製造工期予測装置、製造工期予測方法、及びコンピュータプログラム
【課題】 製造実績データから、各通過工程パターンに属する製品が少数しか得られなくても、製造工期の予測を精度よく行えるようにする。
【解決手段】 各製品iの実績工期tiの尤度p(ti|pi,μ,v)が、実際に通過した工程の工期分布(正規分布)の平均μj、分散vjを積算することにより得られる平均μi〜、分散vi〜を有する正規分布N(μi〜,vi〜)に従うものとする。このような各製品iの実績工期tiの尤度p(ti|pi,μ,v)の積が最大となるときの工程別工期分布600を求める。そして、通過工程パターンにおいて通過していることが示されている工程の工期分布(平均μj、分散vj)の値を足し合わせることで通過工程パターン別工期分布の平均μk^と標準偏差σk^を求め、これらを用いて、通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)を求める。
【解決手段】 各製品iの実績工期tiの尤度p(ti|pi,μ,v)が、実際に通過した工程の工期分布(正規分布)の平均μj、分散vjを積算することにより得られる平均μi〜、分散vi〜を有する正規分布N(μi〜,vi〜)に従うものとする。このような各製品iの実績工期tiの尤度p(ti|pi,μ,v)の積が最大となるときの工程別工期分布600を求める。そして、通過工程パターンにおいて通過していることが示されている工程の工期分布(平均μj、分散vj)の値を足し合わせることで通過工程パターン別工期分布の平均μk^と標準偏差σk^を求め、これらを用いて、通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)を求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造工期予測装置、製造工期予測方法、及びコンピュータプログラムに関し、特に、製造仕様が異なる複数の製品を複数の工程を経て製造する際の当該製品の製造に要する期間である製造工期を予測するために用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼業を始めとする多くの産業における製品製造プロセスでは、顧客からの注文の内容に応じて適切に製品を製造することが求められる。例えば、鉄鋼業においては、顧客が要求する製品仕様(サイズ、強度、表面塗装有無等)を含む製品注文情報に合う製品を、要求された量だけ、要求された期日に納入することが求められている。
【0003】
また、顧客のニーズの多様化に伴い、製品注文情報、注文量、納期が注文毎に異なり、且つ、それぞれの注文の注文量が少量となってきており、いわゆる多品種少量生産が必要とされる傾向が強くなっている。よって、製品製造プロセスにおいては、全ての製品注文情報を満足する製品を低コストで製造することが求められている。さらに最近では、注文から納入までの期間が従来よりも短い、いわゆる「短工期」で製品を納入できることが製品の付加価値の一つとして大きな意味を持つようになってきている。
【0004】
以上のような背景の下、製造コストの増大を招くことなく、これらの要求に耐え得る製造実力を持つことが製造業に要求されている。これらの要求に対応する製造計画を立案する際には、通常は、注文毎に納期から標準工期(標準リードタイム)で遡ることで上流工程の作業着手希望日を定め、この作業着手希望日をできるだけ満たしつつ、製造ロットや生産能力等の他の計画立案上の条件を考慮して製造計画を立案している。
【0005】
ところが、実際の製造工場においては、処理工程の処理能力に制約があるために、各工程の仕掛による処理待ちが発生することや、処理工程の製造設備の故障等、操業上の様々な変動要素があることから、たとえ同一の製品注文情報の注文を製造する場合であっても、実際の製造に必要な期間はばらつくことが多い。このように、工期の変動が生じることから、前述した標準工期でも納期から遡ることで上流工程の製造着手目標時期を定め、その製造着手目標時期に上流工程での製造に着手したとしても納期を守れないことがある。
【0006】
また、このような納期遅れが発生しないようにするため、標準工期の算出にあたって、製造に必要な工期に加え、前記のような工期の変動を吸収するための余裕工期を加算することがある。このように余裕工期を含む標準工期を用いて最上流の製品製造プロセスでの作業希望日を計算すると、実際に必要な製造工期よりもかなり早めのタイミングで製造を開始することとなる。早期の製造開始は、途中工程での仕掛や倉庫における在庫となり、これらの仕掛や在庫がリードタイムの増大を招く。また、製品置場への半製品の占有に伴うハンドリング負荷の増大によって製造能力の阻害を招き、結果として工期を延ばすという悪循環が発生する。そのため、製造工期を精度良く予測することが望まれる。
【0007】
そこで、特許文献1では、各製造装置の処理前待ち時間分布の類似度に基づいて製造装置をクラスタリングし、各クラスタの処理前待ち時間代表モデル分布を算出し、その代表モデル分布の和を求めることで、全体工期の期待値と分散を予測する方法が提案されている。この特許文献1では、製造設備毎の工期分布を、設備使用回数情報を用いて重ね合わせることで全体工期の期待値と分散とを予測している。
しかしながら、複雑な製造工場においては、製品検査後に工程が追加されることがあり、製造前に設備使用回数がわからないことも多い。したがって、特許文献1に記載の技術では、このような場合に、製造工期を精度良く予測することが困難である。また、製品の種類が多岐に渡る製品製造プロセスでは、製品によってネックとなる製造設備が異なる。したがって、特許文献1に記載の技術では、このような場合、製造設備毎の工期分布が、注文の構成によってばらつくという課題がある。
【0008】
このような問題を解決するために、特許文献2では、決定木作成ロジックを用いて製品毎に通過工程パターン(各製造工程の通過の有無を示す0-1の情報の組み合わせ)を作成し、過去の実績データから通過工程パターン毎に算出される工期分布をもとに、目標の納期達成率を得ることができる工期を求め、それを製造工期としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−30088号公報
【特許文献2】特開2010−128679号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】山口和範、外2名、"図解入門よくわかる多変量解析の基本と仕組み"、株式会社秀和システム、2004年5月25日、p.143-168
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献2に記載の技術では、決定木の目的変数が増加することにより、通過工程パターンを決定するためのモデルの構造が大規模となり、管理が難しいモデルとなる。また、特許文献2に記載の技術では、通過工程パターンのビット間の距離(例えば、010000と010001とは距離が近いが、111011と000000とは距離が遠い)を全く考えずに通過工程パターンを予測してしまうため、製造工期の予測精度が悪くなってしまうという課題があった。このような課題については、本出願人により出願された特願2009−295661号により解決することができる。すなわち、この特許文献に記載されているように、製造工程毎に通過の有無を予測する決定木を作成することにより、このような課題を解決することができる。
【0012】
しかしながら、特許文献2に記載の技術では、通過工程パターン毎の工期分布をもとに製造工期を算出しているため、前述した課題とは別の更なる課題がある。すなわち、特許文献2に記載の技術では、製造実績データから、各通過工程パターンに属する製品が少数しか得られない場合には、正しい工期分布を表現することができないために、製造工期が実績データの取り方によって大きく異なってしまうという更なる課題がある。この課題については、特願2009−295661号に記載の技術でも未解決である。
【0013】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、製造実績データから、各通過工程パターンに属する製品が少数しか得られなくても、製造工期の予測を精度よく行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の製造工期予測装置の第1の例は、注文別の製造仕様を含む注文データから、当該注文の工期を予測する製造工期予測装置であって、複数の製造工程を通過して製造される各製品の製造実績を示すデータであって、製品の製造仕様と、各製造工程の通過の有無の実績値を示す情報である通過実績有無と、製品を製造するのに要した工期の実績を示す情報である実績工期とを含む製造実績データを取得する製造実績データ取得手段と、前記各製品に対する通過実績有無及び実績工期を用いて、製造工程別の工期の分布を規定するパラメータを導出する工程別工期分布導出手段と、前記工程別工期分布導出手段により導出された製造工程別の工期の分布を規定するパラメータと、前記各製品に対する通過実績有無とを用いて、前記通過実績有無の値を所定の順番で並べることにより得られる通過工程パターン別の工期分布を導出する通過工程パターン別工期分布導出手段と、前記製造実績データに含まれる製品の製造仕様を用いて、当該製品の各製造工程の通過の有無の予測値を前記所定の順番で並べることにより得られる品種を、前記製造実績データに含まれる製品のそれぞれについて決定する第1の品種決定手段と、前記通過工程パターン別の製品の数と、前記品種別の製品の数とを用いて、前記品種別の前記通過工程パターンの発生確率を導出する品種別通過工程パターン発生率導出手段と、前記通過工程パターン別工期分布と、前記品種別の前記通過工程パターンの発生確率とを用いて、品種別の工期分布を導出する品種別製造工期モデル導出手段と、前記注文データに含まれる製造仕様を用いて、当該注文データに含まれる注文の各製造工程の通過の有無の予測値を求め、当該注文の各製造工程の通過の有無の予測値を前記所定の順番で並べることにより得られる品種を、前記注文データに含まれる注文のそれぞれについて決定する第2の品種決定手段と、前記第2の品種決定手段により決定された品種と、前記品種別製造工期モデル導出手段により導出された品種別の工期分布とを用いて、注文別の製造工期を導出する品種入力注文別製造工期導出手段と、を有し、前記通過工程パターン別工期分布導出手段は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期の分布を規定するパラメータをそれぞれ足し合わせることにより得られたパラメータに基づいて定まる確率密度関数として、前記通過工程パターン別の工期分布を導出することを特徴とする。
本発明の製造工期予測装置の第2の例は、注文別の製造仕様を含む注文データから、当該注文の工期を予測する製造工期予測装置であって、複数の製造工程を通過して製造される各製品の製造実績を示すデータであって、製品の製造仕様と、各製造工程の通過の有無の実績値を示す情報である通過実績有無と、製品を製造するのに要した工期の実績を示す情報である実績工期とを含む製造実績データを取得する製造実績データ取得手段と、前記各製品に対する通過実績有無及び実績工期を用いて、製造工程別の工期の分布を規定するパラメータを導出する工程別工期分布導出手段と、前記工程別工期分布導出手段により導出された製造工程別の工期の分布を規定するパラメータと、前記各製品に対する通過実績有無とを用いて、前記通過実績有無の値を所定の順番で並べることにより得られる通過工程パターン別の工期分布を導出する通過工程パターン別工期分布導出手段と、前記注文データに含まれる注文のそれぞれについての通過工程パターンと、前記通過工程パターン別工期分布導出手段により導出された通過工程パターン別の工期分布とを用いて、注文別の製造工期を導出する通過工程入力注文別製造工期導出手段と、を有し、前記通過工程パターン別工期分布導出手段は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期の分布を規定するパラメータをそれぞれ足し合わせることにより得られたパラメータに基づいて定まる確率密度関数として、前記通過工程パターン別の工期分布を導出することを特徴とする。
【0015】
本発明の製造工期予測方法の第1の例は、注文別の製造仕様を含む注文データから、当該注文の工期を予測する製造工期予測方法であって、複数の製造工程を通過して製造される各製品の製造実績を示すデータであって、製品の製造仕様と、各製造工程の通過の有無の実績値を示す情報である通過実績有無と、製品を製造するのに要した工期の実績を示す情報である実績工期とを含む製造実績データを取得する製造実績データ取得工程と、前記各製品に対する通過実績有無及び実績工期を用いて、製造工程別の工期の分布を規定するパラメータを導出する工程別工期分布導出工程と、前記工程別工期分布導出工程により導出された製造工程別の工期の分布を規定するパラメータと、前記各製品に対する通過実績有無とを用いて、前記通過実績有無の値を所定の順番で並べることにより得られる通過工程パターン別の工期分布を導出する通過工程パターン別工期分布導出工程と、前記製造実績データに含まれる製品の製造仕様を用いて、当該製品の各製造工程の通過の有無の予測値を前記所定の順番で並べることにより得られる品種を、前記製造実績データに含まれる製品のそれぞれについて決定する第1の品種決定工程と、前記通過工程パターン別の製品の数と、前記品種別の製品の数とを用いて、前記品種別の前記通過工程パターンの発生確率を導出する品種別通過工程パターン発生率導出工程と、前記通過工程パターン別工期分布と、前記品種別の前記通過工程パターンの発生確率とを用いて、品種別の工期分布を導出する品種別製造工期モデル導出工程と、前記注文データに含まれる製造仕様を用いて、当該注文データに含まれる注文の各製造工程の通過の有無の予測値を求め、当該注文の各製造工程の通過の有無の予測値を前記所定の順番で並べることにより得られる品種を、前記注文データに含まれる注文のそれぞれについて決定する第2の品種決定工程と、前記第2の品種決定工程により決定された品種と、前記品種別製造工期モデル導出工程により導出された品種別の工期分布とを用いて、注文別の製造工期を導出する品種入力注文別製造工期導出工程と、を有し、前記通過工程パターン別工期分布導出工程は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期の分布を規定するパラメータをそれぞれ足し合わせることにより得られたパラメータに基づいて定まる確率密度関数として、前記通過工程パターン別の工期分布を導出することを特徴とする。
本発明の製造工期予測方法の第2の例は、注文別の製造仕様を含む注文データから、当該注文の工期を予測する製造工期予測方法であって、複数の製造工程を通過して製造される各製品の製造実績を示すデータであって、製品の製造仕様と、各製造工程の通過の有無の実績値を示す情報である通過実績有無と、製品を製造するのに要した工期の実績を示す情報である実績工期とを含む製造実績データを取得する製造実績データ取得工程と、前記各製品に対する通過実績有無及び実績工期を用いて、製造工程別の工期の分布を規定するパラメータを導出する工程別工期分布導出工程と、前記工程別工期分布導出工程により導出された製造工程別の工期の分布を規定するパラメータと、前記各製品に対する通過実績有無とを用いて、前記通過実績有無の値を所定の順番で並べることにより得られる通過工程パターン別の工期分布を導出する通過工程パターン別工期分布導出工程と、前記注文データに含まれる注文のそれぞれについての通過工程パターンと、前記通過工程パターン別工期分布導出工程により導出された通過工程パターン別の工期分布とを用いて、注文別の製造工期を導出する通過工程入力注文別製造工期導出工程と、を有し、前記通過工程パターン別工期分布導出工程は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期の分布を規定するパラメータをそれぞれ足し合わせることにより得られたパラメータに基づいて定まる確率密度関数として、前記通過工程パターン別の工期分布を導出することを特徴とする。
【0016】
本発明のコンピュータプログラムは、前記製造工期予測方法の各工程をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、製造実績データに含まれている通過実績有無の値を所定の順番で並べることにより得られる通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の分布のパラメータを足し合わせることにより得られたパラメータに基づいて定まる確率密度関数として、通過工程パターン別工期分布を導出する。
そして、本発明の第1の例では、製造実績データに含まれている製品の各製造工程の通過の有無の予測値を前記所定の順番で並べることにより得られる品種を当該製品のそれぞれについて決定して品種別の通過工程パターンの発生確率を導出し、前記通過工程パターン別工期分布と、前記品種別の通過工程パターンの発生確率とを用いて、品種別の工期分布を導出する。そして、注文データに含まれる注文の品種を当該注文のそれぞれについて決定し、決定した品種と、前記品種別の工期分布とを用いて、注文別の製造工期を導出する。
また、本発明の第2の例では、前記通過工程パターン別工期分布と、各注文の通過工程パターンとを用いて、注文別の製造工期を導出する。
したがって、各通過工程パターンに属する製品の数に大きく依存することなく通過工程パターン別の工期分布を算出することができる。よって、製造実績データから、各通過工程パターンに属する製品が少数しか得られなくても、製造工期の予測を精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態を示し、製造工期予測装置の機能的な構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を示し、製造実績データの一例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態を示し、ある工程の工程通過判定ロジックの一例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態を示し、製造番号別の通過有無変数と品種の一例を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態を示し、通過工程パターン発生率の一例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態を示し、工程別工期分布の一例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態を示し、通過工程パターン別工期分布の一例を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施形態を示し、品種別製造工期モデルの一例を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施形態を示し、注文データの一例を示す図である。
【図10】本発明の第1の実施形態を示し、注文別の通過有無変数と品種の一例を示す図である。
【図11】本発明の第1の実施形態を示し、目標荷揃達成率の一例を示す図である。
【図12】本発明の第1の実施形態を示し、注文別製造工期の一例を示す図である。
【図13】本発明の第1の実施形態を示し、製造工期予測装置の処理の一例を説明するフローチャートである。
【図14】本発明の第1の実施形態を示し、図13に続くフローチャートである。
【図15】本発明の第2の実施形態を示し、製造工期予測装置の機能的な構成の一例を示す図である。
【図16】本発明の第2の実施形態を示し、品種判定ロジックの一例を示す図である。
【図17】本発明の第2の実施形態を示し、製造番号別の品種の一例を示す図である。
【図18】本発明の第2の実施形態を示し、注文別の品種の一例を示す図である。
【図19】第1の比較例を示し、製造工期予測装置の機能的な構成を示す図である。
【図20】第1の比較例を示し、通過工程パターン別実績工期別製品枚数を示す図である。
【図21】第1の比較例を示し、通過工程パターン別工期分布を示す図である。
【図22】第2の比較例を示し、製造工期予測装置の機能的な構成を示す図である。
【図23】実施形態及び比較例による結果を表形式で対比して示す図である。
【図24】評価データの製造工期から実際の工期を減算した値と、製品の重量との関係の一例を示す図である。
【図25】本発明の第1、第2の実施形態の変形例を示し、製造工期予測装置の機能的な構成の一例を示す図である。
【図26】第1の実施形態の手法で求めた工程別工期分布の一例を示す図である。
【図27】第4の実施形態の手法で求めた工程別工期分布の一例を示す図である。
【図28】第5の実施形態の手法で求めた工程別工期分布の一例を示す図である。
【図29】第6の実施形態の手法で求めた工程別工期分布の一例を示す図である。
【図30】単回帰式の決定係数の一例を示す図である。
【図31】単回帰式の係数の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
<<第1の実施形態>>
図1は、製造工期予測装置100の機能的な構成の一例を示す図である。製造工期予測装置100のハードウェアは、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、及び各種インターフェースを備えた公知の情報処理装置を用いることにより実現することができるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
尚、本実施形態では、鉄鋼業における製造工場(例えば厚板製造工場)で製造される鉄鋼製品の製造工期を予測する場合を例に挙げて説明する。
【0020】
[製造実績データ取得部111]
製造実績データ取得部111は、製造実績データを外部から取得して記憶する。例えば、製造実績データ取得部111は、ユーザによるユーザインターフェースの入力操作に従って製造実績データを取得したり、リムーバル記憶媒体に記憶された製造実績データを読み出したり、外部装置から通信回線を介して製造実績データを受信したりすることによって、製造実績データを取得することができる。
【0021】
図2は、製造実績データ200の一例を示す図である。
図2において、製造実績データ200は、製品番号(製品No.)と、製造仕様と、通過実績有無と、実績工期とを含む。
製品番号は、製品を識別する番号である。
製造仕様は、製品の属性を示すものである。例えば、製品番号が「0001」の製品の製品仕様は、製品(鋼板)の板厚が30mmであり、製品の板幅が600mmであり、製品の重量が3.5tonであり、製品の製造方法がAであり、製品を製造する際の切断方法がaとなる。ここでは、板厚、板幅、重量、製法、及び切断方法が製造仕様である場合を例に挙げて示しているが、製造仕様の内容は、製品によって異なるものである。
【0022】
通過実績有無は、製品番号で識別される製品が通過した製造工程と、通過していない製造工程とを、対象となる(例えば製造工場に含まれる)全ての製造工程のそれぞれについて識別するためのものである。図2に示す例では、製品が通過した製造工程に対して「1」を付し、通過しなかった製造工程に対し「0」を付している。例えば、製品番号が「0002」の製品は、工程1と工程2の製造工程を通過せずに、工程10の製造工程を通過して製造されたものであることが、通過実績有無から判断される。尚、ここでは、工程10を倉庫への製品の入庫としているので、工程10についての通過実績有無の値は、必ず「1」となる(ビットが立つ)。
ここで、製造工程を通過する製品は、製品そのものに限られず、当該製品の原料、及び当該製品が完成する前の途中段階にある半製品も含むものである。また、製造工程を通過するとは、当該製造工程で行うべき処理(例えば、熱処理、加工、保管)がなされることを指す。
尚、製造工程の数が「10」である場合を例に挙げて示しているが、製造工程の数は「10」に限定されるものではない。また、以下の説明では、「製造工程」を必要に応じて「工程」と略称する。
【0023】
実績工期は、製品番号で識別される製品を製造するのに要した全工期である。例えば、製品番号が「0001」の製品の実績工期は5日である。
製造実績データ取得部111は、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、及び各種インターフェースを用いることにより実現することができる。
【0024】
[工程通過判定ロジック作成部112]
工程通過判定ロジック作成部112は、製品を製造するに際し、製品が通過する工程と通過しない工程とを工程毎に予測する工程通過判定ロジックを、製造実績データ200に含まれる製造仕様に基づいて作成する。本実施形態では、工程通過判定ロジックとして、決定木を採用する場合を例に挙げて説明する。
図3は、ある工程(例えば工程1)の工程通過判定ロジックの一例を示す図である。図3に示すように、本実施形態では、工程通過判定ロジック作成部112は、製造実績データ200に含まれる製造仕様を説明変数とし、各製品の各工程の通過の有無の予測値を示す通過有無変数を目的変数とする決定木を作成する。ここでは、ある工程の通過有無変数が「1」である製品は当該工程を通過することが予測される(当該製品は当該工程を通り易い)ことを意味し、「0」である製品は当該工程を通過しないことが予測される(当該製品は当該工程を通り難い)ことを意味するものとする。
【0025】
決定木とはデータの分析手法の一つであり、データを様々な条件に従って木の枝葉のように分類していく分析手法である。決定木は、製造不良の要因の特定や市場情報の分類等に使われている(例えば非特許文献1を参照)。決定木は、データの固まりである複数のノードから構成されており、データ全体を表すルートノード(根ノード)から始まり、末端のノード(リーフノード、葉ノード)に特定の属性を持つデータの割合が多くなるように、つまり偏りのあるデータが含まれるように、ノードを次々と分岐させながら作成される。得られたリーフノードへの分岐条件やリーフノードに属する過去のデータ(学習用データ)を用いることで決定木を各種の予測に使うことができる。ここで、予測したい属性を「目的変数」、データの分岐条件を記述する属性を「説明変数」と呼ぶ。決定木の作成にあたっては、目的変数や説明変数をどのように定義するか、決定木の大きさ(ノードの数や深さ)をどのように決定するかなどの設計パラメータの設定が、得られた決定木の予測精度や取扱いの容易さ等に深く関係するために極めて重要である。
【0026】
ここでは、設計パラメータとして、作成する決定木のリーフノードの数や木構造の深さ等を、決定木の構造に関するパラメータとして設定する。具体的には、一つのリーフノードが保有するデータ数の上限値を与えるものとする。この上限値を小さくするとリーフノードの数が増える、つまり決定木が大きく、深くなることとなる。より具体的には、データ数の上限値を100以上に増やしても予測精度が向上しなかったため、データ数の上限値を100とした。
工程通過判定ロジック作成部112は、このようにして得られる設計パラメータ、製造実績データ200に含まれる製造仕様、説明変数、及び目的変数に基づいて、図3に示すような決定木300を、決定木作成アルゴリズムにより工程毎に作成する。本実施形態では、工程の数が「10」であるので、図3に示すような決定木300が10個作成されることになる。
【0027】
図3に示す決定木300が工程1に対する決定木であるとすると、例えば、製法がBであり、重量が4.0ton(≧3.2ton)であり、板幅が700mm(<1500mm)である製造仕様の製品の通過有無変数は、「1」に分類されるので、工程1を通過することが予測される(工程1を通りやすい)ことになる。
工程通過判定ロジック作成部112は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0028】
[工程通過ロジック格納部113]
工程通過ロジック格納部113は、工程通過判定ロジック作成部112で作成された決定木300を格納する。
工程通過ロジック格納部113は、例えば、HDDを用いることにより実現することができる。
【0029】
[第1の品種作成部114]
第1の品種作成部114は、製造実績データ200に含まれる製造仕様を、工程通過ロジック格納部113に格納されている決定木300に適用して、製造実績データ200に含まれる各製品のそれぞれについて、各工程の通過の有無の予測値(通過有無変数(=「1」又は「0」))を求め、当該通過有無変数を結合した情報を、当該製品の品種の情報として作成する。
【0030】
図4は、製造実績データ200から得られる、製造番号別の通過有無変数と品種の一例を示す図である。
図4において、製造実績データ200に含まれる製造仕様を、図3に示すような決定木300に適用することによって、各工程の通過有無変数401が製品毎に得られる。番号の小さい工程の通過有無変数401であるほど上位のビットとなるように、各工程の通過有無変数401の値を並べることを製品毎に行うことにより、製品毎に品種402が作成される。図4に示す結果と、図2に示す結果とを比較すると、例えば、製造番号が「0001」の製品の工程1の通過実績は「1」であるのに対し(図2を参照)、同じ製造番号が「0001」の製品の工程1の通過予測は「0」となっている(図4を参照)。このように、統計的手法には予測誤差が生じることもある。
第1の品種作成部114は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0031】
[品種別通過工程パターン発生率作成部115]
品種別通過工程パターン発生率作成部115は、製造実績データ200に基づいて、品種毎の通過工程パターン発生率を算出する。
通過工程パターン発生率とは、製造実績データ200の通過実績有無を番号の小さい工程のものから順に並べた通過工程パターン(の実績値)に属する製品の数を、当該通過工程パターンと同値の品種に属する製品の数で割った値である。例えば、通過工程パターン(の実績値)が「0101010000」である製品が9500枚であり、品種が「0101010000」であると判定された製品が10000枚あるとする。この場合、品種が「0101010000」の製品の通過工程パターン「0101010000」の発生率は0.95(=9500/10000)となる。
図5は、品種毎の通過工程パターン発生率500の一例を示す図である。図5において、ある一つの品種についての通過工程パターン発生率の和(図5の各行における通過工程パターン発生率の和)は「1」となる。
品種別通過工程パターン発生率作成部115は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0032】
[工程別工期分布作成部116]
工程別工期分布作成部116は、製造実績データ200(通過実績有無及び実績工期)を用いて、工期別工期分布を算出する。工期分布は、ヒストグラムで表されたり、近似関数(分布関数)で表されたりする。本実施形態では、工期分布が正規分布で表される場合を例に挙げて説明する。以下に、工程別工期分布の作成方法の一例を説明する。
【0033】
まず、以下のように記号を定義する。
(a)製品iの実績工期をtiとし、工程jの通過工程有無をpijとする。
(b)製品iの通過工程パターン(の実績値)をpi=(pi1,pi2,・・・,piM)と記載する。ここで、Mは工程の数であり、図2に示す例では、Mは10となる。
(c)全製品の実績工期をt=(t1,t2,・・・,tN)Tとする。ここで、Nは製品の総数であり、Tは転置行列であることを示す。
(d)全製品の通過工程パターン(の実績値)をP={pij}とする。
(e)工程jの工期分布は、平均μj、分散vj(=σj2)の正規分布であるとする。ここで、平均μj、分散vjが工程別工期分布の決定変数となる。
(f)実績工期tiは、通過工程パターン(の実績値)毎の正規分布に従うものとする。
(g)全工程の工期分布の平均値をμ=(μ1,μ2,・・・,μM)とし、分散をv=(v1,v2,・・・,vM)とする。
また、ここでは、
(h)各工程の工期分布は、他の工程の工期分布から独立するものとする(すなわち、共分散を考慮しないものとする)。
【0034】
そうすると、製品iについて実績工期tiが得られる尤度p(ti|pi,μ,v)は、以下の(1)式及び(2)式で表される。
【0035】
【数1】
【0036】
(1)式の左辺は、製品iの通過工程パターン(の実績値)としてpiが、全工程の工期分布の平均値としてμが、全工程の工期分布の分散としてvがそれぞれ与えられたときに実績工期tiが得られる尤度を表す。一方、(1)式の右辺は、製品iの実績工期tiは、平均がμi〜、分散がvi〜である正規分布Nに従って発生することを表す。したがって、(1)式は、製品iについて実績工期tiが得られる尤度p(ti|pi,μ,v)の分布は、平均がμi〜、分散がvi〜である正規分布N(μi〜,vi〜)に従うことを表す。
ここで、平均μi〜は、製品iが通過した工程jの工期分布の平均μjの和を表す。また、分散vi〜は、製品iが通過した工程jの工期分布の分散vjの和を表す。
【0037】
(1)式及び(2)式より、全製品の実績工期tが得られる尤度p(t|P,μ,v)は、以下の(3)式で表される。
【0038】
【数2】
【0039】
(3)式は、全製品の実績工期tが得られる尤度p(t|P,μ,v)は、全ての製品iの実績工期t1、t2、・・・、tNの尤度の積により表されることを示している。
(3)式から、対数尤度は、以下の(4)式で表される。
【0040】
【数3】
【0041】
(4)式の対数尤度を最大にするためには、以下の(5)式で表される評価関数Jを最小にする平均μj、分散vjを求めればよい。
【0042】
【数4】
【0043】
(5)式の評価関数Jは、全ての製品iの実績工期t1、t2、・・・、tNの尤度の積が大きいほど値が小さくなる評価関数である。(5)式を評価関数として、平均μj、分散vjを計算するようにしてもよいが、製品の数であるNの値が大きいと、(5)式の最適化計算が困難になる。そこで、本実施形態では、(5)式の評価関数を以下のように書き換える。
ここで、以下の記号を定義する。
(i)通過工程パターンの種類の数をKとする。
(j)通過工程パターンk(k=1,2,・・・,K)をqk=(qk1,qk2,・・・,qkM)とする。
(k)通過工程パターンkに属する製品の数をNk^とする。
(l)通過工程パターンkの工期分布の平均μk^と分散vk^が、以下の(6)式で表されるものとする。
【0044】
【数5】
【0045】
ここで、平均μk^は、通過工程パターンkにおいて通過したことが示されている工程jの工程分布の平均μjの和を表す。また、分散がvk^は、通過工程パターンkにおいて通過したことが示されている工程jの工程分布の分散vjの和を表す。
以上の(i)〜(l)により、(5)式の評価関数Jは、以下の(7)式で表される評価関数Jに書き直すことができる。
【0046】
【数6】
【0047】
(7)式に示す評価関数Jは、通過工程パターンの種類の数Kの項の和で表現される。また、(7)式において、右辺第1項と第4項のNk^と、右辺第2項と第4項の積算(Σ(ti)2、Σti)は、製造実績データ200を集計することにより計算することができる。よって、(7)式に示す評価関数Jを使って最適化計算を行う方が、(5)式の評価関数Jを使って最適化計算を行うよりも容易である。尚、この最適化計算は、滑降シンプレックス法、準ニュートン法等の公知の非線形最適化計算手法を用いることにより実行することができる。工程別工期分布作成部116は、製造実績データ200(通過実績有無及び実績工期)を、(6)式、(7)式に与えて最適化計算を行うことにより、平均μj、分散vjを、工程別工期分布のパラメータの一例として計算する。
【0048】
図6は、以上のようにして計算された工程別工期分布600の一例を示す図である。ここでは、Nelder=Meanの滑降シンプレックス法を用いて最適化計算を行った。尚、図6において、標準偏差σjは、分散vjの平方根(=√vj)で表される。
工程別工期分布作成部116は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0049】
[通過工程パターン別工期分布作成部117]
通過工程パターン別工期分布作成部117は、工程別工期分布作成部116で作成された工程別工期分布600を用いて、通過工程パターン別工期分布を算出する。
まず、(6)式の関係から、工程別工期分布600を基にして、通過工程パターン別工期分布の平均μk^と標準偏差σk^を算出する(図7の変換前の値701の欄を参照)。
例えば、通過工程パターン(の実績値)が「0100010001」の製品は、工程2、工程6、及び工程10を通過しているので、この通過工程パターンの工期分布の平均μk^と標準偏差σk^は、以下の(8)式、(9)式で表される。
【0050】
μk^=25.5+20.1+0.4=46.0 ・・・(8)
σk^=sqrt(14.72+8.02+1.42)=16.8 ・・・(9)
次に、通過工程パターン別工期分布作成部117は、工期分布を対数正規分布と仮定し、平均がμk^であり、且つ、分散がvk^(=σk^2)である対数正規分布を導出する。ここで、平均がμk^、分散がvk^となるような対数正規分布のパラメータμk^´とvk^´は、以下の(10)式、(11)式を用いて計算される。
【0051】
【数7】
【0052】
このようにして得られた対数正規分布のパラメータμk^´、σk^´(=√vk^´)を、図7の変換後の値702の欄に示す。
そして、本実施形態では、通過工程パターン別工期分布を、以下の(12)式で表すものとする。
【0053】
【数8】
【0054】
ただし、本実施形態では、この(12)式を(13)式のように離散化することによって、通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)を得るようにしている。すなわち、通過工程パターン別工期分布作成部117は、以下の(13)式の計算を行うことによって、通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)を算出する。このようにして得られた通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)を、図7の通過工程パターン別工期分布703の欄に示す。通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)は、通過工程パターンkの製品の工期が工期tΔ=(0,1,2,・・・)である確率を意味する。尚、(13)式では、(12)式の確率密度関数を1日単位で離散化する場合を例に挙げて説明しているが、離散化する方法は、このような方法に限定されるものではない。
【0055】
【数9】
【0056】
通過工程パターン別工期分布作成部117は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0057】
[品種別製造工期モデル作成部118]
品種別製造工期モデル作成部118は、品種別通過工程パターン発生率作成部115で作成された品種毎の通過工程パターン発生率500(図5を参照)と、通過工程パターン別工期分布作成部117で作成された通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)とを用いて、品種別製造工期モデルを作成する。本実施形態では、以下の(14)式により、品種がlである製品の工期がtΔである確率PΔ(tΔ|l)を品種別製造工期モデルとして計算するようにしている。
【0058】
【数10】
【0059】
(14)式において、ratelkは、品種lの通過工程パターンkの通過工程パターン発生率500である。
(14)式は、品種がlである製品の通過工程パターンがkである確率PΔ(tΔ|k)に、製造実績データ200から算出された、品種lの通過工程パターンkの発生率(通過工程パターン発生率500)を掛け合わせたものを、全ての通過工程パターンkについて積算したものが、品種別製造工期モデルであることを表している。
図8は、以上のようにして得られた品種別製造工期モデル800の一例を示す図である。図8の各欄に示されている値が、(14)式の左辺(PΔ(tΔ|l))の値となる。
品種別製造工期モデル作成部118は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0060】
[品種別製造工期モデル格納部119]
品種別製造工期モデル格納部119は、品種別製造工期モデル作成部118で作成された品種別製造工期モデル800を格納する。
品種別製造工期モデル格納部119は、例えば、HDDを用いることにより実現することができる。
【0061】
[注文データ取得部120]
注文データ取得部120は、注文データを外部から取得して記憶する。例えば、注文データ取得部120は、ユーザによるユーザインターフェースの入力操作に従って注文データを取得したり、リムーバブル記憶媒体に記憶された注文データを読み出したり、外部装置から通信回線を介して注文データを受信したりすることによって、注文データを取得することができる。
【0062】
図9は、注文データ900の一例を示す図である。
図9において、注文データ900は、注文番号(注文No.)と、製造仕様とを含む。
注文番号は、注文を識別する番号である。
製造仕様は、製品の属性を示すものであり、図2に示した製造実績データ200における製造仕様と同じ属性(項目)を有している。図9に示す各製造仕様の内容は前述した通りであるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
注文データ取得部120は、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、及び各種インターフェースを用いることにより実現することができる。
【0063】
[工程通過判定部121]
工程通過判定部121は、注文データ900に含まれている製造仕様を、工程通過ロジック格納部113に格納されている決定木300(図3を参照)に適用して、各工程の通過のし易さ(通過有無変数(=「1」又は「0」))を注文毎に判定する。
工程通過判定部121は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0064】
[第2の品種作成部122]
第2の品種作成部122は、工程通過判定部121により得られた通過有無変数の値を、番号の小さい工程の通過有無変数であるほど上位のビットとなるように並べることを注文毎に行うことにより、注文別の品種を作成する。
図10は、注文データ900から得られる、注文別の通過有無変数1001と品種1002の一例を示す図である。尚、品種の作成方法の説明は、第1の品種作成部114の説明で既に行っているので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
第2の品種作成部122は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0065】
[目標荷揃達成率設定部123]
目標荷揃達成率設定部123は、目標荷揃達成率を設定する。目標荷揃達成率とは、注文量に対する、納期までに荷揃う(出荷できる)製品の量の割合である。本実施形態では、製品を鉄鋼製品としているので、例えば、注文の重量に対する、納期までに荷揃う製品の重量の割合で目標荷揃達成率を定めることができる。目標荷揃達成率の値は、ユーザの希望に応じて定められるものである。本実施形態では、目標荷揃達成率設定部123は、ユーザによるユーザインターフェースの操作に基づいて、目標荷揃達成率の値を識別し、当該目標荷揃達成率の値を記憶することにより、目標荷揃達成率を設定する。
【0066】
図11は、目標荷揃達成率1100の一例を示す図である。図11に示すように、ここでは、品種や注文に関わらず、目標荷揃達成率として一律に0.95を設定するようにした。ただし、目標荷揃達成率は、例えば、品種毎及び注文毎の少なくとも何れか一方毎に設定されるようにしてもよい。
目標荷揃達成率設定部123は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0067】
[品種入力注文別製造工期算出部124]
品種入力注文別製造工期算出部124は、品種別製造工期モデル格納部119に格納されている品種別製造工期モデル800(図8を参照)と、第2の品種作成部122により作成された注文別の品種1002(図10を参照)と、目標荷揃達成率設定部123により設定された目標荷揃達成率1100(図11を参照)とを用いて、注文毎に工期tを算出する。
本実施形態では、品種入力注文別製造工期算出部124は、以下の(15)式を満足する工期tを、注文毎(注文に対応する品種毎)に算出する。
【0068】
【数11】
【0069】
(15)式において、αは、目標荷揃達成率[−]である。また、前述したように、PΔ(tΔ|l)は、品種がlである製品の工期がtΔである確率[−]であり、図8に示した品種別製造工期モデル800の各欄の値である。(15)式は、目標荷揃達成率αの荷揃いをするのに最低限必要となる日数を工期tとして求めることを表す。
このように本実施形態では、品種別製造工期モデル800と、注文別の品種と、目標荷揃達成率1100とを用いて注文毎の工期tを算出するようにする場合を例に挙げて説明した。しかしながら、品種別製造工期モデル800と、注文別の品種とを用いて注文毎の工期tを算出するようにしていれば、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、PΔ(tΔ|l)が正規分布であると仮定し、このPΔ(tΔ|l)の平均μ・標準偏差σと、ユーザにより設定される定数xとを用いて、以下の(16)式のようにして工期tを、注文毎(注文に対応する品種毎)に算出するようにしてもよい。
PΔ(tΔ|l)=μ+x×σ ・・・(16)
図12は、注文毎の工期である注文別製造工期1200の一例を示す図である。
品種入力注文別製造工期算出部124は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。図12の各欄に記載されている値が、注文毎の工期tである。
【0070】
[品種入力注文別製造工期格納部125]
品種入力注文別製造工期格納部125は、品種入力注文別製造工期算出部124で算出された注文別製造工期1200を格納する(図12を参照)。
品種入力注文別製造工期格納部125は、例えば、HDDを用いることにより実現することができる。
[品種入力注文別製造工期出力部126]
品種入力注文別製造工期出力部126は、品種入力注文別製造工期格納部125に格納された注文別製造工期1200の情報を出力する。具体的に説明すると、例えば、品種入力注文別製造工期出力部126は、注文別製造工期1200の情報について、表示装置への表示、外部装置への送信、及びリムーバブル記憶媒体への記憶の少なくとも何れか1つを行う。注文別製造工期1200の情報の出力は、ユーザによるユーザインターフェースの操作に基づいて行うようにてもよいし、予め設定されたタイミングで自動的に行うようにしてもよい。
品種入力注文別製造工期出力部126は、例えば、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、及び各種インターフェースを用いることにより実現することができる。
【0071】
[動作フローチャート]
次に、図13、図14のフローチャートを参照しながら、製造工期予測装置100の処理の一例を説明する。
まず、ステップS1301において、製造実績データ取得部111は、製造実績データ200を取得するまで待機する。そして、製造実績データ200を取得すると、ステップS1302に進む。ステップS1302に進むと、工程通過判定ロジック作成部112は、図3に示すような決定木300を、決定木作成アルゴリズムにより工程毎に作成する。
【0072】
次に、ステップS1303において、工程通過ロジック格納部113は、ステップS1302で作成された(工程毎の)決定木300を格納する。
次に、ステップS1304において、第1の品種作成部114は、製造実績データ200に含まれる製造仕様を、決定木300に適用して、製造実績データ200に含まれる各製品のそれぞれについて、各工程の通過の有無の予測値(通過有無変数401)を求め、当該通過有無変数を結合した情報を、当該製品の品種402の情報として作成する。
【0073】
次に、ステップS1305において、品種別通過工程パターン発生率作成部115は、製造実績データ200の通過実績有無を番号の小さい工程のものから順に並べた通過工程パターン(の実績値)に属する製品の数を、通過工程パターンと同値の品種に属する製品の数で割ることにより、品種毎の通過工程パターン発生率500を算出する。
次に、ステップS1306において、工程別工期分布作成部116は、製造実績データ200(通過実績有無及び実績工期)を、(6)式、(7)式に与えて最適化計算を行うことにより、工程別工期分布600(平均μj、分散vj)を求める。
【0074】
次に、ステップS1307において、通過工程パターン別工期分布作成部117は、工程別工期分布600を基にして、通過工程パターン別工期分布の平均μk^と標準偏差σk^を算出し(図7の変換前の値701の欄を参照)、平均μk^と分散vk^を用いて表現される対数正規分布のパラメータμk^´、vk^´(=σk^´2)
を用いて(図7の変換後の値702の欄を参照)、(12)式、(13)式の計算を行って、通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)を算出する(図7の通過工程パターン別工期分布703の欄を参照)。
【0075】
次に、ステップS1308において、品種別製造工期モデル作成部118は、品種毎の通過工程パターン発生率500と、通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)とを用いて、(14)式の計算を行って、品種がlである製品の工期がtΔである確率PΔ(tΔ|l)を品種別製造工期モデル800として計算する。
次に、ステップS1309において、品種別製造工期モデル格納部119は、ステップS1308で作成された品種別製造工期モデル800を格納する。
【0076】
次に、図14のステップS1401において、注文データ取得部120は、注文データ900を取得するまで待機する。そして、注文データ900を取得すると、ステップS402に進む。ステップS1402に進むと、工程通過判定部121は、注文データ900に含まれている製造仕様を、決定木300に適用して、各工程の通過の有無の予測値(通過有無変数)を注文毎に判定する。
【0077】
次に、ステップS1403において、第2の品種作成部122は、ステップS1402で得られた通過有無変数の値を、番号の小さい工程の通過有無変数であるほど上位のビットとなるように並べることを注文毎に行うことにより、注文別の品種1002を作成する。
次に、ステップS1404において、目標荷揃達成率設定部123は、目標荷揃達成率1100を設定する。
次に、ステップS1405において、品種入力注文別製造工期算出部124は、品種別製造工期モデル800と、注文別の品種と、目標荷揃達成率1100とを用いて、(15)式を満足する工期tを、注文毎(注文に対応する品種毎)に算出する。この算出結果が、注文別製造工期1200となる。
【0078】
次に、ステップS1406において、品種入力注文別製造工期格納部125は、ステップS1405で算出された注文別製造工期1200を格納する。
最後に、ステップS1407において、品種入力注文別製造工期出力部126は、注文別製造工期1200の情報を出力する。尚、前述したように、ステップS1407の処理は、ユーザからの指示があった場合に行うようにしてもよい。
【0079】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態と第1の実施形態とは、品種判定ロジックと、注文データから品種判定ロジックを使って注文毎の品種を判定する処理とが主として異なる。したがって、本実施形態の説明において、前述した第1の実施形態と同一の部分については、図1〜図14に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0080】
図15は、製造工期予測装置1500の機能的な構成を示す図である。
[品種判定ロジック作成部1512]
品種判定ロジック作成部1512は、製造実績データ200に含まれる製造仕様から通過工程パターン(品種)を予測する品種判定ロジックを作成するものである。品種判定ロジック作成部1512は、工程通過判定ロジック作成部112に対応するものである。
本実施形態では、品種判定ロジックとして、決定木を採用する。
【0081】
図16は、品種判定ロジックの一例を示す図である。図16に示すように、品種判定ロジック作成部1512は、製造実績データ200に含まれる製造仕様を説明変数とし、通過工程パターンを目的変数とする決定木1600を作成する。本実施形態では、工程通過判定ロジック作成部112は、工程毎に決定木300を作成するようにしている。これに対し、本実施形態では、品種判定ロジック作成部1512は、1つの決定木1600を作成する。
品種判定ロジック作成部1512は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0082】
[品種判定ロジック格納部1513]
品種判定ロジック格納部1513は、品種判定ロジック作成部1512で作成された決定木1600を格納する。
品種判定ロジック格納部1513は、例えば、HDDを用いることにより実現することができる。
図17は、製造実績データ200から得られる、製造番号別の品種の一例を示す図である。
図4に示す品種402と、図17に示す品種1700は、同じ製造実績データ200から求めたものであるが、異なる値となる。これらの品種402、1700を得るためのロジックが異なるためである。
【0083】
[品種判定部1521]
品種判定部1521は、注文データ900に含まれている製造仕様を、品種判定ロジック格納部1513に格納されている決定木1600(図16を参照)に適用して、注文別の品種を作成する。
図18は、注文データ900から得られる、注文別の品種の一例を示す図である。本実施形態では、決定木1600の目的変数を通過工程パターンとしているので、品種判定部1521は、注文データ900に含まれている製造仕様を、決定木1600に適用することにより、品種を直接的に求める。
品種判定部1521は、図1に示した工程通過判定部121及び第2の品種作成部122に対応するものである。
品種判定部1521は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0084】
<<第1の比較例>>
次に、第1の比較例について説明する。
図19は、本比較例の製造工期予測装置1900の機能的な構成を示す図である。尚、図19において、図1及び図15に示したものと同一の処理部については、図1及び図15に付した符号と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0085】
本比較例の製造工期予測装置1900は、工程別工期分布作成部116及び通過工程パターン別工期分布作成部117の代わりに、通過工程パターン別工期分布作成部1916を用いている点が第2の実施形態の製造工期予測装置1500と異なる。
【0086】
[通過工程パターン別工期分布作成部1916]
通過工程パターン別工期分布作成部1916は、製造実績データ200から、通過工程パターン別実績工期別製品枚数を算出する。
図20は、通過工程パターン別実績工期別製品枚数2000を示す図である。
図20において、例えば、通過工程パターンが「0000000001」の製品のうち、実績工期が「0」である製品の枚数は「422」枚となる。
次に、通過工程パターン別工期分布作成部1916は、通過工程パターン別実績工期別製品枚数2000を通過工程パターン別の製品の実績製造枚数で割ることにより、通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)を算出する。
【0087】
図21は、通過工程パターン別工期分布2100を示す図である。
図21において、例えば、通過工程パターンが「0000000001」の製品の実績製造枚数が460枚であった場合、図20に示すように、実績工期が「0」である製品の枚数は422であるので、422を460で割ることにより、通過工程パターンが「0000000001」の製品の工期が「0」である確率は0.917(=422/460)となる。
前述したように、通過工程パターン別工期分布作成部1916は、工程別工期分布作成部116及び通過工程パターン別工期分布作成部117に対応するものである。
通過工程パターン別工期分布作成部1916は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0088】
<<第2の比較例>>
次に、第2の比較例について説明する。
図22は、本比較例の製造工期予測装置2200の機能的な構成を示す図である。本比較例の製造工期予測装置2200は、図19に示した第1の比較例の製造工期予測装置1900に対し、品種判定ロジック作成部1512及び品種判定ロジック格納部1513の代わりに、第1の実施形態で説明した「工程通過判定ロジック作成部112、工程通過ロジック格納部113、及び第1の品種作成部114」を用いると共に、品種判定部1521の代わりに、第1の実施形態で説明した工程通過判定部121及び第2の品種作成部122を用いるようにしたものである。
【0089】
<本実施形態と比較例との対比>
図23は、実施形態及び比較例による結果を表形式で対比して示す図である。
図23において、A1、A2、B1、B2は、図1、図15、図19、図22に破線で示しているA1、A2、B1、B2の処理部を使用していることを示す。すなわち、図22において、A1、B1で特定される欄に記載されている結果が、第1の実施形態の手法による結果を示し、A2、B1で特定される欄に記載されている結果が、第2の実施形態の手法による結果を示す。A2、B2で特定される欄に記載されている結果が、第1の比較例の手法による結果を示し、A1、B2で特定される欄に記載されている結果が、第2の比較例の手法による結果を示す。
【0090】
ここでは、製造実績データを学習データと評価データとに分け、学習データを用いて作成した「工程通過判定ロジック・品種判定ロジック」及び「品種別製造工期モデル」を用いて、評価データの製造工期を評価した。
【0091】
図23の各評価指標について説明する。
まず、在庫量について説明する。
図24は、評価データの製造工期から実際の工期を減算した値(製造工期−実績工期)と、製品の重量との関係の一例を示す図である。
図24に示すグラフ2401は、全ての注文データのそれぞれについて、評価データの製造工期から実際の工期を減算し、この減算値が同じ値となる注文の重量の総和を求めることにより得られる。図24において、グラフ2401のうち、横軸(製造工期−実績工期)が0より大きい領域(図24の斜線の領域)における「横軸の値」×「縦軸の値」の(日毎の値の)合計を評価データの期間(日数)で割った値が1日当りの在庫量となる。図23の「在庫量」は、このように計算された1日当りの在庫量を示す。
【0092】
次に、荷揃達成率は、注文の総重量(評価データに属する製品の総重量)に対する、評価データの製造工期が実績工期以上(製造工期≧実績工期)となった注文の重量割合である。
次に、平均工期は、評価データの製造工期の平均値である。
次に、ロバスト性は、学習データを用いて算出した標準工期と、評価データを用いて算出した標準工期との相関を表す係数である。ここで、これらの標準工期を求める際には、学習データを用いて作成した同じ決定木を使用する。また、標準工期とは、目標荷揃達成率を品種毎に設定することにより算出された品種別製造工期モデルを用いて得られた製造工期である。
【0093】
次に、品種一致率は、学習データで作成した決定木と、評価データで作成した決定木とを、評価データに適用したときに求まるそれぞれの品種がどの程度一致しているのかを表す。完全一致とは、決定木から得られた品種のうち、評価データから定まる通過工程パターンと全てのbitで一致している品種の数を、評価データに含まれる製品の総数で割ることにより得られる。1bit違いとは、決定木から得られた品種のうち、評価データから定まる通過工程パターンに対して1bitだけ値が違う品種の数を、評価データに含まれる製品の総数で割ることにより得られる。また、2bit違いとは、決定木から得られた品種のうち、評価データから定まる通過工程パターンに対して2bitだけ値が違う品種の数を、評価データに含まれる製品の総数で割ることにより得られる。
【0094】
図23に示すように、品種別製造工期モデルを、第1、第2の実施形態のようにして作成すると、ロバスト性が向上することが分かる。
第1、第2の実施形態では、各製品iの実績工期tiの尤度p(ti|pi,μ,v)が、実際に通過した工程の工期分布(正規分布)の平均μj、分散vjを積算することにより得られる平均μi〜、分散vi〜を有する正規分布N(μi〜,vi〜)に従うものとする。そして、このような各製品iの実績工期tiの尤度p(ti|pi,μ,v)の積が最大となるときの工程別工期分布600を求める。そして、通過工程パターンにおいて通過していることが示されている工程の工期分布(平均μj、分散vj)の値を足し合わせることで通過工程パターン別工期分布の平均μk^と標準偏差σk^を求め、これらを用いて、通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)を求める(図7を参照)。
【0095】
これに対し、第1、第2の比較例では、各通過工程パターンに属する製品の実績工期を集計して、通過工程パターン別工期分布2100を作成するので、各通過工程パターンに属する製品の枚数が少ないと、有意な通過工程パターン別工期分布を得ることができず、通過工程パターン別工期分布の精度を高めることが困難になる。これにより、製造工期の算出結果が学習データの取り方によって大きく異なってしまう。
一方、第1、第2の実施形態では、工程別工期分布600の値を足し合わせることで、通過工程パターン別工期分布のパラメータの一例である平均μk^と標準偏差σk^を求めるようにしているので、各通過工程パターンに属する製品の枚数に(大きく)依存することなく通過工程パターン別の工期分布を算出することができる(すなわち、ロバスト性を高めることができる)。よって、製造工期を安定して算出することができる。すなわち、製造実績データ200から、各通過工程パターンに属する製品が少数しか得られなくても、製造工期の予測を精度よく行うことができる。
【0096】
また、図23から、製造仕様を説明変数とし、通過有無変数を目的変数とする決定木300を工程毎に作成した方が(A1の方が)、製造仕様を説明変数とし、通過工程パターンを目的変数とする決定木1600を1つ作成するよりも(A2よりも)、在庫量が少なく、平均工期が短く、しかも品種一致率が高くなる。
製造仕様を説明変数とし、通過工程パターンを目的変数とする決定木1600では、通過工程パターンをダイレクトに求めるため、各通過工程パターンを分類する際に、各通過工程パターンの各ビットの距離を考慮することができない。よって、分類された通過工程パターンには、正解となる通過工程パターンから大きく外れているものも含まれることになる。これに対し、第1、第2の実施形態では、各通過工程パターンの各ビット(工程)を求めるため、正解となる通過工程パターンから大きく外れる通過工程パターンが得られづらくなる。したがって、製造工期を精度よく予測することができる。
また、図16に示す決定木1600では、目的変数の数が最大で2の(工程数)乗となるため、サイズの大きな決定木となる。これに対し、図3に示す決定木300では、目的変数が「0」、「1」の2種類であるため、サイズの小さな決定木となる。
以上のことから、第1の実施形態のようにして決定木300を作成した方が、第2の実施形態のようにして決定木1600を作成するよりも望ましいことが分かる。
【0097】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第1、第2の実施形態では、各注文の通過工程パターンを求めるようにした。これに対し、本実施形態では、注文データに含まれる各注文の通過工程パターンが予め分かっている場合に注文別製造工期を算出して出力する場合について説明する。
図25は、本変形例における製造工期予測装置2500の機能的な構成の一例を示す図である。
【0098】
本実施形態の製造工期予測装置2500は、第1の実施形態の製造工期予測装置100から、A1の処理部(工程通過判定ロジック作成部112、工程通過ロジック格納部113、及び第1の品種作成部114)と、品種別通過工程パターン発生率作成部115と、品種別製造工期モデル作成部118と、工程通過判定部121と、第2の品種作成部122とを削除し、第1の実施形態の製造工期予測装置100の品種別製造工期モデル格納部119、注文データ取得部120、品種入力注文別製造工期算出部124、品種入力注文別製造工期格納部125、品種入力注文別製造工期出力部126の代わりに、それぞれ通過工程パターン別工期分布格納部2519、注文データ取得部2520、通過工程入力注文別製造工期算出部2524、通過工程入力注文別製造工期格納部2525、通過工程入力注文別製造工期出力部2526を用いるようにしたものである。
【0099】
同様に、本実施形態の製造工期予測装置2500は、第2の実施形態の製造工期予測装置1500から、A2の処理部(品種判定ロジック作成部1512、品種判定ロジック格納部1513)と、品種別通過工程パターン発生率作成部115と、品種別製造工期モデル作成部118と、品種判定部1521とを削除し、第2の実施形態の製造工期予測装置1500の品種別製造工期モデル格納部119、注文データ取得部120、品種入力注文別製造工期算出部124、品種入力注文別製造工期格納部125、品種入力注文別製造工期出力部126の代わりに、それぞれ通過工程パターン別工期分布格納部2519、注文データ取得部2520、通過工程入力注文別製造工期算出部2524、通過工程入力注文別製造工期格納部2525、通過工程入力注文別製造工期出力部2526を用いるようにしたものである。
以下に、本実施形態の製造工期予測装置2500のうち、第1及び第2の実施形態の製造工期予測装置100、1500と異なる構成の一例を説明する。
【0100】
[通過工程パターン別工期分布格納部2519]
通過工程パターン別工期分布格納部2519は、通過工程パターン別工期分布作成部117で作成された通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)を格納する。
通過工程パターン別工期分布格納部2519は、例えば、HDDを用いることにより実現することができる。
【0101】
[注文データ取得部2520]
注文データ取得部2520は、注文データを外部から取得して記憶する。第1、第2の実施形態の注文データ取得部120で取得される注文データには、通過工程パターンが含まれていないが、本実施形態の注文データ取得部2520で取得される注文データには、各注文における通過工程パターンが含まれる。注文データの取得方法は、例えば、第1及び第2の実施形態の注文データ取得部120と同じである。尚、ここでは、各注文における通過工程パターンを注文データに含めることにより、各注文における通過工程パターンを取得するようにしたが、注文データとは別に、各注文における通過工程パターンを取得するようにしてもよい。
注文データ取得部2520は、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、及び各種インターフェースを用いることにより実現することができる。
【0102】
[通過工程入力注文別製造工期算出部2524]
通過工程入力注文別製造工期算出部2524は、通過工程パターン別工期分布格納部2519に格納されている通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)と、注文データに含まれている「各注文における通過工程パターン」と、目標荷揃達成率設定部123により設定された目標荷揃達成率1100(図11を参照)とを用いて、注文毎に工期tを算出する。
ここでは、通過工程入力注文別製造工期算出部2524は、以下の(17)式を満足する工期tを、注文毎(注文に対応する品種毎)に算出する。
【0103】
【数12】
【0104】
尚、PΔ(tΔ|k)が正規分布であると仮定し、このPΔ(tΔ|k)の平均μ・標準偏差σと、ユーザにより設定される定数xとを用いて、以下の(18)式のようにして工期tを、注文毎(注文に対応する品種毎)に算出するようにしてもよい。
PΔ(tΔ|k)=μ+x×σ ・・・(18)
通過工程入力注文別製造工期算出部2524は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0105】
[通過工程入力注文別製造工期格納部2525]
通過工程入力注文別製造工期格納部2525は、通過工程入力注文別製造工期算出部2524で算出された注文毎の工期(注文別製造工期)を格納する。
通過工程入力注文別製造工期格納部2525は、例えば、例えば、HDDを用いることにより実現することができる。
[通過工程入力注文別製造工期出力部2526]
通過工程入力注文別製造工期出力部2526は、通過工程入力注文別製造工期格納部2525に格納された注文別製造工期の情報を出力する。この出力の形態は、例えば、第1及び第2の実施形態の品種入力注文別製造工期出力部126と同じである。
以上のように、各注文の通過工程パターンが予め分かっている場合には、品種を用いずに注文別の工期(注文別製造工期)を算出(予測)することができる。
【0106】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。前述した第1〜第3の実施形態では、最尤推定時における工程別工期分布が正規分布であり(段落[0033]の(e)を参照)、最尤推定時の通過工程パターン工期分布が正規分布であり(段落[0033]の(f)を参照)、通過工程パターン別工期分布算出時の通過工程パターン工期分布が対数正規分布である((12)式を参照)と仮定した場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、最尤推定時における工程別工期分布が正規分布であり、最尤推定時の通過工程パターン工期分布が対数正規分布であり、通過工程パターン別工期分布算出時の通過工程パターン工期分布が対数正規分布であると仮定した場合について説明する。このように、本実施形態と第1〜第3の実施形態は、工程別工期分布作成部116及び通過工程パターン別工期分布作成部117の処理の一部が主として異なる。よって、本実施形態では、工程別工期分布作成部116及び通過工程パターン別工期分布作成部117の処理についてのみ説明し、その他の部分の説明を省略する。
【0107】
[工程別工期分布作成部116]
工程別工期分布作成部116は、製造実績データ200(通過実績有無及び実績工期)を用いて、工期別工期分布を算出する。工期分布は、ヒストグラムで表されたり、近似関数(分布関数)で表されたりする。
【0108】
まず、以下のように記号を定義する。
(a)製品iの実績工期をtiとし、工程jの通過工程有無をpijとする。
(b)製品iの通過工程パターン(の実績値)をpi=(pi1,pi2,・・・,piM)と記載する。ここで、Mは工程の数である。
(c)全製品の実績工期をt=(t1,t2,・・・,tN)Tとする。ここで、Nは製品の総数であり、Tは転置行列であることを示す。
(d)全製品の通過工程パターン(の実績値)をP={pij}とする。
(e)工程jの工期分布は、平均μj、分散vj(=σj2)の正規分布であるとする。ここで、平均μj、分散vjが工程別工期分布の決定変数となる。
(f)実績工期tiは、通過工程パターン(の実績値)毎の対数正規分布に従うものとする。
(g)全工程の工期分布の平均値をμ=(μ1,μ2,・・・,μM)とし、分散をv=(v1,v2,・・・,vM)とする。
また、ここでは、
(h)各工程の工期分布は、他の工程の工期分布から独立するものとする(すなわち、共分散を考慮しないものとする)。
【0109】
そうすると、製品iについて実績工期tiが得られる尤度p(ti|pi,μ,v)は、以下の(19)式〜(21)式で表される。
【0110】
【数13】
【0111】
(19)式の左辺は、製品iの通過工程パターン(の実績値)としてpiが、全工程の工期分布の平均値としてμが、全工程の工期分布の分散としてvがそれぞれ与えられたときに実績工期tiが得られる尤度を表す。一方、(19)式の右辺は、製品iの実績工期tiは、平均がμi〜、分散がvi〜である対数正規分布LNに従って発生することを表す。したがって、(19)式は、製品iについて実績工期tiが得られる尤度p(ti|pi,μ,v)の分布は、対数正規分布のパラメータμi〜、vi〜である対数正規分布LN(μi〜,vi〜)に従うことを表す。
ここで、対数正規分布の平均μi―は、製品iが通過した工程jの工期分布の平均μjの和を表す。また、対数正規分布の分散vi-は、製品iが通過した工程jの工期分布の分散vjの和を表す。
さらに、対数正規分布のパラメータμi〜及びvi〜は、(21)式より対数正規分布の平均μi―と分散vi-を用いて計算できる。
【0112】
(19)式〜(21)式より、全製品の実績工期tが得られる尤度p(t|P,μ,v)は、以下の(22)式で表される。
【0113】
【数14】
【0114】
(22)式は、全製品の実績工期tが得られる尤度p(t|P,μ,v)は、全ての製品iの実績工期t1、t2、・・・、tNの尤度の積により表されることを示している。
(22)式から、対数尤度は、以下の(23)式で表される。
【0115】
【数15】
【0116】
(23)式の対数尤度を最大にするためには、以下の(24)式で表される評価関数Jを最小にする平均μj、分散vjを求めればよい。
【0117】
【数16】
【0118】
(24)式の評価関数Jは、全ての製品iの実績工期t1、t2、・・・、tNの尤度の積が大きいほど値が小さくなる評価関数である。(24)式を評価関数として、平均μj、分散vjを計算するようにしてもよいが、製品の数であるNの値が大きいと、(24)式の最適化計算が困難になる。そこで、本実施形態では、(24)式の評価関数を以下のように書き換える。
ここで、以下の記号を定義する。
(i)通過工程パターンの種類の数をKとする。
(j)通過工程パターンk(k=1,2,・・・,K)をqk=(qk1,qk2,・・・,qkM)とする。
(k)通過工程パターンkに属する製品の数をNk^とする。
(l)通過工程パターンkの工期分布の平均μk^と分散vk^が、以下の(25)式で表されるものとする。
【0119】
【数17】
【0120】
ここで、平均μk^は、通過工程パターンkにおいて通過したことが示されている工程jの工程分布の平均μjの和を表す。また、分散がvk^は、通過工程パターンkにおいて通過したことが示されている工程jの工程分布の分散vjの和を表す。
以上の(i)〜(l)により、(24)式の評価関数Jは、以下の(26)式で表される評価関数Jに書き直すことができる。
【0121】
【数18】
【0122】
(26)式に示す評価関数Jは、通過工程パターンの種類の数Kの項の和で表現される。また、(26)式において、右辺第1項と第4項のNk^と、右辺第2項と第4項の積算(Σ(lnti)2、Σlnti)は、製造実績データ200を集計することにより計算することができる。よって、(26)式に示す評価関数Jを使って最適化計算を行う方が、(24)式の評価関数Jを使って最適化計算を行うよりも容易である。尚、この最適化計算は、滑降シンプレックス法、準ニュートン法等の公知の非線形最適化計算手法を用いることにより実行することができる。工程別工期分布作成部116は、製造実績データ200(通過実績有無及び実績工期)を、(25)式、(26)式に与えて最適化計算を行うことにより、平均μj、分散vjを、工程別工期分布のパラメータの一例として計算する。
工程別工期分布作成部116は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0123】
[通過工程パターン別工期分布作成部117]
通過工程パターン別工期分布作成部117は、工程別工期分布作成部116で作成された工程別工期分布を用いて、通過工程パターン別工期分布を算出する。
まず、(25)式の関係から、工程別工期分布(平均μj、分散vj)を基にして、通過工程パターン別工期分布の平均μk^と分散vk^を算出する。
次に、通過工程パターン別工期分布作成部117は、平均がμk^であり、且つ、分散がvk^である対数正規分布を導出する。そのために、通過工程パターン別工期分布作成部117は、対数正規分布のパラメータμk^´、vk^´を、(26)式のただし書で示した式を用いて計算する。
【0124】
そして、本実施形態では、通過工程パターン別工期分布を、以下の(27)式で表すものとする。
【0125】
【数19】
【0126】
ただし、本実施形態でも第1〜第3の実施形態と同様に、この(27)式を離散化することによって、通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)を得るようにしている((13)式を参照)。
通過工程パターン別工期分布作成部117は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0127】
<第5の実施形態>
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。本実施形態では、最尤推定時における工程別工期分布と、最尤推定時の通過工程パターン工期分布と、通過工程パターン別工期分布算出時の通過工程パターン工期分布が、全てポアソン分布であると仮定した場合について説明する。このように、本実施形態と第1〜第4の実施形態は、工程別工期分布作成部116及び通過工程パターン別工期分布作成部117の処理の一部が主として異なる。よって、本実施形態では、工程別工期分布作成部116及び通過工程パターン別工期分布作成部117の処理についてのみ説明し、その他の部分の説明を省略する。
【0128】
[工程別工期分布作成部116]
工程別工期分布作成部116は、製造実績データ200(通過実績有無及び実績工期)を用いて、工期別工期分布を算出する。工期分布は、ヒストグラムで表されたり、近似関数(分布関数)で表されたりする。以下に、工程別工期分布の作成方法の一例を説明する。
【0129】
まず、以下のように記号を定義する。
(a)製品iの実績工期をtiとし、工程jの通過工程有無をpijとする。
(b)製品iの通過工程パターン(の実績値)をpi=(pi1,pi2,・・・,piM)と記載する。
(c)全製品の実績工期をt=(t1,t2,・・・,tN)Tとする。ここで、Nは製品の総数であり、Tは転置行列であることを示す。
(d)全製品の通過工程パターン(の実績値)をP={pij}とする。
(e)工程jの工期分布は、平均λjのポアソン分布であるとする。ここで、平均λjが工程別工期分布の決定変数となる。
(f)実績工期tiは、通過工程パターン(の実績値)毎のポアソン分布に従うものとする。
(g)全工程の工期分布の平均値をλ=(λ1,λ2,・・・,λM)とする。
また、ここでは、
(h)各工程の工期分布は、他の工程の工期分布から独立するものとする(すなわち、共分散を考慮しないものとする)。
【0130】
そうすると、製品iについて実績工期tiが得られる尤度p(ti|pi,λ)は、以下の(28)式及び(29)式で表される。
【0131】
【数20】
【0132】
(28)式の左辺は、製品iの通過工程パターン(の実績値)としてpiが、全工程の工期分布の平均値としてλがそれぞれ与えられたときに実績工期tiが得られる尤度を表す。一方、(28)式の右辺は、製品iの実績工期tiは、平均がλi〜であるポアソン分布Poissonに従って発生することを表す。したがって、(28)式は、製品iについて実績工期tiが得られる尤度p(ti|pi,λ)の分布は、平均がλi〜であるポアソン分布Poisson(λi〜)に従うことを表す。
ここで、平均λi〜は、製品iが通過した工程jの工期分布の平均λjの和を表す。
【0133】
(28)式及び(29)式より、全製品の実績工期tが得られる尤度p(t|P,λ)は、以下の(30)式で表される。
【0134】
【数21】
【0135】
(30)式は、全製品の実績工期tが得られる尤度p(t|P,λ)は、全ての製品iの実績工期t1、t2、・・・、tNの尤度の積により表されることを示している。
(30)式から、対数尤度は、以下の(31)式で表される。
【0136】
【数22】
【0137】
(31)式の対数尤度を最大にするためには、以下の(32)式で表される評価関数Jを最小にする平均λjを求めればよい。
【0138】
【数23】
【0139】
(32)式の評価関数Jは、全ての製品iの実績工期t1、t2、・・・、tNの尤度の積が大きいほど値が小さくなる評価関数である。(32)式を評価関数として、平均λjを計算するようにしてもよいが、製品の数であるNの値が大きいと、(32)式の最適化計算が困難になる。そこで、本実施形態では、(32)式の評価関数を以下のように書き換える。
ここで、以下の記号を定義する。
(i)通過工程パターンの種類の数をKとする。
(j)通過工程パターンk(k=1,2,・・・,K)をqk=(qk1,qk2,・・・,qkM)とする。
(k)通過工程パターンkに属する製品の数をNk^とする。
(l)通過工程パターンkの工期分布の平均λk^が、以下の(33)式で表されるものとする。
【0140】
【数24】
【0141】
ここで、平均λk^は、通過工程パターンkにおいて通過したことが示されている工程jの工程分布の平均λjの和を表す。
以上の(i)〜(l)により、(32)式の評価関数Jは、以下の(34)式で表される評価関数Jに書き直すことができる。
【0142】
【数25】
【0143】
(34)式に示す評価関数Jは、通過工程パターンの種類の数Kの項の和で表現される。また、(34)式において、右辺第1項のNk^と、右辺第2項の積算(Σti)は、製造実績データ200を集計することにより計算することができる。よって、(34)式に示す評価関数Jを使って最適化計算を行う方が、(32)式の評価関数Jを使って最適化計算を行うよりも容易である。尚、この最適化計算は、滑降シンプレックス法、準ニュートン法等の公知の非線形最適化計算手法を用いることにより実行することができる。工程別工期分布作成部116は、製造実績データ200(通過実績有無及び実績工期)を、(33)式、(34)式に与えて最適化計算を行うことにより、平均λjを、工程別工期分布のパラメータの一例として計算する。
工程別工期分布作成部116は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0144】
[通過工程パターン別工期分布作成部117]
通過工程パターン別工期分布作成部117は、工程別工期分布作成部116で作成された工程別工期分布を用いて、通過工程パターン別工期分布を算出する。
まず、(33)式の関係から、工程別工期分布(平均λj)を基にして、通過工程パターン別工期分布の平均λk^を算出する。
そして、本実施形態では、通過工程パターン別工期分布を、以下の(35)式で表すものとする。
【0145】
【数26】
【0146】
ただし、本実施形態でも第1〜第4の実施形態と同様に、この(35)式を離散化することによって、通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)を得るようにしている((13)式を参照)。
通過工程パターン別工期分布作成部117は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0147】
<第6の実施形態>
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。本実施形態では、最尤推定時における工程別工期分布と、最尤推定時の通過工程パターン工期分布と、通過工程パターン別工期分布算出時の通過工程パターン工期分布が、全てガンマ分布であると仮定した場合について説明する。このように、本実施形態と第1〜第5の実施形態は、工程別工期分布作成部116及び通過工程パターン別工期分布作成部117の処理の一部が主として異なる。よって、本実施形態では、工程別工期分布作成部116及び通過工程パターン別工期分布作成部117の処理についてのみ説明し、その他の部分の説明を省略する。
【0148】
[工程別工期分布作成部116]
工程別工期分布作成部116は、製造実績データ200(通過実績有無及び実績工期)を用いて、工期別工期分布を算出する。工期分布は、ヒストグラムで表されたり、近似関数(分布関数)で表されたりする。以下に、工程別工期分布の作成方法の一例を説明する。
【0149】
まず、以下のように記号を定義する。
(a)製品iの実績工期をtiとし、工程jの通過工程有無をpijとする。
(b)製品iの通過工程パターン(の実績値)をpi=(pi1,pi2,・・・,piM)と記載する。
(c)全製品の実績工期をt=(t1,t2,・・・,tN)Tとする。ここで、Nは製品の総数であり、Tは転置行列であることを示す。
(d)全製品の通過工程パターン(の実績値)をP={pij}とする。
(e)工程jの工期分布は、形状母数bj、尺度母数θのガンマ分布であるとする。ここで、形状母数bj、尺度母数θが工程別工期分布の決定変数となる。ここで、本実施形態では、尺度母数θは、工程毎のパラメータではない。このようにしないと、工期分布の再生性が得られないからである。
(f)実績工期tiは、通過工程パターン(の実績値)毎のガンマ分布に従うものとする。
(g)全工程の工期分布の形状母数をb=(b1,b2,・・・,bM)とする。
また、ここでは、
(h)各工程の工期分布は、他の工程の工期分布から独立するものとする(すなわち、共分散を考慮しないものとする)。
【0150】
そうすると、製品iについて実績工期tiが得られる尤度p(ti|p,b,θ)は、以下の(36)式及び(37)式で表される。
【0151】
【数27】
【0152】
(36)式の左辺は、製品iの通過工程パターン(の実績値)としてpiが、全工程の工期分布の形状母数としてbが、全行程の工期分布の尺度母数としてθがそれぞれ与えられたときに実績工期tiが得られる尤度を表す。一方、(36)式の右辺は、製品iの実績工期tiは、形状母数がbi〜、尺度母数がθであるガンマ分布Gammaに従って発生することを表す。したがって、(36)式は、製品iについて実績工期tiが得られる尤度p(ti|pi,b,θ)の分布は、形状母数がbi〜、尺度母数がθであるガンマ分布Gamma(bi〜,θ)に従うことを表す。
ここで、形状母数bi〜は、製品iが通過した工程jの工期分布の形状母数bjの和を表す。
【0153】
(36)式及び(37)式より、全製品の実績工期tが得られる尤度p(t|P,b,θ)は、以下の(38)式で表される。
【0154】
【数28】
【0155】
(38)式は、全製品の実績工期tが得られる尤度p(t|P,b,θ)は、全ての製品iの実績工期t1、t2、・・・、tNの尤度の積により表されることを示している。
(38)式から、対数尤度は、以下の(39)式で表される。(39)式に含まれるガンマ関数Γとは、実部が正となる複素数zについて、以下の(40)式の積分で定義される関数である。
【0156】
【数29】
【0157】
(39)式の対数尤度を最大にするためには、以下の(41)式で表される評価関数Jを最小にする形状母数bj、尺度母数θを求めればよい。
【0158】
【数30】
【0159】
(41)式の評価関数Jは、全ての製品iの実績工期t1、t2、・・・、tNの尤度の積が大きいほど値が小さくなる評価関数である。(41)式を評価関数として、形状母数bj、尺度母数θを計算するようにしてもよいが、製品の数であるNの値が大きいと、(41)式の最適化計算が困難になる。そこで、本実施形態では、(41)式の評価関数を以下のように書き換える。
ここで、以下の記号を定義する。
(i)通過工程パターンの種類の数をKとする。
(j)通過工程パターンk(k=1,2,・・・,K)をqk=(qk1,qk2,・・・,qkM)とする。
(k)通過工程パターンkに属する製品の数をNk^とする。
(l)通過工程パターンkの工期分布の形状母数bk^が、以下の(42)式で表されるものとする。
【0160】
【数31】
【0161】
ここで、形状母数bk^は、通過工程パターンkにおいて通過したことが示されている工程jの工程分布の形状母数bjの和を表す。
以上の(i)〜(l)により、(41)式の評価関数Jは、以下の(43)式で表される評価関数Jに書き直すことができる。
【0162】
【数32】
【0163】
(43)式に示す評価関数Jは、通過工程パターンの種類の数Kの項の和で表現される。また、(43)式において、右辺第3項と第4項のNk^と、右辺第1項と第2項の積算(Σlnti、Σti)は、製造実績データ200を集計することにより計算することができる。よって、(43)式に示す評価関数Jを使って最適化計算を行う方が、(41)式の評価関数Jを使って最適化計算を行うよりも容易である。尚、この最適化計算は、滑降シンプレックス法、準ニュートン法等の公知の非線形最適化計算手法を用いることにより実行することができる。工程別工期分布作成部116は、製造実績データ200(通過実績有無及び実績工期)を、(42)式、(43)式に与えて最適化計算を行うことにより、形状母数bj、尺度母数θを工程別工期分布のパラメータの一例として計算する。
工程別工期分布作成部116は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0164】
[通過工程パターン別工期分布作成部117]
通過工程パターン別工期分布作成部117は、工程別工期分布作成部116で作成された工程別工期分布を用いて、通過工程パターン別工期分布を算出する。
まず、(42)式の関係から、工程別工期分布(形状母数bj)を基にして、通過工程パターン別工期分布の形状母数bk^を算出する。
そして、本実施形態では、通過工程パターン別工期分布を、以下の(44)式で表すものとする。
【0165】
【数33】
【0166】
ただし、本実施形態でも第1〜第4の実施形態と同様に、この(44)式を離散化することによって、通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)を得るようにしている((13)式を参照)。
通過工程パターン別工期分布作成部117は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0167】
<工期分布として仮定する関数による比較>
前述したように、本明細書では、工期分布として仮定する関数が以下の(A)〜(D)場合を例に挙げて説明した。尚、第4〜6の実施形態は、第1に実施形態の構成に対応するものである。
(A);詳細は第1の実施形態を参照
最尤推定時における工程別工期分布;正規分布
最尤推定時の通過工程パターン工期分布;正規分布
通過工程パターン別工期分布算出時の通過工程パターン工期分布;対数正規分布
(B);詳細は第4の実施形態を参照
最尤推定時における工程別工期分布;正規分布
最尤推定時の通過工程パターン工期分布;対数正規分布
通過工程パターン別工期分布算出時の通過工程パターン工期分布;対数正規分布
(C);詳細は第5の実施形態を参照
最尤推定時における工程別工期分布;ポアソン分布
最尤推定時の通過工程パターン工期分布;ポアソン分布
通過工程パターン別工期分布算出時の通過工程パターン工期分布;ポアソン分布
(D);詳細は第6の実施形態を参照
最尤推定時における工程別工期分布;ガウス分布
最尤推定時の通過工程パターン工期分布;ガウス分布
通過工程パターン別工期分布算出時の通過工程パターン工期分布;ガウス分布
【0168】
ここでは、鉄鋼製造プロセスにおける或る期間で得られた(同一の)製造実績データ(学習データ)に対して、(A)〜(D)のようにして工期分布を仮定して、工程別工期分布(のパラメータ)を算出した(各実施形態における工程別工期分布作成部116の説明を参照)。
図26は、(A)の場合の工程別工期分布の一例を示し、図27は、(B)の場合の工程別工期分布の一例を示し、図28は、(C)の場合の工程別工期分布の一例を示し、図29は、(D)の場合の工程別工期分布の一例を示す。
【0169】
さらに、このようにして得られた工程別工期分布を用いて、通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)を、前記(A)〜(D)のそれぞれの場合について算出した(各実施形態における通過工程パターン別工期分布作成部117の説明を参照)。そして、注文データに含まれている「各注文における通過工程パターン」と、目標荷揃達成率設定部123により設定された目標荷揃達成率1100(図11を参照)とを用いて、注文毎の工期tを、前記(A)〜(D)のそれぞれの場合について算出した(通過工程入力注文別製造工期算出部2524の説明を参照)。目標荷揃達成率1100として、0.85(=85%)、0.90(=90%)、0.95(=95%)を設定し、それぞれの場合について、注文毎の工期tを算出した。これにより、目標荷揃達成率1100毎、通過工程パターン毎の工期tが得られる。以下の説明では、「目標荷揃達成率1100が0.85(=85%)、0.90(=90%)、0.95(=95%)の場合の各通過工程パターンにおける工期t」を必要に応じて、それぞれ「85%工期」、「90%工期」、「95%工期」と称する。
【0170】
一方、前述した製造実績データ(学習データ)とは異なる期間に得られた前記鉄鋼製造プロセスにおける製造実績データ(評価データ)から、通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)を算出した(通過工程パターン別工期分布作成部1916の説明を参照)。そして、前述したのと同様にして、「85%工期」、「90%工期」及び「95%工期」を算出した。ここで、数の少ない通過工程パターンでは実績工期(「85%工期」、「90%工期」及び「95%工期」)を正しく算出することができない。このため、ここでは、500枚以上の評価データが属する通過工程パターンを評価対象とした。
【0171】
そして、学習データから得られた工期と、評価データから得られた工期とを、単回帰式に当てはめて、「85%工期」、「90%工期」及び「95%工期」のそれぞれについて単回帰式の決定係数と単回帰式の係数とを予測精度評価の尺度として算出した。
図30は、単回帰式の決定係数を示す図であり、図31は、単回帰式の係数を示す図である。決定係数とは、学習データから得られた工期が評価データから得られた工期をどれくらい説明できるかを表す一般的な指標であり、1に近いほど良い。また、単回帰式の係数も1に近いほどよく、1より大きい場合は学習データから得られた工期よりも評価データから得られた工期の方が長い傾向にあることを意味し、逆に1より小さい場合は学習データから得られた工期よりも評価データから得られた工期の方が短い傾向にあることを意味する。
図30及び図31に示すように、前述した(C)のようにすると(工期分布がポアソン分布であると仮定すると)、決定係数の値は大きくなるが、単回帰式の係数が「1」を大きく超える。すなわち、今回の工期予測の対象の鉄鋼製造プロセスにおいては、工期分布がポアソン分布であると仮定すると、予測工期を短く算出する傾向がある。一方、前述した(B)のようにすると(工程別工期分布が正規分布、通過工程パターン工期分布が対数正規分布であると仮定すると)、決定係数も単回帰式の係数も「1」に近くなる。すなわち、今回の工期予測の対象の鉄鋼製造プロセスにおいては、工程別工期分布が正規分布、通過工程パターン工期分布が対数正規分布であると仮定すると、工期のトータルでの予測精度が高くなるといえる。このように、今回のように、常に各工程に仕掛がたまっているような製造プロセスを工期予測の対象とした場合、工程毎に平均と分散とが大きく異なってしまうため、工程毎のパラメータに平均値と分散との両方が含まれている分布を用いると(前述した(A)や(B)のようにして工期分布を仮定すると)精度良く工期を予測することができる。
【0172】
しかしながら、工期の予測対象となる製造プロセスによっては、前述した(C)や(D)のようにして工期分布を仮定しても、精度良く工期を予測することができる。例えば、各工程における製造能力が高い製造プロセス(仕掛は常に溜まっておらず設備に空き時間が存在するような製造プロセス)では待ち行列になり易い。このような製造プロセスに対しては、前述した(C)のようにして工期分布がポアソン分布であると仮定すると精度良く工期を予測することができると考えられる。また、工程毎に、工期分布の平均値は大きく異ならないが、分布(形状)が異なるというような製造プロセスに対しては、前述した(D)のようにして工期分布がガンマ分布であると仮定すると精度良く工期を予測することができると考えられる。また、ポアソン分布とガンマ分布は、再生性を持つ分布である。再生性とは、同じ分布族に含まれる確率分布を持つ2つの独立な確率変数に対して、その和の確率分布もまた同じ族に含まれる性質のことをいう。このため、前述した(C)や(D)のようにして工期分布を仮定すると、最尤推定時における工程別工期分布と、最尤推定時の通過工程パターン工期分布と、通過工程パターン別工期分布算出時の通過工程パターン工期分布とが、全て同じ分布の仮定のもとで工期を計算することができ、一貫して同じ分布で計算することができるため、分布推定精度の劣化を最小限に抑えることができる。尚、最尤推定時における工程別工期分布を対数正規分布と仮定すると工程別工期分布を解析的に計算することができない。このため、ここでは、前述した(A)や(B)のようにして工期分布を仮定している。
【0173】
<その他の変形例>
前述した第1の実施形態では、工程通過判定ロジックが決定木300である場合を例に挙げ、第2の実施形態では、品種判定ロジックが決定木1600である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、これらは決定木に限定されるものではない。すなわち、工程通過判定ロジックは、製造実績データ200に含まれる製造仕様から、製品が通過する工程と通過しない工程とを工程毎に予測するものであれば、例えば、統計モデルを使用したり、テーブル方式のモデルを使用したりすることができる。同様に、品種判定ロジックも、製造実績データ200に含まれる製造仕様から品種を予測するものであれば、統計モデルを使用したり、テーブル方式のモデルを使用したりすることができる。
【0174】
<<請求項との対応>>
(請求項1、15)
製造実績データ取得手段(工程)は、例えば、製造実績データ取得部111(で行う処理)により実現される。ここで、製造実績データは、例えば、製造実績データ200により実現される。
工程別工期分布導出手段(工程)は、例えば、工程別工期分布作成部116(で行う処理)により実現される。ここで、製造工程別の工期の分布を規定するパラメータは、例えば、図6に示す平均μj、分散vjにより実現される。
通過工程パターン別工期分布導出手段(工程)は、例えば、通過工程パターン別工期分布作成部117(で行う処理)により実現される。ここで、通過工程パターン別の工期分布は、例えば、図7に示す通過工程パターン別工期分布703の情報により実現される。また、通過工程パターンで通過したことが示されている製造工程の工期の分布を規定するパラメータを足し合わせることは、例えば、(8)式、(9)式の計算を行うことにより実現される。
第1の品種決定手段(工程)は、例えば、図1に示すA1の処理部(で行う処理)又は図15に示すA2の処理部(で行う処理)により実現される。ここで、品種は、例えば、図4の品種402、図17の品種1700により実現される。
品種別通過工程パターン発生率導出手段(工程)は、例えば、品種別通過工程パターン発生率作成部115(で行う処理)により実現される。ここで、品種別の通過工程パターンの発生確率は、例えば、図5の通過工程パターン発生率500の情報により実現される。
品種別製造工期モデル導出手段(工程)は、例えば、品種別製造工期モデル作成部118(で行う処理)により実現される。ここで、通過工程パターン別工期分布と、品種別の通過工程パターンの発生確率とを用いて、品種別の工期分布を導出することは、例えば、(14)式の計算を行うことにより実現される。そして、品種別の工期分布は、例えば、図8の品種別製造工期モデル800により実現される。
第2の品種決定手段(工程)は、例えば、第2の品種作成部122(で行う処理)又は図15に示す品種判定部1521(で行う処理)により実現される。
品種入力注文別製造工期導出手段(工程)は、例えば、品種入力注文別製造工期算出部124(で行う処理)により実現される。ここで、品種と、品種別の工期分布とを用いて、注文別の製造工期を導出することは、例えば、(16)式の計算を行うことにより実現される。
(請求項2、16)
工程通過判定ロジック作成手段(工程)は、例えば、工程通過判定ロジック作成部112(で行う処理)により実現される。ここで、工程通過判定ロジックは、例えば、図3の決定木300により実現される。
第1の品種作成手段(工程)は、例えば、第1の品種作成部114(で行う処理)により実現される。
第2の品種作成手段(工程)は、例えば、第2の品種作成部122(で行う処理)により実現される。
(請求項3、17)
品種判定ロジック作成手段(工程)は、例えば、品種判定ロジック作成部1512(で行う処理)により実現される。
品種判定手段(工程)は、例えば、品種判定部1521(で行う処理)により実現される。
(請求項4、18)
目標荷揃達成率設定手段は(工程)は、例えば、目標荷揃達成率設定部123(で行う処理)により実現される。ここで、目標荷揃達成率は、例えば、図11の目標荷揃達成率1100により実現される。また、品種と、品種別の工期分布と、目標荷揃達成率とを用いて、注文別の製造工期を導出することは、例えば、(15)式の計算を行うことにより実現される。
(請求項5、19)
製造実績データ取得手段(工程)は、例えば、製造実績データ取得部111(で行う処理)により実現される。ここで、製造実績データは、例えば、製造実績データ200により実現される。
工程別工期分布導出手段(工程)は、例えば、工程別工期分布作成部116(で行う処理)により実現される。ここで、製造工程別の工期の分布を規定するパラメータは、例えば、図6に示す工程別工期分布600の情報により実現される。
通過工程パターン別工期分布導出手段(工程)は、例えば、通過工程パターン別工期分布作成部117(で行う処理)により実現される。ここで、通過工程パターン別の工期分布は、例えば、図7に示す通過工程パターン別工期分布703の情報により実現される。また、通過工程パターンで通過したことが示されている製造工程の工期の分布を規定するパラメータを足し合わせることは、例えば、(8)式、(9)式の計算を行うことにより実現される。
通過工程入力注文別製造工期導出手段(工程)は、例えば、通過工程入力注文別製造工期算出部2524(で行う処理)により実現される。ここで、通過工程パターンと、通過工程パターン別の工期分布とを用いて、注文別の製造工期を導出することは、例えば、(18)式の計算を行うことにより実現される。
(請求項6、20)
目標荷揃達成率設定手段は(工程)は、例えば、目標荷揃達成率設定部123(で行う処理)により実現される。ここで、目標荷揃達成率は、例えば、図11の目標荷揃達成率1100により実現される。また、通過工程パターンと、通過工程パターン別の工期分布と、目標荷揃達成率とを用いて、注文別の製造工期を導出することは、例えば、(17)式の計算を行うことにより実現される。
(請求項7、21)
各製品の実績工期が得られる尤度の積が大きくなるほど値が小さくなる評価関数の値が最小となるように、製造工程の工期の分布として表現される正規分布の平均と分散とを導出することは、例えば、(3)式に基づいて得られる(7)式の計算を行うことにより実現される。
各製品の実績工期が得られる尤度のそれぞれが、通過工程パターンで通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均及び分散のそれぞれの積算値を平均及び分散とする正規分布で表現されることは、例えば、(1)式、(2)式により得られる。
(請求項8、22)
通過工程パターン別工期分布パラメータ導出手段(工程)、対数正規分布導出手段(工程)、及び製造工期発生確率導出手段(工程)は、例えば、通過工程パターン別工期分布作成部117(で行う処理)により実現される。ここで、通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均及び分散をそれぞれ足し合わせることにより、通過工程パターン別の工期分布の平均及び分散を導出することは、例えば、(8)式、(9)式の計算を行うことにより実現される。また、通過工程パターン別の工期分布の平均及び分散を有する対数正規分布は、例えば、(12)式により実現される。また、通過工程パターンを有する製品の各工期の発生確率は、例えば、PΔ(tΔ|k)により実現される。
(請求項9、請求項23)
各製品の実績工期が得られる尤度の積が大きくなるほど値が小さくなる評価関数の値が最小となるように、製造工程の工期の分布として表現される正規分布の平均と標準偏差とを導出することは、例えば、(22)式に基づいて得られる(26)式の計算を行うことにより実現される。
各製品の実績工期が得られる尤度のそれぞれが、通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均及び分散のそれぞれの積算値を平均及び分散とする対数正規分布で表現されることは、例えば、(19)式〜(21)式により得られる。
(請求項10、請求項24)
通過工程パターン別工期分布パラメータ導出手段(工程)、対数正規分布導出手段(工程)、及び製造工期発生確率導出手段(工程)は、例えば、通過工程パターン別工期分布作成部117(で行う処理)により実現される。ここで、通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均及び分散をそれぞれ足し合わせることにより、通過工程パターン別の工期分布の平均及び分散を導出することは、例えば、(25)式の計算を行うことにより実現される。また、通過工程パターン別の工期分布の平均及び分散を有する対数正規分布は、例えば、(27)式により実現される。また、通過工程パターンを有する製品の各工期の発生確率は、例えば、PΔ(tΔ|k)により実現される。
(請求項11、請求項25)
各製品の実績工期が得られる尤度の積が大きくなるほど値が小さくなる評価関数の値が最小となるように、製造工程の工期の分布として表現されるポアソン分布の平均を導出することは、例えば、(30)式に基づいて得られる(34)式の計算を行うことにより実現される。
各製品の実績工期が得られる尤度のそれぞれが、通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均のそれぞれの積算値を平均とするポアソン分布で表現されることは、例えば、(28)式、(29)式により得られる。
(請求項12、請求項26)
通過工程パターン別工期分布パラメータ導出手段(工程)、ポアソン分布導出手段(工程)、及び製造工期発生確率導出手段(工程)は、例えば、通過工程パターン別工期分布作成部117(で行う処理)により実現される。ここで、通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均をそれぞれ足し合わせることにより、通過工程パターン別の工期分布の平均を導出することは、例えば、(33)式の計算を行うことにより実現される。また、通過工程パターン別の工期分布の平均と同じ平均を有するポアソン分布は、例えば、(35)式により実現される。また、通過工程パターンを有する製品の各工期の発生確率は、例えば、PΔ(tΔ|k)により実現される。
(請求項13、請求項27)
各製品の実績工期が得られる尤度の積が大きくなるほど値が小さくなる評価関数の値が最小となるように、製造工程の工期の分布として表現されるガンマ分布の形状母数と尺度母数とを導出することは、例えば、(38)式に基づいて得られる(43)式の計算を行うことにより実現される。
各製品の実績工期が得られる尤度のそれぞれが、通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の形状母数のそれぞれの積算値を形状母数とし、製造工程によらない一定値を尺度母数とするガンマ分布で表現されることは、例えば、(36)式、(37)式により得られる。
(請求項14、請求項28)
通過工程パターン別工期分布パラメータ導出手段(工程)、ガンマ分布導出手段(工程)、及び製造工期発生確率導出手段(工程)は、例えば、通過工程パターン別工期分布作成部117(で行う処理)により実現される。ここで、通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の形状母数をそれぞれ足し合わせることにより、通過工程パターン別の工期分布の形状母数を導出することは、例えば、(42)式の計算を行うことにより実現される。また、通過工程パターン別の工期分布の形状母数と同じ形状母数を有するガウス分布は、例えば、(44)式により実現される。また、通過工程パターンを有する製品の各工期の発生確率は、例えば、PΔ(tΔ|k)により実現される。
【0175】
尚、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体、又はかかるプログラムを伝送する伝送媒体も本発明の実施の形態として適用することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体などのプログラムプロダクトも本発明の実施の形態として適用することができる。前記のプログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、伝送媒体及びプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0176】
100、1500 製造工期予測装置
200 製造実績データ
300、1600 決定木
402、1700 製造番号別の品種
500 通過工程パターン発生率
600 工程別工期分布
703 通過工程パターン別工期分布
800 品種別製造工期モデル
900 注文データ
1002 注文別の品種
1100 目標荷揃達成率
1200 注文別製造工期
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造工期予測装置、製造工期予測方法、及びコンピュータプログラムに関し、特に、製造仕様が異なる複数の製品を複数の工程を経て製造する際の当該製品の製造に要する期間である製造工期を予測するために用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼業を始めとする多くの産業における製品製造プロセスでは、顧客からの注文の内容に応じて適切に製品を製造することが求められる。例えば、鉄鋼業においては、顧客が要求する製品仕様(サイズ、強度、表面塗装有無等)を含む製品注文情報に合う製品を、要求された量だけ、要求された期日に納入することが求められている。
【0003】
また、顧客のニーズの多様化に伴い、製品注文情報、注文量、納期が注文毎に異なり、且つ、それぞれの注文の注文量が少量となってきており、いわゆる多品種少量生産が必要とされる傾向が強くなっている。よって、製品製造プロセスにおいては、全ての製品注文情報を満足する製品を低コストで製造することが求められている。さらに最近では、注文から納入までの期間が従来よりも短い、いわゆる「短工期」で製品を納入できることが製品の付加価値の一つとして大きな意味を持つようになってきている。
【0004】
以上のような背景の下、製造コストの増大を招くことなく、これらの要求に耐え得る製造実力を持つことが製造業に要求されている。これらの要求に対応する製造計画を立案する際には、通常は、注文毎に納期から標準工期(標準リードタイム)で遡ることで上流工程の作業着手希望日を定め、この作業着手希望日をできるだけ満たしつつ、製造ロットや生産能力等の他の計画立案上の条件を考慮して製造計画を立案している。
【0005】
ところが、実際の製造工場においては、処理工程の処理能力に制約があるために、各工程の仕掛による処理待ちが発生することや、処理工程の製造設備の故障等、操業上の様々な変動要素があることから、たとえ同一の製品注文情報の注文を製造する場合であっても、実際の製造に必要な期間はばらつくことが多い。このように、工期の変動が生じることから、前述した標準工期でも納期から遡ることで上流工程の製造着手目標時期を定め、その製造着手目標時期に上流工程での製造に着手したとしても納期を守れないことがある。
【0006】
また、このような納期遅れが発生しないようにするため、標準工期の算出にあたって、製造に必要な工期に加え、前記のような工期の変動を吸収するための余裕工期を加算することがある。このように余裕工期を含む標準工期を用いて最上流の製品製造プロセスでの作業希望日を計算すると、実際に必要な製造工期よりもかなり早めのタイミングで製造を開始することとなる。早期の製造開始は、途中工程での仕掛や倉庫における在庫となり、これらの仕掛や在庫がリードタイムの増大を招く。また、製品置場への半製品の占有に伴うハンドリング負荷の増大によって製造能力の阻害を招き、結果として工期を延ばすという悪循環が発生する。そのため、製造工期を精度良く予測することが望まれる。
【0007】
そこで、特許文献1では、各製造装置の処理前待ち時間分布の類似度に基づいて製造装置をクラスタリングし、各クラスタの処理前待ち時間代表モデル分布を算出し、その代表モデル分布の和を求めることで、全体工期の期待値と分散を予測する方法が提案されている。この特許文献1では、製造設備毎の工期分布を、設備使用回数情報を用いて重ね合わせることで全体工期の期待値と分散とを予測している。
しかしながら、複雑な製造工場においては、製品検査後に工程が追加されることがあり、製造前に設備使用回数がわからないことも多い。したがって、特許文献1に記載の技術では、このような場合に、製造工期を精度良く予測することが困難である。また、製品の種類が多岐に渡る製品製造プロセスでは、製品によってネックとなる製造設備が異なる。したがって、特許文献1に記載の技術では、このような場合、製造設備毎の工期分布が、注文の構成によってばらつくという課題がある。
【0008】
このような問題を解決するために、特許文献2では、決定木作成ロジックを用いて製品毎に通過工程パターン(各製造工程の通過の有無を示す0-1の情報の組み合わせ)を作成し、過去の実績データから通過工程パターン毎に算出される工期分布をもとに、目標の納期達成率を得ることができる工期を求め、それを製造工期としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−30088号公報
【特許文献2】特開2010−128679号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】山口和範、外2名、"図解入門よくわかる多変量解析の基本と仕組み"、株式会社秀和システム、2004年5月25日、p.143-168
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献2に記載の技術では、決定木の目的変数が増加することにより、通過工程パターンを決定するためのモデルの構造が大規模となり、管理が難しいモデルとなる。また、特許文献2に記載の技術では、通過工程パターンのビット間の距離(例えば、010000と010001とは距離が近いが、111011と000000とは距離が遠い)を全く考えずに通過工程パターンを予測してしまうため、製造工期の予測精度が悪くなってしまうという課題があった。このような課題については、本出願人により出願された特願2009−295661号により解決することができる。すなわち、この特許文献に記載されているように、製造工程毎に通過の有無を予測する決定木を作成することにより、このような課題を解決することができる。
【0012】
しかしながら、特許文献2に記載の技術では、通過工程パターン毎の工期分布をもとに製造工期を算出しているため、前述した課題とは別の更なる課題がある。すなわち、特許文献2に記載の技術では、製造実績データから、各通過工程パターンに属する製品が少数しか得られない場合には、正しい工期分布を表現することができないために、製造工期が実績データの取り方によって大きく異なってしまうという更なる課題がある。この課題については、特願2009−295661号に記載の技術でも未解決である。
【0013】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、製造実績データから、各通過工程パターンに属する製品が少数しか得られなくても、製造工期の予測を精度よく行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の製造工期予測装置の第1の例は、注文別の製造仕様を含む注文データから、当該注文の工期を予測する製造工期予測装置であって、複数の製造工程を通過して製造される各製品の製造実績を示すデータであって、製品の製造仕様と、各製造工程の通過の有無の実績値を示す情報である通過実績有無と、製品を製造するのに要した工期の実績を示す情報である実績工期とを含む製造実績データを取得する製造実績データ取得手段と、前記各製品に対する通過実績有無及び実績工期を用いて、製造工程別の工期の分布を規定するパラメータを導出する工程別工期分布導出手段と、前記工程別工期分布導出手段により導出された製造工程別の工期の分布を規定するパラメータと、前記各製品に対する通過実績有無とを用いて、前記通過実績有無の値を所定の順番で並べることにより得られる通過工程パターン別の工期分布を導出する通過工程パターン別工期分布導出手段と、前記製造実績データに含まれる製品の製造仕様を用いて、当該製品の各製造工程の通過の有無の予測値を前記所定の順番で並べることにより得られる品種を、前記製造実績データに含まれる製品のそれぞれについて決定する第1の品種決定手段と、前記通過工程パターン別の製品の数と、前記品種別の製品の数とを用いて、前記品種別の前記通過工程パターンの発生確率を導出する品種別通過工程パターン発生率導出手段と、前記通過工程パターン別工期分布と、前記品種別の前記通過工程パターンの発生確率とを用いて、品種別の工期分布を導出する品種別製造工期モデル導出手段と、前記注文データに含まれる製造仕様を用いて、当該注文データに含まれる注文の各製造工程の通過の有無の予測値を求め、当該注文の各製造工程の通過の有無の予測値を前記所定の順番で並べることにより得られる品種を、前記注文データに含まれる注文のそれぞれについて決定する第2の品種決定手段と、前記第2の品種決定手段により決定された品種と、前記品種別製造工期モデル導出手段により導出された品種別の工期分布とを用いて、注文別の製造工期を導出する品種入力注文別製造工期導出手段と、を有し、前記通過工程パターン別工期分布導出手段は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期の分布を規定するパラメータをそれぞれ足し合わせることにより得られたパラメータに基づいて定まる確率密度関数として、前記通過工程パターン別の工期分布を導出することを特徴とする。
本発明の製造工期予測装置の第2の例は、注文別の製造仕様を含む注文データから、当該注文の工期を予測する製造工期予測装置であって、複数の製造工程を通過して製造される各製品の製造実績を示すデータであって、製品の製造仕様と、各製造工程の通過の有無の実績値を示す情報である通過実績有無と、製品を製造するのに要した工期の実績を示す情報である実績工期とを含む製造実績データを取得する製造実績データ取得手段と、前記各製品に対する通過実績有無及び実績工期を用いて、製造工程別の工期の分布を規定するパラメータを導出する工程別工期分布導出手段と、前記工程別工期分布導出手段により導出された製造工程別の工期の分布を規定するパラメータと、前記各製品に対する通過実績有無とを用いて、前記通過実績有無の値を所定の順番で並べることにより得られる通過工程パターン別の工期分布を導出する通過工程パターン別工期分布導出手段と、前記注文データに含まれる注文のそれぞれについての通過工程パターンと、前記通過工程パターン別工期分布導出手段により導出された通過工程パターン別の工期分布とを用いて、注文別の製造工期を導出する通過工程入力注文別製造工期導出手段と、を有し、前記通過工程パターン別工期分布導出手段は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期の分布を規定するパラメータをそれぞれ足し合わせることにより得られたパラメータに基づいて定まる確率密度関数として、前記通過工程パターン別の工期分布を導出することを特徴とする。
【0015】
本発明の製造工期予測方法の第1の例は、注文別の製造仕様を含む注文データから、当該注文の工期を予測する製造工期予測方法であって、複数の製造工程を通過して製造される各製品の製造実績を示すデータであって、製品の製造仕様と、各製造工程の通過の有無の実績値を示す情報である通過実績有無と、製品を製造するのに要した工期の実績を示す情報である実績工期とを含む製造実績データを取得する製造実績データ取得工程と、前記各製品に対する通過実績有無及び実績工期を用いて、製造工程別の工期の分布を規定するパラメータを導出する工程別工期分布導出工程と、前記工程別工期分布導出工程により導出された製造工程別の工期の分布を規定するパラメータと、前記各製品に対する通過実績有無とを用いて、前記通過実績有無の値を所定の順番で並べることにより得られる通過工程パターン別の工期分布を導出する通過工程パターン別工期分布導出工程と、前記製造実績データに含まれる製品の製造仕様を用いて、当該製品の各製造工程の通過の有無の予測値を前記所定の順番で並べることにより得られる品種を、前記製造実績データに含まれる製品のそれぞれについて決定する第1の品種決定工程と、前記通過工程パターン別の製品の数と、前記品種別の製品の数とを用いて、前記品種別の前記通過工程パターンの発生確率を導出する品種別通過工程パターン発生率導出工程と、前記通過工程パターン別工期分布と、前記品種別の前記通過工程パターンの発生確率とを用いて、品種別の工期分布を導出する品種別製造工期モデル導出工程と、前記注文データに含まれる製造仕様を用いて、当該注文データに含まれる注文の各製造工程の通過の有無の予測値を求め、当該注文の各製造工程の通過の有無の予測値を前記所定の順番で並べることにより得られる品種を、前記注文データに含まれる注文のそれぞれについて決定する第2の品種決定工程と、前記第2の品種決定工程により決定された品種と、前記品種別製造工期モデル導出工程により導出された品種別の工期分布とを用いて、注文別の製造工期を導出する品種入力注文別製造工期導出工程と、を有し、前記通過工程パターン別工期分布導出工程は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期の分布を規定するパラメータをそれぞれ足し合わせることにより得られたパラメータに基づいて定まる確率密度関数として、前記通過工程パターン別の工期分布を導出することを特徴とする。
本発明の製造工期予測方法の第2の例は、注文別の製造仕様を含む注文データから、当該注文の工期を予測する製造工期予測方法であって、複数の製造工程を通過して製造される各製品の製造実績を示すデータであって、製品の製造仕様と、各製造工程の通過の有無の実績値を示す情報である通過実績有無と、製品を製造するのに要した工期の実績を示す情報である実績工期とを含む製造実績データを取得する製造実績データ取得工程と、前記各製品に対する通過実績有無及び実績工期を用いて、製造工程別の工期の分布を規定するパラメータを導出する工程別工期分布導出工程と、前記工程別工期分布導出工程により導出された製造工程別の工期の分布を規定するパラメータと、前記各製品に対する通過実績有無とを用いて、前記通過実績有無の値を所定の順番で並べることにより得られる通過工程パターン別の工期分布を導出する通過工程パターン別工期分布導出工程と、前記注文データに含まれる注文のそれぞれについての通過工程パターンと、前記通過工程パターン別工期分布導出工程により導出された通過工程パターン別の工期分布とを用いて、注文別の製造工期を導出する通過工程入力注文別製造工期導出工程と、を有し、前記通過工程パターン別工期分布導出工程は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期の分布を規定するパラメータをそれぞれ足し合わせることにより得られたパラメータに基づいて定まる確率密度関数として、前記通過工程パターン別の工期分布を導出することを特徴とする。
【0016】
本発明のコンピュータプログラムは、前記製造工期予測方法の各工程をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、製造実績データに含まれている通過実績有無の値を所定の順番で並べることにより得られる通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の分布のパラメータを足し合わせることにより得られたパラメータに基づいて定まる確率密度関数として、通過工程パターン別工期分布を導出する。
そして、本発明の第1の例では、製造実績データに含まれている製品の各製造工程の通過の有無の予測値を前記所定の順番で並べることにより得られる品種を当該製品のそれぞれについて決定して品種別の通過工程パターンの発生確率を導出し、前記通過工程パターン別工期分布と、前記品種別の通過工程パターンの発生確率とを用いて、品種別の工期分布を導出する。そして、注文データに含まれる注文の品種を当該注文のそれぞれについて決定し、決定した品種と、前記品種別の工期分布とを用いて、注文別の製造工期を導出する。
また、本発明の第2の例では、前記通過工程パターン別工期分布と、各注文の通過工程パターンとを用いて、注文別の製造工期を導出する。
したがって、各通過工程パターンに属する製品の数に大きく依存することなく通過工程パターン別の工期分布を算出することができる。よって、製造実績データから、各通過工程パターンに属する製品が少数しか得られなくても、製造工期の予測を精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態を示し、製造工期予測装置の機能的な構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を示し、製造実績データの一例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態を示し、ある工程の工程通過判定ロジックの一例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態を示し、製造番号別の通過有無変数と品種の一例を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態を示し、通過工程パターン発生率の一例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態を示し、工程別工期分布の一例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態を示し、通過工程パターン別工期分布の一例を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施形態を示し、品種別製造工期モデルの一例を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施形態を示し、注文データの一例を示す図である。
【図10】本発明の第1の実施形態を示し、注文別の通過有無変数と品種の一例を示す図である。
【図11】本発明の第1の実施形態を示し、目標荷揃達成率の一例を示す図である。
【図12】本発明の第1の実施形態を示し、注文別製造工期の一例を示す図である。
【図13】本発明の第1の実施形態を示し、製造工期予測装置の処理の一例を説明するフローチャートである。
【図14】本発明の第1の実施形態を示し、図13に続くフローチャートである。
【図15】本発明の第2の実施形態を示し、製造工期予測装置の機能的な構成の一例を示す図である。
【図16】本発明の第2の実施形態を示し、品種判定ロジックの一例を示す図である。
【図17】本発明の第2の実施形態を示し、製造番号別の品種の一例を示す図である。
【図18】本発明の第2の実施形態を示し、注文別の品種の一例を示す図である。
【図19】第1の比較例を示し、製造工期予測装置の機能的な構成を示す図である。
【図20】第1の比較例を示し、通過工程パターン別実績工期別製品枚数を示す図である。
【図21】第1の比較例を示し、通過工程パターン別工期分布を示す図である。
【図22】第2の比較例を示し、製造工期予測装置の機能的な構成を示す図である。
【図23】実施形態及び比較例による結果を表形式で対比して示す図である。
【図24】評価データの製造工期から実際の工期を減算した値と、製品の重量との関係の一例を示す図である。
【図25】本発明の第1、第2の実施形態の変形例を示し、製造工期予測装置の機能的な構成の一例を示す図である。
【図26】第1の実施形態の手法で求めた工程別工期分布の一例を示す図である。
【図27】第4の実施形態の手法で求めた工程別工期分布の一例を示す図である。
【図28】第5の実施形態の手法で求めた工程別工期分布の一例を示す図である。
【図29】第6の実施形態の手法で求めた工程別工期分布の一例を示す図である。
【図30】単回帰式の決定係数の一例を示す図である。
【図31】単回帰式の係数の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
<<第1の実施形態>>
図1は、製造工期予測装置100の機能的な構成の一例を示す図である。製造工期予測装置100のハードウェアは、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、及び各種インターフェースを備えた公知の情報処理装置を用いることにより実現することができるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
尚、本実施形態では、鉄鋼業における製造工場(例えば厚板製造工場)で製造される鉄鋼製品の製造工期を予測する場合を例に挙げて説明する。
【0020】
[製造実績データ取得部111]
製造実績データ取得部111は、製造実績データを外部から取得して記憶する。例えば、製造実績データ取得部111は、ユーザによるユーザインターフェースの入力操作に従って製造実績データを取得したり、リムーバル記憶媒体に記憶された製造実績データを読み出したり、外部装置から通信回線を介して製造実績データを受信したりすることによって、製造実績データを取得することができる。
【0021】
図2は、製造実績データ200の一例を示す図である。
図2において、製造実績データ200は、製品番号(製品No.)と、製造仕様と、通過実績有無と、実績工期とを含む。
製品番号は、製品を識別する番号である。
製造仕様は、製品の属性を示すものである。例えば、製品番号が「0001」の製品の製品仕様は、製品(鋼板)の板厚が30mmであり、製品の板幅が600mmであり、製品の重量が3.5tonであり、製品の製造方法がAであり、製品を製造する際の切断方法がaとなる。ここでは、板厚、板幅、重量、製法、及び切断方法が製造仕様である場合を例に挙げて示しているが、製造仕様の内容は、製品によって異なるものである。
【0022】
通過実績有無は、製品番号で識別される製品が通過した製造工程と、通過していない製造工程とを、対象となる(例えば製造工場に含まれる)全ての製造工程のそれぞれについて識別するためのものである。図2に示す例では、製品が通過した製造工程に対して「1」を付し、通過しなかった製造工程に対し「0」を付している。例えば、製品番号が「0002」の製品は、工程1と工程2の製造工程を通過せずに、工程10の製造工程を通過して製造されたものであることが、通過実績有無から判断される。尚、ここでは、工程10を倉庫への製品の入庫としているので、工程10についての通過実績有無の値は、必ず「1」となる(ビットが立つ)。
ここで、製造工程を通過する製品は、製品そのものに限られず、当該製品の原料、及び当該製品が完成する前の途中段階にある半製品も含むものである。また、製造工程を通過するとは、当該製造工程で行うべき処理(例えば、熱処理、加工、保管)がなされることを指す。
尚、製造工程の数が「10」である場合を例に挙げて示しているが、製造工程の数は「10」に限定されるものではない。また、以下の説明では、「製造工程」を必要に応じて「工程」と略称する。
【0023】
実績工期は、製品番号で識別される製品を製造するのに要した全工期である。例えば、製品番号が「0001」の製品の実績工期は5日である。
製造実績データ取得部111は、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、及び各種インターフェースを用いることにより実現することができる。
【0024】
[工程通過判定ロジック作成部112]
工程通過判定ロジック作成部112は、製品を製造するに際し、製品が通過する工程と通過しない工程とを工程毎に予測する工程通過判定ロジックを、製造実績データ200に含まれる製造仕様に基づいて作成する。本実施形態では、工程通過判定ロジックとして、決定木を採用する場合を例に挙げて説明する。
図3は、ある工程(例えば工程1)の工程通過判定ロジックの一例を示す図である。図3に示すように、本実施形態では、工程通過判定ロジック作成部112は、製造実績データ200に含まれる製造仕様を説明変数とし、各製品の各工程の通過の有無の予測値を示す通過有無変数を目的変数とする決定木を作成する。ここでは、ある工程の通過有無変数が「1」である製品は当該工程を通過することが予測される(当該製品は当該工程を通り易い)ことを意味し、「0」である製品は当該工程を通過しないことが予測される(当該製品は当該工程を通り難い)ことを意味するものとする。
【0025】
決定木とはデータの分析手法の一つであり、データを様々な条件に従って木の枝葉のように分類していく分析手法である。決定木は、製造不良の要因の特定や市場情報の分類等に使われている(例えば非特許文献1を参照)。決定木は、データの固まりである複数のノードから構成されており、データ全体を表すルートノード(根ノード)から始まり、末端のノード(リーフノード、葉ノード)に特定の属性を持つデータの割合が多くなるように、つまり偏りのあるデータが含まれるように、ノードを次々と分岐させながら作成される。得られたリーフノードへの分岐条件やリーフノードに属する過去のデータ(学習用データ)を用いることで決定木を各種の予測に使うことができる。ここで、予測したい属性を「目的変数」、データの分岐条件を記述する属性を「説明変数」と呼ぶ。決定木の作成にあたっては、目的変数や説明変数をどのように定義するか、決定木の大きさ(ノードの数や深さ)をどのように決定するかなどの設計パラメータの設定が、得られた決定木の予測精度や取扱いの容易さ等に深く関係するために極めて重要である。
【0026】
ここでは、設計パラメータとして、作成する決定木のリーフノードの数や木構造の深さ等を、決定木の構造に関するパラメータとして設定する。具体的には、一つのリーフノードが保有するデータ数の上限値を与えるものとする。この上限値を小さくするとリーフノードの数が増える、つまり決定木が大きく、深くなることとなる。より具体的には、データ数の上限値を100以上に増やしても予測精度が向上しなかったため、データ数の上限値を100とした。
工程通過判定ロジック作成部112は、このようにして得られる設計パラメータ、製造実績データ200に含まれる製造仕様、説明変数、及び目的変数に基づいて、図3に示すような決定木300を、決定木作成アルゴリズムにより工程毎に作成する。本実施形態では、工程の数が「10」であるので、図3に示すような決定木300が10個作成されることになる。
【0027】
図3に示す決定木300が工程1に対する決定木であるとすると、例えば、製法がBであり、重量が4.0ton(≧3.2ton)であり、板幅が700mm(<1500mm)である製造仕様の製品の通過有無変数は、「1」に分類されるので、工程1を通過することが予測される(工程1を通りやすい)ことになる。
工程通過判定ロジック作成部112は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0028】
[工程通過ロジック格納部113]
工程通過ロジック格納部113は、工程通過判定ロジック作成部112で作成された決定木300を格納する。
工程通過ロジック格納部113は、例えば、HDDを用いることにより実現することができる。
【0029】
[第1の品種作成部114]
第1の品種作成部114は、製造実績データ200に含まれる製造仕様を、工程通過ロジック格納部113に格納されている決定木300に適用して、製造実績データ200に含まれる各製品のそれぞれについて、各工程の通過の有無の予測値(通過有無変数(=「1」又は「0」))を求め、当該通過有無変数を結合した情報を、当該製品の品種の情報として作成する。
【0030】
図4は、製造実績データ200から得られる、製造番号別の通過有無変数と品種の一例を示す図である。
図4において、製造実績データ200に含まれる製造仕様を、図3に示すような決定木300に適用することによって、各工程の通過有無変数401が製品毎に得られる。番号の小さい工程の通過有無変数401であるほど上位のビットとなるように、各工程の通過有無変数401の値を並べることを製品毎に行うことにより、製品毎に品種402が作成される。図4に示す結果と、図2に示す結果とを比較すると、例えば、製造番号が「0001」の製品の工程1の通過実績は「1」であるのに対し(図2を参照)、同じ製造番号が「0001」の製品の工程1の通過予測は「0」となっている(図4を参照)。このように、統計的手法には予測誤差が生じることもある。
第1の品種作成部114は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0031】
[品種別通過工程パターン発生率作成部115]
品種別通過工程パターン発生率作成部115は、製造実績データ200に基づいて、品種毎の通過工程パターン発生率を算出する。
通過工程パターン発生率とは、製造実績データ200の通過実績有無を番号の小さい工程のものから順に並べた通過工程パターン(の実績値)に属する製品の数を、当該通過工程パターンと同値の品種に属する製品の数で割った値である。例えば、通過工程パターン(の実績値)が「0101010000」である製品が9500枚であり、品種が「0101010000」であると判定された製品が10000枚あるとする。この場合、品種が「0101010000」の製品の通過工程パターン「0101010000」の発生率は0.95(=9500/10000)となる。
図5は、品種毎の通過工程パターン発生率500の一例を示す図である。図5において、ある一つの品種についての通過工程パターン発生率の和(図5の各行における通過工程パターン発生率の和)は「1」となる。
品種別通過工程パターン発生率作成部115は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0032】
[工程別工期分布作成部116]
工程別工期分布作成部116は、製造実績データ200(通過実績有無及び実績工期)を用いて、工期別工期分布を算出する。工期分布は、ヒストグラムで表されたり、近似関数(分布関数)で表されたりする。本実施形態では、工期分布が正規分布で表される場合を例に挙げて説明する。以下に、工程別工期分布の作成方法の一例を説明する。
【0033】
まず、以下のように記号を定義する。
(a)製品iの実績工期をtiとし、工程jの通過工程有無をpijとする。
(b)製品iの通過工程パターン(の実績値)をpi=(pi1,pi2,・・・,piM)と記載する。ここで、Mは工程の数であり、図2に示す例では、Mは10となる。
(c)全製品の実績工期をt=(t1,t2,・・・,tN)Tとする。ここで、Nは製品の総数であり、Tは転置行列であることを示す。
(d)全製品の通過工程パターン(の実績値)をP={pij}とする。
(e)工程jの工期分布は、平均μj、分散vj(=σj2)の正規分布であるとする。ここで、平均μj、分散vjが工程別工期分布の決定変数となる。
(f)実績工期tiは、通過工程パターン(の実績値)毎の正規分布に従うものとする。
(g)全工程の工期分布の平均値をμ=(μ1,μ2,・・・,μM)とし、分散をv=(v1,v2,・・・,vM)とする。
また、ここでは、
(h)各工程の工期分布は、他の工程の工期分布から独立するものとする(すなわち、共分散を考慮しないものとする)。
【0034】
そうすると、製品iについて実績工期tiが得られる尤度p(ti|pi,μ,v)は、以下の(1)式及び(2)式で表される。
【0035】
【数1】
【0036】
(1)式の左辺は、製品iの通過工程パターン(の実績値)としてpiが、全工程の工期分布の平均値としてμが、全工程の工期分布の分散としてvがそれぞれ与えられたときに実績工期tiが得られる尤度を表す。一方、(1)式の右辺は、製品iの実績工期tiは、平均がμi〜、分散がvi〜である正規分布Nに従って発生することを表す。したがって、(1)式は、製品iについて実績工期tiが得られる尤度p(ti|pi,μ,v)の分布は、平均がμi〜、分散がvi〜である正規分布N(μi〜,vi〜)に従うことを表す。
ここで、平均μi〜は、製品iが通過した工程jの工期分布の平均μjの和を表す。また、分散vi〜は、製品iが通過した工程jの工期分布の分散vjの和を表す。
【0037】
(1)式及び(2)式より、全製品の実績工期tが得られる尤度p(t|P,μ,v)は、以下の(3)式で表される。
【0038】
【数2】
【0039】
(3)式は、全製品の実績工期tが得られる尤度p(t|P,μ,v)は、全ての製品iの実績工期t1、t2、・・・、tNの尤度の積により表されることを示している。
(3)式から、対数尤度は、以下の(4)式で表される。
【0040】
【数3】
【0041】
(4)式の対数尤度を最大にするためには、以下の(5)式で表される評価関数Jを最小にする平均μj、分散vjを求めればよい。
【0042】
【数4】
【0043】
(5)式の評価関数Jは、全ての製品iの実績工期t1、t2、・・・、tNの尤度の積が大きいほど値が小さくなる評価関数である。(5)式を評価関数として、平均μj、分散vjを計算するようにしてもよいが、製品の数であるNの値が大きいと、(5)式の最適化計算が困難になる。そこで、本実施形態では、(5)式の評価関数を以下のように書き換える。
ここで、以下の記号を定義する。
(i)通過工程パターンの種類の数をKとする。
(j)通過工程パターンk(k=1,2,・・・,K)をqk=(qk1,qk2,・・・,qkM)とする。
(k)通過工程パターンkに属する製品の数をNk^とする。
(l)通過工程パターンkの工期分布の平均μk^と分散vk^が、以下の(6)式で表されるものとする。
【0044】
【数5】
【0045】
ここで、平均μk^は、通過工程パターンkにおいて通過したことが示されている工程jの工程分布の平均μjの和を表す。また、分散がvk^は、通過工程パターンkにおいて通過したことが示されている工程jの工程分布の分散vjの和を表す。
以上の(i)〜(l)により、(5)式の評価関数Jは、以下の(7)式で表される評価関数Jに書き直すことができる。
【0046】
【数6】
【0047】
(7)式に示す評価関数Jは、通過工程パターンの種類の数Kの項の和で表現される。また、(7)式において、右辺第1項と第4項のNk^と、右辺第2項と第4項の積算(Σ(ti)2、Σti)は、製造実績データ200を集計することにより計算することができる。よって、(7)式に示す評価関数Jを使って最適化計算を行う方が、(5)式の評価関数Jを使って最適化計算を行うよりも容易である。尚、この最適化計算は、滑降シンプレックス法、準ニュートン法等の公知の非線形最適化計算手法を用いることにより実行することができる。工程別工期分布作成部116は、製造実績データ200(通過実績有無及び実績工期)を、(6)式、(7)式に与えて最適化計算を行うことにより、平均μj、分散vjを、工程別工期分布のパラメータの一例として計算する。
【0048】
図6は、以上のようにして計算された工程別工期分布600の一例を示す図である。ここでは、Nelder=Meanの滑降シンプレックス法を用いて最適化計算を行った。尚、図6において、標準偏差σjは、分散vjの平方根(=√vj)で表される。
工程別工期分布作成部116は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0049】
[通過工程パターン別工期分布作成部117]
通過工程パターン別工期分布作成部117は、工程別工期分布作成部116で作成された工程別工期分布600を用いて、通過工程パターン別工期分布を算出する。
まず、(6)式の関係から、工程別工期分布600を基にして、通過工程パターン別工期分布の平均μk^と標準偏差σk^を算出する(図7の変換前の値701の欄を参照)。
例えば、通過工程パターン(の実績値)が「0100010001」の製品は、工程2、工程6、及び工程10を通過しているので、この通過工程パターンの工期分布の平均μk^と標準偏差σk^は、以下の(8)式、(9)式で表される。
【0050】
μk^=25.5+20.1+0.4=46.0 ・・・(8)
σk^=sqrt(14.72+8.02+1.42)=16.8 ・・・(9)
次に、通過工程パターン別工期分布作成部117は、工期分布を対数正規分布と仮定し、平均がμk^であり、且つ、分散がvk^(=σk^2)である対数正規分布を導出する。ここで、平均がμk^、分散がvk^となるような対数正規分布のパラメータμk^´とvk^´は、以下の(10)式、(11)式を用いて計算される。
【0051】
【数7】
【0052】
このようにして得られた対数正規分布のパラメータμk^´、σk^´(=√vk^´)を、図7の変換後の値702の欄に示す。
そして、本実施形態では、通過工程パターン別工期分布を、以下の(12)式で表すものとする。
【0053】
【数8】
【0054】
ただし、本実施形態では、この(12)式を(13)式のように離散化することによって、通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)を得るようにしている。すなわち、通過工程パターン別工期分布作成部117は、以下の(13)式の計算を行うことによって、通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)を算出する。このようにして得られた通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)を、図7の通過工程パターン別工期分布703の欄に示す。通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)は、通過工程パターンkの製品の工期が工期tΔ=(0,1,2,・・・)である確率を意味する。尚、(13)式では、(12)式の確率密度関数を1日単位で離散化する場合を例に挙げて説明しているが、離散化する方法は、このような方法に限定されるものではない。
【0055】
【数9】
【0056】
通過工程パターン別工期分布作成部117は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0057】
[品種別製造工期モデル作成部118]
品種別製造工期モデル作成部118は、品種別通過工程パターン発生率作成部115で作成された品種毎の通過工程パターン発生率500(図5を参照)と、通過工程パターン別工期分布作成部117で作成された通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)とを用いて、品種別製造工期モデルを作成する。本実施形態では、以下の(14)式により、品種がlである製品の工期がtΔである確率PΔ(tΔ|l)を品種別製造工期モデルとして計算するようにしている。
【0058】
【数10】
【0059】
(14)式において、ratelkは、品種lの通過工程パターンkの通過工程パターン発生率500である。
(14)式は、品種がlである製品の通過工程パターンがkである確率PΔ(tΔ|k)に、製造実績データ200から算出された、品種lの通過工程パターンkの発生率(通過工程パターン発生率500)を掛け合わせたものを、全ての通過工程パターンkについて積算したものが、品種別製造工期モデルであることを表している。
図8は、以上のようにして得られた品種別製造工期モデル800の一例を示す図である。図8の各欄に示されている値が、(14)式の左辺(PΔ(tΔ|l))の値となる。
品種別製造工期モデル作成部118は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0060】
[品種別製造工期モデル格納部119]
品種別製造工期モデル格納部119は、品種別製造工期モデル作成部118で作成された品種別製造工期モデル800を格納する。
品種別製造工期モデル格納部119は、例えば、HDDを用いることにより実現することができる。
【0061】
[注文データ取得部120]
注文データ取得部120は、注文データを外部から取得して記憶する。例えば、注文データ取得部120は、ユーザによるユーザインターフェースの入力操作に従って注文データを取得したり、リムーバブル記憶媒体に記憶された注文データを読み出したり、外部装置から通信回線を介して注文データを受信したりすることによって、注文データを取得することができる。
【0062】
図9は、注文データ900の一例を示す図である。
図9において、注文データ900は、注文番号(注文No.)と、製造仕様とを含む。
注文番号は、注文を識別する番号である。
製造仕様は、製品の属性を示すものであり、図2に示した製造実績データ200における製造仕様と同じ属性(項目)を有している。図9に示す各製造仕様の内容は前述した通りであるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
注文データ取得部120は、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、及び各種インターフェースを用いることにより実現することができる。
【0063】
[工程通過判定部121]
工程通過判定部121は、注文データ900に含まれている製造仕様を、工程通過ロジック格納部113に格納されている決定木300(図3を参照)に適用して、各工程の通過のし易さ(通過有無変数(=「1」又は「0」))を注文毎に判定する。
工程通過判定部121は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0064】
[第2の品種作成部122]
第2の品種作成部122は、工程通過判定部121により得られた通過有無変数の値を、番号の小さい工程の通過有無変数であるほど上位のビットとなるように並べることを注文毎に行うことにより、注文別の品種を作成する。
図10は、注文データ900から得られる、注文別の通過有無変数1001と品種1002の一例を示す図である。尚、品種の作成方法の説明は、第1の品種作成部114の説明で既に行っているので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
第2の品種作成部122は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0065】
[目標荷揃達成率設定部123]
目標荷揃達成率設定部123は、目標荷揃達成率を設定する。目標荷揃達成率とは、注文量に対する、納期までに荷揃う(出荷できる)製品の量の割合である。本実施形態では、製品を鉄鋼製品としているので、例えば、注文の重量に対する、納期までに荷揃う製品の重量の割合で目標荷揃達成率を定めることができる。目標荷揃達成率の値は、ユーザの希望に応じて定められるものである。本実施形態では、目標荷揃達成率設定部123は、ユーザによるユーザインターフェースの操作に基づいて、目標荷揃達成率の値を識別し、当該目標荷揃達成率の値を記憶することにより、目標荷揃達成率を設定する。
【0066】
図11は、目標荷揃達成率1100の一例を示す図である。図11に示すように、ここでは、品種や注文に関わらず、目標荷揃達成率として一律に0.95を設定するようにした。ただし、目標荷揃達成率は、例えば、品種毎及び注文毎の少なくとも何れか一方毎に設定されるようにしてもよい。
目標荷揃達成率設定部123は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0067】
[品種入力注文別製造工期算出部124]
品種入力注文別製造工期算出部124は、品種別製造工期モデル格納部119に格納されている品種別製造工期モデル800(図8を参照)と、第2の品種作成部122により作成された注文別の品種1002(図10を参照)と、目標荷揃達成率設定部123により設定された目標荷揃達成率1100(図11を参照)とを用いて、注文毎に工期tを算出する。
本実施形態では、品種入力注文別製造工期算出部124は、以下の(15)式を満足する工期tを、注文毎(注文に対応する品種毎)に算出する。
【0068】
【数11】
【0069】
(15)式において、αは、目標荷揃達成率[−]である。また、前述したように、PΔ(tΔ|l)は、品種がlである製品の工期がtΔである確率[−]であり、図8に示した品種別製造工期モデル800の各欄の値である。(15)式は、目標荷揃達成率αの荷揃いをするのに最低限必要となる日数を工期tとして求めることを表す。
このように本実施形態では、品種別製造工期モデル800と、注文別の品種と、目標荷揃達成率1100とを用いて注文毎の工期tを算出するようにする場合を例に挙げて説明した。しかしながら、品種別製造工期モデル800と、注文別の品種とを用いて注文毎の工期tを算出するようにしていれば、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、PΔ(tΔ|l)が正規分布であると仮定し、このPΔ(tΔ|l)の平均μ・標準偏差σと、ユーザにより設定される定数xとを用いて、以下の(16)式のようにして工期tを、注文毎(注文に対応する品種毎)に算出するようにしてもよい。
PΔ(tΔ|l)=μ+x×σ ・・・(16)
図12は、注文毎の工期である注文別製造工期1200の一例を示す図である。
品種入力注文別製造工期算出部124は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。図12の各欄に記載されている値が、注文毎の工期tである。
【0070】
[品種入力注文別製造工期格納部125]
品種入力注文別製造工期格納部125は、品種入力注文別製造工期算出部124で算出された注文別製造工期1200を格納する(図12を参照)。
品種入力注文別製造工期格納部125は、例えば、HDDを用いることにより実現することができる。
[品種入力注文別製造工期出力部126]
品種入力注文別製造工期出力部126は、品種入力注文別製造工期格納部125に格納された注文別製造工期1200の情報を出力する。具体的に説明すると、例えば、品種入力注文別製造工期出力部126は、注文別製造工期1200の情報について、表示装置への表示、外部装置への送信、及びリムーバブル記憶媒体への記憶の少なくとも何れか1つを行う。注文別製造工期1200の情報の出力は、ユーザによるユーザインターフェースの操作に基づいて行うようにてもよいし、予め設定されたタイミングで自動的に行うようにしてもよい。
品種入力注文別製造工期出力部126は、例えば、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、及び各種インターフェースを用いることにより実現することができる。
【0071】
[動作フローチャート]
次に、図13、図14のフローチャートを参照しながら、製造工期予測装置100の処理の一例を説明する。
まず、ステップS1301において、製造実績データ取得部111は、製造実績データ200を取得するまで待機する。そして、製造実績データ200を取得すると、ステップS1302に進む。ステップS1302に進むと、工程通過判定ロジック作成部112は、図3に示すような決定木300を、決定木作成アルゴリズムにより工程毎に作成する。
【0072】
次に、ステップS1303において、工程通過ロジック格納部113は、ステップS1302で作成された(工程毎の)決定木300を格納する。
次に、ステップS1304において、第1の品種作成部114は、製造実績データ200に含まれる製造仕様を、決定木300に適用して、製造実績データ200に含まれる各製品のそれぞれについて、各工程の通過の有無の予測値(通過有無変数401)を求め、当該通過有無変数を結合した情報を、当該製品の品種402の情報として作成する。
【0073】
次に、ステップS1305において、品種別通過工程パターン発生率作成部115は、製造実績データ200の通過実績有無を番号の小さい工程のものから順に並べた通過工程パターン(の実績値)に属する製品の数を、通過工程パターンと同値の品種に属する製品の数で割ることにより、品種毎の通過工程パターン発生率500を算出する。
次に、ステップS1306において、工程別工期分布作成部116は、製造実績データ200(通過実績有無及び実績工期)を、(6)式、(7)式に与えて最適化計算を行うことにより、工程別工期分布600(平均μj、分散vj)を求める。
【0074】
次に、ステップS1307において、通過工程パターン別工期分布作成部117は、工程別工期分布600を基にして、通過工程パターン別工期分布の平均μk^と標準偏差σk^を算出し(図7の変換前の値701の欄を参照)、平均μk^と分散vk^を用いて表現される対数正規分布のパラメータμk^´、vk^´(=σk^´2)
を用いて(図7の変換後の値702の欄を参照)、(12)式、(13)式の計算を行って、通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)を算出する(図7の通過工程パターン別工期分布703の欄を参照)。
【0075】
次に、ステップS1308において、品種別製造工期モデル作成部118は、品種毎の通過工程パターン発生率500と、通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)とを用いて、(14)式の計算を行って、品種がlである製品の工期がtΔである確率PΔ(tΔ|l)を品種別製造工期モデル800として計算する。
次に、ステップS1309において、品種別製造工期モデル格納部119は、ステップS1308で作成された品種別製造工期モデル800を格納する。
【0076】
次に、図14のステップS1401において、注文データ取得部120は、注文データ900を取得するまで待機する。そして、注文データ900を取得すると、ステップS402に進む。ステップS1402に進むと、工程通過判定部121は、注文データ900に含まれている製造仕様を、決定木300に適用して、各工程の通過の有無の予測値(通過有無変数)を注文毎に判定する。
【0077】
次に、ステップS1403において、第2の品種作成部122は、ステップS1402で得られた通過有無変数の値を、番号の小さい工程の通過有無変数であるほど上位のビットとなるように並べることを注文毎に行うことにより、注文別の品種1002を作成する。
次に、ステップS1404において、目標荷揃達成率設定部123は、目標荷揃達成率1100を設定する。
次に、ステップS1405において、品種入力注文別製造工期算出部124は、品種別製造工期モデル800と、注文別の品種と、目標荷揃達成率1100とを用いて、(15)式を満足する工期tを、注文毎(注文に対応する品種毎)に算出する。この算出結果が、注文別製造工期1200となる。
【0078】
次に、ステップS1406において、品種入力注文別製造工期格納部125は、ステップS1405で算出された注文別製造工期1200を格納する。
最後に、ステップS1407において、品種入力注文別製造工期出力部126は、注文別製造工期1200の情報を出力する。尚、前述したように、ステップS1407の処理は、ユーザからの指示があった場合に行うようにしてもよい。
【0079】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態と第1の実施形態とは、品種判定ロジックと、注文データから品種判定ロジックを使って注文毎の品種を判定する処理とが主として異なる。したがって、本実施形態の説明において、前述した第1の実施形態と同一の部分については、図1〜図14に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0080】
図15は、製造工期予測装置1500の機能的な構成を示す図である。
[品種判定ロジック作成部1512]
品種判定ロジック作成部1512は、製造実績データ200に含まれる製造仕様から通過工程パターン(品種)を予測する品種判定ロジックを作成するものである。品種判定ロジック作成部1512は、工程通過判定ロジック作成部112に対応するものである。
本実施形態では、品種判定ロジックとして、決定木を採用する。
【0081】
図16は、品種判定ロジックの一例を示す図である。図16に示すように、品種判定ロジック作成部1512は、製造実績データ200に含まれる製造仕様を説明変数とし、通過工程パターンを目的変数とする決定木1600を作成する。本実施形態では、工程通過判定ロジック作成部112は、工程毎に決定木300を作成するようにしている。これに対し、本実施形態では、品種判定ロジック作成部1512は、1つの決定木1600を作成する。
品種判定ロジック作成部1512は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0082】
[品種判定ロジック格納部1513]
品種判定ロジック格納部1513は、品種判定ロジック作成部1512で作成された決定木1600を格納する。
品種判定ロジック格納部1513は、例えば、HDDを用いることにより実現することができる。
図17は、製造実績データ200から得られる、製造番号別の品種の一例を示す図である。
図4に示す品種402と、図17に示す品種1700は、同じ製造実績データ200から求めたものであるが、異なる値となる。これらの品種402、1700を得るためのロジックが異なるためである。
【0083】
[品種判定部1521]
品種判定部1521は、注文データ900に含まれている製造仕様を、品種判定ロジック格納部1513に格納されている決定木1600(図16を参照)に適用して、注文別の品種を作成する。
図18は、注文データ900から得られる、注文別の品種の一例を示す図である。本実施形態では、決定木1600の目的変数を通過工程パターンとしているので、品種判定部1521は、注文データ900に含まれている製造仕様を、決定木1600に適用することにより、品種を直接的に求める。
品種判定部1521は、図1に示した工程通過判定部121及び第2の品種作成部122に対応するものである。
品種判定部1521は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0084】
<<第1の比較例>>
次に、第1の比較例について説明する。
図19は、本比較例の製造工期予測装置1900の機能的な構成を示す図である。尚、図19において、図1及び図15に示したものと同一の処理部については、図1及び図15に付した符号と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0085】
本比較例の製造工期予測装置1900は、工程別工期分布作成部116及び通過工程パターン別工期分布作成部117の代わりに、通過工程パターン別工期分布作成部1916を用いている点が第2の実施形態の製造工期予測装置1500と異なる。
【0086】
[通過工程パターン別工期分布作成部1916]
通過工程パターン別工期分布作成部1916は、製造実績データ200から、通過工程パターン別実績工期別製品枚数を算出する。
図20は、通過工程パターン別実績工期別製品枚数2000を示す図である。
図20において、例えば、通過工程パターンが「0000000001」の製品のうち、実績工期が「0」である製品の枚数は「422」枚となる。
次に、通過工程パターン別工期分布作成部1916は、通過工程パターン別実績工期別製品枚数2000を通過工程パターン別の製品の実績製造枚数で割ることにより、通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)を算出する。
【0087】
図21は、通過工程パターン別工期分布2100を示す図である。
図21において、例えば、通過工程パターンが「0000000001」の製品の実績製造枚数が460枚であった場合、図20に示すように、実績工期が「0」である製品の枚数は422であるので、422を460で割ることにより、通過工程パターンが「0000000001」の製品の工期が「0」である確率は0.917(=422/460)となる。
前述したように、通過工程パターン別工期分布作成部1916は、工程別工期分布作成部116及び通過工程パターン別工期分布作成部117に対応するものである。
通過工程パターン別工期分布作成部1916は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0088】
<<第2の比較例>>
次に、第2の比較例について説明する。
図22は、本比較例の製造工期予測装置2200の機能的な構成を示す図である。本比較例の製造工期予測装置2200は、図19に示した第1の比較例の製造工期予測装置1900に対し、品種判定ロジック作成部1512及び品種判定ロジック格納部1513の代わりに、第1の実施形態で説明した「工程通過判定ロジック作成部112、工程通過ロジック格納部113、及び第1の品種作成部114」を用いると共に、品種判定部1521の代わりに、第1の実施形態で説明した工程通過判定部121及び第2の品種作成部122を用いるようにしたものである。
【0089】
<本実施形態と比較例との対比>
図23は、実施形態及び比較例による結果を表形式で対比して示す図である。
図23において、A1、A2、B1、B2は、図1、図15、図19、図22に破線で示しているA1、A2、B1、B2の処理部を使用していることを示す。すなわち、図22において、A1、B1で特定される欄に記載されている結果が、第1の実施形態の手法による結果を示し、A2、B1で特定される欄に記載されている結果が、第2の実施形態の手法による結果を示す。A2、B2で特定される欄に記載されている結果が、第1の比較例の手法による結果を示し、A1、B2で特定される欄に記載されている結果が、第2の比較例の手法による結果を示す。
【0090】
ここでは、製造実績データを学習データと評価データとに分け、学習データを用いて作成した「工程通過判定ロジック・品種判定ロジック」及び「品種別製造工期モデル」を用いて、評価データの製造工期を評価した。
【0091】
図23の各評価指標について説明する。
まず、在庫量について説明する。
図24は、評価データの製造工期から実際の工期を減算した値(製造工期−実績工期)と、製品の重量との関係の一例を示す図である。
図24に示すグラフ2401は、全ての注文データのそれぞれについて、評価データの製造工期から実際の工期を減算し、この減算値が同じ値となる注文の重量の総和を求めることにより得られる。図24において、グラフ2401のうち、横軸(製造工期−実績工期)が0より大きい領域(図24の斜線の領域)における「横軸の値」×「縦軸の値」の(日毎の値の)合計を評価データの期間(日数)で割った値が1日当りの在庫量となる。図23の「在庫量」は、このように計算された1日当りの在庫量を示す。
【0092】
次に、荷揃達成率は、注文の総重量(評価データに属する製品の総重量)に対する、評価データの製造工期が実績工期以上(製造工期≧実績工期)となった注文の重量割合である。
次に、平均工期は、評価データの製造工期の平均値である。
次に、ロバスト性は、学習データを用いて算出した標準工期と、評価データを用いて算出した標準工期との相関を表す係数である。ここで、これらの標準工期を求める際には、学習データを用いて作成した同じ決定木を使用する。また、標準工期とは、目標荷揃達成率を品種毎に設定することにより算出された品種別製造工期モデルを用いて得られた製造工期である。
【0093】
次に、品種一致率は、学習データで作成した決定木と、評価データで作成した決定木とを、評価データに適用したときに求まるそれぞれの品種がどの程度一致しているのかを表す。完全一致とは、決定木から得られた品種のうち、評価データから定まる通過工程パターンと全てのbitで一致している品種の数を、評価データに含まれる製品の総数で割ることにより得られる。1bit違いとは、決定木から得られた品種のうち、評価データから定まる通過工程パターンに対して1bitだけ値が違う品種の数を、評価データに含まれる製品の総数で割ることにより得られる。また、2bit違いとは、決定木から得られた品種のうち、評価データから定まる通過工程パターンに対して2bitだけ値が違う品種の数を、評価データに含まれる製品の総数で割ることにより得られる。
【0094】
図23に示すように、品種別製造工期モデルを、第1、第2の実施形態のようにして作成すると、ロバスト性が向上することが分かる。
第1、第2の実施形態では、各製品iの実績工期tiの尤度p(ti|pi,μ,v)が、実際に通過した工程の工期分布(正規分布)の平均μj、分散vjを積算することにより得られる平均μi〜、分散vi〜を有する正規分布N(μi〜,vi〜)に従うものとする。そして、このような各製品iの実績工期tiの尤度p(ti|pi,μ,v)の積が最大となるときの工程別工期分布600を求める。そして、通過工程パターンにおいて通過していることが示されている工程の工期分布(平均μj、分散vj)の値を足し合わせることで通過工程パターン別工期分布の平均μk^と標準偏差σk^を求め、これらを用いて、通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)を求める(図7を参照)。
【0095】
これに対し、第1、第2の比較例では、各通過工程パターンに属する製品の実績工期を集計して、通過工程パターン別工期分布2100を作成するので、各通過工程パターンに属する製品の枚数が少ないと、有意な通過工程パターン別工期分布を得ることができず、通過工程パターン別工期分布の精度を高めることが困難になる。これにより、製造工期の算出結果が学習データの取り方によって大きく異なってしまう。
一方、第1、第2の実施形態では、工程別工期分布600の値を足し合わせることで、通過工程パターン別工期分布のパラメータの一例である平均μk^と標準偏差σk^を求めるようにしているので、各通過工程パターンに属する製品の枚数に(大きく)依存することなく通過工程パターン別の工期分布を算出することができる(すなわち、ロバスト性を高めることができる)。よって、製造工期を安定して算出することができる。すなわち、製造実績データ200から、各通過工程パターンに属する製品が少数しか得られなくても、製造工期の予測を精度よく行うことができる。
【0096】
また、図23から、製造仕様を説明変数とし、通過有無変数を目的変数とする決定木300を工程毎に作成した方が(A1の方が)、製造仕様を説明変数とし、通過工程パターンを目的変数とする決定木1600を1つ作成するよりも(A2よりも)、在庫量が少なく、平均工期が短く、しかも品種一致率が高くなる。
製造仕様を説明変数とし、通過工程パターンを目的変数とする決定木1600では、通過工程パターンをダイレクトに求めるため、各通過工程パターンを分類する際に、各通過工程パターンの各ビットの距離を考慮することができない。よって、分類された通過工程パターンには、正解となる通過工程パターンから大きく外れているものも含まれることになる。これに対し、第1、第2の実施形態では、各通過工程パターンの各ビット(工程)を求めるため、正解となる通過工程パターンから大きく外れる通過工程パターンが得られづらくなる。したがって、製造工期を精度よく予測することができる。
また、図16に示す決定木1600では、目的変数の数が最大で2の(工程数)乗となるため、サイズの大きな決定木となる。これに対し、図3に示す決定木300では、目的変数が「0」、「1」の2種類であるため、サイズの小さな決定木となる。
以上のことから、第1の実施形態のようにして決定木300を作成した方が、第2の実施形態のようにして決定木1600を作成するよりも望ましいことが分かる。
【0097】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第1、第2の実施形態では、各注文の通過工程パターンを求めるようにした。これに対し、本実施形態では、注文データに含まれる各注文の通過工程パターンが予め分かっている場合に注文別製造工期を算出して出力する場合について説明する。
図25は、本変形例における製造工期予測装置2500の機能的な構成の一例を示す図である。
【0098】
本実施形態の製造工期予測装置2500は、第1の実施形態の製造工期予測装置100から、A1の処理部(工程通過判定ロジック作成部112、工程通過ロジック格納部113、及び第1の品種作成部114)と、品種別通過工程パターン発生率作成部115と、品種別製造工期モデル作成部118と、工程通過判定部121と、第2の品種作成部122とを削除し、第1の実施形態の製造工期予測装置100の品種別製造工期モデル格納部119、注文データ取得部120、品種入力注文別製造工期算出部124、品種入力注文別製造工期格納部125、品種入力注文別製造工期出力部126の代わりに、それぞれ通過工程パターン別工期分布格納部2519、注文データ取得部2520、通過工程入力注文別製造工期算出部2524、通過工程入力注文別製造工期格納部2525、通過工程入力注文別製造工期出力部2526を用いるようにしたものである。
【0099】
同様に、本実施形態の製造工期予測装置2500は、第2の実施形態の製造工期予測装置1500から、A2の処理部(品種判定ロジック作成部1512、品種判定ロジック格納部1513)と、品種別通過工程パターン発生率作成部115と、品種別製造工期モデル作成部118と、品種判定部1521とを削除し、第2の実施形態の製造工期予測装置1500の品種別製造工期モデル格納部119、注文データ取得部120、品種入力注文別製造工期算出部124、品種入力注文別製造工期格納部125、品種入力注文別製造工期出力部126の代わりに、それぞれ通過工程パターン別工期分布格納部2519、注文データ取得部2520、通過工程入力注文別製造工期算出部2524、通過工程入力注文別製造工期格納部2525、通過工程入力注文別製造工期出力部2526を用いるようにしたものである。
以下に、本実施形態の製造工期予測装置2500のうち、第1及び第2の実施形態の製造工期予測装置100、1500と異なる構成の一例を説明する。
【0100】
[通過工程パターン別工期分布格納部2519]
通過工程パターン別工期分布格納部2519は、通過工程パターン別工期分布作成部117で作成された通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)を格納する。
通過工程パターン別工期分布格納部2519は、例えば、HDDを用いることにより実現することができる。
【0101】
[注文データ取得部2520]
注文データ取得部2520は、注文データを外部から取得して記憶する。第1、第2の実施形態の注文データ取得部120で取得される注文データには、通過工程パターンが含まれていないが、本実施形態の注文データ取得部2520で取得される注文データには、各注文における通過工程パターンが含まれる。注文データの取得方法は、例えば、第1及び第2の実施形態の注文データ取得部120と同じである。尚、ここでは、各注文における通過工程パターンを注文データに含めることにより、各注文における通過工程パターンを取得するようにしたが、注文データとは別に、各注文における通過工程パターンを取得するようにしてもよい。
注文データ取得部2520は、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、及び各種インターフェースを用いることにより実現することができる。
【0102】
[通過工程入力注文別製造工期算出部2524]
通過工程入力注文別製造工期算出部2524は、通過工程パターン別工期分布格納部2519に格納されている通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)と、注文データに含まれている「各注文における通過工程パターン」と、目標荷揃達成率設定部123により設定された目標荷揃達成率1100(図11を参照)とを用いて、注文毎に工期tを算出する。
ここでは、通過工程入力注文別製造工期算出部2524は、以下の(17)式を満足する工期tを、注文毎(注文に対応する品種毎)に算出する。
【0103】
【数12】
【0104】
尚、PΔ(tΔ|k)が正規分布であると仮定し、このPΔ(tΔ|k)の平均μ・標準偏差σと、ユーザにより設定される定数xとを用いて、以下の(18)式のようにして工期tを、注文毎(注文に対応する品種毎)に算出するようにしてもよい。
PΔ(tΔ|k)=μ+x×σ ・・・(18)
通過工程入力注文別製造工期算出部2524は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0105】
[通過工程入力注文別製造工期格納部2525]
通過工程入力注文別製造工期格納部2525は、通過工程入力注文別製造工期算出部2524で算出された注文毎の工期(注文別製造工期)を格納する。
通過工程入力注文別製造工期格納部2525は、例えば、例えば、HDDを用いることにより実現することができる。
[通過工程入力注文別製造工期出力部2526]
通過工程入力注文別製造工期出力部2526は、通過工程入力注文別製造工期格納部2525に格納された注文別製造工期の情報を出力する。この出力の形態は、例えば、第1及び第2の実施形態の品種入力注文別製造工期出力部126と同じである。
以上のように、各注文の通過工程パターンが予め分かっている場合には、品種を用いずに注文別の工期(注文別製造工期)を算出(予測)することができる。
【0106】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。前述した第1〜第3の実施形態では、最尤推定時における工程別工期分布が正規分布であり(段落[0033]の(e)を参照)、最尤推定時の通過工程パターン工期分布が正規分布であり(段落[0033]の(f)を参照)、通過工程パターン別工期分布算出時の通過工程パターン工期分布が対数正規分布である((12)式を参照)と仮定した場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、最尤推定時における工程別工期分布が正規分布であり、最尤推定時の通過工程パターン工期分布が対数正規分布であり、通過工程パターン別工期分布算出時の通過工程パターン工期分布が対数正規分布であると仮定した場合について説明する。このように、本実施形態と第1〜第3の実施形態は、工程別工期分布作成部116及び通過工程パターン別工期分布作成部117の処理の一部が主として異なる。よって、本実施形態では、工程別工期分布作成部116及び通過工程パターン別工期分布作成部117の処理についてのみ説明し、その他の部分の説明を省略する。
【0107】
[工程別工期分布作成部116]
工程別工期分布作成部116は、製造実績データ200(通過実績有無及び実績工期)を用いて、工期別工期分布を算出する。工期分布は、ヒストグラムで表されたり、近似関数(分布関数)で表されたりする。
【0108】
まず、以下のように記号を定義する。
(a)製品iの実績工期をtiとし、工程jの通過工程有無をpijとする。
(b)製品iの通過工程パターン(の実績値)をpi=(pi1,pi2,・・・,piM)と記載する。ここで、Mは工程の数である。
(c)全製品の実績工期をt=(t1,t2,・・・,tN)Tとする。ここで、Nは製品の総数であり、Tは転置行列であることを示す。
(d)全製品の通過工程パターン(の実績値)をP={pij}とする。
(e)工程jの工期分布は、平均μj、分散vj(=σj2)の正規分布であるとする。ここで、平均μj、分散vjが工程別工期分布の決定変数となる。
(f)実績工期tiは、通過工程パターン(の実績値)毎の対数正規分布に従うものとする。
(g)全工程の工期分布の平均値をμ=(μ1,μ2,・・・,μM)とし、分散をv=(v1,v2,・・・,vM)とする。
また、ここでは、
(h)各工程の工期分布は、他の工程の工期分布から独立するものとする(すなわち、共分散を考慮しないものとする)。
【0109】
そうすると、製品iについて実績工期tiが得られる尤度p(ti|pi,μ,v)は、以下の(19)式〜(21)式で表される。
【0110】
【数13】
【0111】
(19)式の左辺は、製品iの通過工程パターン(の実績値)としてpiが、全工程の工期分布の平均値としてμが、全工程の工期分布の分散としてvがそれぞれ与えられたときに実績工期tiが得られる尤度を表す。一方、(19)式の右辺は、製品iの実績工期tiは、平均がμi〜、分散がvi〜である対数正規分布LNに従って発生することを表す。したがって、(19)式は、製品iについて実績工期tiが得られる尤度p(ti|pi,μ,v)の分布は、対数正規分布のパラメータμi〜、vi〜である対数正規分布LN(μi〜,vi〜)に従うことを表す。
ここで、対数正規分布の平均μi―は、製品iが通過した工程jの工期分布の平均μjの和を表す。また、対数正規分布の分散vi-は、製品iが通過した工程jの工期分布の分散vjの和を表す。
さらに、対数正規分布のパラメータμi〜及びvi〜は、(21)式より対数正規分布の平均μi―と分散vi-を用いて計算できる。
【0112】
(19)式〜(21)式より、全製品の実績工期tが得られる尤度p(t|P,μ,v)は、以下の(22)式で表される。
【0113】
【数14】
【0114】
(22)式は、全製品の実績工期tが得られる尤度p(t|P,μ,v)は、全ての製品iの実績工期t1、t2、・・・、tNの尤度の積により表されることを示している。
(22)式から、対数尤度は、以下の(23)式で表される。
【0115】
【数15】
【0116】
(23)式の対数尤度を最大にするためには、以下の(24)式で表される評価関数Jを最小にする平均μj、分散vjを求めればよい。
【0117】
【数16】
【0118】
(24)式の評価関数Jは、全ての製品iの実績工期t1、t2、・・・、tNの尤度の積が大きいほど値が小さくなる評価関数である。(24)式を評価関数として、平均μj、分散vjを計算するようにしてもよいが、製品の数であるNの値が大きいと、(24)式の最適化計算が困難になる。そこで、本実施形態では、(24)式の評価関数を以下のように書き換える。
ここで、以下の記号を定義する。
(i)通過工程パターンの種類の数をKとする。
(j)通過工程パターンk(k=1,2,・・・,K)をqk=(qk1,qk2,・・・,qkM)とする。
(k)通過工程パターンkに属する製品の数をNk^とする。
(l)通過工程パターンkの工期分布の平均μk^と分散vk^が、以下の(25)式で表されるものとする。
【0119】
【数17】
【0120】
ここで、平均μk^は、通過工程パターンkにおいて通過したことが示されている工程jの工程分布の平均μjの和を表す。また、分散がvk^は、通過工程パターンkにおいて通過したことが示されている工程jの工程分布の分散vjの和を表す。
以上の(i)〜(l)により、(24)式の評価関数Jは、以下の(26)式で表される評価関数Jに書き直すことができる。
【0121】
【数18】
【0122】
(26)式に示す評価関数Jは、通過工程パターンの種類の数Kの項の和で表現される。また、(26)式において、右辺第1項と第4項のNk^と、右辺第2項と第4項の積算(Σ(lnti)2、Σlnti)は、製造実績データ200を集計することにより計算することができる。よって、(26)式に示す評価関数Jを使って最適化計算を行う方が、(24)式の評価関数Jを使って最適化計算を行うよりも容易である。尚、この最適化計算は、滑降シンプレックス法、準ニュートン法等の公知の非線形最適化計算手法を用いることにより実行することができる。工程別工期分布作成部116は、製造実績データ200(通過実績有無及び実績工期)を、(25)式、(26)式に与えて最適化計算を行うことにより、平均μj、分散vjを、工程別工期分布のパラメータの一例として計算する。
工程別工期分布作成部116は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0123】
[通過工程パターン別工期分布作成部117]
通過工程パターン別工期分布作成部117は、工程別工期分布作成部116で作成された工程別工期分布を用いて、通過工程パターン別工期分布を算出する。
まず、(25)式の関係から、工程別工期分布(平均μj、分散vj)を基にして、通過工程パターン別工期分布の平均μk^と分散vk^を算出する。
次に、通過工程パターン別工期分布作成部117は、平均がμk^であり、且つ、分散がvk^である対数正規分布を導出する。そのために、通過工程パターン別工期分布作成部117は、対数正規分布のパラメータμk^´、vk^´を、(26)式のただし書で示した式を用いて計算する。
【0124】
そして、本実施形態では、通過工程パターン別工期分布を、以下の(27)式で表すものとする。
【0125】
【数19】
【0126】
ただし、本実施形態でも第1〜第3の実施形態と同様に、この(27)式を離散化することによって、通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)を得るようにしている((13)式を参照)。
通過工程パターン別工期分布作成部117は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0127】
<第5の実施形態>
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。本実施形態では、最尤推定時における工程別工期分布と、最尤推定時の通過工程パターン工期分布と、通過工程パターン別工期分布算出時の通過工程パターン工期分布が、全てポアソン分布であると仮定した場合について説明する。このように、本実施形態と第1〜第4の実施形態は、工程別工期分布作成部116及び通過工程パターン別工期分布作成部117の処理の一部が主として異なる。よって、本実施形態では、工程別工期分布作成部116及び通過工程パターン別工期分布作成部117の処理についてのみ説明し、その他の部分の説明を省略する。
【0128】
[工程別工期分布作成部116]
工程別工期分布作成部116は、製造実績データ200(通過実績有無及び実績工期)を用いて、工期別工期分布を算出する。工期分布は、ヒストグラムで表されたり、近似関数(分布関数)で表されたりする。以下に、工程別工期分布の作成方法の一例を説明する。
【0129】
まず、以下のように記号を定義する。
(a)製品iの実績工期をtiとし、工程jの通過工程有無をpijとする。
(b)製品iの通過工程パターン(の実績値)をpi=(pi1,pi2,・・・,piM)と記載する。
(c)全製品の実績工期をt=(t1,t2,・・・,tN)Tとする。ここで、Nは製品の総数であり、Tは転置行列であることを示す。
(d)全製品の通過工程パターン(の実績値)をP={pij}とする。
(e)工程jの工期分布は、平均λjのポアソン分布であるとする。ここで、平均λjが工程別工期分布の決定変数となる。
(f)実績工期tiは、通過工程パターン(の実績値)毎のポアソン分布に従うものとする。
(g)全工程の工期分布の平均値をλ=(λ1,λ2,・・・,λM)とする。
また、ここでは、
(h)各工程の工期分布は、他の工程の工期分布から独立するものとする(すなわち、共分散を考慮しないものとする)。
【0130】
そうすると、製品iについて実績工期tiが得られる尤度p(ti|pi,λ)は、以下の(28)式及び(29)式で表される。
【0131】
【数20】
【0132】
(28)式の左辺は、製品iの通過工程パターン(の実績値)としてpiが、全工程の工期分布の平均値としてλがそれぞれ与えられたときに実績工期tiが得られる尤度を表す。一方、(28)式の右辺は、製品iの実績工期tiは、平均がλi〜であるポアソン分布Poissonに従って発生することを表す。したがって、(28)式は、製品iについて実績工期tiが得られる尤度p(ti|pi,λ)の分布は、平均がλi〜であるポアソン分布Poisson(λi〜)に従うことを表す。
ここで、平均λi〜は、製品iが通過した工程jの工期分布の平均λjの和を表す。
【0133】
(28)式及び(29)式より、全製品の実績工期tが得られる尤度p(t|P,λ)は、以下の(30)式で表される。
【0134】
【数21】
【0135】
(30)式は、全製品の実績工期tが得られる尤度p(t|P,λ)は、全ての製品iの実績工期t1、t2、・・・、tNの尤度の積により表されることを示している。
(30)式から、対数尤度は、以下の(31)式で表される。
【0136】
【数22】
【0137】
(31)式の対数尤度を最大にするためには、以下の(32)式で表される評価関数Jを最小にする平均λjを求めればよい。
【0138】
【数23】
【0139】
(32)式の評価関数Jは、全ての製品iの実績工期t1、t2、・・・、tNの尤度の積が大きいほど値が小さくなる評価関数である。(32)式を評価関数として、平均λjを計算するようにしてもよいが、製品の数であるNの値が大きいと、(32)式の最適化計算が困難になる。そこで、本実施形態では、(32)式の評価関数を以下のように書き換える。
ここで、以下の記号を定義する。
(i)通過工程パターンの種類の数をKとする。
(j)通過工程パターンk(k=1,2,・・・,K)をqk=(qk1,qk2,・・・,qkM)とする。
(k)通過工程パターンkに属する製品の数をNk^とする。
(l)通過工程パターンkの工期分布の平均λk^が、以下の(33)式で表されるものとする。
【0140】
【数24】
【0141】
ここで、平均λk^は、通過工程パターンkにおいて通過したことが示されている工程jの工程分布の平均λjの和を表す。
以上の(i)〜(l)により、(32)式の評価関数Jは、以下の(34)式で表される評価関数Jに書き直すことができる。
【0142】
【数25】
【0143】
(34)式に示す評価関数Jは、通過工程パターンの種類の数Kの項の和で表現される。また、(34)式において、右辺第1項のNk^と、右辺第2項の積算(Σti)は、製造実績データ200を集計することにより計算することができる。よって、(34)式に示す評価関数Jを使って最適化計算を行う方が、(32)式の評価関数Jを使って最適化計算を行うよりも容易である。尚、この最適化計算は、滑降シンプレックス法、準ニュートン法等の公知の非線形最適化計算手法を用いることにより実行することができる。工程別工期分布作成部116は、製造実績データ200(通過実績有無及び実績工期)を、(33)式、(34)式に与えて最適化計算を行うことにより、平均λjを、工程別工期分布のパラメータの一例として計算する。
工程別工期分布作成部116は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0144】
[通過工程パターン別工期分布作成部117]
通過工程パターン別工期分布作成部117は、工程別工期分布作成部116で作成された工程別工期分布を用いて、通過工程パターン別工期分布を算出する。
まず、(33)式の関係から、工程別工期分布(平均λj)を基にして、通過工程パターン別工期分布の平均λk^を算出する。
そして、本実施形態では、通過工程パターン別工期分布を、以下の(35)式で表すものとする。
【0145】
【数26】
【0146】
ただし、本実施形態でも第1〜第4の実施形態と同様に、この(35)式を離散化することによって、通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)を得るようにしている((13)式を参照)。
通過工程パターン別工期分布作成部117は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0147】
<第6の実施形態>
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。本実施形態では、最尤推定時における工程別工期分布と、最尤推定時の通過工程パターン工期分布と、通過工程パターン別工期分布算出時の通過工程パターン工期分布が、全てガンマ分布であると仮定した場合について説明する。このように、本実施形態と第1〜第5の実施形態は、工程別工期分布作成部116及び通過工程パターン別工期分布作成部117の処理の一部が主として異なる。よって、本実施形態では、工程別工期分布作成部116及び通過工程パターン別工期分布作成部117の処理についてのみ説明し、その他の部分の説明を省略する。
【0148】
[工程別工期分布作成部116]
工程別工期分布作成部116は、製造実績データ200(通過実績有無及び実績工期)を用いて、工期別工期分布を算出する。工期分布は、ヒストグラムで表されたり、近似関数(分布関数)で表されたりする。以下に、工程別工期分布の作成方法の一例を説明する。
【0149】
まず、以下のように記号を定義する。
(a)製品iの実績工期をtiとし、工程jの通過工程有無をpijとする。
(b)製品iの通過工程パターン(の実績値)をpi=(pi1,pi2,・・・,piM)と記載する。
(c)全製品の実績工期をt=(t1,t2,・・・,tN)Tとする。ここで、Nは製品の総数であり、Tは転置行列であることを示す。
(d)全製品の通過工程パターン(の実績値)をP={pij}とする。
(e)工程jの工期分布は、形状母数bj、尺度母数θのガンマ分布であるとする。ここで、形状母数bj、尺度母数θが工程別工期分布の決定変数となる。ここで、本実施形態では、尺度母数θは、工程毎のパラメータではない。このようにしないと、工期分布の再生性が得られないからである。
(f)実績工期tiは、通過工程パターン(の実績値)毎のガンマ分布に従うものとする。
(g)全工程の工期分布の形状母数をb=(b1,b2,・・・,bM)とする。
また、ここでは、
(h)各工程の工期分布は、他の工程の工期分布から独立するものとする(すなわち、共分散を考慮しないものとする)。
【0150】
そうすると、製品iについて実績工期tiが得られる尤度p(ti|p,b,θ)は、以下の(36)式及び(37)式で表される。
【0151】
【数27】
【0152】
(36)式の左辺は、製品iの通過工程パターン(の実績値)としてpiが、全工程の工期分布の形状母数としてbが、全行程の工期分布の尺度母数としてθがそれぞれ与えられたときに実績工期tiが得られる尤度を表す。一方、(36)式の右辺は、製品iの実績工期tiは、形状母数がbi〜、尺度母数がθであるガンマ分布Gammaに従って発生することを表す。したがって、(36)式は、製品iについて実績工期tiが得られる尤度p(ti|pi,b,θ)の分布は、形状母数がbi〜、尺度母数がθであるガンマ分布Gamma(bi〜,θ)に従うことを表す。
ここで、形状母数bi〜は、製品iが通過した工程jの工期分布の形状母数bjの和を表す。
【0153】
(36)式及び(37)式より、全製品の実績工期tが得られる尤度p(t|P,b,θ)は、以下の(38)式で表される。
【0154】
【数28】
【0155】
(38)式は、全製品の実績工期tが得られる尤度p(t|P,b,θ)は、全ての製品iの実績工期t1、t2、・・・、tNの尤度の積により表されることを示している。
(38)式から、対数尤度は、以下の(39)式で表される。(39)式に含まれるガンマ関数Γとは、実部が正となる複素数zについて、以下の(40)式の積分で定義される関数である。
【0156】
【数29】
【0157】
(39)式の対数尤度を最大にするためには、以下の(41)式で表される評価関数Jを最小にする形状母数bj、尺度母数θを求めればよい。
【0158】
【数30】
【0159】
(41)式の評価関数Jは、全ての製品iの実績工期t1、t2、・・・、tNの尤度の積が大きいほど値が小さくなる評価関数である。(41)式を評価関数として、形状母数bj、尺度母数θを計算するようにしてもよいが、製品の数であるNの値が大きいと、(41)式の最適化計算が困難になる。そこで、本実施形態では、(41)式の評価関数を以下のように書き換える。
ここで、以下の記号を定義する。
(i)通過工程パターンの種類の数をKとする。
(j)通過工程パターンk(k=1,2,・・・,K)をqk=(qk1,qk2,・・・,qkM)とする。
(k)通過工程パターンkに属する製品の数をNk^とする。
(l)通過工程パターンkの工期分布の形状母数bk^が、以下の(42)式で表されるものとする。
【0160】
【数31】
【0161】
ここで、形状母数bk^は、通過工程パターンkにおいて通過したことが示されている工程jの工程分布の形状母数bjの和を表す。
以上の(i)〜(l)により、(41)式の評価関数Jは、以下の(43)式で表される評価関数Jに書き直すことができる。
【0162】
【数32】
【0163】
(43)式に示す評価関数Jは、通過工程パターンの種類の数Kの項の和で表現される。また、(43)式において、右辺第3項と第4項のNk^と、右辺第1項と第2項の積算(Σlnti、Σti)は、製造実績データ200を集計することにより計算することができる。よって、(43)式に示す評価関数Jを使って最適化計算を行う方が、(41)式の評価関数Jを使って最適化計算を行うよりも容易である。尚、この最適化計算は、滑降シンプレックス法、準ニュートン法等の公知の非線形最適化計算手法を用いることにより実行することができる。工程別工期分布作成部116は、製造実績データ200(通過実績有無及び実績工期)を、(42)式、(43)式に与えて最適化計算を行うことにより、形状母数bj、尺度母数θを工程別工期分布のパラメータの一例として計算する。
工程別工期分布作成部116は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0164】
[通過工程パターン別工期分布作成部117]
通過工程パターン別工期分布作成部117は、工程別工期分布作成部116で作成された工程別工期分布を用いて、通過工程パターン別工期分布を算出する。
まず、(42)式の関係から、工程別工期分布(形状母数bj)を基にして、通過工程パターン別工期分布の形状母数bk^を算出する。
そして、本実施形態では、通過工程パターン別工期分布を、以下の(44)式で表すものとする。
【0165】
【数33】
【0166】
ただし、本実施形態でも第1〜第4の実施形態と同様に、この(44)式を離散化することによって、通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)を得るようにしている((13)式を参照)。
通過工程パターン別工期分布作成部117は、例えば、CPU、ROM、及びRAMを用いることにより実現することができる。
【0167】
<工期分布として仮定する関数による比較>
前述したように、本明細書では、工期分布として仮定する関数が以下の(A)〜(D)場合を例に挙げて説明した。尚、第4〜6の実施形態は、第1に実施形態の構成に対応するものである。
(A);詳細は第1の実施形態を参照
最尤推定時における工程別工期分布;正規分布
最尤推定時の通過工程パターン工期分布;正規分布
通過工程パターン別工期分布算出時の通過工程パターン工期分布;対数正規分布
(B);詳細は第4の実施形態を参照
最尤推定時における工程別工期分布;正規分布
最尤推定時の通過工程パターン工期分布;対数正規分布
通過工程パターン別工期分布算出時の通過工程パターン工期分布;対数正規分布
(C);詳細は第5の実施形態を参照
最尤推定時における工程別工期分布;ポアソン分布
最尤推定時の通過工程パターン工期分布;ポアソン分布
通過工程パターン別工期分布算出時の通過工程パターン工期分布;ポアソン分布
(D);詳細は第6の実施形態を参照
最尤推定時における工程別工期分布;ガウス分布
最尤推定時の通過工程パターン工期分布;ガウス分布
通過工程パターン別工期分布算出時の通過工程パターン工期分布;ガウス分布
【0168】
ここでは、鉄鋼製造プロセスにおける或る期間で得られた(同一の)製造実績データ(学習データ)に対して、(A)〜(D)のようにして工期分布を仮定して、工程別工期分布(のパラメータ)を算出した(各実施形態における工程別工期分布作成部116の説明を参照)。
図26は、(A)の場合の工程別工期分布の一例を示し、図27は、(B)の場合の工程別工期分布の一例を示し、図28は、(C)の場合の工程別工期分布の一例を示し、図29は、(D)の場合の工程別工期分布の一例を示す。
【0169】
さらに、このようにして得られた工程別工期分布を用いて、通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)を、前記(A)〜(D)のそれぞれの場合について算出した(各実施形態における通過工程パターン別工期分布作成部117の説明を参照)。そして、注文データに含まれている「各注文における通過工程パターン」と、目標荷揃達成率設定部123により設定された目標荷揃達成率1100(図11を参照)とを用いて、注文毎の工期tを、前記(A)〜(D)のそれぞれの場合について算出した(通過工程入力注文別製造工期算出部2524の説明を参照)。目標荷揃達成率1100として、0.85(=85%)、0.90(=90%)、0.95(=95%)を設定し、それぞれの場合について、注文毎の工期tを算出した。これにより、目標荷揃達成率1100毎、通過工程パターン毎の工期tが得られる。以下の説明では、「目標荷揃達成率1100が0.85(=85%)、0.90(=90%)、0.95(=95%)の場合の各通過工程パターンにおける工期t」を必要に応じて、それぞれ「85%工期」、「90%工期」、「95%工期」と称する。
【0170】
一方、前述した製造実績データ(学習データ)とは異なる期間に得られた前記鉄鋼製造プロセスにおける製造実績データ(評価データ)から、通過工程パターン別工期分布PΔ(tΔ|k)を算出した(通過工程パターン別工期分布作成部1916の説明を参照)。そして、前述したのと同様にして、「85%工期」、「90%工期」及び「95%工期」を算出した。ここで、数の少ない通過工程パターンでは実績工期(「85%工期」、「90%工期」及び「95%工期」)を正しく算出することができない。このため、ここでは、500枚以上の評価データが属する通過工程パターンを評価対象とした。
【0171】
そして、学習データから得られた工期と、評価データから得られた工期とを、単回帰式に当てはめて、「85%工期」、「90%工期」及び「95%工期」のそれぞれについて単回帰式の決定係数と単回帰式の係数とを予測精度評価の尺度として算出した。
図30は、単回帰式の決定係数を示す図であり、図31は、単回帰式の係数を示す図である。決定係数とは、学習データから得られた工期が評価データから得られた工期をどれくらい説明できるかを表す一般的な指標であり、1に近いほど良い。また、単回帰式の係数も1に近いほどよく、1より大きい場合は学習データから得られた工期よりも評価データから得られた工期の方が長い傾向にあることを意味し、逆に1より小さい場合は学習データから得られた工期よりも評価データから得られた工期の方が短い傾向にあることを意味する。
図30及び図31に示すように、前述した(C)のようにすると(工期分布がポアソン分布であると仮定すると)、決定係数の値は大きくなるが、単回帰式の係数が「1」を大きく超える。すなわち、今回の工期予測の対象の鉄鋼製造プロセスにおいては、工期分布がポアソン分布であると仮定すると、予測工期を短く算出する傾向がある。一方、前述した(B)のようにすると(工程別工期分布が正規分布、通過工程パターン工期分布が対数正規分布であると仮定すると)、決定係数も単回帰式の係数も「1」に近くなる。すなわち、今回の工期予測の対象の鉄鋼製造プロセスにおいては、工程別工期分布が正規分布、通過工程パターン工期分布が対数正規分布であると仮定すると、工期のトータルでの予測精度が高くなるといえる。このように、今回のように、常に各工程に仕掛がたまっているような製造プロセスを工期予測の対象とした場合、工程毎に平均と分散とが大きく異なってしまうため、工程毎のパラメータに平均値と分散との両方が含まれている分布を用いると(前述した(A)や(B)のようにして工期分布を仮定すると)精度良く工期を予測することができる。
【0172】
しかしながら、工期の予測対象となる製造プロセスによっては、前述した(C)や(D)のようにして工期分布を仮定しても、精度良く工期を予測することができる。例えば、各工程における製造能力が高い製造プロセス(仕掛は常に溜まっておらず設備に空き時間が存在するような製造プロセス)では待ち行列になり易い。このような製造プロセスに対しては、前述した(C)のようにして工期分布がポアソン分布であると仮定すると精度良く工期を予測することができると考えられる。また、工程毎に、工期分布の平均値は大きく異ならないが、分布(形状)が異なるというような製造プロセスに対しては、前述した(D)のようにして工期分布がガンマ分布であると仮定すると精度良く工期を予測することができると考えられる。また、ポアソン分布とガンマ分布は、再生性を持つ分布である。再生性とは、同じ分布族に含まれる確率分布を持つ2つの独立な確率変数に対して、その和の確率分布もまた同じ族に含まれる性質のことをいう。このため、前述した(C)や(D)のようにして工期分布を仮定すると、最尤推定時における工程別工期分布と、最尤推定時の通過工程パターン工期分布と、通過工程パターン別工期分布算出時の通過工程パターン工期分布とが、全て同じ分布の仮定のもとで工期を計算することができ、一貫して同じ分布で計算することができるため、分布推定精度の劣化を最小限に抑えることができる。尚、最尤推定時における工程別工期分布を対数正規分布と仮定すると工程別工期分布を解析的に計算することができない。このため、ここでは、前述した(A)や(B)のようにして工期分布を仮定している。
【0173】
<その他の変形例>
前述した第1の実施形態では、工程通過判定ロジックが決定木300である場合を例に挙げ、第2の実施形態では、品種判定ロジックが決定木1600である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、これらは決定木に限定されるものではない。すなわち、工程通過判定ロジックは、製造実績データ200に含まれる製造仕様から、製品が通過する工程と通過しない工程とを工程毎に予測するものであれば、例えば、統計モデルを使用したり、テーブル方式のモデルを使用したりすることができる。同様に、品種判定ロジックも、製造実績データ200に含まれる製造仕様から品種を予測するものであれば、統計モデルを使用したり、テーブル方式のモデルを使用したりすることができる。
【0174】
<<請求項との対応>>
(請求項1、15)
製造実績データ取得手段(工程)は、例えば、製造実績データ取得部111(で行う処理)により実現される。ここで、製造実績データは、例えば、製造実績データ200により実現される。
工程別工期分布導出手段(工程)は、例えば、工程別工期分布作成部116(で行う処理)により実現される。ここで、製造工程別の工期の分布を規定するパラメータは、例えば、図6に示す平均μj、分散vjにより実現される。
通過工程パターン別工期分布導出手段(工程)は、例えば、通過工程パターン別工期分布作成部117(で行う処理)により実現される。ここで、通過工程パターン別の工期分布は、例えば、図7に示す通過工程パターン別工期分布703の情報により実現される。また、通過工程パターンで通過したことが示されている製造工程の工期の分布を規定するパラメータを足し合わせることは、例えば、(8)式、(9)式の計算を行うことにより実現される。
第1の品種決定手段(工程)は、例えば、図1に示すA1の処理部(で行う処理)又は図15に示すA2の処理部(で行う処理)により実現される。ここで、品種は、例えば、図4の品種402、図17の品種1700により実現される。
品種別通過工程パターン発生率導出手段(工程)は、例えば、品種別通過工程パターン発生率作成部115(で行う処理)により実現される。ここで、品種別の通過工程パターンの発生確率は、例えば、図5の通過工程パターン発生率500の情報により実現される。
品種別製造工期モデル導出手段(工程)は、例えば、品種別製造工期モデル作成部118(で行う処理)により実現される。ここで、通過工程パターン別工期分布と、品種別の通過工程パターンの発生確率とを用いて、品種別の工期分布を導出することは、例えば、(14)式の計算を行うことにより実現される。そして、品種別の工期分布は、例えば、図8の品種別製造工期モデル800により実現される。
第2の品種決定手段(工程)は、例えば、第2の品種作成部122(で行う処理)又は図15に示す品種判定部1521(で行う処理)により実現される。
品種入力注文別製造工期導出手段(工程)は、例えば、品種入力注文別製造工期算出部124(で行う処理)により実現される。ここで、品種と、品種別の工期分布とを用いて、注文別の製造工期を導出することは、例えば、(16)式の計算を行うことにより実現される。
(請求項2、16)
工程通過判定ロジック作成手段(工程)は、例えば、工程通過判定ロジック作成部112(で行う処理)により実現される。ここで、工程通過判定ロジックは、例えば、図3の決定木300により実現される。
第1の品種作成手段(工程)は、例えば、第1の品種作成部114(で行う処理)により実現される。
第2の品種作成手段(工程)は、例えば、第2の品種作成部122(で行う処理)により実現される。
(請求項3、17)
品種判定ロジック作成手段(工程)は、例えば、品種判定ロジック作成部1512(で行う処理)により実現される。
品種判定手段(工程)は、例えば、品種判定部1521(で行う処理)により実現される。
(請求項4、18)
目標荷揃達成率設定手段は(工程)は、例えば、目標荷揃達成率設定部123(で行う処理)により実現される。ここで、目標荷揃達成率は、例えば、図11の目標荷揃達成率1100により実現される。また、品種と、品種別の工期分布と、目標荷揃達成率とを用いて、注文別の製造工期を導出することは、例えば、(15)式の計算を行うことにより実現される。
(請求項5、19)
製造実績データ取得手段(工程)は、例えば、製造実績データ取得部111(で行う処理)により実現される。ここで、製造実績データは、例えば、製造実績データ200により実現される。
工程別工期分布導出手段(工程)は、例えば、工程別工期分布作成部116(で行う処理)により実現される。ここで、製造工程別の工期の分布を規定するパラメータは、例えば、図6に示す工程別工期分布600の情報により実現される。
通過工程パターン別工期分布導出手段(工程)は、例えば、通過工程パターン別工期分布作成部117(で行う処理)により実現される。ここで、通過工程パターン別の工期分布は、例えば、図7に示す通過工程パターン別工期分布703の情報により実現される。また、通過工程パターンで通過したことが示されている製造工程の工期の分布を規定するパラメータを足し合わせることは、例えば、(8)式、(9)式の計算を行うことにより実現される。
通過工程入力注文別製造工期導出手段(工程)は、例えば、通過工程入力注文別製造工期算出部2524(で行う処理)により実現される。ここで、通過工程パターンと、通過工程パターン別の工期分布とを用いて、注文別の製造工期を導出することは、例えば、(18)式の計算を行うことにより実現される。
(請求項6、20)
目標荷揃達成率設定手段は(工程)は、例えば、目標荷揃達成率設定部123(で行う処理)により実現される。ここで、目標荷揃達成率は、例えば、図11の目標荷揃達成率1100により実現される。また、通過工程パターンと、通過工程パターン別の工期分布と、目標荷揃達成率とを用いて、注文別の製造工期を導出することは、例えば、(17)式の計算を行うことにより実現される。
(請求項7、21)
各製品の実績工期が得られる尤度の積が大きくなるほど値が小さくなる評価関数の値が最小となるように、製造工程の工期の分布として表現される正規分布の平均と分散とを導出することは、例えば、(3)式に基づいて得られる(7)式の計算を行うことにより実現される。
各製品の実績工期が得られる尤度のそれぞれが、通過工程パターンで通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均及び分散のそれぞれの積算値を平均及び分散とする正規分布で表現されることは、例えば、(1)式、(2)式により得られる。
(請求項8、22)
通過工程パターン別工期分布パラメータ導出手段(工程)、対数正規分布導出手段(工程)、及び製造工期発生確率導出手段(工程)は、例えば、通過工程パターン別工期分布作成部117(で行う処理)により実現される。ここで、通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均及び分散をそれぞれ足し合わせることにより、通過工程パターン別の工期分布の平均及び分散を導出することは、例えば、(8)式、(9)式の計算を行うことにより実現される。また、通過工程パターン別の工期分布の平均及び分散を有する対数正規分布は、例えば、(12)式により実現される。また、通過工程パターンを有する製品の各工期の発生確率は、例えば、PΔ(tΔ|k)により実現される。
(請求項9、請求項23)
各製品の実績工期が得られる尤度の積が大きくなるほど値が小さくなる評価関数の値が最小となるように、製造工程の工期の分布として表現される正規分布の平均と標準偏差とを導出することは、例えば、(22)式に基づいて得られる(26)式の計算を行うことにより実現される。
各製品の実績工期が得られる尤度のそれぞれが、通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均及び分散のそれぞれの積算値を平均及び分散とする対数正規分布で表現されることは、例えば、(19)式〜(21)式により得られる。
(請求項10、請求項24)
通過工程パターン別工期分布パラメータ導出手段(工程)、対数正規分布導出手段(工程)、及び製造工期発生確率導出手段(工程)は、例えば、通過工程パターン別工期分布作成部117(で行う処理)により実現される。ここで、通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均及び分散をそれぞれ足し合わせることにより、通過工程パターン別の工期分布の平均及び分散を導出することは、例えば、(25)式の計算を行うことにより実現される。また、通過工程パターン別の工期分布の平均及び分散を有する対数正規分布は、例えば、(27)式により実現される。また、通過工程パターンを有する製品の各工期の発生確率は、例えば、PΔ(tΔ|k)により実現される。
(請求項11、請求項25)
各製品の実績工期が得られる尤度の積が大きくなるほど値が小さくなる評価関数の値が最小となるように、製造工程の工期の分布として表現されるポアソン分布の平均を導出することは、例えば、(30)式に基づいて得られる(34)式の計算を行うことにより実現される。
各製品の実績工期が得られる尤度のそれぞれが、通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均のそれぞれの積算値を平均とするポアソン分布で表現されることは、例えば、(28)式、(29)式により得られる。
(請求項12、請求項26)
通過工程パターン別工期分布パラメータ導出手段(工程)、ポアソン分布導出手段(工程)、及び製造工期発生確率導出手段(工程)は、例えば、通過工程パターン別工期分布作成部117(で行う処理)により実現される。ここで、通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均をそれぞれ足し合わせることにより、通過工程パターン別の工期分布の平均を導出することは、例えば、(33)式の計算を行うことにより実現される。また、通過工程パターン別の工期分布の平均と同じ平均を有するポアソン分布は、例えば、(35)式により実現される。また、通過工程パターンを有する製品の各工期の発生確率は、例えば、PΔ(tΔ|k)により実現される。
(請求項13、請求項27)
各製品の実績工期が得られる尤度の積が大きくなるほど値が小さくなる評価関数の値が最小となるように、製造工程の工期の分布として表現されるガンマ分布の形状母数と尺度母数とを導出することは、例えば、(38)式に基づいて得られる(43)式の計算を行うことにより実現される。
各製品の実績工期が得られる尤度のそれぞれが、通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の形状母数のそれぞれの積算値を形状母数とし、製造工程によらない一定値を尺度母数とするガンマ分布で表現されることは、例えば、(36)式、(37)式により得られる。
(請求項14、請求項28)
通過工程パターン別工期分布パラメータ導出手段(工程)、ガンマ分布導出手段(工程)、及び製造工期発生確率導出手段(工程)は、例えば、通過工程パターン別工期分布作成部117(で行う処理)により実現される。ここで、通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の形状母数をそれぞれ足し合わせることにより、通過工程パターン別の工期分布の形状母数を導出することは、例えば、(42)式の計算を行うことにより実現される。また、通過工程パターン別の工期分布の形状母数と同じ形状母数を有するガウス分布は、例えば、(44)式により実現される。また、通過工程パターンを有する製品の各工期の発生確率は、例えば、PΔ(tΔ|k)により実現される。
【0175】
尚、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体、又はかかるプログラムを伝送する伝送媒体も本発明の実施の形態として適用することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体などのプログラムプロダクトも本発明の実施の形態として適用することができる。前記のプログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、伝送媒体及びプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0176】
100、1500 製造工期予測装置
200 製造実績データ
300、1600 決定木
402、1700 製造番号別の品種
500 通過工程パターン発生率
600 工程別工期分布
703 通過工程パターン別工期分布
800 品種別製造工期モデル
900 注文データ
1002 注文別の品種
1100 目標荷揃達成率
1200 注文別製造工期
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注文別の製造仕様を含む注文データから、当該注文の工期を予測する製造工期予測装置であって、
複数の製造工程を通過して製造される各製品の製造実績を示すデータであって、製品の製造仕様と、各製造工程の通過の有無の実績値を示す情報である通過実績有無と、製品を製造するのに要した工期の実績を示す情報である実績工期とを含む製造実績データを取得する製造実績データ取得手段と、
前記各製品に対する通過実績有無及び実績工期を用いて、製造工程別の工期の分布を規定するパラメータを導出する工程別工期分布導出手段と、
前記工程別工期分布導出手段により導出された製造工程別の工期の分布を規定するパラメータと、前記各製品に対する通過実績有無とを用いて、前記通過実績有無の値を所定の順番で並べることにより得られる通過工程パターン別の工期分布を導出する通過工程パターン別工期分布導出手段と、
前記製造実績データに含まれる製品の製造仕様を用いて、当該製品の各製造工程の通過の有無の予測値を前記所定の順番で並べることにより得られる品種を、前記製造実績データに含まれる製品のそれぞれについて決定する第1の品種決定手段と、
前記通過工程パターン別の製品の数と、前記品種別の製品の数とを用いて、前記品種別の前記通過工程パターンの発生確率を導出する品種別通過工程パターン発生率導出手段と、
前記通過工程パターン別工期分布と、前記品種別の前記通過工程パターンの発生確率とを用いて、品種別の工期分布を導出する品種別製造工期モデル導出手段と、
前記注文データに含まれる製造仕様を用いて、当該注文データに含まれる注文の各製造工程の通過の有無の予測値を求め、当該注文の各製造工程の通過の有無の予測値を前記所定の順番で並べることにより得られる品種を、前記注文データに含まれる注文のそれぞれについて決定する第2の品種決定手段と、
前記第2の品種決定手段により決定された品種と、前記品種別製造工期モデル導出手段により導出された品種別の工期分布とを用いて、注文別の製造工期を導出する品種入力注文別製造工期導出手段と、を有し、
前記通過工程パターン別工期分布導出手段は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期の分布を規定するパラメータをそれぞれ足し合わせることにより得られたパラメータに基づいて定まる確率密度関数として、前記通過工程パターン別の工期分布を導出することを特徴とする製造工期予測装置。
【請求項2】
前記第1の品種決定手段は、前記製品の製造仕様を入力とし、当該製品の前記各製造工程の通過の有無の予測値を出力とする工程通過判定ロジックを、当該製造工程のそれぞれについて作成する工程通過判定ロジック作成手段と、
前記製品の製造仕様を、前記工程通過判定ロジックに適用して、当該製品の各製造工程の通過の有無の予測値を取得し、取得した予測値を前記所定の順番で並べることにより、当該製品の品種を作成する第1の品種作成手段と、を更に有し、
前記第2の品種決定手段は、前記注文データに含まれる製造仕様を、前記工程通過判定ロジックに適用して、当該注文の通過の有無の予測値を取得し、取得した予測値を前記所定の順番で並べることにより、当該注文の品種を作成する第2の品種作成手段を更に有することを特徴とする請求項1に記載の製造工期予測装置。
【請求項3】
前記第1の品種決定手段は、前記製品の製造仕様を入力とし、当該製品の品種を出力とする品種判定ロジックを作成する品種判定ロジック作成手段を更に有し、
前記第2の品種決定手段は、前記注文データに含まれる製造仕様を、前記品種判定ロジックに適用して、当該注文の品種を判定する品種判定手段を更に有することを特徴とする請求項1に記載の製造工期予測装置。
【請求項4】
前記注文の量に対する、納期までに荷揃う製品の量の割合の目標値である目標荷揃達成率を設定する目標荷揃達成率設定手段を更に有し、
前記品種入力注文別製造工期導出手段は、前記第2の品種決定手段により決定された品種と、前記品種別製造工期モデル導出手段により導出された品種別の工期分布と、前記目標荷揃達成率設定手段により設定された目標荷揃達成率とを用いて、注文別の製造工期を導出することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の製造工期予測装置。
【請求項5】
注文別の製造仕様を含む注文データから、当該注文の工期を予測する製造工期予測装置であって、
複数の製造工程を通過して製造される各製品の製造実績を示すデータであって、製品の製造仕様と、各製造工程の通過の有無の実績値を示す情報である通過実績有無と、製品を製造するのに要した工期の実績を示す情報である実績工期とを含む製造実績データを取得する製造実績データ取得手段と、
前記各製品に対する通過実績有無及び実績工期を用いて、製造工程別の工期の分布を規定するパラメータを導出する工程別工期分布導出手段と、
前記工程別工期分布導出手段により導出された製造工程別の工期の分布を規定するパラメータと、前記各製品に対する通過実績有無とを用いて、前記通過実績有無の値を所定の順番で並べることにより得られる通過工程パターン別の工期分布を導出する通過工程パターン別工期分布導出手段と、
前記注文データに含まれる注文のそれぞれについての通過工程パターンと、前記通過工程パターン別工期分布導出手段により導出された通過工程パターン別の工期分布とを用いて、注文別の製造工期を導出する通過工程入力注文別製造工期導出手段と、を有し、
前記通過工程パターン別工期分布導出手段は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期の分布を規定するパラメータをそれぞれ足し合わせることにより得られたパラメータに基づいて定まる確率密度関数として、前記通過工程パターン別の工期分布を導出することを特徴とする製造工期予測装置。
【請求項6】
前記注文の量に対する、納期までに荷揃う製品の量の割合の目標値である目標荷揃達成率を設定する目標荷揃達成率設定手段を更に有し、
前記通過工程入力注文別製造工期導出手段は、前記注文データに含まれる注文に対する通過工程パターンと、前記通過工程パターン別工期分布導出手段により導出された通過工程パターン別の工期分布と、前記目標荷揃達成率設定手段により設定された目標荷揃達成率とを用いて、注文別の製造工期を導出することを特徴とする請求項5に記載の製造工期予測装置。
【請求項7】
前記工程別工期分布導出手段は、前記各製品の実績工期が得られる尤度の積が大きくなるほど値が小さくなる評価関数の値が最小となるように、前記製造工程の工期の分布として表現される正規分布の平均と分散とを導出し、
前記各製品の実績工期が得られる尤度のそれぞれは、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均及び分散のそれぞれの積算値を平均及び分散とする正規分布で表現されることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の製造工期予測装置。
【請求項8】
前記通過工程パターン別工期分布導出手段は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均及び分散をそれぞれ足し合わせることにより、前記通過工程パターン別の工期分布の平均及び分散を導出する通過工程パターン別工期分布パラメータ導出手段と、
前記通過工程パターン別工期分布パラメータ導出手段により導出された平均及び分散を有する対数正規分布を導出する対数正規分布導出手段と、
前記対数正規分布導出手段により得られる対数正規分布を確率密度関数として、前記通過工程パターンを有する製品の各工期の発生確率を、前記通過工程パターンのそれぞれについて導出することにより前記通過工程パターン別の工期分布を導出する製造工期発生確率導出手段と、を更に有することを特徴とする請求項7に記載の製造工期予測装置。
【請求項9】
前記工程別工期分布導出手段は、前記各製品の実績工期が得られる尤度の積が大きくなるほど値が小さくなる評価関数の値が最小となるように、前記製造工程の工期の分布として表現される正規分布の平均と標準偏差とを導出し、
前記各製品の実績工期が得られる尤度のそれぞれは、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均及び分散のそれぞれの積算値を平均及び分散とする対数正規分布で表現されることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の製造工期予測装置。
【請求項10】
前記通過工程パターン別工期分布導出手段は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均及び分散をそれぞれ足し合わせることにより、前記通過工程パターン別の工期分布の平均及び分散を導出する通過工程パターン別工期分布パラメータ導出手段と、
前記通過工程パターン別工期分布パラメータ導出手段により導出された平均及び分散を有する対数正規分布を導出する対数正規分布導出手段と、
前記対数正規分布導出手段により得られる対数正規分布を確率密度関数として、前記通過工程パターンを有する製品の各工期の発生確率を、前記通過工程パターンのそれぞれについて導出することにより前記通過工程パターン別の工期分布を導出する製造工期発生確率導出手段と、を更に有することを特徴とする請求項9に記載の製造工期予測装置。
【請求項11】
前記工程別工期分布導出手段は、前記各製品の実績工期が得られる尤度の積が大きくなるほど値が小さくなる評価関数の値が最小となるように、前記製造工程の工期の分布として表現されるポアソン分布の平均を導出し、
前記各製品の実績工期が得られる尤度のそれぞれは、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均のそれぞれの積算値を平均とするポアソン分布で表現されることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の製造工期予測装置。
【請求項12】
前記通過工程パターン別工期分布導出手段は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均をそれぞれ足し合わせることにより、前記通過工程パターン別の工期分布の平均を導出する通過工程パターン別工期分布パラメータ導出手段と、
前記通過工程パターン別工期分布パラメータ導出手段により導出された平均と同じ平均を有するポアソン分布を導出するポアソン分布導出手段と、
前記ポアソン分布導出手段により得られるポアソン分布を確率密度関数として、前記通過工程パターンを有する製品の各工期の発生確率を、前記通過工程パターンのそれぞれについて導出することにより前記通過工程パターン別の工期分布を導出する製造工期発生確率導出手段と、を更に有することを特徴とする請求項11に記載の製造工期予測装置。
【請求項13】
前記工程別工期分布導出手段は、前記各製品の実績工期が得られる尤度の積が大きくなるほど値が小さくなる評価関数の値が最小となるように、前記製造工程の工期の分布として表現されるガンマ分布の形状母数と尺度母数とを導出し、
前記各製品の実績工期が得られる尤度のそれぞれは、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の形状母数のそれぞれの積算値を形状母数とし、製造工程によらない一定値を尺度母数とするガンマ分布で表現されることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の製造工期予測装置。
【請求項14】
前記通過工程パターン別工期分布導出手段は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の形状母数をそれぞれ足し合わせることにより、前記通過工程パターン別の工期分布の形状母数を導出する通過工程パターン別工期分布パラメータ導出手段と、
前記通過工程パターン別工期分布パラメータ導出手段により導出された形状母数と同じ形状母数を有するガウス分布を導出するガウス分布導出手段と、
前記ガウス分布導出手段により得られるガウス分布を確率密度関数として、前記通過工程パターンを有する製品の各工期の発生確率を、前記通過工程パターンのそれぞれについて導出することにより前記通過工程パターン別の工期分布を導出する製造工期発生確率導出手段と、を更に有することを特徴とする請求項13に記載の製造工期予測装置。
【請求項15】
注文別の製造仕様を含む注文データから、当該注文の工期を予測する製造工期予測方法であって、
複数の製造工程を通過して製造される各製品の製造実績を示すデータであって、製品の製造仕様と、各製造工程の通過の有無の実績値を示す情報である通過実績有無と、製品を製造するのに要した工期の実績を示す情報である実績工期とを含む製造実績データを取得する製造実績データ取得工程と、
前記各製品に対する通過実績有無及び実績工期を用いて、製造工程別の工期の分布を規定するパラメータを導出する工程別工期分布導出工程と、
前記工程別工期分布導出工程により導出された製造工程別の工期の分布を規定するパラメータと、前記各製品に対する通過実績有無とを用いて、前記通過実績有無の値を所定の順番で並べることにより得られる通過工程パターン別の工期分布を導出する通過工程パターン別工期分布導出工程と、
前記製造実績データに含まれる製品の製造仕様を用いて、当該製品の各製造工程の通過の有無の予測値を前記所定の順番で並べることにより得られる品種を、前記製造実績データに含まれる製品のそれぞれについて決定する第1の品種決定工程と、
前記通過工程パターン別の製品の数と、前記品種別の製品の数とを用いて、前記品種別の前記通過工程パターンの発生確率を導出する品種別通過工程パターン発生率導出工程と、
前記通過工程パターン別工期分布と、前記品種別の前記通過工程パターンの発生確率とを用いて、品種別の工期分布を導出する品種別製造工期モデル導出工程と、
前記注文データに含まれる製造仕様を用いて、当該注文データに含まれる注文の各製造工程の通過の有無の予測値を求め、当該注文の各製造工程の通過の有無の予測値を前記所定の順番で並べることにより得られる品種を、前記注文データに含まれる注文のそれぞれについて決定する第2の品種決定工程と、
前記第2の品種決定工程により決定された品種と、前記品種別製造工期モデル導出工程により導出された品種別の工期分布とを用いて、注文別の製造工期を導出する品種入力注文別製造工期導出工程と、を有し、
前記通過工程パターン別工期分布導出工程は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期の分布を規定するパラメータをそれぞれ足し合わせることにより得られたパラメータに基づいて定まる確率密度関数として、前記通過工程パターン別の工期分布を導出することを特徴とする製造工期予測方法。
【請求項16】
前記第1の品種決定工程は、前記製品の製造仕様を入力とし、当該製品の前記各製造工程の通過の有無の予測値を出力とする工程通過判定ロジックを、当該製造工程のそれぞれについて作成する工程通過判定ロジック作成工程と、
前記製品の製造仕様を、前記工程通過判定ロジックに適用して、当該製品の各製造工程の通過の有無の予測値を取得し、取得した予測値を前記所定の順番で並べることにより、当該製品の品種を作成する第1の品種作成工程と、を更に有し、
前記第2の品種決定工程は、前記注文データに含まれる製造仕様を、前記工程通過判定ロジックに適用して、当該注文の通過の有無の予測値を取得し、取得した予測値を前記所定の順番で並べることにより、当該注文の品種を作成する第2の品種作成工程を更に有することを特徴とする請求項15に記載の製造工期予測方法。
【請求項17】
前記第1の品種決定工程は、前記製品の製造仕様を入力とし、当該製品の品種を出力とする品種判定ロジックを作成する品種判定ロジック作成工程を更に有し、
前記第2の品種決定工程は、前記注文データに含まれる製造仕様を、前記品種判定ロジックに適用して、当該注文の品種を判定する品種判定工程を更に有することを特徴とする請求項15に記載の製造工期予測方法。
【請求項18】
前記注文の量に対する、納期までに荷揃う製品の量の割合の目標値である目標荷揃達成率を設定する目標荷揃達成率設定工程を有し、
前記品種入力注文別製造工期導出工程は、前記第2の品種決定工程により決定された品種と、前記品種別製造工期モデル導出工程により導出された品種別の工期分布と、前記目標荷揃達成率設定工程により設定された目標荷揃達成率とを用いて、注文別の製造工期を導出することを特徴とする請求項15〜17の何れか1項に記載の製造工期予測方法。
【請求項19】
注文別の製造仕様を含む注文データから、当該注文の工期を予測する製造工期予測方法であって、
複数の製造工程を通過して製造される各製品の製造実績を示すデータであって、製品の製造仕様と、各製造工程の通過の有無の実績値を示す情報である通過実績有無と、製品を製造するのに要した工期の実績を示す情報である実績工期とを含む製造実績データを取得する製造実績データ取得工程と、
前記各製品に対する通過実績有無及び実績工期を用いて、製造工程別の工期の分布を規定するパラメータを導出する工程別工期分布導出工程と、
前記工程別工期分布導出工程により導出された製造工程別の工期の分布を規定するパラメータと、前記各製品に対する通過実績有無とを用いて、前記通過実績有無の値を所定の順番で並べることにより得られる通過工程パターン別の工期分布を導出する通過工程パターン別工期分布導出工程と、
前記注文データに含まれる注文のそれぞれについての通過工程パターンと、前記通過工程パターン別工期分布導出工程により導出された通過工程パターン別の工期分布とを用いて、注文別の製造工期を導出する通過工程入力注文別製造工期導出工程と、を有し、
前記通過工程パターン別工期分布導出工程は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期の分布を規定するパラメータをそれぞれ足し合わせることにより得られたパラメータに基づいて定まる確率密度関数として、前記通過工程パターン別の工期分布を導出することを特徴とする製造工期予測方法。
【請求項20】
前記注文の量に対する、納期までに荷揃う製品の量の割合の目標値である目標荷揃達成率を設定する目標荷揃達成率設定工程を有し、
前記通過工程入力注文別製造工期導出工程は、前記注文データに含まれる注文に対する通過工程パターンと、前記通過工程パターン別工期分布導出工程により導出された通過工程パターン別の工期分布と、前記目標荷揃達成率設定工程により設定された目標荷揃達成率とを用いて、注文別の製造工期を導出することを特徴とする請求項19に記載の製造工期予測方法。
【請求項21】
前記工程別工期分布導出工程は、前記各製品の実績工期が得られる尤度の積が大きくなるほど値が小さくなる評価関数の値が最小となるように、前記製造工程の工期の分布として表現される正規分布の平均と分散とを導出し、
前記各製品の実績工期が得られる尤度のそれぞれは、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均及び分散のそれぞれの積算値を平均及び分散とする正規分布で表現されることを特徴とする請求項15〜20の何れか1項に記載の製造工期予測方法。
【請求項22】
前記通過工程パターン別工期分布導出工程は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均及び分散をそれぞれ足し合わせることにより、前記通過工程パターン別の工期分布の平均及び分散を導出する通過工程パターン別工期分布パラメータ導出工程と、
前記通過工程パターン別工期分布パラメータ導出工程により導出された平均及び分散を有する対数正規分布を導出する対数正規分布導出工程と、
前記対数正規分布導出工程により得られる対数正規分布を確率密度関数として、前記通過工程パターンを有する製品の各工期の発生確率を、前記通過工程パターンのそれぞれについて導出することにより前記通過工程パターン別の工期分布を導出する製造工期発生確率導出工程と、を更に有することを特徴とする請求項21に記載の製造工期予測方法。
【請求項23】
前記工程別工期分布導出工程は、前記各製品の実績工期が得られる尤度の積が大きくなるほど値が小さくなる評価関数の値が最小となるように、前記製造工程の工期の分布として表現される正規分布の平均と標準偏差とを導出し、
前記各製品の実績工期が得られる尤度のそれぞれは、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均及び分散のそれぞれの積算値を平均及び分散とする対数正規分布で表現されることを特徴とする請求項15〜20の何れか1項に記載の製造工期予測方法。
【請求項24】
前記通過工程パターン別工期分布導出工程は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均及び分散をそれぞれ足し合わせることにより、前記通過工程パターン別の工期分布の平均及び分散を導出する通過工程パターン別工期分布パラメータ導出工程と、
前記通過工程パターン別工期分布パラメータ導出工程により導出された平均及び分散を有する対数正規分布を導出する対数正規分布導出工程と、
前記対数正規分布導出工程により得られる対数正規分布を確率密度関数として、前記通過工程パターンを有する製品の各工期の発生確率を、前記通過工程パターンのそれぞれについて導出することにより前記通過工程パターン別の工期分布を導出する製造工期発生確率導出工程と、を更に有することを特徴とする請求項23に記載の製造工期予測方法。
【請求項25】
前記工程別工期分布導出工程は、前記各製品の実績工期が得られる尤度の積が大きくなるほど値が小さくなる評価関数の値が最小となるように、前記製造工程の工期の分布として表現されるポアソン分布の平均を導出し、
前記各製品の実績工期が得られる尤度のそれぞれは、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均のそれぞれの積算値を平均とするポアソン分布で表現されることを特徴とする請求項15〜20の何れか1項に記載の製造工期予測方法。
【請求項26】
前記通過工程パターン別工期分布導出工程は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均をそれぞれ足し合わせることにより、前記通過工程パターン別の工期分布の平均を導出する通過工程パターン別工期分布パラメータ導出工程と、
前記通過工程パターン別工期分布パラメータ導出工程により導出された平均と同じ平均を有するポアソン分布を導出するポアソン分布導出工程と、
前記ポアソン分布導出工程により得られるポアソン分布を確率密度関数として、前記通過工程パターンを有する製品の各工期の発生確率を、前記通過工程パターンのそれぞれについて導出することにより前記通過工程パターン別の工期分布を導出する製造工期発生確率導出工程と、を更に有することを特徴とする請求項25に記載の製造工期予測方法。
【請求項27】
前記工程別工期分布導出工程は、前記各製品の実績工期が得られる尤度の積が大きくなるほど値が小さくなる評価関数の値が最小となるように、前記製造工程の工期の分布として表現されるガンマ分布の形状母数と尺度母数とを導出し、
前記各製品の実績工期が得られる尤度のそれぞれは、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の形状母数のそれぞれの積算値を形状母数とし、製造工程によらない一定値を尺度母数とするガンマ分布で表現されることを特徴とする請求項15〜20の何れか1項に記載の製造工期予測方法。
【請求項28】
前記通過工程パターン別工期分布導出工程は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の形状母数をそれぞれ足し合わせることにより、前記通過工程パターン別の工期分布の形状母数を導出する通過工程パターン別工期分布パラメータ導出工程と、
前記通過工程パターン別工期分布パラメータ導出工程により導出された形状母数と同じ形状母数を有するガウス分布を導出するガウス分布導出工程と、
前記ガウス分布導出工程により得られるガウス分布を確率密度関数として、前記通過工程パターンを有する製品の各工期の発生確率を、前記通過工程パターンのそれぞれについて導出することにより前記通過工程パターン別の工期分布を導出する製造工期発生確率導出工程と、を更に有することを特徴とする請求項27に記載の製造工期予測方法。
【請求項29】
請求項15〜28の何れか1項に記載の製造工期予測方法の各工程をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項1】
注文別の製造仕様を含む注文データから、当該注文の工期を予測する製造工期予測装置であって、
複数の製造工程を通過して製造される各製品の製造実績を示すデータであって、製品の製造仕様と、各製造工程の通過の有無の実績値を示す情報である通過実績有無と、製品を製造するのに要した工期の実績を示す情報である実績工期とを含む製造実績データを取得する製造実績データ取得手段と、
前記各製品に対する通過実績有無及び実績工期を用いて、製造工程別の工期の分布を規定するパラメータを導出する工程別工期分布導出手段と、
前記工程別工期分布導出手段により導出された製造工程別の工期の分布を規定するパラメータと、前記各製品に対する通過実績有無とを用いて、前記通過実績有無の値を所定の順番で並べることにより得られる通過工程パターン別の工期分布を導出する通過工程パターン別工期分布導出手段と、
前記製造実績データに含まれる製品の製造仕様を用いて、当該製品の各製造工程の通過の有無の予測値を前記所定の順番で並べることにより得られる品種を、前記製造実績データに含まれる製品のそれぞれについて決定する第1の品種決定手段と、
前記通過工程パターン別の製品の数と、前記品種別の製品の数とを用いて、前記品種別の前記通過工程パターンの発生確率を導出する品種別通過工程パターン発生率導出手段と、
前記通過工程パターン別工期分布と、前記品種別の前記通過工程パターンの発生確率とを用いて、品種別の工期分布を導出する品種別製造工期モデル導出手段と、
前記注文データに含まれる製造仕様を用いて、当該注文データに含まれる注文の各製造工程の通過の有無の予測値を求め、当該注文の各製造工程の通過の有無の予測値を前記所定の順番で並べることにより得られる品種を、前記注文データに含まれる注文のそれぞれについて決定する第2の品種決定手段と、
前記第2の品種決定手段により決定された品種と、前記品種別製造工期モデル導出手段により導出された品種別の工期分布とを用いて、注文別の製造工期を導出する品種入力注文別製造工期導出手段と、を有し、
前記通過工程パターン別工期分布導出手段は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期の分布を規定するパラメータをそれぞれ足し合わせることにより得られたパラメータに基づいて定まる確率密度関数として、前記通過工程パターン別の工期分布を導出することを特徴とする製造工期予測装置。
【請求項2】
前記第1の品種決定手段は、前記製品の製造仕様を入力とし、当該製品の前記各製造工程の通過の有無の予測値を出力とする工程通過判定ロジックを、当該製造工程のそれぞれについて作成する工程通過判定ロジック作成手段と、
前記製品の製造仕様を、前記工程通過判定ロジックに適用して、当該製品の各製造工程の通過の有無の予測値を取得し、取得した予測値を前記所定の順番で並べることにより、当該製品の品種を作成する第1の品種作成手段と、を更に有し、
前記第2の品種決定手段は、前記注文データに含まれる製造仕様を、前記工程通過判定ロジックに適用して、当該注文の通過の有無の予測値を取得し、取得した予測値を前記所定の順番で並べることにより、当該注文の品種を作成する第2の品種作成手段を更に有することを特徴とする請求項1に記載の製造工期予測装置。
【請求項3】
前記第1の品種決定手段は、前記製品の製造仕様を入力とし、当該製品の品種を出力とする品種判定ロジックを作成する品種判定ロジック作成手段を更に有し、
前記第2の品種決定手段は、前記注文データに含まれる製造仕様を、前記品種判定ロジックに適用して、当該注文の品種を判定する品種判定手段を更に有することを特徴とする請求項1に記載の製造工期予測装置。
【請求項4】
前記注文の量に対する、納期までに荷揃う製品の量の割合の目標値である目標荷揃達成率を設定する目標荷揃達成率設定手段を更に有し、
前記品種入力注文別製造工期導出手段は、前記第2の品種決定手段により決定された品種と、前記品種別製造工期モデル導出手段により導出された品種別の工期分布と、前記目標荷揃達成率設定手段により設定された目標荷揃達成率とを用いて、注文別の製造工期を導出することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の製造工期予測装置。
【請求項5】
注文別の製造仕様を含む注文データから、当該注文の工期を予測する製造工期予測装置であって、
複数の製造工程を通過して製造される各製品の製造実績を示すデータであって、製品の製造仕様と、各製造工程の通過の有無の実績値を示す情報である通過実績有無と、製品を製造するのに要した工期の実績を示す情報である実績工期とを含む製造実績データを取得する製造実績データ取得手段と、
前記各製品に対する通過実績有無及び実績工期を用いて、製造工程別の工期の分布を規定するパラメータを導出する工程別工期分布導出手段と、
前記工程別工期分布導出手段により導出された製造工程別の工期の分布を規定するパラメータと、前記各製品に対する通過実績有無とを用いて、前記通過実績有無の値を所定の順番で並べることにより得られる通過工程パターン別の工期分布を導出する通過工程パターン別工期分布導出手段と、
前記注文データに含まれる注文のそれぞれについての通過工程パターンと、前記通過工程パターン別工期分布導出手段により導出された通過工程パターン別の工期分布とを用いて、注文別の製造工期を導出する通過工程入力注文別製造工期導出手段と、を有し、
前記通過工程パターン別工期分布導出手段は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期の分布を規定するパラメータをそれぞれ足し合わせることにより得られたパラメータに基づいて定まる確率密度関数として、前記通過工程パターン別の工期分布を導出することを特徴とする製造工期予測装置。
【請求項6】
前記注文の量に対する、納期までに荷揃う製品の量の割合の目標値である目標荷揃達成率を設定する目標荷揃達成率設定手段を更に有し、
前記通過工程入力注文別製造工期導出手段は、前記注文データに含まれる注文に対する通過工程パターンと、前記通過工程パターン別工期分布導出手段により導出された通過工程パターン別の工期分布と、前記目標荷揃達成率設定手段により設定された目標荷揃達成率とを用いて、注文別の製造工期を導出することを特徴とする請求項5に記載の製造工期予測装置。
【請求項7】
前記工程別工期分布導出手段は、前記各製品の実績工期が得られる尤度の積が大きくなるほど値が小さくなる評価関数の値が最小となるように、前記製造工程の工期の分布として表現される正規分布の平均と分散とを導出し、
前記各製品の実績工期が得られる尤度のそれぞれは、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均及び分散のそれぞれの積算値を平均及び分散とする正規分布で表現されることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の製造工期予測装置。
【請求項8】
前記通過工程パターン別工期分布導出手段は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均及び分散をそれぞれ足し合わせることにより、前記通過工程パターン別の工期分布の平均及び分散を導出する通過工程パターン別工期分布パラメータ導出手段と、
前記通過工程パターン別工期分布パラメータ導出手段により導出された平均及び分散を有する対数正規分布を導出する対数正規分布導出手段と、
前記対数正規分布導出手段により得られる対数正規分布を確率密度関数として、前記通過工程パターンを有する製品の各工期の発生確率を、前記通過工程パターンのそれぞれについて導出することにより前記通過工程パターン別の工期分布を導出する製造工期発生確率導出手段と、を更に有することを特徴とする請求項7に記載の製造工期予測装置。
【請求項9】
前記工程別工期分布導出手段は、前記各製品の実績工期が得られる尤度の積が大きくなるほど値が小さくなる評価関数の値が最小となるように、前記製造工程の工期の分布として表現される正規分布の平均と標準偏差とを導出し、
前記各製品の実績工期が得られる尤度のそれぞれは、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均及び分散のそれぞれの積算値を平均及び分散とする対数正規分布で表現されることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の製造工期予測装置。
【請求項10】
前記通過工程パターン別工期分布導出手段は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均及び分散をそれぞれ足し合わせることにより、前記通過工程パターン別の工期分布の平均及び分散を導出する通過工程パターン別工期分布パラメータ導出手段と、
前記通過工程パターン別工期分布パラメータ導出手段により導出された平均及び分散を有する対数正規分布を導出する対数正規分布導出手段と、
前記対数正規分布導出手段により得られる対数正規分布を確率密度関数として、前記通過工程パターンを有する製品の各工期の発生確率を、前記通過工程パターンのそれぞれについて導出することにより前記通過工程パターン別の工期分布を導出する製造工期発生確率導出手段と、を更に有することを特徴とする請求項9に記載の製造工期予測装置。
【請求項11】
前記工程別工期分布導出手段は、前記各製品の実績工期が得られる尤度の積が大きくなるほど値が小さくなる評価関数の値が最小となるように、前記製造工程の工期の分布として表現されるポアソン分布の平均を導出し、
前記各製品の実績工期が得られる尤度のそれぞれは、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均のそれぞれの積算値を平均とするポアソン分布で表現されることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の製造工期予測装置。
【請求項12】
前記通過工程パターン別工期分布導出手段は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均をそれぞれ足し合わせることにより、前記通過工程パターン別の工期分布の平均を導出する通過工程パターン別工期分布パラメータ導出手段と、
前記通過工程パターン別工期分布パラメータ導出手段により導出された平均と同じ平均を有するポアソン分布を導出するポアソン分布導出手段と、
前記ポアソン分布導出手段により得られるポアソン分布を確率密度関数として、前記通過工程パターンを有する製品の各工期の発生確率を、前記通過工程パターンのそれぞれについて導出することにより前記通過工程パターン別の工期分布を導出する製造工期発生確率導出手段と、を更に有することを特徴とする請求項11に記載の製造工期予測装置。
【請求項13】
前記工程別工期分布導出手段は、前記各製品の実績工期が得られる尤度の積が大きくなるほど値が小さくなる評価関数の値が最小となるように、前記製造工程の工期の分布として表現されるガンマ分布の形状母数と尺度母数とを導出し、
前記各製品の実績工期が得られる尤度のそれぞれは、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の形状母数のそれぞれの積算値を形状母数とし、製造工程によらない一定値を尺度母数とするガンマ分布で表現されることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の製造工期予測装置。
【請求項14】
前記通過工程パターン別工期分布導出手段は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の形状母数をそれぞれ足し合わせることにより、前記通過工程パターン別の工期分布の形状母数を導出する通過工程パターン別工期分布パラメータ導出手段と、
前記通過工程パターン別工期分布パラメータ導出手段により導出された形状母数と同じ形状母数を有するガウス分布を導出するガウス分布導出手段と、
前記ガウス分布導出手段により得られるガウス分布を確率密度関数として、前記通過工程パターンを有する製品の各工期の発生確率を、前記通過工程パターンのそれぞれについて導出することにより前記通過工程パターン別の工期分布を導出する製造工期発生確率導出手段と、を更に有することを特徴とする請求項13に記載の製造工期予測装置。
【請求項15】
注文別の製造仕様を含む注文データから、当該注文の工期を予測する製造工期予測方法であって、
複数の製造工程を通過して製造される各製品の製造実績を示すデータであって、製品の製造仕様と、各製造工程の通過の有無の実績値を示す情報である通過実績有無と、製品を製造するのに要した工期の実績を示す情報である実績工期とを含む製造実績データを取得する製造実績データ取得工程と、
前記各製品に対する通過実績有無及び実績工期を用いて、製造工程別の工期の分布を規定するパラメータを導出する工程別工期分布導出工程と、
前記工程別工期分布導出工程により導出された製造工程別の工期の分布を規定するパラメータと、前記各製品に対する通過実績有無とを用いて、前記通過実績有無の値を所定の順番で並べることにより得られる通過工程パターン別の工期分布を導出する通過工程パターン別工期分布導出工程と、
前記製造実績データに含まれる製品の製造仕様を用いて、当該製品の各製造工程の通過の有無の予測値を前記所定の順番で並べることにより得られる品種を、前記製造実績データに含まれる製品のそれぞれについて決定する第1の品種決定工程と、
前記通過工程パターン別の製品の数と、前記品種別の製品の数とを用いて、前記品種別の前記通過工程パターンの発生確率を導出する品種別通過工程パターン発生率導出工程と、
前記通過工程パターン別工期分布と、前記品種別の前記通過工程パターンの発生確率とを用いて、品種別の工期分布を導出する品種別製造工期モデル導出工程と、
前記注文データに含まれる製造仕様を用いて、当該注文データに含まれる注文の各製造工程の通過の有無の予測値を求め、当該注文の各製造工程の通過の有無の予測値を前記所定の順番で並べることにより得られる品種を、前記注文データに含まれる注文のそれぞれについて決定する第2の品種決定工程と、
前記第2の品種決定工程により決定された品種と、前記品種別製造工期モデル導出工程により導出された品種別の工期分布とを用いて、注文別の製造工期を導出する品種入力注文別製造工期導出工程と、を有し、
前記通過工程パターン別工期分布導出工程は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期の分布を規定するパラメータをそれぞれ足し合わせることにより得られたパラメータに基づいて定まる確率密度関数として、前記通過工程パターン別の工期分布を導出することを特徴とする製造工期予測方法。
【請求項16】
前記第1の品種決定工程は、前記製品の製造仕様を入力とし、当該製品の前記各製造工程の通過の有無の予測値を出力とする工程通過判定ロジックを、当該製造工程のそれぞれについて作成する工程通過判定ロジック作成工程と、
前記製品の製造仕様を、前記工程通過判定ロジックに適用して、当該製品の各製造工程の通過の有無の予測値を取得し、取得した予測値を前記所定の順番で並べることにより、当該製品の品種を作成する第1の品種作成工程と、を更に有し、
前記第2の品種決定工程は、前記注文データに含まれる製造仕様を、前記工程通過判定ロジックに適用して、当該注文の通過の有無の予測値を取得し、取得した予測値を前記所定の順番で並べることにより、当該注文の品種を作成する第2の品種作成工程を更に有することを特徴とする請求項15に記載の製造工期予測方法。
【請求項17】
前記第1の品種決定工程は、前記製品の製造仕様を入力とし、当該製品の品種を出力とする品種判定ロジックを作成する品種判定ロジック作成工程を更に有し、
前記第2の品種決定工程は、前記注文データに含まれる製造仕様を、前記品種判定ロジックに適用して、当該注文の品種を判定する品種判定工程を更に有することを特徴とする請求項15に記載の製造工期予測方法。
【請求項18】
前記注文の量に対する、納期までに荷揃う製品の量の割合の目標値である目標荷揃達成率を設定する目標荷揃達成率設定工程を有し、
前記品種入力注文別製造工期導出工程は、前記第2の品種決定工程により決定された品種と、前記品種別製造工期モデル導出工程により導出された品種別の工期分布と、前記目標荷揃達成率設定工程により設定された目標荷揃達成率とを用いて、注文別の製造工期を導出することを特徴とする請求項15〜17の何れか1項に記載の製造工期予測方法。
【請求項19】
注文別の製造仕様を含む注文データから、当該注文の工期を予測する製造工期予測方法であって、
複数の製造工程を通過して製造される各製品の製造実績を示すデータであって、製品の製造仕様と、各製造工程の通過の有無の実績値を示す情報である通過実績有無と、製品を製造するのに要した工期の実績を示す情報である実績工期とを含む製造実績データを取得する製造実績データ取得工程と、
前記各製品に対する通過実績有無及び実績工期を用いて、製造工程別の工期の分布を規定するパラメータを導出する工程別工期分布導出工程と、
前記工程別工期分布導出工程により導出された製造工程別の工期の分布を規定するパラメータと、前記各製品に対する通過実績有無とを用いて、前記通過実績有無の値を所定の順番で並べることにより得られる通過工程パターン別の工期分布を導出する通過工程パターン別工期分布導出工程と、
前記注文データに含まれる注文のそれぞれについての通過工程パターンと、前記通過工程パターン別工期分布導出工程により導出された通過工程パターン別の工期分布とを用いて、注文別の製造工期を導出する通過工程入力注文別製造工期導出工程と、を有し、
前記通過工程パターン別工期分布導出工程は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期の分布を規定するパラメータをそれぞれ足し合わせることにより得られたパラメータに基づいて定まる確率密度関数として、前記通過工程パターン別の工期分布を導出することを特徴とする製造工期予測方法。
【請求項20】
前記注文の量に対する、納期までに荷揃う製品の量の割合の目標値である目標荷揃達成率を設定する目標荷揃達成率設定工程を有し、
前記通過工程入力注文別製造工期導出工程は、前記注文データに含まれる注文に対する通過工程パターンと、前記通過工程パターン別工期分布導出工程により導出された通過工程パターン別の工期分布と、前記目標荷揃達成率設定工程により設定された目標荷揃達成率とを用いて、注文別の製造工期を導出することを特徴とする請求項19に記載の製造工期予測方法。
【請求項21】
前記工程別工期分布導出工程は、前記各製品の実績工期が得られる尤度の積が大きくなるほど値が小さくなる評価関数の値が最小となるように、前記製造工程の工期の分布として表現される正規分布の平均と分散とを導出し、
前記各製品の実績工期が得られる尤度のそれぞれは、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均及び分散のそれぞれの積算値を平均及び分散とする正規分布で表現されることを特徴とする請求項15〜20の何れか1項に記載の製造工期予測方法。
【請求項22】
前記通過工程パターン別工期分布導出工程は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均及び分散をそれぞれ足し合わせることにより、前記通過工程パターン別の工期分布の平均及び分散を導出する通過工程パターン別工期分布パラメータ導出工程と、
前記通過工程パターン別工期分布パラメータ導出工程により導出された平均及び分散を有する対数正規分布を導出する対数正規分布導出工程と、
前記対数正規分布導出工程により得られる対数正規分布を確率密度関数として、前記通過工程パターンを有する製品の各工期の発生確率を、前記通過工程パターンのそれぞれについて導出することにより前記通過工程パターン別の工期分布を導出する製造工期発生確率導出工程と、を更に有することを特徴とする請求項21に記載の製造工期予測方法。
【請求項23】
前記工程別工期分布導出工程は、前記各製品の実績工期が得られる尤度の積が大きくなるほど値が小さくなる評価関数の値が最小となるように、前記製造工程の工期の分布として表現される正規分布の平均と標準偏差とを導出し、
前記各製品の実績工期が得られる尤度のそれぞれは、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均及び分散のそれぞれの積算値を平均及び分散とする対数正規分布で表現されることを特徴とする請求項15〜20の何れか1項に記載の製造工期予測方法。
【請求項24】
前記通過工程パターン別工期分布導出工程は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均及び分散をそれぞれ足し合わせることにより、前記通過工程パターン別の工期分布の平均及び分散を導出する通過工程パターン別工期分布パラメータ導出工程と、
前記通過工程パターン別工期分布パラメータ導出工程により導出された平均及び分散を有する対数正規分布を導出する対数正規分布導出工程と、
前記対数正規分布導出工程により得られる対数正規分布を確率密度関数として、前記通過工程パターンを有する製品の各工期の発生確率を、前記通過工程パターンのそれぞれについて導出することにより前記通過工程パターン別の工期分布を導出する製造工期発生確率導出工程と、を更に有することを特徴とする請求項23に記載の製造工期予測方法。
【請求項25】
前記工程別工期分布導出工程は、前記各製品の実績工期が得られる尤度の積が大きくなるほど値が小さくなる評価関数の値が最小となるように、前記製造工程の工期の分布として表現されるポアソン分布の平均を導出し、
前記各製品の実績工期が得られる尤度のそれぞれは、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均のそれぞれの積算値を平均とするポアソン分布で表現されることを特徴とする請求項15〜20の何れか1項に記載の製造工期予測方法。
【請求項26】
前記通過工程パターン別工期分布導出工程は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の平均をそれぞれ足し合わせることにより、前記通過工程パターン別の工期分布の平均を導出する通過工程パターン別工期分布パラメータ導出工程と、
前記通過工程パターン別工期分布パラメータ導出工程により導出された平均と同じ平均を有するポアソン分布を導出するポアソン分布導出工程と、
前記ポアソン分布導出工程により得られるポアソン分布を確率密度関数として、前記通過工程パターンを有する製品の各工期の発生確率を、前記通過工程パターンのそれぞれについて導出することにより前記通過工程パターン別の工期分布を導出する製造工期発生確率導出工程と、を更に有することを特徴とする請求項25に記載の製造工期予測方法。
【請求項27】
前記工程別工期分布導出工程は、前記各製品の実績工期が得られる尤度の積が大きくなるほど値が小さくなる評価関数の値が最小となるように、前記製造工程の工期の分布として表現されるガンマ分布の形状母数と尺度母数とを導出し、
前記各製品の実績工期が得られる尤度のそれぞれは、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の形状母数のそれぞれの積算値を形状母数とし、製造工程によらない一定値を尺度母数とするガンマ分布で表現されることを特徴とする請求項15〜20の何れか1項に記載の製造工期予測方法。
【請求項28】
前記通過工程パターン別工期分布導出工程は、前記通過工程パターンにおいて通過したことが示されている製造工程の工期分布の形状母数をそれぞれ足し合わせることにより、前記通過工程パターン別の工期分布の形状母数を導出する通過工程パターン別工期分布パラメータ導出工程と、
前記通過工程パターン別工期分布パラメータ導出工程により導出された形状母数と同じ形状母数を有するガウス分布を導出するガウス分布導出工程と、
前記ガウス分布導出工程により得られるガウス分布を確率密度関数として、前記通過工程パターンを有する製品の各工期の発生確率を、前記通過工程パターンのそれぞれについて導出することにより前記通過工程パターン別の工期分布を導出する製造工期発生確率導出工程と、を更に有することを特徴とする請求項27に記載の製造工期予測方法。
【請求項29】
請求項15〜28の何れか1項に記載の製造工期予測方法の各工程をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図15】
【図16】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2013−33450(P2013−33450A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−127460(P2012−127460)
【出願日】平成24年6月4日(2012.6.4)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月4日(2012.6.4)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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