説明

製紙用表面塗工液ならびに紙

【課題】製紙用表面塗工液のサイズ性能の向上をさせる。
【解決手段】疎水性モノマー(a1)ならびに(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル(a2)および/または(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルアミド(a3)を(a1):〔(a2)+(a3)〕=15〜90:85〜10重量%の比率で含有するカチオン性水溶性ポリマー(A)、水溶性アルミニウム系化合物(B)および澱粉類(C)を含有する製紙用表面塗工液とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙の製造に用いられる製紙用表面塗工液およびこれを用いて得られた紙に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙用表面塗工液は、サイズプレス、ゲートロール、カレンダーなどの塗工機を用いて、これを紙表面に塗工することにより、紙のサイズ効果(紙の液体吸収性をコントロールし、インクの滲みなどを抑える)を向上させ、紙に筆記適性や印刷適性などを付与ために用いられる。製紙用表面塗工液は、通常、紙の種類や製紙環境などに対応したサイズ効果を発現させる各種のポリマー成分からなる表面サイズ剤と、澱粉、ポリビニルアルコールや、ポリアクリルアミドなどの紙の強度を高める水溶性ポリマーからなる製紙用紙力剤とを混合し、さらに、その他の添加剤を適宜混合して調製される。
【0003】
このため、製紙用表面塗工液のサイズ性能(紙にサイズ効果を付与する性能、以下同じ。)を向上させるためには、主として、該塗工液に添加される表面サイズ剤を対象に改良がなされている。例えば、カチオン性モノマーを含有するカチオン性表面サイズ剤においては、スチレン類やアルキル(メタ)アクリレートなどの疎水性モノマーとジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートなどのカチオン性基含有モノマーの組成比を特定範囲とすることにより、サイズ性能を高める技術(特許文献1)、カチオン性共重合化合物を乳化分散剤とする水性媒体中で、疎水性モノマーを乳化重合させ、ポリマーの疎水性を強化しつつ、エマルジョン型(分散体)とすることにより、該塗工液のサイズ性能と安定性を確保する技術(特許文献2)、また、疎水性モノマーとカチオン性基含有モノマーの重合反応をロジン系樹脂の存在下で行うことによりサイズ性能を高める技術(特許文献3)などが知られている。しかし、これらの製紙用表面塗工液を、例えば、内添サイズ剤で処理されていない原紙などのサイズ効果の低い原紙に対して用いる場合や、該塗工液を比較的紙に浸透しにくい転写方式などで塗工する場合、該塗工液中に含まれる製紙用サイズ剤が期待どおりのサイズ性能を発現しない場合があり、製紙用表面塗工液中に含まれる表面サイズ剤ポリマー成分の改良のみで得られる紙のサイズ効果を向上させるには限界があると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−161259号公報
【特許文献2】特開平11−256496号公報
【特許文献3】特開2001−073296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、サイズ性能に優れた製紙用表面塗工液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、表面サイズ剤の構成成分として特定のカチオンポリマーを用いた製紙用表面塗工液に、さらに、水溶性アルミニウム系化合物および澱粉類を含有させると、意外にも、サイズ性能が向上するという知見を得て完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、
疎水性モノマー(a1)ならびに(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル(a2)および/または(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルアミド(a3)を(a1):〔(a2)+(a3)〕=15〜90:85〜10(重量比)で含有するカチオン性水溶性ポリマー(A)、水溶性アルミニウム系化合物(B)および澱粉類(C)を含有する製紙用表面塗工液および前記製紙用表面塗工液を塗工して得られる紙、に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製紙用表面塗工液は、抄紙された紙表面に塗工されることにより、紙に優れたサイズ効果やインクジェット適性などを付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の製紙用表面塗工液は、カチオン性水溶性ポリマー(A)(以下、(A)成分という)、水溶性アルミニウム系化合物(B)(以下、(B)成分という)および澱粉類(C)(以下、(C)成分という)を含有することを特徴とする。
(A)成分としては、疎水性モノマー(a1)(以下、(a1)成分という)ならびに(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル(a2)(以下、(a2)成分という)および/または(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルアミド(a3)(以下、(a3)成分という)を必須モノマー成分とする。
【0010】
(a1)成分としては、スチレン類、非イオン性の(メタ)アクリル酸エステル類などが挙げられ、これらの1種を単独で、または2種以上を併用できる。スチレン類としては、スチレンおよび/またはスチレン誘導体を使用できる。スチレン誘導体としては、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルトルエンおよびクロルメチルスチレンなどが挙げられる。非イオン性のアクリル酸エステル類としては、(メタ)アクリル酸と1価の各種アルコールとのエステルであり、1分子中に(メタ)アクリル酸由来の重合性二重結合を1つ有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。なお、非イオン性とは、水性媒体中においてイオン化する官能基を有していないことを意味する。非イオン性のアクリル酸エステル類におけるエステル置換基の炭素数は、得られる製紙用表面塗工液の高いサイズ性能と、(B)成分および(C)成分との混合性を確保する観点から、1〜8とすることが好ましい。このようなエステル置換基としては、直鎖状、分岐鎖状または環状のいずれのアルキル基であってもよい。具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル(n−プロピル、iso−プロピル)、(メタ)アクリル酸ブチル(n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル)、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル(n−ヘキシル、シクロヘキシル)、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、等が挙げられる。
また、(a1)成分におけるスチレン類の比率を60〜100重量%とすることにより、サイズ性能をより向上させることができる点において好ましい。

【0011】
(a2)成分としては、一般式(1):CH=C(R)COOANR(但し、Rは水素またはメチル基を、Rはメチル基またはエチル基を、Aは炭素数2〜6のアルキレン基を示す)で表わされるモノマーが挙げられる。具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたはジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。(a3)成分としては、一般式(2):CH2=C(R)CONHANR(但し、Rは水素またはメチル基を、Rはメチル基またはエチル基を、Aは炭素数2〜6のアルキレン基を示す)で表示されるジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられ、具体的には、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。なお、本発明においては、(a2)成分および(a3)成分は、酸付加塩のモノマーを使用してもよい。これにより、後述する酸付加(水溶性化または分散化)のプロセスを省略できる。
【0012】
(A)成分中における上記モノマーの含有比としては、重量比で(a1):〔(a2)+(a3)〕=15〜90:85〜10とすることを必要とし、50〜85:50〜15とすることが好ましい。(a1)成分の重量比が15未満の場合には(同様に、〔(a2)+(a3)〕の重量比が85を超える場合には)、ポリマー中の疎水性領域が不足し、高いサイズ性能を有する製紙用表面塗工液を得られない。(a1)成分の重量比が90を超える場合には(同様に、〔(a2)+(a3)〕の重量比が10未満の場合には)、水溶液としての安定性や他の塗工液成分との混合性が不十分となる。
【0013】
なお、(A)成分としては、共重合体に疎水性を付与する(a1)成分と第3級アミノ基由来のカチオン性を付与する(a2)成分または(a3)成分のいずれかのみを共重合させて得られるものであっても、(a2)成分と(a3)成分を併用して共重合させて得られるものであってもよい。
また、本発明の目的を損なわない範囲で、(a1)〜(a3)成分と共重合可能な他のビニルモノマー成分を併用することも可能である。他のビニルモノマー成分としては、例えば、得られる(A)成分の水溶性化または分散安定性のさらなる向上等をさせることを目的として、生成した重合体分散物の安定性を更に向上する等の目的のためにヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基を有するモノマー、(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基を有するモノマー、(メタ)アクリルアミドなどの親水性モノマーや酢酸ビニル、アクリロニトリルなどが使用できる。他のビニルモノマーの含有比は、特に限定されないが、サイズ性能を確保する観点から、通常、全重合成分に対して30重量%程度以下とすることが好ましく、(a1)成分としてスチレン類と炭素数1〜8のエステル置換基を有する非イオン性のアクリル酸エステル類とを併用する場合には20重量%程度以下とすることが好ましく、また、いずれの場合であっても全重合成分に対して10重量%以下とすることがより好ましい。
【0014】
(a1)〜(a3)成分等の共重合は、適当な重合開始剤の存在下で、塊状重合、溶液重合等の各種公知の方法を適宜採用できる。溶液重合を採用する場合には、溶媒としてベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等の低級ケトン類、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコールなどのアルコール類等を使用できる。また、共重合反応をロジン系樹脂の存在下に実施しても本願発明の目的は達せられる。重合開始剤の種類についても特に限定されず公知のものを使用することができる。例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−2,4−メチルバレロニトリルなどのアゾ化合物、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイドなどの有機過酸化物、その他レドックス触媒系の重合開始剤をいずれも使用できる。また、重合に際しては、α−メチルスチレンダイマー、メルカプタン類、第2級アルコール類等の連鎖移動剤を使用できる。重合反応の条件としては、通常、反応温度70〜140℃程度、反応時間1〜10時間程度で行えばよい。
【0015】
こうして得られた(A)成分は、通常、重量平均分子量(ゲルパーメーションクロマトグラフ法によるポリスチレン換算値)が5,000〜40,000程度である。本発明においては、共重合体に、水および塩酸、硫酸などの無機酸またはギ酸、酢酸、プロピオン酸などの有機酸を加えて酸付加塩とし、水溶性ポリマーとして取得し(A)成分とする。
【0016】
(A)成分は、さらに、共重合体中に存在する(a2)成分および/または(a3)成分に由来する第3級アミノ基の全部または一部を4級化することが好ましい。4級化は、(A)成分のカチオン性を高めることにより、カチオン性ポリマーの水溶化または分散安定性(保存安定性)が良好となり、また、塗工液のサイズ性能をよりいっそう向上させることができる。4級化の程度としては(A)成分の共重合体中に存在する(a2)成分および/または(a3)成分のアミノ基の少なくとも50モル%程度が4級化していることが好ましい。4級化剤としては一般的に用いられている各種のものを使用できる。代表的なものとしては塩化ベンジル、塩化メチル、硫酸ジメチル、エチレンクロルヒドリン、アリルクロライド、スチレンオキシドまたはプロピレンオキシドまたはエピクロルヒドリンなどが挙げられる。これらのうち、得られるカチオン性ポリマーの安定性向上の観点から、塩化ベンジル、塩化メチル、硫酸ジメチルおよびエピクロロヒドリンからなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。4級化剤による反応条件としては、通常、50〜90℃で1〜4時間保温すればよい。
【0017】
なお、(A)成分の製造方法としては、モノマー成分である(a2)成分および/または(a3)成分を予め4級化したモノマー成分を使用して共重合させることにより製造してもよい。この場合におけるモノマー成分の4級化の条件や共重合反応の条件は、前記と同様に行えばよい。
【0018】
(B)成分としては、各種公知のものを使用できるが、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、硫酸珪酸アルミニウムおよびそれらの重合体から選ばれる少なくとも1種を使用するのが好ましい。これらのなかでも、コスト面から硫酸アルミニウムが特に好ましい。
【0019】
(C)成分としては、製紙用塗工液に使用されている各種の澱粉および/または加工澱粉を使用できる。澱粉としては、たとえば、とうもろこし澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉等の原料澱粉が挙げられる。加工澱粉は、前記原料澱粉から誘導される、たとえば、酸化澱粉、アルファー化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、架橋澱粉、グラフト化澱粉、過硫酸アンモニウム変性澱粉、酵素変性澱粉、カチオン化澱粉等が挙げられる。これらのなかでも、高濃度で使用しても低粘度であり、耐老化性が高く、フィルム形成能に優れる等の点から加工澱粉、特に酸化澱粉、エーテル澱粉、過硫酸アンモニウム変性澱粉、酵素変性澱粉を使用するのが好ましい。
【0020】
本発明の製紙用表面塗工液における(A)成分、(B)成分および(C)成分の含有比は、特に限定されず適宜に調整すればよい。サイズ性能の観点から(A)と(B)を重量比(不揮発分換算)で(A):(B)を8:92〜80:20とすることが好ましく、(A):(B)を20:80〜67:33とすることがより好ましい。また、同様の観点から、(C)成分100重量部に対する(A)と(B)の含有量を、不揮発分換算で0.5〜50重量部とすることが好ましく、さらには1.5〜15重量部とすることがより好ましい。
【0021】
本発明の製紙用表面塗工液の製造は、(A)成分に(B)成分および(C)成分を適宜混合して行えばよいが、必要に応じて、予め(A)成分に無機酸、有機酸あるいは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等のアルカリを添加し、(B)成分を混合し溶解させて、最終的にpHを2〜6の範囲に調整した後に(C)成分を混合して調製することが好ましい。また、必要に応じてキレート剤、防滑剤、滑剤、消泡剤、酸化防止剤、増膜助剤、顔料、染料等各種の添加剤を混合してもよい。
【0022】
こうして得られた製紙用表面塗工液は、通常、白濁状であり、pH2〜8、好ましくは5〜7であり、塗工液中の各成分は水性媒体中に溶解または分散された状態で存在する。
【0023】
本発明の製紙用表面塗工液が適用できる紙および板紙としては、新聞巻取紙、筆記用紙、壁紙、PPC用紙、インクジェット用紙、印刷用紙や、ライナーや中芯等の板紙等の各種のものが挙げられる。紙表面への塗工方法としては、各種の方式を採用できる。たとえば、含浸法、バーコーター法、カレンダー法、スプレー法、二本ロールサイズプレス等の方式、ゲートロールサイズプレス、シムサイズプレス等のフィルム転写方式等が挙げられる。また、製紙用表面塗工剤の塗工量は通常は0.01〜5g/m程度(不揮発分換算)、好ましくは0.04〜2g/mである。
【実施例】
【0024】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら各例に限定されるものではない。なお、各例中、部および%は特記しない限りすべて重量基準である。
【0025】
[カチオン性ポリマー(A)の合成]
(合成例1)
攪拌機、冷却管、滴下ロート、窒素導入管および温度計を備えたフラスコに、スチレン70部、ジメチルアミノエチルメタクリレート30部、イソプロピルアルコール42.9部、および2,2´−アゾビスイソブチロニトリル2.5部を仕込み、窒素気流下に攪拌しながら80〜85℃で5時間重合反応を行った。ついで、酢酸11.5部と水300部とを加えた。得られた共重合体にエピクロルヒドリン17.7部を加えて80℃で2時間保温し共重合体を4級化してカチオン性共重合化合物とした後、さらに所定量の水を加えて不揮発分濃度を20%に調整し、カチオン性水溶性ポリマー(A1)を得た。得られたカチオン性水溶性ポリマー(A1)の25℃の粘度、pHを表1に示す。
【0026】
(合成例2〜13)
合成例1において、合成に用いたモノマーの種類と使用量、4級化に用いたエピクロルヒドリンの使用量を表1に示すように変化させた他は、合成例1と同様にして反応を行ない不揮発分濃度20%の各種のカチオン性水溶性ポリマー(A2〜A13)を得た。得られたカチオン性水溶性ポリマー(A2〜A13)の25℃の粘度、pHを表1に示す。
【0027】
【表1】

表中の記号は以下のとおりである。
DMA:ジメチルアミノエチルメタクリレート、DMAA:ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、MMA:メチルメタクリレート、2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート、BA:ブチルアクリレート、LA:ラウリルアクリレート、ECH:エピクロルヒドリン
【0028】
[製紙用表面塗工液の調製と性能評価試験]
上記により得られた各カチオン性水溶性ポリマーを用いて塗工液を調製し、(1)中性上質原紙、(2)酸性上質原紙および(3)板紙に塗工して、以下の試験方法により、それらの性能を評価した。
【0029】
(ステキヒトサイズ度;Testing Method for Stoeckigt Sizing Degree of Paper)
JIS P−8122に準拠して、ステキヒトサイズ度(秒)を測定した。数値が大きいほど良好なサイズ度を表す。
【0030】
(ペン書きサイズ度)
ペン書きサイズ度の評価は、J.Tappi
No.12に準拠してペン書きサイズ度を測定した。インキ滲みの全くないものを6とし、インキが滲んで、線が全体的に太くなるものを1とした。数値が大きいほど良好なサイズ度を表す。
【0031】
(吸水度試験〔コッブ法;Cobb Test〕)
JIS P−8140に準拠して、コッブ値(g/m)を測定した。水との接触時間は2分間とし、数値が小さいほど良好なサイズ度を表す。
【0032】
(1)中性上質紙での評価
(実施例1) 製紙用表面塗工液の調製
(C)成分として酸化澱粉を不揮発分濃度15%で糊化を行い、これを用いて不揮発分濃度で(C)成分5%濃度の澱粉溶液を調製した。この澱粉溶液を用いて、それぞれ不揮発分換算で(C)成分100部に対し、(B)成分として硫酸アルミニウム 3部および(A)成分として合成例1で得られたカチオン性水溶性ポリマーA1 4部を混合し表面塗工液を得た。
【0033】
(実施例2〜26および比較例1〜4) 製紙用表面塗工液の調製
実施例1で使用する(A)〜(C)成分を表2のものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして製紙用表面塗工液を調製した。
【0034】
【表2】



表中の記号は、以下のとおりである。
ALUM;硫酸アルミニウム、PAC;ポリ塩化アルミニウム、塩基ALUM;塩基性硫酸アルミニウム、APS澱粉;過硫酸アンモニウム変性澱粉
【0035】
(製紙用表面塗工液の性能試験)
下記配合のスラリーを用いて坪量70g/mの中性紙をpH7.2で抄造した。
スラリーの配合:L−BKP(360mlCSF)65部、N−BKP(420mlCSF)35部、炭酸カルシウム(タマパール121 奥多摩工業株式会社製)10部、中性ロジンサイズ剤(サイズパインNT−78 荒川化学工業株式会社製)0.2部、硫酸アルミニウム0.5部、両性澱粉(Cato 3210 日本NSC社製)1部、歩留まり向上剤(ポリテンション1000 荒川化学工業株式会社製)0.03部
得られた原紙に、ラボサイズプレス塗工機を用いて実施例1〜26および比較例1〜4の各塗工液(表2)を塗工した後、105℃の回転式ドラムドライヤーに1分間通して乾燥させて塗工紙を得、それらのステキヒトサイズ度、ペン書きサイズ度を以下に示す方法により測定した。結果を表3に示す。
なお、本性能試験および以下の性能試験において、スラリーの配合に使用したパルプ種の略称は、以下の通りである。
L-BKP:広葉樹さらしクラフトパルプ
N-BKP:針葉樹さらしクラフトパルプ
L-UKP:広葉樹未さらしクラフトパルプ
【0036】
【表3】

【0037】
(2)酸性上質紙での評価
(実施例27〜45および比較例5〜8) 製紙用表面塗工液の調製
上記実施例1で使用した(A)〜(C)成分を表4のものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして製紙用表面塗工液を調製した。
【0038】
【表4】

【0039】
(製紙用表面塗工液の性能試験)
下記配合のスラリーを用いて坪量80g/mの酸性紙をpH4.7で抄造した。
スラリーの配合:L−BKP(350mlCSF)60部、N−BKP(400mlCSF)40 部、タルク(タルクND 日本タルク株式会社製)20部、ロジンエマルジョンサイズ剤(サイズパインN−773 荒川化学工業株式会社製)0.2部、硫酸アルミニウム1.25部、歩留まり向上剤(ポリテンション1000 荒川化学工業株式会社製)0.03部
得られた原紙に、ラボサイズプレス塗工機を用いて、実施例27〜45および比較例5〜8の各塗工液(表4)を塗工した後、105℃の回転式ドラムドライヤーに1分間通して乾燥させて塗工紙を得、それらのステキヒトサイズ度、ペン書きサイズ度を測定した。結果を表5に示す。
【0040】
【表5】

【0041】
(3)板紙での評価
(実施例46〜63および比較例9〜12) 製紙用表面塗工液の調製
上記実施例1で使用した(A)〜(C)成分を表6のものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして製紙用表面塗工液を調製した。
【0042】
【表6】

【0043】
(製紙用表面塗工液の性能試験)
下記配合のスラリーを用いて坪量160g/mの原紙をpH6.8で抄造した
スラリーの配合:L−UKP(400mlCSF)100 部、硫酸アルミニウム0.125部
得られた原紙に、ラボサイズプレス塗工機を用いて、実施例46〜63および比較例9〜12の各塗工液(表6)を塗工した後、105℃の回転式ドラムドライヤーに1分間通して乾燥させて塗工紙を得、それらの吸水度試験(コッブ法;Cobb Test)を行った。結果を表7に示す。
【表7】







【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性モノマー(a1)ならびに(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル(a2)および/または(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルアミド(a3)を(a1):〔(a2)+(a3)〕=15〜90:85〜10(重量比)で含有するカチオン性水溶性ポリマー(A)、水溶性アルミニウム系化合物(B)および澱粉類(C)を含有する製紙用表面塗工液。
【請求項2】
疎水性モノマー(a1)としてスチレン類および/または炭素数1〜8のエステル置換基を有する非イオン性の(メタ)アクリル酸エステル類を含む請求項1に記載の製紙用表面塗工液。
【請求項3】
疎水性モノマー(a1)におけるスチレン類の比率が60〜100重量%である請求項2記載の製紙用表面塗工液。
【請求項4】
非イオン性の(メタ)アクリル酸エステル類におけるエステル置換基の炭素数が4〜8である請求項2または3に記載の製紙用表面塗工液。
【請求項5】
(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル(a2)および/または(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルアミド(a3)に由来するアミノ基の全部または一部が4級化されている構造を有する共重合体である請求項1〜4のいずれかに記載の製紙用表面塗工液。
【請求項6】
(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル(a2)および/または(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルアミド(a3)に由来するアミノ基の少なくとも50モル%が4級化されている請求項1〜5のいずれかに記載の製紙用表面塗工液。
【請求項7】
(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル(a2)および/または(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルアミド(a3)に由来するアミノ基が塩化ベンジル、塩化メチル、硫酸ジメチルおよびエピクロロヒドリンからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いて4級化されたものである請求項1〜6のいずれかに記載の製紙用表面塗工液。
【請求項8】
水溶性アルミニウム系化合物(B)が、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、硫酸硅酸アルミニウムおよびそれらの重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜7のいずれかに記載の製紙用表面塗工液。
【請求項9】
澱粉類(C)が、酸化澱粉、エーテル澱粉、過硫酸アンモニウム変性澱粉および酵素変性澱粉からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜8のいずれかに記載の製紙用表面塗工液。
【請求項10】
カチオン性水溶性ポリマー(A)と水溶性アルミニウム系化合物(B)の含有比(不揮発分換算)が、重量比で(A):(B)=8:92〜80:20であり、澱粉類(C)100重量部に対する(A)と(B)の合計量が、0.5〜50重量部である請求項1〜9のいずれかに記載の製紙用表面塗工液。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の製紙用表面塗工液を塗工して得られる紙。



【公開番号】特開2010−255161(P2010−255161A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26509(P2010−26509)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】