説明

製造プロセスの監視システムおよび製造プロセスの監視方法

【課題】本発明の実施形態は、異常の監視精度を向上させることができる製造プロセスの監視システムおよび製造プロセスの監視方法を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、製品の製造プロセスにおける異常を監視する製造プロセスの監視システムであって、過去において収集されたデータを格納する情報格納部と、前記情報格納部に格納されたデータを選別する際に用いられる情報を作成する選択情報部と、前記製造プロセスにおいて取得された異常監視の対象となるデータと、前記情報格納部に格納されたデータから前記情報により選別されたデータと、に基づいて基準空間を形成する基準空間形成部と、前記基準空間に基づいて前記異常監視の対象となるデータの異常を監視する監視部と、を備えたことを特徴とする製造プロセスの監視システムが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、製造プロセスの監視システムおよび製造プロセスの監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造ラインなどにおける製造プロセスの監視方法として、Just−In−Timeモデリング法を用いた統計的工程管理(SPC;Statistical Process Control)が知られている。
Just−In−Timeモデリング法によれば、取得されたデータの近傍にある複数のデータを用いてその都度基準空間を作成するので、基準空間の更新に対する手間や管理を軽減させることができる。
ところが、取得されたデータの近傍にある複数のデータを単に用いるようにすれば、異常の監視精度が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】井上大輔、山本茂著、日本機械学会論文集、72巻721号(2006−9)、論文No.06−0041、P.72−P.77
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、異常の監視精度を向上させることができる製造プロセスの監視システムおよび製造プロセスの監視方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、製品の製造プロセスにおける異常を監視する製造プロセスの監視システムであって、過去において収集されたデータを格納する情報格納部と、前記情報格納部に格納されたデータを選別する際に用いられる情報を作成する選択情報部と、前記製造プロセスにおいて取得された異常監視の対象となるデータと、前記情報格納部に格納されたデータから前記情報により選別されたデータと、に基づいて基準空間を形成する基準空間形成部と、前記基準空間に基づいて前記異常監視の対象となるデータの異常を監視する監視部と、を備えたことを特徴とする製造プロセスの監視システムが提供される。
【0006】
また、他の実施形態によれば、製品の製造プロセスにおける異常を監視する製造プロセスの監視方法であって、実行されている前記製造プロセスにおいて異常監視の対象となるデータを取得する工程と、過去において収集されたデータを取得する工程と、前記過去において収集されたデータを選別する際に用いられる情報を作成する工程と、前記異常監視の対象となるデータと、前記過去において収集されたデータから前記情報により選別されたデータと、に基づいて基準空間を形成する工程と、前記基準空間に基づいて前記異常監視の対象となるデータの異常を監視する工程と、を備えたことを特徴とする製造プロセスの監視方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態に係る製造プロセスの監視システムを例示するためのブロック図である。
【図2】重み付け係数の規定を例示するための模式図である。なお、(a)は対象となる事項が「データ取得日」の場合、(b)は対象となる事項が「歩留まり」の場合を例示するための模式図である。
【図3】監視部における監視を例示するための模式図である。(a)は異常なしと認識される場合、(b)は異常ありと認識される場合を例示するための模式図である。
【図4】第2の実施形態に係る製造プロセスの監視システムを例示するためのブロック図である。
【図5】基準空間の形成を例示するための模式グラフ図である。
【図6】データFの群からデータD3に近いデータを抽出する様子を例示するための模式図である。
【図7】第3の実施形態に係る製造プロセスの監視方法について例示をするためのフローチャートである。
【図8】第4の実施形態に係る製造プロセスの監視方法について例示をするためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る製造プロセスの監視システムを例示するためのブロック図である。
なお、図1は、製造プロセスの監視システムを製造ラインに設けた状態を例示するためのブロック図である。
【0009】
図1に示すように、製造ライン10には、第1の実施形態に係る製造プロセスの監視システム1、処理装置12、制御装置13、検出装置14、端末部15、MES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)系LAN(Local Area Network:構内通信網)16、FD(Fault Detection:欠陥探知)システム系LAN17が設けられている。 また、監視システム1には、監視装置2、情報格納部3が設けられている。
処理装置12、制御装置13は、MES系LAN16に接続されており、端末部15はFDシステム系LAN17に接続されている。
監視装置2は、MES系LAN16およびFDシステム系LAN17に接続されている。情報格納部3と、監視装置2に設けられた基準空間形成部4とは、MES系LAN16に接続されている。監視装置2に設けられた監視部6はFDシステム系LAN17に接続されている。
【0010】
処理装置12は、例えば、半導体装置やフラットパネルディスプレイなどの電子デバイスの製造ラインに設けられる装置とすることができる。
処理装置12としては、例えば、シリコンウェーハ上やガラス基板上に薄膜を形成するプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)装置などを例示することができる。ただし、これに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
【0011】
なお、本明細書において「製品」というときは、処理装置において所定の処理がなされた後の部材をいい、いわゆる完成品の他に中間製品をも含むものとする。例えば、前述の例でいえば、薄膜が形成されたシリコンウェーハやガラス基板も「製品」に含まれる。
【0012】
制御装置13は、処理装置12に製造プロセスを実行させるための指令を出力する。
検出装置14は、処理装置12に設けられている。検出装置14は、現在実行されている製造プロセス(異常の発生を監視している製造プロセス)に関するデータを取得する。検出装置14としては、例えば、圧力、温度、流量、電圧、電流、電力、周波数、光の強度、振動、音、成分比などを検出し、電気信号に変換するものなどを例示することができる。ただし、検出装置14が検出する対象は例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、検出装置14により取得されたデータは、処理装置12を介して、監視装置2、情報格納部3に提供される。
【0013】
端末部15には、監視システム1から後述する監視結果が提供される。そして、提供された監視結果は端末部15に設けられた図示しない表示手段に表示される。なお、キーボードなどの図示しない入力手段を設けるようにすることもできる。
【0014】
監視システム1に設けられた情報格納部3は、過去において収集されたデータを格納するとともに、検出装置14から提供されたデータを逐次格納する。また、情報格納部3は、過去において収集されたデータを監視装置2に設けられた基準空間形成部4に提供する。
監視装置2は、検出装置14から提供されたデータと、情報格納部3から提供された過去において収集されたデータと、に基づいて異常の発生を監視する。なお、異常発生の監視に関する詳細は後述する。
【0015】
次に、監視装置2についてさらに例示をする。
監視装置2には、基準空間形成部4、選択情報部5、監視部6が設けられている。
基準空間形成部4は、検出装置14により取得された異常監視の対象となるデータと、情報格納部3から提供された過去において収集されたデータと、に基づいて基準空間(単位空間とも称する)を形成する。この際、基準空間形成部4は、選択情報部5から提供された重み付け係数を用いて情報格納部3から提供されたデータを選別し、選別されたデータにより基準空間を形成する。
【0016】
すなわち、基準空間形成部4は、製造プロセスにおいて取得された異常監視の対象となるデータと、情報格納部3に格納されたデータから重み付け係数を用いて選別されたデータと、に基づいて基準空間を形成する。
選択情報部5は、重み付け係数を作成し、作成した重み付け係数を基準空間形成部4に提供する。本実施の形態においては、重み付け係数が情報格納部3に格納されたデータを選別する際に用いられる情報となる。
監視部6は、基準空間形成部4により形成された基準空間に基づいて、検出装置14により取得された異常監視の対象となるデータに対する異常監視を行う。例えば、監視部6は、検出装置14により取得された異常監視の対象となるデータが、基準空間に含まれなかった場合には異常と認識するようにすることができる。
【0017】
次に、選択情報部5における重み付け係数の作成について例示をする。
重み付け係数を作成する際に対象となる事項としては、「データ取得日」、「歩留まり」、「製品の品質などに関する事項」などを例示することができる。
この場合、「製品の品質などに関する事項」としては、例えば、「出来映え」、「パーティクルの付着量」などを例示することができる。
そして、対象となる事項毎にどのような重み付け係数とするのかを規定するようにすることができる。
【0018】
例えば、対象となる事項が「データ取得日」の場合には、データの選別の際に最新のデータほど優先して選別される様な重み付け係数の規定とすることができる。
対象となる事項が「歩留まり」の場合には、データの選別の際に歩留まりが高かった時のデータほど優先して選別される様な重み付け係数の規定とすることができる。
対象となる事項が「出来映え」の場合には、データの選別の際に出来映えが良かった時のデータほど優先して選別される様な重み付け係数の規定とすることができる。
対象となる事項が「パーティクルの付着量」の場合には、データの選別の際にパーティクルの付着量が少なかった時のデータほど優先して選別される様な重み付け係数の規定とすることができる。
ここで、重み付け係数の規定を「データ取得日」、「歩留まり」の場合を例に挙げて説明する。
図2は、重み付け係数の規定を例示するための模式図である。なお、図2(a)は対象となる事項が「データ取得日」の場合、図2(b)は対象となる事項が「歩留まり」の場合を例示するための模式図である。
対象となる事項が「データ取得日」の場合には、例えば、図2(a)に示すように、最新のデータほど重み付け係数の値が小さくなるようにすることができる。
対象となる事項が「歩留まり」の場合には、例えば、図2(b)に示すように、歩留まりが高かった時のデータほど重み付け係数の値が小さくなるようにすることができる。
なお、図2(a)、(b)においては重み付け係数の値を非線形に変化させる場合を例示したがこれに限定されるわけではない。例えば、重み付け係数の値を線形に変化させることもできるし、段階的に変化させることもできる。この場合、対象となる事項に応じて、重み付け係数の値の変化の形態を適宜変更することができる。
また、異なる事項を適宜組み合わせて重み付け係数を規定するようにすることもできる。例えば、「データ取得日」と「歩留まり」とを組み合わせる場合には、新しく且つ歩留まりが高かった時のデータほど重み付け係数の値が小さくなるようにすることができる。
【0019】
なお、重み付け係数を作成する際に必要となる情報は、MES系LAN16、FDシステム系LAN17などを介して、図示しない入力部などから選択情報部5に提供されるようにすることができる。
【0020】
この様にして作成された重み付け係数は基準空間形成部4に提供され、基準空間を形成する際に用いるデータを選別するのに利用される。
前述したように、基準空間形成部4は、情報格納部3から提供されたデータに基づいて基準空間を形成する。この際、情報格納部3から提供されたデータのすべてを用いて基準空間を形成することもできるが、演算処理が煩雑となったり、不適切なデータが混在した状態で基準空間が形成されたりするおそれがある。
【0021】
そのため、本実施の形態においては、選択情報部5から提供された重み付け係数を用いて情報格納部3から提供されたデータを選別し、選別されたデータにより基準空間を形成するようにしている。
【0022】
表1は、重み付け係数を用いたデータの選別を例示するためのものである。
なお、表1は「データ取得日」に係る重み付け係数を用いてデータの選別を行う場合を例示したものである。また、表1中の「距離」は、検出装置14により取得された異常監視の対象となるデータと、情報格納部3から提供された各データとの間の「距離」を表している。
【表1】


表1に例示をしたものの場合には、「距離」と重み付け係数の値との積に基づいて、基準空間を形成する際に用いられるデータを選別する。
ここで、基準空間を形成する際に用いられるデータを選別する際に、「距離」が小さいデータを優先して選別するようにすることができる。ところが、異常監視の対象となるデータと古いデータとではデータが取得された際の条件や環境などが異なる場合がある。そのため、「距離」が小さいデータであるとともに、より最近に取得されたデータが優先されて選別されるようにすることが好ましい。
【0023】
この場合、「距離」がより小さく(異常監視の対象となるデータにより近く)、重み付け係数の値がより小さく(より新しく取得されたデータ)なるほど、「距離」と重み付け係数の値との積が小さくなる。
そのため、「距離」と重み付け係数の値との積によれば、「距離」が小さいデータであるとともに、より最近に取得されたデータを優先して選別することができる。
この場合、「距離」と重み付け係数の値との積が小さいものから順に所定の数のデータを選ぶようにすることができる。
なお、「距離」と「データ取得日」との間における関係は、重み付け係数の数値範囲により制御することができる。
例えば、データを選別する際に「距離」がより重要となる場合には、重み付け係数の数値範囲をより小さくかつ狭くするようにすることができる。
以上説明したように、基準空間形成部4は、基準空間を形成する際に重み付け係数による優先度に基づいて、情報格納部3に格納されたデータから基準空間の形成に用いるデータを選別する。
【0024】
基準空間形成部4は、選別されたデータが含まれるような基準空間を形成する。
そして、監視部6は、基準空間形成部4により形成された基準空間に基づいて、異常監視の対象となるデータに対する異常監視を行う。
図3は、監視部における監視を例示するための模式図である。図3(a)は異常なしと認識される場合、図3(b)は異常ありと認識される場合を例示するための模式図である。なお、図3(a)、(b)に例示をしたものは、処理圧力、処理温度、ガス流量に係るデータに対する異常監視を行う場合である。
【0025】
図3(a)に示すものの場合には、検出装置14により取得された処理圧力の値、処理温度の値、ガス流量の値に基づいてデータD1が求められる。そして、データD1からの「距離」と重み付け係数の値との積に基づいて基準空間S1が形成される。
異常監視においては、データD1が基準空間S1に含まれているか否かを検出することで異常の有無を認識するようにすることができる。例えば、図3(a)に示すものの場合には、データD1が基準空間S1に含まれているので、異常なしと認識することができる。
【0026】
図3(b)に示すものの場合には、検出装置14により取得された処理圧力の値、処理温度の値、ガス流量の値に基づいてデータD2が求められる。そして、データD2からの「距離」と重み付け係数の値との積に基づいて基準空間S2が形成される。
異常監視においては、データD2が基準空間S2に含まれているか否かを検出することで異常の有無を監視するようにすることができる。例えば、図3(b)に示すものの場合には、データD2が基準空間S2に含まれていないので、異常ありと認識することができる。
【0027】
次に、製造プロセスの監視システム1の作用について例示をする。
まず、処理装置12において現在実行されている製造プロセスに関するデータが検出装置14により取得される。
検出装置14により取得されたデータは、MES系LAN16を介して情報格納部3に提供され、提供されたデータは情報格納部3に格納される。
【0028】
検出装置14により取得されたデータは、MES系LAN16を介して基準空間形成部4にも提供される。
基準空間形成部4には、情報格納部3から過去において収集されたデータが提供される。また、基準空間形成部4には、選択情報部5から重み付け係数が提供される。
基準空間形成部4は、検出装置14から提供されたデータと、情報格納部3から提供されたデータと、に基づいて基準空間を形成する。この際、基準空間形成部4は、選択情報部5から提供された重み付け係数を用いて情報格納部3から提供されたデータを選別し、選別されたデータにより基準空間を形成する。
【0029】
次に、監視部6は、基準空間形成部4により形成された基準空間に基づいて、検出装置14により取得されたデータ(異常監視の対象となるデータ)に対する異常監視を行う。この場合、検出装置14により取得されたデータが基準空間に含まれているか否かを検出することで異常の有無を監視するようにすることができる。
監視部6による監視結果は、FDシステム系LAN17を介して端末部15などに提供される。
端末部15に提供された監視結果は端末部15に設けられた図示しない表示手段に表示される。異常があるという監視結果の場合には、端末部15に設けられた図示しない表示手段に警報を表示するようにすることができる。
【0030】
本実施の形態によれば、基準空間を形成する際に選択情報部5から提供された重み付け係数を用いてデータを選別することができる。そのため、不適切なデータが排除された状態で基準空間を形成することができるので、異常の監視精度を向上させることができる。
【0031】
[第2の実施形態]
図4は、第2の実施形態に係る製造プロセスの監視システムを例示するためのブロック図である。
なお、図4は、製造プロセスの監視システムを製造ラインに設けた状態を例示するためのブロック図である。
【0032】
図4に示すように、製造ライン10aには、第2の実施形態に係る製造プロセスの監視システム1a、処理装置12、制御装置13、検出装置14、端末部15、検査装置18、MES系LAN16、FDシステム系LAN17が設けられている。
また、監視システム1aには、監視装置2a、情報格納部3が設けられている。
【0033】
検査装置18は、MES系LAN16に接続されている。
検査装置18は、処理装置12により処理された製品を検査する装置とすることができる。検査装置18としては、処理装置12により処理された製品の寸法、重量、形状、欠陥、出来映え、パーティクルの付着量などを検査するものを例示することができる。ただし、例示をした事項を検査する検査装置に限定されるわけではなく、処理装置12により処理された製品を検査する各種の検査装置とすることができる。
検査装置18による検査結果と、検査の対象となった製品に関する情報(例えば、製造ロットに関する情報など)とは、MES系LAN16を介して後述する選択情報部7に提供される。
監視装置2aには、基準空間形成部4、選択情報部7、監視部6が設けられている。 選択情報部7は、検査装置18による検査結果と、検査の対象となった製品に関する情報とを格納する。また、選択情報部7は、不良と判定された製品に関する情報を作成して基準空間形成部4に提供する。本実施の形態においては、不良と判定された製品に関する情報が情報格納部3に格納されたデータを選別する際に用いられる情報となる。
なお、情報格納部3に選択情報部7の機能を持たせるようにすることができる。
その様な場合には、情報格納部3のうち、選択情報部7の機能を持つ部分が選択情報部となる。
【0034】
基準空間形成部4は、情報格納部3から提供されたデータに基づいて基準空間を形成する。この際、情報格納部3から提供されたデータのすべてを用いて基準空間を形成することもできるが、演算処理が煩雑となったり、不良と判定された製品に関するデータが混在した状態で基準空間が形成されたりするおそれがある。
【0035】
図5は、基準空間の形成を例示するための模式グラフ図である。
なお、一例として、対象となるデータが電力と周波数とに係るものとしている。
前述したように、情報格納部3から提供されたデータには、不良と判定された製品に関するデータFが混在している場合がある。
本実施の形態においては、選択情報部7から不良と判定された製品に関する情報が提供されるので、基準空間を形成する際にデータFが用いられないようにすることができる。
【0036】
例えば、検出装置14により取得された電力の値、周波数の値に基づいてデータD3が求められる。この場合、データD3からの「距離」が近い位置にデータFの群があるが、選択情報部7から提供された情報に基づいて基準空間を形成する際にデータFが用いられないようにすることができる。
そのため、図5に例示をしたものの場合には、データFの群を除いてデータD3からの「距離」が近い位置にある所定の数のデータを用いて基準空間S3を形成することができる。
すなわち、基準空間形成部4は、基準空間を形成する際に、情報格納部3に格納されたデータから不良と判定された製品に関する情報に対応するデータFを除く。
【0037】
そして、監視部6における異常監視においては、データD3が基準空間S3に含まれているか否かを検出することで異常の有無を監視するようにすることができる。例えば、図5に示すものの場合には、データD3が基準空間S3に含まれていないので、異常ありと認識することができる。
【0038】
また、データD3が異常ありと認識された場合には、データFの群からデータD3に近いデータを抽出するようにすることもできる。
図6は、データFの群からデータD3に近いデータを抽出する様子を例示するための模式図である。
図6に示すように、不良と判定された製品に関するデータFの群からデータD3に近いデータF1〜F3を抽出する。データF1〜F3の抽出は、例えば、K近隣法(K nearest neighbor method)などを用いて行うようにすることができる。
そして、抽出されたデータF1〜F3に関する情報(例えば、製造ロットに関する情報など)を、監視部6による監視結果とともにFDシステム系LAN17を介して端末部15などに提供するようにすることができる。
【0039】
端末部15に提供された監視結果や、異常ありと認識されたデータD3に近いデータF1〜F3に関する情報は、端末部15に設けられた図示しない表示手段に表示される。
異常があるという監視結果の場合には、端末部15に設けられた図示しない表示手段に警報を表示するようにすることができる。この際、データF1〜F3に関する情報を併せて表示するようにすることができる。そのため、過去において似たような条件で発生した不良の要因や対処方法などを容易に知ることができる。
【0040】
次に、製造プロセスの監視システム1aの作用について例示をする。
まず、処理装置12において現在実行されている製造プロセスに関するデータが検出装置14により取得される。
検出装置14により取得されたデータは、MES系LAN16を介して情報格納部3に提供され、提供されたデータは情報格納部3に格納される。
【0041】
検出装置14により取得されたデータは、MES系LAN16を介して基準空間形成部4にも提供される。
基準空間形成部4には、情報格納部3から過去において収集されたデータが提供される。また、基準空間形成部4には、選択情報部7から不良と判定された製品に関する情報が提供される。
基準空間形成部4は、検出装置14から提供されたデータと、選択情報部7から提供された情報と、に基づいて基準空間を形成する。基準空間形成部4は、基準空間を形成する際に、不良と判定された製品に関する情報に対応するデータFが用いられないようにする。
【0042】
次に、監視部6は、基準空間形成部4により形成された基準空間に基づいて、検出装置14により取得されたデータに対する異常監視を行う。この場合、検出装置14により取得されたデータが基準空間に含まれているか否かを検出することで異常の有無を監視するようにすることができる。
監視部6による監視結果は、FDシステム系LAN17を介して端末部15などに提供される。
端末部15に提供された監視結果は端末部15に設けられた図示しない表示手段に表示される。異常があるという監視結果の場合には、端末部15に設けられた図示しない表示手段に警報を表示するようにすることができる。また、異常があるとされたデータに近いデータを抽出して、抽出されたデータに関する情報を併せて表示するようにすることもできる。
【0043】
本実施の形態によれば、選択情報部7から不良と判定された製品に関する情報が提供されるので、基準空間を形成する際に不良と判定された製品に関する情報に対応するデータFが用いられないようにすることができる。そのため、不良と判定された製品に関するデータが排除された状態で基準空間を形成することができるので、異常の監視精度を向上させることができる。また、異常があるとされたデータに近いデータを抽出して、抽出されたデータに関する情報を併せて出力するようにすれば、過去において似たような条件で発生した不良の要因や対処方法などを容易に知ることができる。
【0044】
なお、選択情報部5と選択情報部7とがそれぞれ設けられる場合を例示したが、選択情報部5と選択情報部7とが併せて設けられるようにすることもできる。
【0045】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態に係る製造プロセスの監視方法について例示をする。
図7は、第3の実施形態に係る製造プロセスの監視方法について例示をするためのフローチャートである。
まず、現在実行されている製造プロセスにおいて異常監視の対象となるデータを取得する(ステップS1)。
【0046】
過去において収集されたデータを取得する(ステップS2)。
過去において収集されたデータを選別する際に用いられる情報として重み付け係数を作成する(ステップS3)。
重み付け係数を用いて、過去において収集されたデータに対する重み付けを行う(ステップS4)。
【0047】
異常監視の対象となるデータと、過去において収集されたデータから重み付け係数により選別されたデータと、に基づいて基準空間を形成する(ステップS5)。
この様にすれば、基準空間を形成する際に重み付け係数を用いてデータを選別することができる。
すなわち、基準空間を形成する際に重み付け係数による優先度に基づいて、過去において収集されたデータから基準空間の形成に用いるデータを選別する。
形成された基準空間に基づいて異常監視の対象となるデータの異常を監視する(ステップS6)。
異常監視を行うことで異常があるとされた場合には、警報を発するようにすることができる。
なお、重み付け係数による重み付け、基準空間の形成、基準空間に基づいた異常監視などに関しては、前述したものと同様とすることができるので詳細な説明は省略する。
【0048】
本実施の形態によれば、基準空間を形成する際に重み付け係数を用いてデータを選別することができる。そのため、不適切なデータが排除された状態で基準空間を形成することができるので、異常の監視精度を向上させることができる。
【0049】
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態に係る製造プロセスの監視方法について例示をする。
図8は、第4の実施形態に係る製造プロセスの監視方法について例示をするためのフローチャートである。
まず、現在実行されている製造プロセスにおいて異常監視の対象となるデータを取得する(ステップS11)。
過去において収集されたデータを取得する(ステップS12)。
過去において収集されたデータを選別する際に用いられる情報として不良と判定された製品に関する情報を作成する(ステップS13)。
異常監視の対象となるデータと、過去において収集されたデータから不良と判定された製品に関する情報に対応するデータを除いたデータと、に基づいて基準空間を形成する(ステップS14)。
【0050】
形成された基準空間に基づいて異常監視の対象となるデータの異常を監視する(ステップS15)。
異常監視を行うことで異常があるとされた場合には、警報を発するようにすることができる。
また、異常があるとされた場合には、不良と判定された製品に関するデータの中から異常があるとされたデータに近いデータを抽出する(ステップS16)。
この場合、ステップS16は必ずしも必要ではないが、異常があるとされたデータに近いデータを抽出して、抽出されたデータに関する情報を併せて出力するようにすれば、過去において似たような条件で発生した不良の要因や対処方法などを容易に知ることができる。
なお、基準空間を形成する際に不良と判定された製品に関する情報に対応するデータを除くこと、基準空間の形成、基準空間に基づいた異常監視、異常があるとされたデータに近いデータを抽出することなどに関しては、前述したものと同様とすることができるので詳細な説明は省略する。
【0051】
本実施の形態によれば、基準空間を形成する際に不良と判定された製品に関するデータが用いられないようにすることができる。そのため、不良と判定された製品に関するデータが排除された状態で基準空間を形成することができるので、異常の監視精度を向上させることができる。また、異常があるとされたデータに近いデータを抽出して、抽出されたデータに関する情報を併せて出力するようにすれば、過去において似たような条件で発生した不良の要因や対処方法などを容易に知ることができる。
【0052】
なお、重み付け係数による重み付けと、不良と判定された製品に関するデータの除外とがそれぞれ行われる場合を例示したが、重み付け係数による重み付けと、不良と判定された製品に関するデータの除外とが併せて行われるようにすることもできる。
【0053】
次に、製造プロセスの監視プログラムについて例示をする。
本実施の形態に係る製造プロセスの監視プログラムは、コンピュータに、前述した製造プロセスの監視方法を実行させるものとすることができる。
一連の製造プロセスの監視方法を実行させるために、本実施の形態に係る製造プロセスの監視プログラムが、例えば、コンピュータに設けられた格納部に格納される。製造プロセスの監視プログラムは、例えば、記録媒体に格納された状態でコンピュータに供給され、読み出されることでコンピュータに設けられた格納部に格納されるようにすることができる。なお、MES系LAN16などを介して、製造プロセスの監視プログラムがコンピュータに設けられた格納部に格納されるようにすることもできる。
【0054】
[第5の実施形態]
第5の実施形態に係る製造プロセスの監視プログラムは、図7において例示をした以下の手順を実行するものとすることができる。
(1)現在実行されている製造プロセスにおいて異常監視の対象となるデータを取得する手順。
(2)過去において収集されたデータを取得する手順。
(3)過去において収集されたデータを選別する際に用いられる情報として重み付け係数を作成する手順。
(4)重み付け係数を用いて、過去において収集されたデータに対する重み付けを行う手順。
(5)異常監視の対象となるデータと、過去において収集されたデータから重み付け係数により選別されたデータと、に基づいて基準空間を形成する手順。
この様にすれば、基準空間を形成する際に重み付け係数を用いてデータを選別することができる。
(6)形成された基準空間に基づいて異常監視の対象となるデータの異常を監視する手順。
異常監視を行うことで異常があるとされた場合には、警報を発するようにすることができる。
なお、重み付け係数による重み付け、基準空間の形成、基準空間に基づいた異常監視などに関しては、前述したものと同様とすることができるので詳細な説明は省略する。
【0055】
本実施の形態によれば、基準空間を形成する際に重み付け係数を用いてデータを選別することができる。そのため、不適切なデータが排除された状態で基準空間を形成することができるので、異常の監視精度を向上させることができる。
【0056】
[第6の実施形態]
第6の実施形態に係る製造プロセスの監視プログラムは、図8において例示をした以下の手順を実行するものとすることができる。
(11)現在実行されている製造プロセスにおいて異常監視の対象となるデータを取得する手順。
(12)過去において収集されたデータを取得する手順。
(13)過去において収集されたデータを選別する際に用いられる情報として不良と判定された製品に関する情報を作成する手順。
(14)異常監視の対象となるデータと、過去において収集されたデータから不良と判定された製品に関する情報に対応するデータを除いたデータと、に基づいて基準空間を形成する手順。
(15)形成された基準空間に基づいて異常監視の対象となるデータの異常を監視する手順。
異常監視を行うことで異常があるとされた場合には、警報を発するようにすることができる。
(16)異常があるとされた場合には、不良と判定された製品に関するデータの中から異常があるとされたデータに近いデータを抽出する手順。
この場合、(16)に示す手順は必ずしも必要ではないが、異常があるとされたデータに近いデータを抽出して、抽出されたデータに関する情報を併せて出力するようにすれば、過去において似たような条件で発生した不良の要因や対処方法などを容易に知ることができる。
なお、基準空間を形成する際に不良と判定された製品に関する情報に対応するデータを除くこと、基準空間の形成、基準空間に基づいた異常監視、異常があるとされたデータに近いデータを抽出することなどに関しては、前述したものと同様とすることができるので詳細な説明は省略する。
【0057】
本実施の形態によれば、基準空間を形成する際に不良と判定された製品に関するデータが用いられないようにすることができる。そのため、不良と判定された製品に関するデータが排除された状態で基準空間を形成することができるので、異常の監視精度を向上させることができる。また、異常があるとされたデータに近いデータを抽出して、抽出されたデータに関する情報を併せて出力するようにすれば、過去において似たような条件で発生した不良の要因や対処方法などを容易に知ることができる。
【0058】
なお、重み付け係数による重み付けと、不良と判定された製品に関するデータの除外とがそれぞれ行われる場合を例示したが、重み付け係数による重み付けと、不良と判定された製品に関するデータの除外とが併せて行われるようにすることもできる。
【0059】
[第7の実施形態]
次に、第7の実施形態に係る電子デバイスの製造方法について例示をする。
第7の実施形態に係る電子デバイスの製造方法は、前述した製造プロセスの監視システム、製造プロセスの監視方法、製造プロセスの監視プログラムの少なくともいずれかを用いるものとすることができる。
電子デバイスの製造方法としては、例えば、半導体装置の製造方法やフラットパネルディスプレイの製造方法などを例示することができる。
ここでは、一例として、半導体装置の製造方法について例示をする。
半導体装置の製造工程には、いわゆる前工程における成膜・レジスト塗布・露光・現像・エッチング・レジスト除去などにより基板(ウェーハ)表面にパターンを形成する工程、検査工程、洗浄工程、熱処理工程、不純物導入工程、拡散工程、平坦化工程などがある。また、いわゆる後工程においては、ダイシング、マウンティング、ボンディング、封入などの組立工程、機能や信頼性の検査を行う検査工程などがある。
【0060】
そのため、各工程において実行される製造プロセスを前述した製造プロセスの監視システム、製造プロセスの監視方法、製造プロセスの監視プログラムの少なくともいずれかを用いて監視するようにすることができる。
なお、製造プロセスの監視システム、製造プロセスの監視方法、製造プロセスの監視プログラムについては、前述したものと同様とすることができるので、これらの詳細な説明は省略する。
また、電子デバイスの製造方法における各工程は、既知の技術を適用させることができるので、これらの詳細な説明も省略する。
本実施の形態によれば、電子デバイスの製造工程における異常の監視精度を向上させることができる。また、異常があるとされたデータに近いデータを抽出して、抽出されたデータに関する情報を併せて出力するようにすれば、過去において似たような条件で発生した不良の要因や対処方法などを容易に知ることができる。
そのため、製品の歩留まりや生産性などを向上させることができる。
【0061】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明及びそれと等価とみなされるものの範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 製造プロセスの監視システム、1a 製造プロセスの監視システム、2 監視装置、2a 監視装置、3 情報格納部、4 基準空間形成部、5 選択情報部、6 監視部、7 選択情報部、10 製造ライン、10a 製造ライン、12 処理装置、13 制御装置、14 検出装置、15 端末部、16 MES系LAN、17 FDシステム系LAN、18 検査装置、D1〜D3 データ、S1〜S3 基準空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の製造プロセスにおける異常を監視する製造プロセスの監視システムであって、
過去において収集されたデータを格納する情報格納部と、
前記情報格納部に格納されたデータを選別する際に用いられる情報を作成する選択情報部と、
前記製造プロセスにおいて取得された異常監視の対象となるデータと、前記情報格納部に格納されたデータから前記情報により選別されたデータと、に基づいて基準空間を形成する基準空間形成部と、
前記基準空間に基づいて前記異常監視の対象となるデータの異常を監視する監視部と、
を備えたことを特徴とする製造プロセスの監視システム。
【請求項2】
前記選択情報部は、重み付け係数を前記情報として作成することを特徴とする請求項1記載の製造プロセスの監視システム。
【請求項3】
前記選択情報部は、製品の検査により不良と判定された製品に関する情報を前記情報として作成することを特徴とする請求項1または2に記載の製造プロセスの監視システム。
【請求項4】
前記基準空間形成部は、前記基準空間を形成する際に前記重み付け係数による優先度に基づいて、前記情報格納部に格納されたデータから前記基準空間の形成に用いるデータを選別すること、を特徴とする請求項2記載の製造プロセスの監視システム。
【請求項5】
前記基準空間形成部は、前記基準空間を形成する際に、前記情報格納部に格納されたデータから前記不良と判定された製品に関する情報に対応するデータを除くこと、を特徴とする請求項3記載の製造プロセスの監視システム。
【請求項6】
製品の製造プロセスにおける異常を監視する製造プロセスの監視方法であって、
実行されている前記製造プロセスにおいて異常監視の対象となるデータを取得する工程と、
過去において収集されたデータを取得する工程と、
前記過去において収集されたデータを選別する際に用いられる情報を作成する工程と、
前記異常監視の対象となるデータと、前記過去において収集されたデータから前記情報により選別されたデータと、に基づいて基準空間を形成する工程と、
前記基準空間に基づいて前記異常監視の対象となるデータの異常を監視する工程と、
を備えたことを特徴とする製造プロセスの監視方法。
【請求項7】
前記情報を作成する工程において、重み付け係数が前記情報として作成されることを特徴とする請求項6記載の製造プロセスの監視方法。
【請求項8】
前記情報を作成する工程において、製品の検査により不良と判定された製品に関する情報が前記情報として作成されることを特徴とする請求項6または7に記載の製造プロセスの監視方法。
【請求項9】
基準空間を形成する工程おいて、前記基準空間を形成する際に前記重み付け係数による優先度に基づいて、前記過去において収集されたデータから前記基準空間の形成に用いるデータを選別することを特徴とする請求項7記載の製造プロセスの監視方法。
【請求項10】
基準空間を形成する工程おいて、前記基準空間を形成する際に、前記過去において収集されたデータから前記不良と判定された製品に関する情報に対応するデータを除くことを特徴とする請求項8記載の製造プロセスの監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−64085(P2012−64085A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208945(P2010−208945)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】