636/3−92
光散乱:DIN5450096
光吸収:DIN5450096
カレンダリングした紙の特性は第4表に記載されている。
【0111】
【表4】

【0112】
第4表から明らかであるように、ポリマー−ハイブリッド−顔料を50%含有している紙(例3)は、クレーを含有する比較例4による紙と比較して、依然として標準的な紙特性を有している。
【0113】
填料を含有する紙2の製造
もう1つのSCパルプ(組成:セルロース17%、砕木46%、繊維の束がなくなるまで叩解)を、水で固体濃度0.4%に調製した。
【0114】
次いでこの紙料を、第5表に記載されている使用材料を使用して抄紙機中で、約950m/分の速度で54g/m2の面積あたりの質量を有する紙へと加工した。この規定により3つの紙を製造し、これらはそのつど使用される填料の種類および量において異なっている。歩留まり向上剤として、カチオン性歩留まり向上剤(Polymin(登録商標)8209)を使用した。定着剤としてさらにカチオン性のポリマー(Catiofast(登録商標)GM)を使用した。
【0115】
紙5:填料として、市販の炭酸カルシウムを21%の水性懸濁液として使用し(比較例6)、かつ市販のカオリンを14%使用した。
【0116】
紙6:上記の例によれば、懸濁液1によるポリマー−顔料−ハイブリッド(ポリマー−顔料−ハイブリッド21%)およびカオリン14%を使用した。
【0117】
紙7:填料として、懸濁液1によるポリマー−顔料−ハイブリッド(ポリマー−顔料−ハイブリッド31%)およびカオリン14%を使用した。
【0118】
第5表は、紙5〜7の製造の概要を記載している。
【0119】
【表5】

【0120】
製紙の際に、抄紙機の湿潤部分および乾燥部分に堆積物は観察されなかった。さらに、濾水容器中の起泡傾向および試験における引裂頻度は通常どおりであった。
【0121】
恒温恒湿槽中、23℃および50%の空気湿度で一定した24時間の貯蔵時間の後に、以下の紙試験を実施した。
【0122】
引張強さ:DIN54540
粗さ:ISO8791/2−90
多孔度:ISO3687
CIE白色度:DIN5033
カレンダリングした紙の特性は第6表に記載されている。
【0123】
【表6】

【0124】
第6表から明らかであるように、45%の高い填料含有率(ポリマー−顔料−ハイブリッド31%およびクレー(カオリン)14%)を有する紙7は、全填料含有率35%(炭酸カルシウム31%およびクレー(カオリン)14%)を有する紙4(比較例6)と比較して、依然として比較可能な紙特性を有していた。製紙の際にも問題は生じなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1のバインダーにより処理されている少なくとも1の微粒子状填料の水性懸濁液を紙料に添加し、かつ該紙料を脱水してシートを形成することにより、填料を含有する紙および填料を含有する紙製品を製造する方法において、填料として、少なくとも1の無機顔料の水性懸濁液を少なくとも1のバインダーの存在下で粉砕し、かつ場合によりこうして得られた水性懸濁液を乾燥させ、かつ乾燥させたポリマー−顔料−ハイブリッドを水中に再分散させることにより得られるポリマー−顔料−ハイブリッドを使用することを特徴とする、填料を含有する紙および填料を含有する紙製品の製造方法。
【請求項2】
ポリマー−顔料−ハイブリッドを製造するために、二酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、ドロマイト、クレー、ベントナイト、サテンホワイト、炭酸カルシウム、硫酸カルシウムおよび/または硫酸バリウムからなる群からの少なくとも1の無機顔料の1〜80質量%水性懸濁液を、天然および/または合成バインダーの存在下に粉砕することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ポリマー−顔料−ハイブリッドを製造するために、無機顔料として、石灰、白亜、方解石、大理石および/または沈降炭酸カルシウムの形の炭酸カルシウムを使用することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
ポリマー−顔料−ハイブリッドを製造するために、デンプン、カゼイン、タンパク質、カルボキシメチルセルロースおよび/またはエチルヒドロキシエチルセルロースから選択される群からの天然バインダーを使用することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ポリマー−顔料−ハイブリッドを製造するために、バインダーとして、少なくとも40質量%までが、C1〜C20−アルキル(メタ)アクリレート、20個までの炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステル、20個までの炭素原子を有するビニル芳香族化合物、エチレン性不飽和ニトリル、ビニルハロゲン化物、1〜10個の炭素原子を有するアルコールのビニルエーテル、2〜8個の炭素原子と1もしくは2の二重結合とを有する脂肪族炭化水素から選択される、いわゆる主モノマーまたはこれらのモノマーの混合物から構成されている合成ポリマーを使用することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ポリマー−顔料−ハイブリッドを製造するために、バインダーとして、少なくとも60質量%までが、ブタジエンまたはブタジエンとスチレンとからなる混合物から構成されている合成ポリマーを使用することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
ポリマー−顔料−ハイブリッドを製造するために、バインダーとして、少なくとも60質量%までが、C1〜C20−アルキル(メタ)アクリレートまたはC1〜C20−アルキル(メタ)アクリレートとスチレンとからなる混合物から構成されている合成ポリマーを使用することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項8】
合成バインダーが、エマルションポリマーであることを特徴とする、請求項5から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
ポリマー−顔料−ハイブリッドを製造する際に、バインダーに対して99〜1、有利には70〜30の無機顔料の質量比を調整することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
ポリマー−顔料−ハイブリッドの水性懸濁液が、少なくとも1の無機顔料を5〜80質量%、少なくとも1のバインダーを1〜30質量%、および水を19〜94質量%含有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
ポリマー−顔料−ハイブリッドの水性懸濁液が、少なくとも1の分散剤を0.01〜2質量%含有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
ポリマー−顔料−ハイブリッドが、0.01〜50μmの平均粒径を有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
そのつどの乾燥させた紙料に対して5〜70質量%、有利に20〜50質量%の填料含有率を有する紙または紙製品が得られるように、少なくとも1のポリマー−顔料−ハイブリッドの水性懸濁液を紙料に供給することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
紙料を脱水することによりシートを形成して、填料を含有する紙、填料を含有する板紙または填料を含有する厚紙を製造するための紙料への添加剤としての、
(i)少なくとも1の無機顔料の水性懸濁液を、少なくとも1のバインダーの存在下に粉砕することにより、または
(ii)(i)で得られた水性懸濁液を乾燥させ、かつ乾燥させたポリマー−顔料−ハイブリッドを水中に再分散させることにより
得られる、ポリマー−顔料−ハイブリッドの水性懸濁液の使用。

【公表番号】特表2008−542563(P2008−542563A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514064(P2008−514064)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062560
【国際公開番号】WO2006/128814
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】